説明

自動原稿搬送装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】装置を大型化することなく、簡易且つ安価な構成で、原稿画像を読み込む際の色ズレを軽減することが可能な自動原稿搬送装置を提供する。
【解決手段】画像読取ライン位置に対して、原稿搬送方向上流側及び下流側に設けられる上流側搬送ローラ対及び下流側搬送ローラ対を有する自動原稿搬送装置において、上流側ローラ対のローラ軸上にそれぞれ設けられ、隣接する上流側駆動ローラ及び上流側従動ローラよりも大きな径を有し且つ硬度の低い弾性部材で構成される上流側補助ローラからなる上流側補助ローラ対と、下流側ローラ対のローラ軸上にそれぞれ設けられ、隣接する下流側駆動ローラ及び下流側従動ローラよりも大きな径を有し且つ硬度の低い弾性部材で構成される下流側補助ローラからなる下流側補助ローラ対と、をさらに備えて成ることを特徴とする自動原稿搬送装置で解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの少なくとも2つの機能を有する複合機などの画像形成装置に用いられる自動原稿搬送装置に関し、さらには、当該自動原稿搬送装置が搭載される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙文書などの原稿の画像情報を、スキャナ等の画像読取部で読み込ませて電子データ化し、文字データあるいは画像データとして画像形成に利用する所謂OCR(Optical Character Recognition)技術や、紙文書などの原稿を記録紙などの記録媒体に複写する所謂コピー技術などにおいては、複数枚セットされた原稿束から自動で順次1枚毎に原稿を抽出・分離して画像読取部に搬送乃至給送しつつ、形成されるべき原稿画像の画像情報を当該画像読取部で読取らせるための自動原稿搬送装置が利用される場合が多々ある。また、この種の自動原稿搬送装置を画像形成装置と組み合わせた構成もよく知られている。このような自動原稿搬送装置において、一般に、画像読取部における原稿読取ライン位置から原稿搬送方向で見た搬送方向上流側には、画像読取部へ当該原稿を搬送するためのローラ対が設けられ、搬送方向下流側には、当該画像読取部に搬送された原稿を画像読取部から排出するためのローラ対が設けられている。
【0003】
このようなローラ対を備えた自動原稿搬送装置で、画像情報を読取られるべき原稿を読取る際には、それぞれのローラ対に原稿が突入又は抜ける際に原稿に搬送負荷がかかることで原稿搬送速度が乱されることがあり、この原稿搬送速度の変化が原稿読取ライン位置でも同様に発生するため、読取られるべき画像情報がズレてしまう結果、記録紙などの記録媒体に形成される画像に、色ズレなどを生じさせてしまうことがあることが知られている。
【0004】
なお、この色ズレとは、RGB画像読取ライン(スキャンライン)が原稿搬送方向に対して同位置に配置されていない画像読取部を備えた画像読取部乃至画像読取装置において、当該RGB画像読取ライン上で原稿搬送速度に速度ムラが発生した際に起こる現象である。そして、この速度ムラは搬送されている原稿に急激な負荷変動が発生した際に、原稿又は搬送ローラ対などの搬送部材を変形させてしまうことにより発生することがわかっている。このような、原稿又は搬送部材の負荷変動を発生させる代表的な個所としては、原稿先端が画像読取ラインから見た下流側の最も近傍の搬送ローラ対に突入するときと、原稿後端が画像読取ライン上流側の最も近傍の搬送ローラ対から抜けるときなどが挙げられる。そこで、従来からこの種の色ズレを改良するための対策が種々考え出されており、この対策としては、以下に示されるようなものがある。
【0005】
まず、ローラ対に用いられるローラのローラ径を大きくすることで、読取原稿がローラ対に突入及び抜ける際の原稿に与えるショックを極力少なくするという対策がある。しかしながら、このようにローラ径を大きくしてしまうと、自動原稿搬送装置の小型化、ひいては、画像形成装置の小型化に対応することができず、昨今ユーザーから頻繁に求められている装置小型化の要求に対応することが困難になってしまう。
【0006】
次に、原稿が画像読取部に突入する直前直後の搬送経路隙間を小さくする対策がある。しかしながら、このような対策では、熱変形や組み立て誤差を含めた搬送経路を塞がない限度ある搬送隙間を設計しようとすると限界があり、また、マイラー等の弾性材料で搬送経路隙間をなくす方法では、このマイラー自体が原稿突入の負荷となってしまうという問題がある。
【0007】
さらには、原稿搬送経路を極力直線状に構成し、その上で、画像読取ラインから見た、読取ライン前後の搬送ローラ対を当該読取ラインの近傍に配置するという対策もある。しかしながら、この対策では、自動原稿搬送装置の機体構成に大きく関わるため、設計上採用できないというような問題もあり、また、読取装置側にローラ対が食い込むような形になってしまうという問題もある。さらにまた、読取ライン上に配置される読取白板をベルトやローラにするという対策もあるが、このよう構成は、複雑であり、高価であるという問題がある。
【0008】
ここで、特許文献1では、所定の読取速度を規定する外径の外周部の少なくとも一側方に低剛性且つ当該外径より大きい径からなる膨径部を有する原稿排出ローラと、当該原稿排出ローラの外周部に対接し、当該原稿排出ローラに連れ回る従動ローラと、を備えた画像読取装置が開示されている。しかしながら、特許文献1で開示される発明が解決している課題は、排出される原稿乃至用紙が排紙トレーへのスタック途中て腰おれしたり、あるいは、丸まったりすることを防止することであることに起因して、原稿排出ローラの外周部と、当該外周部に対接して、原稿排出ローラの回転と連れ回る従動ローラとで構成されるニップ位置と、低剛性且つ当該外周部の外径より大きい径からなる膨径部が原稿との間に構成するニップ位置との間に、ズレが生じているため、ローラ対への原稿突入及び抜ける際の原稿搬送速度の乱れを抑えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、上記問題点に鑑み、装置を大型化することなく、簡易且つ安価な構成で、原稿画像を読み込む際の色ズレを軽減することが可能な自動原稿搬送装置を提供することを目的とし、さらには、この自動原稿搬送装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、
画像読取部の画像読取ライン位置に対して、画像を読取られるべき原稿の原稿搬送方向上流側に設けられる上流側搬送ローラ対であって、上流側駆動ローラと上流側従動ローラとで構成される上流側搬送ローラ対と、
前記画像読取部の画像読取ライン位置に対して、画像を読取られるべき原稿の原稿搬送方向下流側に設けられる下流側搬送ローラ対であって、下流側駆動ローラと下流側従動ローラとで構成される下流側搬送ローラ対と、
を有する自動原稿搬送装置において、
前記上流側駆動ローラ及び前記上流側従動ローラのローラ軸上にそれぞれ設けられる上流側補助ローラで構成される上流側補助ローラ対であって、当該上流側補助ローラが、それぞれ、隣接する前記上流側駆動ローラ及び前記上流側従動ローラよりも大きな径を有し且つ硬度の低い弾性部材で構成される上流側補助ローラ対と、
前記下流側駆動ローラ及び前記下流側従動ローラのローラ軸上にそれぞれ設けられる下流側補助ローラで構成される下流側補助ローラ対であって、当該下流側補助ローラが、それぞれ、隣接する前記下流側駆動ローラ及び前記下流側従動ローラよりも大きな径を有し且つ硬度の低い弾性部材で構成される下流側補助ローラ対と、
をさらに備えて成ることを特徴とする自動原稿搬送装置を提案する。
【0011】
また、本発明において、前記上流側補助ローラ対及び前記下流側補助ローラ対がそれぞれ形成する上流側補助ローラニップ位置及び下流側補助ローラニップ位置が、それぞれ、前記上流側搬送ローラ対及び前記下流側搬送ローラ対が形成する上流側搬送ローラニップ位置及び下流側搬送ローラニップ位置と同一位置に形成されると好適である。
【0012】
さらにまた、本発明において、前記上流側駆動ローラ及び前記下流側駆動ローラとそれぞれ同軸上に配置される上流側補助ローラ及び下流側補助ローラが、前記上流側駆動ローラ及び前記下流側駆動ローラと連動して駆動されるように構成されていると好適である。
【0013】
さらにまた、本発明において、前記下流側従動ローラが、硬度70度以上の材質から構成されていること好適である。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動原稿搬送装置を備えて成る、画像形成装置を提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上流側搬送ローラ対及び下流側搬送ローラ対を構成するそれぞれのローラ軸上に、隣り合う搬送ローラ径より大きく且つ硬度の低い補助ローラからなる上流側補助ローラ対及び下流側補助ローラ対を用いることによって、原稿が搬送ローラ対に突入する際及び抜け出る際の当該搬送ローラ対による原稿搬送負荷変動を滑らかにできるようになるので、装置を大型化することなく、簡易且つ安価な構成で、原稿画像を読み込む際の色ズレを軽減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる自動原稿搬送装置の一例を概略で示す断面図である。
【図2】搬送ローラ対の従動ローラが剛体である場合に、当該搬送ローラ対に原稿が突入する際に当該原稿に搬送負荷変動がおこる状態を説明するための説明図である。
【図3】搬送ローラ対の従動ローラが弾性体である場合に、当該搬送ローラ対に原稿が突入する際に当該原稿に搬送負荷変動がおこる状態を説明するための説明図である。
【図4】上流側搬送ローラ対及び下流側搬送ローラ対の両方のローラ対で搬送されている原稿が上流側搬送ローラ対を抜ける際に、当該原稿に搬送負荷変動がおこる状態を説明するための説明図であり、図4a)では、上流側搬送ローラ対の線速が下流側搬送ローラ対の線速よりも大きい場合を示し、図4b)では、上流側搬送ローラの線速が下流側搬送ローラ対の線速よりも小さい場合を示す。
【図5】本発明にかかる搬送ローラ対の斜視図であり、補助ローラが搬送ローラ対のそれぞれのローラ軸に設けられている搬送ローラ対の斜視図である。
【図6】補助ローラが駆動側、従動側の両方に対向配置されている場合と、これらのいずれか片側のみに配置されている場合との差異ついて説明するための説明図であり、図6(a)は、駆動側、従動側の両方に対向配置されている場合を示し、図6(b)は、従動側にのみ配置されている場合を示す。
【図7】従動ローラ側にのみ弾性体の補助ローラを配置した場合に、補助ローラを構成する弾性体を低硬度スポンジ、中硬度スポンジ及び高硬度スポンジにて振り分けた色ズレ量の割合を、補助ローラがない従来の自動原稿搬送装置での色ズレ量を基準として示したグラフである。
【図8】駆動側補助ローラが自律駆動されている場合と、されていない場合とにおける色ズレ量の差を示したグラフであり、図8(a)は補助駆動ローラを自律駆動させた場合を示し、図8(b)は補助駆動ローラを自律駆動させずに、駆動ローラ軸上を空転するように構成した場合を示す。
【図9】下流側従動ローラに軟質ゴム(硬度30度)を用いた場合と、下流側従動ローラにPOM材質を用いた場合の色ズレ量の実験結果を示したグラフであり、図9(a)が軟質ゴムの場合であり、図9(b)がPOM材質の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
まず、最初に、本願発明の自動原稿搬送装置の一例を概略的に示した断面図である図1、を用いて、自動原稿搬送装置の基本的な構成、動作、及び、作用等を説明する。なお、当業者には明らかであろうが、この自動原稿搬送装置は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの少なくとも2つの機能を有する複合機といった画像形成装置に搭載することが可能に構成されている。
【0018】
図1において、参照符号1は自動原稿搬送装置であり、スキャナー等の画像読取部乃至画像読取装置2の上部に開閉可能に取り付けられている。画像読取部2は、その上面にスリットガラス3(読取位置)が設けられた当業者には通常公知の画像読取部2であり、画像を読取られるべき原稿がスリットガラス3の下部に設けられた画像読取ライン位置上を通過することで、原稿の画像情報を読み取ることができるようになっている。また、ここに図示される自動原稿搬送装置1は、図示しない操作部からの指示によって原稿の片面のみを読み取る片面モードと、原稿の両面を読み取る両面モードをユーザーが任意にあるいは自動で選択できるように構成されており、その選択されたモードにより自動原稿搬送装置1の動作が制御される。なお、ここに図示した例では、片面モードに加え、両面モードも可能な構成を示したが、本発明は、これに限定されることなく片面モードのみが可能な自動原稿搬送装置であっても適用が可能である。
【0019】
この自動原稿搬送装置1において、原稿6は原稿積置台5に表面の画像面を上にしてページ順にセットされる。この際、ピックアップローラ7が通常は原稿積置台5と所定間隔をあけて待機しており、原稿積置台5に原稿がセットされたことを原稿セット検知センサ8により検知し、且つ、図示しない操作部で読取開始が指示された場合に、待機位置から下降して原稿6の上面と接触する位置に移動するように構成・制御されている。また、原稿積置台5には原稿シャッタ29が設けられており、原稿シャッタ29はピックアップローラ7の上昇時(待機時)はその回動が規制され、ピックアップローラ7の下降時(読取開始時)は規制が解除されて図中矢印方向に回動可能となるような機構になっている。したがって、ユーザーは原稿を原稿シャッタ29に突き当てるようにセットし、原稿を揃えて載置させることができる。なお、原稿シャッタ29は原稿セット検知フィラーなどの原稿セット検知センサ8と原稿幅方向(図1では、紙面に対して垂直方向)にずらして配置されている。
【0020】
ピックアップローラ7によって原稿積置台5から送り出される原稿は、当該原稿を最上位のものから順次一枚づつ分離させるためのフィードローラ9とリバースローラ10とから成る原稿分離部に搬送される。リバースローラ10のかわりに分離パッドを用いてもよい。ここで、図1における搬送経路(イ)はガイド11、11aの間に形成され、原稿分離部におけるフィードローラ9とリバースローラ10とにより一枚に分離された原稿をスリットガラス3上まで搬送させるための原稿搬送経路である。また、搬送経路(ロ)はガイド12、12aの間に形成され、スリットガラス3上で画像を読取られた後の原稿を原稿排紙口13へ搬送・移動させるための原稿搬送経路であり、また、参照符号14は原稿排紙口13から排紙された原稿をスタックするための排紙トレイである。さらに、スイッチバック搬送経路(ハ)が図1に図示される自動原稿搬送装置1には設けられており、当該スイッチバック搬送経路(ハ)は、原稿積置台5の下部で、且つ、排紙トレイ14の上方に設けられたガイド16及び分岐爪17とガイド16aとの間に形成され、排紙口13を介して搬送される原稿をスイッチバックさせて、原稿後端から再び搬送経路(イ)に導くために設けられる。なお、分岐爪17は、原稿トレイ14の上方に設けられていて、図1から見て取れるように点線位置に切り替わることにより、排紙口13を介して搬送される原稿をスイッチバック搬送経路(ハ)へ導き、当該原稿がスイッチバック搬送経路(ハ)内に導入されると、実線位置に切り替わることで、スイッチバック搬送経路(ハ)でスイッチバックされた原稿を後端から、搬送経路(ニ)に導く。この搬送経路(ニ)は、ガイド18、18aの間に形成され、スイッチバックされた原稿を再び読取位置であるスリットガラス3上へ搬送するために、先に記述した搬送経路(イ)と合流している原稿搬送経路である。
【0021】
さらにまた、単独で正転と逆転とを切り替えるための手段を有する反転ローラ対26、26aが設けられ、当該反転ローラ対26、26aが正転することで、原稿排紙口13から搬送されてくる原稿をスイッチバック搬送経路(ハ)内に導入・搬送し、その後、既述のように分岐爪17が切り替わった後に、この反転ローラ対26、26aが逆転することで、搬送経路(ニ)に原稿が搬送される。なお、参照符号28は、スリットガラス3の下部に設けられた画像読取ライン位置に対して、原稿の搬送方向上流側に設けられる上流側搬送ローラ対20、20aと、画像読取部の画像読取ライン位置に対して、原稿の原稿搬送方向下流側に設けられる下流側搬送ローラ対23、24との間に配置された通常公知の(検知)センサであり、当該センサ28を用いて、上流側搬送ローラ対20、20aの回転駆動により搬送されてくる原稿の先端を検知することで、画像読込ライン位置で画像を読み取るための読取開始のタイミングを得ることができるようになっている。なお、当該センサ28は、原稿の後端も検知することができ、この後端検知信号に合わせて原稿画像の読取を終了させることができるようになっている。
【0022】
次に、このような構成の自動原稿搬送装置1での動作を説明するが、最初に、原稿の片面のみの画像情報を読み取る片面モードについて説明する。原稿台5に原稿がセットされると、原稿セット検知フィラーなどの原稿セット検知センサ8が原稿により回動し、当該原稿セット検知センサのON/OFF信号が切り替えられる。片面モードが設定された状態で、図示しない操作部に設けられたスタートキーが押下されるなどして読取開始が指示されると、前述した原稿セット検知センサのON/OFF信号により原稿積置台5上に原稿がセットされているか否かがチェックされ、原稿がセットされている状態が認識されると、図示しないモータが正回転を開始することによって、ピックアップローラ7が下降して原稿を押圧するとともに、ピックアップローラ7が図中時計方向に回転して、フィードローラ9とリバースローラ10とで構成される原稿分離部に原稿を送りだす。ピックアップローラ7により送りだされた原稿は、原稿分離部にて順次一枚づつに分離され、搬送経路(イ)に搬送される。次いで、搬送経路(イ)を搬送されてきた原稿6の先端がセンサ28に検知されると、読取開始タイミングがとられ、スリットガラス3上で、原稿の先端にあわせた読取が開始される。また、センサ28により原稿の後端が検知されると、読取終了のタイミングがとられ、原稿の後端にあわせて読取を終了するようになっている。片面モードの時は、分岐爪17が常に図中実線位置あるため、画像読取後の原稿6は、原稿排紙口13から排紙トレイ14に排紙されて、表面の画像面を下に積載されていく。なお、図示しないモータは常に駆動されているが、搬送経路(イ)に配置されている搬送ローラ対19の線速を、フィードローラ9の線速に対して速く設定することで、紙間を形成することができるようになっている。すべての原稿の読取が終了すると、モータが逆転しピックアップローラ7を上昇させて待機位置に移動させ、所定の待機位置までピックアップローラ7が上昇した後にモータが停止することで、片面モードの画像読取が終了する。
【0023】
次に、原稿の両面を読み取る両面モードの動作について説明する。両面モードが設定された状態でも、図示しない操作部に設けられたスタートキーが押下されるなどして読取開始が指示されたときに、原稿セット検知センサ8のON/OFF信号により原稿積置台5上に原稿がセットされているか否かがチェックされ、原稿セットが認識されると、図示しないモータが正回転し、ピックアップローラ7が下降し原稿を押圧するとともにピックアップローラ7が図中時計方向に回転して、原稿を原稿分離部に送りだし、次に、ピックアップローラ7により送りだされた原稿が、フィードローラ9とリバースローラ10にて順次一枚づつ分離されて、搬送経路(イ)に搬送されるのは、片面モードの時と同様である。次いで、両面モードでは、原稿6の先端がセンサ28によって検知されると、読取開始タイミングがとられ、原稿の先端にあわせて読取が開始されるが、このセンサ28で先端が検知された際に、分岐爪17を図中点線位置に移動(回動)させ、さらに、反転ローラ対26、26aを正転方向(図中時計回り方向)に回転させる。さらに、原稿6の先端をセンサ28にて検知した際には、フィードローラ9及びピックアップローラ7の駆動を図示しないクラッチなどを用いて解除し、次原稿を原稿分離部へ給紙せずに待機させておくように制御する。
【0024】
次いで、センサ28により原稿の後端が検知されると、読取終了のタイミングがとられ、原稿の後端にあわせて読取が終了されるが、両面モードでは、その後、分岐爪17を図中点線位置に移動させていることに起因して、原稿は排紙口13を介してスイッチバック搬送経路(ハ)に搬送される。そして、センサ28から所定時間Tが経過した後(原稿後端が排紙口13を完全に抜けるだけの時間Tを経過した後)に、分岐爪17を図中実線位置に切り替えるとともに、反転ローラ対26、26aの回転方向を逆転方向(図中反時計回り方向)に変更して、原稿を搬送経路(ニ)へ導くことになる。搬送経路(ニ)に導入された原稿は、再度搬送経路(イ)へ送り込まれ、そして、原稿の先端がセンサ28に検知されると、表面の画像読取時と同様に、原稿6の裏面の画像読取動作が行われる。なお、この裏面の画像読取動作を行う際の原稿の先端をセンサ28が検出すると、再び分岐爪17を図中点線位置に移動させて、裏面画像読取後の原稿を再度スイッチバック搬送経路(ハ)に搬送すると共に、反転ローラ対26、26aを正転方向に回転させる。そして、上記のようにセンサ28から所定時間Tが経過した後に反転ローラ対26、26aの回転方向を逆転方向に変更する。このように、裏面の読取動作が終了した原稿は、再び搬送経路(ハ)及び(ニ)を介して再度スイッチバックされて搬送経路(イ)へ送り込まれるが、このときには読取動作を行わない。また、センサ28により原稿の先端が検知されても、分岐爪17を図中実線位置にあるようにすることで原稿を排紙トレイ14に排紙させるようにしている。このように原稿を搬送することで、片面モードと同じように表面が下を向いた状態で、両面画像読取後の原稿を排紙トレイ14にスタックできるようになる。なお、未だ読み取られるべき原稿が存在するとき、すなわち、原稿セット検知センサ8が原稿を検知しているときには、先の読取原稿の後端がセンサ28を3回通過したことを当該センサ28によって検知した時点で、次原稿の給紙動作が上記したように行われる。以下、原稿セット検知センサ8が原稿を検知しなくなるまで、上述の動作を繰り返し行うことにより、原稿積置台5の原稿についての両面画像読取処理が終了する。
【0025】
このような構成の自動原稿搬送装置1において、画像読取ライン位置での原稿読取画像に色ズレが発生してしまうことについて、図2〜4に基づいて説明する。図2は、画像読取ライン位置に対して、画像を読取られるべき原稿の原稿搬送方向上流側に設けられる上流側搬送ローラ対、又は、画像読取ライン位置に対して、画像を読取られるべき原稿の原稿搬送方向下流側に設けられる下流側搬送ローラ対(図1に示した例では、それぞれ、上流側搬送ローラ対20、20a、及び、下流側搬送ローラ対23、24に対応する)の従動側ローラが剛体である場合(ニップなしの場合)に、当該搬送ローラ対に原稿が突入する際に当該原稿に搬送負荷変動がおこる状態を説明するための説明図であり、図3は、これら搬送ローラ対の従動側ローラが弾性体である場合(ニップ有りの場合)に、当該搬送ローラ対に原稿が突入する際に当該原稿に搬送負荷変動がおこる状態を説明するための説明図である。また、図4は、上流側搬送ローラ対及び下流側搬送ローラ対の両方のローラ対で搬送されている原稿が、上流側搬送ローラ対を抜ける際に当該原稿に搬送負荷変動がおこる状態を説明するための説明図であり、図4a)では、上流側搬送ローラ対の線速が下流側搬送ローラ対の線速よりも大きい場合を示し、図4b)では、上流側搬送ローラの線速が下流側搬送ローラ対の線速よりも小さい場合を示している。
【0026】
まず、図2に示すように、搬送ローラ対の従動ローラが剛体である場合を説明する。なお、図2〜4に図示する搬送ローラ対では、便宜上、図中上側の搬送ローラを、図示しない駆動源からの駆動力を受けて回転駆動する駆動側(駆動ローラ側)とし、図中下側の搬送ローラを、この駆動ローラの回転に合わせて従動回転する従動側(従動ローラ側)とする。図2に示される例において、まず、原稿がこの搬送ローラ対に突入する直前まで(図2における左方)は、搬送ローラ対は、上側の駆動ローラの回転駆動を受けて下側の従動ローラが従動回転されている。その後、原稿がこの搬送ローラ対に突入すると、下側の従動ローラが原稿の厚みだけ下側に変位するように構成されているが、この場合、従動ローラの変位量に応じた運動エネルギーによって、搬送されてきた原稿には負荷がかかるのと同時に、従動ローラが直ちに駆動ローラから分離されてしまうことにより、駆動力を持たない従動ローラ自身が原稿搬送に対する負荷になってしまう結果、搬送されている原稿に搬送負荷変動が生じて速度ムラが発生し、読取画像に色ズレが発生してしまう。
【0027】
そこで、この原稿搬送負荷を低減するためには、従動ローラを図3に示すように弾性部材乃至弾性体で構成することが考えらる。従動搬送ローラを弾性体で構成しておけば、図3の右方に示されるように、原稿が搬送されてきて、駆動ローラと従動ローラとで形成されるニップ部に突入した際に、従動ローラ自身が変形することによって、従動ローラの下側への変位量が小さくなる結果、従動ローラの変位量に応じた運動エネルギーも小さくなり、また、当該変形によって運動エネルギーを吸収することもできるので、搬送されてきた原稿に対する搬送負荷変動もその分だけ軽減することができる。また、従動ローラが弾性体で構成されていることにより、原稿がニップ部に突入したとしても直ちに駆動ローラからの駆動力が完全に分離されないので、従動ローラ自身が負荷となることも軽減される。したがって、従動ローラを弾性体で構成すれば、剛体で構成されている場合と比較して、原稿への搬送負荷変動による読取画像の色ズレを軽減することができる。
【0028】
しかしながら、このように上流側搬送ローラ対と下流側搬送ローラ対とにおけるそれぞれの上流側従動ローラ及び下流側従動ローラを弾性体で構成したとしても、原稿が抜ける場合の原稿搬送負荷低減に関しては限界があり十分ではない。これを、図4を用いて説明する。例えば、図4a)に示されるように、上流側搬送ローラ対の線速を下流側搬送ローラ対の線速よりも大きく乃至速くした場合には、当該上流側搬送ローラ対と下流側搬送ローラ対との間で、原稿に撓みが発生してしまうため、このような構成を採用することができない。そこで、一般的には、図4b)に示されるように、上流側搬送ローラ対の線速は、下流側搬送ローラ対の線速よりも小さく乃至遅くする構成を採用することが避けられない。
【0029】
この場合、原稿の搬送負荷変動を軽減して、色ズレを抑制しようとするために、(上流側及び下流側)従動ローラの弾性を大きくした乃至硬度を低くした、なるべく軟らかい材料を採用しようとすると、軟らかい下流側従動ローラは、上流側搬送ローラ対の線速が下流側搬送ローラ対の線速よりも小さいために発生する張力であって、上流側搬送ローラ対と下流側搬送ローラ対との間における原稿を介した上流側搬送ローラ対の方への張力による変形が大きくなってしまうため、上流側搬送ローラ対を原稿が抜ける際に、上流側搬送ローラ対からの原稿を介した張力が解放されることに起因した下流側従動ローラの復元力によって、原稿への搬送負荷変動が生じてしまい、原稿速度の速度ムラが発生してしまう。なお、(上流側及び下流側)駆動ローラは、原稿の搬送速度をつかさどるため、硬度の低い弾性体を使用すると搬送速度がばらついてしまうため、色ズレ抑制のために硬度を低くすることは困難である。
【0030】
そこで、本発明では、画像読取部の画像読取ライン位置に対して、原稿搬送方向上流側に設けられる上流側搬送ローラ対の上流側駆動ローラと上流側従動ローラのそれぞれのローラ軸上にそれぞれ上流側補助ローラを設け、これら上流側補助ローラを対向・当接させることで上流側補助ローラ対を形成させると共に、画像読取部の画像読取ライン位置に対して、原稿搬送方向下流側に設けられる下流側搬送ローラ対の下流側駆動ローラと下流側従動ローラのそれぞれのローラ軸上にそれぞれ下流側補助ローラを設け、これら下流側補助ローラを対向・当接させることで下流側補助ローラ対を形成させた。また、これら上流側補助ローラは、それぞれ、隣接する上流側駆動ローラ及び上流側従動ローラよりも大きな径を有し、且つ、硬度の低い弾性部材で構成され、同様に、これら下流側補助ローラは、それぞれ、隣接する下流側駆動ローラ及び下流側従動ローラよりも大きな径を有し、且つ、硬度の低い弾性部材で構成される。
【0031】
このような(上流側又は下流側)補助ローラ対を備えた(上流側又は下流側)搬送ローラ対の斜視図を図5に示す。なお、図5における参照符号101は、上流側又は下流側駆動ローラのいずれかであり、図1で言えば、上流側駆動ローラ20か又は下流側駆動ローラ23に対応する。同様に、参照符号104は、上流側又は下流側従動ローラのいずれかであり、図1で言えば、上流側従動ローラ20aか又は下流側従動ローラ24に対応する。この図5において、駆動ローラ101と相対回転不能に接続されて、図示しない駆動部からの駆動力を当該駆動ローラ101に伝達する駆動ローラ軸103と同軸上に、補助駆動ローラ102が設けられており、この補助駆動ローラ102は、上記のように、駆動ローラ101よりも大きな直径を有しているのが見て取れる。また、駆動ローラ101からの回転駆動力を受けて従動回転する従動ローラ104が空転する従動ローラ軸106と同軸上に補助従動ローラ105が設けられていて、この補助従動ローラ105は、従動ローラ104よりも大きな直径を有しているのが見て取れる。
【0032】
本願発明では、この図5に示されるように、上流側駆動ローラ及び上流側従動ローラのローラ軸上にそれぞれ設けられる上流側補助ローラで構成される上流側補助ローラ対であって、当該上流側補助ローラが、それぞれ、隣接する上流側駆動ローラ及び上流側従動ローラよりも大きな径を有し且つ硬度の低い弾性部材で構成される上流側補助ローラ対と、下流側駆動ローラ及び下流側従動ローラのローラ軸に同軸上にそれぞれ設けられる下流側補助ローラで構成される下流側補助ローラ対であって、当該下流側補助ローラが、それぞれ、隣接する下流側駆動ローラ及び下流側従動ローラよりも大きな径を有し、且つ、硬度の低い弾性部材で構成される下流側補助ローラ対と、を備えるように構成されているので、搬送されてくる原稿は、最初に上流側補助ローラ対あるいは下流側補助ローラ対に突入するが、これら補助ローラ対が弾性部材で構成されているため、これら補助ローラ自身の変形によって、突入する際の運動エネルギーも先に一旦吸収できるので、その後の搬送ローラ対に突入する原稿の搬送負荷を軽減することができるだけでなく、上流側搬送ローラ対を原稿が抜ける際には、上流側搬送ローラ対のローラ径よりも、補助ローラのローラ径が大きいため、当該上流側搬送ローラ対を抜け出た原稿が、下流側搬送ローラ対の復元力により搬送負荷変動を受けようとする場合であっても、未だ上流側補助ローラ対が原稿を挟持しているため、その搬送負荷は軽減され、さらに、下流側補助ローラ対によっても上流側搬送ローラ対を抜け出た原稿は挟持されているため、下流側従動ローラの復元力を下流側補助ローラ対でも吸収できるので、従動ローラを弾性部材で構成することだけでは改善することのできない原稿の搬送負荷変動を滑らかにすることが可能であり、その結果、原稿の読取画像における色ズレを軽減することが可能になる。
【0033】
ここで、図6を用いて、補助ローラが駆動側、従動側の両方に対向配置されている場合と、これらのいずれか片側のみに配置されている場合との差異ついて説明する。図6(b)に示されるように、片側のみ(図6(b)では、搬送ローラ対の従動ローラ側のみ)に補助ローラを配置すると、主ローラである搬送ローラ対によって形成される原稿ニップ位置と、補助ローラ上の原稿位置とが異なるため、原稿におけるローラ軸方向の撓みが発生してしまう。また、搬送されてくる原稿が最初に接触するのが、補助ローラが無い側の搬送ローラ(図6(b)では駆動ローラ)である場合と、補助ローラである場合とでは、原稿突入時で発生する色ズレに差がでてしまい、画像品質にバラツキを発生させてしまうこともある。さらにまた、搬送ローラ対による原稿ニップ位置が、搬送経路から外れてしまう可能性も考えられる。そのため、図5や図6(a)に示されるように、補助ローラ対を構成する駆動側及び従動側補助ローラを対向させて使用することはもとより、対向する補助ローラ同士の硬度やローラ径の差異を少なくするなどして、搬送ローラ対のニップ位置と補助ローラ対のニップ位置をほぼ同一にするのが好適である。
【0034】
なお、従動ローラ側にのみ、従動ローラの外径より大きな外径を有する弾性体からなる補助加圧部を設ける構成が特許文献2に開示され、さらには、従動ローラの一部表面だけに軟質ゴムなどの弾性体を設けた構成が、色ズレについて言及する特許文献3に開示されている。しかしながら、図1に示したような本願発明の類似の機械構成の試験機(画像読取部及びこれの下部に配置される画像読取ライン前後にそれぞれ搬送ローラ対を配し、読取ライン上を白板で加圧している構成)にて、特許文献2及び特許文献3に開示のあるような従動ローラ側のみに弾性体を設ける構成を評価したところ、色ズレの改善効果がほとんど発生しないことがわかった。図7に、この評価結果のグラフを示す。図7は、従動ローラ側にのみ弾性体の補助ローラを配置した場合に、補助ローラを構成する弾性体を低硬度スポンジ、中硬度スポンジ及び高硬度スポンジにて振り分けた色ズレ量の割合を、補助ローラがない従来の自動原稿搬送装置での色ズレ量を基準として示したグラフである。図中、100%は、補助ローラがない場合の従来例と同じ色ズレ量であることを示すので、100%に近ければ近いほど色ズレ量に改善が見られないことを表し、100%以下であればあるほど、色ズレ量に改善が見られたことを表す。この評価を行う際には、紙厚110Kの原稿にて3回の画像読取を行い、その際に発生した色ズレの最大値を比較している。また、本願発明の構成と比較できるように、駆動側、従動側両方に同じ弾性材料からなる補助ローラをそれぞれ対向する位置に配置して、搬送ローラ対のニップ部と補助ローラのニップ位置とを略同一にした場合についての評価結果も示す(図7では、最右方に示される)。この結果を表す図7からも明らかなように、搬送ローラ対のニップ部と補助ローラのニップ位置とを略同一にすることによって、色ズレがより改善されることがわかる。
【0035】
また、図5に示した各ローラ対の構成では、原稿搬送を行うために回転駆動される駆動ローラ101と駆動側補助ローラ102は、両者ともに駆動ローラ軸103からの駆動力を得て、自律回転をするように構成されている。すなわち、駆動側補助ローラ102も駆動ローラ101と同様に駆動ローラ軸103と相対回転不能に接続されているので、駆動ローラ101を駆動させるために駆動ローラ軸103が回転すれば、それに連動して駆動側補助ローラ102も回転駆動するように構成されている。ここで、図5に示されるローラ対構成は、原稿搬送方向から見た画像読取部の上流側及び下流側のいずれの場合も示しているため、この特徴を言い換えれば、上流側駆動ローラ及び下流側駆動ローラとそれぞれ同軸上に配置される上流側補助ローラ及び下流側補助ローラが、上流側駆動ローラ及び下流側駆動ローラと連動して駆動されるように構成されている。このように、駆動側補助ローラ102が自律回転するようにすることで、駆動側補助ローラ102が回転すれば、従動側補助ローラ105も従動回転するので、原稿が補助ローラ対に突入する際に補助ローラ対が回転していないということがなく、当該突入時の補助ローラ対を回転させはじめるためのエネルギーを、搬送されてくる原稿を介して得る必要がないので、原稿に与える搬送負荷変動を軽減することができるようになるため好適である。
【0036】
図8に、駆動側補助ローラ102が自律駆動されている場合と、されていない場合とにおける色ズレ量の差を示したグラフを示す。図8において、図8(a)は補助駆動ローラを自律駆動させる場合を示し、図8(b)は補助駆動ローラを自律駆動させずに、駆動ローラ軸103上を空転するように構成した場合を示す。この図8からも明らかなように、駆動側補助ローラを自律回転させなければ、色ズレ量が悪化することがわかる。
【0037】
ここで、先の図4で説明したように、下流側搬送ローラ対における従動ローラの硬度を下げ、弾性を持たせすぎると、上流側搬送ローラ対を原稿後端が抜ける際に下流側従動ローラの変形からの復元力によって色ズレが生じてしまう。そこで、下流側搬送ローラ対の下流側搬送ローラには、硬度70度以上の材質を用い、原稿突入時の運動エネルギーの緩和や、従動ローラの変位を少なくすることの役割を、主に補助ローラ対に持たせることも可能である。このように構成すれば、本発明の補助ローラ対は搬送ローラ対よりも硬度が低い、すなわち柔らかい弾性体であるため、原稿を搬送させようとする原稿搬送力は搬送ローラ対の原稿搬送力より小さく、加えて搬送ローラ対で原稿をしっかり保持できるため、変形からの復元力による色ズレが生じにくいという効果が期待できる。図9に、下流側従動ローラに軟質ゴム(硬度30度)を用いた場合と、下流側従動ローラにPOM材質を用いた場合の色ズレ量の実験結果を示す。なお、図9に示される実験では、紙厚が45Kの原稿を用いて評価を行った。この図9に示す実験結果が示すように、補助ローラ対を用いた構成を採用した上で、下流側従動ローラをPOMなどの比較的硬度が高い材質で構成することで、色ズレをさらに改善できるようになるため好適である。
【0038】
これまで本願発明の自動原稿搬送装置について説明してきたが、この種の自動原稿搬送装置を搭載する複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの少なくとも2つの機能を有する複合機などの画像形成装置は、通常公知であるため、本発明の自動原稿搬送装置をこのような画像形成装置に適用することは、当業者には容易であろう。このように、本発明の自動原稿搬送装置を適用した画像形成装置であれば、読み取られた原稿の画像情報の色ズレが軽減されているため、より高品質な画像を形成することが出来るようになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの少なくとも2つの機能を有する複合機などの画像形成装置に搭載される自動原稿搬送装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 自動原稿搬送装置
2 画像読取部
20 上流側搬送ローラ
20a 上流側搬送ローラ
23 下流側搬送ローラ
24 下流側搬送ローラ
101 (上流側又は下流側)駆動ローラ
102 (上流側又は下流側)駆動補助ローラ
103 (上流側又は下流側)駆動ローラ軸
104 (上流側又は下流側)従動ローラ
105 (上流側又は下流側)従動補助ローラ
106 (上流側又は下流側)従動ローラ軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開昭64−17749号公報
【特許文献2】特開平08−208079号公報
【特許文献3】特開2005−178981号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読取部の画像読取ライン位置に対して、画像を読取られるべき原稿の原稿搬送方向上流側に設けられる上流側搬送ローラ対であって、上流側駆動ローラと上流側従動ローラとで構成される上流側搬送ローラ対と、
前記画像読取部の画像読取ライン位置に対して、画像を読取られるべき原稿の原稿搬送方向下流側に設けられる下流側搬送ローラ対であって、下流側駆動ローラと下流側従動ローラとで構成される下流側搬送ローラ対と、
を有する自動原稿搬送装置において、
前記上流側駆動ローラ及び前記上流側従動ローラのローラ軸上にそれぞれ設けられる上流側補助ローラで構成される上流側補助ローラ対であって、当該上流側補助ローラが、それぞれ、隣接する前記上流側駆動ローラ及び前記上流側従動ローラよりも大きな径を有し且つ弾性部材で構成される上流側補助ローラ対と、
前記下流側駆動ローラ及び前記下流側従動ローラのローラ軸上にそれぞれ設けられる下流側補助ローラで構成される下流側補助ローラ対であって、当該下流側補助ローラが、それぞれ、隣接する前記下流側駆動ローラ及び前記下流側従動ローラよりも大きな径を有し且つ硬度の低い弾性部材で構成される下流側補助ローラ対と、
をさらに備えて成ることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項2】
前記上流側補助ローラ対及び前記下流側補助ローラ対がそれぞれ形成する上流側補助ローラニップ位置及び下流側補助ローラニップ位置が、それぞれ、前記上流側搬送ローラ対及び前記下流側搬送ローラ対が形成する上流側搬送ローラニップ位置及び下流側搬送ローラニップ位置と同一位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項3】
前記上流側駆動ローラ及び前記下流側駆動ローラとそれぞれ同軸上に配置される上流側補助ローラ及び下流側補助ローラが、前記上流側駆動ローラ及び前記下流側駆動ローラと連動して駆動されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項4】
前記下流側従動ローラが、硬度70度以上の材質から構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動原稿搬送装置を備えて成る、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−98521(P2012−98521A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246190(P2010−246190)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】