自動二輪車の前輪操舵装置
【課題】本発明は、ナックルアームの位相とハンドルの位相とを一致させる作業を省くことで、組立性を向上させた自動二輪車の前輪操舵装置を提供することを課題とする。
【解決手段】自動二輪車の前輪操舵装置123には、前輪16を支持するナックルアーム21L、21Rと、これらナックルアーム21L、21Rに連結するハンドルリンク22と、このハンドルリンク22に連結するステアリンクハンドル23と、このステアリンクハンドル23に加わる操舵力をハンドルリンク22に伝達する水平部材111と、ステアリングハンドル23およびハンドルリンク22に各々設け水平部材111と係合するように形成した係合穴125a、125bと、が備えられている。
【解決手段】自動二輪車の前輪操舵装置123には、前輪16を支持するナックルアーム21L、21Rと、これらナックルアーム21L、21Rに連結するハンドルリンク22と、このハンドルリンク22に連結するステアリンクハンドル23と、このステアリンクハンドル23に加わる操舵力をハンドルリンク22に伝達する水平部材111と、ステアリングハンドル23およびハンドルリンク22に各々設け水平部材111と係合するように形成した係合穴125a、125bと、が備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の前輪を操舵する装置であって、ナックルアームで前輪を支持する形式の前輪操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体フレームから前方に揺動可能に延出するアーム部と、このアーム部の先端に設け前輪を支持するナックルアームと、このナックルアームの上端に上下伸縮可能に連結するハンドルリンクと、このハンドルリンクに連結するステアリンクハンドルと、が備えられている自動二輪車の前輪操舵装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平1−237279号公報(第1図)
【0003】
特許文献1の第1図において、前輪操舵装置1(符号は同公報のものを流用する。以下同じ。)は、例えば、上スイングアーム13にナックル9(以下、「ナックルアーム9」と云う。)を取り付け、このナックルアーム9の上端部にリンク機構18およびステアリングステム6をこの順に連結し、ステアリングステム6を持ち上げて、ハンドル4に連結することにより組み立てられる。
【0004】
ところで、特許文献1に記載されている前輪操舵装置1において、前輪7を取り付けたナックルアーム9とハンドル4とを連結するときに、ナックルアーム9の位相とハンドルステム6に取り付けるハンドル4の位相とを一致させる作業を伴うため、組立性に改善の余地があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ナックルアームの位相とハンドルの位相とを一致させる作業を省くことで、組立性を向上させた自動二輪車の前輪操舵装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレームまたはエンジンから前方に揺動可能に延出するアーム部と、このアーム部の先端に設け前輪を操舵可能に支持するハブステア機構およびナックルアームと、このナックルアームの上端に上下伸縮可能に連結するハンドルリンクと、このハンドルリンクに連結するステアリンクハンドルと、このステアリングハンドルを回動可能に支持するヘッドパイプと、が備えられている自動二輪車の前輪操舵装置において、前輪操舵装置には、車体の幅方向に水平に設けステアリンクハンドルに加わる操舵力をハンドルリンクに伝達する水平部材と、ステアリングハンドルおよびハンドルリンクに設け水平部材と係合するように形成した係合穴と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、ハブステア機構、ハンドルリンクまたはステアリンクハンドルの中心には、前輪の操舵角を規制するステアリンクストッパが設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、ステアリングハンドルは、ヘッドパイプに回動可能に支持されるステアリング軸を備え、このステアリング軸とステアリングハンドルとは、水平部材により連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明では、ステアリング軸は、水平部材の連結部の上方と下方とでヘッドパイプに回動自在に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、前輪操舵装置に、ステアリンクハンドルに掛かる力をハンドルリンクに伝達する水平部材と、ステアリングハンドルおよびハンドルリンクに設け水平部材と係合するように形成する係合穴と、が備えられている。
【0011】
ステアリングハンドルの係合穴およびハンドルリンクの係合穴に水平部材を差し込むことで、水平部材を介してステアリングハンドルとハンドルリンクとを固定し、ハンドルリンクの位相とステアリンクハンドルの位相合わせをすることができる。つまり、組み付け時のステアリングハンドル操舵角の位相合わせに係る微調整作業を省くことが可能となる。従って、前輪操舵装置の組立性を向上させることができる。組立性が高まることで、組立工数の低減を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、ハブステア機構、ハンドルリンクまたはステアリンクハンドルの中心のいずれかの部分にステアリンクストッパを付設するので、部品点数の増加を招くことなく、ストッパ付前輪操舵装置を構成することができる。
従って、部品コストの低減を図ることが可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明では、ステアリングハンドルは、ステアリング軸を備え、このステアリング軸とステアリングハンドルとは、水平部材により連結されている。つまり、ステアリングハンドルとハンドルリンクとステアリング軸とは水平部材を介して連結されている。このため、ハンドルリンクの支持剛性を高めることができる。併せて、各部材の必要な強度剛性を下げることができ、軽量化を図ることができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、ステアリング軸は、水平部材の連結部の上方と下方とでヘッドパイプに回動自在に支持されているので、ステアリング軸の支持剛性を高めることができ、各部材の強度剛性を下げることができ、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は各々乗員から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る自動二輪車の左側面図、図2は本発明に係る自動二輪車の正面図である。以下、図1および図2を参照して説明を行う。
【0016】
自動二輪車10の前部10Fには、車体フレーム11の構成要素としてのメインフレーム11aと、このメインフレーム11aの上部から前方に前上揺動軸12L、12Rを介して上下に揺動可能に延出するアッパアーム13L、13Rと、メインフレーム11aの下部から前方に前下揺動軸14L、14R(図手前側の符号14Lのみ示す。)を介して上下に揺動可能に延出するロアアーム15L、15Rと、これらのロアアーム15L、15Rの先端に設け前輪16を操舵可能に支持するハブステア機構20と、このハブステア機構20の上方に設け前輪16を操舵可能に支持するナックルアーム21L、21Rと、これらのナックルアーム21L、21Rの上端部に取り付けナックルアーム21L、21Rの上下動に対して伸縮可能に連結されているハンドルリンク22と、このハンドルリンク22の上端部22tに取り付け乗員が操舵するステアリングハンドル23と、アッパアーム13L、13Rとメインフレーム11aの間に設け前輪16が受ける力を吸収する前部クッション機構25と、が備えられている。
【0017】
つまり、ナックルアーム21L、21Rの下端部は、ロアアーム15L、15Rによって支持され、ナックルアーム21L、21Rの上端部は、アッパアーム13L、13Rによって支持されている。
【0018】
ステアリングハンドル23は、エンジン26から前方にハンドル支持フレーム27を延設し、このハンドル支持フレーム27の前端部にヘッドパイプ28を取り付け、このヘッドパイプ28に回動可能に設けられている部材である。ナックルアーム21L、21Rとステアリングハンドル23との間は、ハンドルリンク22にて伸縮可能に連結されており、ナックルアーム21L、21Rの上下動を吸収するようにした。
【0019】
ハンドルリンク22を設けることによって、ナックルアーム21L、21Rにかかる力が、直接ステアリングハンドル23に伝わらないようにしたので、ハンドル支持フレーム27の軽量化を図ることができる。
【0020】
自動二輪車10の後部10Rには、メインフレーム11aから後方に上下のピボット軸31L、31R、32L、32R(手前側の符号31L、32Lのみ示す。)を介して揺動可能に延設される上下の腕部材33L、33R、34L、34R(手前側の符号33L、34Lのみ示す。)と、この上下の腕部材33L、33R、34L、34Rの後端部から後支持軸35、36L、36R(手前側の符号36Lのみ示す。)を介して後方に揺動可能に延設されるリヤスイングアーム37と、このリヤスイングアーム37の後端部に後輪車軸38を介して回動自在に取り付けられる後輪39と、リヤスイングアーム37とメインフレーム11aの間に設け後輪39にかかる力を吸収する後部クッション機構41と、が備えられている。上の腕部材33L、33R(手前側の符号33Lのみ示す。)は、メインフレーム11aの後端部の上部から延ばした部材であり、下の腕部材34L、34R(手前側の符号34Lのみ示す。)は、メインフレーム11aの後端部の下部から延ばした部材である。
【0021】
メインフレーム11aには、駆動源としてのエンジン26が懸架され、このエンジン26の後端部から後方には、後輪39を駆動するドライブシャフト42が延出されている。
なお、ハブステア機構20と前部クッション機構25の詳細については、後述する。
【0022】
エンジン26には、吸気系の構成要素としてのエアクリーナ44と、排気系の構成要素としてエンジン26の排気ガスを通す排気管45と、が備えられている。
また、前輪16には、フロントデイスクブレーキ47L、47R(手前側の符号47Lのみ示す。)が取り付けられている。フロントデイスクブレーキ47L、47Rは、前輪16に取り付ける前輪ブレーキデイスク48L、48Rと、ナックルアーム21L、21Rに取り付け、制動時に前輪ブレーキデイスク48L、48Rを挟持する前輪デイスクキャリパ49L、49R(手前側の符号49Lのみ示す。)とからなる。
【0023】
後輪39には、リヤデイスクブレーキ51が取り付けられている。リヤデイスクブレーキ51は、後輪39に取り付ける後輪ブレーキデイスク52と、リヤスイングアーム37に取り付け、制動時に後輪ブレーキデイスク52を挟持する後輪デイスクキャリパ53と、からなる。
【0024】
エンジン26と前輪16の間には、上下に配置されエンジン26を冷却する上下2つのラジエータ55T、55Bが設けられている。上のラジエータ55Tは、アッパアーム13L、13Rとロアアーム15L、15Rの間に配置され、下のラジエータ55Bは、ロアアーム15L、15Rの下方に配置されている。
【0025】
上下のラジエータ55T、55Bの前方には、各々吸入するエアを各々のラジエータ55T、55Bにガイドする上下のダクト56T、56T、56B、56Bが設けられている。上下のラジエータ55T、55Bおよび上下のダクト56T、56T、56B、56Bは、各々ロアアーム15L、15Rに取り付けられている。
【0026】
すなわち、車体フレーム11と前輪16の間は、アッパアーム13L、13Rとロアアーム15L、15Rの4本のアームで連結するようにしたので、エンジン26の前方に空間を確保することができる。空間が確保できれば、部品配置の自由度を確保することができる。例えば、この空間に上下のラジエータ55T、55Bが配置可能となり、十分な冷却能力を得ることができる。
図中、57はフロントカウル、58は燃料タンク、59はシートである。
【0027】
本実施例では、エンジン26は、V型エンジンであるが、シリンダを直列に配置する直列エンジンでも良い。エンジンの配置は、クランク軸を車両の幅方向に配置する、いわゆる、横置き配置としたが、クランク軸を車両の長手方向に配置する、いわゆる、縦置き配置とすることは差し支えない。また、エンジンは、水冷式に限られず空冷式でも良い。つまり、エンジンの形式やその配置などについては、実施例に限定されることなく任意に設定可能なものとする。
【0028】
前部クッション機構25には、力を吸収する前部クッションユニット61が設けられ、この前部クッションユニット61の外方には、エンジン26の排気ガスを通す排気管45が配置されている。
【0029】
前部クッションユニット61の外方あるいは前方には、エンジン26の排気ガスを通す排気管45が配置されているので、この排気管45により、高価な前部クッションユニット61を保護することが可能となる。
【0030】
図3は本発明に係る自動二輪車前部の平面図、図4は本発明に係る自動二輪車前部の斜視図である。以下、図3および図4を参照して説明を行う。
メインフレーム11aから前方に左右のロアアーム15L、15Rを延設し、これらロアアーム15L、15Rの間に横部材62を掛け渡し、この横部材62に直角に下部操舵軸63を取り付け、この下部操舵軸63に左右操舵可能にハブステア機構20を取り付け、このハブステア機構20から前輪16を操舵可能に支持する左右のナックルアーム21L、21Rを斜め後上方に立ち上げ、このナックルアーム21L、21Rの上端部にメインフレーム11aから前方に延設した左右のアッパアーム13L、13Rをナックルアーム21L、21Rが左右に操舵可能且つ上下に揺動可能になるように連結する。
【0031】
左右のナックルアーム21L、21Rの上端部には、ハンドルリンク22の下端部22bが連結されており、ハンドルリンク22の上端部22tには、ステアリングハンドル23が連結され、ステアリングハンドル23の操舵による操舵力がナックルアーム21L、21Rに伝達されるように構成されている。
【0032】
ハンドルリンク22は、ナックルアーム21L、21Rの上下の動きを吸収しつつステアリングハンドル23の操舵力をナックルアーム21L、21Rに伝達する部材であり、下リンクアーム64と、上リンクアーム65と、これら上下のリンクアーム64、65間を連結する連結ピン66とからなる。
【0033】
アッパアーム13L、13R(以下、「アーム部13L、13R」とも云う。)は、左アーム部13Lと右アーム部13Rとからなり、車両を上面から見たときに、これら左アーム部13Lと右アーム部13Rとで略V字を呈し、この略V字の中心68には、前部クッションユニット61に力を伝達するロッド部材69の上端部69tが連結され、前部リンク71には、ロッド部材69の下端部69bが連結されている。
【0034】
ロッド部材69の下端部69bには、略L字形状を有する前部リンク71の一端71aが連結され、この前部リンク71の他端71bには、前部クッションユニット61の一端61aが連結され、前部クッションユニット61の他端61bは、前クッションブラケット73を介してメインフレーム11aに取り付けられている。
【0035】
前部リンク71は、ロッド部材69で受けた力の方向を変える部材であり、メインフレーム11aに取り付けた中間点74を軸に、回動可能に設けられている。
すなわち、前部クッションユニット61の一端61aを前部リンク71に連結し、前部クッションユニット61の他端61bを、メインフレーム11a側に連結する。
なお、左右に延設するロアアーム15L、15Rは、操舵時にブレーキデイスクなどとの干渉を避けるように車両の外方に張り出して形成されている。
【0036】
図5は図3の5−5線断面図であり、ハブステア機構20は、左右のロアアーム(図3の符号15L、15R)の先端に掛け渡す横部材62と、この横部材62に直角に延設する下部操舵軸63と、この下部操舵軸63に前輪16を回動および左右に操舵可能に支持するハブ本体76と、を備えている。このハブ本体76には、前輪16を回動自在に支持する車軸用軸受77を含む。
下部操舵軸63の中心軸78は、前輪16の回転中心点79に対して長さPだけ後方に配置されている。81はナットである。
【0037】
下部操舵軸63には、ハブ本体76を左右に操舵および上下に揺動可能に支持する第2の球面軸受82が配置されている。この第2の球面軸受82は、横部材62と下部操舵軸63の間に配置され、前輪16を回動自在に支持する車軸用軸受77は、ナックルアーム(図3の符号21L、21R)とハブ本体76の間に配置されている。
【0038】
第2の球面軸受82は、横部材62により支持され、車軸用軸受77は、ナックルアーム21L、21Rにより支持されている。つまり、操舵支持用の軸受としての第2の球面軸受82と回動支持用の軸受としての車軸用軸受77とは、異なる部材によって支持されている。
第2の球面軸受82と車軸用軸受77とは、異なる部材で支持されているので、各々の軸受の着脱が容易になり、ハブステア機構20のメンテナンス性を高めることができる。
【0039】
車軸用軸受77の内径Riは、車両を側面から見たときに、横部材62の大きさSよりも大きく、S<Riとなるようにした。
車軸用軸受77の内径Riは、横部材62の大きさSよりも大きくしたので、前輪16から受ける荷重を広い面積で分散して受けることができる。このため、車軸用軸受77の負荷を下げることができる。また、荷重を広い面積で分散して受けるので、車軸用軸受77の冷却性能が高まり、車軸用軸受77の耐久性を向上させることができる。
【0040】
なお、本実施例において、横部材62は、左右2本のロアアーム15L、15Rにより支持されているが、左または右の1本のロアアームで支持するように構成することは差し支えない。
【0041】
図6は図3の6−6線断面図であり、左右のナックルアーム21L、21Rは、上端部に設けられているアーム連結部83によって連結されている。
【0042】
アーム連結部83は、中心部に底部84と、この底部84から立ち上げる左右の壁部85L、85Rと、これら壁部85L、85Rの上を覆う天井部86と、前記左右の壁部85L、85Rの外方に配置し底部84から立ち上げる左右の外壁部87L、87Rと、からなる。
【0043】
底部84と天井部86の間に、上部操舵軸88を上下に向けて掛け渡し、この上部操舵軸88に第1の球面軸受91を嵌め、この第1の球面軸受91の上下方向の位置を規制するスペーサ92、92を介在させ、第1の球面軸受91の外面91gにアッパアーム13L、13Rの先端に形成されている凹部93を嵌める。
【0044】
また、左の壁部85Lと左の外壁部87L間に、ハンドルリンク22の下端部22bをピン部材94を介して回動可能に取り付け、右の壁部85Rと右の外壁部87R間に、ハンドルリンク22の下端部22bをピン部材94を介して回動可能に取り付ける。
【0045】
すなわち、アッパアーム13L、13Rの先端には、ナックルアーム21L、21Rの上部を揺動可能および操舵可能に支持する上部操舵軸88が備えられ、この上部操舵軸88には、ナックルアーム21L、21Rを操舵および揺動可能に支持する第1の球面軸受91が配置され、この第1の球面軸受91の周囲には、第1の球面軸受91の外面91gと嵌合する凹部93を有するアッパアーム13L、13Rの結合部が配置されている。上部操舵軸88は、軸部88zとナット部88nからなる。
【0046】
加えて、ナックルアーム21L、21Rの上部には、側方からボルト94b、94bおよびナット94n、94nからなるピン部材94、94を介してナックルアーム21L、21Rに操舵する力を伝達するハンドルリンク22が取り付けられている。
【0047】
図7は本発明に係るナックルアームの上端部および下端部に備えられている操舵軸の作用説明図および比較例図である。実施例では、ナックルアーム(図3の符号21L、21R)の上端部および下端部に傾動機構が介在され、比較例では、ナックルアーム21L、21Rの上端部のみに傾動機構が介在されている。
【0048】
(a)は実施例を説明する図であり、ナックルアーム21L、21Rの下端部には、車軸用軸受(図5の符号77)、ハブ本体(図5の符号76)および下部操舵軸(図5の符号63)を介して第2の球面軸受82が設けられ、ナックルアーム21L、21Rの上端部には、上部操舵軸(図6の符号88)を介して第1の球面軸受91が設けられている。このため、前輪(図5の符号16)が力を受けたときには、上端の水平面に対する角度は、θa11からθa21に変化することができ、下端部の角度は、θa12からθa22に変化することができる。つまり、ナックルアーム21L、21Rの上端部および下端部にて角度変位可能となる。図中、(A)は前輪から力を受ける前、(B)は前輪から力を受けた後における旋回軸95の状態を示す。
【0049】
すなわち、車体フレーム側に第1および第2の球面軸受82を介してナックルアーム21L、21Rを取り付けて、これらの球面軸受82、91を結ぶ線を前輪(図3の符号16)の旋回軸95とし、ナックルアーム21L、21Rの上端部を車体側に揺動および旋回可能に設け、ナックルアーム21L、21Rの下端を車体側に揺動および旋回可能に設ける。
なお、前述のように、旋回軸95の軸線は仮想線である。旋回軸95の軸線と上部操舵軸88の軸線とは必ずしも一致するものではない。また、旋回軸95の軸線は、下部操舵軸63の軸線と必ずしも一致するものではない。
【0050】
(b)は比較例を説明する図であり、ナックルアームの上端にのみ、ナックルアーム21L、21Rの傾動調整機構が設けられている。このため、前輪車軸が力を受けたときには、上端部の水平面に対する角度は、θb1からθb2に変化することができるが、下端部の角度は、傾動調整機構が設けられていないので、一定の角度のまま変化することができない。
【0051】
(a)に戻って、ナックルアーム21L、21Rの上端部および下端部を揺動可能に構成し、前輪16が受ける力に対して、ナックルアーム21L、21Rの上端部および下端部で受けるようにした。従って、力に対する車体の変位量を大きくとることができ、車両の柔軟性を高めることができる。加えて、可動部を簡便で且つコンパクトな構造としたので、慣性を減らすことができ、車両の操縦性や旋回性を一層高めることが可能となる。
【0052】
図8はハブステア機構に設けるステアリングストッパの構成およびその作用を説明する図である。
(a)において、横部材62の上面62aには、左右の所定位置にハブ本体76が操舵角度α以上にならないように規制するストッパ部96、96が設けられている。
(b)において、ハブ本体76には、ストッパ部96、96に当接するピン部97が形成されている。
【0053】
つまり、ハブステア機構20には、ストッパ部96、96とピン部97からなり、前輪16の操舵角を規制するステアリンクストッパ98が設けられている。
ハブステア機構20にステアリンクストッパ98を付設するので、ハンドルリンク22に係る部品点数の増加を招くことなく、ストッパ付前輪操舵装置を構成することができる。従って、部品コストの低減を図ることが可能となる。
【0054】
図9はステアリングハンドルおよびその周辺部を説明する斜視図である。
ナックルアーム21L、21Rとステアリングハンドル23の間を伸縮可能に連結するハンドルリンク22は、その下端部22bが左右のナックルアーム21L、21Rにピン部材94、94を介して取り付けられ、上端部22aがステアリンクハンドル23に取り付けられている部材である。
【0055】
図10は図9の10−10線断面図であり、前輪操舵装置124において、ハンドル支持フレーム(図9の符号27)の先端には、ステアリングハンドル23を回動可能に支持する上下のヘッドパイプ28t、28bが設けられ、これら上下のヘッドパイプ28t、28bの間には、ステアリングハンドル23とハンドルリンク22とを水平部材111としての締結ボルト112を介して共締め固定する円筒部材113が配置されている。
【0056】
すなわち、前輪操舵装置124には、車体の幅方向に水平に設けステアリンクハンドル23に加わる操舵力をハンドルリンク22に伝達する水平部材111と、ステアリングハンドル23およびハンドルリンク22に設け水平部材111と係合するように形成した係合穴119、125bとが備えられている。
【0057】
円筒部材113の側面には、車幅方向水平で対角線上に受面としてのボス114、114が形成され、これらのボス114、114に締結ボルト112、112をねじ込むことができるようにねじ穴としての第2係合穴115、115が形成されている。
【0058】
ステアリングハンドル23には、ヘッドパイプ28t、28bに差し込んで回動可能に設けるステアリング軸116と、このステアリング軸116の上端に水平に設ける横部117と、この横部117の両端にステアリング軸116と略平行に設ける上ピン取付部118、118と、が備えられている。上ピン取付部118、118には、締結ボルト112、112が差込まれる孔部119、119が形成されている。
【0059】
あるいは、ステアリングハンドル23は、ヘッドパイプ28t、28bに回動可能に支持されるステアリング軸116を備え、このステアリング軸116は、水平部材111の連結部としての円筒部材113の上方と下方とでヘッドパイプ28t、28bに回動自在に支持されているので、ステアリング軸116の支持剛性を高めることができ、各部材の強度剛性を下げることができ、軽量化を図ることができる。
【0060】
また、このステアリング軸116とステアリングハンドル23とは、水平部材111により連結されている。つまり、ステアリングハンドル23とハンドルリンク22とステアリング軸116とは水平部材111を介して連結されている。このため、ハンドルリンク22の支持剛性を高めることができる。併せて、各部材の必要な強度剛性を下げることができ、軽量化を図ることができる。
なお、本実施例において、水平部材には締結ボルトを利用したが、この他、ピン、キーなどの部材を利用することは差し支えない。
【0061】
図11はステアリングハンドルおよびその周辺部の分解斜視図であり、ナックルアーム21L、21Rの上端部にピン部材94、94を介してハンドルリンク22を取り付け、上下のヘッドパイプ22t、22bの間にステアリング軸116が嵌る嵌合穴120を有している円筒部材113を配置し、ハンドルリンク22の上端部22tに形成した第1係合穴121、121を円筒部材113の第2係合穴115、115に合わせ、ステアリングハンドル23の孔部119、119を第2係合穴115、115に合わせ、左右外方から水平部材111としての締結ボルト112、112を第2係合穴115、115にねじ込んで組立てる。
【0062】
上記構成により、ハンドルリンク22とステアリングハンドル23を連結すれば、ステアリング軸116にスプラインを形成することなく、ステアリング軸116にステアリンクハンドル23を固定することができる。スプラインが不要になるため、ステアリング軸116に係る製造コストを下げることができる。
【0063】
なお、ステアリンクハンドル23には、前輪の操舵角を規制するステアリンクストッパ98Bを設けることもできる。
詳細には、横部117から前方に、次いで下方にピン部97Bを突設し、上ヘッドパイプ22tにピン部97Bが当接してステアリングハンドル23の操舵角を規制する左右2つのストッパ部96B、96Bを形成する。
【0064】
この他、ステアリングストッパ98Bに代えて、図想像線にて示すように、ハンドルリンク22の上部で円筒部材113の外周前端部に、ピン部97Cを設け、下のヘッドパイプ22t、22bに、ピン部97Cが当接するストッパ部96C、96Cを左右に形成してなるステアリングストッパ98Cを設けても良い。
【0065】
以上に述べた自動二輪車の前輪操舵装置の作用を次に述べる。
図12は実施例に係るステアリングリンクへのステアリングハンドルの取付説明図であり、(a)において、ナックルアーム21L、21Rにハンドルリンク22の下端部22bを取り付ける。
【0066】
(b)において、上下のヘッドパイプ22t、22bの間に円筒部材113を配置し、ハンドルリンク22の上端部22tを持ち上げ、ステアリングハンドル23のステアリング軸116をステアリング孔122に差し込み、円筒部材113の第2係合穴115、115に、ハンドルリンク22の上端に形成する係合穴125としての第1係合穴121、121およびステアリングハンドル23の孔部119、119を合わせ、左右外方から締結ボルト112、112をねじ込む。
(c)において、ハンドルリンク22へステアリングハンドル23の取付が完了した状態を示す。
【0067】
図13は比較例に係るステアリングリンクへのステアリングハンドルの取付説明図である。
(a)において、ナックルアーム21Bにハンドルリンク22Bの下端部を取り付ける。ハンドルリンク22Bの下端部には、ステアリング軸116Bが取り付けられている。
【0068】
(b)において、ステアリング軸116Bをヘッドパイプ28Bの下方からステアリング孔122Bに入れ、上方からステアリング軸116Bに矢印b方向にステアリングハンドル23Bを嵌める。
このとき、ハンドルリンク22の位相とステアリンクハンドル23の位相を合わせる作業が必要であった。
(c)において、ハンドルリンク22へステアリングハンドル23の取付が完了した状態を示す。
【0069】
図11および図12を参照して、前輪操舵装置123において、ステアリングボルト取付部には、ステアリンクハンドル23に掛かる力をハンドルリンク22に伝達する水平部材111としての締結部材112と、ステアリングハンドル23およびハンドルリンク22に設け締結部材112と係合するように形成する係合穴115、119、121と、が備えられている。
【0070】
ステアリングハンドル23の係合穴119およびハンドルリンク22の係合穴121に締結部材112を差し込み、円筒部材113の第2係合穴115に締結部材112を介してハンドルリンク22を固定すると同時に、ハンドルリンク22の位相とステアリンクハンドル23の位相合わせをすることができる。
【0071】
つまり、ステアリングハンドル23操舵角の位相合わせに係る微調整作業を省くことが可能となる。
図12と図13を比較すると、操舵角の位相合わせ以外の組付作業には大きく変わるところはない。従って、前輪操舵装置123の組立性を高めることができる。組立性が高まることで、組立工数の低減を図ることができる。
【0072】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の鞍乗り型車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、自動二輪車車の前輪操舵装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車の正面図である。
【図3】本発明に係る自動二輪車前部の平面図である。
【図4】本発明に係る自動二輪車前部の斜視図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係るナックルアームの上端部および下端部に備えられている操舵軸の作用説明図および比較例図である。
【図8】ハブステア機構に設けるステアリングストッパの構成およびその作用を説明する図である。
【図9】ステアリングハンドルおよびその周辺部を説明する斜視図である。
【図10】図9の10−10線断面図である。
【図11】ステアリングハンドルおよびその周辺部の分解斜視図である。
【図12】実施例に係るステアリングリンクへのステアリングハンドルの取付説明図である。
【図13】比較例に係るステアリングリンクへのステアリングハンドルの取付説明図である。
【符号の説明】
【0075】
10…自動二輪車、11…車体フレーム、13L、13R…アーム部、16…前輪、20…ハブステア機構、21L、21R…ナックルアーム、22…ハンドルリンク、23…ステアリンクハンドル、26…エンジン、98、98B、98C…ステアリングストッパ、111…水平部材、125a、125b…係合穴、124…前輪操舵装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の前輪を操舵する装置であって、ナックルアームで前輪を支持する形式の前輪操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体フレームから前方に揺動可能に延出するアーム部と、このアーム部の先端に設け前輪を支持するナックルアームと、このナックルアームの上端に上下伸縮可能に連結するハンドルリンクと、このハンドルリンクに連結するステアリンクハンドルと、が備えられている自動二輪車の前輪操舵装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平1−237279号公報(第1図)
【0003】
特許文献1の第1図において、前輪操舵装置1(符号は同公報のものを流用する。以下同じ。)は、例えば、上スイングアーム13にナックル9(以下、「ナックルアーム9」と云う。)を取り付け、このナックルアーム9の上端部にリンク機構18およびステアリングステム6をこの順に連結し、ステアリングステム6を持ち上げて、ハンドル4に連結することにより組み立てられる。
【0004】
ところで、特許文献1に記載されている前輪操舵装置1において、前輪7を取り付けたナックルアーム9とハンドル4とを連結するときに、ナックルアーム9の位相とハンドルステム6に取り付けるハンドル4の位相とを一致させる作業を伴うため、組立性に改善の余地があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ナックルアームの位相とハンドルの位相とを一致させる作業を省くことで、組立性を向上させた自動二輪車の前輪操舵装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレームまたはエンジンから前方に揺動可能に延出するアーム部と、このアーム部の先端に設け前輪を操舵可能に支持するハブステア機構およびナックルアームと、このナックルアームの上端に上下伸縮可能に連結するハンドルリンクと、このハンドルリンクに連結するステアリンクハンドルと、このステアリングハンドルを回動可能に支持するヘッドパイプと、が備えられている自動二輪車の前輪操舵装置において、前輪操舵装置には、車体の幅方向に水平に設けステアリンクハンドルに加わる操舵力をハンドルリンクに伝達する水平部材と、ステアリングハンドルおよびハンドルリンクに設け水平部材と係合するように形成した係合穴と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、ハブステア機構、ハンドルリンクまたはステアリンクハンドルの中心には、前輪の操舵角を規制するステアリンクストッパが設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、ステアリングハンドルは、ヘッドパイプに回動可能に支持されるステアリング軸を備え、このステアリング軸とステアリングハンドルとは、水平部材により連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明では、ステアリング軸は、水平部材の連結部の上方と下方とでヘッドパイプに回動自在に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、前輪操舵装置に、ステアリンクハンドルに掛かる力をハンドルリンクに伝達する水平部材と、ステアリングハンドルおよびハンドルリンクに設け水平部材と係合するように形成する係合穴と、が備えられている。
【0011】
ステアリングハンドルの係合穴およびハンドルリンクの係合穴に水平部材を差し込むことで、水平部材を介してステアリングハンドルとハンドルリンクとを固定し、ハンドルリンクの位相とステアリンクハンドルの位相合わせをすることができる。つまり、組み付け時のステアリングハンドル操舵角の位相合わせに係る微調整作業を省くことが可能となる。従って、前輪操舵装置の組立性を向上させることができる。組立性が高まることで、組立工数の低減を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、ハブステア機構、ハンドルリンクまたはステアリンクハンドルの中心のいずれかの部分にステアリンクストッパを付設するので、部品点数の増加を招くことなく、ストッパ付前輪操舵装置を構成することができる。
従って、部品コストの低減を図ることが可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明では、ステアリングハンドルは、ステアリング軸を備え、このステアリング軸とステアリングハンドルとは、水平部材により連結されている。つまり、ステアリングハンドルとハンドルリンクとステアリング軸とは水平部材を介して連結されている。このため、ハンドルリンクの支持剛性を高めることができる。併せて、各部材の必要な強度剛性を下げることができ、軽量化を図ることができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、ステアリング軸は、水平部材の連結部の上方と下方とでヘッドパイプに回動自在に支持されているので、ステアリング軸の支持剛性を高めることができ、各部材の強度剛性を下げることができ、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は各々乗員から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る自動二輪車の左側面図、図2は本発明に係る自動二輪車の正面図である。以下、図1および図2を参照して説明を行う。
【0016】
自動二輪車10の前部10Fには、車体フレーム11の構成要素としてのメインフレーム11aと、このメインフレーム11aの上部から前方に前上揺動軸12L、12Rを介して上下に揺動可能に延出するアッパアーム13L、13Rと、メインフレーム11aの下部から前方に前下揺動軸14L、14R(図手前側の符号14Lのみ示す。)を介して上下に揺動可能に延出するロアアーム15L、15Rと、これらのロアアーム15L、15Rの先端に設け前輪16を操舵可能に支持するハブステア機構20と、このハブステア機構20の上方に設け前輪16を操舵可能に支持するナックルアーム21L、21Rと、これらのナックルアーム21L、21Rの上端部に取り付けナックルアーム21L、21Rの上下動に対して伸縮可能に連結されているハンドルリンク22と、このハンドルリンク22の上端部22tに取り付け乗員が操舵するステアリングハンドル23と、アッパアーム13L、13Rとメインフレーム11aの間に設け前輪16が受ける力を吸収する前部クッション機構25と、が備えられている。
【0017】
つまり、ナックルアーム21L、21Rの下端部は、ロアアーム15L、15Rによって支持され、ナックルアーム21L、21Rの上端部は、アッパアーム13L、13Rによって支持されている。
【0018】
ステアリングハンドル23は、エンジン26から前方にハンドル支持フレーム27を延設し、このハンドル支持フレーム27の前端部にヘッドパイプ28を取り付け、このヘッドパイプ28に回動可能に設けられている部材である。ナックルアーム21L、21Rとステアリングハンドル23との間は、ハンドルリンク22にて伸縮可能に連結されており、ナックルアーム21L、21Rの上下動を吸収するようにした。
【0019】
ハンドルリンク22を設けることによって、ナックルアーム21L、21Rにかかる力が、直接ステアリングハンドル23に伝わらないようにしたので、ハンドル支持フレーム27の軽量化を図ることができる。
【0020】
自動二輪車10の後部10Rには、メインフレーム11aから後方に上下のピボット軸31L、31R、32L、32R(手前側の符号31L、32Lのみ示す。)を介して揺動可能に延設される上下の腕部材33L、33R、34L、34R(手前側の符号33L、34Lのみ示す。)と、この上下の腕部材33L、33R、34L、34Rの後端部から後支持軸35、36L、36R(手前側の符号36Lのみ示す。)を介して後方に揺動可能に延設されるリヤスイングアーム37と、このリヤスイングアーム37の後端部に後輪車軸38を介して回動自在に取り付けられる後輪39と、リヤスイングアーム37とメインフレーム11aの間に設け後輪39にかかる力を吸収する後部クッション機構41と、が備えられている。上の腕部材33L、33R(手前側の符号33Lのみ示す。)は、メインフレーム11aの後端部の上部から延ばした部材であり、下の腕部材34L、34R(手前側の符号34Lのみ示す。)は、メインフレーム11aの後端部の下部から延ばした部材である。
【0021】
メインフレーム11aには、駆動源としてのエンジン26が懸架され、このエンジン26の後端部から後方には、後輪39を駆動するドライブシャフト42が延出されている。
なお、ハブステア機構20と前部クッション機構25の詳細については、後述する。
【0022】
エンジン26には、吸気系の構成要素としてのエアクリーナ44と、排気系の構成要素としてエンジン26の排気ガスを通す排気管45と、が備えられている。
また、前輪16には、フロントデイスクブレーキ47L、47R(手前側の符号47Lのみ示す。)が取り付けられている。フロントデイスクブレーキ47L、47Rは、前輪16に取り付ける前輪ブレーキデイスク48L、48Rと、ナックルアーム21L、21Rに取り付け、制動時に前輪ブレーキデイスク48L、48Rを挟持する前輪デイスクキャリパ49L、49R(手前側の符号49Lのみ示す。)とからなる。
【0023】
後輪39には、リヤデイスクブレーキ51が取り付けられている。リヤデイスクブレーキ51は、後輪39に取り付ける後輪ブレーキデイスク52と、リヤスイングアーム37に取り付け、制動時に後輪ブレーキデイスク52を挟持する後輪デイスクキャリパ53と、からなる。
【0024】
エンジン26と前輪16の間には、上下に配置されエンジン26を冷却する上下2つのラジエータ55T、55Bが設けられている。上のラジエータ55Tは、アッパアーム13L、13Rとロアアーム15L、15Rの間に配置され、下のラジエータ55Bは、ロアアーム15L、15Rの下方に配置されている。
【0025】
上下のラジエータ55T、55Bの前方には、各々吸入するエアを各々のラジエータ55T、55Bにガイドする上下のダクト56T、56T、56B、56Bが設けられている。上下のラジエータ55T、55Bおよび上下のダクト56T、56T、56B、56Bは、各々ロアアーム15L、15Rに取り付けられている。
【0026】
すなわち、車体フレーム11と前輪16の間は、アッパアーム13L、13Rとロアアーム15L、15Rの4本のアームで連結するようにしたので、エンジン26の前方に空間を確保することができる。空間が確保できれば、部品配置の自由度を確保することができる。例えば、この空間に上下のラジエータ55T、55Bが配置可能となり、十分な冷却能力を得ることができる。
図中、57はフロントカウル、58は燃料タンク、59はシートである。
【0027】
本実施例では、エンジン26は、V型エンジンであるが、シリンダを直列に配置する直列エンジンでも良い。エンジンの配置は、クランク軸を車両の幅方向に配置する、いわゆる、横置き配置としたが、クランク軸を車両の長手方向に配置する、いわゆる、縦置き配置とすることは差し支えない。また、エンジンは、水冷式に限られず空冷式でも良い。つまり、エンジンの形式やその配置などについては、実施例に限定されることなく任意に設定可能なものとする。
【0028】
前部クッション機構25には、力を吸収する前部クッションユニット61が設けられ、この前部クッションユニット61の外方には、エンジン26の排気ガスを通す排気管45が配置されている。
【0029】
前部クッションユニット61の外方あるいは前方には、エンジン26の排気ガスを通す排気管45が配置されているので、この排気管45により、高価な前部クッションユニット61を保護することが可能となる。
【0030】
図3は本発明に係る自動二輪車前部の平面図、図4は本発明に係る自動二輪車前部の斜視図である。以下、図3および図4を参照して説明を行う。
メインフレーム11aから前方に左右のロアアーム15L、15Rを延設し、これらロアアーム15L、15Rの間に横部材62を掛け渡し、この横部材62に直角に下部操舵軸63を取り付け、この下部操舵軸63に左右操舵可能にハブステア機構20を取り付け、このハブステア機構20から前輪16を操舵可能に支持する左右のナックルアーム21L、21Rを斜め後上方に立ち上げ、このナックルアーム21L、21Rの上端部にメインフレーム11aから前方に延設した左右のアッパアーム13L、13Rをナックルアーム21L、21Rが左右に操舵可能且つ上下に揺動可能になるように連結する。
【0031】
左右のナックルアーム21L、21Rの上端部には、ハンドルリンク22の下端部22bが連結されており、ハンドルリンク22の上端部22tには、ステアリングハンドル23が連結され、ステアリングハンドル23の操舵による操舵力がナックルアーム21L、21Rに伝達されるように構成されている。
【0032】
ハンドルリンク22は、ナックルアーム21L、21Rの上下の動きを吸収しつつステアリングハンドル23の操舵力をナックルアーム21L、21Rに伝達する部材であり、下リンクアーム64と、上リンクアーム65と、これら上下のリンクアーム64、65間を連結する連結ピン66とからなる。
【0033】
アッパアーム13L、13R(以下、「アーム部13L、13R」とも云う。)は、左アーム部13Lと右アーム部13Rとからなり、車両を上面から見たときに、これら左アーム部13Lと右アーム部13Rとで略V字を呈し、この略V字の中心68には、前部クッションユニット61に力を伝達するロッド部材69の上端部69tが連結され、前部リンク71には、ロッド部材69の下端部69bが連結されている。
【0034】
ロッド部材69の下端部69bには、略L字形状を有する前部リンク71の一端71aが連結され、この前部リンク71の他端71bには、前部クッションユニット61の一端61aが連結され、前部クッションユニット61の他端61bは、前クッションブラケット73を介してメインフレーム11aに取り付けられている。
【0035】
前部リンク71は、ロッド部材69で受けた力の方向を変える部材であり、メインフレーム11aに取り付けた中間点74を軸に、回動可能に設けられている。
すなわち、前部クッションユニット61の一端61aを前部リンク71に連結し、前部クッションユニット61の他端61bを、メインフレーム11a側に連結する。
なお、左右に延設するロアアーム15L、15Rは、操舵時にブレーキデイスクなどとの干渉を避けるように車両の外方に張り出して形成されている。
【0036】
図5は図3の5−5線断面図であり、ハブステア機構20は、左右のロアアーム(図3の符号15L、15R)の先端に掛け渡す横部材62と、この横部材62に直角に延設する下部操舵軸63と、この下部操舵軸63に前輪16を回動および左右に操舵可能に支持するハブ本体76と、を備えている。このハブ本体76には、前輪16を回動自在に支持する車軸用軸受77を含む。
下部操舵軸63の中心軸78は、前輪16の回転中心点79に対して長さPだけ後方に配置されている。81はナットである。
【0037】
下部操舵軸63には、ハブ本体76を左右に操舵および上下に揺動可能に支持する第2の球面軸受82が配置されている。この第2の球面軸受82は、横部材62と下部操舵軸63の間に配置され、前輪16を回動自在に支持する車軸用軸受77は、ナックルアーム(図3の符号21L、21R)とハブ本体76の間に配置されている。
【0038】
第2の球面軸受82は、横部材62により支持され、車軸用軸受77は、ナックルアーム21L、21Rにより支持されている。つまり、操舵支持用の軸受としての第2の球面軸受82と回動支持用の軸受としての車軸用軸受77とは、異なる部材によって支持されている。
第2の球面軸受82と車軸用軸受77とは、異なる部材で支持されているので、各々の軸受の着脱が容易になり、ハブステア機構20のメンテナンス性を高めることができる。
【0039】
車軸用軸受77の内径Riは、車両を側面から見たときに、横部材62の大きさSよりも大きく、S<Riとなるようにした。
車軸用軸受77の内径Riは、横部材62の大きさSよりも大きくしたので、前輪16から受ける荷重を広い面積で分散して受けることができる。このため、車軸用軸受77の負荷を下げることができる。また、荷重を広い面積で分散して受けるので、車軸用軸受77の冷却性能が高まり、車軸用軸受77の耐久性を向上させることができる。
【0040】
なお、本実施例において、横部材62は、左右2本のロアアーム15L、15Rにより支持されているが、左または右の1本のロアアームで支持するように構成することは差し支えない。
【0041】
図6は図3の6−6線断面図であり、左右のナックルアーム21L、21Rは、上端部に設けられているアーム連結部83によって連結されている。
【0042】
アーム連結部83は、中心部に底部84と、この底部84から立ち上げる左右の壁部85L、85Rと、これら壁部85L、85Rの上を覆う天井部86と、前記左右の壁部85L、85Rの外方に配置し底部84から立ち上げる左右の外壁部87L、87Rと、からなる。
【0043】
底部84と天井部86の間に、上部操舵軸88を上下に向けて掛け渡し、この上部操舵軸88に第1の球面軸受91を嵌め、この第1の球面軸受91の上下方向の位置を規制するスペーサ92、92を介在させ、第1の球面軸受91の外面91gにアッパアーム13L、13Rの先端に形成されている凹部93を嵌める。
【0044】
また、左の壁部85Lと左の外壁部87L間に、ハンドルリンク22の下端部22bをピン部材94を介して回動可能に取り付け、右の壁部85Rと右の外壁部87R間に、ハンドルリンク22の下端部22bをピン部材94を介して回動可能に取り付ける。
【0045】
すなわち、アッパアーム13L、13Rの先端には、ナックルアーム21L、21Rの上部を揺動可能および操舵可能に支持する上部操舵軸88が備えられ、この上部操舵軸88には、ナックルアーム21L、21Rを操舵および揺動可能に支持する第1の球面軸受91が配置され、この第1の球面軸受91の周囲には、第1の球面軸受91の外面91gと嵌合する凹部93を有するアッパアーム13L、13Rの結合部が配置されている。上部操舵軸88は、軸部88zとナット部88nからなる。
【0046】
加えて、ナックルアーム21L、21Rの上部には、側方からボルト94b、94bおよびナット94n、94nからなるピン部材94、94を介してナックルアーム21L、21Rに操舵する力を伝達するハンドルリンク22が取り付けられている。
【0047】
図7は本発明に係るナックルアームの上端部および下端部に備えられている操舵軸の作用説明図および比較例図である。実施例では、ナックルアーム(図3の符号21L、21R)の上端部および下端部に傾動機構が介在され、比較例では、ナックルアーム21L、21Rの上端部のみに傾動機構が介在されている。
【0048】
(a)は実施例を説明する図であり、ナックルアーム21L、21Rの下端部には、車軸用軸受(図5の符号77)、ハブ本体(図5の符号76)および下部操舵軸(図5の符号63)を介して第2の球面軸受82が設けられ、ナックルアーム21L、21Rの上端部には、上部操舵軸(図6の符号88)を介して第1の球面軸受91が設けられている。このため、前輪(図5の符号16)が力を受けたときには、上端の水平面に対する角度は、θa11からθa21に変化することができ、下端部の角度は、θa12からθa22に変化することができる。つまり、ナックルアーム21L、21Rの上端部および下端部にて角度変位可能となる。図中、(A)は前輪から力を受ける前、(B)は前輪から力を受けた後における旋回軸95の状態を示す。
【0049】
すなわち、車体フレーム側に第1および第2の球面軸受82を介してナックルアーム21L、21Rを取り付けて、これらの球面軸受82、91を結ぶ線を前輪(図3の符号16)の旋回軸95とし、ナックルアーム21L、21Rの上端部を車体側に揺動および旋回可能に設け、ナックルアーム21L、21Rの下端を車体側に揺動および旋回可能に設ける。
なお、前述のように、旋回軸95の軸線は仮想線である。旋回軸95の軸線と上部操舵軸88の軸線とは必ずしも一致するものではない。また、旋回軸95の軸線は、下部操舵軸63の軸線と必ずしも一致するものではない。
【0050】
(b)は比較例を説明する図であり、ナックルアームの上端にのみ、ナックルアーム21L、21Rの傾動調整機構が設けられている。このため、前輪車軸が力を受けたときには、上端部の水平面に対する角度は、θb1からθb2に変化することができるが、下端部の角度は、傾動調整機構が設けられていないので、一定の角度のまま変化することができない。
【0051】
(a)に戻って、ナックルアーム21L、21Rの上端部および下端部を揺動可能に構成し、前輪16が受ける力に対して、ナックルアーム21L、21Rの上端部および下端部で受けるようにした。従って、力に対する車体の変位量を大きくとることができ、車両の柔軟性を高めることができる。加えて、可動部を簡便で且つコンパクトな構造としたので、慣性を減らすことができ、車両の操縦性や旋回性を一層高めることが可能となる。
【0052】
図8はハブステア機構に設けるステアリングストッパの構成およびその作用を説明する図である。
(a)において、横部材62の上面62aには、左右の所定位置にハブ本体76が操舵角度α以上にならないように規制するストッパ部96、96が設けられている。
(b)において、ハブ本体76には、ストッパ部96、96に当接するピン部97が形成されている。
【0053】
つまり、ハブステア機構20には、ストッパ部96、96とピン部97からなり、前輪16の操舵角を規制するステアリンクストッパ98が設けられている。
ハブステア機構20にステアリンクストッパ98を付設するので、ハンドルリンク22に係る部品点数の増加を招くことなく、ストッパ付前輪操舵装置を構成することができる。従って、部品コストの低減を図ることが可能となる。
【0054】
図9はステアリングハンドルおよびその周辺部を説明する斜視図である。
ナックルアーム21L、21Rとステアリングハンドル23の間を伸縮可能に連結するハンドルリンク22は、その下端部22bが左右のナックルアーム21L、21Rにピン部材94、94を介して取り付けられ、上端部22aがステアリンクハンドル23に取り付けられている部材である。
【0055】
図10は図9の10−10線断面図であり、前輪操舵装置124において、ハンドル支持フレーム(図9の符号27)の先端には、ステアリングハンドル23を回動可能に支持する上下のヘッドパイプ28t、28bが設けられ、これら上下のヘッドパイプ28t、28bの間には、ステアリングハンドル23とハンドルリンク22とを水平部材111としての締結ボルト112を介して共締め固定する円筒部材113が配置されている。
【0056】
すなわち、前輪操舵装置124には、車体の幅方向に水平に設けステアリンクハンドル23に加わる操舵力をハンドルリンク22に伝達する水平部材111と、ステアリングハンドル23およびハンドルリンク22に設け水平部材111と係合するように形成した係合穴119、125bとが備えられている。
【0057】
円筒部材113の側面には、車幅方向水平で対角線上に受面としてのボス114、114が形成され、これらのボス114、114に締結ボルト112、112をねじ込むことができるようにねじ穴としての第2係合穴115、115が形成されている。
【0058】
ステアリングハンドル23には、ヘッドパイプ28t、28bに差し込んで回動可能に設けるステアリング軸116と、このステアリング軸116の上端に水平に設ける横部117と、この横部117の両端にステアリング軸116と略平行に設ける上ピン取付部118、118と、が備えられている。上ピン取付部118、118には、締結ボルト112、112が差込まれる孔部119、119が形成されている。
【0059】
あるいは、ステアリングハンドル23は、ヘッドパイプ28t、28bに回動可能に支持されるステアリング軸116を備え、このステアリング軸116は、水平部材111の連結部としての円筒部材113の上方と下方とでヘッドパイプ28t、28bに回動自在に支持されているので、ステアリング軸116の支持剛性を高めることができ、各部材の強度剛性を下げることができ、軽量化を図ることができる。
【0060】
また、このステアリング軸116とステアリングハンドル23とは、水平部材111により連結されている。つまり、ステアリングハンドル23とハンドルリンク22とステアリング軸116とは水平部材111を介して連結されている。このため、ハンドルリンク22の支持剛性を高めることができる。併せて、各部材の必要な強度剛性を下げることができ、軽量化を図ることができる。
なお、本実施例において、水平部材には締結ボルトを利用したが、この他、ピン、キーなどの部材を利用することは差し支えない。
【0061】
図11はステアリングハンドルおよびその周辺部の分解斜視図であり、ナックルアーム21L、21Rの上端部にピン部材94、94を介してハンドルリンク22を取り付け、上下のヘッドパイプ22t、22bの間にステアリング軸116が嵌る嵌合穴120を有している円筒部材113を配置し、ハンドルリンク22の上端部22tに形成した第1係合穴121、121を円筒部材113の第2係合穴115、115に合わせ、ステアリングハンドル23の孔部119、119を第2係合穴115、115に合わせ、左右外方から水平部材111としての締結ボルト112、112を第2係合穴115、115にねじ込んで組立てる。
【0062】
上記構成により、ハンドルリンク22とステアリングハンドル23を連結すれば、ステアリング軸116にスプラインを形成することなく、ステアリング軸116にステアリンクハンドル23を固定することができる。スプラインが不要になるため、ステアリング軸116に係る製造コストを下げることができる。
【0063】
なお、ステアリンクハンドル23には、前輪の操舵角を規制するステアリンクストッパ98Bを設けることもできる。
詳細には、横部117から前方に、次いで下方にピン部97Bを突設し、上ヘッドパイプ22tにピン部97Bが当接してステアリングハンドル23の操舵角を規制する左右2つのストッパ部96B、96Bを形成する。
【0064】
この他、ステアリングストッパ98Bに代えて、図想像線にて示すように、ハンドルリンク22の上部で円筒部材113の外周前端部に、ピン部97Cを設け、下のヘッドパイプ22t、22bに、ピン部97Cが当接するストッパ部96C、96Cを左右に形成してなるステアリングストッパ98Cを設けても良い。
【0065】
以上に述べた自動二輪車の前輪操舵装置の作用を次に述べる。
図12は実施例に係るステアリングリンクへのステアリングハンドルの取付説明図であり、(a)において、ナックルアーム21L、21Rにハンドルリンク22の下端部22bを取り付ける。
【0066】
(b)において、上下のヘッドパイプ22t、22bの間に円筒部材113を配置し、ハンドルリンク22の上端部22tを持ち上げ、ステアリングハンドル23のステアリング軸116をステアリング孔122に差し込み、円筒部材113の第2係合穴115、115に、ハンドルリンク22の上端に形成する係合穴125としての第1係合穴121、121およびステアリングハンドル23の孔部119、119を合わせ、左右外方から締結ボルト112、112をねじ込む。
(c)において、ハンドルリンク22へステアリングハンドル23の取付が完了した状態を示す。
【0067】
図13は比較例に係るステアリングリンクへのステアリングハンドルの取付説明図である。
(a)において、ナックルアーム21Bにハンドルリンク22Bの下端部を取り付ける。ハンドルリンク22Bの下端部には、ステアリング軸116Bが取り付けられている。
【0068】
(b)において、ステアリング軸116Bをヘッドパイプ28Bの下方からステアリング孔122Bに入れ、上方からステアリング軸116Bに矢印b方向にステアリングハンドル23Bを嵌める。
このとき、ハンドルリンク22の位相とステアリンクハンドル23の位相を合わせる作業が必要であった。
(c)において、ハンドルリンク22へステアリングハンドル23の取付が完了した状態を示す。
【0069】
図11および図12を参照して、前輪操舵装置123において、ステアリングボルト取付部には、ステアリンクハンドル23に掛かる力をハンドルリンク22に伝達する水平部材111としての締結部材112と、ステアリングハンドル23およびハンドルリンク22に設け締結部材112と係合するように形成する係合穴115、119、121と、が備えられている。
【0070】
ステアリングハンドル23の係合穴119およびハンドルリンク22の係合穴121に締結部材112を差し込み、円筒部材113の第2係合穴115に締結部材112を介してハンドルリンク22を固定すると同時に、ハンドルリンク22の位相とステアリンクハンドル23の位相合わせをすることができる。
【0071】
つまり、ステアリングハンドル23操舵角の位相合わせに係る微調整作業を省くことが可能となる。
図12と図13を比較すると、操舵角の位相合わせ以外の組付作業には大きく変わるところはない。従って、前輪操舵装置123の組立性を高めることができる。組立性が高まることで、組立工数の低減を図ることができる。
【0072】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の鞍乗り型車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、自動二輪車車の前輪操舵装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車の正面図である。
【図3】本発明に係る自動二輪車前部の平面図である。
【図4】本発明に係る自動二輪車前部の斜視図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係るナックルアームの上端部および下端部に備えられている操舵軸の作用説明図および比較例図である。
【図8】ハブステア機構に設けるステアリングストッパの構成およびその作用を説明する図である。
【図9】ステアリングハンドルおよびその周辺部を説明する斜視図である。
【図10】図9の10−10線断面図である。
【図11】ステアリングハンドルおよびその周辺部の分解斜視図である。
【図12】実施例に係るステアリングリンクへのステアリングハンドルの取付説明図である。
【図13】比較例に係るステアリングリンクへのステアリングハンドルの取付説明図である。
【符号の説明】
【0075】
10…自動二輪車、11…車体フレーム、13L、13R…アーム部、16…前輪、20…ハブステア機構、21L、21R…ナックルアーム、22…ハンドルリンク、23…ステアリンクハンドル、26…エンジン、98、98B、98C…ステアリングストッパ、111…水平部材、125a、125b…係合穴、124…前輪操舵装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームまたはエンジンから前方に揺動可能に延出するアーム部と、このアーム部の先端に設け前輪を操舵可能に支持するハブステア機構およびナックルアームと、このナックルアームの上端に上下伸縮可能に連結するハンドルリンクと、このハンドルリンクに連結するステアリンクハンドルと、このステアリングハンドルを回動可能に支持するヘッドパイプと、が備えられている自動二輪車の前輪操舵装置において、
前記前輪操舵装置には、車体の幅方向に水平に設け前記ステアリンクハンドルに加わる操舵力を前記ハンドルリンクに伝達する水平部材と、前記ステアリングハンドルおよび前記ハンドルリンクに設け前記水平部材と係合するように形成した係合穴と、が備えられていることを特徴とする自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項2】
前記ハブステア機構、前記ハンドルリンクまたは前記ステアリンクハンドルの中心には、前記前輪の操舵角を規制するステアリンクストッパが設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項3】
前記ステアリングハンドルは、前記ヘッドパイプに回動可能に支持されるステアリング軸を備え、このステアリング軸と前記ステアリングハンドルとは、前記水平部材により連結されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項4】
前記ステアリング軸は、前記水平部材の連結部の上方と下方とで前記ヘッドパイプに回動自在に支持されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項1】
車体フレームまたはエンジンから前方に揺動可能に延出するアーム部と、このアーム部の先端に設け前輪を操舵可能に支持するハブステア機構およびナックルアームと、このナックルアームの上端に上下伸縮可能に連結するハンドルリンクと、このハンドルリンクに連結するステアリンクハンドルと、このステアリングハンドルを回動可能に支持するヘッドパイプと、が備えられている自動二輪車の前輪操舵装置において、
前記前輪操舵装置には、車体の幅方向に水平に設け前記ステアリンクハンドルに加わる操舵力を前記ハンドルリンクに伝達する水平部材と、前記ステアリングハンドルおよび前記ハンドルリンクに設け前記水平部材と係合するように形成した係合穴と、が備えられていることを特徴とする自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項2】
前記ハブステア機構、前記ハンドルリンクまたは前記ステアリンクハンドルの中心には、前記前輪の操舵角を規制するステアリンクストッパが設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項3】
前記ステアリングハンドルは、前記ヘッドパイプに回動可能に支持されるステアリング軸を備え、このステアリング軸と前記ステアリングハンドルとは、前記水平部材により連結されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項4】
前記ステアリング軸は、前記水平部材の連結部の上方と下方とで前記ヘッドパイプに回動自在に支持されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の前輪操舵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−254457(P2008−254457A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95280(P2007−95280)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000151276)株式会社東京アールアンドデー (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000151276)株式会社東京アールアンドデー (34)
【Fターム(参考)】
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