説明

自動取引装置

【課題】ATMの筐体を小型化し、ATMでの利用者の操作を簡便化する。
【解決手段】従来のATMに内蔵されている紙幣入出金機に、利用者の携帯する携帯電話機6に対し、取引データを通信する通信部18、通信制御部32及び入出力処理部31aと、ホストコンピュータ1に対し、取引データを送受信する外部インタフェース部30及びホスト通信処理部31bとを設け、ATM10での入出力処理を携帯電話機6で行うようにしたので、ATM10の小型化が図れて省スペース化が可能になる。更に、予め利用者の携帯電話機6に取引データを入力しておくことによりATM10での利用者の操作を簡便化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の店舗、コンビニエンスストア等に設置され、利用者の操作によって取引を行う現金自動預け払い機(以下「ATM」という。)等の自動取引装置に関し、特に、入力操作を外部の携帯電話機等で行うようにした自動取引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関の店舗、コンビニエンスストア等に設置され、利用者の操作によって取引を行うATMにおいては、預入れ、引出し、振込、残高照会、通帳記入、振替、暗証番号変更等の取引が利用者の操作により可能なようになっている。ATMは、通常、利用者が入力操作を行う図示しない入力操作部、紙幣入出金機、硬貨入出金機、通帳記帳機、カードリーダ、レシートプリンタ、ジャーナルプリンタ及びホストコンピュータとの通信制御部等を有している。
【0003】
一方、パーソナルコンピュータ等を活用し、インターネットを介して、残高照会、振込、ローン、公共料金の振替等の取引を行うインターネットバンキングや、携帯電話機を活用したモバイルバンキングが普及している。携帯電話機には、非接触ICチップや赤外線通信機能等の近距離通信のインタフェースが搭載されている。
【0004】
ATMにおいて携帯電話機を利用して取引を行う技術は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献1には、インターネットバンキングやモバイルバンキングを利用して、銀行取引、例えば、引出し取引を申し込み、後にATMにおいて出金を行う事例が記載されている。具体的には、パーソナルコンピュータや携帯電話機の画面に氏名、口座番号、暗証番号等を入力してホストコンピュータに送信し、本人確認の結果、本人であると確認されたときは、取引予約番号が発行される。ATMにおいて、この取引予約番号と暗証番号等を入力すると、ホストコンピュータでこれらの照合が行われ、一致のときはATMにおいて所定の現金が出金される。
【0006】
特許文献2には、携帯電話機の画面を用いて、取引科目、暗証番号、金額等を入力し、ボタン操作により非接触ICチップに書き込み、これをATMで読み込むことにより所定の金融取引を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−273397号公報
【0008】
【特許文献2】特開2001−297198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のATMでは、利用者の入力操作及びその誘導のための入力操作部やキャッシュカードのリードライト機構、更には、これらを制御する制御部を有しているため、装置の大きさが大きくなり設置場所には相応のスペースが必要であった。特許文献1、2の技術では、携帯電話機を利用して事前に入力操作を行うことにより、ATMでの入力操作を簡略化しているがATM自体は現行の装置を前提にしているためATMの筐体を小型化するには至っていない。
【0010】
更に、通常の現行のATMの取引においては、キャッシュカードの読み込み、暗証番号の入力、金額入力等の一連の取引動作が必要となるため、一定時間ATMを占有することとなりATMの利用に関し、待ち時間が生じることとなっている。
【0011】
一方、インターネットバンキングやモバイルバンキングにおいては、残高照会、振込、ローン、公共料金の振替等の取引は可能であるが、現金の入出金を伴う取引はできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の自動取引装置は、利用者の操作によって取引を行う自動取引装置であって、前記利用者によって投入された現金を受け付け、又は前記利用者によって受理される現金を蓄積する接客口と、前記現金の分離、搬送及び蓄積を行うハンドリング手段と、前記現金の真贋及び異常を鑑別する鑑別手段と、前記現金を金種別に収納する金種別カセットと、前記利用者が携帯している入出力手段に対して、取引データを通信する第1の通信手段と、口座ファイルを有するホストコンピュータに対して、取引データの送受信を行う第2の通信手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の他の自動取引装置は、利用者の操作によって取引を行う自動取引装置であって、利用者によって投入された現金を受け付け、又は前記利用者によって受け取られる現金を蓄積する接客口と、前記現金の分離、搬送及び蓄積を行うハンドリング手段と、前記現金の真贋及び異常を鑑別する鑑別手段と、前記現金を金種別に収納する金種別カセットと、前記利用者が携帯している入出力手段から取引予約番号を含む取引情報を受信して前記取引を行う第1の通信手段と、前記取引の取引履歴を記憶部に記録する記録手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動取引装置によれば、現金の入出金機構と、利用者の携帯する入出力手段に対して、取引データを通信する第1の通信手段と、ホストコンピュータに対して、取引データの送受信を行う第2の通信手段とを有するので、現金の入出金を伴う取引が可能であり、且つ、装置の小型化が図れて省スペース化が可能になる。
【0015】
更に、予め利用者の入出力手段に取引データを入力しておくことにより自動取引装置での利用者の操作を簡便化することができる。このため、自動取引装置の利用に関し、待ち時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるATMを示す構成図である。
【図2】図2は本発明の実施例1の金融機関の勘定系システム及びモバイルバンキングを示す概略構成図である。
【図3】図3は本発明の実施例1における図1中のATM10を示す機能ブロック図である。
【図4】図4は実施例1における図1のATM10の動作(一括入力)を示すフローチャートである。
【図5】図5は実施例1における図1のATM10の動作(逐次入力)を示すフローチャートである。
【図6】図6は実施例2における図1のATM10の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は実施例3における図1のATM10の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0018】
(実施例1の構成)
図2は、本発明の実施例1の金融機関の勘定系システム及びモバイルバンキングを示す概略構成図である。
【0019】
銀行等の金融機関の勘定系システムは、預金勘定元帳の更新を伴う取引を管理するシステムであり、預金勘定元帳である口座ファイル2を有するホストコンピュータ1と、通信回線4を介してホストコンピュータ1に接続される自動取引装置(例えば、ATM)10(=10−1〜10−N)と、営業店に設置される図示しない端末機等とから構成されている。
【0020】
一方、携帯電話機等を活用し、インターネットを介して、残高照会、振込、ローン、公共料金の振替等の取引を行うモバイルバンキングが知られている。モバイルバンキングは、携帯電話機6のインターネット閲覧機能を利用した銀行取引サービスである。モバイルバンキングでは、モバイルバンキング用サーバ3にインターネット5を経由して携帯端末機(例えば、携帯電話機)6(=6−1〜6−N)が接続され、前記サーバ3は、専用線等を介してホストコンピュータ1に接続される構成になっている。
【0021】
携帯電話機6から要求される残高照会、振込、ローン、公共料金の振替等の取引データは、前記サーバ3を経由してホストコンピュータ1に送信され、口座ファイル2等が参照されて処理される。携帯電話機6には、非接触ICチップや赤外線通信機能等の近距離通信のインタフェースが搭載されている。
【0022】
なお、図示しないが、インターネットバンキングもモバイルバンキングの構成とほぼ同様の構成であって、例えば、図2のモバイルバンキング用サーバ3をインターネットバンキング用サーバに、携帯電話機6をパーソナルコンピュータに置き換えた構成である。インターネットバンキングにおいてもモバイルバンキングと同様に、残高照会、振込、ローン、公共料金の振替等の取引がパーソナルコンピュータを用いて行うことができる。
【0023】
図1(a)、(b)は、本発明の実施例1におけるATMを示す構成図である。
このATM10は、通常のATMに内蔵されている紙幣入出金機に、携帯電話機6に対し赤外線通信を行う通信部18と、バーコードリーダ部19と、ICチップリーダライタ20と、2次元バーコードリーダ部21と、キーパッド22と、表示部23とを付加した構成となっている。以下、順次各機構について説明する。
【0024】
本ATM10の各機構部は、現金(例えば、紙幣)を移動する搬送手段である紙幣の搬送路11で接続されている。搬送路11は、紙幣を挟持して搬送するベルト及びローラ等で構成され、正逆双方向に搬送することができる機能を有している。この搬送路11の分岐点には図示しない切替ブレードが配置され、それを切り替えることにより紙幣の搬送先を変える構成になっている。又この紙幣の搬送路11には、適宜な間隔でセンサ等が配置され、紙幣の走行状態を感知する機能を有している。
【0025】
このATM10は、接客口12を有しており、この接客口12は、利用者により投入される紙幣を受付け、利用者へ出金する紙幣を蓄積(以下、集積という。)し、利用者との間で紙幣の受渡しを行う機構である。接客口12は、投入された紙幣を図示しない分離ローラ機構等で1枚ずつ分離して繰り出すことができ、又出金される紙幣を図示しない集積ローラ機構等で集積する機能を有している。前記の搬送路11、分離ローラ機構及び集積ローラ機構は、紙幣の搬送、分離及び集積を行うハンドリング手段を構成している。
【0026】
接客口12には、一時保留部13が搬送路11を介して接続されている。一時保留部13は、利用者により接客口12に投入された紙幣を、搬送路11を経由して搬送し、図示しない集積ローラ機構により一時的に集積しておくものである。この一時保留部13は、利用者により入金金額が確認されて入金取引が成立すると集積した入金紙幣を分離ローラ機構等で1枚ずつ分離して繰り出し、後述する金種別カセット15へ搬送して集積する機能を有している。一方、利用者により入金取引が取消された場合、集積した入金紙幣を分離ローラ機構等で1枚ずつ分離して繰り出し、搬送路11を経由して接客口12へ返却する構成になっている。
【0027】
接客口12には、紙幣の鑑別を行う鑑別手段(例えば、鑑別部)14が接続されて配置されている。この鑑別部14は、光学式センサ等により通過する紙幣の画像データ等の特徴を取得し、その画像データ等の特徴と図示しない紙幣鑑別データベースに予め登録された画像データ等の特徴とを照合して紙幣の真偽、金種等の鑑別及び計数を行う構成になっている。
【0028】
鑑別部14には、金種別カセット15(=15a〜15d)が接続されており、万円券、千円券を金種別に収納するように構成されている。この金種別カセット15は、内部に図示しない昇降可能なステージや、開閉して紙幣を下方に落とす機構等を備えている。収納された紙幣は、金種別カセット15の上方に設けられた図示しない分離ローラ機構で1枚ずつ分離して繰り出すことができる。この金種別カセット15は、本実施例1では、それぞれ同一構造の万券用金種別カセット15a及び15bと千円券用金種別カセット15c及び15dから構成されている。
【0029】
金種別カセット15には、補充回収カセット部16が搬送路11を介して接続されている。補充回収カセット部16は、取外し可能に構成された補充回収カセットを有している。この補充回収カセット部16は、図示しない昇降可能なステージ上に紙幣を集積させる集積ローラ機構、ステージ上の紙幣を分離する分離ローラ機構等で構成されており、金種別カセット15の紙幣を回収して収納し、又その分離ローラ機構により装填された紙幣を1枚ずつ分離して繰り出し、金種別カセット15に補充する機能を有している。
【0030】
ATM10は、入出金リジェクトカセット17を有している。入出金リジェクトカセット17は、入出金処理時にリジェクトされた紙幣を収納するカセットである。
【0031】
接客口12の付近には、携帯電話機6との赤外線通信のための通信部18及びバーコードリーダ部19が備えられている。なお、赤外線通信は、電波で通信する方式に比べて、回析を起こさないため信号が空間的に広がりにくく、障害物があると通信できない欠点はあるが、一方、第三者に傍受されにくいというセキュリティ上の長所がある。
【0032】
この他に、ATM10は、携帯電話機6のICチップとデータ送受信を行うICチップリーダライタ20、2次元バーコードリーダ21、暗証入力用のキーパッド22及び液晶表示器等で構成された表示部23を有している。
【0033】
ATM10は、ホストコンピュータ1と接続するための外部インタフェース部30及びプログラム制御によりATM10全体を制御する主制御部31を有している。主制御部31には、記憶部32が接続されており、記憶部32は、プログラム及び各種データを記憶しており、更に、プログラム実行時の作業用データを一時的に記憶するように構成されている。
【0034】
このようにATM10は、搬送路11、接客口12、一時保留部13、鑑別部14、金種別カセット15、補充回収カセット部16、入出金リジェクトカセット17、通信部18、バーコードリーダ部19等で構成され、入金処理、出金処理、補充処理及び回収処理を行うものである。
【0035】
ここで、入金処理とはATM10の接客口12に投入された紙幣を繰出して計数し、金種別カセット15へ収納する処理であり、出金処理とは、金種別カセット15に収納された紙幣を繰出して計数し、接客口12へ集積する処理である。
【0036】
補充処理とは、補充回収カセット部16に装填された紙幣を繰出して計数し、金種別カセット15へ収納する処理であり、回収処理とは金種別カセット15に収納された紙幣を繰出して計数し、補充回収カセット部16へ収納する処理である。
【0037】
図3は、本発明の実施例1における図1中のATM10を示す機能ブロック図である。
【0038】
ATM10は、主制御部31を有しており、主制御部31は、利用者が携帯している入出力手段(例えば、携帯電話機)6との間で取引データを入出力して処理する第1の通信手段(例えば、入出力処理部)31a及びホストコンピュータ1との間で取引データを通信して処理する第2の通信手段(例えば、ホスト通信処理部)31bを備えている。
【0039】
主制御部31は、通信部18を制御する通信制御部32と、搬送路11の紙幣の走行を感知するセンサを制御するセンサ制御部33と、接客口12を制御する接客口制御部34とが接続された構成になっている。
【0040】
更に、主制御部31には、一時保留部13を制御する一時保留部制御部35と、鑑別部14を制御する鑑別部制御部36と、搬送路11に設けられた搬送用ベルトやローラのモータを制御する搬送モータ制御部37と、紙幣を1枚ずつ分離する分離ローラ機構や搬送された紙幣をステージ上に集積させるための集積ローラ機構を制御する分離集積モータ制御部38と、ホストコンピュータ1との通信を行うための外部インタフェース部30とが接続されている。
【0041】
(実施例1のATM10の動作)
本実施例1のATM10の動作については、引出し取引を例に、(1)一括入力処理と、(2)逐次入力処理に分けて説明する。
【0042】
(1) 一括入力処理
図4は、実施例1における図1のATM10の動作(一括入力)を示すフローチャートである。
【0043】
本実施例1におけるATM10の動作(一括入力)は、以下のステップS1〜S12に従って処理が行われる。
【0044】
引出し取引を行おうとする利用者は、予め、携帯電話機6に取引科目(引出し)、口座番号、暗証番号及び金額等の取引情報を入力しておき、ATM10に接近することにより本引出し取引が開始される。
【0045】
ステップS1において、利用者により予め携帯電話機6に入力されていた前記口座番号等を携帯電話機6の赤外線送信機能を利用してATM10の通信部18に送信する。ステップS2において、ATM10の入出力処理部31aは、口座番号等の取引情報を受信し、ステップS3において、ホスト通信処理部31bによりこれらを編集してホストコンピュータ1に送信する。ホストコンピュータ1では、ATM10からの電文を受信すると、受信した口座番号をキーにして当該顧客の口座ファイル2から口座情報を読み出し、受信した暗証番号とホストコンピュータ1が保持している暗証番号とが一致するか判定する。判定の結果をATM10に送信する。
【0046】
ステップS4において、ホストコンピュータ1での判定の結果、暗証番号が不一致であれば、ステップS5において、取引不可能の旨が利用者に通知され処理を終了する。この通知は、ATM10の接客口12近辺の表示部23に表示して通知する。前記ステップS4において、暗証番号が一致した場合は、ステップS6に進み、ステップS6において、入出力処理部31aは、通信制御部32を介して通信部18から口座番号等の取引情報の要求を赤外線により携帯電話機6に送信する。
【0047】
ステップS7において、携帯電話機6は、口座番号等の送信要求を受信すると、ステップS1において一度送信した取引科目(引出し)、口座番号、暗証番号及び金額等の取引情報を赤外線送信機能によって再送する。ステップS8において、入出力処理部31aで、これらの取引情報を受信し、ステップS9において、入出力処理部31aは、受信した口座番号等の取引情報とATM10が保持していた口座番号等の取引情報とを付き合わせ、同一であるか否かが判定される。一致しなかったときは、ステップS10へ進み、表示部23を用いて、利用者に取引不可能が通知され引出し取引は中止されて本処理は終了する。
【0048】
前記ステップS9において、口座番号等が一致したときは、ステップS11へ進み、ステップS11において、ATM10は、現金を計数して接客口12に放出する。ステップS12において、取引が終了した旨を、ホスト通信処理部31bによりホストコンピュータ1に通知し、ホストコンピュータ1では、取引の終了通知を受けて口座ファイル2を更新する。
【0049】
(2) 逐次入力処理
逐次入力処理は、口座番号、入金額、暗証番号等の取引情報を逐次ATM10に入力する入力方法であって、(1)の一括入力処理が、これらの取引情報を、予め、利用者により携帯電話機6に入力しておくのに対し、利用者は携帯電話機6の赤外線通信により、ATM10と通信を行いながら逐次入力する方法である。
【0050】
図5は、実施例1における図1のATM10の動作(逐次入力)を示すフローチャートであり、実施例1のATM10の動作(一括入力)を示す図4中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0051】
本実施例1におけるATM10の動作(逐次入力)は、以下のステップS21〜S30及びステップS3〜S12に従って処理が行われる。なお、ステップS30に続く処理は、実施例1の(1)一括入力の処理であるステップS3〜ステップS12と同様である。
【0052】
ステップS21において、利用者の携帯電話機6から引出し取引の取引開始要求を赤外線送信機能によりATM10に送信することで本引出し処理が開始される。
【0053】
ステップS22において、ATM10の入出力処理部31aは、取引開始要求を受信すると口座番号入力指示を携帯電話機6に送信する。ステップS23において、口座番号が携帯電話機6に入力されATM10に送信される。ステップS24において、口座番号が受信されると、ステップS25において出金額の入力指示が携帯電話機6に送信される。ステップS26において、出金額が携帯電話機6に入力されATM10に送信される。
【0054】
ステップS27において、出金額が受信されると、ステップS28において暗証番号の入力指示が携帯電話機6に送信される。ステップS29において、暗証番号が携帯電話機6に入力されATM10に送信される。ステップS30において、ATM10で暗証番号が受信される。
【0055】
暗証番号が受信されると、取引科目(引出し)、口座番号、出金額、暗証番号等の取引情報が入力されたことになり、以降、実施例1の(1)一括入力の処理と同様のステップS3〜ステップS12の処理が行われる。
【0056】
すなわち、ステップS3の口座番号をホストに送信処理、ステップS4の取引可能か?処理、ステップS5の取引不可能を通知処理、ステップS6の口座番号等要求処理、ステップ7の口座番号等送信処理、ステップS8の口座番号受信処理、ステップS9の口座番号等一致か?処理、ステップS10の取引不可能を通知処理、ステップS11の現金を計数して接客口12に放出処理及びステップS12の取引終了をホストに通知処理が実行され、本処理が終了する。
【0057】
(実施例1の効果)
本実施例1のATM10によれば、従来のATMに内蔵されている紙幣入出金機に、利用者の携帯する携帯電話機6との間で取引データを通信する通信部18、通信制御部32及び入出力処理部31aと、ホストコンピュータ1との間で取引データを通信する外部インタフェース部30及びホスト通信処理部31bとを設けたので、装置の小型化が図れて省スペース化が可能になる。更に、予め利用者の携帯電話機6に取引データを入力しておくことによりATM10での利用者の操作を簡便化することができる。
【実施例2】
【0058】
本実施例2は、予め、利用者が携帯電話機6によりホストコンピュータ1と通信することにより仮出金処理を行い、ATM10において、仮出金処理に関する情報を入力して現金を引き出す処理である。ATM10では、引出し処理時にホストコンピュータ1との通信は行わず、例えば、ATM10の運用終了後、ホストコンピュータ1と通信を行い一括して取引の付き合わせを行い口座ファイル2の更新を行うものである。
【0059】
(実施例2の構成)
本発明の実施例2におけるATM10の構成は、実施例1の構成と同様である。
【0060】
(実施例2の動作)
図6は実施例2における図1のATM10の動作を示すフローチャートである。
【0061】
実施例2においては、利用者は、予め、モバイルバンキングの仕組みを使って、仮出金処理を行う。例えば、モバイルバンキング用サーバ3に引出し取引を要求する。引出し取引の要求に際しては、口座番号、出金額、暗証番号が前記サーバ3に送信され、取引の正当性が判断される。
【0062】
取引が正当と判断されたときは、前記サーバ3は、ホストコンピュータ1と通信を行い、所定の口座ファイル2から出金額を仮引き落としし、取引予約番号を当該の携帯電話機6に通知する。
【0063】
このとき、利用者は引出しを希望するATM10の設置場所を指定するようにしてもよいし、前記サーバ3で利用者の居場所を携帯電話機6の位置から検知し最寄りのATM10の設置場所を指定してもよい。このとき引出し予定のATM10にも取引予約番号を含む仮取引情報が送信される。
【0064】
本実施例2におけるATM10の動作は、以下のステップS41〜S46に従って処理が行われる。
【0065】
引出し取引を行おうとする利用者は、予め、携帯電話機6に取引予約番号、取引科目(引出し)、口座番号、暗証番号及び金額等の仮取引情報を入力しておき、ATM10に接近することにより本引出し取引が開始される。
【0066】
ステップS41において、利用者により予め携帯電話機6に入力されていた前記口座番号等を携帯電話機6の赤外線送信機能を利用してATM10の通信部18に送信する。ステップS42において、ATM10の入出力処理部31aは、口座番号等の取引情報を受信する。ステップS43において、入出力処理部31aでは、携帯電話機6から受信した取引予約番号と、すでにモバイルバンキング用サーバ3から受信していた取引予約番号とが一致するかが判定される。不一致の場合は、ステップS44へ進む。
【0067】
ステップS44において、取引不可能の旨が利用者に通知される。この通知は、ATM10の接客口12の近辺に設けられた表示部23に表示されて通知される。前記ステップS43において、取引予約番号が一致した場合は、ステップS45へ進み、ステップS45において、ATM10は、現金を計数して接客口12に放出する。
【0068】
ステップ46において、取引科目(引出し)、口座番号、暗証番号、出金額、取引日時等が記憶部32に記録手段(例えば、記録部)31cにより記録される。
【0069】
(実施例2の効果)
本実施例2のATM10によれば、実施例1の効果に加え、次の効果がある。すなわち、予め、利用者が携帯電話機6によりホストコンピュータ1と通信することにより仮出金処理を行うので、ATM10では、リアルタイムで口座ファイル2の更新を行う必要がなくなり、引出し処理が簡便、迅速になる。更に、ネットワーク環境については、必ずしも専用線である必要がなくなるのでATM10の設置が容易になる。
【実施例3】
【0070】
本実施例3は、実施例1とほぼ同様であるが口座番号等の取引情報の入力を、バーコードを用いて行う。
【0071】
(実施例3の構成)
本発明の実施例3におけるATM10の構成は、実施例1の構成と同様である。
【0072】
(実施例3の動作)
図7は実施例3における図1のATM10の動作を示すフローチャートである。
【0073】
本実施例3におけるATM10の動作は、以下のステップS51〜S60に従って処理が行われる。
【0074】
引出し取引を行おうとする利用者は、予め、モバイルバンキングの仕組みを使って、携帯電話機6に取引予約番号、取引科目(引出し)、口座番号及び金額等の仮取引情報を入力してバーコードを作成しておき、ATM10に接近することにより本引出し取引が開始される。
【0075】
なお、インターネットバンキングの仕組みを使って、パーソナルコンピュータにより、予め、取引予約番号、取引科目(引出し)、口座番号及び金額等の仮取引情報をバーコード化して紙片に印刷してもよい。
【0076】
ステップS51において、利用者により、予め、携帯電話機6に入力されていた前記口座番号等を携帯電話機6の画面に表示されているバーコード又は紙片に印刷されたバーコードをATM10のバーコードリーダ部19にかざすことによりATM10に入力する。ATM10の入出力処理部31aは、口座番号等の取引情報を受信する。ステップS52において、ホスト通信処理部31bは、これらを編集してホストコンピュータ1に送信する。
【0077】
ホストコンピュータ1では、ATM10からの電文を受信すると、受信した取引予約番号や口座番号等の正当性を確認し、取引が可能か否かを判定してその結果と、口座ファイル2から読み出した暗証番号とをATM10に送信する。
【0078】
ステップS53において、ホストコンピュータ1での判定の結果、取引不可能であれば、ステップS54において、取引不可能の旨が利用者に通知され処理を終了する。この通知は、ATM1の接客口12近辺の表示部23に表示して通知する。前記ステップS53において、取引可能な場合は、ステップS56に進み、ステップS56において、入出力処理部31aは、接客口12付近の表示部23に暗証番号入力を促すメッセージを表示する。
【0079】
利用者により暗証番号がキーパッド22から入力されると、ステップS57において、入出力処理部31aは、入力された暗証番号とホストコンピュータ1から受信していた暗証番号が一致するかが判定される。一致しなかったときは、ステップS58へ進み、利用者に取引不可能が通知され引出し取引は中止されて本処理は終了する。
【0080】
前記ステップS57において、暗証番号が一致したときは、ステップS59へ進み、ステップS59において、ATM10は、現金を計数して接客口12に放出する。ステップS60において、取引が終了した旨を、ホスト通信処理部31bはホストコンピュータ1に通知し、ホストコンピュータ1では、取引の終了通知を受けて口座ファイル2を更新する。
【0081】
(実施例3の効果)
本実施例3のATM10によれば、実施例1の効果に加え、次の効果がある。すなわち、紙片にバーコードを印刷した場合は、利用者が携帯電話機6を持っていなくでもATM10への入力が可能になり、より簡便、迅速な処理が可能になる。
【0082】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(i)のようなものがある。
【0083】
(a) 自動取引装置は、金融機関の店舗、コンビニエンスストア等に設置されるATM10のみに限定されない。利用者による操作によって取引を行う装置であって、現金を扱う装置であれば、広く適用ができる。
【0084】
(b) 実施例1〜2では、紙幣入出金機に携帯電話機6等と通信を行うための通信部18を設けることで説明したが、既存のATMに携帯電話機6等との通信を行う通信部18を設けてもよい。
【0085】
(c) 通信部18は、赤外線通信機能を有することで説明したが、無線LAN、Bluetooth通信やiC通信等の無線通信であってもよいし、接続ケーブルを用いて携帯電話機6と有線で通信してもよい。
【0086】
(d) 実施例3では、バーコードリーダを用いる例を説明したが、キーパッドによるコード入力でも取引は可能である。
【0087】
(e) 実施例1〜3では、引出し取引を例に説明したが預入れ取引、振込、公共料金の支払いも同様に可能である。
【0088】
(f) 実施例1〜3では、紙幣の処理を例に説明したが、ATM10に硬貨入手金機を接続することにより硬貨の入出金も可能となる。
【0089】
(g) 実施例3では、ATM10への取引情報の入力をバーコードで行うことで説明したが、バーコードに代えて2次元バーコードでもよい。
【0090】
(h) 実施例1〜3では、利用者が携帯している入出力手段として携帯電話機6で説明したがPDA(携帯情報端末)やPHSでもよい。
【0091】
(i) 実施例1では、携帯電話機6の同一性の確認を、取引情報を再度、携帯電話機6から受信してATM10で保持する取引情報と一致するかで判定したが、取引情報の代わりに携帯電話機6の端末機番号で判定してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 ホストコンピュータ
2 口座ファイル
3 モバイルバンキング用サーバ
6 携帯電話機
10 ATM
12 接客口
18 通信部
19 バーコードリーダ部
22 キーパッド
23 表示部
30 外部インタフェース部
31 主制御部
31a 入出力処理部
31b ホスト通信処理部
31c 記録部
32 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の操作によって取引を行う自動取引装置であって、
前記利用者によって投入された現金を受け付け、又は前記利用者によって受理される現金を蓄積する接客口と、
前記現金の分離、搬送及び蓄積を行うハンドリング手段と、
前記現金の真贋及び異常を鑑別する鑑別手段と、
前記現金を金種別に収納する金種別カセットと、
前記利用者が携帯している入出力手段に対して、取引データを通信する第1の通信手段と、
口座ファイルを有するホストコンピュータに対して、取引データの送受信を行う第2の通信手段と、
を有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記第1の通信手段は、
前記入出力手段に対して、第1の取引情報の送信を要求して前記第1の取引情報を受信し、受信した前記第1の取引情報と前記第1の通信手段が保有する第2の取引情報とを比較し、比較結果が一致のときは、前記取引が正当であるとし、不一致のときは前記取引を無効とする機能を有することを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
利用者の操作によって取引を行う自動取引装置であって、
利用者によって投入された現金を受け付け、又は前記利用者によって受け取られる現金を蓄積する接客口と、
前記現金の分離、搬送及び蓄積を行うハンドリング手段と、
前記現金の真贋及び異常を鑑別する鑑別手段と、
前記現金を金種別に収納する金種別カセットと、
前記利用者が携帯している入出力手段から取引予約番号を含む取引情報を受信して前記取引を行う第1の通信手段と、
前記取引の取引履歴を記憶部に記録する記録手段と、
を有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
前記入出力手段は、携帯端末機であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記入出力手段は、バーコードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動取引装置。
【請求項6】
前記入出力手段は、2次元バーコードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−198266(P2010−198266A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41774(P2009−41774)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】