自動合焦制御装置、電子カメラ及び自動合焦制御方法
【課題】コントラスト検出方式を採用するオートフォーカス装置において、合焦動作時のウォブリングに起因する画像のぶれを低減できる自動合焦制御装置、電子カメラ及び自動合焦制御方法を提供する。
【解決手段】撮像レンズと撮像素子との間の光路に挿抜可能でかつそれぞれの屈折率が異なる複数枚のフィルタを設ける。コントラスト検出方式によるAF制御を行った後(S20)、合焦時点の感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boを算出し(S60)、その後に所定時間周期毎に算出した感度比R/G,B/G,R/Bと感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boの差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bを算出する(S100)。そして、差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bに適したフィルタを、撮像レンズと撮像素子との間の光路に挿入することでAF制御を行う(S100)。
【解決手段】撮像レンズと撮像素子との間の光路に挿抜可能でかつそれぞれの屈折率が異なる複数枚のフィルタを設ける。コントラスト検出方式によるAF制御を行った後(S20)、合焦時点の感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boを算出し(S60)、その後に所定時間周期毎に算出した感度比R/G,B/G,R/Bと感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boの差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bを算出する(S100)。そして、差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bに適したフィルタを、撮像レンズと撮像素子との間の光路に挿入することでAF制御を行う(S100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントラスト検出方式のオートフォーカス制御(AF制御)を行う自動合焦制御装置、電子カメラ及び自動合焦制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやビデオカメラなどの電子カメラには、オートフォーカス装置(自動合焦装置)が設けられている。オートフォーカス装置では主な一つの方式としてコントラスト検出方式が広く利用されている。コントラスト検出方式は、フォーカスレンズを光軸方向に移動させつつ各位置における撮像画像のコントラスト値を求め、コントラスト値が最も高くなるレンズ位置をフォーカス位置として検出する方式である(例えば特許文献1)。
【0003】
特に特許文献1における合焦検出装置は、被写体光のエッジ部分を所定範囲にわたって複数個検出し、各エッジ部分の画素数を検出するエッジ検出手段と、検出された複数のエッジ部分の画素数とその度数から算出される重心値に基づいて被写体の合焦状態を判別する判別手段とを備えた構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−274405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年のデジタルスチルカメラでは、モニタに画像を表示させながらコントラスト値を得るため、ウォブリングによる画像の乱れやAFレンズ群のサーチ時間がかかるという問題があった。
【0006】
例えば特許文献1のような輝度情報を使用したコントラストによる検出方法では、AFレンズを広範囲で駆動させるため、スルー画表示中や動画撮影中にウォブリングによるぶれた画像となってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、コントラスト検出方式を採用するオートフォーカス装置において、合焦動作時のウォブリングに起因する画像のぶれを低減できる自動合焦制御装置、電子カメラ及び自動合焦制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明は、撮影レンズを光軸方向に移動させる第1駆動手段と、撮像手段が取得した画像のコントラスト値に基づいて、前記撮影レンズを合焦位置に配置するよう前記第1駆動手段を制御する第1の合焦制御手段と、前記撮影レンズと前記撮像手段との間の光路に対して挿抜可能に設けられるとともに前記撮影レンズの合焦位置からのずれ量を補償可能な屈折率を有する少なくとも一つのフィルタと、前記フィルタを前記光路に対して挿抜させる第2駆動手段と、前記撮影レンズの合焦位置に対するずれ量を検出する検出手段と、前記検出手段が検出したずれ量に応じた屈折率のフィルタを前記光路に対して挿抜するよう前記第2駆動手段を制御して合焦を行う第2の合焦制御手段と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
本発明の自動合焦制御装置では、前記フィルタを複数備え、前記第2の合焦制御手段は、複数のフィルタを重ね合わせて光路上に配置することにより複数のフィルタの組合せによって異なる屈折率を作り出すことが好ましい。
【0010】
本発明の自動合焦制御装置では、前記第2の合焦制御手段は、前記光路上における前記フィルタの挿抜と、前記光路上に挿入された該フィルタの光軸方向における移動とにより合焦を行うことが好ましい。
【0011】
本発明の自動合焦制御装置では、ズームレンズと、前記ズームレンズを光軸方向に移動させて焦点距離を変化させることでズーム量を調整する第3駆動手段と、前記第2の合焦制御手段は、前記ズーム量及び前記ずれ量に応じて前記光路上に挿入すべきフィルタを選択することが好ましい。
【0012】
本発明の自動合焦制御装置では、前記検出手段は、前記撮像手段が取得した画像のRGB3色の信号値のうち2色毎の組合せの値の比で示される3つの感度比のうち少なくとも1つを算出する感度比算出手段を備え、前記少なくとも1つの感度比に基づいて前記合焦位置からの前記ずれ量を求めることが好ましい。
【0013】
本発明の自動合焦制御装置では、前記撮像手段で取得されたRGB信号値の前記画像中のエッジ部分を横切るときの傾きを求める傾き算出手段を備え、前記傾きが閾値以上のときに前記第2の合焦制御手段による第2の合焦制御を行い、前記傾きが前記閾値未満になると、前記第2の合焦制御から前記第1の合焦制御手段による第1の合焦制御へ切り替えることが好ましい。
【0014】
本発明は、電子カメラであって、被写体を撮影する撮像手段と、上記発明の自動合焦制御装置と、を備えたことを要旨とする。
本発明は、撮影レンズを光軸方向に移動させながら撮像手段が取得した画像のコントラスト値に基づいて、前記撮影レンズを合焦位置に配置するよう合焦制御を行う第1の合焦制御ステップと、前記第1の合焦制御ステップによる合焦が行われた前記撮影レンズの合焦位置に対するずれ量を検出する検出ステップと、前記ずれ量を補償可能な屈折率を有するフィルタが前記撮影レンズの光路上に配置されるように前記光路に対してフィルタの挿抜を行うことで合焦する第2の合焦制御ステップと、を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コントラスト検出方式を採用するオートフォーカス装置において、合焦動作時のウォブリングに起因する画像のぶれを低減できる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電子カメラの斜視図。
【図2】電子カメラの背面図。
【図3】電子カメラの電気的構成を示すブロック図。
【図4】コントラスト検出方式によるAF制御を説明するグラフ。
【図5】(a)フィルタ装置の構成を示す模式側面図、(b)その模式正面図。
【図6】フィルタ挿抜方式の原理を説明する模式側面図。
【図7】撮像光学系における軸上色収差を示す模式側面図。
【図8】エッジ検出を説明する主要被写体画像の模式図。
【図9】正規化出力R(x),G(x),B(x)を示すグラフ。
【図10】AFレンズ位置によるエッジの傾きの変動を示すグラフ。
【図11】AFレンズ位置による感度比の変動を示すグラフ。
【図12】フィルタ非挿入時における撮像光学系を示す模式側面図。
【図13】フィルタ挿入時における撮像光学系を示す模式側面図。
【図14】AF制御処理を示すフローチャート。
【図15】変形例におけるフィルタ装置の構成を示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を電子カメラの一種であるデジタルカメラに具体化した一実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。
図1はデジタルカメラの斜視図、図2はその背面図である。図1に示すように、本実施形態のデジタルカメラ(以下、単に「カメラ11」という)は、略直方体形状をなすカメラ本体12を有している。カメラ本体12の前面(正面)略中央部には撮像レンズ13を内装した伸縮自在な鏡筒13aが設けられるとともに、鏡筒13aよりも上側となる二位置にはストロボ14(フラッシュ)、合焦動作時に赤外線等を被写体に向けて照射する発光体及びセルフ撮影を行うときに点滅するセルフLED等の光を照射する照射窓部15が設けられている。
【0018】
また、カメラ本体12の上面には左寄りの二位置に電源スイッチ17及びレリーズスイッチ18が設けられ、略中央寄りの位置にスピーカ19が設けられている。電源スイッチ17は、カメラ11を電源オン状態とするときに撮像者により押し下げ操作されるものである。レリーズスイッチ18はカメラ11に撮像動作を開始させるときに撮像者により押し下げ操作(すなわち、オン操作)される操作ボタンである。
【0019】
一方、図2に示すように、カメラ本体12の背面側には、矩形状をなすモニタ20が設けられている。モニタ20は、一例として液晶表示装置(LiquidCrystalDisplay)(LCD)により構成されている。そして、モニタ20の上側右寄りの位置には静止画モードと動画モードとの間で切り換可能なモード選択スイッチ21が設けられている。また、カメラ本体12の背面におけるモニタ20の右上位置には、主として撮像レンズ13をズームアップ又はズームダウンさせるときに操作されるズームボタン22が設けられている。ズームボタン22の下側位置には、主としてモニタ20にメニュー画面を表示させるときに操作されるメニューボタン23が設けられている。
【0020】
また、メニューボタン23の下方には、撮影ボタン24と再生ボタン25とが設けられている。再生モード中に撮影ボタン24を操作すると撮影モードに切り換わり、撮影モード中に再生ボタン25を操作すると再生モードに切り換わるようになっている。動画撮影を行う際は、動画モードかつ撮影モードにし、レリーズスイッチ18を操作すると動画撮影が開始され、その動画撮影中にレリーズスイッチ18を操作するとその動画撮影が終了するようになっている。
【0021】
さらに各ボタン24,25の下側位置には、上下左右の4方向を含む複数方向の選択操作が可能なセレクトボタン26(選択ボタン)が設けられ、その中央部には決定ボタン27(OKボタン)が設けられている。セレクトボタン26は、主としてメニュー画面における項目の選択及び設定内容の変更を行う操作に用いられる。決定ボタン27は、メニュー画面で選択した項目や設定内容を確定(決定)する操作に用いられる。
【0022】
次に、本実施形態のカメラ11における回路構成を図3に示すブロック図に基づき説明する。図3に示すように、カメラ11は各種動作を統括的に制御するMPU(Micro Processing Unit)などからなるエンジン30を備えている。エンジン30はコンピュータ31を内蔵し、コンピュータ31が各種プログラムを実行することによりカメラ11の各種制御を行う。また、カメラ11は、撮像レンズ13のレンズ群を通過した被写体光を撮像レンズ13の像空間側において結像させるための撮像素子32をカメラ本体12内に有している。この撮像素子32は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサからなり、その撮像面に結像した被写体像に対応した信号電荷を蓄積し、その蓄積した信号電荷を画素信号と呼ばれるアナログ信号として出力する。なお、撮像素子32は、電源スイッチ17が押し下げ操作された後において、レリーズスイッチ18が押し下げ操作される前段階の待機モードにおいても、被写体の経時変化するスルー画像の画素信号を出力し得るように構成されている。
【0023】
図3に示す撮像レンズ13は、鏡筒13a内に、撮影画角を変更するズームレンズ33a、焦点を合わせるフォーカスレンズ33bを備えている。そして、鏡筒13a内には、絞り34及びシャッタ35が設けられている。さらにフォーカスレンズ33bと撮像素子32との間には、フィルタ37を撮像レンズ13の光路に対して挿抜可能な状態に備えるフィルタ装置36が設けられている。本例では、フィルタ37は複数枚備えられている。
【0024】
エンジン30には、撮像レンズ13、絞り34、シャッタ35及びフィルタ装置36などを撮影条件に応じて駆動制御するため、フィルタ駆動回路38、フォーカス駆動回路39、シャッタ駆動回路40、絞り駆動回路41及びズーム駆動回路42が接続されている。
【0025】
ズームレンズ33aは、ズーム用モータ43の駆動により光軸方向に沿って移動可能に構成されている。エンジン30はズーム駆動回路42を介してズーム用モータ43を駆動制御し、ズームレンズ33aを光軸方向に移動させることによって撮影画角を変更する。
【0026】
フォーカスレンズ33bは、フォーカス用モータ(以下、「AFモータ44」と称す)の駆動により光軸方向に沿って移動可能に構成されている。エンジン30はフォーカス駆動回路39を介してAFモータ44を駆動制御し、フォーカスレンズ33bを光軸方向に移動させることによって焦点を合わせ、例えば撮像レンズ13を透過した被写体光を撮像素子32の像面に結像させる。このとき、エンジン30は、AFセンサ45の検出信号に基づきフォーカスレンズ33bの光軸方向の位置を取得する。
【0027】
絞り34は、絞り駆動回路41により駆動される不図示のアクチュエータにより駆動される。エンジン30は絞り駆動回路41を介してアクチュエータを駆動制御することによって絞り34を調節し、撮像レンズ13を通過する光量を調整する。
【0028】
シャッタ35は、シャッタ駆動回路40により駆動される不図示のアクチュエータにより開閉可能に構成されている。エンジン30はシャッタ駆動回路40を介してアクチュエータを駆動制御することによってシャッタ35を作動させ、露光時間を制御する。
【0029】
また、エンジン30には、撮像素子32に接続された撮像制御回路47及び映像回路48が接続されている。撮像制御回路47は、撮像素子32を駆動して、露光時間制御、結像された像の電気信号への変換、変換した電気信号の出力等を制御する。
【0030】
映像回路48は、撮像素子32の出力する電気信号を増幅し、デジタル信号に変換してエンジン30に出力する。詳しくは、撮像素子32の出力側に直列に接続されている映像回路48は、AFE(Analog Front End)部とA/D変換器とを有している。AFE部は、撮像素子32で光電変換されて出力されたアナログ信号からなる画素信号を所定のタイミングでサンプリング(相関二重サンプリング)して、例えばISO感度に基づく所定の信号レベルとなるように増幅させる。A/D変換器は、AFE部から出力された増幅後の画素信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、このデジタル画素信号をエンジン30に出力する。
【0031】
エンジン30は、映像回路48から入力したデジタル画素信号に対して、色補間処理、階調補正、ホワイトバランス処理及び輪郭補償等の画像処理を施すことにより所定の画像データを生成する。
【0032】
さらに、エンジン30には、バスを介して不揮発性メモリ49及びバッファメモリ50が接続されている。また、エンジン30には、モニタ制御回路51(LCD駆動回路)、メモリ制御回路52及び操作検出回路53等が接続されている。
【0033】
不揮発性メモリ49には、エンジン30を動作させるためにエンジン30内のコンピュータ31が実行するためのプログラムが記憶されている。本実施形態では、図14にフローチャートで示す自動合焦制御(AF制御)用のプログラムなどが不揮発性メモリ49に記憶されている。また、不揮発性メモリ49には、フィルタ装置36を用いた自動合焦制御で使用するマップデータM1,M2,…Mmが記憶されている。このマップデータM1〜Mmについては後述する。
【0034】
バッファメモリ50は、撮影画像データを一時的に格納し、画像処理過程のデータ、画像処理後のデータ、画像圧縮後のデータ、さらにエンジン30のその他の処理過程のデータの一時記憶に使用される。バッファメモリ50は、例えばDRAM等により構成される。
【0035】
エンジン30が画像処理を行って生成した画像データは、バッファメモリ50に一時記憶される。エンジン30は、バッファメモリ50に一時記憶した画像データをモニタ制御回路51へ送り、モニタ制御回路51は画像データに基づく画像をモニタ20に表示させる。モニタ20には、例えばスルー画像、撮影中の動画画像、撮影直後の確認画像(静止画)、再生画像(再生動画・再生静止画)が表示される。
【0036】
その後、エンジン30は、バッファメモリ50から画像データを読出して、例えばJPEG方式でデータ圧縮処理を行い、圧縮処理後の画像データを含む画像ファイルを生成し、生成した画像ファイルをメモリ制御回路52に接続された不図示のカードスロットを介してカメラ11に着脱可能とされたメモリカード54に記憶するようになっている。また、エンジン30は、メモリカード54から画像ファイルを読出して伸張処理を施した後の画像データをバッファメモリ50に一時記憶させてモニタ制御回路51を介してモニタ20に再生画像(再生動画・再生静止画)を表示させる。
【0037】
モニタ制御回路51は、エンジン30より出力された表示データをモニタ20に出力するとともに、モニタ20の点灯、消灯、表示制御を行い、モニタ20にスルー画や再生画像等を表示させる。
【0038】
メモリ制御回路52は、メモリカード54を挿抜可能な構造のスロットを有し、スロットに挿着されたメモリカード54に撮影画像ファイルを転送・記憶したり、メモリカード54に記憶されている画像ファイル等の情報を読み取り、エンジン30に出力したりする機能を有している。
【0039】
操作検出回路53には、電源スイッチ17、レリーズスイッチ18、モード選択スイッチ21、ズームボタン22、メニューボタン23、撮影ボタン24、再生ボタン25、セレクトボタン26及び決定ボタン27などの各種操作スイッチが接続されている(但し、図3では一部のスイッチ(ボタン)のみ図示)。操作検出回路53は、ユーザーによるスイッチ操作を検出してその操作情報をエンジン30に出力する。
【0040】
エンジン30内のコンピュータ31は、不揮発性メモリ49に記憶されたプログラムを実行してカメラ11の動作を制御するとともに、撮影された画像の処理及び再生を行う。エンジン30は、電源スイッチ17の操作に応答してカメラ11の電源の投入(ON)/遮断(OFF)を行う。また、エンジン30は、電源ON状態の下で、ズームボタン22の操作に応答してズーム駆動回路42を介してズーム用モータ43を駆動してズームレンズ33aを移動させるズーミング動作を行わせ、フォーカス駆動回路39を介してAFモータ44を駆動してフォーカスレンズ33bを移動させるフォーカシング動作を行わせる。さらに、エンジン30は、絞り駆動回路41及びシャッタ駆動回路40を駆動して絞り34の調整及びシャッタ35の開放時間調整を行うことにより露出制御を行う。
【0041】
エンジン30は、撮影準備段階においてはシャッタ35を開放し、撮像レンズ13を透過した光を撮像素子32に結像させる。撮像素子32に結像した被写体像はエンジン30によって周期的に画像処理され、被写体を動画的にモニタ20に映し出すことにより、モニタ20にスルー画が表示される。
【0042】
また、エンジン30によって、画像のコントラストを検出し、フォーカスレンズ33bを移動させ、最もコントラストの高いフォーカスレンズ位置を探索し、その位置にフォーカスレンズ33bを移動させることによりオートフォーカス制御(AF制御)を行う。
【0043】
また、エンジン30は画像の輝度レベルを検出し、検出した輝度レベルから絞り34とシャッタ35のシャッタ速度を制御して自動露出制御(AE制御)を行う。
図4は、エンジン30内のCPU(コンピュータ)がプログラムを実行することによりエンジン30内に構築される機能構成を示す。図4に示すように、エンジン30内のコンピュータ31には、主制御部61、画像処理部62、ズーム制御部63、切換制御部64、第1合焦制御部65、第2合焦制御部66、表示制御部67などが備えられている。なお、コンピュータ31内の各機能部は、AF制御及びズーム制御に関係する部分のみを示し、その他の各種制御に係る機能部分は省略している。
【0044】
主制御部61は、各部を統括制御し、AF制御、ズーム制御以外に、絞り制御、シャッタ制御などを行う。
画像処理部62は、撮像素子32から映像回路48(図3を参照)を介して入力した画素信号に基づいて各種の画像処理(ホワイトバランス処理等)を施して画像データを生成する画像処理を行う機能を有している。画像処理部62は、顔検出部62Aを備えている。顔検出部62Aは、画像中における人物の顔を検出する顔検出を行う。両眼、鼻、口などの顔の部品の特徴を抽出しその特徴量に基づいて顔の各部品を抽出し、両眼と鼻と口の各位置関係を利用して顔を検出する。顔検出部62Aは、検出した顔について、さらに瞳検出、顔向き検出、顔輪郭検出、表情検出(笑顔検出)などの顔に関する各種検出処理を行う。AF制御では、検出した顔に焦点を合わせるようにフォーカスレンズの位置制御が行われる。このため、検出した顔のコントラスト評価値が最大になるようにフォーカスレンズの位置制御が行われる。
【0045】
ズーム制御部63は、ズームボタン22の操作に基づき広角側と望遠側のうちその操作方向に応じた回転方向へズーム用モータ43を駆動させることにより、ズームレンズ33aを広角側と望遠側のうちその操作方向に応じた方向へ移動させてズーム(倍率)の調節を行う。
【0046】
切換制御部64、第1合焦制御部65及び第2合焦制御部66は、AF制御装置の制御手段を構成し、これらの各制御部64〜66によりAF制御が行われる。そして、切換制御部64は、第1合焦制御部65と第2合焦制御部66のうち一方を選択して両者の間でAF制御の主体を切り換える。
【0047】
ここで、第1合焦制御部65は、コントラスト検出方式のAF制御を行う。第1合焦制御部65は、コントラスト検出部71、レンズ制御部72及びサーチ部73を備えている。コントラスト検出部71は、撮像素子32により撮像されてエンジン30に入力された画像データに対して顔検出部62Aが検出した顔の領域のコントラストを検出する。レンズ制御部72は、AFモータ44を駆動させてフォーカスレンズ33bを光軸方向に移動させるレンズ位置制御を行う。
【0048】
サーチ部73は、レンズ制御部72がAFモータ44を駆動させてフォーカスレンズ33bを光軸方向に移動させつつコントラスト検出部71が各レンズ位置毎に検出及び算出したコントラスト評価値を逐次取得して、今回と前回の各評価値を比較しつつ、所謂「山登り制御」を行って、最大のコントラスト評価値となるレンズ位置(AFモータパルス数)をサーチする。
【0049】
図4は、コントラスト検出方式によるAF制御を説明するグラフである。このグラフにおいて、横軸はレンズ位置(AFモータパルス数)であり、縦軸はコントラスト評価値である。例えばAF制御開始位置がP1であるとすると、フォーカスレンズ33bを光軸方向に1パルスずつ移動させつつコントラスト評価値Cを算出し、各レンズ位置P1,P2,…毎にコントラスト評価値C1,C2,…を逐次算出する所謂「山登り制御」を行い、最大のコントラスト評価値Cmaxとなるレンズ位置Pmax(AFモータパルス数)を求める。図5に示すように、例えば、位置P1→P2→…→Pn→Pn+1ときて、位置Pnの評価値Cnと位置Pn+1の評価値Cn+1とを比較したときに、それまで増加していた評価値が減少するか又は同じ値をとると、サーチ部73は、それまでで最大の評価値Cn(=Cmax)をとるレンズ位置Pn(AFモータパルス数)を合焦位置として取得する。
【0050】
レンズ制御部72は、サーチ部73がサーチして得たレンズ位置Pn(AFモータパルス数Pn)で規定される合焦位置までの移動方向及び移動量を求め、AFモータ44を駆動してフォーカスレンズ33bをその移動方向へその移動量だけ移動させる。そして、フォーカスレンズ33bが合焦位置に到達すると、レンズ制御部72は、AFモータ44の駆動を停止する。第1合焦制御部65は、このような手順でコントラスト検出方式によるAF制御を行う。
【0051】
ここで、コントラスト検出方式によるAF制御では、サーチ部73が比較的広範囲に亘りサーチするので、フォーカスレンズ33bのサーチ時の移動に起因し、表示制御部67の表示制御によりモニタ20に表示される画像が小刻みにぶれるウォブリングが発生し易い。スルー画はメモリカード54に保存されないデータなので、多少ウォブリングが発生してもさほど問題ではないが、動画撮影時にサーチに起因するウォブリングが発生すると、画像がぶれた低品質の動画が保存されることになる。このため、本実施形態では、AF制御として、第1合焦制御部65が行うコントラスト検出方式の他に、フォーカスレンズ33bを移動させずにAF制御が可能な第2合焦制御部66によるフィルタ挿抜方式によるAF制御も採用している。
【0052】
第2合焦制御部66によるフィルタ挿抜方式は、撮像レンズ13の光路に対してフィルタ37を挿抜することによりAF制御である。詳しくは、第2合焦制御部66は、第1合焦制御部65によるコントラスト検出方式で合焦した後、被写体が移動するなどして焦点がずれた場合、その焦点のずれた分をフィルタ37の挿抜により補償し、撮像レンズ13を透過した被写体光を撮像素子32の像面上に結像させる。
【0053】
フィルタ装置36を制御してフィルタ挿抜方式のAF制御を実現するために、図3に示す第2合焦制御部66は、エッジ検出部81、エッジ傾き算出部82、判定部83、感度比算出部84、フィルタ選択部85及びフィルタ制御部86を備えている。
【0054】
ここで、フィルタ挿抜方式によるAF制御の原理を簡単に説明する。図6に示すように、被写体光が透過する撮像レンズ13の焦点位置が、撮像素子32よりも撮影者側(図6における右側)に位置するときに「前ボケ」、焦点位置が撮像素子32よりも撮像レンズ側(図6における左側)に位置するときに「後ボケ」になる。撮像レンズ13を透過した光は、フィルタ37で屈折するので、フィルタ37の挿抜によって、焦点位置が前後方向(光軸方向)にずれる。このため、フィルタ挿入前において図6に破線で示すように、焦点位置が前ボケ寄りにあっても、フィルタ37が挿入されると、図6に実線で示すように、被写体光を撮像素子32の像面32a上に結像させることが可能になる。但し、フィルタ37での屈折率は、光の色毎(つまり波長毎)に異なる。なお、図6では、前ボケ及び後ボケの様子を、撮像素子32を光軸方向へ位置変化させることで表現している。
【0055】
図7は、撮像レンズ13を透過した光の色別の軸上色収差の様子を示す。図7に示すように、撮像レンズ13を透過した光は波長の違いによる軸上色収差が発生し、焦点位置がずれる。軸上色収差は、光学系の設計値によって傾向が異なる。図7に一例で示す撮像レンズ13は、赤(R)と緑(G)の両光線の屈折率が、青(B)の光線の屈折率よりも大きく、赤(R)と緑(G)の両光線の各焦点位置が、青(B)の光線の焦点位置よりも撮像レンズ側に位置している。このため、図7に示す撮像レンズ13を備えたカメラ11では、赤(R)と緑(G)の光線の屈折率より青(B)の光線の屈折率の方が大きいフィルタ37を選定している。このように、撮像レンズ13を含む光学系の光波長特性はその光学系の設計値によって異なるので、これを考慮してRGB各色で焦点位置を一致させうる屈折率のフィルタ37を選定する。
【0056】
図5は、フィルタ装置36の構造を示す模式図である。図5(a)が模式側面図、図5(b)が模式正面図である。図5(a)に示すように、フィルタ装置36が備える複数枚(N枚)のフィルタ37は、それぞれ屈折率が異なる。また、各フィルタ37の屈折率は、前述のように撮像レンズ13を含む光学系の設計値に応じて異なる光波長特性も考慮し、RGB各色の焦点ずれを補償できる値に設定されている。本例では、図5に示すフィルタ装置36が備えるN枚(一例として5枚)のフィルタ37a,37b,37c,37d,37eは、補償できる焦点ずれ量がそれぞれの屈折率に応じて異なっている。
【0057】
各フィルタ37はアーム91の先端部に支持されており、各アーム91の基端部はそれぞれ回転軸92に固定されている。各回転軸92はN個のフィルタ用モータ46が正逆転駆動されることにより正逆転可能に構成されている。
【0058】
図5(b)に示すように、フィルタ用モータ46が正転駆動又は逆転駆動すると、フィルタ37は回転軸92を中心とする正方向又は逆方向に回動し、図5(b)に二点鎖線で示す退避位置と、同図に実線で示す挿入位置との間を移動する。このため、フィルタ37は撮像レンズ13と撮像素子32との間の光路に対して挿抜可能になっている。そして、N枚のフィルタ37a〜37eは、光軸方向に異なる位置に配置されるとともに、フィルタ1枚毎にフィルタ用モータ46が1個ずつ設けられているので、本例では、N枚のフィルタ37a〜37eのうちの任意のJ枚を重ねて同時に挿入することも可能になっている。そして、エンジン30は、挿入すべきJ枚のフィルタ37を選択して光路上に挿入すべく、N個のフィルタ用モータ46を駆動制御する。なお、フィルタ用モータ46には、薄型構造をとりうる例えば超音波モータが使用される。
【0059】
ここで、フォーカスレンズ33bの焦点の合焦位置からのずれ量は、フォーカスレンズ33bの光軸方向の位置に対応するAFモータパルス数Pで表すことができる。AF制御ではフォーカスレンズ33bの位置をAFモータ44のモータパルス数で制御しており、コントラスト検出方式によるAF制御は、フォーカスレンズ33bの最小移動単位を1パルスとする精度で行われる。これは、コントラスト検出方式によるAF制御により静止画撮影時のピント精度が決まるからである。
【0060】
これに対して、フィルタ挿抜方式によるAF制御は、スルー画表示中や動画撮影時においてモニタ20に表示される画像のウォブリングの低減を目的とする制御であり、主に動画撮影モードで使用され、静止画撮影モードではスルー画表示中にのみ使用される。このため、フィルタ挿抜方式によるAF制御は、一例としてAFモータパルス数換算で「2パルス」をフォーカスレンズ33bの最小移動単位とする精度で行われる。
【0061】
本例の場合、図5に示すフィルタ装置36が備えるN枚のフィルタ37a〜37eは、それぞれの屈折率に応じて決まる、補償できる焦点ずれ量をAFモータパルス数で表すことができる。N枚のフィルタ37a,37b,37c,37d,37eは、この順番で屈折率が段階的に大きくなり、補償できる焦点ずれ量は、屈折率の小さいものから順番に、AFモータパルス数換算で「2パルス」、「4パルス」、「8パルス」、「16パルス」、「32パルス」に設定されている。
【0062】
図3に示す第2合焦制御部66は、フィルタ装置36を制御するために、エッジ検出部81、エッジ傾き算出部82、判定部83、感度比算出部84、フィルタ選択部85及びフィルタ制御部86を備えている。
【0063】
エッジ検出部81は、主要被写体の領域でエッジを検出する。ここで、主要被写体とは、合焦させるべき被写体を指し、例えば人物が被写体である場合は、顔検出部62Aが検出した顔が主要被写体となる。図8に示す主要被写体の領域(例えば顔領域)がAF判定領域FAとなり、このAF判定領域FA内でコントラスト差の大きいエッジを検出する。このエッジの検出は、エッジ検出部81がAF判定領域FA内でRGB別もしくは輝度/色相/彩度で検索することで行う。
【0064】
図8では、横方向にx座標軸、縦方向にy座標軸が与えられ、この例ではAF判定領域FA内のx=qの位置にエッジが検出される。エッジ検出部81は、エッジを横切る方向(図8ではx方向)においてRGB別の色信号値を取得する。このとき、AF判定領域FA内のある1ピクセル行だけの信号値を取得すると、その1ピクセル行がノイズを含んで誤った値が取得される虞がある。そのため、本例では、1ピクセル行の画素値をy方向にnピクセル幅に亘ってn本積算し、その積算値をnで除した平均値を、x=qに位置するエッジを横切るRGB別の色信号値として取得し、次の式(1)〜(3)により計算する。
【0065】
【数1】
ここで、r(x,k)、g(x,k)、b(x,k)は、y方向のnピクセル幅におけるn本(k=1,2,…,n)の1ピクセル行のR信号値、G信号値、B信号値をそれぞれ示す。但し、xは、図8の例ではx=qを含む所定範囲Q(例えばAF判定領域FAの一部の範囲(一例としてq−Q/2≦x≦q+Q/2))を変域とする1行幅分の値をとる。y方向のnピクセル幅内の各1ピクセル行を指すy座標をy=y1,y2,…,yn(但し、y1<y2<…<yn)とすると、r(x,k)、g(x,k)、b(x,k)は、y座標がy=y1+1−kの1ピクセル行のR信号値、G信号値、B信号値をそれぞれ示す。
【0066】
さらにエッジ検出部81は、r_ave(x)、g_ave(x)、b_ave(x)を、エッジの最大値と最小値に正規化する。エッジ検出部81は、RGBのエッジ(x=q)における正規化出力R(x),G(x),B(x)を、次の式(4)〜(6)により算出する。
【0067】
【数2】
ここで、xminは、エッジ検出対象範囲EA内で信号値が最小(例えば図8の黒領域)となるx座標値を示し、xmaxは、エッジ検出対象範囲EA内で信号値が最大(例えば図8の白領域)となるx座標値を示す。
【0068】
図9は、正規化出力R(x),G(x),B(x)を示すグラフである。このグラフにおいて横軸がx座標軸(エッジを横切る方向の座標軸)、縦軸が正規化出力を示す。図9に示す例では、正規化出力R(x),G(x),B(x)の各ラインはほぼ重なっている。図9は、例えばコントラスト検出方式AF制御による合焦時点における正規化出力R(x),G(x),B(x)を示す。この合焦後、例えば被写体の移動などによってフォーカスレンズ33bの現在位置が合焦位置からずれる場合がある。フォーカスレンズ33bの現在位置が合焦位置に近いほど、正規化出力R(x),G(x),B(x)の各ラインの傾きは急峻となり、傾きは「1」に近い値をとる。フォーカスレンズ33bの現在位置が合焦位置から徐々にずれるに従って、正規化出力R(x),G(x),B(x)のエッジ(x=q)における傾きは徐々に小さくなる。このため、傾きがある閾値以上の値をとれば、焦点のずれ量が比較的小さい所定範囲(第2AF制御範囲W2)内であることが分かる。
【0069】
エッジ傾き算出部82は、エッジ検出部81が検出したエッジの傾きを検出する。ここで、エッジの傾きとは、エッジを横切る方向(図8の例ではx方向)における画素値(RGB信号値)の変化率を指す。エッジにおけるRGB各信号値の各傾きKR,KG,KBは、正規化出力R(x),G(x),B(x)の微分式にx=qを代入して算出する。本例では、エッジ傾き算出部82は、KR=|R(x+Δp)−R(x)|、KG=|G(x+Δp)−G(x)|、KB=|B(x+Δp)−B(x)|を用いて、エッジの位置を示すx=qを代入して計算する。但し、Δpは所定の微小値である。
【0070】
図10は、エッジの傾きKをAFモータパルス数に対してプロットしたグラフを示す。横軸がAFモータパルス数(レンズ位置)を示し、縦軸が傾きKを示す。図10の例では、エッジにおけるRGB信号値の傾きKR,KG,KBの各ラインはほぼ重なっている。
【0071】
図10の例では、合焦位置(AFモータパルス数=約170)で傾きKが最大となり、合焦位置からフォーカスレンズ33bの位置がずれるに従って傾きKは徐々に小さくなる。本実施形態では、コントラスト検出方式の第1AF制御で合焦した後、その合焦時のフォーカスレンズ33bの位置(AFレンズ位置)が、被写体の移動などによって光軸方向に移動するその時々の焦点位置からのずれ量が所定範囲内にある第2AF制御範囲W2にあるうちはフィルタ挿抜方式の第2AF制御を継続する。そして、AFレンズ位置が第2AF制御範囲W2から外れ、第1AF制御範囲内に入ると、コントラスト検出方式の第1AF制御へ移行する。
【0072】
判定部83は、最初のコントラスト検出方式による合焦後、AFレンズ位置が、第2AF制御範囲内にあるか、第1AF制御範囲内にあるかを判定する。詳しくは、判定部83は、エッジ傾き算出部82が所定周期毎に算出する傾きKが閾値Koより大きければAFレンズ位置が第2AF制御範囲W2にあると判定し、一方、傾きKが閾値Ko以下になると、AFレンズ位置が第1AF制御範囲W1にあると判定する。本例では、図9の例における微分特性により、RGBのうち2色(R,G)の閾値Koを予め設定し、判定部83が、この2色の傾きKR,KGが閾値Koより大きいか否かを判定するようにしている。図10の例では、閾値Koは一例として約0.85に設定されている。
【0073】
感度比算出部84は、感度比R/G,B/G,R/Bを算出する。ここで、感度比R/G,B/G,R/Bとは、エッジにおけるRGB各信号値の正規化出力R(x),G(x),B(x)のうちの2色毎の比である。このため、感度比算出部84は、式 R/G=R(q)/G(q)、B/G=B(q)/G(q)、R/B=R(q)/B(q)により、各感度比R/G,B/G,R/Bを算出する。
【0074】
図11は、フォーカスレンズ33bを光軸方向に移動させつつその移動過程で得られた感度比R/G,B/G,R/Bをプロットしたものである。横軸はAFモータパルス数(AFレンズ位置)、縦軸は感度比をそれぞれ示す。感度比R/G,B/G,R/Bは、撮像レンズ13を含む光学系の設計値に依存し、またズーム量(ズームレンズ33aの光軸方向の位置)によって傾向が異なる。図11に示すズーム量の例では、AF制御が適正になされている場合、フォーカスレンズ33bは合焦位置にあり、感度比R/G,B/G,R/Bは「ほぼ1」になる。ここから被写体が撮影側(カメラ側)に向かってくる場合、感度比R/G,B/G,R/Bは位置Aのときの値に変化する。一方、フォーカスレンズ33bが合焦位置にある状態から、被写体が撮影側(カメラ側)から遠ざかる場合、感度比R/G,B/G,R/Bは位置Bのときの値に変化する。
【0075】
図11に示すように、感度比B/Gは、A−B間の範囲においてAFモータパルス数が大きくなるほど一様に増加し、一方、感度比R/Bは、A−B間の範囲においてAFモータパルス数が大きくなるほど一様に減少している。これに対して感度比R/Gは、A−B間の範囲において、値の変動が小さくかつ増減している。A−B間の範囲において感度比の変化がほぼ一様なB/GとR/Bとを用いることで、感度比B/G,R/Bから合焦位置からのずれ量が分かる。
【0076】
感度比算出部84は、コントラスト検出方式によるAF制御(第1AF制御)によりフォーカスレンズ33bが合焦位置に配置された合焦時に、感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boを算出する。この合焦後、感度比算出部84は、所定時間(例えば10マイクロ秒〜100ミリ秒の範囲内の所定値)周期で感度比R/G,B/G,R/Bを算出する。そして、感度比算出部84は、所定時間周期毎に、合焦時の感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boと現在の感度比R/G,B/G,R/Bとの差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bをそれぞれ計算する。
【0077】
差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bが分かれば、図11のA−B間の範囲における感度比R/G,B/G,R/Bの関係から、第1AF制御による合焦時点の合焦位置から現在合焦させるべきAFレンズ位置までの距離がAFモータパルス数換算で求めることができる。そして、予め図11に示すようなAFモータパルス数と感度比R/G,B/G,R/Bとの関係を示すデータを、ズーム量毎に測定し、差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bと合焦位置からのずれ量ΔPとの関係を示すマップデータを作成する。このように全ズーム範囲を複数分割(m分割)し、そのm分割したズーム量毎のm個のマップデータM1〜Mmを不揮発性メモリ49に格納している。
【0078】
なお、A−B間の範囲ではフィルタ挿抜方式によるAF制御が可能であり、このA−B間の範囲に合わせて閾値Koを設定している。このため、傾きKが閾値Koより大きければ、そのときの感度比R/G,B/G,R/BはA−B間の範囲内にあることになる。
【0079】
フィルタ選択部85は、感度比算出部84が算出した差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bを基に、そのときのズーム量に応じて不揮発性メモリ49から読み出したマップデータMを参照して、差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bに応じた焦点ずれ量ΔPを求める。そして、フィルタ選択部85は、求めた焦点ずれ量ΔPから挿入すべきフィルタ37を選択する。コントラスト検出方式の第1AF制御時は、「32パルス」分補償可能なフィルタ37eを挿入して行われる。このため、フィルタ選択部85は、初期挿入(デフォルト)分の「32パルス」に、焦点ずれ量ΔPの補償に必要なパルス数(=「−ΔP」)を加算して補償パルス数ΔPt(=32−ΔP)を求め、この補償パルス数ΔPt分相当のフィルタ37を選択する。本実施形態では、N枚(5枚)のフィルタ37a〜37eは、それぞれ補償パルス数が、2,4,8,16,32パルスなので、N枚(5枚)のフィルタ37a〜37eを組み合わせて必要に応じて重ねて挿入することにより、0〜62パルスの範囲内で2パルス毎の精度でAF制御を行うことが可能である。
【0080】
フィルタ制御部86は、フィルタ選択部85が選択したフィルタ37に対応するフィルタ用モータ46をフィルタ駆動回路38を介して駆動制御し、選択したフィルタ37を、撮像レンズ13と撮像素子32との間の光路上に挿入する。このとき、それまで挿入されていたフィルタ37を抜く駆動と、新たにフィルタ37を挿入する駆動とを同時に行う。但し、新たなフィルタ37が挿入される前にそれまで挿入されていたフィルタ37が抜かれると、一瞬ピントがずれるので、複数枚の入れ換えがあるときは、一瞬の入れ換え過程でもその中で段階的に入れ換える制御を採用することが望ましい。例えばまず補償パルス数の一番小さなフィルタ37の挿入と、それまで挿入されていたフィルタのうち補償パルス数の一番小さなフィルタ37の抜出とを同時に行う。次に補償パルス数の2番目に小さなフィルタ37の挿入と、それまで挿入されていたフィルタのうち補償パルス数の2番目に小さなフィルタの抜出とを同時に行う。そして、以降、この手順を同様に行ってフィルタ37の入れ換えを段階的に行ってもよい。このとき、挿入と抜出とで各フィルタ37の補償パルス数が大きく異なる場合は、入れ換え過程で補償パルス数の大きな変化を回避できるように入れ換えるべきフィルタ37を段階毎に選択して入れ換えを行うとよい。
【0081】
表示制御部67は、モニタ制御回路51を介してモニタ20に、スルー画、撮影中の動画、撮影直後の静止画、再生時の静止画及び再生中の動画や、メニュー画面等を表示させる表示制御を行う。
【0082】
次にカメラ11におけるAF制御について説明する。電源スイッチ17が操作されてカメラ11が電源ONされると、エンジン30内のコンピュータ31が図14にフローチャートで示すAF制御処理用のプログラムを実行する。
【0083】
以下、カメラ11におけるAF制御を、図14に示すフローチャートに従って、図12及び図13を適宜用いて説明する。ここで、カメラ11の電源ON時は撮影モードにあり、モニタ20にはスルー画が表示される。そして、動画撮影モードにおいて、レリーズスイッチ18が操作されると、動画撮影が開始される。また、このスルー画表示中や動画撮影中にユーザーによりズームボタン22が操作されると、エンジン30内のコンピュータ31は、ズーム駆動回路42を介してズーム用モータ43を駆動し、ズームレンズ33aを光軸方向に沿って移動させ、ズームボタン22の操作に応じたズーム量に調整する。このスルー画表示中と動画撮影中においては、コンピュータ31が図14に示すAF制御を実行する。
【0084】
まずステップS10では、コンピュータ31は、不揮発性メモリ49から現在のズーム量(初期ズーム量)に応じたマップを読み出す。
次のステップS20では、コンピュータ31は、コントラスト検出方式によるAF制御を(第1AF制御)行う。この第1AF制御は、詳しくはコンピュータ31の第1合焦制御部65が行う。この第1AF制御開始に際して、「32パルス」分のフィルタ37eを最初に挿入し、このフィルタ挿入状態で第1AF制御は行われる。レンズ制御部72がAFモータ44を駆動させてフォーカスレンズ33bを光軸方向に沿って移動させつつ、コントラスト検出部71が主要被写体のコントラストを逐次検出してそのコントラスト評価値Cを算出し、その評価値Cが増加する方向へフォーカスレンズ33bを移動させる。そして、サーチ部73が、図4に示す「山登り制御」を行って最大のコントラスト評価値Cmaxとなるレンズ位置Pmax(AFモータパルス数)をサーチし、レンズ制御部72がフォーカスレンズ33bをそのサーチしたレンズ位置Pmax(合焦位置)まで移動させる。こうして主要被写体光が撮像素子32の像面32aに結像するように、フォーカスレンズ33bが合焦位置に配置される。
【0085】
次のステップS30では、コンピュータ31は、主要被写体のエッジのRGB検出を行う。このRGB検出は、詳しくはコンピュータ31のエッジ検出部81が行う。エッジ検出部81は、コントラスト検出方式によるAF制御で合焦した後(S20)、その合焦時点における主要被写体のAF判定領域FAにおけるエッジ(図8参照)を検出し、さらに検出したエッジにおける正規化出力R(x),G(x),B(x)を算出する(図9参照)。
【0086】
次のステップS40では、コンピュータ31は、ズーム量が所定量以上変化したか否かを判断する。つまり、マップデータMの変更が必要なほどズーム量が変化したか否かを判断する。マップデータMの変更が必要なほどズーム量が変化した場合はステップS50に進み、マップデータMの変更が必要なほどはズーム量が変化しなかった場合は、ステップS60に進む。
【0087】
ステップS50では、コンピュータ31は、ズーム量に応じたマップデータMを読み出し、使用するマップデータMを変更する。なお、この例では、例えば図11に示す感度比特性データに基づくマップデータMが読み出されているものとする。
【0088】
ステップS60では、コンピュータ31は、コントラスト検出方式AF制御による合焦時点の主要被写体のエッジにおける感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boを算出する。
次のステップS70では、コンピュータ31は、電源OFFであるか否かを判断する。すなわち、このAF制御ルーチンの終了条件を満たすか否かを判断する。電源OFFであれば当該ルーチンを終了し、電源OFFでなければ(つまり電源ONであれば)ステップS80に進む。但し、通常、ユーザーは撮影を終えるまでは電源OFFすることはない。
【0089】
ステップS80では、コンピュータ31は、主要被写体のエッジの傾きKR,KGを算出する。この傾きKR,KGの算出は、詳しくはコンピュータ31のエッジ傾き算出部82が行う。エッジ傾き算出部82は、エッジ(x=q)におけるR信号値の傾きKR,KGを、式 KR=|R(x+Δp)−R(x)|、KG=|G(x+Δp)−G(x)|に、エッジの位置を示すx=qを代入して計算する。
【0090】
次のステップS90では、コンピュータ31は傾きKR,KGが閾値Koより大きいか否かを判定する。この判定は、詳しくはコンピュータ31の判定部83が行う。判定部83は、傾きKR,KGが閾値Koより大きいと判定した場合はステップS100に進み、傾きKR,KGが閾値Koより大きくない(つまり傾きKR,KGが閾値Ko以下である)と判定した場合はステップS120に進む。
【0091】
ステップS100では、コンピュータ31は、主要被写体のエッジにおける感度比R/G,B/G,R/Bを算出し、この現在の感度比R/G,B/G,R/Bと合焦時点の感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boとの差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bを算出する(ΔR/G=R/G−Ro/Go、ΔB/G=B/G−Bo/Go、ΔR/B=R/B−Ro/Bo)。この感度比及び感度比の差分の算出は、詳しくはコンピュータ31の感度比算出部84が行う。
【0092】
次のステップS110では、コンピュータ31は、差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bに適したフィルタ37を挿入する。この処理は、詳しくはコンピュータ31のフィルタ選択部85とフィルタ制御部86とが行う。例えば撮像レンズ13の光学系特性及び現在のズーム量において、感度比が図11に示すように変動する場合、A−B間の範囲で、R/Gは1つの値から2つのAFモータパルス数が決まる場合があるので、差分ΔR/Gをフィルタ選択に使用するのは不適切である。このため、図11の例では、まずフィルタ選択部85は、1つの感度比から必ず1つのAFモータパルス数が決まる差分ΔB/G,ΔR/Bを基に、挿入すべきフィルタ37を選択する。
【0093】
例えば図11において、合焦位置における感度比Bo/Go,Ro/Boが「約1」であり、現在のフォーカスレンズ33bの位置が図11におけるA位置にあるとすると、現在の感度比B/G,R/Bはそれぞれ「0.88」と「1.13」なので、差分ΔB/G=−0.12、差分ΔR/B=0.13と算出される。そして、フィルタ選択部85は、差分ΔB/G=−0.12を基にマップデータMを参照することで焦点ずれ量ΔP=「−20パルス」を取得し、またΔR/B=0.13を基にマップデータMを参照することで焦点ずれ量ΔP=「−20パルス」を取得する。そして、フィルタ選択部85は、焦点ずれ量ΔP=−20パルスを補償しうる分のフィルタ37を選択する。
【0094】
本例では、「32パルス」分のフィルタ37eを最初に挿入した状態で、コントラスト検出方式によるAF制御(第1AF制御)を行っている。このため、フィルタ選択部85は、初期挿入(デフォルト)分の「32パルス」に、焦点ずれ量ΔPの補償に必要なパルス数(=「−ΔP」)を加算して、補償パルス数ΔPt(=32−ΔP)を求め、この補償パルス数ΔPt分相当のフィルタ37を選択する。この例では、補償パルス数ΔPt=52パルスなので、「52パルス」分のフィルタ37を挿入すればよいことになる。そのため、フィルタ選択部85は、「16パルス」補償可能なフィルタ37dと、「4パルス」補償可能なフィルタ37bとを、合焦時の「32パルス」のフィルタ37eに加えた、合計3枚のフィルタ37b,37d,37eを選択する。
【0095】
そして、フィルタ制御部86は、選択された3枚のフィルタ37b,37d,37eのうち現在既に挿入されているフィルタ37e以外の2枚のフィルタ37b,37dに対応する2個のフィルタ用モータ46を駆動して、2枚のフィルタ37b,37dをさらに挿入する。この結果、3枚のフィルタ37b,37d,37eが挿入され、主要被写体は撮像素子32の像面32a上に結像するようになる。
【0096】
また、現在のフォーカスレンズ33bの位置が図11におけるB位置にあったとすると、このとき、現在の感度比B/G,R/Bはそれぞれ「1.10」と「0.93」なので、差分ΔB/G=0.10,差分ΔR/B=−0.07として算出される。そして、これらの差分ΔB/G,ΔR/Bのときの焦点ずれ量ΔPは共に「+18パルス」と算出される。フィルタ選択部85は、補償パルス数ΔPt=32−ΔP=32−18=14パルスと算出するので、「14パルス」分のフィルタ37を挿入すればよいことになる。そのため、フィルタ選択部85は、「2パルス」、「4パルス」、「8パルス」を補償可能な3枚のフィルタ37a,37b,37cを選択する。そして、フィルタ制御部86は、4つのフィルタ用モータ46を駆動して、選択された3枚のフィルタ37a,37b,37cを、現在既に挿入されているフィルタ37eに入れ換えて挿入する。この結果、主要被写体は撮像素子32の像面32a上に結像するようになる。
【0097】
上記ではA位置とB位置という第2AF制御範囲の境界位置という極端な例を説明したが、実際は焦点が合焦位置に対して少しずれる度にフィルタ37の挿抜が行われる。このため、第2AF制御範囲においては、逐次実行されるフィルタ挿抜方式による第2AF制御により、常にほぼ合焦状態に保たれる。この結果、動画撮影時におけるコントラスト検出方式AF制御時のサーチに起因する画像のウォブリングを回避できる。よって、ウォブリングの発生頻度の少ない高品質な動画画像を撮影及び保存することができる。
【0098】
一方、ステップS90で傾きKR,KGが閾値Ko以下と判定した場合は、ステップS120において、コンピュータ31は、フィルタ37が初期状態であるか否かを判断する。詳しくは、コンピュータ31の切換制御部64が、初期挿入されるべきフィルタ37eが挿入され、かつその他のフィルタ37a〜37dが挿入されていない初期状態にあるか否かを判断する。フィルタ37が初期状態になければステップS130に進み、フィルタ37が初期状態にあればステップS140に進む。
【0099】
ステップS130では、コンピュータ31はフィルタ37を初期状態にする。詳しくは、コンピュータ31のフィルタ制御部86がフィルタ用モータ46を駆動して、初期挿入されるべきフィルタ37eのみ挿入され、その他のフィルタ37a〜37dが抜かれた初期状態にする。
【0100】
そして、ステップS140では、コンピュータ31は、コントラスト検出方式によるAF制御(第1AF制御)を実行する。この第1AF制御は、詳しくはコンピュータ31の第1合焦制御部65が実行する。第1AF制御が終了して合焦すると、フィルタ挿抜方式の第2AF制御に移行すべくステップS40に戻り、S40〜S60の処理を行った後、S70〜S110の処理を繰り返すことで、所定時間周期毎にフィルタ挿抜方式の第2AF制御を行う。そして、第2AF制御中に傾きKR,KGが閾値Ko以下になると(S90で否定判定)、切換制御部64が、フィルタ37を必要に応じて初期状態とした後(S130)、コントラスト検出方式の第1AF制御(S140)に切り換える。
【0101】
以上詳述したようにこの第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)コントラスト検出方式によるAF制御による合焦後に、フィルタ挿抜方式のAF制御を行うので、コントラスト検出方式によるAF制御時のサーチ動作に起因するウォブリングの発生頻度を低減し、ウォブリングに起因する画像のぶれを低減することができる。
【0102】
(2)フィルタ37を複数枚(N枚)備え、第2合焦制御部66は、複数のフィルタ37を重ね合わせて光路上に配置することにより複数のフィルタの組合せによって異なる屈折率を作り出す。よって、少ない枚数のフィルタ37で細かくAF制御を行うことができる。
【0103】
(3)特に、N枚のフィルタ37を、補償可能なパルス数を、2、4、8、16、32パルスとした。つまり、N枚のフィルタ37を、最小移動単位のパルス数をDとした場合に、D、2D、4D、8D,…,2^(N−1)・Dパルス分を補償可能なそれぞれ屈折率の異なるフィルタとした。このため、第2AF制御の精度の割に、フィルタ37の枚数を少なく済ませることができる。よって、第2AF制御の精度の割に、フィルタ装置36の小型化(薄型化)が可能であり、カメラ11をコンパクトに構成することができる。
【0104】
(4)ズーム量毎にマップデータを用意したので、ズーム量に応じた適切な第2AF制御を実現できる。
(5)エッジにおける色信号値の傾きKを求め、傾きKと閾値Koとの比較によって、第1AF制御と第2AF制御とを切り換えるので、第1AF制御と第2AF制御との間で適切な切り換えを行うことができる。
【0105】
(6)感度比R/G,B/G,R/Bを用いて、第1AF制御による合焦時点の感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boとの差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bを基に、挿入すべきフィルタ37を選択するので、第2AF制御を適切に行うことができる。
【0106】
前記実施形態は上記に限定されず、以下の態様に変更することもできる。
・図15に示すように、フィルタ37を光軸方向に移動させるスライダ94及びリニアモータ95を更に設け、フィルタ37を光路に対してフィルタ用モータ46の駆動により挿抜可能かつリニアモータ95の駆動により光軸方向に移動可能な構成も採用できる。この場合、フィルタ37を挿入し、かつ挿入したフィルタ37を光軸方向に移動させることにより第2AF制御を行う。この構成によれば、フィルタ37の光軸方向の移動によってもAF制御を行えるので、フィルタ37の枚数を少なくすることができるうえ、前記実施形態のような断続的な第2AF制御に替えて、連続的な第2AF制御が可能になる。なお、図15の例では、屈折率の異なる複数枚(2枚)のフィルタ37を設けたが、フィルタ37は1枚でもよいし、3枚以上の複数枚でもよい。
【0107】
・図11のグラフにおけるA位置とB位置とに相当する焦点ずれ量ΔPa又はΔPaになったか否かを判定し、焦点ずれ量ΔPとΔPa又はΔPaとの比較結果に基づいて、第1AF制御と第2AF制御との間で切り換えを行う構成としてもよい。
【0108】
・前記実施形態において、フィルタを重ね合わせて挿入する構成に替えて、複数枚のフィルタ37のうち選択された1枚のみを挿入する構成でもよい。
・前記実施形態において、フィルタは透明でもスモークなどの色付きでもよい。
【0109】
・前記実施形態において、フィルタを1枚のみ備えたフィルタ装置とした構成も採用してよい。
・電子カメラは、デジタルカメラに限定されず、ビデオカメラの他、カメラ機能を備えたPDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話、携帯用ゲーム機などでもよい。
【符号の説明】
【0110】
11…電子カメラとしてのカメラ、13…撮像レンズ、17…電源スイッチ、18…レリーズスイッチ、20…モニタ、21…モード選択スイッチ、22…ズームボタン、24…撮影ボタン、30…エンジン、31…コンピュータ、32…撮像手段を構成する撮像素子、33a…ズームレンズ、33b…撮影レンズとしてのフォーカスレンズ、34…絞り、35…シャッタ、36…フィルタ装置、37,37a〜37e…フィルタ、38…第2駆動手段を構成するフィルタ駆動回路、39…第1駆動手段を構成するフォーカス駆動回路、40…シャッタ駆動回路、41…絞り駆動回路、42…第3駆動手段を構成するズーム駆動回路、43…第3駆動手段を構成するズーム用モータ、44…第1駆動手段を構成するフォーカス用モータ(AFモータ)、45…AFセンサ、46…第2駆動手段を構成するフィルタ用モータ、47…撮像制御回路、48…映像回路、49…不揮発性メモリ、51…モニタ制御回路、52…メモリ制御回路、53…操作検出回路、54…メモリカード、61…主制御部、62…画像処理部、62A…顔検出部、63…ズーム制御部、64…切換制御部、65…第1の合焦制御手段としての第1合焦制御部、66…第2合焦制御部、67…表示制御部、71…コントラスト検出部、69…レンズ制御部、73…サーチ部、81…検出手段を構成するエッジ検出部、82…傾き算出手段としてのエッジ傾き算出部、83…判定部、84…検出手段を構成するとともに感度比算出手段としての感度比算出部、85…第2の合焦制御手段を構成するフィルタ選択部、86…第2の合焦制御手段を構成するフィルタ制御部、R/G,B/G,R/B…感度比、ΔR/G,ΔB/G,ΔR/B…差分、ΔP…ずれ量としての焦点ずれ量、ΔPt…補償パルス数。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントラスト検出方式のオートフォーカス制御(AF制御)を行う自動合焦制御装置、電子カメラ及び自動合焦制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやビデオカメラなどの電子カメラには、オートフォーカス装置(自動合焦装置)が設けられている。オートフォーカス装置では主な一つの方式としてコントラスト検出方式が広く利用されている。コントラスト検出方式は、フォーカスレンズを光軸方向に移動させつつ各位置における撮像画像のコントラスト値を求め、コントラスト値が最も高くなるレンズ位置をフォーカス位置として検出する方式である(例えば特許文献1)。
【0003】
特に特許文献1における合焦検出装置は、被写体光のエッジ部分を所定範囲にわたって複数個検出し、各エッジ部分の画素数を検出するエッジ検出手段と、検出された複数のエッジ部分の画素数とその度数から算出される重心値に基づいて被写体の合焦状態を判別する判別手段とを備えた構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−274405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年のデジタルスチルカメラでは、モニタに画像を表示させながらコントラスト値を得るため、ウォブリングによる画像の乱れやAFレンズ群のサーチ時間がかかるという問題があった。
【0006】
例えば特許文献1のような輝度情報を使用したコントラストによる検出方法では、AFレンズを広範囲で駆動させるため、スルー画表示中や動画撮影中にウォブリングによるぶれた画像となってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、コントラスト検出方式を採用するオートフォーカス装置において、合焦動作時のウォブリングに起因する画像のぶれを低減できる自動合焦制御装置、電子カメラ及び自動合焦制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明は、撮影レンズを光軸方向に移動させる第1駆動手段と、撮像手段が取得した画像のコントラスト値に基づいて、前記撮影レンズを合焦位置に配置するよう前記第1駆動手段を制御する第1の合焦制御手段と、前記撮影レンズと前記撮像手段との間の光路に対して挿抜可能に設けられるとともに前記撮影レンズの合焦位置からのずれ量を補償可能な屈折率を有する少なくとも一つのフィルタと、前記フィルタを前記光路に対して挿抜させる第2駆動手段と、前記撮影レンズの合焦位置に対するずれ量を検出する検出手段と、前記検出手段が検出したずれ量に応じた屈折率のフィルタを前記光路に対して挿抜するよう前記第2駆動手段を制御して合焦を行う第2の合焦制御手段と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
本発明の自動合焦制御装置では、前記フィルタを複数備え、前記第2の合焦制御手段は、複数のフィルタを重ね合わせて光路上に配置することにより複数のフィルタの組合せによって異なる屈折率を作り出すことが好ましい。
【0010】
本発明の自動合焦制御装置では、前記第2の合焦制御手段は、前記光路上における前記フィルタの挿抜と、前記光路上に挿入された該フィルタの光軸方向における移動とにより合焦を行うことが好ましい。
【0011】
本発明の自動合焦制御装置では、ズームレンズと、前記ズームレンズを光軸方向に移動させて焦点距離を変化させることでズーム量を調整する第3駆動手段と、前記第2の合焦制御手段は、前記ズーム量及び前記ずれ量に応じて前記光路上に挿入すべきフィルタを選択することが好ましい。
【0012】
本発明の自動合焦制御装置では、前記検出手段は、前記撮像手段が取得した画像のRGB3色の信号値のうち2色毎の組合せの値の比で示される3つの感度比のうち少なくとも1つを算出する感度比算出手段を備え、前記少なくとも1つの感度比に基づいて前記合焦位置からの前記ずれ量を求めることが好ましい。
【0013】
本発明の自動合焦制御装置では、前記撮像手段で取得されたRGB信号値の前記画像中のエッジ部分を横切るときの傾きを求める傾き算出手段を備え、前記傾きが閾値以上のときに前記第2の合焦制御手段による第2の合焦制御を行い、前記傾きが前記閾値未満になると、前記第2の合焦制御から前記第1の合焦制御手段による第1の合焦制御へ切り替えることが好ましい。
【0014】
本発明は、電子カメラであって、被写体を撮影する撮像手段と、上記発明の自動合焦制御装置と、を備えたことを要旨とする。
本発明は、撮影レンズを光軸方向に移動させながら撮像手段が取得した画像のコントラスト値に基づいて、前記撮影レンズを合焦位置に配置するよう合焦制御を行う第1の合焦制御ステップと、前記第1の合焦制御ステップによる合焦が行われた前記撮影レンズの合焦位置に対するずれ量を検出する検出ステップと、前記ずれ量を補償可能な屈折率を有するフィルタが前記撮影レンズの光路上に配置されるように前記光路に対してフィルタの挿抜を行うことで合焦する第2の合焦制御ステップと、を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コントラスト検出方式を採用するオートフォーカス装置において、合焦動作時のウォブリングに起因する画像のぶれを低減できる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電子カメラの斜視図。
【図2】電子カメラの背面図。
【図3】電子カメラの電気的構成を示すブロック図。
【図4】コントラスト検出方式によるAF制御を説明するグラフ。
【図5】(a)フィルタ装置の構成を示す模式側面図、(b)その模式正面図。
【図6】フィルタ挿抜方式の原理を説明する模式側面図。
【図7】撮像光学系における軸上色収差を示す模式側面図。
【図8】エッジ検出を説明する主要被写体画像の模式図。
【図9】正規化出力R(x),G(x),B(x)を示すグラフ。
【図10】AFレンズ位置によるエッジの傾きの変動を示すグラフ。
【図11】AFレンズ位置による感度比の変動を示すグラフ。
【図12】フィルタ非挿入時における撮像光学系を示す模式側面図。
【図13】フィルタ挿入時における撮像光学系を示す模式側面図。
【図14】AF制御処理を示すフローチャート。
【図15】変形例におけるフィルタ装置の構成を示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を電子カメラの一種であるデジタルカメラに具体化した一実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。
図1はデジタルカメラの斜視図、図2はその背面図である。図1に示すように、本実施形態のデジタルカメラ(以下、単に「カメラ11」という)は、略直方体形状をなすカメラ本体12を有している。カメラ本体12の前面(正面)略中央部には撮像レンズ13を内装した伸縮自在な鏡筒13aが設けられるとともに、鏡筒13aよりも上側となる二位置にはストロボ14(フラッシュ)、合焦動作時に赤外線等を被写体に向けて照射する発光体及びセルフ撮影を行うときに点滅するセルフLED等の光を照射する照射窓部15が設けられている。
【0018】
また、カメラ本体12の上面には左寄りの二位置に電源スイッチ17及びレリーズスイッチ18が設けられ、略中央寄りの位置にスピーカ19が設けられている。電源スイッチ17は、カメラ11を電源オン状態とするときに撮像者により押し下げ操作されるものである。レリーズスイッチ18はカメラ11に撮像動作を開始させるときに撮像者により押し下げ操作(すなわち、オン操作)される操作ボタンである。
【0019】
一方、図2に示すように、カメラ本体12の背面側には、矩形状をなすモニタ20が設けられている。モニタ20は、一例として液晶表示装置(LiquidCrystalDisplay)(LCD)により構成されている。そして、モニタ20の上側右寄りの位置には静止画モードと動画モードとの間で切り換可能なモード選択スイッチ21が設けられている。また、カメラ本体12の背面におけるモニタ20の右上位置には、主として撮像レンズ13をズームアップ又はズームダウンさせるときに操作されるズームボタン22が設けられている。ズームボタン22の下側位置には、主としてモニタ20にメニュー画面を表示させるときに操作されるメニューボタン23が設けられている。
【0020】
また、メニューボタン23の下方には、撮影ボタン24と再生ボタン25とが設けられている。再生モード中に撮影ボタン24を操作すると撮影モードに切り換わり、撮影モード中に再生ボタン25を操作すると再生モードに切り換わるようになっている。動画撮影を行う際は、動画モードかつ撮影モードにし、レリーズスイッチ18を操作すると動画撮影が開始され、その動画撮影中にレリーズスイッチ18を操作するとその動画撮影が終了するようになっている。
【0021】
さらに各ボタン24,25の下側位置には、上下左右の4方向を含む複数方向の選択操作が可能なセレクトボタン26(選択ボタン)が設けられ、その中央部には決定ボタン27(OKボタン)が設けられている。セレクトボタン26は、主としてメニュー画面における項目の選択及び設定内容の変更を行う操作に用いられる。決定ボタン27は、メニュー画面で選択した項目や設定内容を確定(決定)する操作に用いられる。
【0022】
次に、本実施形態のカメラ11における回路構成を図3に示すブロック図に基づき説明する。図3に示すように、カメラ11は各種動作を統括的に制御するMPU(Micro Processing Unit)などからなるエンジン30を備えている。エンジン30はコンピュータ31を内蔵し、コンピュータ31が各種プログラムを実行することによりカメラ11の各種制御を行う。また、カメラ11は、撮像レンズ13のレンズ群を通過した被写体光を撮像レンズ13の像空間側において結像させるための撮像素子32をカメラ本体12内に有している。この撮像素子32は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサからなり、その撮像面に結像した被写体像に対応した信号電荷を蓄積し、その蓄積した信号電荷を画素信号と呼ばれるアナログ信号として出力する。なお、撮像素子32は、電源スイッチ17が押し下げ操作された後において、レリーズスイッチ18が押し下げ操作される前段階の待機モードにおいても、被写体の経時変化するスルー画像の画素信号を出力し得るように構成されている。
【0023】
図3に示す撮像レンズ13は、鏡筒13a内に、撮影画角を変更するズームレンズ33a、焦点を合わせるフォーカスレンズ33bを備えている。そして、鏡筒13a内には、絞り34及びシャッタ35が設けられている。さらにフォーカスレンズ33bと撮像素子32との間には、フィルタ37を撮像レンズ13の光路に対して挿抜可能な状態に備えるフィルタ装置36が設けられている。本例では、フィルタ37は複数枚備えられている。
【0024】
エンジン30には、撮像レンズ13、絞り34、シャッタ35及びフィルタ装置36などを撮影条件に応じて駆動制御するため、フィルタ駆動回路38、フォーカス駆動回路39、シャッタ駆動回路40、絞り駆動回路41及びズーム駆動回路42が接続されている。
【0025】
ズームレンズ33aは、ズーム用モータ43の駆動により光軸方向に沿って移動可能に構成されている。エンジン30はズーム駆動回路42を介してズーム用モータ43を駆動制御し、ズームレンズ33aを光軸方向に移動させることによって撮影画角を変更する。
【0026】
フォーカスレンズ33bは、フォーカス用モータ(以下、「AFモータ44」と称す)の駆動により光軸方向に沿って移動可能に構成されている。エンジン30はフォーカス駆動回路39を介してAFモータ44を駆動制御し、フォーカスレンズ33bを光軸方向に移動させることによって焦点を合わせ、例えば撮像レンズ13を透過した被写体光を撮像素子32の像面に結像させる。このとき、エンジン30は、AFセンサ45の検出信号に基づきフォーカスレンズ33bの光軸方向の位置を取得する。
【0027】
絞り34は、絞り駆動回路41により駆動される不図示のアクチュエータにより駆動される。エンジン30は絞り駆動回路41を介してアクチュエータを駆動制御することによって絞り34を調節し、撮像レンズ13を通過する光量を調整する。
【0028】
シャッタ35は、シャッタ駆動回路40により駆動される不図示のアクチュエータにより開閉可能に構成されている。エンジン30はシャッタ駆動回路40を介してアクチュエータを駆動制御することによってシャッタ35を作動させ、露光時間を制御する。
【0029】
また、エンジン30には、撮像素子32に接続された撮像制御回路47及び映像回路48が接続されている。撮像制御回路47は、撮像素子32を駆動して、露光時間制御、結像された像の電気信号への変換、変換した電気信号の出力等を制御する。
【0030】
映像回路48は、撮像素子32の出力する電気信号を増幅し、デジタル信号に変換してエンジン30に出力する。詳しくは、撮像素子32の出力側に直列に接続されている映像回路48は、AFE(Analog Front End)部とA/D変換器とを有している。AFE部は、撮像素子32で光電変換されて出力されたアナログ信号からなる画素信号を所定のタイミングでサンプリング(相関二重サンプリング)して、例えばISO感度に基づく所定の信号レベルとなるように増幅させる。A/D変換器は、AFE部から出力された増幅後の画素信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、このデジタル画素信号をエンジン30に出力する。
【0031】
エンジン30は、映像回路48から入力したデジタル画素信号に対して、色補間処理、階調補正、ホワイトバランス処理及び輪郭補償等の画像処理を施すことにより所定の画像データを生成する。
【0032】
さらに、エンジン30には、バスを介して不揮発性メモリ49及びバッファメモリ50が接続されている。また、エンジン30には、モニタ制御回路51(LCD駆動回路)、メモリ制御回路52及び操作検出回路53等が接続されている。
【0033】
不揮発性メモリ49には、エンジン30を動作させるためにエンジン30内のコンピュータ31が実行するためのプログラムが記憶されている。本実施形態では、図14にフローチャートで示す自動合焦制御(AF制御)用のプログラムなどが不揮発性メモリ49に記憶されている。また、不揮発性メモリ49には、フィルタ装置36を用いた自動合焦制御で使用するマップデータM1,M2,…Mmが記憶されている。このマップデータM1〜Mmについては後述する。
【0034】
バッファメモリ50は、撮影画像データを一時的に格納し、画像処理過程のデータ、画像処理後のデータ、画像圧縮後のデータ、さらにエンジン30のその他の処理過程のデータの一時記憶に使用される。バッファメモリ50は、例えばDRAM等により構成される。
【0035】
エンジン30が画像処理を行って生成した画像データは、バッファメモリ50に一時記憶される。エンジン30は、バッファメモリ50に一時記憶した画像データをモニタ制御回路51へ送り、モニタ制御回路51は画像データに基づく画像をモニタ20に表示させる。モニタ20には、例えばスルー画像、撮影中の動画画像、撮影直後の確認画像(静止画)、再生画像(再生動画・再生静止画)が表示される。
【0036】
その後、エンジン30は、バッファメモリ50から画像データを読出して、例えばJPEG方式でデータ圧縮処理を行い、圧縮処理後の画像データを含む画像ファイルを生成し、生成した画像ファイルをメモリ制御回路52に接続された不図示のカードスロットを介してカメラ11に着脱可能とされたメモリカード54に記憶するようになっている。また、エンジン30は、メモリカード54から画像ファイルを読出して伸張処理を施した後の画像データをバッファメモリ50に一時記憶させてモニタ制御回路51を介してモニタ20に再生画像(再生動画・再生静止画)を表示させる。
【0037】
モニタ制御回路51は、エンジン30より出力された表示データをモニタ20に出力するとともに、モニタ20の点灯、消灯、表示制御を行い、モニタ20にスルー画や再生画像等を表示させる。
【0038】
メモリ制御回路52は、メモリカード54を挿抜可能な構造のスロットを有し、スロットに挿着されたメモリカード54に撮影画像ファイルを転送・記憶したり、メモリカード54に記憶されている画像ファイル等の情報を読み取り、エンジン30に出力したりする機能を有している。
【0039】
操作検出回路53には、電源スイッチ17、レリーズスイッチ18、モード選択スイッチ21、ズームボタン22、メニューボタン23、撮影ボタン24、再生ボタン25、セレクトボタン26及び決定ボタン27などの各種操作スイッチが接続されている(但し、図3では一部のスイッチ(ボタン)のみ図示)。操作検出回路53は、ユーザーによるスイッチ操作を検出してその操作情報をエンジン30に出力する。
【0040】
エンジン30内のコンピュータ31は、不揮発性メモリ49に記憶されたプログラムを実行してカメラ11の動作を制御するとともに、撮影された画像の処理及び再生を行う。エンジン30は、電源スイッチ17の操作に応答してカメラ11の電源の投入(ON)/遮断(OFF)を行う。また、エンジン30は、電源ON状態の下で、ズームボタン22の操作に応答してズーム駆動回路42を介してズーム用モータ43を駆動してズームレンズ33aを移動させるズーミング動作を行わせ、フォーカス駆動回路39を介してAFモータ44を駆動してフォーカスレンズ33bを移動させるフォーカシング動作を行わせる。さらに、エンジン30は、絞り駆動回路41及びシャッタ駆動回路40を駆動して絞り34の調整及びシャッタ35の開放時間調整を行うことにより露出制御を行う。
【0041】
エンジン30は、撮影準備段階においてはシャッタ35を開放し、撮像レンズ13を透過した光を撮像素子32に結像させる。撮像素子32に結像した被写体像はエンジン30によって周期的に画像処理され、被写体を動画的にモニタ20に映し出すことにより、モニタ20にスルー画が表示される。
【0042】
また、エンジン30によって、画像のコントラストを検出し、フォーカスレンズ33bを移動させ、最もコントラストの高いフォーカスレンズ位置を探索し、その位置にフォーカスレンズ33bを移動させることによりオートフォーカス制御(AF制御)を行う。
【0043】
また、エンジン30は画像の輝度レベルを検出し、検出した輝度レベルから絞り34とシャッタ35のシャッタ速度を制御して自動露出制御(AE制御)を行う。
図4は、エンジン30内のCPU(コンピュータ)がプログラムを実行することによりエンジン30内に構築される機能構成を示す。図4に示すように、エンジン30内のコンピュータ31には、主制御部61、画像処理部62、ズーム制御部63、切換制御部64、第1合焦制御部65、第2合焦制御部66、表示制御部67などが備えられている。なお、コンピュータ31内の各機能部は、AF制御及びズーム制御に関係する部分のみを示し、その他の各種制御に係る機能部分は省略している。
【0044】
主制御部61は、各部を統括制御し、AF制御、ズーム制御以外に、絞り制御、シャッタ制御などを行う。
画像処理部62は、撮像素子32から映像回路48(図3を参照)を介して入力した画素信号に基づいて各種の画像処理(ホワイトバランス処理等)を施して画像データを生成する画像処理を行う機能を有している。画像処理部62は、顔検出部62Aを備えている。顔検出部62Aは、画像中における人物の顔を検出する顔検出を行う。両眼、鼻、口などの顔の部品の特徴を抽出しその特徴量に基づいて顔の各部品を抽出し、両眼と鼻と口の各位置関係を利用して顔を検出する。顔検出部62Aは、検出した顔について、さらに瞳検出、顔向き検出、顔輪郭検出、表情検出(笑顔検出)などの顔に関する各種検出処理を行う。AF制御では、検出した顔に焦点を合わせるようにフォーカスレンズの位置制御が行われる。このため、検出した顔のコントラスト評価値が最大になるようにフォーカスレンズの位置制御が行われる。
【0045】
ズーム制御部63は、ズームボタン22の操作に基づき広角側と望遠側のうちその操作方向に応じた回転方向へズーム用モータ43を駆動させることにより、ズームレンズ33aを広角側と望遠側のうちその操作方向に応じた方向へ移動させてズーム(倍率)の調節を行う。
【0046】
切換制御部64、第1合焦制御部65及び第2合焦制御部66は、AF制御装置の制御手段を構成し、これらの各制御部64〜66によりAF制御が行われる。そして、切換制御部64は、第1合焦制御部65と第2合焦制御部66のうち一方を選択して両者の間でAF制御の主体を切り換える。
【0047】
ここで、第1合焦制御部65は、コントラスト検出方式のAF制御を行う。第1合焦制御部65は、コントラスト検出部71、レンズ制御部72及びサーチ部73を備えている。コントラスト検出部71は、撮像素子32により撮像されてエンジン30に入力された画像データに対して顔検出部62Aが検出した顔の領域のコントラストを検出する。レンズ制御部72は、AFモータ44を駆動させてフォーカスレンズ33bを光軸方向に移動させるレンズ位置制御を行う。
【0048】
サーチ部73は、レンズ制御部72がAFモータ44を駆動させてフォーカスレンズ33bを光軸方向に移動させつつコントラスト検出部71が各レンズ位置毎に検出及び算出したコントラスト評価値を逐次取得して、今回と前回の各評価値を比較しつつ、所謂「山登り制御」を行って、最大のコントラスト評価値となるレンズ位置(AFモータパルス数)をサーチする。
【0049】
図4は、コントラスト検出方式によるAF制御を説明するグラフである。このグラフにおいて、横軸はレンズ位置(AFモータパルス数)であり、縦軸はコントラスト評価値である。例えばAF制御開始位置がP1であるとすると、フォーカスレンズ33bを光軸方向に1パルスずつ移動させつつコントラスト評価値Cを算出し、各レンズ位置P1,P2,…毎にコントラスト評価値C1,C2,…を逐次算出する所謂「山登り制御」を行い、最大のコントラスト評価値Cmaxとなるレンズ位置Pmax(AFモータパルス数)を求める。図5に示すように、例えば、位置P1→P2→…→Pn→Pn+1ときて、位置Pnの評価値Cnと位置Pn+1の評価値Cn+1とを比較したときに、それまで増加していた評価値が減少するか又は同じ値をとると、サーチ部73は、それまでで最大の評価値Cn(=Cmax)をとるレンズ位置Pn(AFモータパルス数)を合焦位置として取得する。
【0050】
レンズ制御部72は、サーチ部73がサーチして得たレンズ位置Pn(AFモータパルス数Pn)で規定される合焦位置までの移動方向及び移動量を求め、AFモータ44を駆動してフォーカスレンズ33bをその移動方向へその移動量だけ移動させる。そして、フォーカスレンズ33bが合焦位置に到達すると、レンズ制御部72は、AFモータ44の駆動を停止する。第1合焦制御部65は、このような手順でコントラスト検出方式によるAF制御を行う。
【0051】
ここで、コントラスト検出方式によるAF制御では、サーチ部73が比較的広範囲に亘りサーチするので、フォーカスレンズ33bのサーチ時の移動に起因し、表示制御部67の表示制御によりモニタ20に表示される画像が小刻みにぶれるウォブリングが発生し易い。スルー画はメモリカード54に保存されないデータなので、多少ウォブリングが発生してもさほど問題ではないが、動画撮影時にサーチに起因するウォブリングが発生すると、画像がぶれた低品質の動画が保存されることになる。このため、本実施形態では、AF制御として、第1合焦制御部65が行うコントラスト検出方式の他に、フォーカスレンズ33bを移動させずにAF制御が可能な第2合焦制御部66によるフィルタ挿抜方式によるAF制御も採用している。
【0052】
第2合焦制御部66によるフィルタ挿抜方式は、撮像レンズ13の光路に対してフィルタ37を挿抜することによりAF制御である。詳しくは、第2合焦制御部66は、第1合焦制御部65によるコントラスト検出方式で合焦した後、被写体が移動するなどして焦点がずれた場合、その焦点のずれた分をフィルタ37の挿抜により補償し、撮像レンズ13を透過した被写体光を撮像素子32の像面上に結像させる。
【0053】
フィルタ装置36を制御してフィルタ挿抜方式のAF制御を実現するために、図3に示す第2合焦制御部66は、エッジ検出部81、エッジ傾き算出部82、判定部83、感度比算出部84、フィルタ選択部85及びフィルタ制御部86を備えている。
【0054】
ここで、フィルタ挿抜方式によるAF制御の原理を簡単に説明する。図6に示すように、被写体光が透過する撮像レンズ13の焦点位置が、撮像素子32よりも撮影者側(図6における右側)に位置するときに「前ボケ」、焦点位置が撮像素子32よりも撮像レンズ側(図6における左側)に位置するときに「後ボケ」になる。撮像レンズ13を透過した光は、フィルタ37で屈折するので、フィルタ37の挿抜によって、焦点位置が前後方向(光軸方向)にずれる。このため、フィルタ挿入前において図6に破線で示すように、焦点位置が前ボケ寄りにあっても、フィルタ37が挿入されると、図6に実線で示すように、被写体光を撮像素子32の像面32a上に結像させることが可能になる。但し、フィルタ37での屈折率は、光の色毎(つまり波長毎)に異なる。なお、図6では、前ボケ及び後ボケの様子を、撮像素子32を光軸方向へ位置変化させることで表現している。
【0055】
図7は、撮像レンズ13を透過した光の色別の軸上色収差の様子を示す。図7に示すように、撮像レンズ13を透過した光は波長の違いによる軸上色収差が発生し、焦点位置がずれる。軸上色収差は、光学系の設計値によって傾向が異なる。図7に一例で示す撮像レンズ13は、赤(R)と緑(G)の両光線の屈折率が、青(B)の光線の屈折率よりも大きく、赤(R)と緑(G)の両光線の各焦点位置が、青(B)の光線の焦点位置よりも撮像レンズ側に位置している。このため、図7に示す撮像レンズ13を備えたカメラ11では、赤(R)と緑(G)の光線の屈折率より青(B)の光線の屈折率の方が大きいフィルタ37を選定している。このように、撮像レンズ13を含む光学系の光波長特性はその光学系の設計値によって異なるので、これを考慮してRGB各色で焦点位置を一致させうる屈折率のフィルタ37を選定する。
【0056】
図5は、フィルタ装置36の構造を示す模式図である。図5(a)が模式側面図、図5(b)が模式正面図である。図5(a)に示すように、フィルタ装置36が備える複数枚(N枚)のフィルタ37は、それぞれ屈折率が異なる。また、各フィルタ37の屈折率は、前述のように撮像レンズ13を含む光学系の設計値に応じて異なる光波長特性も考慮し、RGB各色の焦点ずれを補償できる値に設定されている。本例では、図5に示すフィルタ装置36が備えるN枚(一例として5枚)のフィルタ37a,37b,37c,37d,37eは、補償できる焦点ずれ量がそれぞれの屈折率に応じて異なっている。
【0057】
各フィルタ37はアーム91の先端部に支持されており、各アーム91の基端部はそれぞれ回転軸92に固定されている。各回転軸92はN個のフィルタ用モータ46が正逆転駆動されることにより正逆転可能に構成されている。
【0058】
図5(b)に示すように、フィルタ用モータ46が正転駆動又は逆転駆動すると、フィルタ37は回転軸92を中心とする正方向又は逆方向に回動し、図5(b)に二点鎖線で示す退避位置と、同図に実線で示す挿入位置との間を移動する。このため、フィルタ37は撮像レンズ13と撮像素子32との間の光路に対して挿抜可能になっている。そして、N枚のフィルタ37a〜37eは、光軸方向に異なる位置に配置されるとともに、フィルタ1枚毎にフィルタ用モータ46が1個ずつ設けられているので、本例では、N枚のフィルタ37a〜37eのうちの任意のJ枚を重ねて同時に挿入することも可能になっている。そして、エンジン30は、挿入すべきJ枚のフィルタ37を選択して光路上に挿入すべく、N個のフィルタ用モータ46を駆動制御する。なお、フィルタ用モータ46には、薄型構造をとりうる例えば超音波モータが使用される。
【0059】
ここで、フォーカスレンズ33bの焦点の合焦位置からのずれ量は、フォーカスレンズ33bの光軸方向の位置に対応するAFモータパルス数Pで表すことができる。AF制御ではフォーカスレンズ33bの位置をAFモータ44のモータパルス数で制御しており、コントラスト検出方式によるAF制御は、フォーカスレンズ33bの最小移動単位を1パルスとする精度で行われる。これは、コントラスト検出方式によるAF制御により静止画撮影時のピント精度が決まるからである。
【0060】
これに対して、フィルタ挿抜方式によるAF制御は、スルー画表示中や動画撮影時においてモニタ20に表示される画像のウォブリングの低減を目的とする制御であり、主に動画撮影モードで使用され、静止画撮影モードではスルー画表示中にのみ使用される。このため、フィルタ挿抜方式によるAF制御は、一例としてAFモータパルス数換算で「2パルス」をフォーカスレンズ33bの最小移動単位とする精度で行われる。
【0061】
本例の場合、図5に示すフィルタ装置36が備えるN枚のフィルタ37a〜37eは、それぞれの屈折率に応じて決まる、補償できる焦点ずれ量をAFモータパルス数で表すことができる。N枚のフィルタ37a,37b,37c,37d,37eは、この順番で屈折率が段階的に大きくなり、補償できる焦点ずれ量は、屈折率の小さいものから順番に、AFモータパルス数換算で「2パルス」、「4パルス」、「8パルス」、「16パルス」、「32パルス」に設定されている。
【0062】
図3に示す第2合焦制御部66は、フィルタ装置36を制御するために、エッジ検出部81、エッジ傾き算出部82、判定部83、感度比算出部84、フィルタ選択部85及びフィルタ制御部86を備えている。
【0063】
エッジ検出部81は、主要被写体の領域でエッジを検出する。ここで、主要被写体とは、合焦させるべき被写体を指し、例えば人物が被写体である場合は、顔検出部62Aが検出した顔が主要被写体となる。図8に示す主要被写体の領域(例えば顔領域)がAF判定領域FAとなり、このAF判定領域FA内でコントラスト差の大きいエッジを検出する。このエッジの検出は、エッジ検出部81がAF判定領域FA内でRGB別もしくは輝度/色相/彩度で検索することで行う。
【0064】
図8では、横方向にx座標軸、縦方向にy座標軸が与えられ、この例ではAF判定領域FA内のx=qの位置にエッジが検出される。エッジ検出部81は、エッジを横切る方向(図8ではx方向)においてRGB別の色信号値を取得する。このとき、AF判定領域FA内のある1ピクセル行だけの信号値を取得すると、その1ピクセル行がノイズを含んで誤った値が取得される虞がある。そのため、本例では、1ピクセル行の画素値をy方向にnピクセル幅に亘ってn本積算し、その積算値をnで除した平均値を、x=qに位置するエッジを横切るRGB別の色信号値として取得し、次の式(1)〜(3)により計算する。
【0065】
【数1】
ここで、r(x,k)、g(x,k)、b(x,k)は、y方向のnピクセル幅におけるn本(k=1,2,…,n)の1ピクセル行のR信号値、G信号値、B信号値をそれぞれ示す。但し、xは、図8の例ではx=qを含む所定範囲Q(例えばAF判定領域FAの一部の範囲(一例としてq−Q/2≦x≦q+Q/2))を変域とする1行幅分の値をとる。y方向のnピクセル幅内の各1ピクセル行を指すy座標をy=y1,y2,…,yn(但し、y1<y2<…<yn)とすると、r(x,k)、g(x,k)、b(x,k)は、y座標がy=y1+1−kの1ピクセル行のR信号値、G信号値、B信号値をそれぞれ示す。
【0066】
さらにエッジ検出部81は、r_ave(x)、g_ave(x)、b_ave(x)を、エッジの最大値と最小値に正規化する。エッジ検出部81は、RGBのエッジ(x=q)における正規化出力R(x),G(x),B(x)を、次の式(4)〜(6)により算出する。
【0067】
【数2】
ここで、xminは、エッジ検出対象範囲EA内で信号値が最小(例えば図8の黒領域)となるx座標値を示し、xmaxは、エッジ検出対象範囲EA内で信号値が最大(例えば図8の白領域)となるx座標値を示す。
【0068】
図9は、正規化出力R(x),G(x),B(x)を示すグラフである。このグラフにおいて横軸がx座標軸(エッジを横切る方向の座標軸)、縦軸が正規化出力を示す。図9に示す例では、正規化出力R(x),G(x),B(x)の各ラインはほぼ重なっている。図9は、例えばコントラスト検出方式AF制御による合焦時点における正規化出力R(x),G(x),B(x)を示す。この合焦後、例えば被写体の移動などによってフォーカスレンズ33bの現在位置が合焦位置からずれる場合がある。フォーカスレンズ33bの現在位置が合焦位置に近いほど、正規化出力R(x),G(x),B(x)の各ラインの傾きは急峻となり、傾きは「1」に近い値をとる。フォーカスレンズ33bの現在位置が合焦位置から徐々にずれるに従って、正規化出力R(x),G(x),B(x)のエッジ(x=q)における傾きは徐々に小さくなる。このため、傾きがある閾値以上の値をとれば、焦点のずれ量が比較的小さい所定範囲(第2AF制御範囲W2)内であることが分かる。
【0069】
エッジ傾き算出部82は、エッジ検出部81が検出したエッジの傾きを検出する。ここで、エッジの傾きとは、エッジを横切る方向(図8の例ではx方向)における画素値(RGB信号値)の変化率を指す。エッジにおけるRGB各信号値の各傾きKR,KG,KBは、正規化出力R(x),G(x),B(x)の微分式にx=qを代入して算出する。本例では、エッジ傾き算出部82は、KR=|R(x+Δp)−R(x)|、KG=|G(x+Δp)−G(x)|、KB=|B(x+Δp)−B(x)|を用いて、エッジの位置を示すx=qを代入して計算する。但し、Δpは所定の微小値である。
【0070】
図10は、エッジの傾きKをAFモータパルス数に対してプロットしたグラフを示す。横軸がAFモータパルス数(レンズ位置)を示し、縦軸が傾きKを示す。図10の例では、エッジにおけるRGB信号値の傾きKR,KG,KBの各ラインはほぼ重なっている。
【0071】
図10の例では、合焦位置(AFモータパルス数=約170)で傾きKが最大となり、合焦位置からフォーカスレンズ33bの位置がずれるに従って傾きKは徐々に小さくなる。本実施形態では、コントラスト検出方式の第1AF制御で合焦した後、その合焦時のフォーカスレンズ33bの位置(AFレンズ位置)が、被写体の移動などによって光軸方向に移動するその時々の焦点位置からのずれ量が所定範囲内にある第2AF制御範囲W2にあるうちはフィルタ挿抜方式の第2AF制御を継続する。そして、AFレンズ位置が第2AF制御範囲W2から外れ、第1AF制御範囲内に入ると、コントラスト検出方式の第1AF制御へ移行する。
【0072】
判定部83は、最初のコントラスト検出方式による合焦後、AFレンズ位置が、第2AF制御範囲内にあるか、第1AF制御範囲内にあるかを判定する。詳しくは、判定部83は、エッジ傾き算出部82が所定周期毎に算出する傾きKが閾値Koより大きければAFレンズ位置が第2AF制御範囲W2にあると判定し、一方、傾きKが閾値Ko以下になると、AFレンズ位置が第1AF制御範囲W1にあると判定する。本例では、図9の例における微分特性により、RGBのうち2色(R,G)の閾値Koを予め設定し、判定部83が、この2色の傾きKR,KGが閾値Koより大きいか否かを判定するようにしている。図10の例では、閾値Koは一例として約0.85に設定されている。
【0073】
感度比算出部84は、感度比R/G,B/G,R/Bを算出する。ここで、感度比R/G,B/G,R/Bとは、エッジにおけるRGB各信号値の正規化出力R(x),G(x),B(x)のうちの2色毎の比である。このため、感度比算出部84は、式 R/G=R(q)/G(q)、B/G=B(q)/G(q)、R/B=R(q)/B(q)により、各感度比R/G,B/G,R/Bを算出する。
【0074】
図11は、フォーカスレンズ33bを光軸方向に移動させつつその移動過程で得られた感度比R/G,B/G,R/Bをプロットしたものである。横軸はAFモータパルス数(AFレンズ位置)、縦軸は感度比をそれぞれ示す。感度比R/G,B/G,R/Bは、撮像レンズ13を含む光学系の設計値に依存し、またズーム量(ズームレンズ33aの光軸方向の位置)によって傾向が異なる。図11に示すズーム量の例では、AF制御が適正になされている場合、フォーカスレンズ33bは合焦位置にあり、感度比R/G,B/G,R/Bは「ほぼ1」になる。ここから被写体が撮影側(カメラ側)に向かってくる場合、感度比R/G,B/G,R/Bは位置Aのときの値に変化する。一方、フォーカスレンズ33bが合焦位置にある状態から、被写体が撮影側(カメラ側)から遠ざかる場合、感度比R/G,B/G,R/Bは位置Bのときの値に変化する。
【0075】
図11に示すように、感度比B/Gは、A−B間の範囲においてAFモータパルス数が大きくなるほど一様に増加し、一方、感度比R/Bは、A−B間の範囲においてAFモータパルス数が大きくなるほど一様に減少している。これに対して感度比R/Gは、A−B間の範囲において、値の変動が小さくかつ増減している。A−B間の範囲において感度比の変化がほぼ一様なB/GとR/Bとを用いることで、感度比B/G,R/Bから合焦位置からのずれ量が分かる。
【0076】
感度比算出部84は、コントラスト検出方式によるAF制御(第1AF制御)によりフォーカスレンズ33bが合焦位置に配置された合焦時に、感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boを算出する。この合焦後、感度比算出部84は、所定時間(例えば10マイクロ秒〜100ミリ秒の範囲内の所定値)周期で感度比R/G,B/G,R/Bを算出する。そして、感度比算出部84は、所定時間周期毎に、合焦時の感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boと現在の感度比R/G,B/G,R/Bとの差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bをそれぞれ計算する。
【0077】
差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bが分かれば、図11のA−B間の範囲における感度比R/G,B/G,R/Bの関係から、第1AF制御による合焦時点の合焦位置から現在合焦させるべきAFレンズ位置までの距離がAFモータパルス数換算で求めることができる。そして、予め図11に示すようなAFモータパルス数と感度比R/G,B/G,R/Bとの関係を示すデータを、ズーム量毎に測定し、差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bと合焦位置からのずれ量ΔPとの関係を示すマップデータを作成する。このように全ズーム範囲を複数分割(m分割)し、そのm分割したズーム量毎のm個のマップデータM1〜Mmを不揮発性メモリ49に格納している。
【0078】
なお、A−B間の範囲ではフィルタ挿抜方式によるAF制御が可能であり、このA−B間の範囲に合わせて閾値Koを設定している。このため、傾きKが閾値Koより大きければ、そのときの感度比R/G,B/G,R/BはA−B間の範囲内にあることになる。
【0079】
フィルタ選択部85は、感度比算出部84が算出した差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bを基に、そのときのズーム量に応じて不揮発性メモリ49から読み出したマップデータMを参照して、差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bに応じた焦点ずれ量ΔPを求める。そして、フィルタ選択部85は、求めた焦点ずれ量ΔPから挿入すべきフィルタ37を選択する。コントラスト検出方式の第1AF制御時は、「32パルス」分補償可能なフィルタ37eを挿入して行われる。このため、フィルタ選択部85は、初期挿入(デフォルト)分の「32パルス」に、焦点ずれ量ΔPの補償に必要なパルス数(=「−ΔP」)を加算して補償パルス数ΔPt(=32−ΔP)を求め、この補償パルス数ΔPt分相当のフィルタ37を選択する。本実施形態では、N枚(5枚)のフィルタ37a〜37eは、それぞれ補償パルス数が、2,4,8,16,32パルスなので、N枚(5枚)のフィルタ37a〜37eを組み合わせて必要に応じて重ねて挿入することにより、0〜62パルスの範囲内で2パルス毎の精度でAF制御を行うことが可能である。
【0080】
フィルタ制御部86は、フィルタ選択部85が選択したフィルタ37に対応するフィルタ用モータ46をフィルタ駆動回路38を介して駆動制御し、選択したフィルタ37を、撮像レンズ13と撮像素子32との間の光路上に挿入する。このとき、それまで挿入されていたフィルタ37を抜く駆動と、新たにフィルタ37を挿入する駆動とを同時に行う。但し、新たなフィルタ37が挿入される前にそれまで挿入されていたフィルタ37が抜かれると、一瞬ピントがずれるので、複数枚の入れ換えがあるときは、一瞬の入れ換え過程でもその中で段階的に入れ換える制御を採用することが望ましい。例えばまず補償パルス数の一番小さなフィルタ37の挿入と、それまで挿入されていたフィルタのうち補償パルス数の一番小さなフィルタ37の抜出とを同時に行う。次に補償パルス数の2番目に小さなフィルタ37の挿入と、それまで挿入されていたフィルタのうち補償パルス数の2番目に小さなフィルタの抜出とを同時に行う。そして、以降、この手順を同様に行ってフィルタ37の入れ換えを段階的に行ってもよい。このとき、挿入と抜出とで各フィルタ37の補償パルス数が大きく異なる場合は、入れ換え過程で補償パルス数の大きな変化を回避できるように入れ換えるべきフィルタ37を段階毎に選択して入れ換えを行うとよい。
【0081】
表示制御部67は、モニタ制御回路51を介してモニタ20に、スルー画、撮影中の動画、撮影直後の静止画、再生時の静止画及び再生中の動画や、メニュー画面等を表示させる表示制御を行う。
【0082】
次にカメラ11におけるAF制御について説明する。電源スイッチ17が操作されてカメラ11が電源ONされると、エンジン30内のコンピュータ31が図14にフローチャートで示すAF制御処理用のプログラムを実行する。
【0083】
以下、カメラ11におけるAF制御を、図14に示すフローチャートに従って、図12及び図13を適宜用いて説明する。ここで、カメラ11の電源ON時は撮影モードにあり、モニタ20にはスルー画が表示される。そして、動画撮影モードにおいて、レリーズスイッチ18が操作されると、動画撮影が開始される。また、このスルー画表示中や動画撮影中にユーザーによりズームボタン22が操作されると、エンジン30内のコンピュータ31は、ズーム駆動回路42を介してズーム用モータ43を駆動し、ズームレンズ33aを光軸方向に沿って移動させ、ズームボタン22の操作に応じたズーム量に調整する。このスルー画表示中と動画撮影中においては、コンピュータ31が図14に示すAF制御を実行する。
【0084】
まずステップS10では、コンピュータ31は、不揮発性メモリ49から現在のズーム量(初期ズーム量)に応じたマップを読み出す。
次のステップS20では、コンピュータ31は、コントラスト検出方式によるAF制御を(第1AF制御)行う。この第1AF制御は、詳しくはコンピュータ31の第1合焦制御部65が行う。この第1AF制御開始に際して、「32パルス」分のフィルタ37eを最初に挿入し、このフィルタ挿入状態で第1AF制御は行われる。レンズ制御部72がAFモータ44を駆動させてフォーカスレンズ33bを光軸方向に沿って移動させつつ、コントラスト検出部71が主要被写体のコントラストを逐次検出してそのコントラスト評価値Cを算出し、その評価値Cが増加する方向へフォーカスレンズ33bを移動させる。そして、サーチ部73が、図4に示す「山登り制御」を行って最大のコントラスト評価値Cmaxとなるレンズ位置Pmax(AFモータパルス数)をサーチし、レンズ制御部72がフォーカスレンズ33bをそのサーチしたレンズ位置Pmax(合焦位置)まで移動させる。こうして主要被写体光が撮像素子32の像面32aに結像するように、フォーカスレンズ33bが合焦位置に配置される。
【0085】
次のステップS30では、コンピュータ31は、主要被写体のエッジのRGB検出を行う。このRGB検出は、詳しくはコンピュータ31のエッジ検出部81が行う。エッジ検出部81は、コントラスト検出方式によるAF制御で合焦した後(S20)、その合焦時点における主要被写体のAF判定領域FAにおけるエッジ(図8参照)を検出し、さらに検出したエッジにおける正規化出力R(x),G(x),B(x)を算出する(図9参照)。
【0086】
次のステップS40では、コンピュータ31は、ズーム量が所定量以上変化したか否かを判断する。つまり、マップデータMの変更が必要なほどズーム量が変化したか否かを判断する。マップデータMの変更が必要なほどズーム量が変化した場合はステップS50に進み、マップデータMの変更が必要なほどはズーム量が変化しなかった場合は、ステップS60に進む。
【0087】
ステップS50では、コンピュータ31は、ズーム量に応じたマップデータMを読み出し、使用するマップデータMを変更する。なお、この例では、例えば図11に示す感度比特性データに基づくマップデータMが読み出されているものとする。
【0088】
ステップS60では、コンピュータ31は、コントラスト検出方式AF制御による合焦時点の主要被写体のエッジにおける感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boを算出する。
次のステップS70では、コンピュータ31は、電源OFFであるか否かを判断する。すなわち、このAF制御ルーチンの終了条件を満たすか否かを判断する。電源OFFであれば当該ルーチンを終了し、電源OFFでなければ(つまり電源ONであれば)ステップS80に進む。但し、通常、ユーザーは撮影を終えるまでは電源OFFすることはない。
【0089】
ステップS80では、コンピュータ31は、主要被写体のエッジの傾きKR,KGを算出する。この傾きKR,KGの算出は、詳しくはコンピュータ31のエッジ傾き算出部82が行う。エッジ傾き算出部82は、エッジ(x=q)におけるR信号値の傾きKR,KGを、式 KR=|R(x+Δp)−R(x)|、KG=|G(x+Δp)−G(x)|に、エッジの位置を示すx=qを代入して計算する。
【0090】
次のステップS90では、コンピュータ31は傾きKR,KGが閾値Koより大きいか否かを判定する。この判定は、詳しくはコンピュータ31の判定部83が行う。判定部83は、傾きKR,KGが閾値Koより大きいと判定した場合はステップS100に進み、傾きKR,KGが閾値Koより大きくない(つまり傾きKR,KGが閾値Ko以下である)と判定した場合はステップS120に進む。
【0091】
ステップS100では、コンピュータ31は、主要被写体のエッジにおける感度比R/G,B/G,R/Bを算出し、この現在の感度比R/G,B/G,R/Bと合焦時点の感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boとの差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bを算出する(ΔR/G=R/G−Ro/Go、ΔB/G=B/G−Bo/Go、ΔR/B=R/B−Ro/Bo)。この感度比及び感度比の差分の算出は、詳しくはコンピュータ31の感度比算出部84が行う。
【0092】
次のステップS110では、コンピュータ31は、差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bに適したフィルタ37を挿入する。この処理は、詳しくはコンピュータ31のフィルタ選択部85とフィルタ制御部86とが行う。例えば撮像レンズ13の光学系特性及び現在のズーム量において、感度比が図11に示すように変動する場合、A−B間の範囲で、R/Gは1つの値から2つのAFモータパルス数が決まる場合があるので、差分ΔR/Gをフィルタ選択に使用するのは不適切である。このため、図11の例では、まずフィルタ選択部85は、1つの感度比から必ず1つのAFモータパルス数が決まる差分ΔB/G,ΔR/Bを基に、挿入すべきフィルタ37を選択する。
【0093】
例えば図11において、合焦位置における感度比Bo/Go,Ro/Boが「約1」であり、現在のフォーカスレンズ33bの位置が図11におけるA位置にあるとすると、現在の感度比B/G,R/Bはそれぞれ「0.88」と「1.13」なので、差分ΔB/G=−0.12、差分ΔR/B=0.13と算出される。そして、フィルタ選択部85は、差分ΔB/G=−0.12を基にマップデータMを参照することで焦点ずれ量ΔP=「−20パルス」を取得し、またΔR/B=0.13を基にマップデータMを参照することで焦点ずれ量ΔP=「−20パルス」を取得する。そして、フィルタ選択部85は、焦点ずれ量ΔP=−20パルスを補償しうる分のフィルタ37を選択する。
【0094】
本例では、「32パルス」分のフィルタ37eを最初に挿入した状態で、コントラスト検出方式によるAF制御(第1AF制御)を行っている。このため、フィルタ選択部85は、初期挿入(デフォルト)分の「32パルス」に、焦点ずれ量ΔPの補償に必要なパルス数(=「−ΔP」)を加算して、補償パルス数ΔPt(=32−ΔP)を求め、この補償パルス数ΔPt分相当のフィルタ37を選択する。この例では、補償パルス数ΔPt=52パルスなので、「52パルス」分のフィルタ37を挿入すればよいことになる。そのため、フィルタ選択部85は、「16パルス」補償可能なフィルタ37dと、「4パルス」補償可能なフィルタ37bとを、合焦時の「32パルス」のフィルタ37eに加えた、合計3枚のフィルタ37b,37d,37eを選択する。
【0095】
そして、フィルタ制御部86は、選択された3枚のフィルタ37b,37d,37eのうち現在既に挿入されているフィルタ37e以外の2枚のフィルタ37b,37dに対応する2個のフィルタ用モータ46を駆動して、2枚のフィルタ37b,37dをさらに挿入する。この結果、3枚のフィルタ37b,37d,37eが挿入され、主要被写体は撮像素子32の像面32a上に結像するようになる。
【0096】
また、現在のフォーカスレンズ33bの位置が図11におけるB位置にあったとすると、このとき、現在の感度比B/G,R/Bはそれぞれ「1.10」と「0.93」なので、差分ΔB/G=0.10,差分ΔR/B=−0.07として算出される。そして、これらの差分ΔB/G,ΔR/Bのときの焦点ずれ量ΔPは共に「+18パルス」と算出される。フィルタ選択部85は、補償パルス数ΔPt=32−ΔP=32−18=14パルスと算出するので、「14パルス」分のフィルタ37を挿入すればよいことになる。そのため、フィルタ選択部85は、「2パルス」、「4パルス」、「8パルス」を補償可能な3枚のフィルタ37a,37b,37cを選択する。そして、フィルタ制御部86は、4つのフィルタ用モータ46を駆動して、選択された3枚のフィルタ37a,37b,37cを、現在既に挿入されているフィルタ37eに入れ換えて挿入する。この結果、主要被写体は撮像素子32の像面32a上に結像するようになる。
【0097】
上記ではA位置とB位置という第2AF制御範囲の境界位置という極端な例を説明したが、実際は焦点が合焦位置に対して少しずれる度にフィルタ37の挿抜が行われる。このため、第2AF制御範囲においては、逐次実行されるフィルタ挿抜方式による第2AF制御により、常にほぼ合焦状態に保たれる。この結果、動画撮影時におけるコントラスト検出方式AF制御時のサーチに起因する画像のウォブリングを回避できる。よって、ウォブリングの発生頻度の少ない高品質な動画画像を撮影及び保存することができる。
【0098】
一方、ステップS90で傾きKR,KGが閾値Ko以下と判定した場合は、ステップS120において、コンピュータ31は、フィルタ37が初期状態であるか否かを判断する。詳しくは、コンピュータ31の切換制御部64が、初期挿入されるべきフィルタ37eが挿入され、かつその他のフィルタ37a〜37dが挿入されていない初期状態にあるか否かを判断する。フィルタ37が初期状態になければステップS130に進み、フィルタ37が初期状態にあればステップS140に進む。
【0099】
ステップS130では、コンピュータ31はフィルタ37を初期状態にする。詳しくは、コンピュータ31のフィルタ制御部86がフィルタ用モータ46を駆動して、初期挿入されるべきフィルタ37eのみ挿入され、その他のフィルタ37a〜37dが抜かれた初期状態にする。
【0100】
そして、ステップS140では、コンピュータ31は、コントラスト検出方式によるAF制御(第1AF制御)を実行する。この第1AF制御は、詳しくはコンピュータ31の第1合焦制御部65が実行する。第1AF制御が終了して合焦すると、フィルタ挿抜方式の第2AF制御に移行すべくステップS40に戻り、S40〜S60の処理を行った後、S70〜S110の処理を繰り返すことで、所定時間周期毎にフィルタ挿抜方式の第2AF制御を行う。そして、第2AF制御中に傾きKR,KGが閾値Ko以下になると(S90で否定判定)、切換制御部64が、フィルタ37を必要に応じて初期状態とした後(S130)、コントラスト検出方式の第1AF制御(S140)に切り換える。
【0101】
以上詳述したようにこの第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)コントラスト検出方式によるAF制御による合焦後に、フィルタ挿抜方式のAF制御を行うので、コントラスト検出方式によるAF制御時のサーチ動作に起因するウォブリングの発生頻度を低減し、ウォブリングに起因する画像のぶれを低減することができる。
【0102】
(2)フィルタ37を複数枚(N枚)備え、第2合焦制御部66は、複数のフィルタ37を重ね合わせて光路上に配置することにより複数のフィルタの組合せによって異なる屈折率を作り出す。よって、少ない枚数のフィルタ37で細かくAF制御を行うことができる。
【0103】
(3)特に、N枚のフィルタ37を、補償可能なパルス数を、2、4、8、16、32パルスとした。つまり、N枚のフィルタ37を、最小移動単位のパルス数をDとした場合に、D、2D、4D、8D,…,2^(N−1)・Dパルス分を補償可能なそれぞれ屈折率の異なるフィルタとした。このため、第2AF制御の精度の割に、フィルタ37の枚数を少なく済ませることができる。よって、第2AF制御の精度の割に、フィルタ装置36の小型化(薄型化)が可能であり、カメラ11をコンパクトに構成することができる。
【0104】
(4)ズーム量毎にマップデータを用意したので、ズーム量に応じた適切な第2AF制御を実現できる。
(5)エッジにおける色信号値の傾きKを求め、傾きKと閾値Koとの比較によって、第1AF制御と第2AF制御とを切り換えるので、第1AF制御と第2AF制御との間で適切な切り換えを行うことができる。
【0105】
(6)感度比R/G,B/G,R/Bを用いて、第1AF制御による合焦時点の感度比Ro/Go,Bo/Go,Ro/Boとの差分ΔR/G,ΔB/G,ΔR/Bを基に、挿入すべきフィルタ37を選択するので、第2AF制御を適切に行うことができる。
【0106】
前記実施形態は上記に限定されず、以下の態様に変更することもできる。
・図15に示すように、フィルタ37を光軸方向に移動させるスライダ94及びリニアモータ95を更に設け、フィルタ37を光路に対してフィルタ用モータ46の駆動により挿抜可能かつリニアモータ95の駆動により光軸方向に移動可能な構成も採用できる。この場合、フィルタ37を挿入し、かつ挿入したフィルタ37を光軸方向に移動させることにより第2AF制御を行う。この構成によれば、フィルタ37の光軸方向の移動によってもAF制御を行えるので、フィルタ37の枚数を少なくすることができるうえ、前記実施形態のような断続的な第2AF制御に替えて、連続的な第2AF制御が可能になる。なお、図15の例では、屈折率の異なる複数枚(2枚)のフィルタ37を設けたが、フィルタ37は1枚でもよいし、3枚以上の複数枚でもよい。
【0107】
・図11のグラフにおけるA位置とB位置とに相当する焦点ずれ量ΔPa又はΔPaになったか否かを判定し、焦点ずれ量ΔPとΔPa又はΔPaとの比較結果に基づいて、第1AF制御と第2AF制御との間で切り換えを行う構成としてもよい。
【0108】
・前記実施形態において、フィルタを重ね合わせて挿入する構成に替えて、複数枚のフィルタ37のうち選択された1枚のみを挿入する構成でもよい。
・前記実施形態において、フィルタは透明でもスモークなどの色付きでもよい。
【0109】
・前記実施形態において、フィルタを1枚のみ備えたフィルタ装置とした構成も採用してよい。
・電子カメラは、デジタルカメラに限定されず、ビデオカメラの他、カメラ機能を備えたPDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話、携帯用ゲーム機などでもよい。
【符号の説明】
【0110】
11…電子カメラとしてのカメラ、13…撮像レンズ、17…電源スイッチ、18…レリーズスイッチ、20…モニタ、21…モード選択スイッチ、22…ズームボタン、24…撮影ボタン、30…エンジン、31…コンピュータ、32…撮像手段を構成する撮像素子、33a…ズームレンズ、33b…撮影レンズとしてのフォーカスレンズ、34…絞り、35…シャッタ、36…フィルタ装置、37,37a〜37e…フィルタ、38…第2駆動手段を構成するフィルタ駆動回路、39…第1駆動手段を構成するフォーカス駆動回路、40…シャッタ駆動回路、41…絞り駆動回路、42…第3駆動手段を構成するズーム駆動回路、43…第3駆動手段を構成するズーム用モータ、44…第1駆動手段を構成するフォーカス用モータ(AFモータ)、45…AFセンサ、46…第2駆動手段を構成するフィルタ用モータ、47…撮像制御回路、48…映像回路、49…不揮発性メモリ、51…モニタ制御回路、52…メモリ制御回路、53…操作検出回路、54…メモリカード、61…主制御部、62…画像処理部、62A…顔検出部、63…ズーム制御部、64…切換制御部、65…第1の合焦制御手段としての第1合焦制御部、66…第2合焦制御部、67…表示制御部、71…コントラスト検出部、69…レンズ制御部、73…サーチ部、81…検出手段を構成するエッジ検出部、82…傾き算出手段としてのエッジ傾き算出部、83…判定部、84…検出手段を構成するとともに感度比算出手段としての感度比算出部、85…第2の合焦制御手段を構成するフィルタ選択部、86…第2の合焦制御手段を構成するフィルタ制御部、R/G,B/G,R/B…感度比、ΔR/G,ΔB/G,ΔR/B…差分、ΔP…ずれ量としての焦点ずれ量、ΔPt…補償パルス数。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズを光軸方向に移動させる第1駆動手段と、
撮像手段が取得した画像のコントラスト値に基づいて、前記撮影レンズを合焦位置に配置するよう前記第1駆動手段を制御する第1の合焦制御手段と、
前記撮影レンズと前記撮像手段との間の光路に対して挿抜可能に設けられるとともに前記撮影レンズの合焦位置からのずれ量を補償可能な屈折率を有する少なくとも一つのフィルタと、
前記フィルタを前記光路に対して挿抜させる第2駆動手段と
前記撮影レンズの合焦位置に対するずれ量を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出したずれ量に応じた屈折率のフィルタを前記光路に対して挿抜するよう前記第2駆動手段を制御して合焦を行う第2の合焦制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動合焦制御装置。
【請求項2】
前記フィルタを複数備え、
前記第2の合焦制御手段は、複数のフィルタを重ね合わせて光路上に配置することにより複数のフィルタの組合せによって異なる屈折率を作り出すことを特徴とする請求項1に記載の自動合焦制御装置。
【請求項3】
前記第2の合焦制御手段は、前記光路上における前記フィルタの挿抜と、前記光路上に挿入された該フィルタの光軸方向における移動とにより合焦を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動合焦制御装置。
【請求項4】
ズームレンズと、
前記ズームレンズを光軸方向に移動させて焦点距離を変化させることでズーム量を調整する第3駆動手段と、
前記第2の合焦制御手段は、前記ズーム量及び前記ずれ量に応じて前記光路上に挿入すべきフィルタを選択することを特徴とする請求項2に記載の自動合焦制御装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記撮像手段が取得した画像のRGB3色の信号値のうち2色毎の組合せの値の比で示される3つの感度比のうち少なくとも1つを算出する感度比算出手段を備え、前記少なくとも1つの感度比に基づいて前記合焦位置からの前記ずれ量を求めることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の自動合焦制御装置。
【請求項6】
前記撮像手段で取得されたRGB信号値の前記画像中のエッジ部分を横切るときの傾きを求める傾き算出手段を備え、
前記傾きが閾値以上のときに前記第2の合焦制御手段による第2の合焦制御を行い、前記傾きが前記閾値未満になると、前記第2の合焦制御から前記第1の合焦制御手段による第1の合焦制御へ切り替えることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の自動合焦制御装置。
【請求項7】
被写体を撮影する撮像手段と、
請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の自動合焦制御装置と、
を備えたことを特徴とする電子カメラ。
【請求項8】
撮影レンズを光軸方向に移動させながら撮像手段が取得した画像のコントラスト値に基づいて、前記撮影レンズを合焦位置に配置するよう合焦制御を行う第1の合焦制御ステップと、
前記第1の合焦制御ステップによる合焦が行われた前記撮影レンズの合焦位置に対するずれ量を検出する検出ステップと、
前記ずれ量を補償可能な屈折率を有するフィルタが前記撮影レンズの光路上に配置されるように前記光路に対してフィルタの挿抜を行うことで合焦する第2の合焦制御ステップと、
を備えたことを特徴とする自動合焦制御方法。
【請求項1】
撮影レンズを光軸方向に移動させる第1駆動手段と、
撮像手段が取得した画像のコントラスト値に基づいて、前記撮影レンズを合焦位置に配置するよう前記第1駆動手段を制御する第1の合焦制御手段と、
前記撮影レンズと前記撮像手段との間の光路に対して挿抜可能に設けられるとともに前記撮影レンズの合焦位置からのずれ量を補償可能な屈折率を有する少なくとも一つのフィルタと、
前記フィルタを前記光路に対して挿抜させる第2駆動手段と
前記撮影レンズの合焦位置に対するずれ量を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出したずれ量に応じた屈折率のフィルタを前記光路に対して挿抜するよう前記第2駆動手段を制御して合焦を行う第2の合焦制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動合焦制御装置。
【請求項2】
前記フィルタを複数備え、
前記第2の合焦制御手段は、複数のフィルタを重ね合わせて光路上に配置することにより複数のフィルタの組合せによって異なる屈折率を作り出すことを特徴とする請求項1に記載の自動合焦制御装置。
【請求項3】
前記第2の合焦制御手段は、前記光路上における前記フィルタの挿抜と、前記光路上に挿入された該フィルタの光軸方向における移動とにより合焦を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動合焦制御装置。
【請求項4】
ズームレンズと、
前記ズームレンズを光軸方向に移動させて焦点距離を変化させることでズーム量を調整する第3駆動手段と、
前記第2の合焦制御手段は、前記ズーム量及び前記ずれ量に応じて前記光路上に挿入すべきフィルタを選択することを特徴とする請求項2に記載の自動合焦制御装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記撮像手段が取得した画像のRGB3色の信号値のうち2色毎の組合せの値の比で示される3つの感度比のうち少なくとも1つを算出する感度比算出手段を備え、前記少なくとも1つの感度比に基づいて前記合焦位置からの前記ずれ量を求めることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の自動合焦制御装置。
【請求項6】
前記撮像手段で取得されたRGB信号値の前記画像中のエッジ部分を横切るときの傾きを求める傾き算出手段を備え、
前記傾きが閾値以上のときに前記第2の合焦制御手段による第2の合焦制御を行い、前記傾きが前記閾値未満になると、前記第2の合焦制御から前記第1の合焦制御手段による第1の合焦制御へ切り替えることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の自動合焦制御装置。
【請求項7】
被写体を撮影する撮像手段と、
請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の自動合焦制御装置と、
を備えたことを特徴とする電子カメラ。
【請求項8】
撮影レンズを光軸方向に移動させながら撮像手段が取得した画像のコントラスト値に基づいて、前記撮影レンズを合焦位置に配置するよう合焦制御を行う第1の合焦制御ステップと、
前記第1の合焦制御ステップによる合焦が行われた前記撮影レンズの合焦位置に対するずれ量を検出する検出ステップと、
前記ずれ量を補償可能な屈折率を有するフィルタが前記撮影レンズの光路上に配置されるように前記光路に対してフィルタの挿抜を行うことで合焦する第2の合焦制御ステップと、
を備えたことを特徴とする自動合焦制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−3128(P2012−3128A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139435(P2010−139435)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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