説明

自動はんだ付け装置及び搬送装置

【課題】基板を所定の位置に固定してはんだ付け処理部に搬送できるようにする。
【解決手段】プリント基板W1を挟持する搬送爪10と、搬送爪10をヒータ部4からはんだ槽5へ駆動する搬送チェーン15と、搬送チェーン15をヒータ部4に沿って案内する第1のフレーム9Aと、搬送チェーン15をはんだ槽5に沿って案内する第2のフレーム9Bと、第1のフレーム9Aと第2のフレーム9Bとの間に設けられて、第1及び第2のフレーム9A,9Bと搬送チェーン15との熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材124とを備える。吸収部材124は、第1及び第2のフレーム9A,9Bと搬送チェーン15との熱膨張の差による伸縮を吸収するので、第1及び第2のフレーム9A,9Bから搬送チェーン15がずれることを防止できる。これにより、プリント基板W1を所定の位置に固定してヒータ部4及びはんだ槽5に搬送できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等をはんだ処理部に搬送させてはんだ付けを行う自動はんだ付け装置及び搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、テレビジョン装置等の表示装置及びビデオデッキ等の録画再生装置のような家電製品に組み込むプリント基板のはんだ付けは、当該プリント基板を大量に、かつ安価に生産するためにフロー法で行うことが多い。
【0003】
フロー法は、プリント基板全面に一度にはんだ付けを行うことができるため、他のはんだ付けに比べて大量生産に優れたはんだ付け方法である。フロー法によってはんだ付けを行う自動はんだ付け装置には、プリヒータ、はんだ槽及び冷却機等の各種処理装置が設けられる。また、これらの処理装置にはプリント基板を搬送する搬送チェーンとこの搬送チェーンを当該処理装置に案内するフレームとを有する搬送部が設けられる。このような自動はんだ付け装置は、フラクサ等によってフラックスが塗布されたプリント基板を搬送チェーンで搬送しながらプリヒータで予備加熱をし、はんだ槽ではんだを付着させ、冷却機でプリント基板を冷却することによりプリント基板の所定箇所にはんだを形成させることができる。
【0004】
プリント基板の所定箇所に精度良くはんだを形成させなければ、所定箇所以外にはんだが付着されるブリッジ不良や所定箇所にはんだが付着されない未はんだ不良が発生してしまう。そのため、自動はんだ装置にはプリント基板を確実に所定の位置に固定して搬送する搬送部が必要である。
【0005】
しかしながら、自動はんだ付け装置には、プリヒータによる予備加熱工程及びはんだ槽によるはんだ付着工程を行うため搬送部が加熱され、その搬送部を構成するチェーンとフレームとの熱膨張の差によって伸縮が生じ、搬送部に搬送されるプリント基板の位置が所定の位置からずれてしまう問題がある。
【0006】
特許文献1には、フレーム内部に冷却ダクト設けたはんだ付け搬送装置が開示されている。このはんだ付け搬送装置によれば、フレームの内部に冷却ダクトを設け、この冷却ダクトに空気や水等の冷却用流体を供給して通過させるものである。これにより、プリヒータ及びはんだ槽によって加熱されるフレームを強制的に冷却できる。
【0007】
特許文献2には、搬送部の伸縮によるずれを吸収するずれ吸収手段を設けた自動はんだ付け用搬送装置が開示されている。この自動はんだ付け用搬送装置によれば、はんだ処理装置の外側に設けられる一対のフレームと、この一対のフレーム間に掛け渡して設けられる支持バーと、この支持バーと一対のフレームとの間に設けられフレームの伸縮によるずれを吸収するずれ吸収手段とを備えたものである。これにより、プリヒータ及びはんだ槽によって加熱されるフレームの熱変形を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平3−2375号(第1図)
【特許文献2】特開平9−69681号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1によれば、フレームを冷却するにはフレーム内部に設けた冷却ダクトに冷却用流体を供給させなければならないため、はんだ付け搬送装置がコストアップしてしまうという問題がある。特許文献2によれば、フレームと支持バーとの熱膨張の差によるずれを吸収するだけであり、フレームとチェーンとの熱膨張の差による伸縮は考慮されていない。このため、基板を確実に所定の位置に固定してはんだ処理部に搬送することができないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上述の課題を解決したものであって、基板を確実に所定の位置に固定してはんだ処理部に搬送できる自動はんだ付け装置及び搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る自動はんだ付け装置は、基板に所定の温度で熱処理を行う熱処理部と、熱処理部によって熱処理された基板にはんだ付け処理を行うはんだ処理部と、基板を熱処理部からはんだ処理部へ搬送する搬送部とを備え、搬送部は、基板を挟持する複数の搬送爪と、搬送爪が取り付けられ、基板を挟持した搬送爪を熱処理部からはんだ処理部へ移動自在に駆動する搬送チェーンと、第1の摺動部を有して、当該第1の摺動部によって摺動される搬送チェーンを熱処理部に沿って案内する一対の第1のフレームと、第1の摺動部から連動されてくる搬送チェーンを摺動する第2の摺動部を有して、第1のフレームに連設され、当該第2の摺動部によって摺動される搬送チェーンをはんだ処理部に沿って案内する一対の第2のフレームと、第1のフレームと第2のフレームとの間に設けられて、第1及び第2のフレームと搬送チェーンとの熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材とを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る搬送装置は、被搬送物体に第1の熱処理を行う系を第1の熱処理系とし、第1の熱処理系によって第1の熱処理をされた被搬送物体に第2の熱処理を行う系を第2の熱処理系としたとき、被搬送物体を挟持する複数の搬送爪と、搬送爪が取り付けられ、被搬送物体を挟持した搬送爪を第1の熱処理系から第2の熱処理系へ移動自在に駆動する搬送チェーンと、第1の摺動部を有して、当該第1の摺動部によって摺動される搬送チェーンを第1の熱処理系に沿って案内する一対の第1のフレームと、第1の摺動部から連動されてくる搬送チェーンを摺動する第2の摺動部を有して、第1のフレームに連設され、当該第2の摺動部によって摺動される搬送チェーンを第2の熱処理系に沿って案内する一対の第2のフレームと、第1のフレームと第2のフレームとの間に設けられて、第1及び第2のフレームと搬送チェーンとの熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材とを備えることを特徴とする搬送装置。
【0013】
本発明に係る自動はんだ付け装置及び搬送装置によれば、複数の搬送爪は基板を挟持する。搬送チェーンは、搬送爪が取り付けられ、基板を挟持した搬送爪を熱処理部からはんだ処理部へ移動自在に駆動する。一対の第1のフレームは、第1の摺動部を有して、当該第1の摺動部によって摺動される搬送チェーンを熱処理部に沿って案内する。一対の第2のフレームは、第1の摺動部から連動されてくる搬送チェーンを摺動する第2の摺動部を有して、第1のフレームに連設され、当該第2の摺動部によって摺動される搬送チェーンをはんだ処理部に沿って案内する。これを前提にして、吸収部材は第1のフレームと第2のフレームとの間に設けられて、第1及び第2のフレームと搬送チェーンとの熱膨張の差による伸縮を吸収するので、熱処理及びはんだ付け処理時に生じる熱によって第1及び第2のフレームと搬送チェーンとが加熱されても、第1及び第2のフレームから搬送チェーンがずれることを防止できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る自動はんだ付け装置及び搬送装置によれば、第1及び第2のフレームと搬送チェーンとの熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材が第1のフレームと第2のフレームとの間に設けられるので、熱処理及びはんだ付け処理時に生じる熱によって第1及び第2のフレームと搬送チェーンとが加熱されても、第1及び第2のフレームから搬送チェーンがずれることを防止できる。これにより、基板を所定の位置に固定して熱処理部及びはんだ処理部に搬送できる。この結果、所定箇所以外にはんだが付着されるブリッジ不良や所定箇所にはんだが付着されない未はんだ不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係る自動はんだ付け装置1の構成例を示す平面図である。
【図2】自動はんだ付け装置1の構成例を示す正面図である。
【図3】搬入部7の構成例を示す正面図である。
【図4】(A)は、つば付チェーン71の構成例を示す正面図であり、(B)は、その右側面図である。
【図5】搬送爪10の構成例を示す斜視図である。
【図6】(A)は、搬送爪10の構成例を示す正面図であり、(B)は、その右側面図である。
【図7】(A)は、搬入部7と搬送部3の要部構成例及び動作例を示す正面図であり、(B)は、その平面図である。
【図8】フレーム接合部の要部構成例を示す平面図である。
【図9】図8のA−A線で切断したフレーム9A,9Bと搬送チェーン15との関係例を示す左側面断面図である。
【図10】図8のB−B線で切断した一対のフレーム9A,9Bの関係例を示す左側面断面図である。
【図11】(A)は、図8のC−C線で切断したフレーム9Aとフレーム9Bの接合例を示す正面断面図であり、(B)は、(A)の加熱時におけるフレーム9A,9Bの伸びを示す正面断面図である。
【図12】(A)は、対向する搬送爪10が一致しないときの搬送部3の他端の要部構成例及び動作例を示す平面図であり、(B)は、対向する搬送爪10が一致するときの搬送部3の他端の要部構成例及び動作例を示す平面図である。
【図13】図12のD−D線で切断した固定/固定解除部13の構成例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る自動はんだ付け装置の実施形態の一例を説明する。
本実施の形態に係る自動はんだ付け装置1は、被搬送物体であるプリント基板W1に所定の温度で熱処理を行う熱処理部(第1の熱処理系)であるヒータ部4と、ヒータ部4によって熱処理されたプリント基板W1にはんだ付け処理を行うはんだ処理部(第2の熱処理系)であるはんだ槽5と、プリント基板W1をヒータ部4からはんだ槽5へ搬送する搬送部3とを備える。
【0017】
搬送部3は、プリント基板W1を挟持する複数の搬送爪10と、搬送爪10が取り付けられ、プリント基板W1を挟持した搬送爪10をヒータ部4からはんだ槽5へ移動自在に駆動する搬送チェーン15,15’と、第1の摺動部91Aを有して、当該第1の摺動部91Aによって摺動される搬送チェーン15,15’をヒータ部4に沿って案内する一対の第1のフレーム9Aと、第1の摺動部91Aから連動されてくる搬送チェーン15,15’を摺動する第2の摺動部91Bを有して、第1のフレーム9Aに連設され、当該第2の摺動部91Bによって摺動される搬送チェーン15,15’をはんだ槽5に沿って案内する一対の第2のフレーム9Bと、第1のフレーム9Aと第2のフレーム9Bとの間に設けられて、第1及び第2のフレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’との熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材124とを備える。
【0018】
これを前提にして、吸収部材124は、第1のフレーム9Aと第2のフレーム9Bとの間に設けられて、第1及び第2のフレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’との熱膨張の差による伸縮を吸収するので、ヒータ部4及びはんだ槽5での処理時に生じる熱によって第1及び第2のフレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’とが加熱されても、第1及び第2のフレーム9A,9Bから搬送チェーン15,15’がずれることを防止できる。これにより、プリント基板W1を所定の位置に固定してヒータ部4及びはんだ槽5に搬送できる。この結果、所定箇所以外にはんだが付着されるブリッジ不良や所定箇所にはんだが付着されない未はんだ不良を低減することができる。
【0019】
[自動はんだ付け装置1の構成例]
図1及び図2に示すように、自動はんだ付け装置1は、プリント基板W1に所定の温度で熱処理を行うヒータ部4、ヒータ部4によって熱処理されたプリント基板W1に、はんだ付け処理を行うはんだ槽5及びプリント基板W1をヒータ部4からはんだ槽5へ搬送する搬送装置である搬送部3で構成される。さらに、自動はんだ付け装置1は、プリント基板W1を搬送部3に搬入する搬入部7及びはんだ槽5ではんだが付着されたプリント基板W1を冷却する冷却部6を備える。
【0020】
ヒータ部4は、プリント基板W1が自動はんだ付け装置1に投入される前の工程であるフラクサ工程でフラックスが塗布された当該プリント基板W1を乾燥させ、かつ、後述するはんだ槽5によるはんだ付けを行う際、プリント基板W1にはんだを付着させる度合いであるはんだの付着力を向上させるために当該プリント基板W1を加熱する。ヒータ部4は、例えば、搬送されるプリント基板W1に対して上下方向に設けられ、かつ、プリント基板W1の搬送方向に並んで4つ設けられており、ヒータ部4のそれぞれが温度調節可能になっている。
【0021】
ヒータ部4にははんだ槽5が隣接して設けられる。はんだ槽5には溶融はんだが収容される。溶融はんだは、例えば、鉛フリーはんだであり、錫−銀−銅や錫−亜鉛−ビスマス等で構成されたものであり、その融点は180℃〜220℃程度を有する。はんだ槽5は、搬送されたプリント基板W1に溶融はんだを均一の高さで噴きつけるようになされる。
【0022】
はんだ槽5には冷却部6が隣接して設けられる。冷却部6は、当該冷却部6を構成する図示しないファンによる送風をプリント基板W1に送り、ヒータ部4及びはんだ槽5にて加熱されたプリント基板W1を冷却する。プリント基板W1を冷却部6で冷却することで、プリント基板W1に付着させたはんだに生じるクラック等を防ぐことができる。
【0023】
[搬入部7の構成例]
図3に示すように、搬入部7は、つば付チェーン71、駆動ギア72、張力調整ギア73、固定ギア74,74’及び固定プレート75を備える。搬入部7は、プリント基板W1を搬送部3に搬入する機能を有する。
【0024】
固定プレート75には駆動ギア72及び固定ギア74,74’が固定される。駆動ギア72及び固定ギア74,74’にはつば付チェーン71が巻き回される。固定プレート75には張力調整ギア73が上下方向に移動可能に設けられ、当該張力調整ギア73は、自身が上下方向に移動することにより、つば付チェーン71の張力を調整する。張力調整ギア73は、つば付チェーン71に当接しながら上方に移動することで、つば付チェーン71にかかる張力を大きくする。また、張力調整ギア73は、下方に移動することで、つば付チェーン71にかかる張力を小さくする。
【0025】
駆動ギア72には図示しないモータが接続され、当該モータを駆動させることで駆動ギア72が回転する。駆動ギア72が回転すると共に、つば付チェーン71で連結された固定ギア74,74’が回転する。つば付チェーン71を構成するピン79上にプリント基板W1の底面を当接させてプリント基板W1が搬送部3に搬入される。
【0026】
図4(A),(B)に示すように、つば付チェーン71は、つば77、プレート78、ピン79及びチェーン本体部80で構成される。プレート78上部にはつば77が設けられる。プレート78とチェーン本体部80はピン79によって固定される。つば77はプレート78に対して角度αだけ傾斜して形成される。つば77がプリント基板W1の搬入方向に対して外側に傾斜しているため、プリント基板W1を搬入部7に配置し易くなる。
【0027】
つば付チェーン71には、前工程であるフラックス塗布工程でフラックスがプリント基板W1を介して付着することがある。つばを有していない通常のチェーンであると、このフラックスが図7(B)で示す搬入部7の側壁76に大量に付着する。その結果、側壁7がチェーンを構成するピン上で滑ってしまい、当該プリント基板W1を搬送部3に搬入することが困難であった。また、そのピン上での滑りを解消するために頻繁に清掃する必要があった。
【0028】
本発明によるつば付チェーン71を搬入部7に設けることにより、フラックスはつば77に付着するので、搬入部7の側壁76へのフラックスの付着量を大幅に減少させることができる。大量のフラックスがつば付チェーン71のつば77に付着しても、当該つば77がつば付チェーン71によってプリント基板W1と共に移動するので、搬送部3に確実にプリント基板W1を搬入することができる。また、つば付チェーン71及び搬入部7の側壁76を清掃する頻度を減らすことができる。
【0029】
[搬送部3の構成例]
図1及び図2に示したように、搬送部3は、搬送チェーン15,15’、搬送爪10、第1のフレーム(以下、フレーム9Aという)、第2のフレーム(以下、フレーム9Bという)、及び吸収部材124で構成される。さらに、搬送部3は、補強フレーム11、フレーム支持部12、固定/固定解除部13及び搬送ギア14a,14b,14cを備える。搬送部3は、搬入部7によって搬入されたプリント基板W1をヒータ部4からはんだ槽5を経由して冷却部6に搬送する機能を有する。
【0030】
搬送チェーン15,15’は、搬送ギア14aと固定/固定解除部13、搬送ギア14bと搬送ギア14cにそれぞれ巻き回される。搬送チェーン15,15’は搬送爪10が取り付けられ、搬送爪10をヒータ部4からはんだ槽5へ移動自在に駆動するようになされる。搬送チェーン15,15’は、鉄やその合金等で形成される。
【0031】
図5に示すように、搬送爪10は、爪本体部21、突出部23、爪支持部24及びフランジ部25で構成される。搬送爪10は、プリント基板W1を搬送してはんだ付けをするために、プリント基板W1の左右両端側を挟持しながらヒータ部4、はんだ槽5及び冷却部6に搬送するための爪である。
【0032】
搬送爪10は、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂であり、金型によって成形されたもので、略L字形状の板体である。搬送爪10の上部には図5に示すように右側方向に伸びるフランジ部25が形成される。このフランジ部25内には金属性の雌ネジ26が一対埋め込まれる。搬送爪10は、これらの雌ネジ26を使用して搬送チェーン15,15’に取り付けられて固定される。搬送チェーン15,15’に取り付けられた搬送爪10は、爪と爪との間が狭いので、プリント基板W1が撓んでいても当該プリント基板W1を確実に保持することができる。
【0033】
フランジ部25には爪支持部24が設けられる。爪支持部24はフランジ部25から下方向に延在される。爪支持部24には突出部23を介して爪本体部21が設けられる。爪本体部21はハの字形状の開口部を有し、図6(A)に示すように、爪本体部21の左右両端はその中央部よりも広く開口される。また、搬送爪10は、図6(B)に示すように、その上方先端面に対して下方先端面の方が多少前方に突出している。これはプリント基板W1を挟持し易くするためである。搬送爪10をL字形状にして突出部23を設けているのは、プリント基板W1に実装される部品にはコネクタのようにプリント基板W1端より突出した状態で取り付けられる部品があり、この部品と搬送爪10が干渉しないようにするためである。
【0034】
図7(A),(B)に示すように、搬入部7は、つば付チェーン71によってプリント基板W1を搬送部3に搬入する。前述のように搬送部3を構成する搬送ギア14a,14bは搬送チェーン15,15’に巻き回されており、搬送チェーン15,15’には搬送爪10が取り付けられる。
【0035】
搬送ギア14a,14bが回転すると共に、搬送爪10が有する爪本体部21が、搬入部7から搬送部3に搬入されたプリント基板W1の端を挟持する。爪本体部21の左右両端はその中央部よりも広く開口されるので、つば付チェーン71の高さと爪本体部21との高さとが多少ずれていても、搬送爪10は、搬入部7から搬入されたプリント基板W1を確実に挟持することができる。これにより、本発明に係る搬送爪10は、プリント基板W1のくわえ込みミスが低減され、プリント基板W1を確実に挟持することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、突出部23を設けたL字形状を有する搬送爪10を説明したが、プリント基板W1端より突出した状態で部品を取り付けない場合には、突出部23を設けずにストレート形状にしても良い。これにより、より広い基板幅を有するプリント基板W1を挟持することができる。
【0037】
図8に示すように、搬送チェーン15,15’をヒータ部4及びはんだ槽5に案内するフレームは、フレーム9Aとフレーム9Bとに分割される。フレーム9Aは、図9に示すように、第1の摺動部(以下、摺動部91Aという)を有して、当該摺動部91Aによって摺動される搬送チェーン15,15’をヒータ部4に沿って案内する。フレーム9Bは、摺動部91Aから連動されてくる搬送チェーン15,15’を摺動する第2の摺動部(以下、摺動部91Bという)を有して、フレーム9Aに連設され、当該摺動部91Bによって摺動される搬送チェーン15,15’をはんだ槽5に沿って案内する。
【0038】
フレーム9A,9Bはアルミニウム等で形成される。フレームは、ヒータ部4とはんだ槽5との間で分割されることが好ましい。この理由は、自動はんだ付け装置1で発生する熱ははんだ槽5から発生する熱が一番大きいので、はんだ槽5付近のフレーム9A,9B及び搬送チェーン15,15’が熱膨張によって大きく変形してしまうからである。
【0039】
図8及び10に示すように、フレーム9Aとフレーム9Bとの間には当該フレーム9A,9Bを支持するフレーム支持部12が設けられる。フレーム支持部12には一対の補強フレーム11が設けられる。補強フレーム11はアルミニウム等で形成されており、フレーム9A,9Bの強度を補強する。フレーム支持部12は、フレーム支持シャフト121、基板幅調整シャフト122及びシャフト支持部123で構成される。
【0040】
フレーム支持シャフト121と基板幅調整シャフト122は略並行に設けられてシャフト支持部123に固定される。フレーム支持シャフト121は、一対のフレーム9A,9B及び一対の補強フレーム11を固定する。シャフト支持部123は図11で後述する吸収部材124を介してフレーム9A,9Bを固定する。基板幅調整シャフト122は、プリント基板W1の基板幅を調整する際、自動はんだ付け装置1の所定の箇所に設けられた図示しない基板幅調整ハンドルに接続される。基板幅調整ハンドルを回すと、当該基板幅調整ハンドルに接続された基板幅調整シャフト122が回転してフレーム9A,9Bが基板幅方向に移動する。これにより、プリント基板W1を搬送させる搬送部3の搬送幅は、プリント基板W1の幅に合わせて調整することができる。
【0041】
図11(A)に示すように、フレーム9Aとフレーム9Bとの間には吸収部材124が設けられる。吸収部材124は、ヒータ部4とはんだ槽5との間に位置する。吸収部材124は、吸収シャフト125及び吸収ブッシュ126A,126Bで構成される。吸収シャフト125は、前記シャフト支持部123に固着されると共に、その一部には吸収ブッシュ126A、他部には吸収ブッシュ126Bが設けられ、吸収ブッシュ126A,126B内に挿通される。吸収ブッシュ126A,126Bはそれぞれフレーム9A,9Bに固着されている。吸収シャフト125は鉄等で形成され、吸収ブッシュ126A,126Bは黄銅等で形成される。これは、吸収ブッシュ126A,126Bに挿通された吸収シャフト125を相対的に摺動させやすくすること、及び、吸収ブッシュ126A,126Bにフレーム9A,9Bと吸収シャフト125との緩衝材としての機能を持たせるためである。この目的に適う材料であれば、本実施の形態の鉄(吸収シャフト125)と黄銅(吸収ブッシュ126A,126B)の組み合わせに限定されるものではない。
【0042】
吸収部材124の一端とフレーム9Aとの間に間隙127Aを有しており、吸収部材124の他端とフレーム9Bとの間に間隙127Bを有している。前述のように、フレーム9A,9Bはアルミニウムで形成され、フレーム9A,9Bで所定の位置に固定される搬送チェーン15,15’は鉄で形成されるので、フレーム9A,9Bの熱膨張係数は搬送チェーン15,15’の熱膨張係数より大きくなる。ヒータ部4によるプリント基板W1の予備加熱及びはんだ槽5によるプリント基板W1のはんだ付けで生じる熱によってフレーム9A,9B及び搬送チェーン15,15’が加熱されると、フレーム9A,9Bは搬送チェーン15,15’よりも伸びる。
【0043】
フレームがフレーム9A,9Bのように分割されていないと、上述のフレームの伸びにより搬送チェーン15,15’の位置が不安定になり、所定の位置にプリント基板W1が固定されない場合や、搬送チェーン15,15’が切断してしまう可能性がある。しかしながら、フレームをフレーム9A、9Bのように2つに分割し、その間に吸収部材124を設けて、当該吸収部材124の両端とフレーム9A,9Bに間隙127A,127Bを設けることにより、フレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’との熱膨張の差による伸縮を吸収することができる。すなわち、加熱によって、図11(B)に示すように、図11(A)の矢印A方向及び矢印B方向にフレーム9A及び9Bがそれぞれ伸びたとしても、フレーム9A及び9Bは吸収ブッシュ126A,126Bを介して、吸収シャフト125をガイドとして搬送チェーン15,15’の伸びとは関係なくかつ、搬送チェーン15,15’に影響を及ぼすことなく伸びることができる。
【0044】
これにより、ヒータ部4及びはんだ槽5での処理時に生じる熱によってフレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’とが加熱されても、第1及び第2のフレーム9A,9Bから搬送チェーン15,15’がずれることを防止できる。プリント基板W1を所定の位置に固定してヒータ部4及びはんだ槽5に搬送できる。
【0045】
また、フレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’との熱膨張の差による伸縮で搬送部3が破壊されることを防止できる。また、搬送部3の破壊が防止されるので、搬送部3の長さをより長くでき、ヒータ部4の長さをより長くすることでプリント基板W1を充分に加熱できる。これにより、プリント基板W1にはんだを付着させるはんだの付着力を向上でき、結果として、品質の向上を図ることができる。
【0046】
図12(A)に示すように、互いに対向するフレーム9Bにそれぞれ設けられる搬送爪10に位置ずれD1があると、プリント基板W1を搬送する際、当該プリント基板W1が所定の位置からずれてしまうことがある。このため、図12(B)に示すように、対向する搬送爪10の位置が一致していることが望ましい。
【0047】
従来、搬送爪10の位置を一致させるには、搬送ギア14c周辺の搬送部3の他端を分解してからその位置を調整させていた。しかしながら、その方法では手間及び時間がかかっていた。そこで、本発明では、搬送部3の他端に従来搬送ギアが設けられていた箇所に固定/固定解除部13が設けられる。これにより、搬送爪10の位置を調整するときに搬送部3の他端を分解する作業の手間及び時間を解消させることができる。
【0048】
図13に示すように、固定/固定解除部13は、内輪131、外輪132、ボルト133及びスプロケット134で構成されるメカロック機構を有する。メカロック機構は、ボルト33を締めると内輪131及び外輪132が固定され、ボルト33を緩めると内輪131及び外輪132の固定が解除されるものである。
【0049】
内輪131と外輪132には互いに接触するようにテーパーが設けられる。ボルト133を締めると、内輪131は下側に移動し、外輪132は上側に移動して、チェーン連結軸135とスプロケット134とが固定される。チェーン連結軸135は、搬送ギア14c側にある搬送チェーン15’と接続される。スプロケット134は、搬送チェーン15に巻き回される。このため、ボルト133を締めると搬送チェーン15と搬送チェーン15’とが連結される。
【0050】
ボルト133を緩めると、内輪131は上側に、かつ、外輪132は下側に移動して、チェーン連結軸135とスプロケット134との固定が解除される。つまり、ボルト133を緩めると、搬送チェーン15と搬送チェーン15’との固定は解除される。固定/固定解除部13は、巻き回された搬送チェーン15と係合されているので、当該固定/固定解除部13を回転させて、搬送爪10の位置を調整することができる。
【0051】
これにより、固定/固定解除部13が有するボルト133を締結/締結解除するだけで、搬送部3の他端を分解せずに、簡単に搬送爪10の位置を調整することができる。より正確に搬送爪10の位置を調整するには、前述の基板幅調整ハンドルを回して、対向するフレーム9Bの距離を最小にしてから調整作業を行うことが好ましい。なお、固定/固定解除部13は、本実施の形態では図1の右上側にある搬送ギアに設けたが、搬送ギア14a,14b,14cに設けても構わない。
【0052】
このように、本実施の形態に係る自動はんだ付け装置1によれば、搬送部3は、プリント基板W1を挟持する複数の搬送爪10と、搬送爪10が取り付けられ、プリント基板W1を挟持した搬送爪10をヒータ部4からはんだ槽5へ移動自在に駆動する搬送チェーン15,15’と、摺動部91Aを有して、当該摺動部91Aによって摺動される搬送チェーン15,15’をヒータ部4に沿って案内する一対の第1のフレーム9Aと、摺動部91Aから連動されてくる搬送チェーン15,15’を摺動する摺動部91Bを有して、第1のフレーム9Aに連設され、当該摺動部91Bによって摺動される搬送チェーン15,15’をはんだ槽5に沿って案内する一対の第2のフレーム9Bと、第1のフレーム9Aと第2のフレーム9Bとの間に設けられて、第1及び第2のフレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’との熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材124とを備える。
【0053】
これにより、フレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’との熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材124がフレーム9Aとフレーム9Bとの間に設けられるので、ヒータ部4及びはんだ槽5での処理時に生じる熱によってフレーム9A,9Bと搬送チェーン15,15’とが加熱されても、第1及び第2のフレーム9A,9Bから搬送チェーン15,15’がずれることを防止できる。この結果、プリント基板W1を確実に所定の位置に固定してヒータ部4及びはんだ槽5に搬送できる。また、フレーム9Aとフレーム9Bとの間に吸収部材124を設けるだけなので、自動はんだ付け装置を製作する製造コストを下げることができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、フレームを2つに分割して、その分割したフレームの間に吸収部材124を設けたが、フレームを3つ以上にして、その分割したフレームの間に吸収部材124を設けても良い。これにより、フレームと搬送チェーン15,15’との熱膨張の差による伸縮をより吸収することができるので、搬送チェーン15,15’が所定の位置からずれることなく確実にプリント基板W1をヒータ部4及びはんだ槽5に搬送できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、プリント基板等をはんだ処理部に搬送させてはんだ付けを行う自動はんだ付け装置及び搬送装置に適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0056】
1 自動はんだ付け装置
3 搬送部(搬送装置)
4 ヒータ部
5 はんだ槽
6 冷却部
7 搬入部
9A 第1のフレーム
9B 第2のフレーム
10 搬送爪
11 補強フレーム
12 フレーム支持部
13 固定/固定解除部
14a,14b,14c 搬送ギア
15 搬送チェーン
71 つば付チェーン
91A 第1の摺動部
91B 第2の摺動部
124 吸収部材
W1 プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の温度で熱処理を行う熱処理部と、
前記熱処理部によって熱処理された前記基板にはんだ付け処理を行うはんだ処理部と、
前記基板を前記熱処理部から前記はんだ処理部へ搬送する搬送部とを備え、
前記搬送部は、
前記基板を挟持する複数の搬送爪と、
前記搬送爪が取り付けられ、前記基板を挟持した前記搬送爪を前記熱処理部から前記はんだ処理部へ移動自在に駆動する搬送チェーンと、
第1の摺動部を有して、当該第1の摺動部によって摺動される前記搬送チェーンを前記熱処理部に沿って案内する一対の第1のフレームと、
前記第1の摺動部から連動されてくる前記搬送チェーンを摺動する第2の摺動部を有して、前記第1のフレームに連設され、当該第2の摺動部によって摺動される前記搬送チェーンを前記はんだ処理部に沿って案内する一対の第2のフレームと、
前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間に設けられて、前記第1及び第2のフレームと前記搬送チェーンとの熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材とを有することを特徴とする自動はんだ付け装置。
【請求項2】
前記吸収部材は、
シャフトと、前記シャフトの一端及び他端に設けられるブッシュとを備え、
前記ブッシュが設けられたシャフトの一端が前記第1のフレームの内部に設けられ、前記ブッシュが設けられたシャフトの他端が前記第2のフレームの内部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の自動はんだ付け装置。
【請求項3】
前記熱処理部は、前記基板を加熱するヒータ部を備え、
前記はんだ処理部は、前記ヒータ部によって加熱された基板にはんだを付着させるはんだ槽を備え、
前記第1のフレームには前記ヒータ部が設けられ、第2のフレームには前記はんだ槽が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動はんだ付け装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のフレームには、当該第1及び第2のフレームを補強する一対の補強フレームが設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の自動はんだ付け装置。
【請求項5】
被搬送物体に第1の熱処理を行う系を第1の熱処理系とし、
前記第1の熱処理系によって前記第1の熱処理をされた前記被搬送物体に第2の熱処理を行う系を第2の熱処理系としたとき、
前記被搬送物体を挟持する複数の搬送爪と、
前記搬送爪が取り付けられ、前記被搬送物体を挟持した前記搬送爪を前記第1の熱処理系から前記第2の熱処理系へ移動自在に駆動する搬送チェーンと、
第1の摺動部を有して、当該第1の摺動部によって摺動される前記搬送チェーンを前記第1の熱処理系に沿って案内する一対の第1のフレームと、
前記第1の摺動部から連動されてくる前記搬送チェーンを摺動する第2の摺動部を有して、前記第1のフレームに連設され、当該第2の摺動部によって摺動される前記搬送チェーンを前記第2の熱処理系に沿って案内する一対の第2のフレームと、
前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間に設けられて、前記第1及び第2のフレームと前記搬送チェーンとの熱膨張の差による伸縮を吸収する吸収部材とを備えることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−177288(P2010−177288A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15868(P2009−15868)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】