説明

自動動的ベースライン生成および調整

【課題】
プラズマ処理システムにおいて、ベースラインを動的に設定する方法が提供される。
【解決手段】
方法は、第1の基板を処理することを含む。方法は、第1の基板に関する第1の信号データを収集することも含む。方法は、第1の信号データをベースラインに対して比較することをさらに含む。方法は、第1の信号データがベースラインの上方の最高レベルとベースラインの下方の最低レベルとの間の信頼性レベルの範囲内にある場合に第1の信号データをベースラインの再計算に含めることをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動動的ベースライン生成および調整に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマクリーニング処理の進歩は半導体産業の成長をもたらしてきた。プラズマ処理中に、何百個もの基板が処理されることがある。しかし、処理された基板のすべてが合格品質規格のものではない。合格品質規格のものとは限らない基板を識別するために、障害検出が実施される場合がある。本明細書で論じられるように、障害検出は潜在的な問題のある基板を識別するプロセスを指す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
受容不可能な処理済み基板は、様々な異なる障害検出法によって識別されてもよい。1つの方法は、各基板を手作業で測定することである。しかし、生産環境において何百個もの基板を測定するプロセスは、時間と費用がかかるだけでなく、人為的ミスを起こしかねない。
【0004】
あるいは、障害検出は、各基板に関して収集されたデータをベースラインデータに対して比較することによって実施されることがある。ベースラインデータという用語は、本明細書で採用されるように、処理済み基板の受容可能性を判断するために設定される基準測定値を指す。各基板に対する障害検出を決定するために、多量のベースラインが設定されることがある。設定されているベースライン数は、収集および/またはモニタされているデータの種類(たとえば、電圧バイアス)に依存することがある。
【0005】
一般に、個人(たとえば、プロセスエンジニア)が1個または複数個の基板から収集されたデータを解析することによって自分の専門知識に基づいてベースラインを手作業で決定してもよい。議論を進めるために、図1に、信号データが収集されうるプラズマ処理チャンバ環境の簡単な略図を示す。たとえば、基板のバッチ102が処理される状況を考えてみよう。第1の基板104がプラズマ処理チャンバ106の中に設置される。基板104に関する信号データ108が収集される。基板の適合性を判断するために基板104が測定されてもよい。基板104が測定されると、基板のバッチ102の中にある次の基板が測定される。正確なベースラインを生成するために、大きいサンプルの基板が手作業で測定されなければならないこともある。
【0006】
ベースラインを設定する際、個人が、受容可能と考えられる基板に関して収集された信号データ(たとえば、基板バイアス電圧測定値)を集めてもよい。この後、個人は、信号データを解析し、自分の専門知識に基づいてベースラインを決定してもよい。ある例において、基板104が受容可能と考えられる場合、プロセスエンジニアは、プラズマ処理チャンバ106など、特定のプラズマ処理チャンバの中にある基板の受容可能な品質を判定するベースラインの設定に基板104に関して収集された信号データを含めてもよい。
【0007】
さらに、各ベースラインに対して、基板が受容不可能と考えられるとき、それを判定するために、ソフト許容レベルの範囲とハード許容レベルの範囲とが設定されてもよい。本明細書で論じられるように、ソフト許容レベルとハード許容レベルは、ベースラインの上方および/または下方のパーセンテージ差を指す。また、ハード許容レベルの範囲は、ソフト許容範囲を包含する。基板がハード許容レベルの範囲に入る限り、基板は、通常、受容可能と考えられてもよい。顧客の要望にもよるが、信号データがソフト許容範囲から外れる基板は注意に値することがあり、アラームが発せられることがある。
【0008】
各ベースライン、ソフト許容レベル、およびハード許容レベルを設定するプロセスは、主観的な手動プロセスであることがある。言い換えれば、ベースライン、ソフト許容レベル、およびハード許容レベルの精度は、個人の知識と技能に依存することがある。さらに、ベースライン、ソフト許容レベル、およびハード許容レベルは、通常動作によって時間とともに変わることがある。
【0009】
ある例において、x個の基板を処理した後、一部のプラズマ処理チャンバのハードウェア(たとえば、Oリング)が摩滅していることがある。別の例において、連続処理によって、プラズマ処理チャンバ内に堆積物が沈着していることがある。チャンバとハードウェアの状態が変化すると、ベースラインが変わることがある。ベースラインは、チャンバとハードウェアの状態の変化を明らかにして障害検出を正確に実施する必要がある。さもなければ、基板の受容可能性は、もはや正確であるとは言えないベースラインに基づくことになりうる。したがって、不正確なベースラインは、欠陥基板の保管および/または合格基板の破棄など、手痛い誤りをもたらしかねない。
【0010】
本発明は、プラズマ処理システムにおいてベースラインを動的に設定する方法に関する。方法は、第1の基板を処理することを含む。方法は、第1の基板に関する第1の信号データを収集することも含む。方法は、第1の信号データをベースラインに対して比較することをさらに含む。方法は、第1の信号データがベースラインの上方の最高レベルとベースラインの下方の最低レベルとの間の信頼性レベルの範囲内にある場合に第1の信号データをベースラインの再計算に含めることをさらに含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
別の実施形態において、本発明は、プラズマ処理システムにおいてベースラインを動的に設定する方法に関する。方法は、少なくとも1個の基板を含む基板の第1のバッチを処理することを含む。方法は、基板の第1のバッチに関する第1の組の信号データを収集することも含む。方法は、第1の組の信号データの各信号データをベースラインに対して比較することをさらに含む。方法は、各信号データがベースラインの上方の最高レベルとベースラインの下方の最低レベルとの間の信頼性レベルの範囲内にある場合に、第1の組の信号データの各信号データを第1の統計的計算に含めることをさらに含む。方法は、第1の統計的計算に基づいてベースラインを再計算することをさらに含む。
【0012】
本発明の上述の特徴および他の特徴は、本発明の詳細な説明の中で以下の図と併せて以下でさらに詳しく記載される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、添付図面の各図において、制限のためではなく例として示されており、図面では同様の参照番号は同様の要素を示す。
【図1】図1は、信号データが収集される場合のプラズマ処理チャンバ環境の簡単な略図を示す。
【図2A】図2Aは、ある実施形態において、基板ごとにベースラインを決定する方法を説明するフローチャートを示す。
【図2B】図2Bは、ある実施形態において、図2Aに記載された方法のブロック図を示す。
【図3A】図3Aは、ある実施形態において、基板のバッチごとにベースラインを決定する方法を説明するフローチャートを示す。
【図3B】図3Bは、ある実施形態において、図3Aに記載された方法のブロック図を示す。
【図4】図4は、ある実施形態において、ベースラインを再計算することに含まれることがある基板のバッチに関する信号データを示す。
【図5】図5は、ある実施形態において、収集されたデータに基づいて再計算されたベースラインの簡単なグラフを示す。
【図6】図6は、ある実施形態において、受容可能な基板に関して収集された信号データの簡単なグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を、添付図面に示す本発明の少数の実施形態を参照してここで詳しく説明する。以下の説明では、本発明が十分に理解されるように多くの詳しい情報が記載される。しかし、本発明がこれらの詳しい情報の一部または全部がなくても実施されうることは当業者にとって明らかであろう。他の例では、本発明が無用に分かりにくくなることのないように、周知のプロセスステップおよび/または構造を詳しく記載していない。
【0015】
以下において、方法と技法を含む様々な実施形態が記載される。本発明は、本発明による実施形態の技法を実施するコンピュータ可読命令が記憶されるコンピュータ可読媒体を含む製品を対象とする場合があることにも留意されたい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読コードを記憶する、たとえば、半導体、磁気、光磁気、光、または他の形態のコンピュータ可読媒体を含んでもよい。さらに、本発明は、本発明の実施形態を実施する装置を対象とする場合もある。このような装置は、本発明の実施形態に関するタスクを実行するために、専用および/またはプログラム可能な回路を含んでもよい。このようは装置の例は、適切にプログラムされた汎用コンピュータおよび/または専用コンピューティングデバイスを含み、本発明の実施形態に関する様々なタスクに適合されたコンピュータ/コンピューティングデバイスおよび専用/プログラム可能な回路の組合せを含んでもよい。
【0016】
本発明の実施形態に従って、ベースラインを動的に設定する方法が提供される。ベースラインは、個人の固有の知識や技能に依存しない科学的手法に基づいて設定されてもよい。また、本発明の実施形態は、プラズマ処理チャンバとハードウェアとの状態をベースラインの生成に組み入れることができる。さらに、ソフト許容レベルとハード許容レベルは、動的に設定されて統計的手法を用いて調整されてもよい。
【0017】
本明細書において、様々な科学的手法および統計的手法が議論されることがある。しかし、本発明は、これらの科学的手法および統計的手法に限定されない。言い換えれば、議論は例として記載されており、本発明は提示される特定の科学的手法および統計的手法によって制限されるものではない。
【0018】
また、本明細書において、様々な実施がプラズマ処理システムを用いて議論されることがある。しかし、本発明は、あるプラズマ処理システムに限定されず、クリーニング処理システムを含んでもよい。言い換えれば、議論は例として記載されており、本発明は提示される例によって制限されるものではない。
【0019】
たとえば、主エッチングステップ中に基板バイアスに関するベースラインが生成されている状況を考えてみよう。先行技術において、ベースラインを設定するプロセスは、人間の介入を必要としてベースラインを設定する個人の知識と技能に従う場合がある。しかし、本発明の実施形態では、もはや個人を必要としたり個人に依存したりすることはない。
【0020】
処理済み基板が受容可能かどうかを判断するために、度量衡システムが採用されてもよい。処理前、処理中、または処理後に基板の品質の受容可能性を判断し、あるいは基板のデータを収集するために、度量衡システムが生産環境において一般的に採用されてもよいことを当業者は承知している。状況に応じて、ユーザは基板の適合性を規定するために制限指針をさらに設けてもよい。度量衡システムは当業者にとって周知であるので、度量衡システムについてはこれ以上触れない。
【0021】
処理済み基板が受容可能と見なされた時点で、処理済み基板の信号データはベースラインの再計算に含められてもよい。ある実施形態において、ベースラインは各処理済み基板を解析することによって設定されてもよい。本発明のある実施形態において、初期のベースラインは推奨される製造時のベースラインに基づいてクリーンなプラズマ処理チャンバ用に設定されてもよい。さらに、ソフト許容レベルとハード許容レベルは、高いパーセンテージに設定されて初期のベースライン設定を明らかにしてもよい。
【0022】
ある例において、基板01が処理された後、基板01の信号データ(たとえば、バイアス電圧、基板温度など)は、基板01を合格品質規格のものであると見なしてよいかどうかを判断するために、推奨される製造時のベースラインに関連する同様のデータと対照して測定されてもよい。基板01が所定の指針に合格する場合、基板は受容可能と見なされてもよく、基板01に関するデータはベースラインを再計算することに動的に含まれてもよい。ある実施形態において、推奨される製造時のベースラインは、ベースラインの再計算において一定のパーセンテージ重みが与えられてもよい。このパーセンテージ重みは、処理済み基板からの真の追加信号データが収集されるにつれて減少してもよい。
【0023】
ベースラインを設定するプロセスは、さらに多くの基板が処理されるように持続しうる。本発明の実施形態において、ベースラインは、各基板が測定され信号データがベースラインの再計算に動的に採用されるにつれて次第に精緻化されうる。合格し、その信号データが信頼性レベルの範囲内にある各基板では、ある実施形態において、信号データがベースラインを再計算することに含まれてもよい。本明細書で論じられるように、信頼性レベルは、典型的にソフト許容レベル内にあるベースラインからの測定距離を指す。ソフト許容レベルおよびハード許容レベルと同様に、信頼性レベルは、最初は、大きい範囲に設定されてもよい。最高信頼性レベルと最低信頼性レベルとの中間に位置する基板が識別されると、変化する処理環境を明らかにする一層正確なベースラインが生成される可能性がある。
【0024】
ベースラインが再計算されると、信頼性レベルは、通常、ベースラインからのパーセンテージとして設定されるので信頼性レベルが再計算されてもよいことに留意されたい。また、ベースラインが変化するとき信頼性レベルを再計算することによって、受容可能な基板の一層正確な識別が実現される可能性がある。ある実施形態において、ベースラインは上昇する傾向がある(たとえば、最高信頼性レベルはベースライン+3%である可能性があり、最低信頼性レベルはベースライン−1%である可能性がある)ので、信頼性レベルは非対称になる可能性がある。しかし、信頼性レベルは対称になる可能性もある(たとえば、最高信頼性レベルはベースライン+3%である可能性があり、最低信頼性レベルはベースライン−3%である可能性がある)。ある実施形態において、信頼性レベルは、収集された信号データから計算される統計値に応じて非対称、対称のいずれかの場合もある。
【0025】
ある実施形態において、ソフト許容レベルとハード許容レベルは収集される信号データに基づいて再計算されてもよい。別の実施形態において、不合格となる各基板では、信号データが現在のハード許容レベルを下回ればハード許容レベルが再計算されてもよい。ある例において、基板01が合格しなければ、新たなハード許容レベルを設定するために信号データが採用されてもよい。ある例において、低品質の基板01が現在のハード許容レベルを下回る5.7Vの信号データを有する場合、ハード許容レベルは5.7Vでリセットされてもよい。
【0026】
ある実施形態において、受容可能な基板の信号データがベースラインの一定のパーセンテージに包含される場合、ハード許容レベルは調整されてもよい。ある例において、ハード許容レベルは受容可能な基板に関する信号データの最高値にリセットされてもよい。別の例において、ハード許容レベルは、新たなハード許容レベルを決定するために統計的に再計算(たとえば、平均値(average)、平均値(mean)、標準偏差など)されてもよい。
【0027】
ある実施形態において、ハード許容レベルの変化はソフト許容レベルにも変化をもたらす可能性がある。ある例において、ソフト許容レベルがハード許容レベル−5%である場合、ハード許容レベルが変化すると、ソフト許容レベルも変化する。より多くの基板が処理されていると、ベースライン、信頼性レベル、ソフト許容レベル、およびハード許容レベルが精緻化されて処理環境の変化が明らかになる可能性がある。
【0028】
ある実施形態において、ベースラインは、スライディングウィンドウに基づいて再計算されてもよい。ある例において、ベースラインに関する計算では、信号データが信頼性レベルの範囲に入る最新の5個の受容可能な基板のみがベースラインを再計算することに含まれてもよい。ある例において、基板01から基板05までの信号データがすべて信頼性レベルの範囲に入る。基板01から基板05までに関する信号データは、ベースラインを再計算することに採用されてもよい。つぎに、基板06も受容可能な基板でかつ信頼性レベルに入る場合、基板06はベースラインの再計算に含まれてもよい。最新の5個の受容可能な基板からの信号データのみが計算に含まれるので、基板02から基板06までのデータのみがここではベースラインの再計算に使用されてもよい。スライディングウィンドウを用いることによって、プラズマ処理チャンバおよび/またはハードウェアの現在の状態に関係するデータは、ベースラインを決定する際に明らかにされる可能性がある。
【0029】
本発明の他の実施形態において、ベースラインは、基板のバッチプロセスに基づいて設定されてもよい。ある例において、基板のバッチは10個の基板を含んでもよい。第1のバッチが処理されると、基板は、どの基板が合格品質のものであるかを判断するための度量衡システムを通過してもよい。基板に関する信号データはプロットされる。信頼性レベルの範囲に入る基板の信号データを採用することによって、基板のバッチに関するベースラインを計算するために、算術平均などの統計的手法が採用されてもよい。ベースラインに基づいて、新たな信頼性レベルの範囲が次の組の基板バッチに関して設定されてもよい。さらに、処理済みの基板に関する信号データが解析されて新たなベースラインおよび信頼性レベルが生成されると、ハード許容レベルとソフト許容レベルとが変わってもよい。
【0030】
本発明は、以下の図と議論を参照すると一層よく理解されるかもしれない。図2Aは、ある実施形態において、基板ごとにベースラインを決定する方法を説明するフローチャートを示す。言い換えれば、受容可能と見なされる基板の信号データは、ベースラインの再計算に含まれてもよい。第1のステップ250において、基板が処理される。次のステップ252において、信号データが処理済み基板から収集される。次のステップ256において、信号データは現在のベースラインに対して比較される。次のステップ258において、信号データが信頼性レベルの範囲内にあれば、信号データはベースラインの再計算に採用されてもよい。次のステップ258において信号データが信頼性レベルの範囲内になければ、信号データはベースラインの再計算に採用されてはならない。
【0031】
図2Bは、ある実施形態において、図2Aのフローチャートに記載された方法を説明するブロック図を示す。ある例において、複数の基板(S201、S202、S203、S204、S205、S206、S207、S208、およびSn)が処理されている。各基板が処理されているとき、多量の信号データが収集されている。
【0032】
各基板が処理された後、基板は度量衡システムを通して測定されてもよい。基板が受容可能と見なされると、処理中に収集された基板に関する信号データは、ベースラインに対して比較されてもよい。さらに、最高および最低の信頼性レベルが設定されてもよい。信頼性レベルは、最初、大きくてもよい。ある実施形態において、ベースラインは上昇する傾向があるので信頼性レベルは非対称であってもよい。言い換えれば、最高の信頼性レベルは、最低の信頼性レベルよりもベースラインのさらに近くに設定されてもよい。ある例において、最高の信頼性レベルはベースラインから3%のところにあってもよいが、最低の信頼性レベルはベースラインからわずか1%のところにあってもよい。別の実施形態において、信頼性レベルは対称であってもよい。ある例において、最高および最低の信頼性レベルはいずれもベースラインから2%離れていてもよい。
【0033】
ある例において、S201に関する基板バイアスは2.04Vである。たとえば、ベースラインが2.00Vに設定されており、最高の信頼性レベルがベースラインの上方3%(すなわち、2.06V)にあり、最低の信頼性レベルがベースライン下方2%(すなわち、1.96V)にある状況を考えてみよう。この例において、S201に関する信号データは信頼性レベル内にある。ある実施形態において、S201に関する信号データは、基板バイアスに関するベースラインの再計算に自動的に含まれてもよい。ある実施形態において、クリーンなプラズマ処理チャンバの場合、推奨される製造時のベースラインは、十分な信号データが収集されるまではベースラインの再計算で一定のパーセンテージ重みが与えられてもよい。
【0034】
受容可能であり、その信号データが信頼性レベル内にある各基板の場合、信号データはベースラインの再計算に自動的に含められてもよい。ある例において、5つの信号データ(たとえば、1.98V、1.99V、2.00V、2.01V、および2.01V)が収集されて2.00Vのベースラインが設定される。2.04Vの新たな信号データは信頼性レベル(たとえば、1.96〜2.06V)以内にあるので、新たな信号データはベースラインの再計算に含められてもよい。信頼性レベルに入る基板の信号データを含めることによって、ベースラインは処理環境の変化に対して調整されているのでより正確である可能性がある。
【0035】
ある実施形態において、ベースラインの再計算はスライディングウィンドウに基づいていてもよい。たとえば、ベースラインは信号データが信頼性レベルに入る最後の5個の基板の算術平均であってもよい状況を考えてみよう。ある例において、S201〜S203とS206〜207は、受容可能と考えられ、信頼性レベル内にある信号データを有する。ただし、S204は受容可能と考えられず、S205は受容可能と考えられるが信号データが信頼性レベルの範囲内にない。ベースラインを再計算する際、その信号データが信頼性レベルの範囲内に入る最後の5個の基板(すなわち、S201〜S203とS206〜207)の信号データは自動的に一斉に平均化される。また、S208が受容可能でありその信号データが信頼性レベルの範囲に入る場合、ベースラインは、ここで、S202〜S203とS206〜S208からの信号データに基づいて自動的に再計算される。
【0036】
ある例において、ベースラインは、現在、2.00Vであり、信頼性レベルの範囲は1.96〜2.06Vであり、ソフト許容レベル範囲は1.96〜2.10Vであり、ハード許容レベル範囲は1.80〜2.20Vである。2.00Vの現在のベースラインを計算するために、S201〜S208からの信号データが解析される。信号データは、S201が1.98V、S202が1.99V、S203が2.00V、S204が2.3V、S205が2.08V、S206が2.01V、S207が2.01Vである。S201〜S203とS206〜S207のみが受容可能であり、さらに、信頼性レベルの範囲に入るので、受容可能な基板に関する信号データはベースラインの計算に採用されてもよい。次の基板S208が測定されて受容可能と見なされ信頼性レベルの範囲内にあると、S208からの信号データはやはりベースラインの再計算に使用されてもよい。ベースラインは信頼性レベルの範囲に入る最新の5個の受容可能な基板のスライディングウィンドウ平均に基づいて計算されるので、S201からの信号データはもはやベースラインの再計算に採用される可能性はなく、S202〜S203とS206〜S208のみがベースラインの再計算に採用される可能性がある。したがって、ベースラインは再計算されてもよく、2.00V〜2.01Vで変わってもよい(他の統計的手法も可能であるので、平均化手法が採用されるものとして)。プラズマ処理チャンバおよび/またはハードウェアの状態が変化するとベースラインは時間とともに変わる傾向があるので、スライディングウィンドウ法ではハードウェアの制限をベースラインの再計算に自動的に含めることができる。
【0037】
図3Aは、ある実施形態において、基板ベースのバッチに基づいてベースラインを決定する方法を説明するフローチャートを示す。言い換えれば、ベースラインは基板の複数のバッチに基づいている。ベースラインを設定するプロセスは、基板の複数のバッチを解析することを含んでもよい。第1のステップ350において、基板のバッチが処理される。次のステップ352において、1組の信号データが基板の処理済みのバッチから収集される。次のステップ356において、1組の信号データからの各信号データが現在のベースラインに対して比較される。次のステップ358において、信号データが信頼性レベルの範囲内にあれば、信号データは統計的計算を実施することに採用されてもよい。1組の信号データのすべての信号データが解析されて統計的計算が実行されると、次のステップ360において、統計的計算がベースラインの再計算に採用されてもよい。次のステップ360において、信号データが信頼性レベルの範囲内になければ信号データはベースラインの再計算に採用されない可能性がある。
【0038】
図3Bは、ある実施形態において、図3Aのフローチャートに記載された方法を説明するブロック図を示す。たとえば、基板の複数のバッチ(S302、S304、S306、S308、S310、S312、S314、およびSx)が処理されている状況を考えてみよう。この例において、基板はバッチの各々が10個の基板を含んでもよい。基板の第1のバッチ302が処理された後、このバッチ内の基板の各々が測定されてもよい。受容可能と考えられる基板は解析される。その信号データが信頼性レベルに入るバッチの中の基板では、これらの基板に関する信号データは、図4に示されるように、ベースラインの再計算に含められてもよい。ある例において、S1〜S9は受容可能であるが、S1〜S4とS8のみはさらに信頼性レベルに入る。これらの基板に関する信号データは、たとえば、新たなベースラインを決定するために平均化されてもよい。
【0039】
基板のバッチ302の処理、測定、および解析が行われた後、基板の次のバッチS304の処理、測定、および解析が行われてもよい。さらに、受容可能でその信号データが信頼性レベルに入る基板はベースラインの再計算に含められてもよい。ある実施形態において、新たなベースラインは、図5に示されるように、最終ベースラインの次の点として含められてもよい。別の実施形態において、基板のバッチの各々に関する計算されたベースラインは、たとえば、新たなベースラインを再計算するために平均化されてもよい。
【0040】
別の実施形態において、ハードウェアの制限を明らかにするためにスライディングウィンドウ法が採用されてもよい。ある例において、基板の最後5つのバッチの平均値はベースラインの再計算に含められてもよい。さらに、含められてもよい基板のバッチ数は、過去の傾向、顧客の要望、またはその他の基準に基づいて規定されてもよい。スライディングウィンドウ法では、プラズマ処理チャンバおよび/またはハードウェアの状態をベースラインの再計算において明らかにすることができる。
【0041】
ある実施形態において、信頼性レベルに関する値、ソフト許容レベル、およびハード許容レベルは変わってもよい。前述のように、初期値は高い数値に設定されてもよい。しかし、より多くの基板が処理されて、より多くの信号データが収集されていくと、信頼性レベル、ソフト許容レベル、およびハード許容レベルが基板の信号データに基づいて統計的に精緻化される可能性がある。
【0042】
図6は、ある実施形態において、受容可能な基板に対して収集される信号データの簡単なグラフを示す。たとえば、ベースライン602が3Vに設定され、最高信頼性レベル604が+3%(すなわち、3.09V)に設定され、最低信頼性レベル606が−2%(すなわち、2.94V)に設定され、最高ソフト許容レベル608が+10%(すなわち、3.30V)に設定され、最低ソフト許容レベル610が−10%(すなわち、2.70V)に設定され、最高ハード許容レベル612が+15%(すなわち、3.45V)に設定され、最低ハード許容レベル614が−15%(すなわち、2.55V)に設定される状況を考えてみよう。
【0043】
ある実施形態において、信頼性レベルは、ベースラインに基づいて再計算されてもよい。ある例において、ベースラインが3Vから3.5Vに移動すると、信頼性レベルが再計算されてもよい。新たな最高信頼性レベルは3.5V+3%であってもよく、最低信頼性レベルは3.5V−2%であってもよい。
【0044】
ある実施形態において、信頼性レベルの計算に使用される値は、収集された信号データに基づいて統計的に決定されてもよい(たとえば、標準偏差)。区分620は、最高信頼性レベルと最低信頼性レベルの間の領域を示す。ある例において、新たなベースラインが計算されると、新たなベースラインからの標準偏差は区分620内の信号データの各々に対して計算されてもよい。2つの平均値は、新たな最高信頼性レベルと最低信頼性レベルとを設定するために新たなベースラインの上方と下方の標準偏差に基づいて計算されてもよい。これは信頼性レベルが再計算される方法の簡単な例にすぎないことに留意されたい。新たな信頼性レベルを得るために他のさらに精緻な方法が採用されてもよい。
【0045】
また、ハード許容レベルが精緻化されてもよい。ある実施形態において、受容可能でない基板の信号データがハード許容レベルの範囲に入る場合はハード許容レベルがリセットされてもよい。ある例において、処理済みの基板が受容可能と考えられず、その3.4Vの信号データが高い許容レベル内にある場合は、最高のハード許容レベルが3.4Vにリセットされてもよい。
【0046】
別の実施形態において、受容可能な基板に関する信号データの集合がベースラインの一定のパーセンテージに入る場合は、ハード許容レベルがリセットされてもよい。グラフに示されるように、信号データのほとんどは、ハード許容レベルの範囲(612と614)の区分630内に散在している。ある実施形態において、ハード許容レベルは、受容可能な基板に関する信号データの最高値にリセットされてもよい。別の実施形態において、ハード許容レベルは、新たなハード許容レベルを決定するために、統計的に再計算されてもよい(すなわち、平均値(average)、平均値(mean)、標準偏差など)。
【0047】
ハード許容レベルが再計算されると、ソフト許容レベルが再計算されてもよい。ある実施形態において、ソフト許容レベルは、ハード許容レベルからのパーセンテージ差(たとえば、ハード許容レベル±5%)であってもよい。別の実施形態において、ソフト許容レベルは収集された信号データに基づいて統計的に決定されてもよい。ある例において、ソフト許容レベルは、ハード許容レベルからの一定の標準偏差であってもよい。
【0048】
図2A、2B、3A、3B、4〜6は、ベースライン、信頼性レベル、ソフト許容レベル、およびハード許容レベルが動的に計算される方法の簡単な例であるが、さらに精緻化された統計的手法および科学的手法が採用されてもよい。数多くの基板が予め設定されたベースラインを決定するために不必要に犠牲にされているわけではない。それよりむしろ、基板が処理されているときにベースラインを動的に調整することによって、チャンバとハードウェアの変化している状態を正確に反映しているベースライン、信頼性レベル、ソフト許容レベル、およびハード許容レベルに基づいて障害が検出されている。
【0049】
前述から分かるように、本発明の実施形態では、ベースラインを動的に設定して調整することができ、ハードウェアの制約をベースラインの計算に統合することができる。ベースラインの計算に人間が介入する必要性を排除することによって、ベースラインの計算は、個人の技能セットおよび/または知識に制限されることなくプラットフォーム間で容易に実行される可能性がある。さらに、人間の介入を排除することによって、不正確なベースラインの一因となりうる人為的ミスの可能性が実質的に低減される。したがって、本発明の実施形態は、より正確なベースラインを提供して、無駄と欠陥デバイスの可能性を低減するものである。
【0050】
本発明は複数の実施形態について説明されているが、本発明の範囲に入る代替、置換、および等効物がある。また、本明細書には、便宜上、表題、概要、および要約が記載されており、これらは本明細書の特許請求の範囲を理解するために利用されるべきではない。さらに、本出願において、集合「n」は集合内における1つまたは複数の「n」を指す。また、本発明の方法と装置の実施には多くの代替方法があることにも留意されたい。したがって、以下に添付される特許請求の範囲は、本発明の趣旨と範囲に包含されるそのようなすべての代替、置換、および等効物を含むものと解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理システムにおいて、ベースラインを動的に設定する方法であって、
第1の基板を処理することと、
前記第1の基板に関する第1の信号データを収集することと、
前記第1の信号データを前記ベースラインに対して比較することと、
前記第1の信号データが信頼性レベルの範囲内にある場合に前記第1の信号データを前記ベースラインの再計算に含めることと、前記信頼性レベルの範囲は前記ベースラインの上方にある最高レベルと前記ベースラインの下方にある最低レベルとの間にあることと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記信頼性レベルの範囲は非対称であり、前記最高信頼性レベルは前記最低信頼性レベルよりも前記ベースラインから遠く離れた距離にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の基板を処理することと、
前記第2の基板に関する第2の信号データを収集することと、
前記第2の信号データを前記ベースラインに対して比較することと、
前記第2の信号データが前記信頼性レベルの範囲内にある場合に前記第2の信号データを前記ベースラインの前記再計算に含めることと、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベースラインの前記再計算は統計的計算に基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ベースラインの前記再計算はスライディングウィンドウ法に基づいており、前記スライディングウィンドウ法は1組の基板に属する信号データの群に関して前記統計的計算を実行することを含み、前記1組の基板は基板が処理されているときに変化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プラズマ処理システムにおいて、ベースラインを動的に設定する方法であって、
基板の第1のバッチを処理することであって、基板の前記第1のバッチは少なくとも1個の基板を含むことと、
基板の前記第1のバッチに関する第1の組の信号データを収集することと、
前記第1の組の信号データの各信号データを前記ベースラインに対して比較することと、
前記各信号データが信頼性レベルの範囲内にある場合に前記第1の組の信号データの前記各信号データを第1の統計的計算に含めることであって、前記信頼性レベルの範囲は前記ベースラインの上方にある最高レベルと前記ベースラインの下方にある最低レベルとの間にあることと、
前記第1の統計的計算に基づいて前記ベースラインを用いて再計算することと、
を備える、方法。
【請求項7】
前記信頼性レベルの範囲は非対称であって、前記最高信頼性レベルは前記最低信頼性レベルよりも前記ベースラインから遠く離れた距離にある、請求項6に記載に方法。
【請求項8】
基板の第2のバッチを処理することであって、基板の前記第2のバッチは少なくとも1個の基板を含む、処理することと、
基板の前記第2のバッチに関する第2の組の信号データを収集することと、
前記第2の組の信号データの各信号データを前記ベースラインに対して比較することと、
前記信号データが前記信頼性レベルの範囲内にある場合に前記第2の組の信号データの前記各信号データを第2の統計的計算に含めることと、
前記ベースラインを前記第2の統計的計算に基づいて再計算することと、
をさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ベースラインは統計的手法を用いて再計算される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ベースラインはスライディングウィンドウ法に基づいて再計算され、前記スライディングウィンドウ法は1組の基板に属する信号データの群に関して前記統計的計算を実行することを含み、前記1組の基板は基板が処理されているときに変化する、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−65901(P2013−65901A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−2001(P2013−2001)
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2009−530518(P2009−530518)の分割
【原出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(504401617)ラム リサーチ コーポレーション (87)
【Fターム(参考)】