説明

自動二輪車における電装品の支持構造

【課題】本発明は、バッテリの防振対策を講じつつ、防振材の軽量化が図れ、且つ、小型電装品を支持するときに、ボルト等の締結部材を省くことができる電装品の支持構造を提供することを課題とする。
【解決手段】車体フレーム11は、左右のメインフレーム14L、14Rの間に渡されるクロスメンバ90を備え、このクロスメンバ90にバッテリ91を収納する収納部92が形成される。収納部の壁125に、貫通するように棒状の防振材110が複数個配置され、防振材110をバッテリの上面91a及び底面91bに当たるようにクロスメンバ90に取付けた。防振材110は、その一端でバッテリ91を押さえ、他端でその他の電装品111a〜111dを支持させるようにした。バッテリ91と左右のメインフレーム14L、14Rとの間に、防振部材116L、116Rが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車における電装品の支持構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の車体フレームに、電装品を収納保持する技術が知られている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
特許文献1の図2に示されるように、自動二輪車のフレーム(1)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)に、ステアリングヘッド(2)と、ステアリングヘッド(2)から延びるフレーム前部材(15)と、このフレーム前部材(15)の後端に接続される箱部材(16)とが備えられる。
【0004】
箱部材(16)は横長の直方体の中空体で形成され、その両端部に蓋部材(26、26)が着脱可能に設けられる。箱部材(16)の内部に、例えば、バッテリなど複数個の電装品が収納可能となる。
【0005】
バッテリは、箱部材(16)に挿入され保持されているが、防振対策を行う場合には、車両の軽量化を考えると改良の余地がある。
【0006】
また、フューズボックス等バッテリに比較して小型で軽量な電装品を箱部材(16)の外面に取付ける場合は、小型電装品をボルト等の締結部材で箱部材(16)に締結する。するとボルトの調達コストが嵩む。
【0007】
大型で重いバッテリの防振対策を講じつつ、防振材の軽量化が図れ、且つ、小型電装品を支持するときに、ボルト等の締結部材を省くことができる支持構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第2575106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、バッテリの防振対策を講じつつ、防振材の軽量化が図れ、且つ、小型電装品を支持するときに、ボルト等の締結部材を省くことができる電装品の支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、自動二輪車の車体フレームに、バッテリ等の電装品を搭載するときの電装品支持構造であって、バッテリを収納する収納部の壁に、貫通するように棒状の防振材を複数個配置し、これらの防振材の一端でバッテリを押さえ、防振材の他端でその他の電装品を支持させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、車体フレームは、前輪を支えるヘッドパイプと、このヘッドパイプから延びる左右のメインフレームと、これらの左右のメインフレームの間に渡されるクロスメンバとを備え、収納部は、クロスメンバに形成し、防振材は、バッテリの上面及び底面に当たるようにクロスメンバに取付けたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、バッテリの車幅方向左右端部と左右のメインフレームとの間に、他の電装品を包み振動の伝達を阻止する防振部材が配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、自動二輪車の車体フレームに、バッテリ等の電装品を搭載するときの電装品支持構造であって、車体フレームは、ヘッドパイプと、このヘッドパイプから車幅方向左右に車両後方へ延ばされる左右のメインフレームとを備え、これらの左右のメインフレームの間に、これらの左右のメインフレームを跨ぐように配置され電装品を取付ける電装品取付部材が複数の防振材を介して支持され、更に、電装品取付部材に棒状の防振材を介して電装品が取付けられることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明では、防振材は、壁又は車体フレームに設ける穴径に対応する外径の円柱部と、この円柱部の両端に設けられ円柱部に接続する基部が円柱部よりも外径が大きく基部から延びる先端部の外径が基部よりも小径である円錐部と、円柱部を壁の厚さ又は車体フレームの厚さとその他の電装品のフランジ厚さとに対応するように円柱部の中央に一体形成される鍔部とからなることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明では、円柱部の中心及び一対の円錐部の中心が空洞になるように軸方向穴が開けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、バッテリを収納する収納部の壁に、棒状の防振材が複数個配置される。バッテリは、複数の防振材の一端で押さえられているため、バッテリに、エンジンの振動や走行に伴う車両振動を伝達され難くすることができる。
【0017】
また、複数の防振材の他端にその他の電装品が取付けられる電装品取付部が設けられている。すなわち、その他の電装品は、防振材の他端に設けた電装品取付部にラバーマウントされている。従って、電装品に、エンジンの振動や走行に伴う車両振動を伝達され難くすることができる。
【0018】
さらに、バッテリをゴム板で包む支持構造に較べて、本発明の電装品支持構造は、棒状の防振材を複数配置するだけであるから、防振材の軽量化が図れる。
加えて、その他の電装品は、ボルト等の締結部材を使用することなく、棒状の防振材を介して支持させるようにした。すなわち、本発明では、その他の電装品を止めるために新たな締結部材を必要としない。
【0019】
請求項2に係る発明では、バッテリ収納部の下面及び上面に各々複数の防振材が取付けられ、これらの防振材でバッテリの動きを規制するようにした。
バッテリ収納部の下面及び上面に断続的に配置した防振材でバッテリを支持させたので、バッテリ収納部の下面及び上面の一面に防振材を設ける場合に較べて、防振材の使用量を一層抑えながら所定の防振作用を容易に確保させることができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、バッテリの車幅方向左右端部と左右のメインフレームとの間に、防振部材が配置されている。
バッテリに車幅方向左右の力がかかったときに、バッテリの左右端部は、第2の防振材に当接する。バッテリの上下面に加えて、バッテリの左右端部にも防振作用をもたせたので、より効果的にバッテリへ防振作用を発揮させることができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、メインフレームに防振材を介して電装品取付部材が取付けられ、この電装品取付部材に防振材を介して電装品が取付けられる。すなわち、電装品はフレームに対して2つの防振材で2重に防振されている構造としたので、高い防振作用を発揮させることができる。
【0022】
加えて、電装品は棒状の防振材を介して取付けられている。ボルト締結手段を用いることなく防振材を介して電装品取付部に電装品を取付可能にしたので、電装品取付工数を減らすことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、防振材は、中央部に設けた鍔部と、両端にテーパ状の円錐部及び基部とからなり、鍔部に対して両側が同じ形状とされている。
棒状の防振材は、鍔部を境に両側が同じ形状であるため、穴部にどちらの端部を差し込んでも組付可能である。このように、防振材に指向性がないため、防振材の組付性を高めることができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、円柱部の中心及び一対の円錐部の中心が空洞になるように軸方向穴が開けられている。
防振材の円柱部及び円錐部の中心に軸方向穴を設けることで、収納部又は車体フレームの穴に防振材を挿入する際に、円柱部及び円錐部が変形し易くなり、防振材の挿入作業性が高まる。結果、防振材の組付性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】自動二輪車の前部平面図である。
【図3】バッテリを収納する収納部を備えた車体フレームの斜視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】車体フレームに収納される電装品の支持構造に係る分解斜視図である。
【図6】防振材の他端に電装品が嵌合される構造を説明する分解斜視図である。
【図7】防振材の断面図である。
【図8】図5の別実施例図である。
【図9】図8の組立完了時の斜視図である。
【図10】図9の10−10線断面図である。
【図11】図9の11−11線断面図である。
【図12】変形例に係る車体フレームの斜視図である。
【図13】左右のメインフレームに電装品を取付手順を説明する図である。
【図14】図12の14−14線断面図である。
【図15】図7の別実施例図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0027】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10の車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延出されエンジン13を支持するメインフレーム14と、このメインフレーム14の後端部に設けられスイングアーム28を支持するピボットプレート22と、メインフレーム14の後端上部から後方に延ばし乗員シート15を支持しリヤフェンダ17を含む車体後部18を支持するリヤフレーム19とからなる。
【0028】
ピボットプレート22には、ピボット軸27が設けられ、このピボット軸27から後方にスイングアーム28が延ばされ、このスイングアーム28とメインフレーム14の間に衝撃を吸収するリヤクッションユニット29が設けられ、スイングアーム28の先端部に、後輪31が取り付けられている。後輪31は、エンジン13と後輪31との間をつなぐ図示せぬドライブシャフトによって駆動される。
【0029】
ヘッドパイプ12には、フロントフォーク24が設けられており、このフロントフォーク24の下端部に前輪25が取付けられ、フロントフォーク24の上端部に前輪25を操舵するハンドル26が設けられる。すなわち、ヘッドパイプ12で前輪25を支える。
【0030】
メインフレーム14には、エンジン13(V型4気筒エンジン13)が搭載されている。エンジン13は、第1〜第4支持点30a〜30dを介してメインフレーム14及びピボットプレート22に支持されている。
【0031】
V型4気筒エンジン13は、クランクケース37と、このクランクケース37に設けたクランク軸34を中心に斜め前上方に延びている前シリンダ35と、クランク軸34を中心に斜め後上方に延びている後シリンダ36とがV字状に配置される。
【0032】
V型4気筒エンジン13には、排気装置33が備えられている。
排気装置33は、各シリンダ35、35、36、36から延びている排気管41a〜41dと、これらの排気管41a〜41dが集合され排気ガスの浄化を行う触媒管45と、この触媒管45から延びている全体集合管46と、この全体集合管46に連結される消音器47とから構成されている。
【0033】
図中、51はエンジン13を冷却するラジエータユニット、52L、52R(手前側の符号52Lのみ示す。以下同じ。)はフロントフォークに設けたフロントデイスクブレーキキャリパ、53L、53R(手前側の符号53Lのみ示す。以下同じ。)は前輪25に設けられフロントデイスクブレーキキャリパ52L、52Rによって挟持されるフロントデイスクプレート、54は操舵ハンドルに設けたフロントマスタシリンダ、56はメインフレーム14に取付けた燃料タンクを覆い後述するカウル部70を兼ねる燃料タンクカバー、57L、57R(手前側の符号57Lのみ示す。以下同じ。)はメインフレーム14に取付けた運転者用ステップ、58L、58R(手前側の符号58Lのみ示す。以下同じ。)はリヤフレーム19に取付けた同乗者用ステップ、59はヘッドライト、60はフロントフェンダ、61L、61R(手前側の符号61Lのみ示す。以下同じ。)はミラー、62はリヤデイスクブレーキキャリパ、63は後輪31に設けられリヤデイスクブレーキキャリパ62によって挟持されるリヤデイスクプレート、65はメインスタンドである。
【0034】
以下、自動二輪車10の主に外観部を構成するカウル部70について説明を行う。
カウル部70には、車体フレーム11の前方を覆うフロントカウル部72と、このフロントカウル部72に連続して設け車両の側方を覆うサイドカウル部73と、エンジン13の下方に設けられるアンダカウル部74とが備えられており、風よけや車両の外観性を高めることなどを目的とする。
【0035】
図2に示すように、車体フレーム11の前端部を構成するヘッドパイプ12の前方にカウルとしてのウインドスクリーン77を支持するカウルステー71が設けられ、このカウルステー71に、メータ部79が取り付けられている。メータ部79は、速度計、ウインカ表示、変速機のモード表示などを行うものである。また、カウルステー71には、左右の後方視認用ミラー61L、61Rが取り付けられている。
【0036】
ヘッドパイプ12には、前輪25を操舵するハンドル26が回動可能に設けられており、このハンドル26の右側には、ブレーキレバー83の操作力を液圧に変換するフロントマスタシリンダ54(マスタシリンダ54)が設けられ、このマスタシリンダ54の上方に付設され余剰のブレーキ液を貯めるリザーブタンク84が設けられ、ハンドル26の左側にクラッチレバー85の操作力を液圧に変換するクラッチマスタシリンダ55が設けられ、このクラッチマスタシリンダ55の上方に付設され余剰のクラッチ液を貯めるクラッチ液リザーブタンク86が設けられている。
図中、81L、81Rはハンドル26の先端部に設けられ運転者が握るグリップ部、82はエンジンなどをオンオフするキーシリンダである。
【0037】
次に、バッテリを収納する収納部が備えられている車体フレームを説明する。
図3に示すように、車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延出されエンジン(図1、符号13)を支持する左右のメインフレーム14L、14Rと、これらの左右のメインフレーム14L、14Rの後部間に渡されるクロスメンバ90とを備える。このクロスメンバ90にバッテリ(図4、符号91)を収納する収納部92が形成されている。
次図にて、バッテリを収納する収納部の構造について詳細に説明する。
【0038】
図4に示すように、左右のメインフレーム14L、14Rの上面に、上方に向け左右のステー93L、93Rが延ばされ、左右のステー93L、93Rの間にクロスメンバ90が渡され、このクロスメンバ90にバッテリ91等の電装品を収納する収納部92が形成されている。図には、自動二輪車の車体フレームに、バッテリ等の電装品を搭載するときの電装品支持構造が示されている。
【0039】
クロスメンバ90は、例えば、アルミダイカスト製であり、締結部材94、94を介して左右のステー93L、93Rに締結される。クロスメンバ90は、バッテリの底面91bに臨むように設けられる底板97と、この底板97の車幅方向左右に立ち上がる左右の第1壁部98L、98Rと、これらの左右の第1壁部98L、98Rから車幅方向外方に延ばされる左右の中段面99L、99Rと、これらの左右の中段面99L、99Rの外端部に高さ方向に延ばされる左右の第2壁部101L、101Rと、左右の第2壁部101L、101Rの間に渡されバッテリの上面91aを臨むように設けられる断面コ字状の上板102とを主要素とする。
【0040】
クロスメンバ90の底板97と上板102とに各々高さ方向に複数の穴部103が形成され、これらの穴部103に貫通するように弾性材にて形成され棒状を呈し振動の伝達を阻止する複数の防振材110が嵌合されている。
【0041】
すなわち、バッテリ91を収納する収納部92の壁125に、貫通するように棒状の防振材110を複数個配置し、これらの防振材の一端110aでバッテリ91を押さえ、防振材の他端110bでその他の電装品111a〜111dを支持させるようにした。防振材110のうちの多数は、バッテリの上面91a及び底面91bに当たるようにクロスメンバ90に取付けられている。
【0042】
左右の第2壁部101L、101Rの車幅方向内方で左右の中段面99L、99Rに、バッテリ91と左右の第2壁部101L、101Rの間を埋めるように防振部材116L、116Rが載置されている。これらの防振部材116L、116Rは、発泡材で形成され、これらの防振部材116L、116Rに他の電装品112a、112bが包まれている。すなわち、バッテリ91の車幅方向左右端部と左右のメインフレーム14L、14Rとの間に、他の電装品112a、112bを包み振動の伝達を阻止する防振部材116L、116Rが配置されている。
なお、クロスメンバ90の構成要素である上板102は、その両端部が複数のグロメット117を介して左右の第2壁部101L、101Rに取付けられている。
【0043】
次に、車体フレームに設けた電装品支持構造の全体を説明する。
図5に示すように、左右のメインフレーム14L、14Rの間にクロスメンバ90が渡され、このクロスメンバ90に収納部92が形成され、この収納部92の底板(図4、符号97)に複数の防振材110が分散配置され、上板102にも複数の防振材110が分散配置され、バッテリの上面91a及び底面91bに防振材の一端(図4、符号110a)が当たるようにバッテリ91が収納部92に収納される。防振材の他端(図4、符号110b)がその他の電装品111a〜111dを支持している。
収納部92において、バッテリ91の車幅方向左右には、分割された発泡材で構成され他の電装品112a、112bを包む防振部材116L、116Rが配置されている。
【0044】
次に、防振材の他端にその他の電装品が嵌合される構造について説明する。
図6に示すように、その他の電装品111は、フランジ113を有し、このフランジ113に防振材110の円柱部121が通る溝114が形成されている。溝114の幅(外径)は、後述する防振材の基部(図7、符号122)の外径よりも小さく形成され、その他の電装品110に形成した溝114、114を防振材110へ図矢印a方向に嵌合させることで、車体フレーム11にその他の電装品111を取付けることができる。その他の電装品110は110a〜110dを指すものである。
【0045】
次に、防振材の詳細な構造を説明する。
図7に示すように、防振材110は、円柱部121と、この円柱部121の両端に各々設けられ円柱部121に接続する基部122が円柱部121よりも外径が大きく基部122、122から延びる先端部の外径が基部122、122よりも小径である円錐部123、123と、円柱部121を壁(図4、符号125)の厚さとその他の電装品111a〜111dのフランジ(図6、符号113)の厚さとに区分するように円柱部121の途中に一体形成される鍔部124とからなる。
【0046】
円柱部121は、収納部の壁(図4、符号125)に設けた複数の穴(図4、符号103)の径に対応する外径を有する。
また、円柱部121及び円錐部123には、円柱部121の中心及び一対の円錐部123の中心が空洞になるように軸方向穴126が開けられている。
【0047】
すなわち、防振材110は、中央部に設けた鍔部124と、両端にテーパ状の円錐部123及び基部122とからなり、鍔部124に対して両側が同じ形状とされる。
棒状の防振材110は、鍔部124を境に両側が同じ形状であるため、車体フレーム11側に開けた穴部103にどちらの端部を差し込んでも組付可能である。このように、防振材110に指向性がないため、防振材110の組付性を高めることができる。
【0048】
さらに、防振材の円柱部121及び円錐部123の中心に軸方向穴126を設けることで、収納部の穴126に防振材110を挿入する際に、円柱部121及び円錐部123が変形し易くなり、防振材110の挿入作業性が高まる。結果、防振材110の組付性を一層高めることができる。
なお、防振材の軸方向穴を省略することは差し支えない。
【0049】
以上に述べた電装品の支持構造の作用を次に述べる。
図4に戻って、複数の防振材の一端110aでバッテリ91が押さえられているため、バッテリ91に、エンジン13の振動や走行に伴う車両振動を伝達され難くすることができる。
【0050】
また、複数の防振材の他端110bにその他の電装品111a〜111cが取付けられる電装品取付部としての上板102が設けられている。すなわち、その他の電装品111a〜111cは、防振材の他端110bに設けた上板102にラバーマウントされている。クロスメンバ90の底板97にも、上記同様に電装品112dがラバーマウントされている。従って、電装品112a〜112dにエンジンの振動や走行に伴う車両振動を伝わり難くすることができる。
【0051】
さらに、複数の防振材110は、各々、車体フレーム11のクロスメンバ90を貫通するように配置され、これらの防振材110の両端にてバッテリ91及び電装品111a〜111dを支持するようにした。ボルト締結手段を用いることなく防振材110を介して収納部92にバッテリ91及び電装品111a〜111dを取付可能にしたので、電装品取付工数を減らすことができる。
【0052】
また、防振材110の一端及び他端にてバッテリ91及び電装品111a〜111dを支持させたので、防振材の片側の一端で電装品を支持する場合に較べて、電装品112a〜112dを効率良く支持し、取付けることができる。加えて、防振材110の両端にバッテリ91及び電装品112a〜112dを配置したので、バッテリ91及び電装品111a〜111dを一箇所に集中配置することができる。
【0053】
バッテリ収納部の底板97及び上板102に各々複数の防振材110が取付けられ、これらの防振材110でバッテリ91の動きを規制するようにした。
バッテリ収納部92の底板97及び上板102に断続的に配置した防振材110でバッテリ91を支持させたので、バッテリ収納部の底板及び上板に一面に渡って防振材を設ける場合に較べて、防振材110の使用量を抑えながら所定の防振作用を容易に確保させることができる。
【0054】
バッテリ91の車幅方向左右端部と左右のメインフレーム14L、14Rとの間に、防振部材116L、116Rが配置されている。
バッテリ91に車幅方向左右の力がかかったときに、バッテリ91の左右端部は、第2の防振材に当接する。バッテリ91の上下面に加えて、バッテリ91の左右端部にも防振部材116L、116Rによる防振作用をもたせたので、バッテリ91により効果的に防振作用を効かせることができる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図8に示すように、車体フレーム11Bは、ヘッドパイプ12Bと、このヘッドパイプ12Bから車幅方向左右に車両後方へ延ばされる左右のメインフレーム14BL、14BRとを備える。これらの左右のメインフレーム14BL、14BRの間に、これらの左右のメインフレーム14L、14Rを跨ぐように配置される基板131が複数の防振材110を介して支持され、更に、基板131に棒状の防振材110を介して電装品112a、112bが取付けられている。
すなわち、電装品112a、112bを取付ける電装品取付部材としての基板131が複数の防振材110を介して支持されている。
【0056】
図9に示すように、ヘッドパイプ12Bから左右後方へ延ばされる左右のメインフレーム14BL、14BRの間にてヘッドパイプ12Bの直後に、電装品112a、112bが取付けられている基板131が配置されている。基板131の形状は平面視で左右のメインフレーム14L、14Rの輪郭に合わせた形状とした。
【0057】
図10に示すように、左右のメインフレーム14BL、14BRに設けた左右のフランジ部132L、132Rに開けた穴126、126に防振材110に設けた下の円柱部121が嵌合される。左右のフランジ部132L、132Rは、各々、防振材110に設けた鍔部124と下基部122とにより挟持される。この防振材110の鍔部124に基板131が載置され上の円柱部121に基板131が嵌合されると共にこの基板131は上方から上基部122にて保持される。
【0058】
基板131には、同様な防振材110が立設され、これらの防振材110に電装品112a、112bが取付けられる。なお、電装品の取付構造は、図6に示した構造と大きく変わるところはなく、説明を省略する。
【0059】
図11に示すように、左右のメインフレーム14BL、14BRの前部に車幅方向に前クロスメンバ130が渡され、この前クロスメンバ130に、高さ方向に複数の穴133が開けられ、これらの穴133に各々防振材110が嵌合され、これらの防振材110に基板131を取付けたものである。防振材110及びその周辺部の嵌合取付構造については、前述した図10と大きく変わるところはなく、説明を省略する。
【0060】
以下、防振材の寸法関係について説明する。
図7に戻って、防振材の円柱部121は、車体フレーム11Bに設ける穴径に対応する外径Daと、この円柱部の両端に設けられ円柱部121に接続する基部122が円柱部121よりも大きな外径Dbを有し(Da<Db)、基部122から延びる先端部の外径が基部122よりも小径である外径Dc(Dc<Db)をもつ円錐部123と、円柱部121を壁の厚さ又は車体フレームの厚さとその他の電装品のフランジ厚さと区分するように円柱部121の途中に一体形成される鍔部124とからなる。
【0061】
次に、第2実施例の作用説明を行う。
図8に戻って、メインフレーム14BL、14BRに複数の防振材110を介して電装品取付部材(基板131)が取付けられ、この基板131に防振材110を介して電装品112a、112bが取付けられる。すなわち、電装品112a、112bはフレームに対して2重に防振して取付けられる構造としたので、高い防振作用を発揮させることができる。
【0062】
加えて、電装品112a、112bは棒状の防振材110を介して取付けられている。ボルト締結手段を用いることなく防振材110を介して基板131に電装品を取付可能にしたので、電装品取付工数を減らすことができる。
【0063】
次に、車体フレームに電装品を収納する変形例について説明する。
図12に示すように、車体フレーム11Cは、ヘッドパイプ12Cと、このヘッドパイプ12Cから後方に延出されエンジン13を支持する左右のメインフレーム14CL、14CRと、左右のメインフレーム14CL、14CRの後端部から下方に延ばされるピボットプレート22CL、22CRとを備える。
【0064】
図13(a)に示すように、断面ロ字状を呈する右のメインフレーム14CRの一部が、車幅内側に開放される断面コ字状を呈するように切り欠かれて収納部141が形成されている。メインフレーム14CRの上板143と下板144とに各々車幅方向外方に向けラバーで形成されたOリング145が係合されるスリット状の溝部146が形成される。
【0065】
図示せぬ電装品は発泡材147が包まれており、この発泡材147を収納部92にセットし、Oリング145を溝部146に渡することで、電装品が包まれている発泡材147をメインフレーム14CRに固定した。なお、右のメインフレーム14CRに、左のメインフレーム14CLと同様な構造が形成されている。説明は省略する。
図13(b)に示すように、電装品(図14、符号148L、148R)が包まれている発泡材147、147が、メインフレーム14CL、14CRに固定されている。
【0066】
図14に示すように、左右のメインフレーム14CL、14CRに、収納部92が形成され、これらの収納部92に各々電装品148L、148Rが包まれている発泡材147、147が収納され、各々、Oリング145、145によって固定されている。このように、左右のメインフレーム14CL、14CRに形成される収納部141、141を利用して電装品を収納することで、配置スペース小さく且つ配置スペースが限定されるなど制約が大きい電装品をデッドスペースになり易い空間を有効利用して配置することができる。加えて、ボルト、ナット等の締結部材を用いることなくOリング145で保持するようにしたので、着脱工数を減らすことができる。
なお、メインフレームの断面は、断面コ字状のものでも差し支えない。
【0067】
次に、防振材の他の形態について説明する。
図15に示すように、防振材110Bは、円柱部121Bと、この円柱部121Bの両端に設けられ円柱部121Bに接続する基部122が円柱部121Bよりも外径が大きく基部122から延びる先端部の外径が基部122よりも小径である円錐部123と、円柱部121を壁の厚さとその他の電装品のフランジの厚さと区分するように円柱部121の途中に一体形成される鍔部124とからなる。図7と異なる点は、上下の円柱部の外径が変化する点にあり、その外径は、鍔部124と基部の中間点で最も小さくなるように設定されている。その他、大きく異なるところはなく説明を省略する。
【0068】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、鞍乗り型三輪車にも適用可能であり、一般の鞍乗り型車両に適用することは差し支えない。
請求項2では、バッテリの車幅方向左右端部と前記左右のメインフレームとの間に、配置する防振部材を省略することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0070】
10…自動二輪車、11、11B…車体フレーム、12…ヘッドパイプ、14L、14R…左右のメインフレーム25…前輪、90…クロスメンバ、91…バッテリ、91a…バッテリの上面、91b…バッテリの底面、92…収納部、110…防振材、111a〜111d…その他の電装品、112a、112b…電装品、113…、116L、116R…左右の防振部材、121…円柱部、122…基部、123…円錐部、124…鍔部、125…収納部の壁、126…軸方向穴、131…電装品取付部材(基板)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の車体フレーム(11)に、バッテリ(91)等の電装品を搭載するときの電装品支持構造であって、
前記バッテリ(91)を収納する収納部の壁(125)に、貫通するように棒状の防振材(110)を複数個配置し、これらの防振材(110)の一端で前記バッテリ(91)を押さえ、前記防振材(110)の他端でその他の電装品(111a〜111d)を支持させるようにしたことを特徴とする自動二輪車における電装品の支持構造。
【請求項2】
前記車体フレーム(11)は、前輪(25)を支えるヘッドパイプ(12)と、このヘッドパイプ(12)から延びる左右のメインフレーム(14L、14R)と、これらの左右のメインフレーム(14L、14R)の間に渡されるクロスメンバ(90)とを備え、
前記収納部(92)は、前記クロスメンバ(90)に形成し、前記防振材(110)は、前記バッテリ(91)の上面及び底面に当たるように前記クロスメンバ(90)に取付けたことを特徴とする請求項1記載の自動二輪車における電装品の支持構造。
【請求項3】
前記バッテリ(91)の車幅方向左右端部と前記左右のメインフレーム(14L、14R)との間に、他の電装品(112a、112b)を包み振動の伝達を阻止する防振部材(116L、116R)が配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車における電装品の支持構造。
【請求項4】
自動二輪車の車体フレーム(11B)に、バッテリ(91)等の電装品を搭載するときの電装品支持構造であって、
前記車体フレーム(11B)は、ヘッドパイプ(12B)と、このヘッドパイプ(12B)から車幅方向左右に車両後方へ延ばされる左右のメインフレーム(14BL、14BR)とを備え、
これらの左右のメインフレーム(14BL、14BR)の間に、これらの左右のメインフレーム(14BL、14BR)を跨ぐように配置され電装品を取付ける電装品取付部材(131)が複数の防振材(110)を介して支持され、更に、前記電装品取付部材(131)に棒状の防振材(110)を介して電装品(112a、112b)が取付けられることを特徴とする自動二輪車における電装品の支持構造。
【請求項5】
前記防振材(110)は、前記壁(125)又は前記車体フレーム(11、11B)に設ける穴径に対応する外径の円柱部(121)と、この円柱部(121)の両端に設けられ前記円柱部(121)に接続する基部(122)が前記円柱部(121)よりも外径が大きく前記基部(122)から延びる先端部の外径が前記基部(122)よりも小径である円錐部(123)と、前記円柱部(121)を前記壁(125)の厚さ又は前記車体フレーム(11、11B)の厚さと前記その他の電装品のフランジ厚さとに対応するように前記円柱部(121)の中央に一体形成される鍔部(124)とからなることを特徴とする請求項2又は請求項4記載の自動二輪車における電装品の支持構造。
【請求項6】
前記円柱部(121)の中心及び前記一対の円錐部(123)の中心が空洞になるように軸方向穴が開けられていることを特徴とする請求項5記載の自動二輪車における電装品の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−192773(P2012−192773A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56763(P2011−56763)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】