説明

自動ドア開閉制御用反射型センサ

【課題】自動ドアの近傍の床面や壁面などに存在する金属やガラスなどの強反射材による反射光を拾わないようにする。
【解決手段】自動ドア近傍を監視領域Fとして、自動ドアに対して所定の位置に配置され監視領域Fに向けて赤外線を出射する赤外線発光素子10と、自動ドアに対して所定の位置に配置され監視領域Fからの反射光を受光する赤外線受光素子20とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、赤外線発光素子10から監視領域Fに至る光往路Aに、赤外線発光素子10から出射される赤外線に含まれているS偏光成分のみを通過させる第1偏光フィルタ11を配置するとともに、監視領域Fから赤外線受光素子20に至る光復路Bに、反射光に含まれているP偏光成分のみを通過させる第2偏光フィルタ21を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を利用した自動ドア開閉制御用反射型センサに関し、さらに詳しく言えば、金属やガラスなどの光反射材から反射される強い反射光による自動ドアの誤動作を防止する自動ドア開閉制御用反射型センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線を利用した自動ドア開閉制御用反射型センサ(以下、単に「反射型センサ」ということがある。)においては、自動ドアの上方に赤外線発光素子と赤外線受光素子とが並設され、自動ドア近傍の床面を監視領域として、赤外線発光素子よりその監視領域に向けて赤外線を照射し、監視領域からの反射光を赤外線受光素子にて受光し、その受光量の変化にて自動ドアに接近する人などの物体を検知し、自動ドアに開信号を与えるようにしている。
【0003】
通常、赤外線発光素子には赤外線発光ダイオードが用いられ、赤外線受光素子にはフォトダイオードが用いられる。また、多くの場合、その取り付け位置には自動ドアの無目部分が選択され、設置時に床面や周囲の壁面などからの反射を考慮して最適な感度となるように感度調整が行われる。
【0004】
また、設置後の例えば床面のワックスがけや床面の汚れなどによる反射率の変化による影響に対しては、全体の反射光量に対して自動追尾型の感度調整機能を持たせ、ある程度の幅で全体の感度(閾値)を変更することにより対処するようにしている(類例として、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−3750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、設置後にインテリア改修などにより、監視領域の床面に例えば金属鋲が打たれたり、また、自動ドア近傍にガラス装飾品などの強反射材が設置され、その強反射材に赤外線発光素子から出射された赤外線があたり強い反射光が発生した場合には、上記自動追尾型の感度調整機能では対応することができず、自動ドアが突然開いたりすることがある。
【0007】
また、上記強反射材による多重反射は鋭い指向性を持つことが多いため、当初はその反射光のレイトレースが赤外線受光素子に戻ることがなくても、荷重変化などにより建物に歪みが生じたりすると、反射光が突然赤外線受光素子に入射することもある。
【0008】
このような設置後に生ずる誤動作の原因解明は、その時々で現場で対応せざるを得ないが、赤外線であるがゆえに不可視であるため、上記強反射材による反射光のレイトレースは容易でなく、その原因解明に多くの時間を要することになる。
【0009】
一方で、上記強反射材による反射光の存在を想定して、あらかじめ制御系全体の感度を落とすと、感度不足により本来検知すべき人が接近しても自動ドアが開かないことがあるため、その感度調整には何回もの試行錯誤を要し、時間的に不経済でもある。
【0010】
したがって、本発明の課題は、自動ドアの近傍の床面や壁面などに存在する金属やガラスなどの強反射材による反射光を拾わないようにした自動ドア開閉制御用反射型センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
赤外線には、直線偏光として入射面に対して垂直(ドイツ語でsenkrecht)なS偏光成分と、入射面に対して平行(parallel)なP偏光成分とが含まれており、このうち、S偏光成分は金属やガラスなどの強反射材により全反射された場合、その偏光面が維持され反射光はS偏光である。これに対して、拡散反射の場合にはS偏光が崩れ、その反射光にはS偏光成分とP偏光成分の双方が存在する。
【0012】
なお、屈折率の異なる物質の界面で反射される光が完全に偏光となる入射角度をブリュースター角(または偏光角)と言い、P偏光成分の反射光はブリュースター角でほぼ「0」まで減少してその後増加するのに対して、S偏光成分は単調に増加すると言う特性を有している。
【0013】
本発明は、この点に着目してなされたもので、上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、自動ドア近傍を監視領域として、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域に向けて赤外線を出射する赤外線発光素子と、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域からの反射光を受光する赤外線受光素子とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、上記赤外線発光素子から上記監視領域に至る光往路に配置され、上記赤外線発光素子から出射される赤外線に含まれているS偏光成分のみを通過させる第1偏光フィルタと、上記監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路に配置され、上記反射光に含まれているP偏光成分のみを通過させる第2偏光フィルタとを備えていることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1における上記第1偏光フィルタにPS偏光変換素子が用いられることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明は、自動ドア近傍を監視領域として、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域に向けて赤外線を出射する赤外線発光素子と、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域からの反射光を受光する赤外線受光素子とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、上記赤外線発光素子から上記監視領域に至る光往路に配置され、上記赤外線発光素子から出射される赤外線に含まれているS偏光成分のみを界面反射させるブリュースター角を有する第1偏光反射手段と、上記監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路に配置され、上記反射光に含まれているP偏光成分のみを界面反射させる第2偏光反射手段とを備えていることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の発明は、上記請求項3における上記第2偏光反射手段は上記第1偏光反射手段とほぼ同じブリュースター角を有し、上記第2偏光反射手段の偏光面が上記第1偏光反射手段の偏光面に対して90゜ずらされていることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明は、上記請求項3または4における上記第1偏光反射手段と上記第2偏光反射手段とが、それぞれ平板ガラスなどの平面反射体からなることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明は、上記請求項3または4における上記第1偏光反射手段と上記第2偏光反射手段として、ガラス材などの光学部材からなり界面でS偏光成分を反射させるブリュースター角付近の曲面を有する第1および第2凹面鏡が用いられ、上記第2偏光反射手段としての上記第2凹面鏡の向きが、上記第1偏光反射手段としての上記第1凹面鏡に対して90゜ずらされていることを特徴としている。
【0019】
請求項7に記載の発明は、自動ドア近傍を監視領域として、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域に向けて赤外線を出射する赤外線発光素子と、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域からの反射光を受光する赤外線受光素子とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、上記赤外線発光素子から上記監視領域に至る光往路と上記監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路とに、上記赤外線発光素子から出射される赤外線および上記監視領域からの反射光に含まれるS偏光成分もしくはP偏光成分のいずれか一方の直線偏光成分のみを通過させる同一特性の偏光フィルタがそれぞれ配置されているとともに、上記赤外線発光素子側では上記偏光フィルタの光出射側,上記赤外線受光素子では上記偏光フィルタの光入射側にそれぞれ1/4波長板が配置されていることを特徴としている。
【0020】
請求項8に記載の発明は、自動ドア近傍を監視領域として、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域に向けて赤外線を出射する赤外線発光素子と、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域からの反射光を受光する赤外線受光素子とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、上記赤外線発光素子として、赤外線のS偏光成分のみを出射するレーザー光源が用いられ、上記監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路には、上記反射光に含まれているP偏光成分のみを通過させる偏光フィルタが配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、赤外線発光素子から監視領域に至る光往路に赤外線発光素子から出射される赤外線に含まれているS偏光成分のみを通過させる第1偏光フィルタを配置するとともに、監視領域から赤外線受光素子に至る光復路に反射光に含まれているP偏光成分のみを通過させる第2偏光フィルタを配置したことにより、監視領域に存在する人などによる拡散反射光のみが赤外線受光素子にて受光され、自動ドアの近傍の床面や壁面などに存在する金属やガラスなどの強反射材による反射光が拾われることがないため、自動ドアの信頼性をより高めることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、発光側の第1偏光フィルタにPS偏光変換素子を用いることにより、原理的に第1偏光フィルタで光の強度が1/2になるのを防ぐことができ、これは赤外線発光素子の出力パワーが相対的に下げられることを意味している。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、赤外線発光素子から監視領域に至る光往路に赤外線発光素子から出射される赤外線に含まれているS偏光成分のみを界面反射させるブリュースター角を有する第1偏光反射手段を配置するとともに、監視領域から赤外線受光素子に至る光復路に反射光に含まれているP偏光成分のみを界面反射させる第2偏光反射手段を配置したことにより、請求項1と同じく、監視領域に存在する人などによる拡散反射光のみが赤外線受光素子にて受光され、自動ドアの近傍の床面や壁面などに存在する金属やガラスなどの強反射材による反射光が拾われることがないため、自動ドアの信頼性をより高めることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、第2偏光反射手段は第1偏光反射手段とほぼ同じブリュースター角を有し、第2偏光反射手段の偏光面が第1偏光反射手段の偏光面に対して90゜ずらされているため、第1偏光反射手段と第2偏光反射手段は実質的に同一構成であってよいことになる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、第1偏光反射手段と偏光反射手段とがそれぞれ平板ガラスなどの平面反射体からなるため、構成の簡素化と低コスト化とが図れる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、第1偏光反射手段と第2偏光反射手段として、ガラス材などの光学部材からなり界面でS偏光成分を反射させるブリュースター角付近の曲面を有する第1および第2凹面鏡が用いられ、第2偏光反射手段としての第2凹面鏡の向きが、第1偏光反射手段としての第1凹面鏡に対して90゜ずらされているため、第1凹面鏡と第2凹面鏡は実質的に同一であってよいとともに、凹面鏡の集光作用によりレンズ系を不要として、その分コストの削減が図られる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、赤外線発光素子から監視領域に至る光往路と監視領域から赤外線受光素子に至る光復路とに、赤外線発光素子から出射される赤外線および監視領域からの反射光に含まれるS偏光成分もしくはP偏光成分のいずれか一方の直線偏光成分のみを通過させる同一特性の偏光フィルタをそれぞれ配置するとともに、赤外線発光素子側では偏光フィルタの光出射側,赤外線受光素子では偏光フィルタの光入射側にそれぞれ1/4波長板を配置したことにより、請求項1,2と同じく、監視領域に存在する人などによる拡散反射光のみが赤外線受光素子にて受光され、自動ドアの近傍の床面や壁面などに存在する金属やガラスなどの強反射材による反射光が拾われることがないため、自動ドアの信頼性をより高めることができる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、赤外線発光素子として、赤外線のS偏光成分のみを出射するレーザー光源を用い、監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路には反射光に含まれているP偏光成分のみを通過させる偏光フィルタを配置したことにより、請求項1の構成に比べて、発光側の偏光フィルタが不要である分、コストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、図1ないし図6により、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
まず、図1に示す本発明の第1実施形態について説明する。この第1実施形態に係る反射型センサは、基本的な構成として、赤外線発光ダイオードなどの赤外線発光素子10と、フォトダイオードなどからなる赤外線受光素子20とを備える。なお、図には赤外線発光素子10と赤外線受光素子20とが対としてそれぞれひとつしか示されていないが、実際にはその複数対が用いられる。
【0031】
赤外線発光素子10と赤外線受光素子20は、図示しない自動ドアの例えば無目部分に並設され、赤外線発光素子10は、自動ドア近傍の床面を監視領域Fとして、その監視領域Fに向けて赤外線を出射する。なお、この第1実施形態および後述する各実施形態では、監視領域F内に本来検知すべき物体である人Hと、強反射材である金属鋲Rとが存在していることを想定している。
【0032】
なお、赤外線発光素子10と赤外線受光素子20を例えば自動ドアの側方もしくは斜め上方に配置し、その監視領域に床面のみでなく自動ドア近傍の壁面を含ませてもよく、このような態様も本発明に含まれる。
【0033】
赤外線受光素子20は、監視領域Fからの反射光を受光し、その受光信号を増幅器31を介して制御系に含まれる判定論理回路32に与える。判定論理回路32には、例えばウインドコンパレータが設けられており、反射光の受光量(もしくは強度)が所定の閾値を超えたとき、自動ドアのドアエンジンに開信号を出力する。判定論理回路32は、通常よく用いられるものであってよい。
【0034】
なお、本発明においては、後述するように赤外線発光素子10から出射される光量のうち、赤外線受光素子20は一方向の偏光のみを受光する。したがって、受光光量が低下するので、例えば増幅器31の増幅度を高める必要がある。
【0035】
この第1実施形態では、赤外線発光素子10から監視領域Fに至る光往路Aに第1偏光フィルタ11と投光レンズ12とが配置され、監視領域Fから赤外線受光素子20に至る光復路Bに第2偏光フィルタ21と集光レンズ22とが配置される。
【0036】
発光側の第1偏光フィルタ11は、赤外線発光素子10から出射される赤外線に含まれているS偏光成分のみを通過させる偏光フィルタであり、受光側の第2偏光フィルタ21は、監視領域Fからの反射光に含まれているP偏光成分のみを通過させる偏光フィルタである。第1偏光フィルタ11と第2偏光フィルタ21には、回折格子型や偏光フィルムなど各種のものを使用することができる。
【0037】
これによれば、赤外線発光素子10からS偏光成分のみの赤外光(S偏光光)が監視領域Fに照射される。このS偏光光のうち、金属鋲Rで全反射された反射光は、その偏光面が維持され依然としてS偏光光であるため、受光側の第2偏光フィルタ21で阻止されることになり、赤外線受光素子20には入射されない
【0038】
これに対して、人Hによる反射は拡散反射であるためS偏光光の偏光が崩れ、その反射光にはS偏光成分とP偏光成分とが含まれる。したがって、そのP偏光成分の赤外光(P偏光光)のみが受光側の第2偏光フィルタ21を通過して、赤外線受光素子20に入射されることになる。判定論理回路32は、このP偏光光の変動量(もしくは強度)に基づいてドアエンジンに「ドア開」もしくは「ドア閉」信号を出力する。
【0039】
なお、ここで説明する実施形態では、説明の便宜上、発光側をS偏光,受光側をP偏光としているが、これらは直交する偏光であればよい。
【0040】
このようにして、金属やガラスなどの強反射材から全反射される指向性の強い反射光が除去されるのであるが、第1偏光フィルタ11に、例えば特開平2004−145305号公報に記載されているようなPS偏光変換素子を用いることにより、原理的に第1偏光フィルタ11で光の強度が1/2になるのを防ぐことができ、これにより赤外線発光素子10の出力パワーを相対的に下げることができる。
【0041】
また、赤外線発光素子10として、図2に示す赤外レーザ光源110を用いることもできる。この赤外レーザ光源110は任意の偏光光を出射し得るレーザ光源で、レーザ発生部111の一方の出射面111a側に被照射体に向けてレーザ光を照射するハーフミラー112が配置され、他方の出射面111b側にレーザ光を増幅するための光反射板113が配置されている。
【0042】
この赤外レーザ光源110によると、例えば他方の出射面111b側のブリュースター角θaを選択し、その偏光モードで発振させることにより、S偏光の赤外レーザを得ることができる。したがって、この赤外レーザ光源110を用いることにより、発光側の第1偏光フィルタ11を省略することができる。
【0043】
なお、発光側の投光レンズ12と受光側の集光レンズ22は、偏光フィルタ11,21の前後のいずれかに配置されてよいが、赤外線発光素子10と赤外線受光素子20とが複数個用いられる場合には、偏光フィルタの使用個数(コスト)を削減するうえで、赤外線発光素子10側と赤外線受光素子20側とに配置されることが好ましい。
【0044】
次に、図3に示す本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態における第1,第2偏光フィルタ11,12に代えて、赤外線発光素子10から監視領域Fに至る光往路Aに第1偏光反射板13が配置され、監視領域Fから赤外線受光素子20に至る光復路Bに第2偏光反射板23が配置される。
【0045】
第1偏光反射板13と第2偏光反射板23は、ともに平板ガラスなどの平面反射体からなり、発光側の第1偏光反射板13は、赤外線発光素子10から出射される赤外線の入射角がS偏光成分のみを界面反射させるブリュースター角θbとなるように配置される。
【0046】
これに対して、受光側の第2偏光反射板23は、監視領域Fからの反射光に含まれているP偏光成分のみを界面反射させる。これを実現するには、S偏光成分とP偏光成分は偏波面が90゜ずれているため、第2偏光反射板23に対する反射光の入射角が第1偏光反射板13と同じブリュースター角θbとなるようにして、第2偏光反射板23の偏光面を第1偏光反射板13の偏光面に対して90゜ずらせばよい。
【0047】
この第2実施形態においても、発光側の第1偏光反射板13によりS偏光成分のみの赤外光(S偏光光)が監視領域Fに照射され、金属鋲Rで全反射されたS偏光の反射光は、受光側の第2偏光反射板23で阻止されることになるため、赤外線受光素子20には入射されない
【0048】
これに対して、人Hによる反射は拡散反射で、その反射光にはS偏光成分とP偏光成分とが含まれることになり、そのうちのP偏光成分の赤外光(P偏光光)のみが受光側の第2偏光反射板23により選択されて、赤外線受光素子20に入射されることになる。
【0049】
なお、この第2実施形態では、投光レンズ12と集光レンズ22は、それぞれ赤外線発光素子10と赤外線受光20側とに配置されているが、場合によっては、上記第1実施形態のように反素子10,20側に配置されてもよい。
【0050】
次に、図4により本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、特に赤外線発光素子10と赤外線受光素子20を複数対(この例では3対)として用いる場合にコスト的に有効であり、上記第2実施形態での第1,第2偏光反射板13,14に代えて、発光側と受光側とに第1,第2凹面鏡14,24を用いる。
【0051】
これによれば、監視領域Fに複数の光スポットを形成する場合、凹面鏡の集光作用により、従来必要とされていた投光レンズ,集光レンズを含むレンズ系が不要となり、その分コスト削減が図れる。
【0052】
第1,第2凹面鏡14,24ともに、好ましくはガラスもしくはPMMAアクリル樹脂やASアクリルスチレン樹脂などの高光学屈折率の透明材からなり界面でS偏光成分を反射させるブリュースター角θb付近の曲面を有する凹面鏡である。
【0053】
この場合、第1,第2凹面鏡14,24は透明材からなるため、それらの裏面側に透過光吸収用の黒色体14a,24aを配置することが好ましい。なお、凹面鏡は必ずしも透明材である必要はなく、屈折率が高ければ黒色体などであってもよい。
【0054】
上記したように、S偏光成分とP偏光成分は位相が90゜ずれているため、受光側の第2凹面鏡24でP偏光成分のみを選択するため、受光側の第2凹面鏡24の偏光面を発光側の第1凹面鏡14の偏光面に対して90゜ずらす。図4に示すように、発光側の第1凹面鏡14の偏光面が正面に向いているとすれば、受光側の第2凹面鏡24の偏光面を横向きとする。
【0055】
この第3実施形態によれば、複数の赤外線発光素子10から出射された赤外線に含まれているS偏光成分のみが第1凹面鏡14にて選択されて監視領域Fに照射される。これに対して、監視領域Fからの反射光は第2凹面鏡24に集められ、その反射光に含まれているP偏光成分のみが選択されて各赤外線発光素子10と対応する各赤外線受光素子20に入射される。
【0056】
なお、各凹面鏡14,24の曲面は、放物面,楕円面,球面,非球面など、用途や精度に応じて種々選択されてよいが、いずれにしても、複数の赤外線発光素子10,複数の赤外線受光素子20に各ひとつの凹面鏡14,24で対応させるためには、各素子10,20を接近させて配置し、焦点付近に近づけることが重要である。また、透明板1枚ではS偏光成分の反射が少ない場合には、透明板を多重に重ねるか、もしくは多重反射膜をガラス面に生成すればよい。
【0057】
また、監視領域Fが広い場合には、図5に示すように、上記第3実施形態による反射型センサを複数台(この例では3台)を並設して用いればよい。この場合、隣接する赤外線受光素子20間での迷光を防止するため、それらの間に遮光カバー24aを配置することが好ましい。
【0058】
次に、図6により本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、金属やガラスなどの強反射材で全反射される反射光は偏光方向が左右反転することに着目したものである。なお、図6において、赤外線受光素子20に接続される増幅回路31および制御系の判定論理回路32は省略されている。
【0059】
この第4実施形態によると、赤外線発光素子1から監視領域Fに至る光往路Aと、監視領域Fから赤外線受光素子20に至る光復路Bとに、赤外線発光素子10から出射される赤外線および監視領域Fからの反射光に含まれるS偏光成分もしくはP偏光成分のいずれか一方の直線偏光成分のみを通過させる同一特性の偏光フィルタ61がそれぞれ配置される。
【0060】
また、発光側では偏光フィルタ61の光出射側,受光側では偏光フィルタ61の光入射側にそれぞれ1/4波長板62が配置される。なお、この例では、1/4波長板62と監視領域Fとの間に投光および集光用のレンズ63が配置されているが、レンズ63は偏光フィルタ61と1/4波長板62との間もしくは素子10,20側に配置されてもよい。
【0061】
例えば、偏光フィルタ61がS偏光成分(S偏光光)のみを通過させる偏光フィルタで、そのS偏光光が1/4波長板62にて例えば左旋回の円偏光に変換されて、監視領域Fに照射され強反射材として例示されている金属鋲Rにて全反射されると、偏光方向が左右反転するため反射光は右旋回の円偏光となる。
【0062】
上記反射光は1/4波長板62にて再度直線偏光に戻されるが、その偏光面は照射時のS偏光と逆のP偏光となっているため、偏光フィルタ61にて通過が阻止される。これにより、強反射材による反射光は赤外線受光素子20にて検出されない。
【0063】
これに対して、人Hなどにより反射された反射光は拡散反射光でS偏光成分とP偏光成分とが含まれているため、このうちのS偏光成分が1/4波長板62にて再度直線偏光に戻され、偏光フィルタ61を通過して赤外線受光素子20にて検出される。
【0064】
このようにして、第4実施形態においても、強反射材による反射光を拾うことなく、自動ドアに近づく人などの物体を確実に検知することができるが、第4実施形態の場合、照射光を1/4波長板62にて円偏光に変換しているため、直線偏光に比べて、傾斜した金属面などによる反射光に対しても効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態を示す模式図。
【図2】上記第1実施形態に適用可能なレーザ光源を示す模式図。
【図3】本発明の第2実施形態を示す模式図。
【図4】本発明の第3実施形態を示す模式図。
【図5】上記第3実施形態の変形例を示す模式図。
【図6】本発明の第4実施形態を示す模式図。
【符号の説明】
【0066】
10 赤外線発光素子
11 第1偏光フィルタ
12 投光レンズ
13 第1偏光反射板
14 第1凹面鏡
20 赤外線受光素子
21 第2偏光フィルタ
22 集光レンズ
23 第2偏光反射板
24 第2凹面鏡
32 判定論理回路
61 偏光フィルタ
62 1/4波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドア近傍を監視領域として、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域に向けて赤外線を出射する赤外線発光素子と、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域からの反射光を受光する赤外線受光素子とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、
上記赤外線発光素子から上記監視領域に至る光往路に配置され、上記赤外線発光素子から出射される赤外線に含まれているS偏光成分のみを通過させる第1偏光フィルタと、上記監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路に配置され、上記反射光に含まれているP偏光成分のみを通過させる第2偏光フィルタとを備えていることを特徴とする自動ドア開閉制御用反射型センサ。
【請求項2】
上記第1偏光フィルタにPS偏光変換素子が用いられることを特徴とする請求項1に記載の自動ドア開閉制御用反射型センサ。
【請求項3】
自動ドア近傍を監視領域として、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域に向けて赤外線を出射する赤外線発光素子と、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域からの反射光を受光する赤外線受光素子とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、
上記赤外線発光素子から上記監視領域に至る光往路に配置され、上記赤外線発光素子から出射される赤外線に含まれているS偏光成分のみを界面反射させるブリュースター角を有する第1偏光反射手段と、上記監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路に配置され、上記反射光に含まれているP偏光成分のみを界面反射させる第2偏光反射手段とを備えていることを特徴とする自動ドア開閉制御用反射型センサ。
【請求項4】
上記第2偏光反射手段は上記第1偏光反射手段とほぼ同じブリュースター角を有し、上記第2偏光反射手段の偏光面が上記第1偏光反射手段の偏光面に対して90゜ずらされていることを特徴とする請求項3に記載の自動ドア開閉制御用反射型センサ。
【請求項5】
上記第1偏光反射手段と上記第2偏光反射手段とが、それぞれ平板ガラスなどの平面反射体からなることを特徴とする請求項3または4に記載の自動ドア開閉制御用反射型センサ。
【請求項6】
上記第1偏光反射手段と上記第2偏光反射手段として、ガラス材などの光学部材からなり界面でS偏光成分を反射させるブリュースター角付近の曲面を有する第1および第2凹面鏡が用いられ、上記第2偏光反射手段としての上記第2凹面鏡の向きが、上記第1偏光反射手段としての上記第1凹面鏡に対して90゜ずらされていることを特徴とする請求項3または4に記載の自動ドア開閉制御用反射型センサ。
【請求項7】
自動ドア近傍を監視領域として、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域に向けて赤外線を出射する赤外線発光素子と、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域からの反射光を受光する赤外線受光素子とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、
上記赤外線発光素子から上記監視領域に至る光往路と上記監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路とに、上記赤外線発光素子から出射される赤外線および上記監視領域からの反射光に含まれるS偏光成分もしくはP偏光成分のいずれか一方の直線偏光成分のみを通過させる同一特性の偏光フィルタがそれぞれ配置されているとともに、上記赤外線発光素子側では上記偏光フィルタの光出射側,上記赤外線受光素子では上記偏光フィルタの光入射側にそれぞれ1/4波長板が配置されていることを特徴とする自動ドア開閉制御用反射型センサ。
【請求項8】
自動ドア近傍を監視領域として、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域に向けて赤外線を出射する赤外線発光素子と、上記自動ドアに対して所定の位置に配置され上記監視領域からの反射光を受光する赤外線受光素子とを含む自動ドア開閉制御用反射型センサにおいて、
上記赤外線発光素子として、赤外線のS偏光成分のみを出射するレーザー光源が用いられ、上記監視領域から上記赤外線受光素子に至る光復路には、上記反射光に含まれているP偏光成分のみを通過させる偏光フィルタが配置されていることを特徴とする自動ドア開閉制御用反射型センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−83010(P2008−83010A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266669(P2006−266669)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(390002668)株式会社本田電子技研 (13)
【Fターム(参考)】