説明

自動分析装置

【課題】検体検査の優先度に応じたラック供給を容易に行うことができる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】ラック供給部10aに供給されるラック11に付され、ラック11に収容される検体の優先度を示す識別情報を含んだRFIDタグ11aと、RFIDタグ11aからこの識別情報を読み取る読取部15と、読取部15が読み取ったこの識別情報の優先度と読み取ったこの識別情報の数とをもとに、この優先度に応じたラック供給部10aの位置にこの識別情報の数に応じたラック11の割込スペースを空けるように検体供給部10を制御する搬送制御部46と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体と試薬とを反応させることによって検体を分析する自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液等の生体試料を分析する自動分析装置は、緊急に検査結果を得ることが要求される緊急検体を一般検体に割り込ませて分析するようにしたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一般検体と同一のラック供給部に供給される緊急検体を一般検体よりも優先して分析する自動分析装置が記載されている。この自動分析装置は、緊急検体が収容されたラックをラック供給部に供給する場合、一般検体が収容されたラックにこの緊急検体が収容されたラックを割込させて供給することができる割込スペースを空けるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−83994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された自動分析装置は、緊急検体が収容された複数のラックをラック供給部に供給する場合、予め割り込ませるラックの数を数えておき、このラックの数分の割込指示操作を行う必要があったため、緊急検体が収容されたラックの割込供給作業が煩雑であるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検体検査の優先度に応じたラック供給を容易に行うことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる自動分析装置は、検体を収容する検体容器を保持したラックを検体吸引位置に供給可能に保持するラック供給部から該ラックを前記検体吸引位置に搬送する検体供給手段を有し、前記検体吸引位置で前記検体を反応容器に分注して、該反応容器内で試薬と反応させることによって前記検体の分析を行う自動分析装置において、前記ラック供給部に供給されるラックに付され、該ラックに収容される検体の優先度を示す識別情報を含んだ情報記録媒体と、前記情報記録媒体から前記識別情報を読み取る読取手段と、前記読取手段が読み取った識別情報の優先度と読み取った識別情報の数とをもとに、該優先度に応じた前記ラック供給部の位置に前記識別情報の数に応じたラックの割込スペースを空けるように前記検体供給手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ラック供給部に供給されるラックは、緊急検体を含むラックであり、該ラックに付される情報記録媒体に含まれる前記識別情報の優先度は最も高い優先度であり、前記制御手段は、前記読取手段が読み取った前記識別情報の優先度が最も高い優先度である場合、該識別情報の数に応じたラックの割込スペースを前記ラック供給部の先頭位置に空けるように前記検体供給手段を制御することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記情報記録媒体は、前記ラックが緊急検体を収容する場合に付され、前記制御手段は、前記読取手段が読み取った前記識別情報の数に応じたラックの割込スペースを前記ラック供給部の先頭位置に空けるように前記検体供給手段を制御することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記検体供給手段は、上部に開閉可能な蓋を有し、前記制御手段は、前記読取手段によって読み取った前記識別情報の優先度と読み取った識別情報の数とをもとに、該優先度に応じた前記ラック供給部の位置に前記識別情報の数に応じたラックの割込スペースを空けるように前記検体供給手段を制御するとともに、前記蓋を開ける制御を行うことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記蓋が開くことを報知する報知手段を備え、前記制御手段は、前記報知手段による報知を行った後に前記蓋を開ける制御を行うことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記蓋を開ける指示入力を行う入力手段を備え、前記制御手段は、前記入力手段による指示を受け付けた後に前記蓋を開ける制御を行うことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記報知手段による報知後であって前記入力手段による指示を受け付けた後に前記蓋を開ける制御を行うことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記入力手段は、フットスイッチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、読取手段が、ラック供給部に供給されるラックに付された情報記録媒体から前記ラックに収容される検体の優先度を示す識別情報を読み取り、制御手段が、前記読取手段によって読み取った前記識別情報の優先度と読み取った識別情報の数とをもとに、該優先度に応じた前記ラック供給部の位置に前記識別情報の数に応じたラックの割込スペースを空けるように検体供給手段を制御しているので、操作者は、前記情報記録媒体が前記読取手段に読み取られるようにするだけで、供給すべきラックの割込スペースが空けられ、検体検査の優先度に応じたラック供給を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明にかかる分注装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図2は、図1に示した自動分析装置の構成を示す斜視図である。自動分析装置1は、図1に示すように、検体供給手段としての検体供給部10、測定部20、および制御装置40を有する。検体供給部10は、測定部20の側部に配置され、検体を収容する検体容器12を複数保持するラック11を検体吸引位置まで搬送する。測定部20は、検体および試薬を反応容器22内にそれぞれ分注し、反応容器22で生じる反応を光学的に測定する。制御装置40は、検体供給部10および測定部20を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定部20における測定結果の分析を行う。自動分析装置1は、これら各部が連携することによって複数の検体の生化学分析を順次自動的に行う。
【0018】
検体供給部10は、上述したようにラック11を搬送することによって、検体容器12を検体吸引位置に搬送する。検体吸引位置に搬送された検体容器12内の検体は、検体分注機構25によって、検体分注位置に移送された反応容器22内に分注される。また、ラック11の側面には各検体容器12に収容された検体の識別情報等を記録した情報記録媒体としてのRFIDタグ11aが付されている。なお、RFIDタグ11aは、ラック11に収容される検体が緊急検体であるか一般検体であるかの優先度を示す識別情報を含んでいる。
【0019】
測定部20は、反応槽21、検体分注機構25、第1試薬分注機構26、第2試薬分注機構27、第1試薬庫23、第2試薬庫24、攪拌部28、測光部29および洗浄部30を有する。
【0020】
反応槽21は、図示しない保温部材と、ホイール21aとを有する。ホイール21aは、複数の反応容器22を保持し、図示しない駆動機構によって回転して反応容器22を周方向に移送する。反応槽21は、図示しない円盤状の蓋によって覆われており、ホイール21aの半径方向内側と外側とに配置される図示しない保温部材とともに、内部の温度を体温程度の温度に保温する保温槽を構成している。
【0021】
検体分注機構25は、検体の吸引および吐出を行うプローブ25bが先端部に取り付けられたアーム25aを有する。アーム25aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。検体分注機構25は、吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を有する。検体分注機構25は、検体供給部10の検体供給位置に移送された検体容器12内の所定位置に移送された検体容器12内からプローブ25bによって検体を吸引し、アーム25aを図中反時計回りに旋回させ、反応槽21上の検体吐出位置に搬送された反応容器22に、検体を吐出して分注を行う。
【0022】
第1試薬分注機構26は、第1試薬の吸引および吐出を行うプローブ26bが先端部に取り付けられたアーム26aを有する。アーム26aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。第1試薬分注機構26は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を有する。第1試薬分注機構26は、第1試薬庫23上の所定位置に移送された第1試薬容器23a内の第1試薬をプローブ26bによって吸引し、アーム26aを図中反時計回りに旋回させ、反応槽21上の所定位置に搬送された反応容器22に、第1試薬を吐出して分注を行う。
【0023】
第2試薬分注機構27は、第1試薬分注機構26と同様に、第2試薬の吸引および吐出を行うプローブ27bが先端部に取り付けられたアーム27aと、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を有し、第2試薬庫24上の所定位置に移送された第2試薬容器24a内の第2試薬をプローブ27bによって吸引後、反応槽21上の所定位置に搬送された反応容器22に、第2試薬を吐出して分注を行う。
【0024】
第1試薬庫23は、反応容器22内に分注される2種類の試薬のうち、最初に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器23aを着脱自在に複数収納できる。第1試薬庫23は、制御装置40の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、第1試薬庫23の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第1試薬容器23aを第1試薬分注機構26による試薬吸引位置まで移送する。
【0025】
第2試薬庫24は、反応容器22内に分注される2種類の試薬のうち、第1試薬の次に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器24aを着脱自在に複数収納できる。第2試薬庫24は、第1試薬庫23と同様に、制御装置40の制御のもと、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第2試薬容器24aを第2試薬分注機構27による試薬吸引位置まで移送する。
【0026】
攪拌部28は、反応容器22に分注された第1試薬と検体あるいは第1試薬と第2試薬と検体との混合液の攪拌を行い、反応を促進させる。
【0027】
測光部29は、所定の測定位置に移送された反応容器22に光源29aから測定光を照射し、反応容器22内の検体と試薬との混合液を透過した光を分光し、受光素子29bによる各波長光の強度測定を行うことによって、分析対象である検体と試薬との混合液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0028】
洗浄部30は、図示しないノズルによって、測光部29による測定が終了した反応容器22内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。
【0029】
検体供給部10は、ラック供給部10a、ラック回収部10bおよびラック搬送部10cを有する。
【0030】
ラック供給部10aは、アタッチメント10dを複数備えたコンベアである。アタッチメント10dは断面L字状であり、このL字状の直立した部分がラック11の搬送方向に対して直交するようにコンベアに設けられている。ラック供給部10aは、検体が収容されたラック11を検体吸引位置に搬送する待機場所である。ラック供給部10aに供給された各ラック11は、順次ラック搬送部10cに送り出され、検体吸引位置に搬送される。なお、ラック供給部10aは、図中矢印のラック11の搬送方向に対して逆方向にコンベアを駆動させることによって、ラック11を搬送方向と逆方向に搬送することが可能である。
【0031】
ラック回収部10bは、ラック供給部10aに対して平行配置されたコンベアである。ラック回収部10bは、検体吸引位置から搬送された回収対象の検体が収容されたラック11を回収可能に一時保持する。
【0032】
ラック搬送部10cは、コンベアであり、ラック供給部10aから供給されるラック11を順次、検体吸引位置まで搬送するとともに検体吸引が終わったラック11をラック回収部10bまで搬送する。
【0033】
自動分析装置1の筐体16の検体供給部10近傍前面には、読取部15およびLED17が設けられる。読取部15は、RFIDタグ11aから情報を読み取る読取手段として、読取領域内に存在するRFIDタグ11aとの間で所定周波数の電波を送受信する。読取部15は、RFIDタグ11aに記録された情報を受信し、この受信した情報を制御装置40に出力する。LED17は、報知手段として点滅あるいは点灯することによって蓋13が開くことを報知する。なお、報知手段は、LED17によって実現しているが、これに限らず、蓋13が開くことを報知できればよい。例えば、スピーカーによってアラーム音を鳴らすことで実現してもよい。
【0034】
また、ラック供給部10aは、図2に示すように、蓋13およびセンサ14が設けられる。蓋13は、制御装置40の制御のもと図示しない駆動機構の駆動によって蝶番13aを介して開閉可能である。センサ14は、接触センサによって実現され、蓋13が閉じた状態か開いた状態かを検出する。
【0035】
制御装置40は、制御部41、入力部42、分析部43、出力部44、記憶部45、および搬送制御部46を有する。測定部20、検体供給部10および制御装置40内の上述した各部は、制御部41に接続されている。制御部41は、CPU等によって実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0036】
入力部42は、キーボードやマウス等によって実現され、検査項目等の各種情報の入力が可能である。また、分析部43は、測光部29によって測定された測定結果をもとに、検体内における検知対象物の濃度を求め、検体の成分分析等を行う。出力部44は、ディスプレイパネルやスピーカー等によって実現され、分析結果を含む分析内容や警報等の各種情報を出力する。記憶部45は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にこの処理にかかわる各種プログラムをハードディスクから読み出して電気的に記憶するメモリとを有する。記憶部45は、演算処理された吸光度等を含む検体の情報を記憶する。
【0037】
搬送制御部46は、読取部15によって読み取ったラック11に収容される検体が緊急検体であるか一般検体であるかの優先度を示す識別情報と優先度を読み取った識別情報の数とをもとに、優先度に応じたラック供給部10aの位置にこの識別情報の数に応じたラック11の割込スペースを空けるように検体供給部10を制御する。
【0038】
以上のように構成された自動分析装置1では、順次搬送される複数の反応容器22に対して、第1試薬分注機構26が、第1試薬容器23aから反応容器22に第1試薬を分注し、検体分注機構25が、検体容器12から反応容器22に所定量の検体を分注する。続いて、攪拌部28が、反応容器22内の第1試薬と検体とを攪拌して反応させた後、測光部29が、第1試薬と検体との混合液の吸光度測定を行う。また、必要に応じて第2試薬分注機構27が、第2試薬容器24aから反応容器22に第2試薬を分注する。続いて、攪拌部28が、反応容器22内の第1試薬、検体および第2試薬の混合液を攪拌して反応させた後、測光部29が、第1試薬と検体と第2試薬との混合液の吸光度測定を行う。そして、分析部43が、測定結果を分析し、検体の成分分析等を自動的に行う。また、洗浄部30が、測光部29による測定が終了した反応容器22の洗浄・乾燥を行い、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0039】
ここで、読取部15は、RFIDタグ11aの識別情報を読み取り、搬送制御部46は、ラック11に収容される検体が緊急検体であるか一般検体であるかの優先度と、緊急検体を示す識別情報の数とをもとに、緊急検体を収容するラック数分だけ、ラック供給部10aの先頭位置に割込スペースを空ける制御を行う。
【0040】
つぎに、図3に示すフローチャートを参照して、制御装置40によるラック供給処理手順について説明する。図3において、まず、搬送制御部46は、読取部15がRFIDタグ11aの識別情報を読み取ったか否かを判断する(ステップS101)。このRFIDタグ11aの識別情報を読み取っていない場合(ステップS101;No)、搬送制御部46は、読取部15によるRFIDタグ11aの識別情報の読み取り待ち状態を継続させる。
【0041】
一方、読取部15がRFIDタグ11aの識別情報を読み取った場合(ステップS101;Yes)、搬送制御部46は、検体供給部10によるラック供給動作を停止させる(ステップS102)。その後、搬送制御部46は、読み取った識別情報の内容と数とをもとに、ラック供給部10aに供給すべきラック11の数を算出する(ステップS103)。このラック11の数の算出は、読み取った識別情報の数が、ラック供給部10aに搭載できるラック数以下である場合、読み取った識別情報の数とするが、読み取った識別情報の数が、搭載できるラック数を超える場合、搭載できるラック数とする。
【0042】
その後、搬送制御部46は、ラック供給部10a側の状態情報を出力部44に報知させる(ステップS104)。この状態情報としては、全てのラック11を搭載できる旨、あるいは全てのラック11を搭載できない旨を報知する。なお、全てのラック11を搭載できない場合、搭載できないラック数を報知することが好ましい。これにより、操作者は、ラック供給作業前に、搭載可能なラック数を認識することができる。
【0043】
その後、搬送制御部46は、識別情報を読み取ったラック11に収容される検体が緊急検体であるか一般検体であるかの優先度を判断する(ステップS105)。この識別情報を読み取ったラック11に収容される検体が緊急検体である場合(ステップS105;Yes)、搬送制御部46は、ラック供給部10aに、ステップS103で算出されたラック11の数分だけ割込スペースP2を空ける(ステップS106)。ここで、一般検体が収容されたラック11が既にラック供給部10aに搭載されていた場合、ラック供給部10aのラック11は、搬送方向前詰めに整列した状態で停止している(図4(a))。従って、この整列したラック11列の先頭位置に、算出されたラック数分の割込スペースP2を空けるようにコンベアを搬送方向と逆方向に駆動させ、整列したラック11列の全体を搬送方向と逆方向に移動させる(図4(b))。
【0044】
一方、識別情報を読み取ったラック11に収容される検体が緊急検体でない場合(ステップS105;No)、ステップS107に移行する。すなわち、識別情報を読み取ったラック11に収容される検体が緊急検体でない場合(ステップS105;No)、割込スペースP2を空けることなく、ラック供給部10a上に既に配列されたラック11列の後部にスペースP1ができており、このスペースP1に、ラック11を供給することができる(図4(a))。
【0045】
その後、搬送制御部46は、LED17を点滅させることによって蓋13を開けることを報知する(ステップS107)。その後、搬送制御部46は、蓋13を開ける(ステップS108)。これにより、操作者は、例えば、両手に緊急検体が収容された複数のラック11を持っている場合にも容易にこのラック11を供給することができる。
【0046】
その後、制御部41は、タイマーをスタートさせ(ステップS109)、このタイマーがタイムアップするまでの間にセンサ14から蓋13が閉められたことを示す信号を受信したか否かを判断する(ステップS110)。この信号を受信していない場合(ステップS110;No)、制御部41は、タイマーがタイムアップしたか否かを判断する(ステップS111)。タイマーがタイムアップした場合(ステップS111;Yes)、制御部41は、蓋13が閉められていない異常を示す表示を出力部44に出力し(ステップS112)、ステップS110に移行する。一方、この信号を受信した場合(ステップS110;Yes)、制御部41は、検体供給部10によるラック供給動作を再開させた後(ステップS113)、本処理を終了する。
【0047】
この発明の実施の形態1では、読取部15が、ラック供給部10aに供給されるラック11に付されたRFIDタグ11aからラック11に収容される検体が緊急検体であるか一般検体であるかの優先度を示す識別情報を読み取り、搬送制御部46が、読取部15によって読み取ったこの識別情報の優先度と読み取った緊急検体を示す識別情報の数とをもとに、緊急検体を収容するラック数分だけ、ラック供給部10aの先頭位置に割込スペースを空けるように検体供給部10を制御しているので、操作者は、RFIDタグ11aが読取部15に読み取られるようにするだけで、供給すべきラックの割込スペースが空けられ、検体検査の優先度に応じたラック供給を容易に行うことができる。
【0048】
ここで、上述した情報記録媒体は、RFIDタグ11aによって実現しているが、この場合、読取部15は、RFIDタグ11aの読取に際し、衝突防止機能を搭載しておくことによって読取領域内の複数のRFIDタグ11aに対する同時アクセスを可能としておくことが好ましい。なお、情報記録媒体は、RFIDタグ11aに限らず、ラック11に収容される検体の優先度を示す識別情報が記録され、読取部15によって識別情報を読み取ることができるものであればよい。たとえば、バーコードであってもよく、この場合、読取部15は、バーコードを光学的に読み取ることができればよい。また、特定の画像によって識別情報を示してもよい。この場合、読取部15には、通常のCCDカメラ等の撮像手段が用いられ、識別情報を識別する画像処理を行うようにすればよい。
【0049】
(実施の形態2)
次に、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、搬送制御部46が、蓋13が開くことを報知した後に、蓋13を自動で開けるように検体供給部10を制御していたが、実施の形態2では、図5に示すように、搬送制御部46に替わって搬送制御部46aは、蓋13が開くことを報知した後であってフットスイッチ48による指示を受け付けた後に蓋13を開けるようにしている。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0050】
ここで、図6に示すフローチャートを参照して、制御装置47によるラック供給処理手順について説明する。図6は、制御装置47によるラック供給処理手順のフローチャートを示している。図6において、まず、搬送制御部46aは、読取部15がRFIDタグ11aの識別情報を読み取ったか否かを判断する(ステップS201)。このRFIDタグ11aの識別情報を読み取っていない場合(ステップS201;No)、搬送制御部46aは、読取部15によるRFIDタグ11aの識別情報の読み取り待ち状態を継続させる。
【0051】
一方、読取部15がRFIDタグ11aの識別情報を読み取った場合(ステップS201;Yes)、搬送制御部46aは、検体供給部10によるラック供給動作を停止させる(ステップS202)。その後、搬送制御部46aは、ラック供給部10aに供給すべきラック11の数を算出する(ステップS203)。その後、ラック供給部10a側の状態情報を出力部44に報知させる(ステップS204)。
【0052】
その後、搬送制御部46aは、RFIDタグ11aから識別情報を読み取ったラック11に収容される検体が緊急検体であるか一般検体であるかの優先度を判断する(ステップS205)。この識別情報を読み取ったラック11に収容される検体が緊急検体である場合(ステップS205;Yes)、搬送制御部46aは、この算出されたラック11の数分だけラック供給部10aに割込スペースP2を空ける(ステップS206)。一方、識別情報を読み取ったラック11に収容される検体が緊急検体でない場合(ステップS205;No)、ステップ207に移行する。
【0053】
その後、搬送制御部46aは、LED17を点滅させることによって蓋13を開けることを報知する(ステップS207)。その後、搬送制御部46aは、タイマーをスタートし(ステップS208)、タイマーがタイムアップするまでの間に、フットスイッチ48による蓋13を開ける指示を受け付けた否かを判断する(ステップS209)。フットスイッチ48による蓋13を開ける指示を受け付けていない場合(ステップS209;No)、搬送制御部46aは、タイマーがタイムアップしたか否かを判断する(ステップS210)。タイマーがタイムアップした場合(ステップS210;Yes)、搬送制御部46aは、検体供給部10によるラック供給動作を再開させて(ステップS211)、ステップS201に移行する。ここで、例えば、ステップS204で全てのラック11を搭載できない旨を報知されていた場合、タイムアップさせることでラック11の供給をキャンセルすることも可能である。
【0054】
一方、フットスイッチ48による蓋13を開ける指示を受け付けた場合(ステップS209;Yes)、搬送制御部46aは、蓋13を開ける(ステップS212)。これにより、操作者は、例えば、両手に緊急検体が収容された複数のラック11を持っている場合にも容易にこのラック11を供給することができる。しかも、蓋13が開くことを報知した後に、さらにフットスイッチ48が押されることによって蓋13が開くようにしているので、安全に蓋13を開けることができる。
【0055】
その後、制御部41は、タイマーをスタートさせ(ステップS213)、このタイマーがタイムアップするまでの間にセンサ14から蓋13が閉められたことを示す信号を受信したか否かを判断する(ステップS214)。この信号を受信していない場合(ステップS214;No)、制御部41は、タイマーがタイムアップしたか否かを判断する(ステップS215)。タイマーがタイムアップした場合(ステップS215;Yes)、制御部41は、蓋13が閉められていない異常を示す表示を出力部44に出力し(ステップS216)、ステップS214に移行する。一方、この信号を受信した場合(ステップS214;Yes)、制御部41は、検体供給部10の動作を再開させた後(ステップS217)、本処理を終了する。
【0056】
この発明の実施の形態2では、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、蓋13が開くことを報知した後に、さらにフットスイッチ48が押されることによって蓋13が開くようにしているので、より安全に蓋13を開けることができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態1,2では、検体供給部10は、開閉可能な蓋13を有するものを例示したが、これに限らず、RFIDタグ11aが読取部15に読み取られるようにするだけで、検体の優先度に応じたラック供給部10aの位置に読取部15で読み取った識別情報の数に応じたラック11の割込スペースを空けるようにすればよい。例えば、検体供給部10は、蓋13を有しないものであってもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態1,2では、検体の優先度を示す識別情報として緊急検体と一般検体の2つを例示したが、これに限らず、検体の優先度に応じたラック供給部10aの位置に読取部15で読み取った識別情報の数に応じたラック11の割込スペースを空けるようにすればよい。例えば、緊急検体と一般検体の間の準緊急検体などの優先度を有する検体をラック供給部10aに供給する場合、緊急検体よりも後側かつ、一般検体よりも前側のラック供給部10aの位置に読取部15で読み取った識別情報の数に応じたラック11の割込スペースを空けるようにしてもよい。
【0059】
さらに、上述した実施の形態2では、フットスイッチ48を用いて蓋13を開ける指示入力を行うものを例示したが、これに限らず、煩雑な指示操作を行わずに自動で蓋13を開けることができればよい。例えば、両手に複数のラック11を持った状態でも容易に蓋13を開ける指示入力を行えることが好ましい。具体的には、マイクを介して行われる音声による蓋13を開ける指示入力によって蓋13が自動で開くようにしてもよい。
【0060】
また、上述した実施の形態1,2では、ラック供給部10aのスペース内でこの一般検体が収容されたラック11を移動させて、緊急検体が収容されたラック11の割込スペースを空けるようにしているが、これに限らず、ラック供給部10aに割込スペースを空けることができればよい。例えば、ラック供給部10aに対して平行配置したバッファとしてのコンベアを設けて、一般検体が収容されたラック11をこのバッファに一時的に移動させることによって、ラック供給部10aに割込スペースを空けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す摸式図である。
【図2】図1に示した自動分析装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示した制御部が実施するラック供給処理手順を示したフローチャートである。
【図4】図1に示したラック供給部に緊急検体の割込スペースを空けることを説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態2にかかる自動分析装置の構成を示す摸式図である。
【図6】図5に示した制御部が実施するラック供給処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1,2 自動分析装置
10 検体供給部
10a ラック供給部
10b ラック回収部
10c ラック搬送部
10d アタッチメント
11 ラック
11a RFIDタグ
12 検体容器
13 蓋
13a 蝶番
14 センサ
15 読取部
16 筺体
17 LED
20 測定部
21 反応槽
21a ホイール
22 反応容器
23 第1試薬庫
23a 第1試薬容器
24 第2試薬庫
24a 第2試薬容器
25 検体分注機構
25a,26a,27a アーム
25b,26b,27b プローブ
26 第1試薬分注機構
27 第2試薬分注機構
28 攪拌部
29 測光部
29a 光源
29b 受光素子
30 洗浄部
40,47 制御装置
41 制御部
42 入力部
43 分析部
44 出力部
45 記憶部
46,46a 搬送制御部
48 フットスイッチ
P1,P2 スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容する検体容器を保持したラックを検体吸引位置に供給可能に保持するラック供給部から該ラックを前記検体吸引位置に搬送する検体供給手段を有し、前記検体吸引位置で前記検体を反応容器に分注して、該反応容器内で試薬と反応させることによって前記検体の分析を行う自動分析装置において、
前記ラック供給部に供給されるラックに付され、該ラックに収容される検体の優先度を示す識別情報を含んだ情報記録媒体と、
前記情報記録媒体から前記識別情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段が読み取った識別情報の優先度と読み取った識別情報の数とをもとに、該優先度に応じた前記ラック供給部の位置に前記識別情報の数に応じたラックの割込スペースを空けるように前記検体供給手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記ラック供給部に供給されるラックは、緊急検体を含むラックであり、該ラックに付される情報記録媒体に含まれる前記識別情報の優先度は最も高い優先度であり、
前記制御手段は、前記読取手段が読み取った前記識別情報の優先度が最も高い優先度である場合、該識別情報の数に応じたラックの割込スペースを前記ラック供給部の先頭位置に空けるように前記検体供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記情報記録媒体は、前記ラックが緊急検体を収容する場合に付され、
前記制御手段は、前記読取手段が読み取った前記識別情報の数に応じたラックの割込スペースを前記ラック供給部の先頭位置に空けるように前記検体供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記検体供給手段は、上部に開閉可能な蓋を有し、
前記制御手段は、前記読取手段によって読み取った前記識別情報の優先度と読み取った識別情報の数とをもとに、該優先度に応じた前記ラック供給部の位置に前記識別情報の数に応じたラックの割込スペースを空けるように前記検体供給手段を制御するとともに、前記蓋を開ける制御を行うことを特徴とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記蓋が開くことを報知する報知手段を備え、
前記制御手段は、前記報知手段による報知を行った後に前記蓋を開ける制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記蓋を開ける指示入力を行う入力手段を備え、
前記制御手段は、前記入力手段による指示を受け付けた後に前記蓋を開ける制御を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記報知手段による報知後であって前記入力手段による指示を受け付けた後に前記蓋を開ける制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記入力手段は、フットスイッチであることを特徴とする請求項6または7に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−19808(P2010−19808A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183093(P2008−183093)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】