説明

自動チップ形成を備える帯電粒子源

【課題】自動チップ形成を備える帯電粒子源を提供する。
【解決手段】帯電粒子デバイスは、エミッタチップ13を含むエミッタユニットと、エミッタチップに安定な引出電界を生成するための定電圧を供給するように構成された電圧供給ユニット222と、安定引出電界に加えてパルス引出電界を生成するためのパルス電圧を供給するように構成されたパルス電圧供給部品224と、エミッタ特性を測定するための測定ユニット142、142’、142”と、測定ユニットから信号を受け取るように構成され、かつパルス電圧供給部品を制御するように構成された制御ユニット130とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本明細書で説明される実施形態は、帯電粒子ビームデバイス及び帯電粒子ビームデバイスを作動させる作動方法に関する。特に、実施形態は、帯電粒子ビームデバイスの帯電粒子ビーム源の制御ユニット及び帯電粒子ビームデバイスの帯電粒子ビーム源の制御に関する。より詳細には、帯電粒子ビーム源の電力供給の制御に関する。具体的には、帯電粒子ビームデバイス及び帯電粒子ビームデバイスを作動させる作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]帯電粒子ビーム装置は、製造中の半導体デバイスの検査、試験システム、撮像システム、検出デバイス、及びリソグラフィー用の露光システムを含むが、これらに限定されない複数の産業分野において、多くの機能を有している。したがって、マイクロメータ及びナノメータスケール以下の試料を構造化し、また検査するために帯電粒子ビームデバイスを使用することが強く求められている。
【0003】
[0003]帯電粒子ビームデバイスの例としては、イオンビームパターン発生器以外に電子顕微鏡、電子ビームパターン発生器、イオン顕微鏡並びにイオンビームパターン発生器がある。帯電粒子ビーム、特にイオンビームは、短波長であるので、光子ビームに比べて優れた空間分解能を示す。
【0004】
[0004]粒子顕微鏡及び他の粒子デバイス用のガス電界イオン源は、最先端技術の帯電粒子源を超えた分解能の向上が見込まれる。したがって、ガス電界イオン源は、超高分解能用途での使用が期待できる。超高分解能を可能にするために、システムの様々な要求条件が考慮されなければならい。
【0005】
[0005]ガス電界イオン源又は他の帯電粒子源に基づいた顕微鏡が商業用途で使用されるようになるとき、メンテナンスのために信頼性の高い自動化された手順が必要である。この手順は、例えば、帯電粒子ビームデバイスのエミッタチップの洗浄、再生、及び/又は組立に適用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]上記のことを考慮して、本発明は、独立請求項1に記載の帯電粒子ビームデバイス及び独立請求項9に記載の帯電粒子ビームデバイスを作動させる作動方法を提供する。
【0007】
[0007]一実施形態によれば、帯電粒子ビームデバイスが提供される。本帯電粒子ビームデバイスは、エミッタチップを含むエミッタユニットと、エミッタチップに安定な引出電界を生成するための安定な電圧を供給するように構成された電圧供給ユニットと、安定引出電界に加えてパルス引出電界を生成するためのパルス電圧を供給するように構成されたパルス電圧供給部品と、エミッタ特性を測定するための測定ユニットと、測定ユニットから信号を受け取るように構成され、かつパルス電圧供給部品を制御するように構成された制御ユニットとを備える。
【0008】
[0008]他の実施形態によれば、エミッタチップを含むエミッタユニットを有する帯電粒子ビームデバイスを作動させる作動方法が提供される。帯電粒子ビームデバイスを作動させる本方法は、静電圧を供給することによって帯電粒子ビームを放出するステップと、測定結果を供給するために帯電粒子ビームの特性を測定するステップと、測定結果に依存した電圧パルスを静電圧に加えて供給するステップとを含む。
【0009】
[0009]他の実施形態と組み合わせることができるさらなる有利点、特徴、態様及び細部は、従属請求項、説明及び図面から明らかである。
【0010】
[0010]実施形態は、また、開示された方法を実施する装置にも向けられ、説明された方法ステップを実現させる装置部分を含む。これらの方法ステップは、ハードウェア部品又は適切なソフトウェアでプログラムされたコンピュータによって、これら2つの任意の組合せによって、又は任意の他のやり方で実現されることがある。さらに、実施形態は、また、説明された装置が動作する方法にも向けられる。これは、装置の機能を実施する方法ステップを含む。これらの方法ステップは、ハードウェア部品又は適切なソフトウェアでプログラムされたコンピュータによって、これら2つの任意の組合せによって、又は任意の他のやり方で実現されることがある。
【0011】
[0011]本発明の先に示された及び他のより詳細な実施形態のいくつかは、以下の説明で説明され、さらに図に関連して部分的に例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[0024]本出願の範囲を限定することなしに、以下で、帯電粒子ビームデバイス又はこれの部品は、例によって、イオンビームデバイス又はこれの部品として参照され、この部品は二次電子及び/又は後方散乱電子を検出する。それによって、二次電子及び/又は後方散乱電子は、特に、検査又はリソグラフィー中に使用されることがある。本発明は、さらに、試験、撮像、検査用途のために、又はスパッタリング、ミリングなどのような試料修正用途において、試料像を得、試料のパターニングを制御するために、他の二次及び/又は後方散乱帯電粒子を使用する装置及び部品に応用され得る。
【0013】
[0025]さらに、本明細書で説明される実施形態は、しばしば、ガス電界イオン源に関連して説明される。しかし、理解されるべきことであるが、実施形態は、ガスイオン源、液体イオン源、電界エミッタ、例えば、冷電界エミッタ又は熱電界エミッタ、ショットキエミッタ、又は熱エミッタのような他の帯電粒子ビーム源にも向けられる。
【0014】
[0026]図面についての以下の説明において、同様の要素には同一の符号を付する。個々の実施形態に関して違いだけが説明される。
【0015】
[0027]図1は、本明細書で説明される実施形態に係るガス電界イオン源の動作を例示する。図1の上の部分は、ガス電界イオン源のビーム電流を表す曲線110を示す。使用中に、ガス電界イオン源のチップは劣化することがあり、このことは、結果として、曲線110の部分112で示されるように放出帯電粒子ビーム電流の低下となることがある。そのような劣化チップは、曲線110の部分114で示されるように安定することがある。しかし、エミッタチップがたったの数原子だけから成る場合及びチップに汚染光吸着物又は酸化物がない場合に、エミッタの最良動作モードが実現され得る。そのような条件下で、ガス電界イオン源の放出は制限され、最大安定放出電流が実現され得る。
【0016】
[0028]本明細書で説明される実施形態によれば、図1の曲線120で示されるように、ガス電界イオン源の電圧源に電圧パルス122が印加され得る。それによって、部分118、118’及び118”で示されるように、帯電粒子ビームデバイスの電流は回復し得る。本明細書で説明される実施形態は、エミッタチップの再状態調整及び/又は状態調整を可能にする。エミッタチップの再状態調整、例えば洗浄又は再生のために一般に使用される方法に反して、本明細書で説明される実施形態は、現場自動化プロセスを可能にする。本明細書で説明される実施形態によれば、自動チップ再処理洗浄手順は、劣化した理想チップ形状寸法(例えば、トリマ(trimer))又は汚染されたチップを回復するために行われ得る。
【0017】
[0029]本明細書で説明される実施形態によれば、電圧パルスが、複数の電圧源の組合せ又はガス電界イオン源用修正電圧源によって、ガス電界イオン源を動作させるために使用される印加された静高電圧に加えて生成され得る。図1に示されるように、電圧パルス122が印加静電圧に加えてガス電界イオン源に印加されると、帯電粒子ビーム電流は、曲線110の部分116に示された値まで落ちる。電圧パルス122と電圧パルス122の間で、ビーム電流は再び上昇し、曲線110の部分118、118’及び118”で示されるように回復することができる。本明細書で説明されるいくつかの実施形態によれば、電圧は、動作電圧から表面原子の電界蒸発が起こるまで高められ得る。他の実施形態によれば、エミッタチップと引出電極の間の電圧は、吸着原子又は分子が蒸発するように高められ得る。これによって、電圧は、電界蒸発が起きる値よりも低く保たれ得る。
【0018】
[0030]本明細書で説明される実施形態によれば、静電圧に加えて電圧パルスが印加され得る。最大安定性の最大電流がチップから抽出されるように、静電圧を選ぶことができる。エミッタ電流が時間が経つにつれて徐々に小さくなるとき、電圧パルスが自動的に生成され得る。それによって、電界は、最大電流のための静電圧値を超えて大きくなる。パルス継続時間中に、電圧の減少後に同じ電流又は増加した電流が再び達成されるように、吸着物が蒸発され得る。さらなる実施形態によれば、エミッタチップの形状寸法が悪化したために放出電流が減少する場合に、同様な手順が利用され得る。しかし、それによって、バルク原子の電界蒸発を可能にするために、パルス電圧のより高い振幅が選ばれる。
【0019】
[0031]図2は、帯電粒子ビームデバイスの部分を例示する。本明細書で説明される実施形態によれば、ガス電界イオン源のエミッタユニットが提供される。エミッタユニットは、ベース15を含むことができ、このベースに支持線12が固定されている。図2に示されるように、エミッタユニットは、エミッタ13、例えば先のとがった単結晶を含み、このエミッタは、例えば、タングステン、イリジウムなどから作られ、支持線12に溶着されている。引出電極212が設けられ、この電極212は、動作中に、正にバイアスされたエミッタの対電極として作用する。動作中に供給される高電圧は、配線37及び接続部36を介して供給され得る。それによって、ガス電界イオン源用の高電圧は、支持線12を介してエミッタチップ13に供給することができる。本明細書で説明されるいくつかの実施形態によれば、この高電圧は、定電圧源222によって供給され、この定電圧源は高安定性の高電圧を供給する。電圧パルスは、電圧源224によって定電圧に加えられる。
【0020】
[0032]本明細書で説明される実施形態のどれとでも組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、ガス導管接続及び熱伝導性接続のようなさらなる接続が、ガス電界イオン源に提供され得る。さらなる実施形態を生じるためのこれら及び他の修正は、例えば、「Gas Field ion source for multiple applications」という名称で2006年12月18日に出願された、本発明の譲受人に譲渡された同時係属欧州特許出願第06026210.2号に開示されており、この欧州特許出願は、それぞれの装置及び/又は方法に対して2以上のガスを入れるための修正を説明するという目的のために、その全体が参照され本明細書に組み込まれる。なおさらなる実施形態を生じるためのなおさらなる修正が、例えば、「Gas Field ion source with high mechanical stability」という名称で8月27日に出願された、本発明の譲受人に譲渡された同時係属の欧州特許出願第07016766.3号に開示されており、この欧州特許出願は、それぞれの装置及び/又は方法に対して2以上のガスを入れるための修正を説明するという目的のために、その全体が参照され本明細書に組み込まれる。したがって、様々な実施形態は、エミッタユニット、冷却ユニット、及び冷却ユニットからエミッタユニットへの熱伝導性のための熱伝導性ユニットをさらに含むことがあり、ここで、熱伝導性ユニットは、冷却ユニットからエミッタユニットへの振動伝達低減に適合されている。
【0021】
[0033]さらなる実施形態を生じるためのなおさらなる修正は、例えば、「Modular gas ion Source」という名称で2007年7月6日に出願された、本発明の譲受人に譲渡された同時係属欧州特許出願第07013304.6号に開示されており、この欧州特許出願は、それぞれの装置及び/又は方法に対して2以上のガスを入れるための修正を説明するという目的のために、その全体が参照され本明細書に組み込まれる。したがって、様々な実施形態は、ガス電界イオン源をさらに含むことがある。ガス電界イオン源は、エミッタモジュールを含むことがある。エミッタモジュールは、エミッタホルダ、エミッタ構造、エミッタモジュールの取り外し可能に接続可能な電気接続アセンブリ、及びエミッタモジュールの取り外し可能に接続可能なガス供給接続アセンブリを含むことがある。ガス電界イオン源は、供給モジュールをさらに含み、この供給モジュールは、電圧及び/又は電流を供給するための電気導体、ガス供給導管、熱導体、供給モジュールの取り外し可能に接続可能な電気接続アセンブリ、及び供給モジュールの取り外し可能に接続可能なガス供給接続アセンブリを含む。エミッタモジュールの取り外し可能に接続可能な接続アセンブリ及び供給モジュールの取り外し可能に接続可能な接続アセンブリによって、エミッタモジュール及び供給モジュールは、取り外し可能に接続することができる。
【0022】
[0034]さらなる実施形態を生じるために、なおさらなる修正が、例えば、「Continuously cleaning of the emission surface of a cold field emission gun using UV or laser beams」という名称で2005年7月25日に出願された、本発明の譲受人に譲渡された同時係属欧州特許出願第05016088.6号に開示されており、この欧州特許出願は、追加の他のプロセス及び/又は装置を用いてエミッタチップを洗浄し再生するための修正を説明するという目的のために、その全体が参照され本明細書に組み込まれる。したがって、放出面を有する電界エミッタチップを備える帯電粒子ビームデバイスは、電界エミッタチップの放出面を照らすように構成された少なくとも1つの光源をさらに含むことができる。それによって、さらなる実施形態によれば、放出面を有する電界エミッタチップ及び光源を備え、さらに、この光源で電界エミッタチップの放出面を照らすことによって、電界エミッタチップの放出面をさらに洗浄することができる。
【0023】
[0035]さらなる実施形態を生じるために、なおさらなる修正が、例えば、「Charged particle beam emitting device and method for operating a charged particle beam emitting device」という名称で2005年9月5日に出願された、本発明の譲受人に譲渡された同時係属欧州特許出願第05019259.0号に開示されており、この欧州特許出願は、追加の他のプロセス及び/又は装置を用いてエミッタチップを洗浄し再生するための修正を説明するという目的のために、その全体が参照され本明細書に組み込まれる。したがって、さらに修正された実施形態は、帯電粒子ビーム源を所定の圧力の真空中に配置すること、この帯電粒子ビーム源は所定の動作条件の下で高い初期放出電流I及びより低い安定平均放出電流Iを示すものであり、エミッタ表面から帯電粒子を放出するために所定の動作条件を帯電粒子ビーム源に適用し、その結果、帯電粒子ビーム源の放出電流が安定平均放出電流Iよりも高くなるようにすること、エミッタ表面を温度Tに加熱するために少なくとも1つの加熱パルスを帯電粒子ビーム源に印加することによって洗浄プロセスを行い、それによって帯電粒子ビーム源の放出電流がより低い安定平均放出値Iに低下する前に洗浄プロセスが行われること、及び、帯電粒子ビーム源の放出電流を実質的に安定な放出値Iよりも常に高く保つように洗浄プロセス(c)を繰り返すことを含むことができる。例として、作業の始めに、特に、新しい帯電粒子エミッタが帯電粒子ビーム放出デバイスに組み込まれたとき、エミッタ表面から頑固な汚染を洗浄除去するように主洗浄プロセスが追加して行われ得る。例えば、冷電界エミッタでは、主洗浄プロセスは、一般に、短くて強い加熱パルス(主フラッシング)を使用し、この加熱パルスは、エミッタ表面を約2500K〜2800Kの温度TMCに加熱する。一般に、主洗浄中に、帯電粒子エミッタと抽出アノードの間に印加された引出電圧は、熱電子の放出が低く保たれるようにオフにされるべきである。主洗浄後に、帯電粒子エミッタは、例えば、電気引出電界を印加することによって、通常動作の状態にされ得る。通常動作中に、帯電粒子ビームが生成され、検査されるべき試料に向けられる。次に、帯電粒子ビームデバイス、例えばSEM又はFIBの通常動作又は活動期間が短時間中断されて、洗浄プロセスが行われることがある。通常モードを中断することは、ビームが試料に集束されないことを意味する。したがって、通常モードの動作条件を維持し、例えば、ビームブランカを使用して帯電粒子ビームを偏向させることができる。それ故に、放出電流の変動が我慢できないほどになり、したがって帯電粒子ビーム放出デバイスの動作が打ち切られるとき洗浄ステップを行う従来技術と違って、洗浄プロセスは、一般に、帯電粒子エミッタが動作しているとき開始され得る。例えば、冷電界エミッタでは、加熱パルスは、洗浄プロセス中に、帯電粒子エミッタに印加されて、エミッタ表面を約2200K〜2500Kの最高温度まで加熱することができる。洗浄に関して、高い表面張力によるエミッタチップの鈍化又は肥厚が見られることがある温度よりも、この最高温度は低くなければならない。一般に、例として、単一洗浄プロセスは、1〜3秒の間隔で、約1〜2秒のパルス幅を持った2〜4個の加熱パルスを含む。通常モードの中断をできるだけ小さくするために、単一洗浄プロセスの継続時間は、できるだけ短くなければならい。例えば、洗浄プロセスは、1分よりも短く、特に10秒未満であるべきである。例えば、冷電界エミッタでは、なおさらなる態様によれば、洗浄中のエミッタ表面の損傷を避けるために、約300V〜1000V、好ましくは約700V〜1000Vの高い抑制電圧が印加され、この抑制電圧は、帯電粒子エミッタの加熱部分からの望ましくない放出を阻止する。追加の随意の洗浄プロセスは、エミッタ表面を清浄に保つのに必要なだけ何度も繰り返され得る。規則正しい間隔で、又はαIと定義される予め選ばれた最小値Iに放出電流が落ちるとき要求に基づいて、洗浄プロセスが開始され得る。ここで、αは、約0.9以上であり、0.95、0.96、0.97、0.98又は特に0.99などである。αが高いほど、Iがより高くなり得、また、より高い頻度で洗浄プロセスが行われることがある。Iが特定の冷電界エミッタの安定平均放出電流Iよりも実質的に高くなるように、値αは選ばれなければならない。したがって、追加の洗浄手順は、本明細書で説明された他の実施形態と組み合わせることができる。
【0024】
[0036]本明細書で説明される実施形態によれば、通常動作中に、静電圧源222を使用してガス電界イオン源を動作させることができる。図1の曲線110の部分112に示されるようにエミッタ電流が減少するとき、電圧パルス122(図1の下の部分の曲線120を参照されたい)を適切な制御信号によって電圧源224に印加することができる。電圧パルス122が印加されている間、ビーム電流は、図1に示された値116に下がる。電圧パルス122の後で、ビーム電流は値118に増加する。電圧パルス122と電圧パルス122の間で放出電流及び/又は放出角度分布を測定することができる。それによって、ビーム電流118が最大値及び最大安定性の所望のビーム電流に達したか否かを評価することができる。図1に示された例では、曲線110の部分118のビーム電流は、ある程度まで回復しているが、所望の値は未だ得られていない。したがって、第2の電圧パルス122を印加することができる。この電圧パルス122の間、ビーム電流値は、曲線110の値116’まで下がる。第2の電圧パルス122の後で、部分118’で示されるようなビーム電流値が得られる。その時に、ビーム電流が最大安定性を有する所望の最大値に達しているか否かを測定することができる。部分118’のビーム電流値は未だ所望の値に達していないので、別の電圧パルス122が印加される。この電圧パルス中に、ビーム電流は、図1に示されるように、値116”まで下がる。図1に示される例の範囲内で、第3の電圧パルスの後で、ビーム電流は、所望の値118”に達している。したがって、ガス電界イオン源のエミッタチップ13のさらなる劣化が起こるまで、さらなる電圧パルスなしに、通常条件の下でガス電界イオン源を動作させることができる。
【0025】
[0037]本明細書で説明される実施形態によれば、放出電流が測定されることがあり、又は放出分布の像が、パルスとパルスの間で、即ち電圧パルスが印加されていない時間に得られることがある。この時間に、エミッタチップは、通常動作中の特性に対応する放出特性を示す。例えば電圧源222によって印加される、最大電流のための値を超えた引出電圧の増加は、部分116、116’及び116”によって示されるような放出電流の減少をもたらすので、エミッタチップを所望の値に十分に再状態調整し且つ洗浄するために、所望の高さ及び継続時間の単一電圧パルスは供給し難い。帯電粒子ビーム電流及び/又は放出分布を測定するために中間的な時間の電圧パルスを供給することで、自動プロセスが可能になり、この自動プロセスは、帯電粒子ビームデバイスの自動保守手順に含まれ得る。
【0026】
[0038]本明細書で説明される実施形態によれば、デバイス及び方法が提供され、これらのデバイス及び方法は、ガス電界イオン源の放出特性を制御すること、及び、測定された放出特性に対応してチップを状態調整及び/又は再状態調整するのに適切な電圧パルスを印加することを可能にする。一実施形態によれば、特に、放出電流及び/又は放出角度分布が規則的に、例えば、2分〜1時間ごとに、又は5分〜10分ごとに測定される場合、1つの標準電圧パルスがエミッタチップの所望の回復をもたらすことができる。それによって、制御の頻度は、帯電粒子ビームデバイスの動作条件に依存し得ることに留意すべきである。他の実施形態によれば、1つの単一パルスが、所望の結果を与えないことがある。したがって、第2のパルス又は一連のパルスが印加され得る。パルスとパルスの間の時間は、放出特性を測定することを可能にし、それによって自動エミッタチップ処理を可能にする。さらなる実施形態によれば、例えば図3に示される例では、吸着物を除去するための又はエミッタを再生するための電界をゆっくり大きくするために、一連の電圧パルスの中で、電圧パルスの振幅が大きくされ得る。図3は、エミッタ電流の曲線110及び電圧パルスの曲線120を示す。図1に関して説明されたのと同様に、ビーム電流の安定値までの減少は、曲線110の部分112及び114で示されている。ビーム電流の減少に応答して、第1のパルス222がガス電界イオン源のエミッタチップに印加され得る。電圧パルス中に、ビーム電流は曲線110の部分116で示される値に減少する。この一連の電圧パルス122、122’、及び122”の中で、電圧パルスの振幅は連続的に増加している。それによって、エミッタチップの洗浄及び/又は再処理を行う手順の速度が速められ得る。他の実施形態によれば、チップ形状寸法の望ましくない重大な変化の危険性を減少させるために、第1のパルス222の、エミッタチップの除去又は再生のための電界は、できるだけ小さく選ばれ得る。より小さな電圧パルス222に対応するより小さな電界から始まって、所望の電圧パルス振幅に達するまで、電圧パルス及びそれによって電界が、大きくされ得る。本明細書で説明される実施形態のどれとでも組み合わせることができるなおさらなる実施形態によれば、2つの電圧パルスの間で測定されるビーム電流値が所望のビーム電流値にほとんど達した場合に、電圧パルスの減少が使用され得る。なおさらなる実施形態によれば、電圧パルスの振幅は、曲線110の部分118又は118’で測定されたビーム電流値と所望のビーム電流値との差の関数として選ばれ得る。
【0027】
[0039]図4は、本明細書で説明されるようなさらなる実施形態を例示する。図4は、所望のビーム電流値430及び電圧パルス振幅値431及び432を示す。電圧パルス値431は、エミッタチップから吸着物を除去するのに十分なパルス振幅を例示する。電圧振幅432は、エミッタチップの形状寸法が変化し得る蒸発値の電界を与えるのに十分な電圧を示す。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わせることができる様々な実施形態では、電圧パルスの印加を、吸着物を除去するのに十分な振幅で始めることができる。(例えば、図4に示される曲線120の部分322を参照されたい。)続いて起こる電圧パルス322は、振幅が大きくなっている。しかし、図4に示された電流の曲線110で例示されるように、これらのパルスの間のビーム電流(部分418を参照されたい)は、大きく増加しない。必要な放出電流は、吸着物を除去するのに十分な振幅によって回復されないので、ビームの減少はチップの形状寸法の変化によると考えることができる。したがって、図4に示されるように、電圧パルス振幅322は、電圧値432よりも高い値に大きくされ得る。図4に示されるように、エミッタチップの再生及びビーム電流の対応する増加(部分418’、及び418”を参照されたい)が実現され得る。
【0028】
[0040]図1、3及び4は、電圧パルスの供給中に減少することがあるビーム電流の例を参照する。他の実施形態によれば、他の帯電粒子ビーム特性は、電圧パルスの供給中に異なる効果を示し得る。図1、3及び4は、電圧パルス供給中のビーム特性の測定結果の例として理解されるべきである。他の例として、放出電流は、電圧パルスの供給中に増加することがある。
【0029】
[0041]様々な実施形態によれば、複数の上述の制御手順が組み合わされ得る。本明細書で説明される実施形態によれば、エミッタチップの洗浄及び再生を最適化するために、2つの主要な電圧パルスパラメータが使用され得る。これらの電圧パルスパラメータは、電圧パルスの振幅と電圧パルスの継続時間である。しかし、なおさらなる実施形態によれば、電圧パルスの立ち上がり時間、形、周波数又は他のパラメータが、代わりに、又は追加して変えられることがある。様々な実施形態によれば、振幅は、静電圧の5%〜30%の範囲内であることがある。他の例は、静電圧の10%又は20%の値である。例として、10kVの静電圧が印加される場合、電圧パルスの振幅は1kVであり得る。これらの値と組み合わせることのできる他の実施形態によれば、300ミリ秒、600ミリ秒、1秒、2秒又は最高10秒のパルス継続時間に印加され得る。代表的な範囲は、例えば、300ミリ秒〜15秒、0.5秒〜10秒又は1〜3秒であり得る。
【0030】
[0042]様々な実施形態によれば、電圧パルス振幅及び電圧パルス継続時間は、先に説明された制御機構のどれかに基づいて組み合わされ得る。それによって、ビーム電流又は放出特性の所望の変化が前のパルスで得られたかどうかの評価に基づいて、測定されたビーム電流と所望のビーム電流との差の評価に基づいて、測定されたビーム分布、即ち放出角度分布と所望のビーム分布のずれに基づいて、又は他の適切なやり方で、異なる電圧パルス振幅及び電圧パルス期間が加えられ得る。それによって、増加及び/又は減少する電圧パルス振幅若しくは電圧パルス継続時間又はこれらの組合せを有する一連のパルスが印加され得る。
【0031】
[0043]先に説明されたように、本明細書で説明される実施形態によれば、電圧パルスは、放出帯電粒子ビーム電流、帯電粒子ビーム電流の放出分布及び/又は他の放射特性の帰還制御を可能にする。電圧パルスが印加されていない時間中の帰還制御は、エミッタチップの自動洗浄及び/又は再生を可能にする。さらなる実施形態によれば、エミッタチップの自動洗浄及び/又は再生は、現場で行われ得る。さらに、帰還及び/又はパルスは、誇張されたチップ再状態調整の観点からエミッタチップ損傷の可能性を減少させるので、これらのプロセスはエミッタチップの寿命を延ばすことができる。
【0032】
[0044]さらなる実施形態によれば、上述の手順は、また、帯電粒子ビームデバイスに取り付けられた新しいエミッタチップにも使用されることがある。それによって、特定の帯電粒子ビーム電流又は特定の放出分布が実現されるまで電圧パルスを印加することが可能になる。したがって、本明細書で説明される実施形態に係る装置及び方法は、エミッタチップの再状態調整、洗浄及び/又は再生のためだけに使用されるのではなく、エミッタチップの状態調整及び組立にも使用されることがある。
【0033】
[0045]本明細書で説明される実施形態によれば、帯電粒子ビームデバイスは、チップ電圧が非常に安定であるようにエミッタチップ電圧のために供給される静電圧を含むことができる。この安定性は、帯電粒子ビームデバイスの分解能を高めるために有利となり得る。静電圧供給の安定性を達成するために、大きなRC定数が生成される。しかし、大きなRC定数は、所望の立ち上がり時間を有するパルスを生成することを可能にしない。本明細書で説明される実施形態は、1秒以下の立ち上がり時間を持つことができる。例として、立ち上がり時間は100ミリ秒又はそれ未満でさえあることがある。本明細書で説明されるいくつかの実施形態によれば、通常動作中にチップ電圧を供給する静電圧供給が設けられ、さらに、静電圧に加えて電圧パルスを供給する追加の電圧供給が設けられる。この追加の電圧源は、電圧パルスの最大振幅に対応する最大出力電圧を持つことができる。さらに、他の実施形態によれば、追加の電圧供給は、1秒以下の立ち上がり時間に適合するように設けられ得る。本明細書で説明されるいくつかの実施形態によれば、電圧パルス電圧供給の電圧パルスの傾きは、少なくとも2kV/秒、少なくとも10kV/秒、又はさらに少なくとも20kV/秒の範囲にあり得る。
【0034】
[0046]いくつかの実施形態によれば、追加の電圧源の出力電圧減少は、同様な安定性を実現しながらRC定数を小さくすることを可能にする。さらなる実施形態によれば、追加の電圧源は、安定な電圧供給の電圧安定性に影響を及ぼさないように、通常動作中にオフに切り換えられることができる。対応する電圧供給を含む帯電粒子ビームデバイスの実施形態は、図5〜10に関して例示される。
【0035】
[0047]図5及び6に示されるように、本明細書で説明される実施形態によれば、ガス電界イオン源のエミッタユニットが提供される。このエミッタユニットは、ベース15を含むことができ、このベースに支持線12が固定されている。図2に示されるように、エミッタユニットは、エミッタ13、例えば先のとがった単結晶を含み、このエミッタは、例えば、タングステン、イリジウムなどから作られ、支持線12に溶着されている。引出電極212が設けられ、この電極212は、動作中に正にバイアスされたエミッタの対電極として作用する。動作中に供給される高電圧は、配線37及び接続部36を介して供給され得る。それによって、ガス電界イオン源用の高電圧は、支持線12を介してエミッタチップ13に供給することができる。
【0036】
[0048]いくつかの実施形態によれば、追加の電圧源224は、定電圧源222と直列に設けられ得る。一実施形態によれば、図5に示されるように、追加の電圧供給224は、定電圧供給222の前に設けられる。他の実施形態によれば、図6に示されるように、追加の電圧供給224は、定電圧供給222とエミッタユニットの間に設けられる。
【0037】
[0049]図7に関して例示されるさらなる実施形態によれば、ガス電界イオン源のエミッタユニットが提供される。このエミッタユニットは、ベース15を含むことができ、このベースに支持線12が固定されている。図2に示されるように、エミッタユニットは、エミッタ13、例えば先のとがった単結晶を含み、このエミッタは、例えば、タングステン、イリジウムなどから作られ、支持線12に溶着されている。引出電極212が設けられ、この電極212は、動作中に正にバイアスされたエミッタの対電極として作用する。動作中に供給される高電圧は、配線37及び接続部36を介して供給され得る。それによって、ガス電界イオン源用の高電圧は、支持線12を介してエミッタチップ13に供給することができる。いくつかの実施形態によれば、電圧パルスを供給する追加の電圧源224は、引出電極212に加えられ得る。それによって、エミッタチップの電界は、あたかも電圧パルスがエミッタチップに直接印加されたのと同じように変化することができる。
【0038】
[0050]図8に示されるように、ガス電界イオン源のエミッタユニットが提供される。このエミッタユニットは、ベース15を含むことができ、このベースに支持線12が固定されている。図2に示されるように、エミッタユニットは、エミッタ13、例えば先のとがった単結晶を含み、このエミッタは、例えば、タングステン、イリジウムなどから作られ、支持線12に溶着されている。引出電極212が設けられ、この電極212は、動作中に正にバイアスされたエミッタの対電極として作用する。動作中に供給される高電圧は、配線37及び接続部36を介して供給され得る。それによって、ガス電界イオン源用の高電圧は、支持線12を介してエミッタチップ13に供給することができる。先に説明された他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、追加の電極812が、エミッタチップ13の近くに設けられ得る。電圧源222によって供給される定電圧に加えて電圧パルスを供給する追加の電圧源224は、追加の電極812に接続される。それによって、エミッタチップ13の洗浄又は再生のための電界は、追加の電極812を介して供給される。
【0039】
[0051]図9に示されるように、ガス電界イオン源のエミッタユニットが設けられる。このエミッタユニットは、ベース15を含むことができ、このベースに支持線12が固定されている。図2に示されるように、エミッタユニットは、エミッタ13、例えば先のとがった単結晶を含み、このエミッタは、例えば、タングステン、イリジウムなどから作られ、支持線12に溶着されている。引出電極212が設けられ、この電極212は、動作中に正にバイアスされたエミッタの対電極として作用する。動作中に供給される高電圧は、配線37及び接続部36を介して供給され得る。それによって、ガス電界イオン源用の高電圧は、支持線12を介してエミッタチップ13に供給することができる。さらなる実施形態によれば、図9に関して例示されるように、追加の電圧供給224は、通常動作中のエミッタチップに定電圧を供給するための電圧供給220に一体化されることがある。
【0040】
[0052]図10に示されるように、ガス電界イオン源のエミッタユニットが設けられる。このエミッタユニットは、ベース15を含むことができ、このベースに支持線12が固定されている。図2に示されるように、エミッタユニットは、エミッタ13、例えば先のとがった単結晶を含み、このエミッタは、例えば、タングステン、イリジウムなどから作られ、支持線12に溶着されている。引出電極212が設けられ、この電極212は、動作中に正にバイアスされたエミッタの対電極として作用する。動作中に供給される高電圧は、配線37及び接続部36を介して供給され得る。それによって、ガス電界イオン源用の高電圧は、支持線12を介してエミッタチップ13に供給することができる。なおさらなる実施形態によれば、図10に関して例示されるように、電圧源220が提供され得る。電圧源220は、所望の高電圧を供給する部分226と、電圧源の安定性のために所望のRC定数を生成する部分227とを含むことができる。電圧源220は、非常に安定な高電圧を供給するために大きなRC定数を加えるようにするか、高電圧が電圧源220の出力に直接印加されるようにするかのどちらかに制御され得るスイッチ228をさらに含む。それによって、安定動作モードとパルス動作モードの間で切り換えることができる電圧源220が実現され得る。このスイッチは、短い立ち上がり時間を有するパルスを生成することができるように、内部の安定化コンデンサを短絡することができる。
【0041】
[0053]図11は、帯電粒子ビーム源の制御の実施形態を例示している帯電粒子ビームデバイスを示す。帯電粒子ビーム源は、ベース15を備え、このベースに支持線12が取り付けられている。図11に示されるように、エミッタユニットは、エミッタ13、例えば先のとがった単結晶を含み、このエミッタは、例えば、タングステン、イリジウムなどから作られ、支持線12に溶着されている。引出電極212が設けられ、この電極212は、動作中に正にバイアスされたエミッタの対電極として作用する。動作中に供給される高電圧は、配線37及び接続部36を介して供給され得る。それによって、ガス電界イオン源用の高電圧は、支持線12を介してエミッタチップ13に供給することができる。通常動作中に、即ち、例えば、撮像、試験、パターニング又は試料修正中に、電圧源222によって安定な高電圧が供給される。帯電粒子ビームは、アパーチャ12及び対物レンズ10のような構成要素によって帯電粒子ビームデバイスを通り抜けるように導かれる。対物レンズ10は、帯電粒子ビームを試料5に集束させており、この試料5は試料支持台50の上にある。
【0042】
[0054]さらなる実施形態によれば、さらに、集光レンズ、ビーム走査デフレクタ、ビーム位置合せデフレクタ、スチグメータ、検出器又は、二次及び/又は後方散乱帯電粒子を検出するために、他の検出器、他のビーム誘導要素又はこれらの組合せが提供されることがある。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わせることができる様々な実施形態によれば、帯電粒子ビームデバイスの要素は、静電気、磁気、又は静電気磁気の組合せであり得る。
【0043】
[0055]図11は、帯電粒子ビームのビーム特性を測定するための測定ユニット142を示す。図11の中に、例として、ビーム特性測定ユニットが、アパーチャ12と対物レンズ10の間に設けられたビーム電流測定ユニットとして示されている。様々な実施形態によれば、この測定ユニットは、電位計に接続されたファラデーカップ、電極、又は他の要素であり得る。さらなる実施形態によれば、帯電粒子ビーム電流を測定するために、他の要素が使用され得る。なおさらなる実施形態によれば、エミッタ分布、即ち放出角度分布、又は同様なものを測定するための測定ユニットが設けられ得る。
【0044】
[0056]したがって、本明細書で説明される実施形態のどれとでも組み合わせることができる様々な実施形態によれば、ビーム電流、放出電流、放出分布又は他のビーム特性が測定され得る。それによって、このビーム電流は、帯電粒子ビームデバイスのカラム中の帯電粒子ビーム電流として理解されるべきであるが、一方で、放出電流は、エミッタチップから放出された帯電粒子ビーム電流、即ち帯電粒子ビーム電流に影響を及ぼすブランキング又は他の手段の前の帯電粒子ビーム電流として理解されるべきである。さらに、これらのどの特性も、その特性の振幅及び/又は安定性に関して測定されることがある。したがって、例えば、ビーム電流の振幅、ビーム電流の安定性、放出電流の振幅、放出電流の安定性、放出分布の振幅又は他の特性(例えば、放出ピークの数)、放出分布の安定性、他のビーム特性の振幅、及び/又は他のビーム特性の安定性が測定され得る。
【0045】
[0057]本明細書で説明される実施形態によれば、ビーム特性測定ユニット142は、制御装置130に接続される。制御装置130は、1つ又は複数のビーム特性が所望値であるか、又は所望範囲内にあるか否かを評価するように構成されている。
【0046】
[0058]本明細書で説明されるいくつかの実施形態によれば、制御装置130は、パルス電圧供給224に接続される。ビーム特性測定ユニットの測定の評価が、帯電粒子ビームデバイスのエミッタチップ13が劣化しているという結果を示す場合には、制御装置はパルス電圧供給224を作動させて、静高電圧に加えて電圧パルス又は一連の電圧パルスを印加する。それによって、様々な実施形態によれば、一定の電圧パルス振幅又は電圧パルス継続時間が使用されることができ、又は1つの適合された電圧パルス振幅又は1つの適合された電圧パルス継続時間が使用され得る(組合せ)。電圧パルスが印加されることによって、ビーム特性測定ユニット142は、電圧パルスと電圧パルスの間でビーム特性を測定し、エミッタチップの洗浄及び/又は再生の終点を決定することができる。
【0047】
[0059]さらなる実施形態によれば、ビーム特性測定ユニット142’及び142”で示されるように、追加して、又は代わりに、さらなるビーム特性測定ユニットが、陽極12の上に、又は試料支持台50に近接して設けられ得る。これらのビーム特性測定ユニットから供給された信号は、また、制御装置130にも供給され、同様な帯電粒子ビーム電圧供給制御手順のために使用され得る。
【0048】
[0060]図12は、本明細書で説明される実施形態に係るエミッタチップ洗浄及び/又は再生の1サイクルを例示する流れ図を示す。ステップ1202で始まりステップ1208で終わる図12のサイクルは、例えば、1分ごとに、10分ごとに、又は30分ごとに、連続して繰り返され得る。一般に、範囲は、他の実施形態によれば、2分〜1時間ごと、又は5分〜10分ごとであり得る。
【0049】
[0061]洗浄及び/又は再生方法の開始後、ステップ1204でビームが測定される。様々な実施形態によれば、エミッタ電流、放出角度分布又は他のビーム特性が測定され得る。その後、ステップ1206で、チップ形成が必要か否かを評価する。例えば、ビーム電流が所望値であるので、チップ形成が必要でない場合には、サイクルはステップ1208で終わる。先に説明されたように、新しいサイクルは、1分ごとに、10分ごとに、又は30分ごと開始され得る。一般に、範囲は、他の実施形態によれば、2分〜1時間ごと、又は5分〜10分ごとであり得る。
【0050】
[0062]チップ形成が必要である場合(ステップ1206、yes)、一実施形態によれば、ステップ1212で電圧パルスが生成される。電圧パルスの後で、ステップ1204でビームが測定され、ステップ1206でさらなる評価ステップが続く。それによって、エミッタチップが所望のビーム特性を示さない限り、ステップ1212で電圧パルスが供給される。なおさらなる実施形態によれば、毎秒又は3パルスごとだけにビームが測定されるのも可能であることもある。このことは、チップ形成に使用される電圧パルス振幅又は電圧パルス継続時間に依存することがある。
【0051】
[0063]代わりの実施形態によれば、図12に点線で示されるように、ステップ1210で電圧パルスを調整することができる。したがって、ステップ1206の後で、チップ形成が必要である場合には、1210で、電圧パルス振幅、電圧パルス継続時間、又は電圧パルスの形又は傾きのような他の電圧パルス特性が調整され、その後、ステップ1212で、静電圧に加えて電圧パルスが印加される。それによって、様々な実施形態によれば、パルス振幅又はパルス継続時間の所定の増加又は減少、又はこれらの組合せのような一定のパターン又は機能に基づいて、ステップ1210での電圧パルスの調整が行われることがある。他の実施形態によれば、電圧パルスの調整は、測定されたビーム特性の関数として行われることがある。
【0052】
[0064]図12の中で、ステップ1212で1つ又は複数の電圧パルスが印加される。ステップ1204で、パルスがローである時間は、少なくとも1つの帯電粒子ビーム特性を測定するために使用される。本明細書で説明される実施形態のどれとでも組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、測定ユニットを用いた1つ又は複数のビーム特性の測定は、また、パルスがハイである時間中に行われ得る。それによって、チップ状態調整又はチップ再状態調整プロセスに関しての追加の情報がもたらされ得る。一般に、1つのビーム特性は、電圧パルスがローである時間内に測定され得、他のビーム特性は、ビームがハイである時間内に測定され得る。それによって、例えば、各特性は、測定され得るビーム電流の振幅、ビーム電流の安定性、放出電流の振幅、放出電流の安定性、放出分布の振幅又は他の特性(例えば、放出ピークの数)から成るグループから選ばれることあり、放出分布の安定性、他のビーム特性の振幅、及び他のビーム特性の安定性は測定され得る。
【0053】
[0065]なおさらなる実施形態によれば、ステップ1204で測定されるべきビーム特性は、状態調整又は再状態調整中に変化し得る。例として、再状態調整が洗浄段階にある場合、他のビーム特性は、再生段階の再状態調整と比較して測定されることがある。他の例として、所望のエミッタチップ状態からのずれが比較的大きい場合に、1つのビーム特性が測定され得るが、エミッタ状態が所望のエミッタ状態により近くなる場合に、他のビーム特性が測定され得る。それによって、例えば、1つ又は複数のビーム特性値の閾値が定義されることがある。
【0054】
[0066]全体的に、本明細書で説明される実施形態は、例えば、帯電粒子ビームデバイスを説明することができる。帯電粒子ビームデバイスは、エミッタチップを含むエミッタユニットと、エミッタチップに安定な引出電界を生成するための安定な電圧を供給するように構成された電圧供給ユニットと、安定な引出電界に加えてパルス引出電界を生成するためのパルス電圧を供給するように構成されたパルス電圧供給部品と、エミッタ特性を測定するための測定ユニットと、測定ユニットから信号を受け取り、パルス電圧供給部品を制御するように構成された制御ユニットとを含む。それによって、追加される様々な代替物又は選択肢によれば、パルス電圧供給部品はパルス電圧供給であり得る。この供給は、随意に、電圧供給ユニットと直列に設けられることがある。代わりに、パルス電圧供給は、帯電粒子ビームデバイスの引出電極又は帯電粒子ビームデバイスのパルス電極に接続され得る。さらなる代替物として、パルス電圧供給部品は、電圧供給ユニットの中に設けられたパルス電圧供給であることがあり、及び/又はパルス電圧供給部品は、電圧供給ユニットを安定動作モードからパルス動作モードに切り換えるように構成される。
【0055】
[0067]本明細書で説明される実施形態のどれとでも組み合わせることができるなおさらなる実施形態によれば、測定ユニットは、ビーム電流測定システム及び/又は放出角度分布測定システムを含む。
【0056】
[0068]本明細書で説明される実施形態のどれとでも組み合わせることができるなおさらなる実施形態によれば、パルス電圧供給部品は、0.2秒/kV以下の立ち上がり時間と、5kV、好ましくは3kV、より好ましくは1kVの最大電力出力とを有する。
【0057】
[0069]他の実施形態によれば、エミッタチップを含むエミッタユニットを備える帯電粒子ビームデバイスを作動させる作動方法が提供される。本方法は、静電圧を供給することによって帯電粒子ビームを放出すること、測定結果を供給するために帯電粒子ビームの1つ又は複数の特性を測定すること、及び、測定結果に依存して、静電圧に加えて電圧パルスを供給することを含むことができる。さらに、一連の電圧パルスが供給され得る。なおさらなる実施形態によれば、少なくとも1つのさらなる測定結果を供給するために、一連の電圧パルスのうちの2つの電圧パルスの間で測定が繰り返され得る。それによって、さらなる選択肢として、一連の電圧パルスの電圧パルスの数は、この少なくとも1つのさらなる測定結果に基づいて適合され得、一連の電圧パルスのうちの個々の若しくはいくつかの、又はすべての電圧パルスの振幅及び/又は期間は、この少なくとも1つのさらなる測定結果に基づいて適合されることがあり、第1の電圧パルスの振幅は静電圧の10%未満であり、この一連の電圧パルスのうちの個々の若しくはいくつかの、又はすべての電圧パルスの電圧パルス振幅は、電界蒸発閾値よりも下であり、及び/又はこの一連の電圧パルスのうちの個々の又はいくつかの電圧パルスの振幅は、電界蒸発閾値よりも上であるように大きくされる。
【0058】
[0070]本明細書で説明される実施形態と組み合わせることができるさらに他の実施形態によれば、電圧パルスの時間は5秒以下であり、及び/又は電圧パルスの振幅は静電圧の5%〜30%の範囲内である。
【0059】
[0071]本明細書で説明される実施形態は、帯電粒子ビームデバイスのエミッタチップの状態調整、再状態調整、洗浄、組立及び/又は再生のために印加される測定信号及び電圧パルスの帰還に関連する。それによって、状態調整、再状態調整、洗浄、組立及び/又は再生プロセスの終了の制御の改善が実現され得る。さらに、本明細書で説明される実施形態は、現場自動プロセスを可能にする。本明細書で説明される実施形態によれば、劣化した理想チップ形状寸法(例えば、トリマ)又は汚染されたチップを回復するために、自動チップ(再)処理洗浄手順が行われることがある。さらに、パルスは、誇張されたチップ再状態調整の観点からエミッタチップの損傷を防ぐことができるので、これらのプロセスは、エミッタチップの寿命を長くすることができる。
【0060】
[0072]本発明に係る好適な実施形態を説明してきたが、いわゆる当業者により本発明から逸脱することなく設計、構造及び/又は作用の細部は様々に変更され得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】帯電粒子ビーム電流と電圧を示す模式図であり、この電圧は、本明細書で説明される実施形態によればガス電界イオン源用の電圧源の電圧に重畳される。
【図2】本明細書で説明される実施形態に係る帯電粒子ビーム源及び電圧源を示す模式図である。
【図3】帯電粒子ビーム電流及び変化する電圧パルスを示す模式図であり、この電圧パルスは、本明細書で説明される実施形態によればガス電界イオン源用の電圧源の電圧に重畳される。
【図4】帯電粒子ビーム電流及びさらなる変化する電圧パルスを示す模式図であり、この電圧パルスは、本明細書で説明される実施形態によればガス電界イオン源用の電圧源の電圧に重畳される。
【図5】本明細書で説明される実施形態に係る帯電粒子ビーム源及び帯電粒子ビーム源に接続された2つの電圧源を示す模式図である。
【図6】本明細書で説明される実施形態に係る帯電粒子ビーム源及び帯電粒子ビーム源に接続された2つの電圧源を示す模式図である。
【図7】本明細書で説明される実施形態に係る電粒子ビーム源及び電極に接続された電圧源を示す模式図である。
【図8】本明細書で説明される実施形態に係る帯電粒子ビーム源及びさらなる電極に接続された電圧源を示す模式図である。
【図9】帯電粒子ビーム源と、本明細書で説明される実施形態に係る定電圧用兼電圧パルス用の電圧源とを示す模式図である。
【図10】本明細書で説明される実施形態に係る帯電粒子ビーム源及び定電圧用兼電圧パルス用のさらなる電圧源を示す模式図である。
【図11】本明細書で説明される実施形態に係る、帯電粒子ビーム源及び帯電粒子ビーム源に印加される電圧の制御装置を含んだ帯電粒子ビームデバイスを示す模式図である。
【図12】本明細書で説明される実施形態に係る帯電粒子ビーム源のエミッタチップの洗浄及び/又は再生の方法を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
5 試料
10 対物レンズ
12 支持線
13 エミッタ
15 ベース
50 試料支持台
130 制御装置
142、142’、142” ビーム特性測定ユニット
212 引出電極
222 静電圧源
224 パルス電圧供給
226 高電圧供給部分
227 所望RC定数生成部分
228 スイッチ
812 追加の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタチップ(13)を含むエミッタユニットと、
前記エミッタチップに安定な引出電界を生成するための安定な電圧を供給するように構成された電圧供給ユニット(222)と、
前記安定引出電界に加えてパルス引出電界を生成するためのパルス電圧を供給するように構成されたパルス電圧供給部品(224、228)と、
エミッタ特性を測定するための測定ユニット(142、142’、142”)と、
前記測定ユニットから信号を受け取るように構成され、かつ前記パルス電圧供給部品を制御するように構成された制御ユニット(130)と、
を備える帯電粒子ビームデバイス。
【請求項2】
前記パルス電圧供給部品が、前記電圧供給ユニットと直列に設けられている、請求項1に記載の帯電粒子ビームデバイス。
【請求項3】
前記パルス電圧供給部品が、前記帯電粒子ビームデバイスの引出電極(212)及び/又は追加の電極(812)に接続されている、請求項2に記載の帯電粒子ビームデバイス。
【請求項4】
前記パルス電圧供給部品が、前記電圧供給ユニットを安定動作モードからパルス動作モードに切り換えるように構成されている、請求項1に記載の帯電粒子ビームデバイス。
【請求項5】
前記測定ユニット(142、142’、142”)が、ビーム電流測定システムを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の帯電粒子ビームデバイス。
【請求項6】
前記測定ユニットが、放出角度分布測定システムを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の帯電粒子ビームデバイス。
【請求項7】
前記パルス電圧供給部品が、1秒/kV以下の立ち上がり時間を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の帯電粒子ビームデバイス。
【請求項8】
前記エミッタユニットが、ガス電界イオン源である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の帯電粒子ビームデバイス。
【請求項9】
エミッタチップを含むエミッタユニットを有する帯電粒子ビームデバイスを作動させる作動方法であって、
静電圧を供給することによって帯電粒子ビームを放出するステップと、
測定結果を供給するために前記帯電粒子ビームの特性を測定するステップと、
前記測定結果に依存して、前記静電圧に加えて電圧パルスを供給するステップと、
を含む作動方法。
【請求項10】
一連の電圧パルスが供給される、請求項9に記載の帯電粒子ビームデバイスの作動方法。
【請求項11】
少なくとも1つのさらなる測定結果を供給するために前記一連の電圧パルスのうちの2つの電圧パルスの間で測定が繰り返される、請求項9又は10に記載の帯電粒子ビームデバイスの作動方法。
【請求項12】
前記一連の電圧パルスの電圧パルスの数が、前記少なくとも1つのさらなる測定結果に基づいて適合されており、及び/又は前記一連の電圧パルスの各々の若しくはいくつかの、又はすべての電圧パルスの振幅及び/又は期間が、前記少なくとも1つのさらなる測定結果に基づいて適合されている、請求項9〜11のいずれか一項に記載の帯電粒子ビームデバイスの作動方法。
【請求項13】
前記一連の電圧パルスの各々の若しくはいくつかの、又はすべての電圧パルスの前記振幅が、電界蒸発閾値よりも下であり、前記電界蒸発閾値よりも上であるように大きくされる、請求項9〜12のいずれか一項に記載の帯電粒子ビームデバイスの作動方法。
【請求項14】
前記電圧パルスの前記期間が、5秒以下である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の帯電粒子ビームデバイスの作動方法。
【請求項15】
前記電圧パルスの前記振幅が、前記静電圧の5%〜30%の範囲内である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の帯電粒子ビームデバイスの作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−123683(P2009−123683A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−229863(P2008−229863)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(501493587)アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー (25)
【Fターム(参考)】