説明

自動たこ焼き機

【課題】 たこ焼きの回転角を正しくを制御することができ、焼きむらのないたこ焼きが自動的に焼き上げることができる自動たこ焼き機を提供する。
【解決手段】 たこ焼き型2は焼型内面が略半球状で底部に発熱体22を備えている。ツメ3はたこ焼き型の焼型内面のカーブと略同一のフック部分31とフック部分31を回転させる支軸部分32を備えている。支軸32を中心に回転した場合にフック部分31がたこ焼き型2の焼型内面に沿って回転する。たこ焼き型の垂直面内で円軌跡を描く周回軌跡において、材料投入機構によりたこ焼き型にたこ焼き材料を投入し、設定されたツメ回転タイミングが来る度に前記ツメにより前記たこ焼き型内のたこ焼きを略半回転ひっくり返して球形状に焼き上げられて行く。反転機構作動タイミングが来るとたこ焼き型2を天地反転させてたこ焼きを取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動たこ焼き機に関する。特に、半球状のたこ焼き型を複数備え、各たこ焼き型にたこの切り身などの具や小麦粉を溶いた生地を自動的に入れて加熱し、自動的に適宜回転させて(ひっくり返して)球状のたこ焼きを焼き上げて取り出す、自動たこ焼き機に関するものである。
なお本発明において「たこ焼き」とは、基本的には生地にたこの切り身を入れたものを指すが、生地に入れる具として、たこの切り身以外の他の食材を使用したものをも広く含むものである。つまり、必ずしもたこの切り身が入っていなくとも小麦粉を溶いた生地を球形状に焼き上げたものを「たこ焼き」と称するものとし、これらを自動的に球形に焼き上げる機器も本発明の自動たこ焼き機の技術的範囲に含むものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来のたこ焼き機の一例を示したものである。図8(a)は平面図、図8(b)はA−A線に沿った切断面の端面図である。この例では全体外形が四角形をしている。
従来のたこ焼き機は、一枚の鉄板から複数の凹状の焼型を成型したものであって、複数の凹状の焼型が図8(a)に示したように整然と並べられたようになっている。一つ一つの凹型の焼型はその上部が開放され、図8(b)に示すようにその内面断面がほぼ半球形状をなしている。なお、従来のたこ焼き機は鉄板の周縁部が上方に向けて折曲して形成したこぼれ止め堰部となっている。
【0003】
従来のたこ焼き機は、たこ焼きを焼く場合、凹状の焼型に生地を注入したのち焼き上げ、凹状の焼型の上縁部からいわゆる千枚通しなどを差し込みつつ生地をひっくり返して(回転させて)徐々に球状に整形して行く。
なお、たこ焼き機の周縁部にこぼれ止め堰部が設けられている理由は、十分な量の生地をたこ焼き機に注ぎ込んでも生地がたこ焼き機から溢れることがないようにするためである。たこ焼きの最終的な形状は球形状なので焼型にちょうど収まる量の生地だけを注ぎ込んだ場合は量が足りずきれいな球形状にならない。そこで焼型から溢れるほどの生地を注ぎ込んでおくことによって、生地の量を確保し、きれいな球形状のたこ焼きを作る。
【0004】
従来から、たこ焼きの調理において、断面が半球状である焼型内において半焼き程度に焼けた生地をひっくり返す(回転)操作がかなり面倒であることが指摘されている。つまり、焼型の内面と接している球状タネの下半部の表面に焦げ目が付いた半焼き程度まで焼き上がった段階で内部がまだ流動状態にある生地に先端の尖った千枚通しなどを突き刺してひっくり返して(回転させて)いるが、その操作が面倒で難しい点が指摘されている。この回転動作は人手で行なうことも難しいが機械的に行なうことはさらに難しい。
【0005】
従来技術において自動的にたこ焼きを調理する自動たこ焼き機として、振動を与えて生地をひっくり返す(回転する)ものが知られている(特開2000−14311号、特開2001−321273号、特開2002−306052号)。
【0006】
図9は特開2000−14311号に開示された従来の揺動式自動回転たこ焼き機の概略を示した図である。図において4は揺動枠、7はたこ焼きプレート、10は揺動枠4に担持された加熱手段、3は揺動枠4を揺動可能に支持する水平軸、31はモータにより回転駆動されるクランク、6は揺動式自動回転たこ焼き機の機枠である。クランク31をモータにより回転駆動させると、揺動枠4は水平軸3を中心に揺動する。この揺動運動により、焼き穴8内の生地に自転運動が生じる。
【0007】
特開2001−321273号や特開2002−306052号に開示された技術は、上記の特開2000−14311号に開示されたたこ焼き機の課題である焼きむら(焼き上がりのバラツキ)を無くすことを目的とした改良を施したものであり、振動の仕方に工夫を加えている。
【0008】
また、従来技術において、生地を焼き上げた後で回転させて球状に後成型するものが知られている(特開2002−204678号)。
図10は特開2002−204678号に開示された従来の後成型する自動たこ焼き機の概略を示す図である。あらかじめ生地を釣鐘型の焼型に投入して回転させることなく焼き上げておき、ベルトコンベア21の左側から供給する。ベルトコンベア21から釣鐘型のたこ焼きを、湾曲状の受け板23と回転ドラム25の間に設けられた断面が半球状の溝26の中に供給し、回転ドラム25の回転によって溝26の中を転がりながら転送される。この転送の過程で溝の形状に沿ってだんだん球形状に成型されて行く。
【0009】
【特許文献1】特開2000−14311号
【特許文献2】特開2001−321273号
【特許文献3】特開2002−306052号
【特許文献4】特開2002−204678号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来の揺動式自動回転たこ焼き機では、確かに焼型内のたこ焼きを回転させることが可能と考えられる。しかし、以下の問題がある。
第1にたこ焼きの回転角の調整が難しい問題がある。揺動式自動回転たこ焼き機は振動を与えて焼型内のたこ焼きをひっくり返す(回転させる)ところ、振動を与えればたこ焼きが回転するものの回転角度を調整するのはきわめて難しい。また、鉄板に複数の焼型が設けられている構成では、一つの焼型のみ注目してたこ焼きの回転を調整しても他の焼型内のたこ焼きが必ずしも注目している焼型内のたこ焼きの回転と同様の回転をしているとは限らず、通常は回転角が揃ったものとはならない。
【0011】
第2に装置が大きなものとなってしまう問題がある。揺動式自動回転たこ焼き機は振動を与えて焼型内のたこ焼きを回転させるという大掛かりな機構が必要であり、また鉄板全体を揺動させるには装置全体が揺れ動かないようにフレーム部分の重量を重くせざるを得ず、装置全体が重いものとなってしまう問題もある。例えばコンビニエンスストア、デパートなどの店頭やイベント会場に設置することには不向きである。
【0012】
第3に装置による発生する音や振動の問題がある。揺動式自動回転たこ焼き機は振動を与えて焼型内のたこ焼きを回転させるので装置から振動音が漏れることが想定される。また重い鉄板が素早く振動するため装置全体から床面を振動が伝わることが想定される。
【0013】
次に、従来の後成型する自動たこ焼き機では確かに最終的にはたこ焼きを球形に成型することができる。しかし、以下の問題がある。
【0014】
第1に装置全体が大きくなるという問題がある。まず、釣鐘状に焼き上げるための第1のたこ焼き機が別途必要となり、さらに当該第1のたこ焼き機からベルトコンベアにより第2のたこ焼き機まで転送し、第2のたこ焼き機で回転させるという大掛かりな装置となってしまう。
【0015】
第2に焼きたてのたこ焼きを得られないという問題がある。焼き上げ自体は、釣鐘状に焼き上げるための第1のたこ焼き機により行なうため、第2のたこ焼き機で成型する工程を経るうちに焼き上げ感が失われてしまう。特に、第1のたこ焼き機は別の場所に設置し、大量にまとめて焼き上げておき、その後第2のたこ焼き機が設置された場所に運び込み、大量にまとめて後成型する運用が想定されるところ、球形に成型された時点では焼き上げ感が失われてしまう。お客に提供される直前に暖めなおすという処置が必要となる。
【0016】
上記問題点に鑑み、本発明は、たこ焼きの回転角を正しく制御することができ、焼きむらのないたこ焼きが自動的かつ連続的に焼き上げることができる自動たこ焼き機を提供することを目的とする。
また、本発明は、装置が大きくなったり重くなったりせず、振動など外部への影響を与えることのない自動たこ焼き機を提供することを目的とする。
また、本発明は、お客の目の前で自動的にたこ焼きを焼き上げ、焼きたてを提供することができる自動たこ焼き機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の自動たこ焼き機は、
底部に発熱体を備え焼型内面が略半球状のたこ焼き型と、
形状が前記たこ焼き型の焼型内面のカーブと略同一のフック部分と前記フック部分を回転させる支軸部分を備え、前記支軸を中心に回転した場合に前記フック部分が前記たこ焼き型の焼型内面に沿って回転するツメと、
前記たこ焼き型にたこ焼き材料を投入する材料投入機構と、
前記たこ焼き型を天地反転させて再び天地を戻す反転機構とを備え、
前記ツメを回転させるツメ回転タイミングを複数個設定し、前記反転機構を作動させる反転機構作動タイミングを一つ設定し、
前記材料投入機構によりたこ焼き材料を前記たこ焼き型に投入後、設定されたツメ回転タイミングが来る度に前記ツメにより前記たこ焼き型内のたこ焼きを略半回転ひっくり返し、前記反転機構作動タイミングが来れば前記たこ焼き型を天地反転させて前記たこ焼きを取り出すことを特徴とする。
【0018】
上記構成により、ツメ回転タイミングが来る度にツメによりたこ焼き型内のたこ焼きを略半回転ひっくり返すことにより振動などによらずたこ焼きをひっくり返して(回転させて)球形状に成型することができ、焼き上がった時点で反転機構により取り出すので自動的に焼きたてのたこ焼きを調理することができる。
【0019】
なお、本願出願人は、たこ焼き型の焼型内面のカーブと略同一の形状を持つフック部分をたこ焼き型の焼型内面に沿って回転させることにより、焼型内において半焼き程度に焼けた生地がうまくひっくり返る(回転する)ことを実験により確認している。発熱体の発熱状況とフック部分を回転させるツメ回転タイミング、ツメ回転タイミングの設定回数なども実験して得ており、きれいな球形状のたこ焼きを自動的に焼き上げることに成功している。
【0020】
次に、本発明の自動たこ焼き機は、上記構成において、
1つの前記たこ焼き型と対応する1つの前記ツメを一対のセットとし、前記セットを複数個並べ、それぞれの前記セットが周回軌跡を描きつつ所定時間で周動する周動機構に組み込まれ、
前記材料投入機構が前記周動機構の材料投入位置に組み込まれ、前記材料投入位置に周動してきた前記たこ焼き型に前記たこ焼き材料を投入し、
前記反転機構が前記周動機構の反転位置に組み込まれ、前記反転位置に周動してきた前記たこ焼き型の天地を反転させて前記たこ焼きを取り出すことが好ましい。
例えば、周回軌跡が垂直面内に描かれた円軌跡である。
【0021】
上記構成によれば、本発明の自動たこ焼き機のたこ焼き型とツメのセットを観覧車型(縦回転型)の周動機構の回転体の周囲に配置し、垂直面内の周回軌跡上を周動するように移動させることにより省スペースの構成とすることができる。周回軌跡を周動させることにより、一回転する時間をたこ焼きの焼き上がり時間となるように設定すれば、所定位置において生地の投入、次の所定位置において具の投入、第1の所定位置において一回目のツメの回転、次の所定位置において二回目のツメの回転というように制御することが可能となり、最後の所定位置において反転機構による取り出しを経て、再び第1の所定位置に戻る構成とすることにより、連続してたこ焼きの自動焼き上げを繰り返す構成とすることができる。
【0022】
なお、前記たこ焼き型の焼型内面から上方に立ち上がる縁部分がテーパー角を持って拡開した形状を備えることが好ましい。
このテーパー角を持つ縁部分を設けることにより次の効果を得ることができる。つまり、たこ焼きは加熱により生地が上方に膨らみ、ひっくり返す(回転させる)ことにより徐々に球状に成型されて行くが、このテーパー角を持つ縁部分を持つことにより、たこ焼き回転のための遊びしろになるとともに、ツメがたこ焼き本体とたこ焼き型の焼型内面の間隙に滑り込むためのリード部分となる。このテーパー角を持つ縁部分を設けることはツメによるたこ焼き回転には有用である。
【0023】
また、前記ツメ回転タイミング前後の期間における、前記ツメの待機位置が前記たこ焼き型の焼型内面の上縁よりやや下方の位置で、前記ツメの待機状態が前記フック部分が略水平となる状態とすることが好ましい。
ツメが回転するときにフック部分がたこ焼きの生地を巻き込むようにしながらたこ焼き型の内面に滑ってゆく。ツメの待機位置がたこ焼きの焼型の縁の上方にある場合よりも、やや下方にありたこ焼きの生地に接している方が、たこ焼きを回転させやすくなる。
【0024】
また、たこ焼き型がツメの待機位置がたこ焼きの焼型の縁のやや下方にある場合には、ツメの回転方向に所定角度、例えば30度傾いていればツメが入り込む位置が断面の円における30度部分であり、たこ焼きの実質的な接地面が150度となりたこ焼きがひっくり返りやすくなる(回転しやすくなる)。また、たこ焼きがツメの巻き込みを迎えに行くような形になってツメを受け入れやすくなる効果も得られる。たこ焼きの焼型の縁の上方にある場合よりも、ツメの回転角度が小さくなり回転するたこ焼きの実質的な接地面が少なくて済むという効果である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の自動たこ焼き機によれば、たこ焼きの回転角などのを正しく制御することができ、焼きむらのないたこ焼きが自動的かつ連続的に焼き上げることができる。
また、本発明の自動たこ焼き機によれば、装置が大きくなったり重くなったりせず、振動など外部への影響を与えることのない、省スペース型の自動機とすることができ、例えばコンビニエンスストア、デパートの店頭やイベント会場などにおくことが可能である。
【0026】
また、本発明の自動たこ焼き機によれば、焼型の部分だけを加熱する装置であるので、鉄板全面を加熱する装置に比べて熱の放散が少なくい。 このことにより、省エネルギーや作業環境改善の効果が得られる。
また、本発明の自動たこ焼き機によれば、例えばコンビニエンスストア、デパートなどの店頭やイベント会場などお客の目の前で自動焼き上げのデモンストレーションをしながら焼きたてのたこ焼きを自動的に生産し、たこ焼きを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
本発明において「たこ焼き」とは、基本的には生地にたこの切り身を入れたものを指すが、生地に入れる具として、たこの切り身以外の他の食材を使用したものをも広く含むものである。つまり、必ずしもたこの切り身が入っていなくとも小麦粉を溶いた生地を球形状に焼き上げたものを「たこ焼き」と称するものとし、これらを自動的に球形に焼き上げる機器も本発明の自動たこ焼き機の技術的範囲に含むものである。
【実施例1】
【0029】
本発明の自動たこ焼き機の一例として垂直面内に円軌跡が描かれるいわゆる観覧車型のものを取り上げて説明する。
【0030】
図1は、本発明の自動たこ焼き機の基本構成を模式的に示した図である。
1は円盤型の周動機構、2はたこ焼き型、3はツメ(詳細は図2に示す)、4は材料投入機構、5は反転機構、6はたこ焼き蓄積部である。なお周動機構のモータなどの駆動機構は図示を省略し、また反転機構5の細かい機構の図示も省略している。
【0031】
図2(a)はたこ焼き型2をYZ平面で切断した断面を模式的に示す図、図2(b)はたこ焼き型2の平面を模式的に示す図である。
図2(a)に示すように、たこ焼き型2はその内面が略半球状をしている。この略半球状の焼型内を生地がひっくり返りつつ(回転しつつ)焼き上げられるのでたこ焼きが球形に仕上がる。
この例では、たこ焼き型2の焼型内面から上方に立ち上がる縁部分21がテーパー角を持って拡開した形状を備えている。この縁部分21は後述するようにたこ焼きが回転する遊びしろとなるとともに、ツメ3がたこ焼き本体とたこ焼き型の焼型内面の間隙に滑り込むためのリード部分となっている。
【0032】
たこ焼き型2の底部には発熱体22が設けられている。この発熱体22は細かい温度調節機能があっても良く、また、細かい温度調節機能はないものの一定の電流量で一定の発熱を継続するものでも良い。
この例では図2(c)に示すように、たこ焼き型2の部分が取り外し可能な構成となっており、焼型23の部分が取り外すことができる構造となっている。これは焼型23の部分のメンテナンスあるいは交換が容易となるような工夫である。
【0033】
ツメ3は、図2(a)に示すように、その形状がたこ焼き型2の焼型23内面のカーブと略同一のフック部分31とフック部分31を回転させる支軸部分32を備えた構造となっている。フック部分31の太さは限定されないが細すぎると機械的強度が不足し、太すぎるとたこ焼きがうまくひっくり返らず(回転せず)にたこ焼きの形状が潰れてしまう恐れがある。例えば1〜3mm程度とする。
なお、フック部分31の形状は、上記の機能を備えるものであれば、種々の変形が可能である。
【0034】
本発明の自動たこ焼き機では、1つのたこ焼き型2と対応する1つのツメ3を一対のセットとし、当該セットを複数個並べた構成となっており、それぞれのセットが周回軌跡を描きつつ所定時間で周動するよう周動機構に組み込まれた構成となっている。たこ焼き型2とツメ3のセットは、通常正立状態(略半球状の焼型内面の当該半球上面が水平となっている状態)が保たれたまま周動機構によりぐるりと周回するように運動する。また、たこ焼き型2は、正立状態からツメ3の回転方向ある逆回転方向に所定角度傾けた状態で周回させることもできる。
【0035】
ツメ3はツメ回転タイミングが来ると支軸32を中心に回転し、フック部分31がたこ焼き型の焼型23内面に沿って回転する構造となっている。図3はツメ3が回転し、たこ焼き10を回転させる様子を模式的にYZ平面で切断した断面を模式的に示す図及び平面を模式的に示す図である。
ツメ回転タイミングが来るまでは、ツメ3はたこ焼き型2の縁部分21のテーパー角によるスペースのツメ待機位置にある(図3(a))。ツメ3の待機状態はフック部分が略水平となる状態となっている。
【0036】
このように、ツメ回転タイミング前後の期間におけるツメ3の待機位置や待機状態を図3(a)のようにする理由は、たこ焼き10がツメ3に引っ付くことを防止するためである。たこ焼きの生地は焼かれることで膨らむものであり、また、回転を繰り返して球形状に成型されて行くので上方にも丸く膨らんだ形状となっている。この状態でツメ3が図3(a)のツメ待機位置ではなくたこ焼き10の上方に位置するとたこ焼き10がツメ3に引っ付く恐れがあるからである。
【0037】
ツメ3の動作説明を続ける。後述するように周動機構の回転によりたこ焼き型が周回軌跡に設定された所定位置に来るタイミングがそれぞれツメ回転タイミングと設定されており、ツメ3が支軸部分32を中心に回転を始める。ツメ3がたこ焼き10とたこ焼き型の焼型23内面の間隙に滑りつつたこ焼き10を押し回す(図3(a)→図3(b)→図3(c))。
【0038】
ツメ3がたこ焼き10とたこ焼き型の焼型23内面の間を通り抜け、たこ焼き型2の反対側の縁部分21の下方に移る(図3(c))。その後、再び元の待機位置に戻る(図3(a))。この一連の動きによりたこ焼きは略半回転ひっくり返ることとなり、ツメ回転タイミングが来るたびにたこ焼き10は略半回転ひっくり返りつつ焼き上げられる。
【0039】
図1に戻って説明を続ける。材料投入機構4はたこ焼き型2にたこ焼き材料を投入する。この構成例では、小麦粉を溶いた生地の投入と、たこの切り身などの具の投入を分けて行なう構成となっている。
この構成例では、第1の材料投入機構41はタンク状の容器を備え、内部に小麦粉を溶いた生地が蓄えられている。図示しない注出機構(例えばポンプ)によりたこ焼きの調理に適した量の生地が注出され、第1の材料投入機構41の投入位置にたこ焼き型2が来たときにパイプを介してたこ焼き型の焼型23内に生地が投入される構成となっている。
【0040】
また、この構成例では、第2の材料投入機構42はパイプ状の容器を備え、内部にペレット状のたこの切り身などの具が蓄えられている。図示しない取り出し機構によりたこ焼きの調理に適した量の具が取り出され、第2の材料投入機構42の投入位置にたこ焼き型2が来たときにパイプを介してたこ焼き型の焼型23内に具が投入される構成となっている。
なお、たこの切り身などの具の供給方式はペレット状の供給スタイルに限定されず多様な方式を適用することができる。例えば、ソーセージのように腸詰の形でスタックしておいて投入時に切断して供給する方式なども適用することができる。
【0041】
反転機構5は、たこ焼き型2の天地を反転させて再び天地を戻す機構である。
図4は反転機構5によりたこ焼き型2の天地が反転させられ、中の焼きあがったたこ焼き10が取り出される様子を模式的に示した図である。後述するように周動機構の回転によりたこ焼き型が周回軌跡の所定位置に来るタイミングが反転機構作動タイミングと設定されており、反転機構5が回転するとたこ焼き型2が反転を始める。図示しないモータなどの機構によりたこ焼き型2を回転させその天地を一時的に逆にする。(図4(a))。たこ焼き型2の天地が逆になると中で焼き上がっているたこ焼き10が転がり出してくる(図4(b))。その後反転機構5によりたこ焼き型2の天地が元に戻される(図4(c))。
【0042】
なお、転がり出したたこ焼き10はたこ焼き蓄積部6において蓄えられる。なお、たこ焼き蓄積部6は焼き上がったたこ焼き10が冷めないように発熱機構を内蔵しておくことも好ましい。
【0043】
次に、自動たこ焼き機によるたこ調理過程の概要を追って説明する。
図5は図1と同様の自動たこ焼き機の基本構成を模式的に示した図であるが、たこ焼き型2の周回軌跡において、第1の材料投入機構41による生地投入タイミングが訪れる位置110、第2の材料投入機構42による具投入タイミングが訪れる位置120、ツメ回転タイミングが訪れる位置131〜136と、反転機構作動タイミングが訪れる位置140の各位置が模式的に図示されている。なお、この構成例ではツメ回転タイミングが6個設定されているが、たこ焼きの焼き具合いや発熱体の設定温度、周動速度の関係からツメ回転タイミングの設定回数、やインターバル時間を調整することができることは当然である。この例では生地表面を焼き固めるために生地投入タイミング位置110と最初のツメ回転タイミング131の期間は長く確保されており、また、生地表面の残り半分を焼き固めるために2回目のツメ回転タイミング132の期間も長く確保されている。
この例では、周動機構1の周回速度は5分/周であり、たこ焼き型2が5分かけてゆっくりと周回軌跡を1周する。
【0044】
以下に各タイミングにおける各部の働きをもう少し詳しく見る。
まず、たこの調理はたこ焼き型2が位置140を通過した後、生地投入タイミングが訪れる位置110までの期間100Tにおいて、必要に応じてたこ焼き型2の簡単な清掃や油引きなどを行なう。
【0045】
たこ焼き型2が周回軌跡に沿って周動して位置110に達したとき、周動機構1の周回速度の関係から生地投入タイミングとなるよう設計されているものとする。第1の材料投入機構41は位置110に達したたこ焼き型2の焼型23の内部にパイプを介して生地を流し込む。
【0046】
次に、たこ焼き型2が周回軌跡に沿って周動して位置120に達したとき、周動機構1の周回速度の関係から具投入タイミングとなるよう設計されているものとする。第2の材料投入機構42は位置120に達したたこ焼き型2の焼型23の内部にパイプを介して具を投入する。
【0047】
次に、たこ焼き型2が周回軌跡に沿って周動して位置131に達したとき、周動機構1の周回速度の関係からツメ回転タイミングとなるよう設計されているものとする。ツメ3は図3に示したように回転し、たこ焼き10を略半回転ひっくり返す。なお、初回のツメ回転タイミング直前では生地はまだ半球状の形状にしか焼かれていないが、初回のツメ3の回転により生地が略半回転ひっくり返ることによりお椀を伏せるように生地が回転させられることとなる。位置120から位置131までの期間131Tの時間は発熱体22により生地が焼かれて回転に適する程度まで焼かれるに必要な時間が確保されるように設計されているものとする。
【0048】
次に、たこ焼き型2が周回軌跡に沿って周動して位置132に達したとき、周動機構1の周回速度の関係から2度目のツメ回転タイミングとなるよう設計されているものとする。ツメ3は再び図3に示したように回転し、たこ焼き10を略半回転ひっくり返す。同様に位置131から位置132までの期間132Tの時間は発熱体22により生地が焼かれて次の生地回転に適する程度まで焼かれるに必要な時間が確保されるように設計されているものとする。
【0049】
このように、たこ焼き型2が周回軌跡に沿って周動して位置133、位置134、位置135、位置136に達したとき、3度目〜6度目のツメ回転タイミングとなるように設計されており、同様にツメ3は図3に示したように回転し、たこ焼き10を略半回転ひっくり返す。この数度にわたるツメ回転に連動したフック部分31の動作によりたこ焼き10が球形状にきれいに丸まって行く。
【0050】
次に、たこ焼き型2が周回軌跡に沿って周動して位置140に達したとき、周動機構1の周回速度の関係から反転機構作動タイミングとなるよう設計されているものとする。反転機構が作動してたこ焼き型2の天地を逆にし、たこ焼き型2から焼きあがったたこ焼き10が取り出される。取り出されたたこ焼き10はたこ焼き蓄積部6に蓄えられる。
【0051】
以上の一連の調理過程を経てたこ焼きが調理される。
位置140の後、たこ焼き型の周回軌跡が再び期間100Tを経て位置110に戻る構成とすることにより、連続してたこ焼きの自動焼き上げを繰り返す構成とすることができる。
【0052】
なお、上記構成例は、たこ焼き型2の周回軌跡が垂直面内に描かれた円軌跡である例であるが、本発明の自動たこ焼き機はたこ焼き型2の周回軌跡としては様々なものが可能である。例えばたこ焼き型2の周回軌跡が水平面内に描かれる円軌跡が挙げられる。また、例えばたこ焼き型2の周回軌跡が水平面内に描かれる楕円軌跡が挙げられる。
なお、たこ焼き型2の周回軌跡が垂直面内に描かれた円軌跡であれば、省スペースの構成とすることができる。
【実施例2】
【0053】
図6はたこ焼き型2とツメ3を傾かせた場合の効果を分かりやすいように説明する図である。
【0054】
第1の効果は、ツメ3のフック部分31がたこ焼きの生地を巻き込みやすくなるという効果である。図6(a)に示すようにツメ3が回転するときにフック部分31がたこ焼きの生地を巻き込むようにしながらたこ焼き型2の内面を滑ってゆく。ツメ3の待機位置がたこ焼きの焼型2の上縁の上方ある場合よりもやや下方でたこ焼きの生地に接している方がたこ焼きの生地を巻き込みやすくなる。
【0055】
第2の効果は、回転するたこ焼きの実質的な接地面が少なくなるという効果である。ツメ3の待機位置がたこ焼きの焼型2の上縁の上方ある場合にはフック部分31がたこ焼きとたこ焼き型2内面の間に入り込んでから抜け出るまでに180度以上の接地面を有するたこ焼きをひっくり返さねばならないが、たこ焼き型がツメの回転方向に所定角度、例えば所定角度傾いて下方に待機していればツメが移動し回転させるたこ焼きの実質的な接地面が180度以下となりたこ焼きが回転しやすくなる(図6(a)→図6(b)→図6(c))。
なお、本実施例2の構成ではツメ回転タイミング以外の期間における、ツメの待機状態は実施例1のようにフック部分が略水平ではなく、所定角度傾いた状態となる。この例では約30度傾いた状態となる。
【実施例3】
【0056】
実施例3として、外装を施した製品外観の一例を示しておく。
図7は外装を施した製品外観の一例である。内部に本発明の自動たこ焼き機が組み込まれている。外装の一部は外からたこ焼きが焼き上がってゆく様子が見えるように透明なケースとなっている。この例ではたこ焼き型2の周回軌道が見えるように前面の一部が透明なケースとなっている。
なお、本発明の自動たこ焼き機の外装の例は図7に限られないことは言うまでもない。
【0057】
上記の各実施例では、たこ焼き型の周回軌跡が垂直面内の円軌跡である構成例を示したが、例えば、垂直面内の楕円軌跡、水平面内の円軌跡や楕円軌跡などがあり得る。
【0058】
以上、本発明の自動たこ焼き機の構成例における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の自動たこ焼き機は、自動的に適宜ひっくり返して(回転させて)球状のたこ焼きを焼き上げて取り出す、自動たこ焼き機に適用できる。例えば、コンビニエンスストア、デパートの店頭やイベント会場などに設置し、お客の目の前で自動的かつ連続的にたこ焼きを焼き上げる装置に適用される。
本発明の自動たこ焼き機において、「たこ焼き」とは、基本的には生地にたこの切り身を入れたものを指すが、生地に入れる具として、たこの切り身以外の他の食材を使用したものを焼き上げる装置にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の自動たこ焼き機の基本構成を模式的に示した図
【図2】たこ焼き型2をYZ平面で切断した断面および平面図を模式的に示す図
【図3】ツメ3が回転し、たこ焼き10を回転させる様子を模式的にYZ平面で切断した断面および平面を模式的に示す図
【図4】反転機構5によりたこ焼き型2の天地が反転させられ、中のたこ焼き10が取り出される様子を模式的に示した図
【図5】周回軌跡において調理タイミングを示した図
【図6】たこ焼き型2とツメ3を傾かせた場合の効果を分かりやすいように説明する図
【図7】外装を施した製品外観の一例を示す図
【図8】従来のたこ焼き機の一例を示した図
【図9】特開2000−14311号に開示された従来の揺動式自動回転たこ焼き機の概略を示した図
【図10】特開2002−204678号に開示された従来の後成型する自動たこ焼き機の概略を示す図
【符号の説明】
【0061】
1 円盤型の周動機構
2 たこ焼き型
3 ツメ
4 材料投入機構
5 反転機構
6 たこ焼き蓄積部
21 縁部分
22 発熱体
23 焼型
31 フック部分
32 支軸部分
41 第1の材料投入機構
42 第2の材料投入機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に発熱体を備え焼型内面が略半球状のたこ焼き型と、
形状が前記たこ焼き型の焼型内面のカーブと略同一のフック部分と前記フック部分を回転させる支軸部分を備え、前記支軸を中心に回転した場合に前記フック部分が前記たこ焼き型の焼型内面に沿って回転するツメと、
前記たこ焼き型にたこ焼き材料を投入する材料投入機構と、
前記たこ焼き型を天地反転させて再び天地を戻す反転機構とを備え、
前記ツメを回転させるツメ回転タイミングを複数個設定し、前記反転機構を作動させる反転機構作動タイミングを一つ設定し、
前記材料投入機構によりたこ焼き材料を前記たこ焼き型に投入後、設定されたツメ回転タイミングが来る度に前記ツメにより前記たこ焼き型内のたこ焼きを略半回転ひっくり返し、前記反転機構作動タイミングが来れば前記たこ焼き型を天地反転させて前記たこ焼きを取り出すことを特徴とする自動たこ焼き機。
【請求項2】
1つの前記たこ焼き型と対応する1つの前記ツメを一対のセットとし、前記セットを複数個並べ、それぞれの前記セットが周回軌跡を描きつつ所定時間で周動する周動機構に組み込まれ、
前記材料投入機構が前記周動機構の材料投入位置に組み込まれ、前記材料投入位置に周動してきた前記たこ焼き型に前記たこ焼き材料を投入し、
前記反転機構が前記周動機構の反転位置に組み込まれ、前記反転位置に周動してきた前記たこ焼き型の天地を反転させて前記たこ焼きを取り出す請求項1に記載の自動たこ焼き機。
【請求項3】
前記周回軌跡が垂直面内に描かれた円軌跡である請求項2に記載の自動たこ焼き機。
【請求項4】
前記たこ焼き型の焼型内面から上方に立ち上がる縁部分がテーパー角を持って拡開した形状を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動たこ焼き機。
【請求項5】
前記ツメ回転タイミング前後の期間における、前記ツメの待機位置が前記たこ焼き型の焼型内面の上縁よりやや下方の位置で、前記ツメの待機状態が前記フック部分が略水平となる状態である請求項1から4のいずれかに記載の自動たこ焼き機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−86537(P2008−86537A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270214(P2006−270214)
【出願日】平成18年9月30日(2006.9.30)
【出願人】(500518153)
【Fターム(参考)】