説明

自動変速機用コントロールスイッチ

【課題】挿通孔に圧入されるシャフトのスラストガタによって、シャフト側や可動体側に割れや削れなどの破損が生じてしまうのを抑制することのできる自動変速機用コントロールスイッチを得る。
【解決手段】コントロールスイッチの可動体10は、ハウジング1に貫設された軸受孔4、5に挿通されて回動自在に枢支される軸部13を備えるとともに、軸部13は、軸受孔4、5の軸方向に沿って当該軸部13を貫通し、シフトレバーの操作によって回動するシャフト50が挿通される挿通孔17を備え、前記挿通孔17に、耐摩耗性材料で成形された保護プレート60を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における自動変速機のシフトレバーの切換操作で、パーキング、リバース、ニュートラル、ドライブ、2速、1速といったようなシフトポジションを示すポジション信号を発生する自動変速機用コントロールスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じてハウジング内を回動する可動体を備え、この可動体に可動接点を設けるとともに可動体の回動位置に応じて可動接点と接触・開離する複数の固定接点をハウジング内に設け、接触又は開離する可動接点と固定接点の組み合わせに対応した自動変速機のシフトポジションを示すポジション信号を出力する自動変速機用コントロールスイッチが提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、可動体の軸部に形成された挿通孔に、シャフトを弾性的に保持するための板バネを介在させてシャフトを圧入させるようにしている。これにより、シャフトのスラストガタ(軸方向へのガタつき)によって、シャフト側や可動体側(軸部の挿通孔)が破損してしまうのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−155068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術にあっては、挿通孔の破損を抑制することはできるが、板バネを介在させたことで局部的な強い荷重がシャフトと板バネとにかかり、今度はシャフトと板バネとに破損が生じてしまう恐れがある。このように、シャフト側や可動体側に割れや削れなどの破損が生じると、可動体とシャフトとの固定状態が損なわれ、可動体の動作が適正に行われない恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、挿通孔に圧入されるシャフトのスラストガタによって、シャフト側や可動体側に割れや削れなどの破損が生じてしまうのを抑制することのできる自動変速機用コントロールスイッチを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にあっては、自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じてハウジング内を回動する可動体を備え、当該可動体に可動接点を設けるとともに可動体の回動位置に応じて可動接点と接触又は開離する複数の固定接点をハウジング内に設け、接触又は開離する可動接点と固定接点の組み合わせに対応した自動変速機のシフトポジションを示すポジション信号を出力する自動変速機用コントロールスイッチにおいて、前記可動体は、前記ハウジングに貫設された軸受孔に挿通されて回動自在に枢支される軸部を備えるとともに、前記軸部は、前記軸受孔の軸方向に沿って当該軸部を貫通し、前記シフトレバーの操作によって回動するシャフトが挿通される挿通孔を備え、前記挿通孔に、耐摩耗性材料で成形された保護プレートを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、挿通孔に耐摩耗性材料で成形された保護プレートを設けたので、シャフトのスラストガタによってシャフト側や可動体側に割れや削れなどの破損が生じてしまうのを抑制できる。よって、可動体とシャフトとの固定状態が損なわれてしまうのを抑制でき、可動体の動作をより安定的に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる自動変速機用コントロールスイッチの分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる自動変速機用コントロールスイッチの斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる可動接点と固定接点の動作を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる可動体の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる可動体とシャフトとの組付状態を示した斜視図である。
【図6】図6は、図5の分解斜視図である。
【図7】図7は、図5の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1〜図7は、本発明にかかる自動変速機用コントロールスイッチの一実施形態を示した図であり、まずは図1〜図3を参照して、自動変速機用コントロールスイッチの概略構成について説明する。
【0011】
本実施形態の自動変速機用コントロールスイッチは、図1および図2に示すように、それぞれ略扇状に形成された合成樹脂成形品からなるボディ1aとカバー1bとを備えたハウジング1と、該ハウジング1の内部に回動自在に収納される可動体10とを備えている。
【0012】
可動体10は、一端に円筒形の軸部13を有する主体11を備え、この主体11のボディ1aと対向する面に設けられた凹所12(図4参照)内に、コイルばね14によりボディ1a側へ弾性付勢された複数個の可動接点15が収納されている。なお、図1では便宜上、可動接点15を1個のみ図示している。
【0013】
ボディ1aは、一面が開口する扁平な略扇形に形成され、扇の要に相当する部分には可動体10の軸部13の一端側が挿通されて回動自在に枢支する軸受孔4が厚み方向に貫設されている。また、ボディ1aの内底面7には、一端部にそれぞれ固定接点2が設けられた帯板状の複数の導電体3がインサート成形されている。各固定接点2は、軸受孔4を中心にした同心円弧状に配設されており、ハウジング1内で可動体10が備える可動接点15と対向させてある。
【0014】
また、ボディ1aには、周壁で囲まれた筒状のコネクタ部20が一体に形成されている。コネクタ部20の内底面には、複数の導電体3の先端が突出して複数列に配置されるようになっており、これにより、コネクタ端子(図示せず)が形成されている。
【0015】
図3に示すように、ハウジング1内の可動体10が軸部13を中心に回動すると、並列する一対の固定接点2と接触状態の可動接点15は、コイルばね14を弾性変形によって縮ませながら、リブ8の一端部の曲面を摺動し、固定接点2から開離する。そして、可動接点15は、リブ8の上面を摺動しつつリブ8の他端部に来ると、コイルばね14の弾性復元力により曲面を摺動しながら別の一対の固定接点2に降下する。このように、ハウジング1に対する可動体10の回動位置に応じて可動体10に保持されている可動接点15が各固定接点2と選択的に接触、開離する。これにより、自動変速機のシフトポジションに対応したポジション信号がコネクタ部20に接続された相手側コネクタを介して取り出されるようになっている。
【0016】
また、図1および図2に示すように、ボディ1aにおける扇の要部分の両側には、略山型の鍔部16,16が一体に形成されている。鍔部16には、ハウジング1を車体(あるいは自動変速機)に取り付けるためのボルトが挿通される長円形のボルト挿通孔31が貫通した筒状の補強部材30が、それぞれインサート成形されている。
【0017】
カバー1bは、ボディ1aの開口部を覆う扁平な略扇形に形成され、ボディ1aと同様に扇の要に相当する部分には、可動体10の軸部11の他端側が挿通されて回動自在に枢支する軸受孔5が厚み方向に貫設されている。
【0018】
このような構成の自動変速機用コントロールスイッチは、ボディ1aの周縁部6の内側に形成された周溝9に防水パッキン18を配置するとともに、コイルばね14、可動接点15を取り付けた可動体10をボディ1aの内底面7に実装する。この状態で、ボディ1aの周縁部6とカバー1bの周縁部19とを超音波溶着することにより、ボディ1aとカバー1bとが接合されてハウジング1が形成される。このとき、ボディ1a(ハウジング1)の外周面1c(図2参照)の内側に設けられた溝状の逃がし凹部40によって、溶着時に発生する溶着バリを受容して、ハウジング1の外周面1cに溶着バリがはみ出してしまうのを抑制できるようにしている。
【0019】
そして、可動体10の挿通孔17にシャフト50(図5参照)を圧入させるとともに、補強部材30のボルト挿通孔31に挿通されたボルトにナットを締め付けることで、ハウジング1が車体(あるいは自動変速機)に取り付けられる。そして、自動変速機のシフトレバーの切換操作によってシャフト50と可動体10とが一体的に回動し、ハウジング1に対する可動体10の回動位置に応じて、各ポジション信号が取り出されるのである。
【0020】
次に、図4〜図7を参照して、本発明の特徴部分である可動体10の軸部13とシャフト50との取付構造を説明する。
【0021】
図4および図5に示すように、可動体10の軸部13には、軸受孔4、5の軸方向に沿って当該軸部13を貫通し、自動変速機のシャフト50が挿通される挿通孔17が設けられている。この挿通孔17は、略多角形であるシャフト50の断面と略同一形状の内壁面17aを備えている。
【0022】
そして、本実施形態では、内壁面17aの形状が略長方形に形成された上記挿通孔17に、耐摩耗性材料で成形された保護プレート60を介在させてシャフト50を圧入させるようにしている。
【0023】
具体的には、図6および図7に示すように、本実施形態では挿通孔17の一対の長辺に対してそれぞれ1つずつ合計2つの保護プレート60が用いられ、この一対の保護プレート60を挿通孔17に装着するようにしている。
【0024】
保護プレート60は、挿通孔17の内壁面17aに挿通される挿通部60aと、この挿通部60aの両端部に折り返して設けられ、挿通孔17の周縁部に係止される一対のフランジ部60bと、を備えた断面略コの字状に形成されている。
【0025】
保護プレート60の材料としては、例えばステンレス、スチール、炭素高クロム鋼などを好適に用いることができる。
【0026】
そして、このような耐摩耗性材料で成形された保護プレート60は、挿通部60aが挿通孔17の長辺の内壁面17aに当接するとともに、フランジ部60bが挿通孔17の周縁部に係止された状態で取り付けられる。そして、シャフト50が、この一対の保護プレート60が装着された挿通孔17に圧入される。なお、挿通孔17の大きさや保護プレート60の厚みは、シャフト50が圧入状態となるような寸法に設定される。
【0027】
以上の構成により、本実施形態では、挿通孔17に耐摩耗性材料で成形された保護プレート60を設け、当該保護プレート60を介在させてシャフト50を圧入させるようにしている。そのため、シャフト50の回動に伴うスラストガタ(軸方向へのガタつき)によって、シャフト50側や可動体10側に割れや削れなどの破損が生じてしまうのを抑制することができる。すなわち、本実施形態によれば、シャフト50のスラストガタが発生しても、より破損しにくい構造を提供することができる。よって、可動体10とシャフト50との固定状態が損なわれてしまうのを抑制でき、可動体10の動作を長期に亘ってより安定的に行わせることができるようになる。
【0028】
なお、本実施形態の場合、保護プレート60の材料としてシャフト50と同じ金属材を用いるのが好ましい。こうすれば、保護プレート60とシャフト50の相互の割れや削れなどの破損をより抑制することができるという利点がある。
【0029】
また、本実施形態では、ボディ1a(ハウジング)1の外周面1cの内側に逃がし凹部40を設けている。そのため、溶着バリがハウジング1の外周面1cにはみ出してしまうのを抑制することができる。その結果、ハウジング1の外観性の劣化や、はみ出した状態で外周面1cに固まった溶着バリが剥がれ落ち、異物を発生させてしまうといったような問題を抑制することができる。なお、逃がし凹部40は、ハウジング1の外周面1cと、ボディ1aとカバー1bの溶着部との間に設けるのが好適である。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0031】
例えば、上記実施形態では、挿通孔に保護プレートを装着させるようにしたが、可動体の成形時に、挿通孔の内壁面に保護プレートを露出させるようにして、可動体と保護プレートとを一体成形(インサート成形)するようにしてもよい。こうすれば、挿通孔に保護プレートを装着する作業が不要となるため、作業手間を減らして作業効率を向上することができる。
【0032】
また、上記実施形態では、ボディの周縁部とカバーの周縁部とを超音波溶着により接合するようにしたが、接着剤を用いて接合するようにしてもよい。この場合、余分な接着剤を逃がし凹部に逃がすことができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ハウジング
2 固定接点
10 可動体
13 軸部
15 可動接点
17 挿通孔
50 シャフト
60 保護プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じてハウジング内を回動する可動体を備え、当該可動体に可動接点を設けるとともに可動体の回動位置に応じて可動接点と接触又は開離する複数の固定接点をハウジング内に設け、接触又は開離する可動接点と固定接点の組み合わせに対応した自動変速機のシフトポジションを示すポジション信号を出力する自動変速機用コントロールスイッチにおいて、
前記可動体は、前記ハウジングに貫設された軸受孔に挿通されて回動自在に枢支される軸部を備えるとともに、
前記軸部は、前記軸受孔の軸方向に沿って当該軸部を貫通し、前記シフトレバーの操作によって回動するシャフトが挿通される挿通孔を備え、
前記挿通孔に、耐摩耗性材料で成形された保護プレートを設けたことを特徴とする自動変速機用コントロールスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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