説明

自動倉庫

【課題】
柱の位置を簡単に精度良く求めると共に、柱の位置を基準とする位置で物品の位置を管理し、しかも柱に依存しない絶対位置に基づいて入出庫装置が停止できるようにする。
【構成】
自動倉庫はラックと、ラックに沿って自動倉庫内を走行する入出庫装置とを備えている。入出庫装置は、位置センサと、走行制御部と、ラックの柱を検出する柱センサと、入出庫装置が前進している際と後退している際の双方で、柱センサの信号により柱位置を求める柱位置検出部とを備えている。自動倉庫はさらに、求めた柱位置を記憶する記憶部と、ラックの柱を基準とする位置をラックの柱に依存しない絶対位置に変換する変換部とを備え、走行制御部は位置センサからの信号に基づき変換部で変換した絶対位置に入出庫装置が停止するように停止制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動倉庫に関し、特にラックの間口に対する入出庫装置の位置決めに関する。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫の1間口に複数個の物品を保管し、任意の物品に入出庫装置がアクセスできるようにすると便利である。この場合、自動倉庫の在庫管理の点からは、間口のアドレスと間口内の基準位置からのオフセットにより、物品の位置を管理すると便利である。この一方で入出庫装置の停止制御の点からは、間口に依存しない絶対位置を用いることが好ましい。そこで間口基準の位置を、簡単かつ正確に間口に依存しない絶対位置に変換する必要がある。
【0003】
ラックの柱を用いた制御として、特許文献1(JP3028695B)は柱センサで柱のエッジを検出することにより、入出庫装置のスライドフォークを位置決めすることを開示している。しかしながら特許文献1では、柱を検出すると停止するので、スライドフォークを位置決めできる位置は柱毎に1個所となり、柱と柱との間に複数個の物品を保管する場合には対応できない。また入出庫装置を停止させる際には、前進しながら柱を検出するか、後退しながら柱を検出するかのいずれかであり、柱センサの検出遅れ等のために、柱の検出精度が充分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP3028695B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、柱の位置を簡単に精度良く求めると共に、柱の位置を基準とする位置で物品の位置を管理し、しかも柱に依存しない絶対位置に基づいて入出庫装置が停止できるようにすることにある。
この発明での追加の課題は、柱の位置をより高精度に求めることができるようにすることにある。
この発明での追加の課題は、求めた柱の位置の妥当性を検査できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ラックと、ラックに沿って自動倉庫内を走行する入出庫装置とを備えている自動倉庫であって、前記入出庫装置は、入出庫装置の位置を検出する位置センサと、入出庫装置の走行を制御する走行制御部と、ラックの柱を検出することにより信号がオン/オフする柱センサと、柱センサの信号により走行制御部により入出庫装置を前進させている際に求めた柱位置と後退させている際に求めた柱位置との双方に基づいて柱位置を求める柱位置検出部とを備え、自動倉庫はさらに、求めた柱位置を記憶する記憶部と、ラックの柱を基準とする位置をラックの柱に依存しない絶対位置に変換する変換部とを備えて、前記走行制御部は、位置センサからの信号に基づいて変換部で変換した絶対位置に入出庫装置が停止するように停止制御を行うことを特徴とする。記憶部と変換部は入出庫装置に設けても、地上側のコントローラに設けても良い。なお柱に対して入出庫装置を複数回前後進させて柱位置の検出精度をさらに高めても良い。
【0007】
この発明では、前進時に求めた柱位置と後退時に求めた柱位置の双方に基づき、柱位置を求めて記憶する。このため柱センサの検出遅れ等を補償でき、しかも複数回の検出データを用いるので、簡単かつ比較的高精度に柱位置を求めることができる。さらにラックの柱を基準とする位置をラックの柱に依存しない絶対位置に変換し、位置センサからの信号に基づき、変換部で変換した絶対位置に停止するように、入出庫装置の停止制御を行う。この結果、停止制御は絶対位置と位置センサとにより行われ、正確に停止できる。さらにラックの柱を基準とする位置をラックの柱に依存しない絶対位置に変換する変換部を設けるので、物品の在庫位置を間口のアドレスと間口内の位置との組み合わせから成る分かりやすい位置で管理できる。
【0008】
好ましくは、前記柱位置は柱の中心位置であり、前記柱位置検出部は、前進時に柱センサがオン/オフした位置と後退時に柱センサがオン/オフした位置との平均値から、柱の中心位置を求める。柱の中心位置を用いると、柱の両端を前進時と後退時に各々検出するので合計4個のデータが得られ、これらのデータを平均すると、簡単に正確な位置を求めることができる。これに対して柱のエッジ等を柱位置とすると、前進時と後退時の2個のデータから求めることになり、柱位置の精度が低くなる。
【0009】
特に好ましくは、前記柱位置検出部は、求めた柱の中心位置へ入出庫装置が走行した際に、柱センサで柱を検出しないと、柱の中心位置を再度求めて、記憶部に記憶した柱位置を上書きする。このようにすると、例えば柱の太さ×1/2の精度で柱位置を検証できる。なお柱の中心位置から柱の太さ×1/2だけシフトした点を基準として許容誤差の範囲内で、柱センサの信号が変化するか、などの追加の検査を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の自動倉庫の要部平面図
【図2】実施例での入出庫装置の制御系を示すブロック図
【図3】実施例で柱中心位置の平均値を求めて検査するまでの処理を模式的に示す図
【図4】実施例での間口アドレス+柱中心位置からの座標と、物品の絶対位置との換算を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0012】
図1〜図4に、実施例の自動倉庫2を示す。自動倉庫2は、スタッカークレーン、あるいはラック20の段毎に設けた搬送台車などの入出庫装置4を備え、実施例ではスタッカークレーンを入出庫装置4として備えている。入出庫装置4はレール6に沿って走行し、昇降台8をマスト9に沿って昇降させ、昇降台8には例えば一対のスライドフォークが設けられている。スライドフォークは例えば左右一対のフォーク10,11から成り、フォーク10,11は水平面内でレールと直角な方向に進退してラック20との間で物品を移載する。フォーク11はレール6の長手方向に沿っても進退自在で、フォーク10はレール6の長手方向位置が固定で、左右一対のフォーク10,11で物品を挟み込むようにして、ラック20の間口24との間で移載する。スライドフォークの種類は任意で、スライドフォークに代えてスカラアーム等の他の移載装置を用いても良い。
【0013】
ラック20は例えばレール6の左右両側に設けられるが片側でも良く、ラック20は柱22,23を備え、このうちレール6に面した側の柱22を間口24の基準位置として用いる。従って以下柱という場合、レール6側の柱22のみを考えるものとする。また図では柱22は太さが一種類であるが、太柱と細柱のように2種類の柱を用いても良い。間口24は柱22,22間のスペースで、実施例では1個の間口24に複数個の物品26を載置自在である。また物品26のサイズは任意で、間口24からはみ出さなければよい。これらのため、物品26の位置として、在庫データ上では柱22を基準とする位置、より具体的にはレール6に沿った方向での柱22の中心を基準とする位置を用いる。
【0014】
入出庫装置4は柱センサS1,S2を例えば左右一対備え、柱センサS1,S2で柱22の中心位置を求める。また実施例では、前後方向(レール6の長手方向)に沿って、柱センサS1,S2は左右各1個のみ設けられているものとするが、左右各2個以上設けてもよい。S3は絶対位置センサで、例えばレーザ距離センサなどであり、自動倉庫2の原点などに配置した反射板28を用い、入出庫装置4の絶対位置を求める。絶対位置センサS3として、レール6と平行に配置した磁気マークを読み取るリニアセンサなどを用いてもよく、また絶対位置センサS3の代わりに図示しない走行モータの回転量を検出するエンコーダなどを用いてもよい。この明細書において絶対位置とは、柱22に依存しない位置との意味である。
【0015】
自動倉庫2のコントローラ30は、コントローラ本体32と棚ファイル34,在庫ファイル36などを備え、棚ファイル34はラック20の間口単位で物品26の在庫データを記載し、在庫ファイル36は例えばラック20内の位置を問わずに在庫データを記載する。
【0016】
図2は入出庫装置4の制御系を示し、M1は走行モータ、M2は昇降台を昇降させるための昇降モータ、M3はスライドフォークを進退させるための進退モータ、M4はスライドフォークをレールの長手方向に沿って開閉するための開閉モータである。走行制御部40は走行モータM1を制御し、絶対位置センサS3により現在位置を求め、コントローラから入力された間口基準の位置をマップ記憶部48と変換部52とで、絶対位置に変換する。そして求めた絶対位置との誤差を0にするように、走行制御部40は絶対位置センサS3によりフィードバック制御を行い、求めた絶対位置に停止する。昇降制御部42は昇降モータを制御し、図示しない高さ方向の絶対位置センサあるいは昇降モータM2のエンコーダなどを用いて、目標の高さ位置へ昇降台を昇降させる。移載制御部44はスライドフォーク毎に設けた進退モータM3と開閉モータM4とを制御し、間口と昇降台との間での物品の移載を制御する。
【0017】
柱位置検出部46は柱センサS1またはS2で求めた柱の位置から、柱の中心位置を検出し、この手順を図3に示す。マップ記憶部48は、ラックの各列もしくは各間口に対し、基準となる柱の絶対位置を記憶する。列等の意味は図4に示す。通信部50は地上側のコントローラ30と通信し、変換部52は図4の手順により、柱を基準とする間口内座標を絶対位置に変換する。
【0018】
図3に柱の中心位置の算出を示す。入出庫装置を前進させながら柱センサS1またはS2で柱22を監視し、柱センサS1またはS2の信号がオンした時点での絶対位置センサS3のデータA1と、オフした時点での絶対位置センサS3のデータA2を記憶する。同様に入出庫装置が後退する際に、柱センサS1またはS2で柱22を監視し、センサ信号がオンした時点での絶対位置A3と、オフした時点での絶対位置A4とを記憶する。絶対位置A1とA2の平均は柱22の中心を表し、同様に絶対位置A3,A4の平均も柱22の中心位置を表す。そこで前進時に求めた柱の中心位置と後退時に求めた柱の中心位置を平均する、あるいは単純に絶対位置A1〜A4の平均を求めることにより、柱22の中心位置の平均値を求め、求めた平均値をマップ記憶部48に記憶する。
【0019】
柱中心位置の平均値が求まると、入出庫装置を絶対座標で柱中心位置の平均値で停止させ、その時、柱センサS1またはS2で柱22を検出するかどうかをチェックする。この時、柱センサS1またはS2が柱22を検出すると、求めた柱中心位置の平均値は最大でも柱22の幅の1/2の誤差である。柱22を検出しない場合、求めた平均値を無効として、前進時と後退時に再度柱位置を求めて、柱中心位置の平均値を再度求め、マップ記憶部48の柱中心位置の平均値を上書きする。
【0020】
柱位置の精度を増すには、例えば絶対位置A1と絶対位置A2との間隔、及び絶対位置A3と絶対位置A4との間隔が、柱22の太さにほぼ等しいこと、柱22の中心位置から柱の太さ×1/2の位置の付近で、柱センサの信号が変化することなどの検査を追加できる。実施例では、柱22の位置として中心位置を用い、柱センサS1またはS2がオンした時点での絶対位置とオフした時点での絶対位置を前進時と後退時とで求め、柱中心位置を求めるために、4回のデータを用いる。このため柱22のエッジを用いる場合に比べ、より多数のデータを用いてより精度の高いデータを得ることができる。
【0021】
図4に柱位置を基準とする座標と、絶対位置との間の換算を示し、この処理は変換部52で行う。物品の在庫管理の点からすると、ラック20でのアドレスを連,列,段等の間口アドレスと、間口内位置との組み合わせとすることが好ましい。ここに連は、例えば図1で、レール6の上方のラックを第1連、下方のラックを第2連などとする単位である。列は自動倉庫の原点側から見てレール6の方向に沿って何個目の間口であるかを表し、段は間口の高さを表す。そして間口内位置として、各間口の例えば原点側の柱の中心からの位置を用いる。これ以外に棚ファイル34には物品の属性として物品のID,サイズ等を記憶する。マップ記憶部48は、間口の連と列毎に、基準となる柱の中心位置の絶対座標を記憶する。ここでは、ラックの柱22は鉛直向きで、柱の中心位置が段によって変わることはないものと仮定している。ただし連,列の単位ではなく、連,列,段の単位で柱の中心位置を求めても良い。
【0022】
棚ファイル34などでの間口アドレスを、マップ記憶部48のデータにより柱中心位置に変換し、これに間口内の位置(オフセット)を加算すると、物品の絶対位置が求まる。これ以外に物品のサイズを棚ファイル34に記憶しておくと、絶対位置換算でどの位置にどのサイズの物品があるかが判明し、これによって入出庫装置4の停止位置が定まる。そして柱を基準とする位置から絶対位置への換算は変換部52で行う。なお実施例ではマップ記憶部48と変換部52とを入出庫装置4に設けて、コントローラ30は棚ファイル34上の位置を通知するようにしたが、コントローラ30にマップ記憶部48と変換部52とを設けて、入出庫すべき物品の絶対位置を入出庫装置4へ通知するようにしても良い。
【0023】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 入出庫装置の前進時と後退時とに、柱22の両端を検出し、これらの4個のデータの平均値を用いる。この結果、柱センサの検出遅れ等を補償すると共に、複数回のデータを用いることにより、簡単かつ高精度に柱22の中心位置を求めることができる。
(2) 求めた柱中心位置で、柱センサS1またはS2により柱22を検出できるかどうかを検査する。これによって柱中心位置の信頼性を確認できる。
(3) 棚ファイル34等では間口アドレスと間口内位置とにより物品の位置を管理し、入出庫装置の走行では、これを絶対位置に変換し、絶対位置センサS3を用いて所定の位置に停止する。この結果、求めた柱の中心位置を基準として、絶対位置センサS3の精度で停止制御ができる。
(4) 仮に入出庫装置の停止制御を、柱センサS1またはS2で柱22を検出した後、棚ファイル上の間口内位置までの距離だけ走行するように制御すると、柱センサS1またはS2の検出遅れ等の影響を受け、また柱センサS1またはS2が柱以外のものを検出すると、誤った位置に停止することになる。
【符号の説明】
【0024】
2 自動倉庫
4 入出庫装置
6 レール
8 昇降台
9 マスト
10,11 スライドフォーク
20 ラック
22,23 柱
24 間口
26 物品
28 反射板
30 コントローラ
32 コントローラ本体
34 棚ファイル
36 在庫ファイル
40 走行制御部
42 昇降制御部
44 移載制御部
46 柱位置検出部
48 マップ記憶部
50 通信部
52 変換部
S1,S2 柱センサ
S3 絶対位置センサ
M1〜M4 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックと、ラックに沿って自動倉庫内を走行する入出庫装置とを備えている自動倉庫であって、
前記入出庫装置は、入出庫装置の位置を検出する位置センサと、入出庫装置の走行を制御する走行制御部と、ラックの柱を検出することにより信号がオン/オフする柱センサと、柱センサの信号により走行制御部により入出庫装置を前進させている際に求めた柱位置と、後退させている際に求めた柱位置、との双方に基づいて柱位置を求める柱位置検出部とを備え、
自動倉庫はさらに、求めた柱位置を記憶する記憶部と、ラックの柱を基準とする位置をラックの柱に依存しない絶対位置に変換する変換部とを備えて、前記走行制御部は、位置センサからの信号に基づいて、変換部で変換した絶対位置に入出庫装置が停止するように停止制御を行うことを特徴とする、自動倉庫。
【請求項2】
前記柱位置は柱の中心位置であり、前記柱位置検出部は、前進時に柱センサがオン/オフした位置と後退時に柱センサがオン/オフした位置との平均値から、柱の中心位置を求めるように構成されていることを特徴とする、請求項1の自動倉庫。
【請求項3】
前記柱位置検出部は、求めた柱の中心位置へ入出庫装置が走行した際に柱センサで柱を検出しないと、柱の中心位置を再度求めて記憶部に記憶した柱位置を上書きするように構成されていることを特徴とする、請求項2の自動倉庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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