説明

自動分析装置の分析動作復帰方法および分析動作復帰プログラム

【課題】特別なハードウェアを追加することなく、停電が発生して復電した後に停電前の分析動作を実行可能な状態へ自動的に復帰させることができる自動分析装置の分析動作復帰方法および分析動作復帰プログラムを提供する。
【解決手段】試料と試薬とを反応させ、該反応に関する光学的な測定を行う測定ユニットが、電源が供給された後に該電源供給前の停電発生の有無を判定し、停電発生があったと判定した場合、該停電発生を示す停電発生情報を前記データ処理ユニットへ送信し、前記測定ユニットにおける測定結果のデータ処理を行うデータ処理ユニットが、前記測定ユニットから受信した停電発生情報に応じて前記測定ユニットが停電前に行っていた分析動作に関する分析動作情報を前記測定ユニットへ送信し、前記測定ユニットが、前記データ処理ユニットから受信した前記分析動作情報に基づいて前記停電発生前の状態への復帰処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料と試薬とを反応させることによって前記試料の分析を行う自動分析装置において、停電が発生して復電した後で前記停電が発生する前の状態へ復帰させる自動分析装置の分析動作復帰方法および分析動作復帰プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料と試薬とを反応させることによってその試料の分析を行う自動分析装置では、停電が発生した場合、分析動作がいったん停止してしまう。このため、停電後に復電しても、いったん停止した分析装置を停電前の分析動作が可能な状態まで復帰させるには、装置の立ち上げ時から人手を介さなければならなかった。
【0003】
この課題を解決し、復電後に停電前の分析動作を実行可能な状態へ自動的に復帰させるための技術として、入力電力の停電や復電を検知するとともに、停電時であっても電極を供給可能な無停電電源装置(UPS)を用いる技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、データ処理用コンピュータを、無停電電源装置を介して電源に電気的に接続し、停電発生時であっても、そのデータ処理用コンピュータが無停電電源装置から電源の供給を受けることが可能な構成としている。このような構成を有する分析装置では、無停電電源装置が復電を検知すると、分析装置側の制御用コンピュータへ停電回復処理の開始を指令する。その後、停電回復処理の開始指令を受信した分析装置では、自身が具備する停電回復装置によって初期化を行った後、停電発生時の分析動作への復帰を行う。
【0004】
【特許文献1】特開2002−139504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、無停電電源装置を新たに設置する必要があるため、システムが高価なものになってしまうという問題があった。このため、従来のシステムに特別なハードウェアを追加することなく、停電が発生して復電した後に停電前の分析動作を実行可能な状態へ自動的に復帰することが可能な技術が待望されていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、特別なハードウェアを追加することなく、停電が発生して復電した後に停電前の分析動作を実行可能な状態へ自動的に復帰させることができる自動分析装置の分析動作復帰方法および分析動作復帰プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、試料と試薬とを反応させ、該反応に関する光学的な測定を行う測定ユニットと、前記測定ユニットとの間で情報の送受信が可能であり、前記測定ユニットの動作および測定に関する情報を記憶する記憶部を有し、前記測定ユニットにおける測定結果のデータ処理を行うデータ処理ユニットと、を備えた自動分析装置において、停電が発生し復電した後で前記停電が発生する前の状態へ復帰させる自動分析装置の分析動作復帰方法であって、前記測定ユニットが、電源が供給された後に電源供給前の停電発生の有無を判定する判定ステップと、前記測定ユニットが、前記判定ステップで停電発生があったと判定した場合、該停電発生を示す停電発生情報を前記データ処理ユニットへ送信する停電発生情報送信ステップと、前記データ処理ユニットが、前記測定ユニットから受信した停電発生情報に応じて前記測定ユニットが停電前に行っていた分析動作に関する分析動作情報を前記記憶部から読み出し、この読み出した分析動作情報を前記測定ユニットへ送信する分析動作情報送信ステップと、前記測定ユニットが、前記データ処理ユニットから受信した前記分析動作情報に基づいて前記停電発生前の状態への復帰処理を行う復帰処理ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項記載の発明において、前記判定ステップは、前記電源が供給された後、停電発生によって生じるエラービットの有無を検出することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記復帰処理ステップは、前記停電発生によって無効とすべき分析を検出することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載の発明において、前記測定ユニットと前記データ処理ユニットとは、通信ネットワークを介して相互に接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明における「通信ネットワーク」とは、インターネット、イントラネット、専用回線網、LAN、電話網のいずれか一つまたはそれらのうちの任意の組み合わせによって構成される。
【0012】
請求項5記載の発明に係る分析動作プログラムは、請求項1〜4のいずれか一項記載の自動分析装置の分析動作復帰方法を前記自動分析装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料と試薬とを反応させ、該反応に関する光学的な測定を行う測定ユニットと、前記測定ユニットとの間で情報の送受信が可能であり、前記測定ユニットの動作および測定に関する情報を記憶する記憶部を有し、前記測定ユニットにおける測定結果のデータ処理を行うデータ処理ユニットと、を備えた自動分析装置において、停電が発生し復電した後で前記停電が発生する前の状態へ復帰させる自動分析装置の分析動作復帰方法であって、前記測定ユニットが、電源が供給された後に電源供給前の停電発生の有無を判定する判定ステップと、前記測定ユニットが、前記判定ステップで停電発生があったと判定した場合、該停電発生を示す停電発生情報を前記データ処理ユニットへ送信する停電発生情報送信ステップと、前記データ処理ユニットが、前記測定ユニットから受信した停電発生情報に応じて前記測定ユニットが停電前に行っていた分析動作に関する分析動作情報を前記記憶部から読み出し、この読み出した分析動作情報を前記測定ユニットへ送信する分析動作情報送信ステップと、前記測定ユニットが、前記データ処理ユニットから受信した前記分析動作情報に基づいて前記停電発生前の状態への復帰処理を行う復帰処理ステップと、を含むことにより、特別なハードウェアを追加することなく、停電が発生して復電した後に停電前の分析動作を実行可能な状態へ自動的に復帰させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。図1は、本発明の一実施の形態において適用される自動分析装置の外観構成を模式的に示す図であり、図2は、自動分析装置要部の機能構成を模式的に示す図である。これらの図に示す自動分析装置1は、検体(試料)および試薬を反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定ユニット101と、測定ユニット101における測定結果のデータ処理を行うデータ処理ユニット201とを有し、これら二つのユニットが連携することによって複数の検体の成分の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。
【0015】
測定ユニット101は、検体を収容する検体容器2が搭載された複数のラック3を収納して順次移送する検体移送部102と、試薬容器4を保持する試薬容器保持部103と、検体と試薬とを収容して反応させる反応容器5を保持する反応容器保持部104と、検体移送部102上の検体容器2に収容された検体を反応容器5に分注する検体分注部105と、試薬容器保持部103上の試薬容器4に収容された試薬を反応容器5に分注する試薬分注部106と、反応容器5の内部に収容された液体(微量の固体成分を含み得る)を攪拌する攪拌部107と、光源から照射されて反応容器5内を通過した光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部108と、反応容器5の洗浄を行う洗浄部109と、を備える。また、測定ユニット101は、データ処理ユニット201からの指令に基づいて測定ユニット101の動作を制御するCPUを含む制御部110と、データ処理ユニット201との情報の送受信を行う送受信部111と、分析動作に関する制御用プログラムを電気的に記録するメモリ112と、を備える。
【0016】
検体容器2には、内部に収容する検体を識別する識別情報をバーコードまたは2次元コード等の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体がそれぞれ貼付されている(図示せず)。また、試薬容器4にも、内部に収容する試薬を識別する識別情報を情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体が貼付されている(図示せず)。このため、測定ユニット101には、検体容器2に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR1と、試薬容器4に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR2とが設けられている。
【0017】
なお、検体の成分の生化学的な分析を行う際には、一つの検体に対して2種類の試薬を用いることが多いため、第1試薬用の試薬容器保持部103と第2試薬用の試薬容器保持部103とを別個に設けてもよい。この場合には、個々の試薬容器保持部103に対応した試薬分注部106を2個設ければよい。また、検体または試薬の分注後の適当なタイミングで複数の反応容器5内部の液体の攪拌を同時に行うために、攪拌部107を複数個設けてもよい。
【0018】
ところで、図1では、測定ユニット101の主要な構成要素を模式的に示すことを主眼としているため、構成要素間の位置関係は必ずしも正確ではない。正確な構成要素間の位置関係は、試薬容器保持部103の数や分注動作のインターバルにおける反応容器保持部104の回転態様などの各種条件に応じて定められるべき設計的事項である。
【0019】
続いて、データ処理ユニット201の構成を説明する。データ処理ユニット201は、コンピュータを用いて実現され、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の動作を指示する動作指示信号などを含む各種情報の入力を受ける入力部202と、検体の分析に関する情報や測定ユニット101の動作状態に関する情報を含む各種情報を出力する出力部203と、測定ユニット101との間で情報を送受信を行う送受信部204と、測定ユニット101の測定結果に基づいて検体の成分の分析等のデータ処理演算を行うデータ処理部205と、データ処理ユニット201を含む自動分析装置1全体の制御を行う制御部206と、検体の分析に関する情報や自動分析装置1に関する情報を含む各種情報を記憶する記憶部207と、を備える。
【0020】
入力部202は、キーボードやマウスを備える(図1を参照)。また、入力部202として、トラックボール、トラックパッドなどのポインティングデバイスや、音声入力用のマイクロフォン等のユーザインターフェースをさらに具備してもよい。
【0021】
出力部203は、液晶、プラズマ、有機EL、CRT等のディスプレイによって実現される表示部231を有する(図1を参照)。この表示部231では、自動分析装置1が行う動作を利用者が選択するためのメニューを表示したり、検体の分析に関する情報を表示したりする。なお、出力部203として、音声出力用のスピーカや、紙などに情報を印刷して出力するプリンタを具備してもよい。
【0022】
データ処理部205および制御部206は、制御機能および演算機能を有するCPU等を用いて実現される。
【0023】
記憶部207は、自動分析装置1が行う分析項目や分析項目ごとの分析パラメータ、および分析結果等を含む分析情報を記憶するとともに、測定ユニット101から送られてくる分析動作情報を記憶する。記憶部207が記憶する分析パラメータとしては、検査項目、検体や試薬の識別情報、検体や試薬の分注量、試薬の有効期限、検量線の作成に必要な濃度、各分析項目の参照値および許容値などのほか、自動分析装置1に特有なパラメータも含まれる。
【0024】
記憶部207は、さまざまな情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理に係るプログラムをハードディスクからロードして電気的に記録するメモリとを用いて実現される。このプログラムには、本実施の形態に係る自動分析装置の分析動作復帰方法(後述)を自動分析装置1に実行させる分析動作復帰プログラムや、測定ユニット101における分析動作を制御するプログラムも含まれる。
【0025】
なお、データ処理ユニット201は、記憶部207として、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された情報を読み取る補助記憶装置を具備してもよく、そのような記録媒体に対して前述したプログラムを記録しておくことも可能である。
【0026】
データ処理ユニット201では、測定ユニット101から検体の分析に係る測定結果を受信すると、データ処理部205が測定結果の分析演算を行う。この分析演算においては、測光部108における測定結果に基づいて反応容器5内部の反応液の吸光度を算出し、この算出結果に加えて標準検体から得られる検量線や分析情報に含まれる分析パラメータなどを用いることにより、反応液の成分を定量的に求める。このようにして得られた分析結果は、出力部203から出力される(表示部231における表示を含む)一方、記憶部207に書き込まれて記憶される。
【0027】
以上の構成を有する自動分析装置1において、測定ユニット101は、全ての分析動作に関する情報をデータ処理ユニット201へ逐次送信する。データ処理ユニット201では、測定ユニット101から送られてくる情報に基づいて測定ユニット101における分析動作に関する情報を記憶部207に書き込んで記憶する。記憶部207に記憶される情報としては、検体受付の情報、現在の分析動作の開始時刻および終了予定時刻、すでに設定されているテストのうち、現時点で終了したテスト数などを挙げることができる。
【0028】
次に、本実施の形態に係る自動分析装置の分析動作復帰方法の処理の概要を、図3に示すシーケンス図を用いて説明する。
【0029】
停電発生後に復電し、電源が供給され始めると、復電後のデータ処理ユニット201では、記憶部207内のROMに記憶されている所定のBIOS(Basic Input/Output System)が動作することによってデータ処理ユニット201にインストールされたOSが起動し、メインの分析プログラムが起動する(ステップS21)。この後、測定ユニット101との間で所定のプロトコルに基づく通信が成立する。
【0030】
測定ユニット101の制御部110では、電源供給前の停電発生の有無を判定する(ステップS11)。この判定処理を実現するために、例えば測定ユニット101では停電が発生した場合に停電発生情報としてエラービットを生じる構成としておき、復電後に制御部110がエラービットの有無を検出すればよい。なお、停電が発生した場合には測定ユニット101が正常な終了動作を経ずに終了するので、電源供給後に制御部110が、正常な終了動作が行われたか否かを判別するような構成としてもよい。
【0031】
ステップS11の判定の結果、停電発生があった場合(ステップS12でYes)、その停電発生を示す停電発生情報を送受信部111からデータ処理ユニット201へ送信する(ステップS13)。
【0032】
測定ユニット101から停電発生情報を受信したデータ処理ユニット201では、測定ユニット101が停電前に行っていた分析動作に関する情報を含む分析動作情報を記憶部207から読み出して測定ユニット101へ送信する(ステップS22)。このステップS22で送信する分析動作情報には、例えば停電前の測定ユニット101の分析状態を示す状態パラメータなども含まれる。
【0033】
データ処理ユニット201から送られてくる分析動作情報を受信した測定ユニット101は、受信した分析動作情報に基づいて、停電直前の装置状態へ復帰させる復帰処理を行う(ステップS14)。この復帰処理には、プライム動作(配管系への水詰めや各容器保持部の温度設定)、ウォーミングアップ、イニシャライズ動作などの初期化処理も含まれる。
【0034】
ステップS14における復帰処理の結果、無効とすべき分析がある場合(ステップS15でYes)には、その分析に関する情報(分析項目、検体種別、試薬種別等)をデータ処理ユニット201へ送信する(ステップS16)。無効とすべき分析の例としては、停電前の時点ですでに反応途中であった検体に関する分析が挙げられる。このような分析については、停電によって反応時間が管理できなくしまったため、分析結果を無効とせざるを得ない。また、停電発生から復電するまでに要した時間が所定の時間と比べて長い場合には、各種検体や試薬などが劣化、汚染されてしまい、正しい分析結果が得られないので、そのような検体や試薬を用いる分析項目についても無効であると判定する。
【0035】
ステップS16で送られた情報を受信したデータ処理ユニット201では、記憶部207の情報を更新し(ステップS23)、無効な分析に関する情報を出力部203から出力する(ステップS24)。ステップS24では、例えば表示部231において分析項目にリマーク情報を付して表示する。
【0036】
無効な分析に関する情報を送信した測定ユニット101は、スタンバイ状態に達した後、データ処理ユニット201を介したユーザからの分析開始指令を受信するまで待機する(ステップS17)。これにより、人手を介すことなく、停電前の分析動作を実行することが可能な状態へと自動的に復帰したことになる。
【0037】
ステップS15で無効な分析がなかった場合(ステップS15でNo)には、直接ステップS17のスタンバイ状態へ移行する。
【0038】
なお、ステップS12で停電発生がないと判定した場合(ステップS12でNo)、通常の電源供給開始時に相当するため、上述したプライム動作、ウォーミングアップ、イニシャライズ動作などの初期化動作を行い(ステップS18)、スタンバイ状態へ移行して待機する(ステップS17)。
【0039】
以上説明した本実施の形態に係る自動分析装置の分析動作復帰方法によれば、上述した従来技術における無停電電源装置のように特別なハードウェアを新たに設置することなく、停電後であっても停電前の状態へ自動的に復帰させることができる。したがって、従来の装置構成を維持しながらも、復電後の分析動作の復帰を自動化することが可能となる。したがって、装置の製造コストを上昇させることなく、停電後の分析動作の復帰機能を付加することができるので、より経済的である。
【0040】
なお、データ処理ユニット201では、停電情報として停電が発生した時刻(通信が不能になった時刻から推測)を記憶部207で記憶している。このため、停電の発生から復帰までの所要時間を計算することにより、試薬劣化の可能性などの顧客に必要な情報を提供することもできる。
【0041】
また、停電発生から電源復帰までの所要時間が所定の時間と比べて長い場合には、「復帰をあきらめる」、「装置内を洗浄する」、「プライム動作を行う」などの選択肢をオプションとし、それらのオプションのいずれかをユーザに選択させ、その選択結果を入力部202から入力させるようにしてもよい。
【0042】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、試料と試薬とを反応させ、該反応に関する光学的な測定を行う測定ユニットが、電源が供給された後に該電源供給前の停電発生の有無を判定し、停電発生があったと判定した場合、該停電発生を示す停電発生情報を前記データ処理ユニットへ送信し、前記測定ユニットにおける測定結果のデータ処理を行うデータ処理ユニットが、前記測定ユニットから受信した停電発生情報に応じて前記測定ユニットが停電前に行っていた分析動作に関する分析動作情報を前記測定ユニットへ送信し、前記測定ユニットが、前記データ処理ユニットから受信した前記分析動作情報に基づいて前記停電発生前の状態への復帰処理を行うことにより、特別なハードウェアを追加することなく、停電が発生して復電した後に停電前の分析動作を実行可能な状態へ自動的に復帰させることが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、復電後にユーザが不在であっても、分析動作開始可能なスタンバイ状態まで自動的に復帰させておくことができるので、ユーザが指示を出すことによって即座に分析動作を開始することができる。したがって、人手を介して最初から立ち上げる場合と比較して、数十分〜数時間の時間の節約にもなる。
【0044】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を詳述してきたが、本発明は上述した一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、測定ユニット101とデータ処理ユニット201は、図1に示すように電気的に直接接続する以外にも、インターネット、イントラネット、専用回線網、LAN、電話網等のいずれか一つまたは複数の組み合わせによって構成される通信ネットワークを介して相互に接続し、ユーザによる遠隔操作が可能となるようにしてもよい。この場合には、測定ユニット101およびデータ処理ユニット201のいずれか一方のみが停電する可能性もある。そのような場合であっても、両ユニット間の通信は停電によっていったん遮断されるため、復電後には所定のプロトコルによって両ユニット間の通信を回復し、上述した一実施の形態と同様の処理を行うようにすればよい。
【0045】
また、データ処理ユニット201自体を複数のコンピュータによって構成し、コンピュータ同士を電気的に直接接続するか、または上記同様の通信ネットワークを介して相互に接続してもよい。
【0046】
さらに、本発明に係る自動分析装置の測定ユニットとして、従来知られているさまざまなタイプの自動分析装置の測定ユニットを適用することが可能である。このような測定ユニットとしては、例えば、検体の成分の免疫学的または遺伝学的な分析を行う測定ユニットなどを挙げることができる。
【0047】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態に適用される自動分析装置の外観構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に適用される自動分析装置要部の機能構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の分析動作復帰方法の処理の概要を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0049】
1 自動分析装置
2 検体容器
3 ラック
4 試薬容器
5 反応容器
101 測定ユニット
102 検体移送部
103 試薬容器保持部
104 反応容器保持部
105 検体分注部
106 試薬分注部
107 攪拌部
108 測光部
109 洗浄部
110、206 制御部
111、204 送受信部
112 メモリ
201 データ処理ユニット
202 入力部
203 出力部
205 データ処理部
206 制御部
207 記憶部
231 表示部
CR1、CR2 情報コード読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬とを反応させ、該反応に関する光学的な測定を行う測定ユニットと、前記測定ユニットとの間で情報の送受信が可能であり、前記測定ユニットの動作および測定に関する情報を記憶する記憶部を有し、前記測定ユニットにおける測定結果のデータ処理を行うデータ処理ユニットと、を備えた自動分析装置において、停電が発生し復電した後で前記停電が発生する前の状態へ復帰させる自動分析装置の分析動作復帰方法であって、
前記測定ユニットが、電源が供給された後に電源供給前の停電発生の有無を判定する判定ステップと、
前記測定ユニットが、前記判定ステップで停電発生があったと判定した場合、該停電発生を示す停電発生情報を前記データ処理ユニットへ送信する停電発生情報送信ステップと、
前記データ処理ユニットが、前記測定ユニットから受信した停電発生情報に応じて前記測定ユニットが停電前に行っていた分析動作に関する分析動作情報を前記記憶部から読み出し、この読み出した分析動作情報を前記測定ユニットへ送信する分析動作情報送信ステップと、
前記測定ユニットが、前記データ処理ユニットから受信した前記分析動作情報に基づいて前記停電発生前の状態への復帰処理を行う復帰処理ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置の分析動作復帰方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、
前記電源が供給された後、停電発生によって生じるエラービットの有無を検出することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置の分析動作復帰方法。
【請求項3】
前記復帰処理ステップは、
前記停電発生によって無効とすべき分析を検出することを特徴とする請求項1または2記載の自動分析装置の分析動作復帰方法。
【請求項4】
前記測定ユニットと前記データ処理ユニットとは、通信ネットワークを介して相互に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の自動分析装置の分析動作復帰方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の自動分析装置の分析動作復帰方法を前記自動分析装置に実行させることを特徴とする分析動作復帰プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate