説明

自動分析装置

【課題】 試薬ダミーの量を減らした場合等において、適切な分注を可能とする自動分析装置の実現。
【解決手段】 試料と試薬を反応させ、その反応結果を測定して測定項目を分析する自動分析装置であって、試薬を反応容器に分注する試薬分注手段が実行する試薬の分注に関するパラメータを、数値あるいは条件として測定項目毎あるいは試薬の種類毎に登録可能とし、当該分注に関するパラメータに基づいて前記試薬分注手段を制御する自動分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、試薬等の分注処理を行なう分注機構を有する試料分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液、尿、髄液等の体液や組織の試料(検体)に試薬を混ぜ、光で反応を調べて成分分析、調査をする手順を自動化した装置である。この自動分析装置により同時に大量の分析、調査が可能であり、病院、検査機関等において広く利用され作業性の向上に大きく貢献している。
【0003】
図4は従来の自動分析装置1を示したものである。
【0004】
図4において、まず、サンプラ2に架設した試料容器201(試験管等)中の試料は、プローブ31を有する試料分注機構3により定量吸引され、硬質ガラス等からなる複数の反応管4へ吐出される。
【0005】
各試薬庫5、6中には、各種試薬が各試薬容器51、61に格納されて設置されている。分注機構7及び分注機構8は、回転及び上下移動することによりプローブ71、81を試薬容器51、61に挿入し、試薬を所定の吸引速度で吸引する。そして、再び回転及び上下移動してプローブ71、81を反応管4に挿入し、所定の吐出速度で吸引した試薬を吐出する。
【0006】
試薬が反応管4内に分注された後、攪拌子を有する攪拌部9により、反応管4中の試料と試薬は攪拌、混合される。
【0007】
そして、図示していない測光部により当該反応管4内の試料の吸光度を測定し、試料の特定成分が分析される。
【0008】
また、必要に応じて電解質測定部10により特定電解質の測定を行なう。
【0009】
上記特定成分量分析または電解質測定の後、洗浄部11により反応管4は洗浄される。
【0010】
このような一連の動作によって、サンプラ2にセットされた各試料の分析は、繰り返し行われる。
【0011】
図5は、分注機構3若しくは分注機構7又は分注機構8の一回の分注処理の動作説明するための図である。例として分注機構7のプローブ71の断面図を示すが、分注機構3若しくは分注機構8の構成、動作も同様である。
【0012】
図5(a)は、試薬吸引前のプローブ71の断面図であり、プローブ71の中は予め吸引された水711で満たされている。
【0013】
分注機構7は、上下及び回転移動によりプローブ71を試料容器51の中に挿入し、所定量の試薬を所定の吸引速度で吸引する。
【0014】
図5(b)は、試薬吸引後のプローブ71の断面図を示している。
【0015】
測定試薬714は、反応管4内に吐出される測定に必要な試薬量である。
【0016】
一般に、試薬を吸引する場合、試薬と水の混合を防止するための試薬吸引前のエアー吸引(即ち、エアギャップの形成)と試薬吸引とによって、予めプローブ内に満たされていた水711が引き上げられるため、プローブ71の内壁に残留している水と吸引した試薬とが混ざり合ってしまい、測定試薬714の濃度低減を招いてしまうことがある。このため、試薬容器からは、吐出される測定に必要な量714に加えて濃度低減を考慮した余分な量713の試薬が吸引される。こうして余分に吸引した試薬により、吐出される試薬の濃度低減を補っている。この余分に吸引した試薬を以降「試薬ダミー」と呼ぶことにする。この試薬ダミー713の量は、吐出される試薬の量に応じて、例えば〈吐出量×8%+6μl〉というように決められているが、この関係式は測定項目(試薬の種類)に依らず適用されている。なお、測定試薬714と試薬ダミー713とは同一の試薬であるが、図4においては説明の都合上図示を区別した。
【0017】
その後、図5(c)のように、試薬ダミー量713を残して、所定量の測定試薬714が吐出される。そして水711で試薬ダミー713を排出してプローブ71中を洗浄し、一回の試薬分注処理を終了する。
【0018】
ところで、近年、自動分析装置1のランニングコストを下げるため、試薬使用量を減らす工夫が多くなされている。その方法の一つとして、試薬ダミー量を減らす方法がある。従来この方法では、例えば試薬ダミー量を〈吐出量×8%+6μl〉から〈吐出量×4%+3μl〉というように関係式の係数を変えることで試薬ダミー量の削減が行なわれてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記の方法では、試薬ダミー量の削減が測定項目に依らず行なわれている。従って、この方法により試薬ダミー量の削減を行なった場合、図6(a)に示すように、測定項目によっては、使用する試薬の成分や性状(例えば、界面活性効果や粘性、泡立ち具合等)により試薬吐出時にプローブ先端から試薬の飛び散りやぼたつきが発生して、図6(b)に示すような適切な分注処理精度を確保できないものもある。
【0020】
また、新たな試薬が次々と開発される中で、自動分析装置はそれらの試薬に対して適切な測定ができるとは限らない。例えば、同じ吐出速度でも、原則的に試薬の種類によってプローブからの吐出状況は異なる。従って、自動分析装置の分注処理において、ある試薬について泡立たない吐出速度であっても、その他の試薬については吐出時に飛び散りやぼたつきが発生したり、試薬分注時の試薬と試料との攪拌が不十分であったりした。
【0021】
本発明の目的は、試薬ダミー量を減らした場合でも適切な試薬分注を行なうことができる自動分析装置を提供することにある。
【0022】
本発明のもう一つの目的は、どのような試薬であっても、各試薬に応じた適切な試薬分注を行なうことができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上述した目的を実現するためになされたものであり、以下の(1)〜(3)の特徴を有する自動分析装置である。
【0024】
(1)それぞれが試薬を格納する複数の試薬容器と、所定の分注試薬量を得るために、試薬ダミー量と測定項目との間の関係を入力するための入力手段と、前記複数の試薬容器のうちの一つから前記試薬を吸引し、当該吸引された試薬を反応容器に分注する分注処理を実行する分注手段と、前記吸引された試薬の量が前記試薬ダミー量と測定項目との間の関係に従って決定されるダミー量を含むように、前記分注処理を制御する制御手段と、前記反応容器中の試料の成分を分析する分析手段と、を具備することを特徴とする自動分析装置である。
【0025】
(2)それぞれが試薬を格納する複数の試薬容器と、所定の分注試薬量を得るために、試薬ダミー量と試薬種別との間の関係を入力するための入力手段と、前記複数の試薬容器のうちの一つから前記試薬を吸引し、当該吸引された試薬を反応容器に分注する分注処理を実行する分注手段と、前記吸引された試薬の量が前記試薬ダミー量と試薬種別との間の関係に従って決定される試薬ダミー量を含むように、前記分注処理を制御する制御手段と、前記反応容器中の試料の成分を分析する分析手段と、を具備することを特徴とする自動分析装置である。
【0026】
(3)それぞれが試薬を格納する複数の試薬容器と、所定の分注試薬量を得るために、試薬ダミー量と測定項目との間の関係を記憶する記憶手段と、前記複数の試薬容器のうちの一つから前記試薬を吸引し、当該吸引された試薬を反応容器に分注する分注処理を実行する分注手段と、前記吸引された試薬の量が前記試薬ダミー量と測定項目との間の関係に従って決定されるダミー量を含むように、前記分注処理を制御する制御手段と、前記反応容器中の試料の成分を分析する分析手段と、を具備することを特徴とする自動分析装置である。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、試薬ダミーの量を減らした場合でも適切な試薬分注を行なうことができる。
【0028】
本発明のもう一つの側面によれば、どのような種類の試薬であっても、各試薬に応じた適切な試薬分注を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面に従って説明する。
【0030】
なお、本発明に係る自動分析装置の外観は図4と同様であるから、同図を援用するものとする。
【0031】
図4において、自動分析装置1は、試料分注機構3、試薬分注機構7及び8、試料と試薬の混合液を攪拌する攪拌部9、試料と試薬を反応させる反応容器41が配置された反応部4、洗浄機構11、試料を収容する試料容器201が配置されたサンプラ2、試薬を収容する試薬容器51及び61を配置する試薬庫5及び6とから構成される。
【0032】
次に、本発明が適用される自動分析装置の動作例を説明する。
【0033】
サンプラ2が所定量回転移動し、分析測定対象の試料の入った試料容器201を試料分注機構3の位置まで移動させる。試料分注機構3は、プローブ31により試料を吸引し、分析処理に必要な量(必要量)を反応容器4内に吐出する。その後、反応部4はさらに回転して試薬分注機構7または8の位置で停止する。試薬分注機構7または8は、後述する内容に従ってプローブ71または81により反応容器41内の試料の測定項目に用いられる試薬を試薬庫5または6から吸引し反応容器41内に必要量を吐出して、試薬分注処理を実行する。その後、反応容器41は、攪拌部9の位置まで移動し、反応容器41内の試料と試薬の混合液は攪拌部9の攪拌棒91により攪拌される。反応容器41は、例えば図示しない光度計などにより分析される。分析終了後、反応容器41は洗浄機構11により洗浄され、次の試料分析に使用される。
【0034】
次に、自動分析装置1における試薬の種類に応じた適切な試薬分注処理について、ここでは特に試薬分注機構7の制御に注目しながら図1、図2及び図3を用いて説明する。
【0035】
なお、当該制御は図示していない制御部によって実行されるものであり、試薬分注機構8についても同様の制御が実行される。
【0036】
試薬分注に関するパラメータとして、例えば次の4つが考えられる。即ち、「吸引速度」、「吐出速度」、「エアギャップ量」、そして「ダミー量」である。
【0037】
「吸引速度」は、試薬分注機構7がプローブ71により試薬容器51から試薬を吸引したときの試薬の速度を示す。「吐出速度」は、試薬分注機構7がプローブ71により反応容器41へ試薬を吐出したときの試薬の速度を示す。「エアギャップ量」は、試薬分注機構7がプローブ71により水を吸引した後、試薬を吸引する前に試薬と水が混合しないよう空気を吸引することで形成された水の部分と試薬の部分の間の空間の体積を示す。そして、「ダミー量」は、試薬分注機構7がプローブ71により試薬容器51から吸引した試薬ダミーの体積を示す。
【0038】
これら4つのパラメータのうち少なくとも一つが、試薬の分注処理において測定に影響を及ぼす試薬の飛び散り、ぼたつき、泡立ちや吐出量誤差等の発生に関係している。例えば、「エアギャップ量」は試薬の吐出量に影響のあるパラメータであり、プローブからの試薬吐出の液切りの際、試薬とエアギャップとの圧力差により試薬の吐出量に誤差を生じさせてしまうことがある。
【0039】
まず、試薬分注機構7は、プローブ71により水を吸引しておく。そして、エアーギャップを形成するために空気を吸引する。この吸引するエアの体積(エアギャップ量)は、予め決められた量とする。
【0040】
次に、試薬分注機構7は試薬の吸引及び吐出に移る。
【0041】
図1(a)、(b)、(c)は、プローブ71による吸引速度及び吐出速度をパターンとして試薬ごとに登録する登録画面であり、図示していない表示部に表示される。
【0042】
プローブ71による試薬の吸引速度及び吐出速度を決定するため、オペレータは図1(a)に示すように、測定する項目毎または測定に使用される試薬毎にそれぞれ「吸引速度」、「吐出速度」を予め登録しておく。この「吸引速度」と「吐出速度」は、条件1〜条件nのn段階に分類された「速度条件」の中から任意に選択し登録される。各段階の条件内容は、試薬分注機構7が試薬を吸引若しくは吐出する初速度、最高速度、終速度、初速度から最高速度までに達する時間あるいは最高速度から終速度までに達する時間等から設定された試薬の速度のパターンである。例えば図2(a)は、「条件1」における時間と試薬の速度との関係を示している。
【0043】
このように、「吸引速度」及び「吐出速度」は、予め速度変化が段階設定されたn個の条件からの選択で登録できるので、作業性の向上を図ることができる。
【0044】
また、図1(b)に示すように、「吸引速度」や「吐出速度」を速度条件から選択し登録する代わりに速度条件の中のある条件i(iは1〜nのn個のうちのいずれか)を基礎として初速度、最高速度等所望の部分を任意に変更し、速度パターンを設定する「マニュアル条件」を登録することも可能である。例えば、「速度条件」の条件iについて所望の部分を図示していない入力装置(キーボードやマウス)で変更し、その結果を「マニュアル条件i」として設定し登録すればよい。このときの変更は、数値あるいは図2(a)に示したグラフへの操作により実行することができる。
【0045】
さらに前記構成に加えて、図1(c)に示すように、速度条件の中のある条件i(iは1〜nのn個のうちのいずれか)を基礎とせず、すべての試薬速度の時間変化、すなわち初速度、最高速度、終速度、初速度から最高速度までに達する時間あるいは最高速度から終速度までに達する時間等を任意に設定する「フルマニュアル条件」を登録することも可能である。このときの速度パターンの設定についても、数値あるいは図2(a)に示したグラフを直接作成することにより実行することができる。
【0046】
まず、図1(a)に示すように、反応容器41に収められた測定対象の試料に対して測定すべき項目がA、B、C(あるいはその測定に用いられる試薬A、B、C)とある場合、オペレータは試薬吸引前にそれらの項目(あるいは試薬)のそれぞれに対して「吸引速度」と「吐出速度」の速度条件を、「条件1」から「条件n」の中から選択して設定する。その後、仮に「条件1」を選択した場合、測定項目Aに使用される試薬Aは、条件1の速度パターン(図2(a)に示す)に従ってプローブ1から吸引される。そして、試薬Aが、条件1の速度パターンに従って測定対象の試料が収容された反応容器41に吐出される。
【0047】
このような試薬Aの分注処の際に、泡立ちやぼたつき、飛び散りが発生したとする。このときオペレータは、試薬Aの「吸引速度」、「吐出速度」のそれぞれに対して泡立ちやぼたつき、飛び散りが発生しない速度条件を検討・調査し、図2(b)に示した最も適切な分注処理を実行する条件i(iは1〜nまでのn個のうちのいずれか)を再登録する。
【0048】
さらに、オペレータは、この条件iを基礎として初速度等所望の部分を任意に変更し、新たに「マニュアル条件i」として登録することもできる。図2(b)では、例として条件iの初速度のみ変化させた「マニュアル条件i」を一点鎖線で示してある。
【0049】
また、オペレータは、必要に応じて「フルマニュアル条件」として、初速度、最高速度、終速度、初速度から最高速度までに達する時間あるいは最高速度から終速度までに達する時間等を任意に設定し登録することもできる。
【0050】
測定項目B(試薬B)あるいは測定項目C(試薬C)に対しても試薬分注の際の泡立ちやぼたつき、飛び散りが発生した場合には試薬Aと同様に行なえばよい。
【0051】
このように、測定項目毎(あるいは試薬の種類毎)に試薬の吸引あるいは吐出状態を制御できるようにしたので、試薬の種類による吸引あるいは吐出状態の違いを適確に捉えることができ、どのような試薬に対しても試薬に応じた適切な試薬分注を行なうことができる。
【0052】
次に、自動分析装置1の試薬分注処理において、ランニングコストを下げるために試薬ダミー量の削減を行なう場合の試薬分注機構7の制御について図3を参照して説明する。
【0053】
図3は、各分注パラメータの数値あるいは条件を登録する登録画面であり、図示していない表示部に表示される。
【0054】
まず、試薬分注機構7は、プローブ71により水を吸引しておく。この時点で図3(a)に示すように、反応容器41に収められた測定対象の試料に対して測定すべき項目がA、B、C(あるいはその測定に用いられる試薬A、B、C)とある場合、それらの項目(試薬)それぞれについて上述した分注パラメータの値及び条件は登録されているものとする。
【0055】
すなわち、オペレータは、図3(a)に示す登録画面から必要に応じて「吸引速度」、「吐出速度」、「エアギャップ量」及び「試薬ダミー量」なるパラメータのデータ入力を行なっておく。同図に示すように、本実施の形態においては「吸引速度」と「吐出速度」の速度パターンは「速度条件」の条件1から条件nの中から選択して登録した。また、「エアギャップ量」及び「試薬ダミー量」は測定項目毎(試薬の種類毎)に具体的数値を入力する。もちろん、これらのパラメータに関しても予め設定された値から選択する形式でもよい。ここでは試薬ダミー量の削減を図るため、通常の「試薬ダミー量」は20μlであるところを半分の10μlとして登録した。
【0056】
その後、エアーの吸引及び測定項目Aに使用される試薬Aが、予め設定されたデータに及び上記登録内容に従ってプローブ71により吸引される。そして、測定対象の試料の収容された反応容器41に試薬Aが吐出される。このような試薬Aの分注処理の際に、泡立ちやぼたつき、飛び散りが発生したとする。このときオペレータは、試薬Aの分注パラメータ「吸引速度」、「吐出速度」、「エアギャップ量」、「試薬ダミー量」に対して泡立ちやぼたつき、飛び散りが発生しない条件あるいは数値を検討・調査する。その結果に応じて、変更が必要なパラメータの数値あるいは条件を図示していない入力デバイス(キーボードやマウス等)で登録画面から再登録するようにする。例えば、試薬Aの分注の際の泡立ちやぼたつき、飛び散りの発生が試薬Aに対する試薬ダミー量の削減過多に起因し、12μl以上であれば泡立ち等が発生しないという場合には、登録画面の試薬Aの「試薬ダミー量」の値「10μl」を「12μl」に登録し直す。
【0057】
また、従来の自動分析装置では、ランニングコストを下げる方法の一つとして、測定項目に依らずに、例えば試薬ダミー量を〈吐出量×8%+6μl〉から〈吐出量×4%+3μl〉というように関係式の係数を変えることで一律に試薬ダミー量の削減が行なわれてきた。しかしながら、本実施形態に係る自動分析装置によれば、係る試薬ダミー量の削減手法においても、測定項目毎または測定に使用される試薬毎に、例えば試薬Aについてのみ試薬ダミー量を〈吐出量×8%+6μl〉から〈吐出量×4%+3μl〉というように、関係式の係数を変えることで試薬ダミー量の削減を行うことができる。
【0058】
試薬B、Cに対しても分注の際泡立ち等が発生した場合、それぞれ試薬Aと同様にして検討・調査し、それぞれの泡立ち等が発生しない条件あるいは数値を再登録する。
【0059】
また、例えば、試薬Cは始めに設定されたデータで泡立ち等が発生しなかったとする。この場合は、さらに試薬ダミー量が削減できる可能性があるので、どこまで削減できるかを検討・調査し、より削減できるようであれば、その削減後の量(例えば、8μl)を再登録することもできる。
【0060】
なお、登録画面より登録された各試薬に関する分注パラメータは、必要に応じて図示していない記憶部に記憶され、読み出した記憶内容に従った分注処理を可能としている。この記憶内容は、登録画面からの入力により更新可能である。
【0061】
また、上述した各分注パラメータの条件あるいは数値の変更をさらに組み合わせることにより分注処理における泡立ち等を防止しても良い。その場合、試薬ダミー量が更に削減できるようなパラメータの条件あるいは数値変更であるとさらに好ましい。
【0062】
また、図3(b)に示すように、登録画面では、分注処理以後の測光や電解質測定に特に影響を及ぼす分注パラメータである「吐出速度」と「試薬ダミー量」のみを登録するような構成であってもよい。
【0063】
このように、試薬ダミー量等の分注パラメータに基づいて測定項目毎(あるいは試薬の種類毎)に試薬分注処理を制御できるようにしたので、試薬ダミー量を削減した場合でも試薬の種類による吸引あるいは吐出状態の違いを的確に捉えることができ、あらゆる種類の試薬について適切な試薬分注を行なうことができるとともにランニングコストを効果的に抑制することができる。
【0064】
以上、本発明を実施の形態に基いて説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示すように、その要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0065】
上記実施の形態において、分注パラメータ「吸引速度」と「吐出速度」について「速度条件」を登録する場合、予め設定されたn個の条件の中から適切な分注処理を実行できる条件を検討・調査し選択する構成であった。
【0066】
しかし、予め設定された条件が多数ある場合では、上記の検討・調査に多大な時間や労力がかかってしまい作業性が低下することも考えられる。
【0067】
そこで、上記の検討・調査を能率的に行うために、上記構成に加えて、「マニュアル条件」あるいは「フルマニュアル条件」について設定した条件内容に最も近い「速度条件」をn個の中から検索する検索装置を有する構成であってもよい。
【0068】
この検索装置の使用例として、条件iを「速度条件」として登録し実行した分注処理において泡立ちやぼたつき、飛び散りが発生した場合を考える。この場合、オペレータは「速度条件」について残りのn−1個の条件を検討せず、「マニュアル条件」あるいは「フルマニュアル条件」により適切な分注処理を実行できるマニュアル条件iあるいはフルマニュアル条件iを任意に設定する。そして、前記検索装置によりこの設定したマニュアル条件iあるいはフルマニュアル条件iに最も近い「速度条件」をn個の条件の中から検索すれば、適切な速度条件をn個の中から選択できる。オペレータは、この検索により選択されたものを「速度条件」として再登録すればよい。
【0069】
従って、この検索装置によれば、「速度条件」を登録する際n個の条件の中から検討・調査する手間を省くことができ、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】分注パラメータを登録する登録画面を示す図。
【図2】「条件1」と「条件i」の速度と時間の関係を示す図。
【図3】分注パラメータを登録する登録画面を示す図。
【図4】自動分析装置の外観図。
【図5】分注機構の動作を説明するための図。
【図6】分注機構の動作を説明するための図。
【符号の説明】
【0071】
3…試料分注機構
31…プローブ
7、8…試薬分注機構
71、81…プローブ
711…水
712…エアーギャップ
713…試料ダミー
714…測定試薬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが試薬を格納する複数の試薬容器と、
所定の分注試薬量を得るために、試薬ダミー量と測定項目との間の関係を入力するための入力手段と、
前記複数の試薬容器のうちの一つから前記試薬を吸引し、当該吸引された試薬を反応容器に分注する分注処理を実行する分注手段と、
前記吸引された試薬の量が前記試薬ダミー量と測定項目との間の関係に従って決定されるダミー量を含むように、前記分注処理を制御する制御手段と、
前記反応容器中の試料の成分を分析する分析手段と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
それぞれが試薬を格納する複数の試薬容器と、
所定の分注試薬量を得るために、試薬ダミー量と試薬種別との間の関係を入力するための入力手段と、
前記複数の試薬容器のうちの一つから前記試薬を吸引し、当該吸引された試薬を反応容器に分注する分注処理を実行する分注手段と、
前記吸引された試薬の量が前記試薬ダミー量と試薬種別との間の関係に従って決定される試薬ダミー量を含むように、前記分注処理を制御する制御手段と、
前記反応容器中の試料の成分を分析する分析手段と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
それぞれが試薬を格納する複数の試薬容器と、
所定の分注試薬量を得るために、試薬ダミー量と測定項目との間の関係を記憶する記憶手段と、
前記複数の試薬容器のうちの一つから前記試薬を吸引し、当該吸引された試薬を反応容器に分注する分注処理を実行する分注手段と、
前記吸引された試薬の量が前記試薬ダミー量と測定項目との間の関係に従って決定されるダミー量を含むように、前記分注処理を制御する制御手段と、
前記反応容器中の試料の成分を分析する分析手段と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
前記入力手段は、複数の候補の中から前記関係を選択することを特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記入力手段は、予め設定された複数の候補の中からマニュアル操作によって前記関係を選択することを特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記入力手段は、マニュアル操作による入力に従って前記試薬ダミー量を入力することを特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記試薬ダミー量と測定項目との間の関係に従って、前記試薬ダミー量と前記分注される試薬量との間の関係を示す計算式の係数を変化させることで、前記吸引される試薬ダミー量を決定することを特徴とする請求項1、3、4、5、6のいずれか1項記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記試薬ダミー量と試薬種別との間の関係に従って、前記試薬ダミー量と前記分注される試薬量との間の関係を示す計算式の係数を変化させることで、前記吸引される試薬ダミー量を決定することを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記計算式は、試薬ダミー量=分注試薬量×A[%]+Bであり、前記係数は前記A、Bであることを特徴とする請求項7又は8記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記試薬ダミー量は、前記試薬ダミー量と測定項目との間の関係及び前記試薬ダミー量と前記分注される試薬量との間の関係に応じて決定されることを特徴とする請求項1又は3のうちいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記試薬ダミー量は、前記試薬ダミー量と試薬種別との間の関係及び前記試薬ダミー量と前記分注される試薬量との間の関係に応じて決定されることを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−98417(P2006−98417A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372601(P2005−372601)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【分割の表示】特願平11−127374の分割
【原出願日】平成11年5月7日(1999.5.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】