説明

自動分析装置、自動分析装置の試薬在庫管理方法、および自動分析装置の試薬在庫管理用プログラム

【課題】分析に使用する試薬の効率的かつ安定的な在庫管理を実現することができる自動分析装置、自動分析装置の試薬在庫管理方法、および自動分析装置の試薬在庫管理用プログラムを提供する。
【解決手段】分析に使用される試薬を収容した試薬容器の在庫情報を記憶する在庫情報記憶部と、分析に使用される試薬および該試薬を収容する試薬容器をそれぞれ識別する識別情報ならびに当該自動分析装置における前記試薬容器の設置位置に係る情報を含む設置情報を記憶する設置情報記憶部とを備えた自動分析装置が、前記設置情報記憶部で記憶する設置情報と前記在庫情報記憶部で記憶する在庫情報との照合を行い、この照合結果に応じて前記試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正であるか否かの判定を行い、この判定の結果、当該自動分析装置への前記試薬容器の設置が適正である場合に前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料と試薬とを反応させることによってその試料の分析を行う自動分析装置、当該自動分析装置で使用する試薬の在庫管理を行う自動分析装置の試薬在庫管理方法、および自動分析装置の試薬在庫管理用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料と試薬とを反応させることによってその試料の分析を自動的に行う自動分析装置においては、分析に使用される試薬の在庫管理を行う必要がある。従来、このような試薬の在庫管理を行う技術として、自動分析装置で使用される試薬の消費状況、在庫状況、消費傾向、完全消費時期予定などを情報解析装置で解析し、その解析結果を分析装置の管理者が活用することによって試薬の発注作業を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−228667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如く情報解析装置における解析結果を活用して試薬の発注作業を行ったとしても、発注量に余裕をもたせて発注すると期限切れを起こす試薬が出てしまう一方、発注量を抑えて発注すると予想よりも早く在庫がなくなった場合に補充ができなくなってしまうことがあり、必ずしも効率的かつ安定的な試薬の在庫管理を実現できているとは言い難かった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、分析に使用する試薬の効率的かつ安定的な在庫管理を実現することができる自動分析装置、自動分析装置の試薬在庫管理方法、および自動分析装置の試薬在庫管理用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、試料と試薬とを反応させることによって当該試料の分析を行う自動分析装置であって、分析に使用される試薬の在庫情報を記憶する在庫情報記憶手段と、分析に使用される試薬および該試薬を収容する試薬容器をそれぞれ識別する識別情報ならびに当該自動分析装置における前記試薬容器の設置位置に係る情報を含む設置情報を記憶する設置情報記憶手段と、前記設置情報記憶手段で記憶する設置情報と前記在庫情報記憶手段で記憶する在庫情報との照合を行う照合手段と、前記照合手段で照合した結果に応じて当該自動分析装置への前記試薬容器の設置が適正であるか否かの判定を行う判定手段と、前記判定手段で判定した結果、当該自動分析装置への前記試薬容器の設置が適正である場合、前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行う予測手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記照合手段は、前記設置情報記憶手段で新規の設置情報を記憶した場合、前記在庫情報記憶手段から前記在庫情報を読み出し、前記新規の設置情報に相当する情報が前記在庫情報に含まれるか否かの照合を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記判定手段は、前記照合手段で照合した結果、前記新規の設置情報に相当する情報が前記在庫情報に含まれている場合、前記新規の設置情報に対応する試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正であるか否かの判定を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記判定手段は、前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬の有効期限と、この試薬と同種の試薬であって前記在庫情報に含まれる試薬の有効期限とを比較し、前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬の有効期限が比較対象の有効期限の中で最も早い場合、当該自動分析装置への設置が適正であると判定することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項記載の発明において、試薬の使用に係る使用情報を記憶する使用情報記憶手段をさらに備え、前記予測手段は、前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用情報を前記使用情報記憶手段から読み出し、この読み出した使用情報を用いて互いに異なる時期と長さとを有する複数の期間における使用量の推移をそれぞれ算出し、この算出した結果に基づいて前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項記載の発明において、前記予測手段の予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成手段と、前記発注情報作成手段で作成した発注情報を、通信ネットワークを介して接続される送信先に送信する送信手段と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項記載の発明において、試料と試薬とを反応させることによって当該試料の分析をそれぞれ行う複数の自動分析装置から通信ネットワークを介して各々送信されてくる各自動分析装置の設置情報を受信する受信手段をさらに備え、前記照合手段は、前記受信手段で受信した設置情報と前記在庫情報記憶手段で記憶する在庫情報との照合を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記予測手段の予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成手段と、前記発注情報作成手段で作成した発注情報を、前記通信ネットワークを介して接続される送信先に送信する送信手段と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項記載の発明において、未使用の前記試薬容器を収納するパーケージにコード化して記録された情報コードを読み取って入力する入力手段をさらに備え、前記在庫情報は、前記入力手段で読み取った情報コードの内容を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、試料と試薬とを反応させることによって当該試料の分析を行う一方、分析に使用される試薬の在庫情報を記憶する在庫情報記憶部と、分析に使用される試薬および該試薬を収容する試薬容器をそれぞれ識別する識別情報ならびに当該自動分析装置における前記試薬容器の設置位置に係る情報を含む設置情報を記憶する設置情報記憶部と、を備えた自動分析装置が、分析に使用する試薬の在庫管理を行う自動分析装置の試薬在庫管理方法であって、前記設置情報記憶部で新規の設置情報を記憶した場合、前記在庫情報記憶部から前記在庫情報を読み出し、前記新規の設置情報に相当する情報が前記在庫情報に含まれるか否かの照合を行う照合ステップと、前記照合ステップで照合した結果、前記新規の設置情報に相当する情報が前記在庫情報に含まれている場合、前記新規の設置情報に対応する試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正であるか否かの判定を行う判定ステップと、前記判定ステップで判定した結果、前記新規の設置情報に対応する試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正である場合、前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行う予測ステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記判定ステップは、前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬の有効期限と、この試薬と同種の試薬であって前記在庫情報に含まれる試薬の有効期限とを比較し、前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬の有効期限が比較対象の有効期限の中で最も早い場合、当該自動分析装置への設置が適正であると判定することを特徴とする。
【0017】
請求項12記載の発明は、請求項10または11記載の発明において、当該自動分析装置は、試薬の使用に係る使用情報を記憶する使用情報記憶部をさらに備え、前記判定ステップで判定した結果、前記新規の設置情報に対応する試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正である場合、前記予測ステップを行う前に、前記在庫情報記憶部で記憶する在庫情報および前記使用情報記憶部で記憶する使用情報を更新する更新ステップを行い、前記更新ステップで更新した使用情報を前記使用情報記憶部から読み出し、この読み出した使用情報を参照して前記予測ステップを行うことを特徴とする。
【0018】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記予測ステップは、前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用情報から互いに異なる時期と長さと有する複数の期間における使用量の推移をそれぞれ算出し、この算出した結果に基づいて前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項14記載の発明は、請求項10〜13のいずれか一項記載の発明において、前記予測ステップにおける予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成ステップと、前記発注情報作成ステップで作成した発注情報を、通信ネットワークを介して接続される送信先に送信する送信ステップと、をさらに有することを特徴とする。
【0020】
請求項15記載の発明は、請求項10〜13のいずれか一項記載の発明において、試料と試薬とを反応させることによって当該試料の分析をそれぞれ行う複数の自動分析装置から通信ネットワークを介して各々送信されてくる各自動分析装置の設置情報を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信した設置情報を前記設置情報記憶部に書き込んで記憶する設置情報記憶ステップと、をさらに有することを特徴とする。
【0021】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明において、前記予測ステップの予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成ステップと、前記発注情報作成ステップで作成した発注情報を、前記通信ネットワークを介して接続される送信先に送信する送信ステップと、をさらに有することを特徴とする。
【0022】
請求項17記載の発明は、請求項10〜16のいずれか一項記載の発明において、未使用の前記試薬容器を収納するパーケージにコード化して記録された情報コードを読み取って入力する入力ステップと、前記入力ステップで読み取った情報コードの内容を前記在庫情報記憶部に書き込んで記憶する在庫情報記憶ステップと、をさらに有することを特徴とする。
【0023】
請求項18記載の発明に係る自動分析装置の試薬在庫管理用プログラムは、請求項10〜17のいずれか一項記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法を当該自動分析装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、分析に使用される試薬を収容した試薬容器の在庫情報を記憶する在庫情報記憶部と、分析に使用される試薬および該試薬を収容する試薬容器をそれぞれ識別する識別情報ならびに当該自動分析装置における前記試薬容器の設置位置に係る情報を含む設置情報を記憶する設置情報記憶部とを備えた自動分析装置が、前記設置情報記憶部で記憶する設置情報と前記在庫情報記憶部で記憶する在庫情報との照合を行い、この照合結果に応じて前記試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正であるか否かの判定を行い、この判定の結果、当該自動分析装置への前記試薬容器の設置が適正である場合に前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行うことにより、自動分析装置で使用する試薬の効率的かつ安定的な在庫管理を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る自動分析装置を含む通信システムの全体構成を示す説明図である。同図に示す自動分析装置1は、血液や体液等の検体(試料)の成分を生化学的に分析する装置である。この自動分析装置1は、通信ネットワークNを介して試薬の発注に係る発注情報の送信先である受注サーバ101に接続されており、受注サーバ101との間で所定の通信方式による通信が可能である。
【0027】
自動分析装置1は、検体および試薬を反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定機構11と、この測定機構11を含む自動分析装置1の制御を行うとともに測定機構11における測定結果の分析を行う制御分析機構21とを有し、これら二つの機構が連携することによって複数の検体の成分の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う。
【0028】
自動分析装置1の測定機構11は、検体を収容する検体容器31が搭載された複数のラック32を収納して順次移送する検体移送部12と、試薬容器41を保持する試薬容器保持部13と、試薬容器41の表面に設けられ、試薬容器41や試薬容器41に収容された試薬を識別する識別情報がコード化して記録されたバーコードを読み取るバーコード読取部14と、検体と試薬とを収容して反応させる反応容器51を保持する反応容器保持部15と、を備える。
【0029】
また、測定機構11は、検体移送部12上の検体容器31に収容された検体を反応容器51に分注する検体分注部16、試薬容器保持部13上の試薬容器41に収容された試薬を反応容器51に分注する試薬分注部17、反応容器51の内部に収容された液体を攪拌する攪拌部18、光源から照射されて反応容器51内を通過した光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部19、および反応容器51の洗浄を行う洗浄部20を備える。なお、本実施の形態1において、液体は微量の固体成分も含み得るものとする。
【0030】
試薬容器保持部13は、分注対象の試薬を収容する試薬容器41を試薬分注部17まで回転して移送する回転テーブルと、この回転テーブルの上方を開閉自在に被覆する蓋部と、回転テーブルの下方に位置する恒温槽とを有する(蓋部と恒温槽は図示せず)。このような構成を有する試薬容器保持部13は、蓋部を閉じることによって密閉された空間内で回転テーブル上に保持される試薬容器41を恒温状態に保ち、その試薬容器41に収容された試薬の蒸発または変性を抑える。
【0031】
自動分析装置1の制御分析機構21は、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の動作指示信号などを含む情報の入力を受ける入力部22、分析結果を含む情報を出力する出力部23、通信ネットワークNを介して所定の形式に従った情報を送信する送信部24、通信ネットワークを介して送られてくる情報を受信する受信部25、測定機構11における測定結果に基づいて試料の成分の分析演算を行う分析部26、自動分析装置1の制御プログラムや自動分析装置1における分析結果を含む情報を記憶する記憶部27、分析に使用する試薬の在庫管理を行う管理部28、および自動分析装置1内の各機能または各手段の制御および演算を行うためにCPU(Central Processing Unit)等を用いて実現される制御部29を備える。
【0032】
記憶部27は、試薬の在庫情報を記憶する在庫情報記憶部271と、試薬の使用実績を試薬の種類ごとに記憶する使用情報記憶部272と、試薬容器保持部13で現在保持している試薬容器41の設置位置に係る情報ならびに試薬容器41および試薬容器41に収容された試薬をそれぞれ識別する識別情報を含む設置情報を記憶する設置情報記憶部273と、自動分析装置1が行う分析項目や分析項目毎の分析パラメータ、分析結果などを含む分析情報を記憶する分析情報記憶部274とを有する。分析情報記憶部274が記憶する分析パラメータとしては、検査項目、試薬の種類、試料や試薬の分注量、試料や試薬の有効期限、検量線の作成に必要な濃度、各分析項目の参照値および許容値などがあり、自動分析装置1に特有なパラメータも含まれる。
【0033】
記憶部27は、さまざまな情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理に係るプログラムをハードディスクからロードして電気的に記録するメモリとを用いて実現される。このようなプログラムとして、後述する試薬在庫管理方法を自動分析装置1に実行させる試薬在庫管理用プログラムも含まれる。また、記憶部27は、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、PCカード、xDピクチャーカード等の記録媒体に記録された情報を読み取ることができる補助記憶装置を具備してもよく、そのような記録媒体に対して上述した試薬在庫管理用プログラムを記録して広く流通させることも可能である。
【0034】
管理部28は、在庫情報記憶部271で記憶する在庫情報と設置情報記憶部273で記憶する設置情報との照合を行う照合部281、試薬容器保持部13に適正な試薬容器41が保持されているか否かを判定する判定部282、試薬容器保持部13で保持する試薬容器41が収容する試薬の使用予測を行う予測部283、および予測部283の予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成部284を有する。
【0035】
制御分析機構21では、測定機構11の測光部19から分析に係る測定結果を受信すると、分析部26が測定対象である検体の分析情報を分析情報記憶部274から読み出し、測定結果の分析演算を行う。この分析演算では、測光部19から送られてくる測定結果に基づいて反応液の吸光度を算出し、この算出結果に加えて標準検体から得られる検量線や分析情報に含まれる分析パラメータを用いることにより、反応液の成分等を定量的に求める。このようにして得られた分析結果は、出力部23から出力される一方、分析情報記憶部274に書き込まれて記憶される。
【0036】
以上の機能構成を有する自動分析装置1が受注サーバ101との通信を行うために接続する通信ネットワークNは、インターネット、電話網、パケット網、WAN(Wide Area Network)、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、専用回線網、イントラネット等、所定の形式に従って電気的な信号の送受信が可能なネットワークであれば如何なるものであっても構わない。また、通信ネットワークNは、前述した各種ネットワークを適当に組み合わせたものでも構わない。
【0037】
図2は、本実施の形態1に係る自動分析装置の試薬在庫管理方法の処理の概要を示すフローチャートである。このフローチャートを用いて、自動分析装置1が行う試薬在庫管理方法の詳細を説明する。
【0038】
自動分析装置1の具体的な処理を説明する前に、試薬の搬入および保管について説明する。本実施の形態1では、自動分析装置1を管理する団体または施設に、発注した内容に応じた試薬が外部から搬入される。この試薬を収容する試薬容器41は搬入用のパッケージに収納されており、試薬容器保持部13に設置するまでの間、所定の保管場所(例えば冷蔵庫)で恒温状態を保ちながら保管される。この保管状態に入る前、自動分析装置1にはパッケージのパッケージ情報が入力部22から入力される。図3は、パッケージと試薬容器の構成を模式的に説明する図である。同図に示すパッケージ61の表面には、パッケージ情報を所定の方式によってコード化したバーコード62が貼付または印刷されている。この意味で、入力部22はバーコード読取機能を有する。また、試薬容器41にも、その試薬容器41や内部に収容している試薬の識別情報をコード化して記録したバーコード42が貼付されている。
【0039】
図4は、バーコード62に記録されたパッケージ情報の具体的な構成例を示す図である。同図に示すパッケージ情報テーブル201には、パッケージ61を識別するパッケージID、パッケージの収納者ID、試薬容器41のパッケージ61への収納日が含まれている。また、パッケージ情報テーブル201には、収納されている試薬容器41と試薬の組み合わせを識別する識別情報として、試薬容器41の種類を示す容器ID、試薬容器41に収容される試薬の種類を示す試薬ID、試薬のロット番号、試薬の有効期限、試薬の容量が記録されている。パッケージ情報テーブル201に記録されている二つの識別情報(No.1およびNo.2)は、同じ種類の試薬が同じ種類の試薬容器41に収容されたものであることと、試薬の有効期限はNo.1の試薬の方が早く切れることが分かる。
【0040】
なお、バーコード42に記録された識別情報は、パッケージ情報テーブル201に記録された識別情報と同じ内容を含む。すなわち、バーコード42には、容器ID、試薬ID、試薬のロット番号、試薬の有効期限、試薬の容量をコード化した情報が少なくとも含まれている。
【0041】
以後の説明においては、自動分析装置1にパッケージ情報が入力され、在庫情報記憶部271に書き込まれて記憶された時点で、そのパッケージ情報に対応するパッケージ61が在庫状態に達したものとする。
【0042】
以下、自動分析装置1の試薬在庫管理方法の具体的な処理を説明する。新たに搬入されたパッケージ61のパッケージ情報が上記の如く自動分析装置1に入力されると(ステップS1でYes)、在庫情報記憶部271で記憶する在庫情報が更新される(ステップS2)。ステップS1でパッケージ情報が入力されない場合(ステップS1でNo)には、後述するステップS3に進む。
【0043】
図5は、在庫情報記憶部271で記憶する在庫情報の構成例を示す図である。同図に示す在庫情報テーブル202には、上述したパッケージ情報テーブル201に含まれるパッケージIDおよび試薬の識別情報(容器ID、試薬ID、試薬のロット番号、試薬の有効期限、試薬の容量等)に加えて、そのパッケージ61の搬入日が記録されている。この搬入日は、パッケージ61のバーコード62に含まれるパッケージ情報が自動分析装置1に入力された日に他ならない。
【0044】
ステップS2における在庫情報の更新後、試薬容器保持部13の蓋部の開閉動作が行われた場合(ステップS3でYes)には、その開閉動作が終了後、試薬容器保持部13の回転テーブルを1周回転させることによって試薬容器保持部13が保持する全ての試薬容器41に貼付されたバーコード42をバーコード読取部14で読み取る(ステップS4)。この読み取ったバーコード42に含まれる識別情報は、試薬容器41の回転テーブル上における設置位置情報と合わさって設置情報として設置情報記憶部273に書き込まれて記憶される(ステップS5)。
【0045】
図6は、設置情報記憶部273で記憶する設置情報の構成例を示す図である。同図に示す設置情報テーブル203には、試薬容器保持部13における設置位置と、試薬の識別情報(容器ID、試薬ID、試薬のロット番号、試薬の有効期限、試薬の容量)と、蓋部の開閉動作前後において各設置位置に設置された試薬容器41の変更の有無とが記録されている。この設置情報テーブル203では、設置位置P1に設置された試薬容器41に変更があった(○)が、図示している範囲でその他の設置位置P2、P3(設置なし)、およびP4では変更がなかった(×)ことが記録されている。
【0046】
ステップS5で記憶した設置情報に変更または追加による新規の設置情報が含まれる場合(ステップS6でYes)、照合部281では、設置情報記憶部273で記憶する設置情報と在庫情報記憶部271で記憶する在庫情報とを照合し、新規の設置情報に相当する情報が在庫情報に含まれているか否かの照合を行う(ステップS7)。
【0047】
ステップS7における照合の結果、新規の設置情報に相当する情報が在庫情報に含まれている場合(ステップS8でYes)、判定部282が、その設置情報に対応する試薬容器41の試薬容器保持部13への設置が適正なものであるか否かの判定を行う(ステップS9)。この判定において、判定部282は、同種類の試薬を収容する試薬容器41の在庫が複数個ある場合、有効期限の日時が最も早い試薬を収容した試薬容器41が新たに設置されている場合、適正であると判定する。このステップS9の判定の結果、試薬容器保持部13への試薬容器41の設置が適正である場合(ステップS10でYes)には、在庫情報記憶部271で記憶する在庫情報を更新するとともに、使用情報記憶部272で記憶する使用情報を更新する(ステップS11)。
【0048】
図7は、使用情報記憶部272で記憶する使用情報の構成例を示す図である。同図に示す使用情報テーブル204は、試薬の識別情報の少なくとも一部(容器ID、試薬ID、試薬のロット番号)に加え、その試薬の使用開始日時と使用終了日時とが記録されている。この使用情報テーブル204からは、試薬IDが4483Eであってロット番号が28953である試薬(を収容した試薬容器41)の使用が2005年7月10日9時50分に終了し、同じ試薬IDを有し、ロット番号が31584である試薬(を収容した試薬容器41)に交換されたことが分かる。
【0049】
これに対して、ステップS7における照合の結果、新規の設置情報に相当する情報が在庫情報に含まれていない場合(ステップS8でNo)、出力部23から所定の警告情報を出力し(ステップS17)、利用者に在庫情報の確認および/または更新を促す。また、試薬容器保持部13に対する試薬容器41の設置が適正でない場合(ステップS10でNo)にも、上記ステップS17に進んで出力部23から所定の警告情報を出力し、利用者に適正な試薬容器41への交換を促す。なお、ステップS17で出力する警告情報は単なる警報でもよいし、音声によるメッセージでもよい。また、出力部23が表示用画面を有している場合には、その画面から所定のメッセージ(文字、絵、模様等)を表示してもよい。
【0050】
次に、ステップS11以降の処理について説明する。ステップS11の後、予測部283では、新たに加わった試薬容器41に収容される試薬と同種の試薬の使用予測を行う(ステップS12)。具体的には、使用情報記憶部272が記憶する同じ試薬IDの試薬の使用情報を読み出して参照し、週単位、月単位、または年単位等、互いに時期と長さとが異なる複数の期間における使用量の推移をそれぞれ算出し、この算出した結果に基づいて予測対象の試薬(を収容する試薬容器41)の在庫が切れる日などを予測する。
【0051】
図8は、ステップS12における予測処理の一例を示す図である。同図においては、予測部283が7月の試薬の使用量を予測するために、その前月(6月)までの使用実績曲線Cに基づいて、7月第1週の使用量の予測を行う場合を模式的に示している。予測部283は、まず3ヶ月前までの各月の第1週目とその前週との間の使用量の推移を求める。例えば、4月第1週(3ヶ月前)の使用量がn41、その前週(3月第4週)の使用量が
34である場合、使用量の推移Δ34はn41−n34で求められる。同様にして、5月第1週(2ヶ月前)の使用量n51とその前週(4月第4週)の使用量n44との間の使用量の推移Δ45=n51−n44、および6月第1週(1ヶ月前)の使用量n61とその前週(5月第4週)の使用量n54との間の使用量の推移Δ56=n61−n54を求める。
【0052】
その後、予測部283は、求めた3つの使用量の推移Δ34、Δ45、およびΔ56を用いて6月第4週から7月第1週までの使用量の推移Δ'67を予測する。この予測を行う際には、通常のトレンド予測などでよく用いられている手法のうち適当なものを使用すればよい。最後に、求めた予測結果Δ'67と6月第4週の使用量n64とを足し合わせることによって7月第1週の使用量の予測値n'71(=n64+Δ'67)が求められる。
【0053】
予測部283では、上記同様の方法によって7月第2週〜第4週の使用量の予測値をそれぞれ求め、得られた全ての予測値を足し合わせることによって7月の使用量の予測値を最終的に算出する。
【0054】
ここまで、月単位の使用量の予測を行う場合を説明してきたが、週単位の使用量の予測や年単位の使用量の予測も同様に行う。すなわち、週単位の使用量の予測値を求める場合には、日単位の使用量の推移を所定期間(例えば3日前)だけ遡って求め、この求めた使用量の推移に基づく週単位の使用量の予測値を算出する。また、年単位の使用量の予測値を求める場合には、月単位の使用量の推移を所定期間(例えば3年前)だけ遡って求め、この求めた使用量の推移に基づく年単位の使用量の予測値を算出する。
【0055】
なお、月単位の使用量の予測を行う場合には、4ヶ月前、5ヶ月前、・・・とさらに遡って求めた使用量の推移を用いて予測値を算出してもよいし、2ヶ月前までの使用量の推移に基づいて予測値を算出してもよい。また、使用量の推移として、上記の如く前後2週分の使用量の推移を求める代わりに、前後3週分またはそれ以上の週分の使用量の推移を求めてもよい。これらの点については、週単位の使用量の予測や年単位の使用量の予測値を算出する場合にも同様のことがいえる。
【0056】
このようにして、互いに時期と長さとが異なる複数の期間(週単位、月単位、年単位、・・・)の試薬の使用予測を行うことにより、図8に示す使用実績曲線Cのように試薬の使用量が不規則に変動するような場合であっても、その変動のトレンドを加味し、よりきめの細かい予測を行うことが可能となる。したがって、例えば過去の使用実績を所定期間で単に平均して予測する場合などと比べて高精度の予測を実現することができる。
【0057】
以上詳述したステップS12における予測結果に基づいて、発注情報作成部284では、予測対象の試薬の発注が必要であるか否かを判定する(ステップS13)。この判定においては、例えば予測対象の試薬を収容する試薬容器41の在庫がなくなる日(予測値)までの日数が所定の日数を下回る場合に発注が必要であると判定すればよい。
【0058】
ステップS13における判定の結果、発注が必要である場合(ステップS14でYes)、発注情報作成部284は、予測部283での予測結果や使用情報記憶部272で記憶する使用情報に基づいて、発注する試薬の量や入庫日を最適化することによって発注情報を作成する(ステップS15)。図9は、ステップS15で作成された発注情報の構成例を示す図である。同図に示す発注情報テーブル205には、発注先ID、発注元ID、および発注日に加えて、発注する試薬に関する情報として、試薬ID、容器ID、発注数、および入庫希望日が含まれる。このステップS15で作成した発注情報は、発注内容の試薬が搬入されて在庫状態となるまで、記憶部27内の所定の記憶領域に記憶される。
【0059】
その後、発注情報は、送信部24から通信ネットワークNを介して受注サーバ101に向けて送信される(ステップS16)。これにより、一連の処理が終了する。他方、ステップS13で発注不要と判定した場合(ステップS14でNo)には、そのまま一連の処理を終了する。
【0060】
発注情報を受信した受注サーバ101では、受信した発注情報の内容に応じた処理を行う。この受注サーバ101は、試薬の供給者側(試薬メーカ等)で管理してもよいし、パッケージ61の配送者側(配送会社等)で管理してもよいし、管理専門の業者に委託管理してもらってもよい。また、受注側では受注サーバ101を含むコンピュータシステムを構築することにより、受注内容に応じた試薬容器41のパッケージへの梱包や配送手続きを自動的に制御可能な構成にしておけば、受注から配送までの処理をより効率的に行うことができる。
【0061】
なお、ステップS1〜ステップS17の一連の処理が終了した後、再びステップS1に戻って上記同様の処理を繰り返し行うようにしてもよい。例えば、一連の処理が終了した直後にステップS1に戻って一連の処理を繰り返すように設定しておけば、リアルタイム性を損なわずに試薬の在庫管理を行うことができる。また、一連の処理が終了した後、再度スタートするまでの時間を適当に設定することにより、自動分析装置1への負荷を軽減しながら試薬の在庫管理を効率よく行うことができる。
【0062】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、分析に使用される試薬を収容した試薬容器の在庫情報を記憶する在庫情報記憶部と、分析に使用される試薬および該試薬を収容する試薬容器をそれぞれ識別する識別情報ならびに当該自動分析装置における前記試薬容器の設置位置に係る情報を含む設置情報を記憶する設置情報記憶部とを備えた自動分析装置が、前記設置情報記憶部で記憶する設置情報と前記在庫情報記憶部で記憶する在庫情報との照合を行い、この照合結果に応じて前記試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正であるか否かの判定を行い、この判定の結果、当該自動分析装置への前記試薬容器の設置が適正である場合に前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行うことにより、分析に使用する試薬の効率的かつ安定的な在庫管理を実現することができる。
【0063】
また、本実施の形態1によれば、精度のよい予測に基づいて最適化された試薬の発注情報が、通信ネットワークを介して接続される発注先に対して適切な時期に自動的に送信されるので、人為的な在庫管理を行う必要がなくなり、発注漏れによる試薬の在庫切れや、過剰な発注による期限切れ試薬の発生といった事態を回避することが可能となる。
【0064】
なお、本実施の形態1では、生化学的な分析を行う自動分析装置の場合を説明したが、免疫学的な分析または遺伝学的な分析を行う自動分析装置に対しても、本実施の形態1に係る試薬在庫管理方法を適用することが可能である。
【0065】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る自動分析装置を含む通信システムの概要を示すブロック図である。同図に示す自動分析装置2は、通信ネットワークNを介して受注サーバ101に接続されるとともに、複数の自動分析装置3、・・・、m(mは4以上の正の整数)にも接続されている。
【0066】
自動分析装置2は、自動分析装置1が具備するのと同じ構成を有する測定機構11と、この測定機構11を含む自動分析装置2の制御を行うとともに測定機構11における測定結果の分析を行う制御分析機構71とを有する。この制御分析機構71は、通信ネットワークNを介して相互に接続される自動分析装置の試薬在庫管理を一元的に行う機能も具備している。
【0067】
制御分析機構71の記憶部72は、自動分析装置2、3、・・・、mの使用状況に基づく在庫情報を記録する在庫情報記憶部721と、自動分析装置2、3、・・・、mのすべての使用情報を一括して記憶する使用情報記憶部722と、自動分析装置2、3、・・・、mの設置情報を一括して記憶する設置情報記憶部723と、自動分析装置2が行う分析項目や分析項目毎の分析パラメータ、分析結果などを含む分析情報を記憶する分析情報記憶部724と、を備える。
【0068】
記憶部72を除く制御分析機構71の構成は、上述した実施の形態1に係る自動分析装置1の制御分析機構21の構成と同じである。そこで、図10のブロック図で自動分析装置1が有する部位と対応する部位については、自動分析装置1とそれぞれ同じ符号を付してある。
【0069】
通信ネットワークNを介して自動分析装置2に接続される自動分析装置3、・・・、mは、自動分析装置2と同様に、試料および試薬を反応容器に分注し、その反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定機構と、この測定機構の駆動制御を行うとともに測定機構における測定結果の分析を行う制御分析機構とを有し、これらの二つの機構が連携することによって検体を含む試料の成分の分析を行う装置である。これらの自動分析装置3、・・・、mは、試薬容器41に貼付されたバーコード42を読み取る機能と、自身で保持する試薬および試薬容器41の設置情報に変更があった場合、通信ネットワークNを介してその設置情報を自動分析装置2に送信する機能とを備えている。
【0070】
ところで、自動分析装置3、・・・、mがそれぞれ有する測定機構は、互いに同じである必要はない。すなわち、自動分析装置3、・・・、mには、生化学的な分析のみならず、免疫学的な分析、または遺伝学的な分析にそれぞれ特化した測定機構を具備している自動分析装置や、前述した各種分析を適当に組み合わせた分析が可能な測定機構を具備した自動分析装置など、異なるタイプの自動分析装置が含まれていても構わない。
【0071】
通信ネットワークNは、上記実施の形態1と同様にさまざまな態様で実現することが可能である。例えば、自動分析装置2と受注サーバ101とはインターネットを介して接続される一方、自動分析装置2、3、・・・、mはLANによって互いに接続されるようにしてもよい。また、自動分析装置2、3、・・・、mの中には、専用回線を介して他の自動分析装置と接続されるものが含まれていてもよいし、インターネットを介して他の自動分析装置と接続されるものが含まれていてもよい。
【0072】
図11は、本実施の形態2に係る自動分析装置の試薬在庫管理方法の概要を示すフローチャートである。まず、新たに搬入されたパッケージ61のパッケージ情報が入力部22から自動分析装置2に入力されると(ステップS21でYes)、在庫情報記憶部721で記憶する在庫情報が更新される(ステップS22)。このステップS22で記憶される在庫情報の構成は、上述した実施の形態1と同様である(図5を参照)が、他の自動分析装置3、・・・、mによる使用状況も反映して更新される点が異なっている。他方、ステップS21でパッケージ情報が入力されない場合(ステップS21でNo)には、後述するステップS23に進む。本実施の形態2においても、自動分析装置2にパッケージ情報が入力され、在庫情報記憶部721に書き込まれて記憶された時点で、そのパッケージ情報に対応するパッケージ61が在庫状態に達したものとする。
【0073】
続くステップS23では、試薬容器保持部13の蓋部の開閉動作が行われるか、または他の自動分析装置3、・・・、mのいずれかから送信されてくる試薬の設置情報を受信部25で受信した場合(ステップS23でYes)、発生した事象に応じた処理が行われる。すなわち、蓋部の開閉動作が行われた場合(ステップS24で(A))、その開閉動作が終了後、試薬容器保持部13の回転テーブルを1周回転させることによって試薬容器保持部13が保持する全ての試薬容器41に貼付されたバーコード42をバーコード読取部14で読み取る(ステップS25)。この読み取ったバーコード42に含まれる識別情報は、試薬容器41の回転テーブルにおける設置位置情報と合わさって設置情報として設置情報記憶部723に書き込まれて記憶される(ステップS26)。
【0074】
これに対して、他の自動分析装置3、・・・、mのいずれかから送信されてきた試薬の設置情報を受信部25で受信した場合(ステップS24で(B))には、その受信した設置情報を設置情報記憶部723に書き込んで記憶する(ステップS26)。
【0075】
図12は、設置情報記憶部723で記憶する設置情報の構成例を示す図である。同図に示す設置情報テーブル206には、各自動分析装置の装置IDおよび試薬容器41の設置位置と、試薬の識別情報(容器ID、試薬ID、試薬のロット番号、試薬の有効期限、試薬の容量)と、蓋部の開閉動作前後において各設置位置に設置されている試薬の変更の有無に関する情報とが記録されている。この設置情報テーブル206では、装置IDがM8の自動分析装置の設置位置P1に設置された試薬容器41に変更があった(○)ことが記録されている。
【0076】
ステップS23で蓋部の開閉動作も設置情報の受信もなかった場合(ステップS23でNo)には、ステップS21に戻る。
【0077】
ステップS26に続いて行われるステップS27〜ステップS38の処理は、上記実施の形態1に係る自動分析装置の試薬在庫管理方法で説明したステップS6〜ステップS17と同様である。ただし、本実施の形態2では、使用情報記憶部722には全ての自動分析装置2、3、・・・、mの使用情報が記憶されている。したがって、使用情報の構成は、図13に示す使用情報テーブル207のように、試薬の識別情報の少なくとも一部(容器ID、試薬ID、試薬のロット番号)、使用開始日時、および使用終了日時に加えて、その試薬を使用した自動分析装置の装置IDが記録されている。このため、ステップS32では、装置IDも含めて使用情報が更新される。
【0078】
また、本実施の形態2では、ステップS26で新たに記憶した設置情報が他の自動分析装置からの受信に基づくものである場合、警告情報を出力するステップS38では、その設置情報の送信元である自動分析装置に対しても警告情報を送信するようにする。
【0079】
ところで、自動分析装置2を運用する際には、ステップS23において自動分析装置2に一つの事象(蓋部の開閉または設置情報の受信)が発生した後、その事象に応じた一連の処理を行っている間に別の事象が発生することもあり得る。このような例として、ステップS23で他の自動分析装置から設置情報を受信した後、その設置情報に基づく一連の処理を行っている最中、さらに別な自動分析装置から設置情報を受信する場合を挙げることができる。かかる場合には、時間的に先に発生した事象に対する一連の処理を行い、時間的に後で発生した事象に対する一連の処理を待ち状態にしておく。この際、待ち状態にある事象に係る設置情報が他の自動分析装置から受信したものである場合には、記憶部72内の所定の記憶領域にその設置情報を一時的に格納しておく。その後、先に行われていた一連の処理が終了した時点で、あとに続く処理の待ち状態を解除すればよい。
【0080】
ここまでの説明において、自動分析装置3、・・・、mが設置情報記憶部や使用情報記憶部を具備する必要はなかったが、それらの自動分析装置3、・・・、mのうちの少なくとも一部が、自動分析装置2と同様の構成を有していてもよい。この場合には、設置情報や使用情報を複数の自動分析装置で共有できるので、自動分析装置2が記憶する情報や試薬在庫管理に係る機能を他の自動分析装置でバックアップすることが可能となる。
【0081】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、上述した実施の形態1と同じように、自動分析装置で使用する試薬の効率的かつ安定的な在庫管理を実現することができる。
【0082】
また、本実施の形態2によれば、複数の自動分析装置の試薬の設置情報や使用情報を一元的に管理するため、大規模な検査施設などにおける試薬の在庫管理を一段と効率よく正確に行うことができるようになる。
【0083】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1および2を詳述してきたが、本発明はそれら二つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、発注の必要性は、使用情報の変更の有無に関わらず判定するようにしてもよい。具体的には、試薬容器保持部における試薬容器の設置状態の変化とは独立に、一定期間ごとに在庫情報と使用情報とに基づいて試薬の発注の必要性を判定するようにしてもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態1および2では、受注サーバが1台の場合を説明したが、試薬ごとに発注情報の送信先が異なる場合もあり得る。このような場合には、試薬ごとの発注情報送信先を自動分析装置の記憶部内で記憶しておき、発注情報作成部で試薬に応じた発注先を選択することによって発注情報を作成するようにすればよい。
【0085】
さらに、試薬の使用予測を行う際に参照する使用情報として、予め多数の自動分析装置のデータを集計して得られたサンプルデータを利用しても構わない。
【0086】
なお、試薬容器を収納するパッケージに貼付または印刷されるパッケージ情報や試薬容器に貼付される試薬の識別情報はバーコード以外の方式で記録してもよく、例えば2次元コードまたは無線ICタグ(RFIDタグ)などを用いて記録してもよい。
【0087】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置を含む通信システムの概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の試薬在庫管理方法の概要を示すフローチャートである。
【図3】試薬容器およびパッケージの構成を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置が記憶するパッケージ情報の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置が記憶する在庫情報の構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置が記憶する設置情報の構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置が記憶する使用情報の構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の試薬在庫管理方法における予測処理の概要を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置が記憶する発注情報の構成例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る自動分析装置を含む通信システムの概要を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る自動分析装置の試薬在庫管理方法の概要を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態2に係る自動分析装置が記憶する設置情報の構成例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る自動分析装置が記憶する使用情報の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1、2、3、・・・、m 自動分析装置
11 測定機構
12 検体移送部
13 試薬容器保持部
14 バーコード読取部
15 反応容器保持部
16 検体分注部
17 試薬分注部
18 攪拌部
19 測光部
20 洗浄部
21、71 制御分析機構
22 入力部
23 出力部
24 送信部
25 受信部
26 分析部
27、72 記憶部
28 管理部
29 制御部
31 検体容器
32 ラック
41 試薬容器
42、62 バーコード
51 反応容器
61 パッケージ
101 受注サーバ
201 パッケージ情報テーブル
202 在庫情報テーブル
203、206 設置情報テーブル
204、207 使用情報テーブル
205 発注情報テーブル
271、721 在庫情報記憶部
272、722 使用情報記憶部
273、723 設置情報記憶部
274、724 分析情報記憶部
281 照合部
282 判定部
283 予測部
284 発注情報作成部
C 使用実績曲線
N 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬とを反応させることによって当該試料の分析を行う自動分析装置であって、
分析に使用される試薬の在庫情報を記憶する在庫情報記憶手段と、
分析に使用される試薬および該試薬を収容する試薬容器をそれぞれ識別する識別情報ならびに当該自動分析装置における前記試薬容器の設置位置に係る情報を含む設置情報を記憶する設置情報記憶手段と、
前記設置情報記憶手段で記憶する設置情報と前記在庫情報記憶手段で記憶する在庫情報との照合を行う照合手段と、
前記照合手段で照合した結果に応じて当該自動分析装置への前記試薬容器の設置が適正であるか否かの判定を行う判定手段と、
前記判定手段で判定した結果、当該自動分析装置への前記試薬容器の設置が適正である場合、前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行う予測手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記照合手段は、
前記設置情報記憶手段で新規の設置情報を記憶した場合、前記在庫情報記憶手段から前記在庫情報を読み出し、前記新規の設置情報に相当する情報が前記在庫情報に含まれるか否かの照合を行うことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記照合手段で照合した結果、前記新規の設置情報に相当する情報が前記在庫情報に含まれている場合、前記新規の設置情報に対応する試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正であるか否かの判定を行うことを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬の有効期限と、この試薬と同種の試薬であって前記在庫情報に含まれる試薬の有効期限とを比較し、前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬の有効期限が比較対象の有効期限の中で最も早い場合、当該自動分析装置への設置が適正であると判定することを特徴とする請求項3記載の自動分析装置。
【請求項5】
試薬の使用に係る使用情報を記憶する使用情報記憶手段をさらに備え、
前記予測手段は、前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用情報を前記使用情報記憶手段から読み出し、この読み出した使用情報を用いて互いに異なる時期と長さとを有する複数の期間における使用量の推移をそれぞれ算出し、この算出した結果に基づいて前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記予測手段の予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成手段と、
前記発注情報作成手段で作成した発注情報を、通信ネットワークを介して接続される送信先に送信する送信手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項7】
試料と試薬とを反応させることによって当該試料の分析をそれぞれ行う複数の自動分析装置から通信ネットワークを介して各々送信されてくる各自動分析装置の設置情報を受信する受信手段をさらに備え、
前記照合手段は、前記受信手段で受信した設置情報と前記在庫情報記憶手段で記憶する在庫情報との照合を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記予測手段の予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成手段と、
前記発注情報作成手段で作成した発注情報を、前記通信ネットワークを介して接続される送信先に送信する送信手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項7記載の自動分析装置。
【請求項9】
未使用の前記試薬容器を収納するパーケージにコード化して記録された情報コードを読み取って入力する入力手段をさらに備え、
前記在庫情報は、前記入力手段で読み取った情報コードの内容を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項10】
試料と試薬とを反応させることによって当該試料の分析を行う一方、分析に使用される試薬の在庫情報を記憶する在庫情報記憶部と、分析に使用される試薬および該試薬を収容する試薬容器をそれぞれ識別する識別情報ならびに当該自動分析装置における前記試薬容器の設置位置に係る情報を含む設置情報を記憶する設置情報記憶部と、を備えた自動分析装置が、分析に使用する試薬の在庫管理を行う自動分析装置の試薬在庫管理方法であって、
前記設置情報記憶部で新規の設置情報を記憶した場合、前記在庫情報記憶部から前記在庫情報を読み出し、前記新規の設置情報に相当する情報が前記在庫情報に含まれるか否かの照合を行う照合ステップと、
前記照合ステップで照合した結果、前記新規の設置情報に相当する情報が前記在庫情報に含まれている場合、前記新規の設置情報に対応する試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正であるか否かの判定を行う判定ステップと、
前記判定ステップで判定した結果、前記新規の設置情報に対応する試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正である場合、前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行う予測ステップと、
を有することを特徴とする自動分析装置の試薬在庫管理方法。
【請求項11】
前記判定ステップは、
前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬の有効期限と、この試薬と同種の試薬であって前記在庫情報に含まれる試薬の有効期限とを比較し、前記新規の設置情報に対応する試薬容器に収容された試薬の有効期限が比較対象の有効期限の中で最も早い場合、当該自動分析装置への設置が適正であると判定することを特徴とする請求項10記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法。
【請求項12】
当該自動分析装置は、試薬の使用に係る使用情報を記憶する使用情報記憶部をさらに備え、
前記判定ステップで判定した結果、前記新規の設置情報に対応する試薬容器の当該自動分析装置への設置が適正である場合、前記予測ステップを行う前に、前記在庫情報記憶部で記憶する在庫情報および前記使用情報記憶部で記憶する使用情報を更新する更新ステップを行い、
前記更新ステップで更新した使用情報を前記使用情報記憶部から読み出し、この読み出した使用情報を参照して前記予測ステップを行うことを特徴とする請求項10または11記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法。
【請求項13】
前記予測ステップは、
前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用情報から互いに異なる時期と長さと有する複数の期間における使用量の推移をそれぞれ算出し、この算出した結果に基づいて前記試薬容器に収容された試薬と同種の試薬の使用予測を行うことを特徴とする請求項12記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法。
【請求項14】
前記予測ステップにおける予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成ステップと、
前記発注情報作成ステップで作成した発注情報を、通信ネットワークを介して接続される送信先に送信する送信ステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法。
【請求項15】
試料と試薬とを反応させることによって当該試料の分析をそれぞれ行う複数の自動分析装置から通信ネットワークを介して各々送信されてくる各自動分析装置の設置情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した設置情報を前記設置情報記憶部に書き込んで記憶する設置情報記憶ステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法。
【請求項16】
前記予測ステップの予測結果に応じた試薬の発注に係る発注情報を作成する発注情報作成ステップと、
前記発注情報作成ステップで作成した発注情報を、前記通信ネットワークを介して接続される送信先に送信する送信ステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項15記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法。
【請求項17】
未使用の前記試薬容器を収納するパーケージにコード化して記録された情報コードを読み取って入力する入力ステップと、
前記入力ステップで読み取った情報コードの内容を前記在庫情報記憶部に書き込んで記憶する在庫情報記憶ステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか一項記載の自動分析装置の試薬在庫管理方法を当該自動分析装置に実行させることを特徴とする自動分析装置の試薬在庫管理用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−315784(P2007−315784A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142696(P2006−142696)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】