自動変速機用油圧制御装置
【課題】 電気式ポンプの駆動モータを小型化可能であり、消費電力を低減可能な自動変速機用油圧制御装置を提供する。
【解決手段】 自動変速機用油圧制御装置10の供給油路60は、第1吐出油路23と電気式ポンプ30の吐出口35とを接続する。油路切替弁65は、第2作動位置に作動すると供給油路60のオイルを第2吸入油路32に供給する。したがって、機械式ポンプ21の駆動時に電気式ポンプ30の始動に先立ち油路切替弁65が第2作動位置に作動すると第2吸入油路32のオイルが予熱されるので、電気式ポンプ30始動時の吸入抵抗を低減可能である。よって、第2吸入油路32のサイズを拡大することなく電気式ポンプ30に小型の駆動モータ31を使用することができ、それゆえ消費電力を低減しつつ、確実に始動直後の電気式ポンプ30にオイルを吸入および吐出させることができる。
【解決手段】 自動変速機用油圧制御装置10の供給油路60は、第1吐出油路23と電気式ポンプ30の吐出口35とを接続する。油路切替弁65は、第2作動位置に作動すると供給油路60のオイルを第2吸入油路32に供給する。したがって、機械式ポンプ21の駆動時に電気式ポンプ30の始動に先立ち油路切替弁65が第2作動位置に作動すると第2吸入油路32のオイルが予熱されるので、電気式ポンプ30始動時の吸入抵抗を低減可能である。よって、第2吸入油路32のサイズを拡大することなく電気式ポンプ30に小型の駆動モータ31を使用することができ、それゆえ消費電力を低減しつつ、確実に始動直後の電気式ポンプ30にオイルを吸入および吐出させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速機は、エンジンの出力回転を加減速し駆動輪に出力する。この自動変速機には、例えば、遊星歯車式有段変速機、平行歯車式有段変速機、摩擦式無段変速機、油圧機械式無段変速機および歯車式無段変速機などがある。これらの自動変速機は、油圧アクチュエータの操作力で作動する変速機構を備える。油圧アクチュエータは、油圧制御装置が供給する作動油の流体力で作動する。油圧制御装置は、オイルポンプが吐出するオイルの圧力を調整し、そのオイルを油圧アクチュエータに供給する。
【0003】
従来、機械式ポンプおよび電気式ポンプを両方備える自動変速機用油圧制御装置が公知である。このような油圧制御装置は、エンジンが停止しているとき、電気式ポンプが油圧アクチュエータに作動油を圧送することができる。そのため、例えばアイドリングストップ制御等でエンジンが停止したとき、電気式ポンプが油圧アクチュエータに作動油を供給することで油圧アクチュエータの作動を維持することができる。これにより、エンジンの再始動直後に変速機構を作動させることができる。
【0004】
特許文献1、2には、電気式ポンプの始動に先立って電気式ポンプの吸入油路または吐出油路のオイルを予熱するための技術が開示されている。特許文献1に開示された油圧制御装置は、電気式ポンプの吸入油路の一部および吐出油路のオイルを、機械式ポンプがオイルパンから汲み上げたオイルと入れ替える。特許文献2に開示された油圧制御装置は、電気式ポンプを逆回転駆動させることで電気式ポンプの吸入油路のオイルをオイルパンのオイルと入れ替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−52638号公報
【特許文献2】特開2011−000978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された油圧制御装置では、吸入油路のオイルの一部しかオイルパンのオイルに入れ替わらない。吸入油路に停滞するオイルが冷えると、オイルの粘度が高くなり、電気式ポンプの始動時の吸入抵抗が大きくなる。このときに電気式ポンプがオイルを吐出できるかどうかは、吐出油路のオイルが高粘度であることに起因して吐出抵抗が高くなる場合に比べると、吸入抵抗が大きいことで電機式ポンプがオイルを吸入できないことの影響の方が相対的に大きい。吸入油路のオイルが高粘度であるときオイルを吸入可能とするには、吸入口のサイズを大きくしたり、高出力の駆動モータを選定したりする必要がある。したがって、電気式ポンプの体格が大きくなったり、電気式ポンプの駆動モータの消費電力が多くなるという問題がある。また特許文献1に開示された油圧制御装置では、油路の切替に専用の電磁切替弁を用いており、コストが上昇するという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された油圧制御装置では、本来の電気式ポンプの使用に先立って電気式ポンプを逆回転駆動させるため、その際に駆動モータが電力を消費する。したがって、駆動モータの消費電力が多くなるという問題がある。また、逆回転駆動するための制御回路を追加する必要があり、制御回路が複雑になると同時にコストが上昇する。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気式ポンプの吸入口のサイズを拡大すること無く駆動モータを小型化し、専用の電磁切替弁や駆動モータの逆転駆動回路が不要で無駄な電力を消費することなく、電気式ポンプが始動直後にオイルを吐出することができる自動変速機用油圧制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、エンジンの出力回転を加減速する自動変速機の油圧アクチュエータに作動油を供給可能な自動変速機用油圧制御装置であって、機械式ポンプと、電気式ポンプと、第1吐出油路と、第2吐出油路と、第1供給油路と、油路切替手段とを備える。
機械式ポンプはエンジンによって駆動可能であり、電気式ポンプはエンジンの作動状況に拘らず電気的に駆動可能である。第1吐出油路は機械式ポンプの吐出口に接続し、第2吐出油路は電気式ポンプの吐出口に接続する。第1供給油路は、第1吐出油路と電気式ポンプの吐出口とを接続する。
【0009】
油路切替手段は、第2吐出油路を連通させ且つ第1供給油路を遮断する第1作動位置、および、第1供給油路を連通させ且つ第2吐出油路を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替手段は、第1作動位置に作動すると電気式ポンプが吐出するオイルを油圧アクチュエータに供給可能である。また、油路切替手段は、第2作動位置に作動すると第1供給油路のオイルを電気式ポンプの吸入油路に供給する。
【0010】
このような油圧制御装置によれば、機械式ポンプの駆動時に油路切替手段が第2作動位置に作動すると、機械式ポンプがオイルパン等のオイル貯留部から吸入し第1吐出油路に吐出するオイルの一部は、第1供給油路を経由して電気式ポンプおよびその吸入油路に供給される。オイル貯留部のオイルは、例えば油圧アクチュエータやトルクコンバータ等との間を行き来し、各所で熱を吸収し温まっている。そのため、電気式ポンプおよびその吸入油路のすべてのオイルは、第1供給油路から供給される温かいオイルと入れ替わる。したがって、電気式ポンプの始動に先立って電気式ポンプおよびその吸入油路のオイルが予熱されるので、電気式ポンプの始動時の吸入抵抗を低減することができる。よって、吸入口のサイズを拡大することなく電気式ポンプに小型の駆動モータを使用することでき、それゆえ消費電力を低減しつつ、電気式ポンプが始動直後にオイルを吸入および吐出することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、油路切替手段は、機械式ポンプが吐出するオイルによって作動する。この構成では、油路切替手段を作動させるとき電力を消費しない。そのため、消費電力を少なくすることができる。
また、油路切替手段の作動に関して例えば電磁弁、電気回路、及び、それらを駆動するための制御等が不要である。そのため、油圧制御装置の構成を簡素にすることができる。
請求項3に記載の発明では、油路切替手段は、機械式ポンプの吐出圧が所定圧未満のとき第1作動位置に作動し、機械式ポンプの吐出圧が前記所定圧を超えるとき第2作動位置に作動する。請求項4に記載の発明では、前記所定圧は、油圧アクチュエータを作動させるために必要な最小値に設定される。この構成では、機械式ポンプが吐出するオイルを電気式ポンプおよびその吸入油路に供給することに起因して変速制御が不能になる事態を回避することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明では、油路切替手段の作動位置が第2作動位置であるとき、電気式ポンプは、機械式ポンプが吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられる。これにより、電気式ポンプ内およびその吸入油路内のオイルを入れ替え可能である。
請求項6に記載の発明では、第2吐出油路は、第1吐出油路に接続する。第2吐出油路には、電気式ポンプから第1吐出油路へのオイルの流れのみを許容する逆止弁が設けられる。これによれば、油路切替手段の作動位置が第1作動位置であるとき、第1吐出油路のオイルが電気式ポンプおよびその吸入油路を経由してオイル貯留部に流出することを回避することができる。そのため、油圧制御装置のライン圧の低下を防ぐことができる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、第1供給油路に流量制限手段が設けられる。そのため、機械式ポンプが吐出するオイルを電気式ポンプおよびその吸入油路に供給することに起因して油圧制御装置のライン圧が急激に低下する事態を回避することができる。
請求項8に記載の発明では、電気式ポンプ内を流れるオイルの少なくとも一部は、電気式ポンプの駆動モータ内を通過する。これによれば、駆動モータのコイルがオイルにより温められるので、駆動モータの始動時に必要な電流が低下し、消費電力を抑えることができる。
【0014】
請求項9に記載の発明は、エンジンの出力回転を加減速する自動変速機の油圧アクチュエータに作動油を供給可能な自動変速機用油圧制御装置であって、機械式ポンプと、電気式ポンプと、第1吐出油路と、第2吐出油路と、圧力調整手段と、第2供給油路と、油路切替手段とを備える。
機械式ポンプはエンジンによって駆動可能であり、電気式ポンプはエンジンの作動状況に拘らず電気的に駆動可能である。第1吐出油路は機械式ポンプの吐出口に接続し、第2吐出油路は電気式ポンプの吐出口に接続する。圧力調整手段は、第1吐出油路のオイルを排出することで第1吐出油路の油圧を調整する。第2供給油路は、圧力調整手段の排出口と電気式ポンプの吐出口とを接続する。
【0015】
油路切替手段は、第2吐出油路を連通させ且つ第2供給油路を遮断する第1作動位置、および、第2供給油路を連通させ且つ第2吐出油路を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替手段は、第1作動位置に作動すると電気式ポンプが吐出するオイルを油圧アクチュエータに供給可能である。また、油路切替手段は、第2作動位置に作動すると第2供給油路のオイルを電気式ポンプの吸入油路に供給する。
【0016】
このような油圧制御装置によれば、機械式ポンプの駆動時に油路切替手段が第2作動位置に作動すると、機械式ポンプがオイルパン等のオイル貯留部から吸入し第1吐出油路に吐出するオイルの一部は、圧力調整手段が圧力の調整のために排出し、第2供給油路を経由して電気式ポンプおよびその吸入油路に供給される。そのため、電気式ポンプおよびその吸入油路のすべてのオイルは、第2供給油路から供給される温かいオイルと入れ替わる。したがって、電気式ポンプの始動に先立って電気式ポンプおよびその吸入油路のオイルが予熱されるので、電気式ポンプの始動時の吸入抵抗を低減することができる。よって、吸入口のサイズを拡大することなく電気式ポンプに小型の駆動モータを使用することができ、それゆえ消費電力を低減しつつ、電気式ポンプが始動直後にオイルを吸入および吐出することができる。
【0017】
請求項10に記載の発明では、油路切替手段は、機械式ポンプが吐出するオイルによって作動する。この構成では、油路切替手段を作動させるとき電力を消費しない。そのため、消費電力を少なくすることができる。
また、油路切替手段の作動に関して例えば電磁弁、電気回路、及び、それらを駆動するための制御等が不要である。そのため、油圧制御装置の構成を簡素にすることができる。
請求項11に記載の発明では、油路切替手段は、機械式ポンプの吐出圧が所定圧未満のとき第1作動位置に作動し、機械式ポンプの吐出圧が前記所定圧を超えるとき第2作動位置に作動する。請求項12に記載の発明では、前記所定圧は、油圧アクチュエータを作動させるために必要な最小値に設定される。この構成では、機械式ポンプが吐出するオイルを電気式ポンプおよびその吸入油路に供給することに起因して変速制御が不能になる事態を回避することができる。
【0018】
請求項13に記載の発明では、油路切替手段の作動位置が第2作動位置であるとき、電気式ポンプは、機械式ポンプが吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられる。これにより、電気式ポンプ内およびその吸入油路内のオイルを入れ替え可能である。
請求項14に記載の発明では、第2吐出油路は、第1吐出油路に接続する。第2吐出油路には、電気式ポンプから第1吐出油路へのオイルの流れのみを許容する逆止弁が設けられる。これによれば、油路切替手段の作動位置が第1作動位置であるとき、第1吐出油路のオイルが電気式ポンプおよびその吸入油路を経由してオイル貯留部に流出することを回避することができる。そのため、油圧制御装置のライン圧の低下を防ぐことができる。
【0019】
請求項15に記載の発明では、第1供給油路に流量制限手段が設けられる。そのため、圧力調整手段が排出するオイルを電気式ポンプおよびその吸入油路に供給することに起因して、例えばトルクコンバータ等に供給されるオイルが不足する事態を回避することができる。
請求項16に記載の発明では、電気式ポンプ内を流れるオイルの少なくとも一部は、電気式ポンプの駆動モータ内を通過する。これによれば、駆動モータのコイルがオイルにより温められるので、駆動モータの始動時に必要な電流が低下し、消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態による油圧制御装置を用いる自動変速機を含む車両用駆動装置を示す模式図である。
【図2】図1の油圧制御装置、および、自動変速機の摩擦係合装置を示す図である。
【図3】図1の機械式ポンプの吐出流量とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図4】図1の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン作動時かつライン圧が所定圧より高いときの図である。
【図5】図1の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン作動時かつライン圧が所定圧未満であるときの図である。
【図6】図1の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン停止時かつ電気式ポンプが作動しているときの図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例による油圧制御装置を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態による油圧制御装置、および、自動変速機の摩擦係合装置を示す図である。
【図9】図7の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン作動時かつライン圧が所定圧より高いときの図である。
【図10】図7の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン作動時かつライン圧が所定圧未満であるときの図である。
【図11】図7の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン停止時かつ電気式ポンプが作動しているときの図である。
【図12】本発明の第2実施形態の変形例による油圧制御装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の複数の実施形態による油圧制御装置を図面に基づいて説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による油圧制御装置を用いる自動変速機を図1に示す。自動変速機90は、停車時および惰性走行時などに自動的にエンジン91を停止させるエンジンストップ機能を有する駆動システムで用いられる。自動変速機90は、エンジン91のクランク軸92に連結されるトルクコンバータ93、遊星歯車式の変速機構94、および、自動変速機用油圧制御装置(以下、「油圧制御装置」という。)10を備える有段変速機である。変速機構94は、図示しない複数の遊星歯車装置と、各遊星歯車装置の回転要素(サンギヤ、キャリヤ、リングギヤ)を、他の遊星歯車装置の回転要素やトランスミッションケース等にトルク伝達可能に連結する油圧式の摩擦係合装置95〜99と、から構成される。油圧式の摩擦係合装置95〜99は、例えば、湿式多板クラッチまたは湿式多板ブレーキからなる。自動変速機90の出力軸100は、プロペラシャフト101、デファレンシャルギヤ102およびドライブシャフト103を介して駆動輪104に連結される。
【0022】
自動変速機90は、摩擦係合装置95〜99の係合および開放を個別に自動制御し、トルクコンバータ93のタービン軸105と出力軸100との間の動力伝達経路を切り替えることによって、複数の変速段のいずれか1つを成立させる。
図2に示すように、油圧制御装置10は、摩擦係合装置95〜99の油圧アクチュエータ106〜110に選択的に作動油を供給し、その作動油の圧力を制御する。油圧制御装置10は、機械式ポンプ21、電気式ポンプ30、ライン圧制御弁40、マニュアルバルブ45、リニアソレノイドバルブ50〜54、および、油路切替弁65等を備える。
【0023】
機械式ポンプ21は、エンジン91(図1参照)に駆動されるオイルポンプである。機械式ポンプ21は、自動変速機90のオイルパン111に貯留されたオイルを、第1吸入油路22を通じて吸入する。機械式ポンプ21に吸入されたオイルは、機械式ポンプ21内で加圧され、吐出口25から第1吐出油路23に吐出される。
第1吐出油路23は、機械式ポンプ21の吐出口25とマニュアルバルブ45の導入口49とを接続する。機械式ポンプ21から第1吐出油路23に吐出されたオイルは、マニュアルバルブ45の導入口49に供給される。
第1吐出油路23には、機械式ポンプ21からマニュアルバルブ45側へ向かうオイルの流通のみを許容する逆止弁24が設けられる。
図3は、エンジン回転数Ne[rpm]と、機械式ポンプ21の吐出流量Q[l/min]との関係を示す図である。図3に示すように、吐出流量Qは、所定のエンジン回転数Ne1を超えると、エンジン回転数Neが増すにつれて増加する。
【0024】
図2に戻って、電気式ポンプ30は、駆動モータ31により駆動されるオイルポンプである。電動式ポンプ30は、エンジンの作動状況に拘らず駆動可能である。電気式ポンプ30は、オイルパン111に貯留されたオイルを、第2吸入油路32を通じて吸入する。電気式ポンプ30に吸入されたオイルは、電気式ポンプ30内で加圧され、吐出口35から第2吐出油路33に吐出される。第2吸入油路32は、特許請求の範囲の「吸入油路」に相当する。
第2吐出油路33は、電気式ポンプ30の吐出口35と、第1吐出油路23のうち逆止弁24に対しマニュアルバルブ45側とを接続する。電気式ポンプ30から第2吐出油路33に吐出されたオイルは、第1吐出油路23を経由してマニュアルバルブ45の導入口49に供給される。
第2吐出油路33には、電気式ポンプ30から第1吐出油路23への流れのみを許容する逆止弁34が設けられている。逆止弁34は、第1吐出油路23のオイルが第2吐出油路33を経由して電気式ポンプ30に流出するのを防ぐ。
【0025】
「圧力調整手段」としてのライン圧制御弁40は、第1吐出油路23のうち逆止弁24に対しマニュアルバルブ45側に接続されるパイロット式の圧力調整弁である。ライン圧制御弁40は、マニュアルバルブ45に供給されるオイルの圧力、すなわちライン圧を調整する。例えばエンジンの負荷が大きいほどライン圧は大きくなるように調整される。
ライン圧制御弁40のスプール44は、スプリング41の付勢力と、第1吐出油路23のオイルから受ける力と、図示しない電磁弁の吐出オイルから受ける力との釣り合いにより移動し、第1リリーフ口42および第2リリーフ口43を開閉する。上記電磁弁の吐出オイルの圧力は、エンジンの負荷に応じて増減するように制御される。これにより、ライン圧が目標値より高いとき第1リリーフ口42および第2リリーフ口43から余剰分のオイルが排出される。
【0026】
上記ライン圧の目標値は、例えば、油圧アクチュエータ106〜110を作動させるために必要な最小値に設定される。この目標値は、車両の走行状態に応じて変更される。図3に示すように、ライン圧を目標値に設定するために必要な機械式ポンプ21の吐出流量Qnを超える余剰分が、ライン圧制御弁40のリリーフ流量Qrとなる。第1リリーフ口42のリリーフ流量Q1と第2リリーフ口43のリリーフ流量Q2との和がリリーフ流量Qrに一致する。
第1リリーフ口42からリリーフされたオイルはオイルパン111に戻される。また、第2リリーフ口43からリリーフされたオイルは、トルクコンバータ圧制御回路112を経由してトルクコンバータ93に供給される。
以下、第1吐出油路23のうち逆止弁24に対し機械式ポンプ21側のオイルの圧力を吐出圧と記載し、ライン圧と区別する。吐出圧とライン圧とは等しくなりうる。
【0027】
マニュアルバルブ45は、セレクトレバー113に連動するスプール44を有する油路切替弁である。セレクトレバー113は、車両の運転者により例えば4つの操作位置に操作される。上記4つの操作位置とは、駐車のための操作位置(パーキングポジション)、後進走行のための操作位置(リバースポジション)、動力伝達遮断のための操作位置(ニュートラルポジション)、前進走行のための操作位置(ドライブポジション)である。スプール44は、セレクトレバー113に機械的または電気的に接続されており、セレクトレバー113の操作位置に応じて作動する。
セレクトレバー113の操作位置がパーキングポジションまたはニュートラルポジションであるとき、スプール44は、第1吐出油路23と前進油路47および後進油路48とを遮断する位置に切り替わる。
【0028】
また、セレクトレバー113の操作位置がリバースポジションであるとき、スプール44は、第1吐出油路23と前進油路47とを遮断するとともに、第1吐出油路23と後進油路48とを連通させる位置に切り替わる。これにより、第1吐出油路23のオイルが後進油路48を通じてリニアソレノイドバルブ50に供給可能となる。
また、セレクトレバー113の操作位置がドライブポジションであるとき、スプール44は、第1吐出油路23と後進油路48とを遮断するとともに、第1吐出油路23と前進油路47とを連通させる位置に切り替わる。これにより、第1吐出油路23のオイルが前進油路47を通じてリニアソレノイドバルブ51〜54に供給可能となる。
【0029】
リニアソレノイドバルブ50〜54は、吐出圧を連続的に変更可能な直動形の制御弁である。リニアソレノイドバルブ50〜54の吐出圧は、電子制御装置55が制御する。
リニアソレノイドバルブ50は、後進変速段の成立に関与する摩擦係合装置95に対応して設けられる。リニアソレノイドバルブ50は、マニュアルバルブ45から後進油路48を経由して供給されたオイルの圧力を調整し、摩擦係合装置95の油圧アクチュエータ106に供給可能である。油圧アクチュエータ106は、リニアソレノイドバルブ50から供給される作動油によって作動する。
【0030】
リニアソレノイドバルブ51〜54は、前進変速段の成立に関与する摩擦係合装置96〜99に対応して設けられる。リニアソレノイドバルブ51〜54は、マニュアルバルブ45から前進油路47を経由して供給されたオイルの圧力を調整し、対応する油圧アクチュエータに供給可能である。油圧アクチュエータ107〜110は、対応するリニアソレノイドバルブから供給されるオイルによって作動する。摩擦係合装置96〜99のいずれを係合させるかは、複数の前進用変速段毎に予め決められている。
【0031】
「第1供給油路」としての供給油路60は、第2吐出油路33のうち逆止弁34に対し第1吐出油路23側と、後述の油路切替弁65の第3ポート69とを接続する。供給油路60には流量制限手段61が設けられる。この流量制限手段61は、例えば絞り弁等から構成される。供給油路60は、第1吐出油路23のオイルを油路切替弁65の第3ポート69に供給可能である。
【0032】
「油路切替手段」としての油路切替弁65は、第2吐出油路33のうち逆止弁34と電気式ポンプ30との間に設けられる。油路切替弁65は、第2吐出油路33の電気式ポンプ30側に接続する第1ポート67と、第2吐出油路33の第1吐出油路23側に接続する第2ポート68と、供給油路60に接続する第3ポート69とを有するスプール式3方向弁である。
油路切替弁65は、第2吐出油路33を連通させ、且つ、供給油路60と電気式ポンプ30とを遮断する第1作動位置、および、供給油路60と電気式ポンプ30とを連通させ、且つ、第2吐出油路33を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替弁65は、第2作動位置に作動すると、供給油路60のオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給する。
【0033】
油路切替弁65には、機械式ポンプ21と逆止弁24との間で第1吐出油路23から分岐する分岐油路26が接続する。油路切替弁65は、分岐油路26から供給される機械式ポンプ21の吐出オイルの流体力によって作動する。つまり、油路切替弁65は、電力を消費することなしに作動する。具体的には、油路切替弁65は、機械式ポンプ21の吐出圧が所定圧未満のときスプリング66の付勢力により第1作動位置に作動する。また、油路切替弁65は、機械式ポンプ21の吐出圧が前記所定圧を超えるとき機械式ポンプ21が吐出するオイルの作用力により第2作動位置に作動する。前記所定圧は、例えば、前記ライン圧の目標値に設定される。
分岐油路26には流量制限手段27が設けられる。この流量制限手段27は、例えば絞り弁等から構成される。
【0034】
次に、油圧制御装置10の作動を図1、図4〜図6に基づき説明する。図4〜図6の破線の矢印Aはオイルの流れを示す。
(エンジン始動前)
図1は、エンジン始動前の状態を示す。この状態では、機械式ポンプ21が停止しライン圧が所定圧未満であるため、油路切替弁65の作動位置が第1作動位置となる。
【0035】
(エンジン作動時かつライン圧が所定圧より高いとき)
図1の状態から、エンジンが始動するとともに機械式ポンプ21が作動し、ライン圧が所定圧より高くなると、図4に示すように油路切替弁65が第2作動位置に作動する。このとき、供給油路60と電気式ポンプ30の吐出口35とが連通する。オイルパン111のオイルは、油圧アクチュエータやトルクコンバータ等との間を行き来し、各所で熱を吸収し温まっている。供給油路60は、機械式ポンプ21がオイルパン111から吸入し第1吐出油路23に吐出するオイルの一部を、油路切替弁65を通じて電気式ポンプ30に供給する。電気式ポンプ30のロータは、供給油路60が供給するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転する。
【0036】
これにより、油路切替弁65が第2作動位置に作動する前に電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内にあったすべてのオイルは、供給油路60が供給するオイルに押し出されてオイルパン111に排出される。そして、電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内は比較的高温のオイルで満たされる。
流量制限手段61は、供給油路60を通過するオイルの流量を制限することで、第1吐出油路23のオイルが急激に流出することを防ぐ。
【0037】
(エンジン作動時かつライン圧が所定圧未満であるとき)
図4の状態から、例えば油圧制御装置10内のオイルが高温かつ車速が低速となり、ライン圧が所定圧未満になると、図5に示すように油路切替弁65が第1作動位置に作動する。このとき、供給油路60と電気式ポンプ30の吐出口35とが遮断される。これにより、供給油路60から電気式ポンプ30および第2吸入油路32へのオイルの供給が停止する。
【0038】
(エンジン停止時かつ電気式ポンプ30の作動時)
図5の状態から、例えば車両が停車しアイドリングストップ機能によりエンジンが停止する、あるいは、車両が減速しエンジンストップ機能によりエンジンが停止すると、図6に示すように油路切替弁65が第1作動位置に作動し、電気式ポンプ30が作動する。このとき、供給油路60と電気式ポンプ30とが遮断されるとともに、電気式ポンプ30と第1吐出油路23とが第2吐出油路33を通じて連通する。ライン圧は、エンジン停止直前に係合していた摩擦係合装置がその係合を維持することができる程度の圧力に設定される。電気式ポンプ30は、上記圧力を送出可能な最小限のものが選定される。
【0039】
図6の状態から、エンジンが再始動すると、ライン圧の上昇とともに図5の状態を経て図4の状態になる。
ここで、図4の状態から図6の状態に至る場合、および、図6の状態から図4の状態に至る場合等もある。
【0040】
以上説明したように、第1実施形態による油圧制御装置10は、供給油路60および油路切替弁65を備える。供給油路60は、第1吐出油路23と電気式ポンプ30の吐出口35とを接続する。油路切替弁65は、第2吐出油路33を連通させ、且つ、供給油路60と電気式ポンプ30とを遮断する第1作動位置、および、供給油路60と電気式ポンプ30とを連通させ、且つ、第2吐出油路33を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替弁65は、第2作動位置に作動すると、供給油路60のオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給する。
【0041】
このような油圧制御装置10によれば、機械式ポンプ21の駆動時に油路切替弁65が第2作動位置に作動すると、機械式ポンプ21がオイルパン111から吸入し第1吐出油路23に吐出するオイルの一部は、供給油路60を経由して電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給される。電気式ポンプ30および第2吸入油路32のすべてのオイルは、供給油路60から供給される温かいオイルと入れ替わる。したがって、電気式ポンプ30の始動に先立って電気式ポンプ30および第2吸入油路32のオイルが予熱されるので、電気式ポンプ30の始動時の吸入抵抗を低減することができる。よって、第2吸入油路32のサイズを拡大することなく電気式ポンプ30に小型の駆動モータ31を使用することができ、それゆえ消費電力を低減しつつ、確実に始動直後の電気式ポンプ30にオイルを吸入および吐出させることができる。
【0042】
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、油路切替弁65は、機械式ポンプ21が吐出するオイルによって作動する。この構成では、油路切替弁65を作動させるとき電力を消費しない。そのため、消費電力を少なくすることができる。
また、油路切替弁65の作動に関して例えば電磁弁、電気回路、及び、それらを駆動するための制御等が不要である。そのため、油圧制御装置10の構成を簡素にすることができる。
【0043】
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、油路切替弁65は、機械式ポンプ21の吐出圧が所定圧未満のとき第1作動位置に作動し、機械式ポンプ21の吐出圧が前記所定圧を超えるとき第2作動位置に作動する。前記所定圧は、油圧アクチュエータ106〜110を作動させるために必要な最小値に設定される。この構成では、機械式ポンプ21が吐出するオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給することに起因して変速制御が不能になる事態を回避することができる。
【0044】
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、油路切替弁65の作動位置が第2作動位置であるとき、電気式ポンプ30は、機械式ポンプ21が吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられる。これにより、電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内のオイルを入れ替え可能である。
【0045】
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、第2吐出油路33は、第1吐出油路23に接続する。第2吐出油路33には、電気式ポンプ30から第1吐出油路23へのオイルの流れのみを許容する逆止弁34が設けられる。これによれば、油路切替弁65の作動位置が第1作動位置であるとき、第1吐出油路23のオイルが電気式ポンプ30および第2吸入油路32を経由してオイルパン111に流出することを回避することができる。そのため、ライン圧の低下を防ぐことができる。
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、供給油路60に流量制限手段61が設けられる。そのため、機械式ポンプ21が吐出するオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給することに起因してライン圧が急激に低下する事態を回避することができる。
【0046】
(第1実施形態の変形例)
図7は、第1実施形態の変形例の油圧制御装置を示す図である。図7に破線の矢印Aで示すように、油圧制御装置70では、電気式ポンプ30内を流れるオイルの少なくとも一部は、電気式ポンプ30を駆動する駆動モータ31内を通過する。これによれば、駆動モータ31のコイルがオイルにより温められるので、駆動モータ31の始動時の駆動電流が低下し、消費電力を抑えることができる。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による油圧制御装置を説明する。図8〜図11に示すように、第2実施形態による油圧制御装置75は、「圧力調整手段」としてのライン圧制御弁40の第2リリーフ口43と油路切替弁65の第3ポート69とを接続する「第2供給油路」としての供給油路76を備える。図9〜図11の破線の矢印Aはオイルの流れを示す。
(エンジン始動前)
エンジン始動前では、図8に示すように油路切替弁65の作動位置が第1作動位置となる。
【0048】
(エンジン作動時かつライン圧が所定圧より高いとき)
図1の状態から、エンジンが始動するとともに機械式ポンプ21が作動し、ライン圧が所定圧より高くなると、図9に示すように油路切替弁65が第2作動位置に作動する。このとき、供給油路76と電気式ポンプ30の吐出口35とが連通する。供給油路76は、オイルパン111から機械式ポンプ21および第1吐出油路23を経由しライン圧制御弁40から排出されるオイルの一部を、油路切替弁65を通じて電気式ポンプ30に供給する。電気式ポンプ30のロータは、供給油路76が供給するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転する。
【0049】
これにより、油路切替弁65が第2作動位置に作動する前に電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内にあったすべてのオイルは、供給油路76が供給するオイルに押し出されてオイルパン111に排出される。そして、電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内は比較的高温のオイルで満たされる。
【0050】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、ライン圧が例えばエンジンの負荷に応じて決定される目標値を超える場合、第1吐出油路23のオイルがライン圧制御弁40の第1リリーフ口42および第2リリーフ口43から排出される。図2に示すように、ライン圧を目標値に設定するために必要な機械式ポンプの吐出流量Qnを超える余剰分が、ライン圧制御弁のリリーフ流量Qrとなる。第1リリーフ口42のリリーフ流量Q1と第2リリーフ口43のリリーフ流量Q2との和がリリーフ流量Qrに一致する。
流量制限手段77は、供給油路76を通過するオイルの流量を制限することで、トルクコンバータ93へ供給されるオイルの流量を確保する。
【0051】
(エンジン作動時かつライン圧が所定圧未満であるとき)
図9の状態から、例えば油圧制御装置10内のオイルが高温かつ車速が低速となり、ライン圧が所定圧未満になると、図10に示すように油路切替弁65が第1作動位置に作動する。このとき、供給油路76と電気式ポンプ30の吐出口35とが遮断される。これにより、供給油路76から電気式ポンプ30および第2吸入油路32へのオイルの供給が停止する。
【0052】
(エンジン停止時かつ電気式ポンプ30の作動時)
図10の状態から、例えば車両が停車しアイドリングストップ機能によりエンジンが停止する、あるいは、車両が減速しエンジンストップ機能によりエンジンが停止すると、図11に示すように油路切替弁65が第1作動位置に作動し、電気式ポンプ30が作動する。このとき、供給油路76と電気式ポンプ30とが遮断されるとともに、電気式ポンプ30と第1吐出油路23とが第2吐出油路33を通じて連通する。ライン圧は、エンジン停止直前に係合していた摩擦係合装置がその係合を維持することができる程度の圧力に設定される。
【0053】
以上説明したように、第2実施形態による油圧制御装置75は、供給油路76および油路切替弁65を備える。供給油路76は、ライン圧制御弁40の第2リリーフ口43と電気式ポンプ30とを接続する。油路切替弁65は、第2吐出油路33を連通させ、且つ、供給油路76と電気式ポンプ30とを遮断する第1作動位置、および、供給油路76と電気式ポンプ30とを連通させ、且つ、第2吐出油路33を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替弁65は、第2作動位置に作動すると、第2リリーフ口43からリリーフされるオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給する。
【0054】
このような油圧制御装置75によれば、機械式ポンプ21の駆動時に油路切替弁65が第2作動位置に作動すると、機械式ポンプ21がオイルパン111から吸入し第1吐出油路23に吐出するオイルの一部は、ライン圧制御弁40の第2リリーフ口43からリリーフされ、供給油路60を経由して電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給される。電気式ポンプ30および第2吸入油路32のすべてのオイルは、供給油路60から供給される温かいオイルと入れ替わる。したがって、電気式ポンプ30の始動に先立って電気式ポンプ30および第2吸入油路32のオイルが予熱されるので、電気式ポンプ30の始動時の吸入抵抗を低減することができる。よって、第2吸入油路32のサイズを拡大することなく電気式ポンプ30に小型の駆動モータ31を使用することができ、それゆえ消費電力を低減しつつ、確実に始動直後の電気式ポンプ30にオイルを吸入および吐出させることができる。
【0055】
また、第2実施形態では、供給油路76に流量制限手段77が設けられるので、第2リリーフ口43からリリーフされるオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給することに起因してトルクコンバータ圧制御回路112に供給されるオイルが不足する事態を回避することができる。
【0056】
(第2実施形態の変形例)
図12は、第2実施形態の変形例の油圧制御装置を示す図である。図12に破線の矢印Aで示すように、油圧制御装置80では、電気式ポンプ30内を流れるオイルの少なくとも一部は、電気式ポンプ30を駆動する駆動モータ31内を通過する。これによれば、駆動モータ31のコイルがオイルにより温められるので、駆動モータ31の始動時の駆動電流が低下し、消費電力を抑えることができる。
【0057】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、自動変速機は、遊星歯車式有段変速機に限らず、例えば平行歯車式有段変速機、摩擦式無段変速機、油圧機械式無段変速機および歯車式無段変速機などで構成してもよい。
本発明の他の実施形態では、油圧アクチュエータは、摩擦係合装置の油圧シリンダに限らず、例えば、ベルト式無段変速機の溝幅可変プーリを作動させる油圧シリンダ等、他の形式の油圧アクチュエータであってもよい。
本発明の他の実施形態では、油路切替手段は、電気的に駆動する形式の弁から構成されてもよい。この場合、油路切替手段の作動を制御装置が制御するように構成してもよい。
本発明の他の実施形態では、供給油路に流量制限手段が設けられなくてもよい。
【0058】
本発明の他の実施形態では、圧力調整手段は、パイロット式バルブに限らず、例えば直動式バルブであってもよい。
本発明の他の実施形態では、油圧アクチュエータに供給する作動油を直接的に制御する弁は、リニアソレノイドバルブ等の直動式バルブに限らず、パイロット式バルブであってもよい。また、油圧アクチュエータに供給する作動油を直接的に制御する弁は、電磁式駆動部を有するものに限らず、例えば電動式駆動部を有するものであってもよい。
本発明の他の実施形態では、自動変速機は、図1に示すような縦置型に限らず、横置型のものであってもよい。また、自動変速機は、トルクコンバータが無い形式のものであってもよい。
【0059】
このように本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10,70,75,80・・・自動変速機用油圧制御装置
21・・・機械式ポンプ
25・・・吐出口
23・・・第1吐出油路
30・・・電気式ポンプ
32・・・第2吸入油路(吸入油路)
33・・・第2吐出油路
35・・・吐出口
60・・・供給油路(第1供給油路)
65・・・油路切替弁(油路切替手段)
76・・・供給油路(第2供給油路)
90・・・自動変速機
91・・・エンジン
106〜110・・・油圧アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速機は、エンジンの出力回転を加減速し駆動輪に出力する。この自動変速機には、例えば、遊星歯車式有段変速機、平行歯車式有段変速機、摩擦式無段変速機、油圧機械式無段変速機および歯車式無段変速機などがある。これらの自動変速機は、油圧アクチュエータの操作力で作動する変速機構を備える。油圧アクチュエータは、油圧制御装置が供給する作動油の流体力で作動する。油圧制御装置は、オイルポンプが吐出するオイルの圧力を調整し、そのオイルを油圧アクチュエータに供給する。
【0003】
従来、機械式ポンプおよび電気式ポンプを両方備える自動変速機用油圧制御装置が公知である。このような油圧制御装置は、エンジンが停止しているとき、電気式ポンプが油圧アクチュエータに作動油を圧送することができる。そのため、例えばアイドリングストップ制御等でエンジンが停止したとき、電気式ポンプが油圧アクチュエータに作動油を供給することで油圧アクチュエータの作動を維持することができる。これにより、エンジンの再始動直後に変速機構を作動させることができる。
【0004】
特許文献1、2には、電気式ポンプの始動に先立って電気式ポンプの吸入油路または吐出油路のオイルを予熱するための技術が開示されている。特許文献1に開示された油圧制御装置は、電気式ポンプの吸入油路の一部および吐出油路のオイルを、機械式ポンプがオイルパンから汲み上げたオイルと入れ替える。特許文献2に開示された油圧制御装置は、電気式ポンプを逆回転駆動させることで電気式ポンプの吸入油路のオイルをオイルパンのオイルと入れ替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−52638号公報
【特許文献2】特開2011−000978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された油圧制御装置では、吸入油路のオイルの一部しかオイルパンのオイルに入れ替わらない。吸入油路に停滞するオイルが冷えると、オイルの粘度が高くなり、電気式ポンプの始動時の吸入抵抗が大きくなる。このときに電気式ポンプがオイルを吐出できるかどうかは、吐出油路のオイルが高粘度であることに起因して吐出抵抗が高くなる場合に比べると、吸入抵抗が大きいことで電機式ポンプがオイルを吸入できないことの影響の方が相対的に大きい。吸入油路のオイルが高粘度であるときオイルを吸入可能とするには、吸入口のサイズを大きくしたり、高出力の駆動モータを選定したりする必要がある。したがって、電気式ポンプの体格が大きくなったり、電気式ポンプの駆動モータの消費電力が多くなるという問題がある。また特許文献1に開示された油圧制御装置では、油路の切替に専用の電磁切替弁を用いており、コストが上昇するという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された油圧制御装置では、本来の電気式ポンプの使用に先立って電気式ポンプを逆回転駆動させるため、その際に駆動モータが電力を消費する。したがって、駆動モータの消費電力が多くなるという問題がある。また、逆回転駆動するための制御回路を追加する必要があり、制御回路が複雑になると同時にコストが上昇する。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気式ポンプの吸入口のサイズを拡大すること無く駆動モータを小型化し、専用の電磁切替弁や駆動モータの逆転駆動回路が不要で無駄な電力を消費することなく、電気式ポンプが始動直後にオイルを吐出することができる自動変速機用油圧制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、エンジンの出力回転を加減速する自動変速機の油圧アクチュエータに作動油を供給可能な自動変速機用油圧制御装置であって、機械式ポンプと、電気式ポンプと、第1吐出油路と、第2吐出油路と、第1供給油路と、油路切替手段とを備える。
機械式ポンプはエンジンによって駆動可能であり、電気式ポンプはエンジンの作動状況に拘らず電気的に駆動可能である。第1吐出油路は機械式ポンプの吐出口に接続し、第2吐出油路は電気式ポンプの吐出口に接続する。第1供給油路は、第1吐出油路と電気式ポンプの吐出口とを接続する。
【0009】
油路切替手段は、第2吐出油路を連通させ且つ第1供給油路を遮断する第1作動位置、および、第1供給油路を連通させ且つ第2吐出油路を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替手段は、第1作動位置に作動すると電気式ポンプが吐出するオイルを油圧アクチュエータに供給可能である。また、油路切替手段は、第2作動位置に作動すると第1供給油路のオイルを電気式ポンプの吸入油路に供給する。
【0010】
このような油圧制御装置によれば、機械式ポンプの駆動時に油路切替手段が第2作動位置に作動すると、機械式ポンプがオイルパン等のオイル貯留部から吸入し第1吐出油路に吐出するオイルの一部は、第1供給油路を経由して電気式ポンプおよびその吸入油路に供給される。オイル貯留部のオイルは、例えば油圧アクチュエータやトルクコンバータ等との間を行き来し、各所で熱を吸収し温まっている。そのため、電気式ポンプおよびその吸入油路のすべてのオイルは、第1供給油路から供給される温かいオイルと入れ替わる。したがって、電気式ポンプの始動に先立って電気式ポンプおよびその吸入油路のオイルが予熱されるので、電気式ポンプの始動時の吸入抵抗を低減することができる。よって、吸入口のサイズを拡大することなく電気式ポンプに小型の駆動モータを使用することでき、それゆえ消費電力を低減しつつ、電気式ポンプが始動直後にオイルを吸入および吐出することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、油路切替手段は、機械式ポンプが吐出するオイルによって作動する。この構成では、油路切替手段を作動させるとき電力を消費しない。そのため、消費電力を少なくすることができる。
また、油路切替手段の作動に関して例えば電磁弁、電気回路、及び、それらを駆動するための制御等が不要である。そのため、油圧制御装置の構成を簡素にすることができる。
請求項3に記載の発明では、油路切替手段は、機械式ポンプの吐出圧が所定圧未満のとき第1作動位置に作動し、機械式ポンプの吐出圧が前記所定圧を超えるとき第2作動位置に作動する。請求項4に記載の発明では、前記所定圧は、油圧アクチュエータを作動させるために必要な最小値に設定される。この構成では、機械式ポンプが吐出するオイルを電気式ポンプおよびその吸入油路に供給することに起因して変速制御が不能になる事態を回避することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明では、油路切替手段の作動位置が第2作動位置であるとき、電気式ポンプは、機械式ポンプが吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられる。これにより、電気式ポンプ内およびその吸入油路内のオイルを入れ替え可能である。
請求項6に記載の発明では、第2吐出油路は、第1吐出油路に接続する。第2吐出油路には、電気式ポンプから第1吐出油路へのオイルの流れのみを許容する逆止弁が設けられる。これによれば、油路切替手段の作動位置が第1作動位置であるとき、第1吐出油路のオイルが電気式ポンプおよびその吸入油路を経由してオイル貯留部に流出することを回避することができる。そのため、油圧制御装置のライン圧の低下を防ぐことができる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、第1供給油路に流量制限手段が設けられる。そのため、機械式ポンプが吐出するオイルを電気式ポンプおよびその吸入油路に供給することに起因して油圧制御装置のライン圧が急激に低下する事態を回避することができる。
請求項8に記載の発明では、電気式ポンプ内を流れるオイルの少なくとも一部は、電気式ポンプの駆動モータ内を通過する。これによれば、駆動モータのコイルがオイルにより温められるので、駆動モータの始動時に必要な電流が低下し、消費電力を抑えることができる。
【0014】
請求項9に記載の発明は、エンジンの出力回転を加減速する自動変速機の油圧アクチュエータに作動油を供給可能な自動変速機用油圧制御装置であって、機械式ポンプと、電気式ポンプと、第1吐出油路と、第2吐出油路と、圧力調整手段と、第2供給油路と、油路切替手段とを備える。
機械式ポンプはエンジンによって駆動可能であり、電気式ポンプはエンジンの作動状況に拘らず電気的に駆動可能である。第1吐出油路は機械式ポンプの吐出口に接続し、第2吐出油路は電気式ポンプの吐出口に接続する。圧力調整手段は、第1吐出油路のオイルを排出することで第1吐出油路の油圧を調整する。第2供給油路は、圧力調整手段の排出口と電気式ポンプの吐出口とを接続する。
【0015】
油路切替手段は、第2吐出油路を連通させ且つ第2供給油路を遮断する第1作動位置、および、第2供給油路を連通させ且つ第2吐出油路を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替手段は、第1作動位置に作動すると電気式ポンプが吐出するオイルを油圧アクチュエータに供給可能である。また、油路切替手段は、第2作動位置に作動すると第2供給油路のオイルを電気式ポンプの吸入油路に供給する。
【0016】
このような油圧制御装置によれば、機械式ポンプの駆動時に油路切替手段が第2作動位置に作動すると、機械式ポンプがオイルパン等のオイル貯留部から吸入し第1吐出油路に吐出するオイルの一部は、圧力調整手段が圧力の調整のために排出し、第2供給油路を経由して電気式ポンプおよびその吸入油路に供給される。そのため、電気式ポンプおよびその吸入油路のすべてのオイルは、第2供給油路から供給される温かいオイルと入れ替わる。したがって、電気式ポンプの始動に先立って電気式ポンプおよびその吸入油路のオイルが予熱されるので、電気式ポンプの始動時の吸入抵抗を低減することができる。よって、吸入口のサイズを拡大することなく電気式ポンプに小型の駆動モータを使用することができ、それゆえ消費電力を低減しつつ、電気式ポンプが始動直後にオイルを吸入および吐出することができる。
【0017】
請求項10に記載の発明では、油路切替手段は、機械式ポンプが吐出するオイルによって作動する。この構成では、油路切替手段を作動させるとき電力を消費しない。そのため、消費電力を少なくすることができる。
また、油路切替手段の作動に関して例えば電磁弁、電気回路、及び、それらを駆動するための制御等が不要である。そのため、油圧制御装置の構成を簡素にすることができる。
請求項11に記載の発明では、油路切替手段は、機械式ポンプの吐出圧が所定圧未満のとき第1作動位置に作動し、機械式ポンプの吐出圧が前記所定圧を超えるとき第2作動位置に作動する。請求項12に記載の発明では、前記所定圧は、油圧アクチュエータを作動させるために必要な最小値に設定される。この構成では、機械式ポンプが吐出するオイルを電気式ポンプおよびその吸入油路に供給することに起因して変速制御が不能になる事態を回避することができる。
【0018】
請求項13に記載の発明では、油路切替手段の作動位置が第2作動位置であるとき、電気式ポンプは、機械式ポンプが吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられる。これにより、電気式ポンプ内およびその吸入油路内のオイルを入れ替え可能である。
請求項14に記載の発明では、第2吐出油路は、第1吐出油路に接続する。第2吐出油路には、電気式ポンプから第1吐出油路へのオイルの流れのみを許容する逆止弁が設けられる。これによれば、油路切替手段の作動位置が第1作動位置であるとき、第1吐出油路のオイルが電気式ポンプおよびその吸入油路を経由してオイル貯留部に流出することを回避することができる。そのため、油圧制御装置のライン圧の低下を防ぐことができる。
【0019】
請求項15に記載の発明では、第1供給油路に流量制限手段が設けられる。そのため、圧力調整手段が排出するオイルを電気式ポンプおよびその吸入油路に供給することに起因して、例えばトルクコンバータ等に供給されるオイルが不足する事態を回避することができる。
請求項16に記載の発明では、電気式ポンプ内を流れるオイルの少なくとも一部は、電気式ポンプの駆動モータ内を通過する。これによれば、駆動モータのコイルがオイルにより温められるので、駆動モータの始動時に必要な電流が低下し、消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態による油圧制御装置を用いる自動変速機を含む車両用駆動装置を示す模式図である。
【図2】図1の油圧制御装置、および、自動変速機の摩擦係合装置を示す図である。
【図3】図1の機械式ポンプの吐出流量とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図4】図1の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン作動時かつライン圧が所定圧より高いときの図である。
【図5】図1の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン作動時かつライン圧が所定圧未満であるときの図である。
【図6】図1の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン停止時かつ電気式ポンプが作動しているときの図である。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例による油圧制御装置を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態による油圧制御装置、および、自動変速機の摩擦係合装置を示す図である。
【図9】図7の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン作動時かつライン圧が所定圧より高いときの図である。
【図10】図7の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン作動時かつライン圧が所定圧未満であるときの図である。
【図11】図7の油圧制御装置のライン圧発生部を示す図であって、エンジン停止時かつ電気式ポンプが作動しているときの図である。
【図12】本発明の第2実施形態の変形例による油圧制御装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の複数の実施形態による油圧制御装置を図面に基づいて説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による油圧制御装置を用いる自動変速機を図1に示す。自動変速機90は、停車時および惰性走行時などに自動的にエンジン91を停止させるエンジンストップ機能を有する駆動システムで用いられる。自動変速機90は、エンジン91のクランク軸92に連結されるトルクコンバータ93、遊星歯車式の変速機構94、および、自動変速機用油圧制御装置(以下、「油圧制御装置」という。)10を備える有段変速機である。変速機構94は、図示しない複数の遊星歯車装置と、各遊星歯車装置の回転要素(サンギヤ、キャリヤ、リングギヤ)を、他の遊星歯車装置の回転要素やトランスミッションケース等にトルク伝達可能に連結する油圧式の摩擦係合装置95〜99と、から構成される。油圧式の摩擦係合装置95〜99は、例えば、湿式多板クラッチまたは湿式多板ブレーキからなる。自動変速機90の出力軸100は、プロペラシャフト101、デファレンシャルギヤ102およびドライブシャフト103を介して駆動輪104に連結される。
【0022】
自動変速機90は、摩擦係合装置95〜99の係合および開放を個別に自動制御し、トルクコンバータ93のタービン軸105と出力軸100との間の動力伝達経路を切り替えることによって、複数の変速段のいずれか1つを成立させる。
図2に示すように、油圧制御装置10は、摩擦係合装置95〜99の油圧アクチュエータ106〜110に選択的に作動油を供給し、その作動油の圧力を制御する。油圧制御装置10は、機械式ポンプ21、電気式ポンプ30、ライン圧制御弁40、マニュアルバルブ45、リニアソレノイドバルブ50〜54、および、油路切替弁65等を備える。
【0023】
機械式ポンプ21は、エンジン91(図1参照)に駆動されるオイルポンプである。機械式ポンプ21は、自動変速機90のオイルパン111に貯留されたオイルを、第1吸入油路22を通じて吸入する。機械式ポンプ21に吸入されたオイルは、機械式ポンプ21内で加圧され、吐出口25から第1吐出油路23に吐出される。
第1吐出油路23は、機械式ポンプ21の吐出口25とマニュアルバルブ45の導入口49とを接続する。機械式ポンプ21から第1吐出油路23に吐出されたオイルは、マニュアルバルブ45の導入口49に供給される。
第1吐出油路23には、機械式ポンプ21からマニュアルバルブ45側へ向かうオイルの流通のみを許容する逆止弁24が設けられる。
図3は、エンジン回転数Ne[rpm]と、機械式ポンプ21の吐出流量Q[l/min]との関係を示す図である。図3に示すように、吐出流量Qは、所定のエンジン回転数Ne1を超えると、エンジン回転数Neが増すにつれて増加する。
【0024】
図2に戻って、電気式ポンプ30は、駆動モータ31により駆動されるオイルポンプである。電動式ポンプ30は、エンジンの作動状況に拘らず駆動可能である。電気式ポンプ30は、オイルパン111に貯留されたオイルを、第2吸入油路32を通じて吸入する。電気式ポンプ30に吸入されたオイルは、電気式ポンプ30内で加圧され、吐出口35から第2吐出油路33に吐出される。第2吸入油路32は、特許請求の範囲の「吸入油路」に相当する。
第2吐出油路33は、電気式ポンプ30の吐出口35と、第1吐出油路23のうち逆止弁24に対しマニュアルバルブ45側とを接続する。電気式ポンプ30から第2吐出油路33に吐出されたオイルは、第1吐出油路23を経由してマニュアルバルブ45の導入口49に供給される。
第2吐出油路33には、電気式ポンプ30から第1吐出油路23への流れのみを許容する逆止弁34が設けられている。逆止弁34は、第1吐出油路23のオイルが第2吐出油路33を経由して電気式ポンプ30に流出するのを防ぐ。
【0025】
「圧力調整手段」としてのライン圧制御弁40は、第1吐出油路23のうち逆止弁24に対しマニュアルバルブ45側に接続されるパイロット式の圧力調整弁である。ライン圧制御弁40は、マニュアルバルブ45に供給されるオイルの圧力、すなわちライン圧を調整する。例えばエンジンの負荷が大きいほどライン圧は大きくなるように調整される。
ライン圧制御弁40のスプール44は、スプリング41の付勢力と、第1吐出油路23のオイルから受ける力と、図示しない電磁弁の吐出オイルから受ける力との釣り合いにより移動し、第1リリーフ口42および第2リリーフ口43を開閉する。上記電磁弁の吐出オイルの圧力は、エンジンの負荷に応じて増減するように制御される。これにより、ライン圧が目標値より高いとき第1リリーフ口42および第2リリーフ口43から余剰分のオイルが排出される。
【0026】
上記ライン圧の目標値は、例えば、油圧アクチュエータ106〜110を作動させるために必要な最小値に設定される。この目標値は、車両の走行状態に応じて変更される。図3に示すように、ライン圧を目標値に設定するために必要な機械式ポンプ21の吐出流量Qnを超える余剰分が、ライン圧制御弁40のリリーフ流量Qrとなる。第1リリーフ口42のリリーフ流量Q1と第2リリーフ口43のリリーフ流量Q2との和がリリーフ流量Qrに一致する。
第1リリーフ口42からリリーフされたオイルはオイルパン111に戻される。また、第2リリーフ口43からリリーフされたオイルは、トルクコンバータ圧制御回路112を経由してトルクコンバータ93に供給される。
以下、第1吐出油路23のうち逆止弁24に対し機械式ポンプ21側のオイルの圧力を吐出圧と記載し、ライン圧と区別する。吐出圧とライン圧とは等しくなりうる。
【0027】
マニュアルバルブ45は、セレクトレバー113に連動するスプール44を有する油路切替弁である。セレクトレバー113は、車両の運転者により例えば4つの操作位置に操作される。上記4つの操作位置とは、駐車のための操作位置(パーキングポジション)、後進走行のための操作位置(リバースポジション)、動力伝達遮断のための操作位置(ニュートラルポジション)、前進走行のための操作位置(ドライブポジション)である。スプール44は、セレクトレバー113に機械的または電気的に接続されており、セレクトレバー113の操作位置に応じて作動する。
セレクトレバー113の操作位置がパーキングポジションまたはニュートラルポジションであるとき、スプール44は、第1吐出油路23と前進油路47および後進油路48とを遮断する位置に切り替わる。
【0028】
また、セレクトレバー113の操作位置がリバースポジションであるとき、スプール44は、第1吐出油路23と前進油路47とを遮断するとともに、第1吐出油路23と後進油路48とを連通させる位置に切り替わる。これにより、第1吐出油路23のオイルが後進油路48を通じてリニアソレノイドバルブ50に供給可能となる。
また、セレクトレバー113の操作位置がドライブポジションであるとき、スプール44は、第1吐出油路23と後進油路48とを遮断するとともに、第1吐出油路23と前進油路47とを連通させる位置に切り替わる。これにより、第1吐出油路23のオイルが前進油路47を通じてリニアソレノイドバルブ51〜54に供給可能となる。
【0029】
リニアソレノイドバルブ50〜54は、吐出圧を連続的に変更可能な直動形の制御弁である。リニアソレノイドバルブ50〜54の吐出圧は、電子制御装置55が制御する。
リニアソレノイドバルブ50は、後進変速段の成立に関与する摩擦係合装置95に対応して設けられる。リニアソレノイドバルブ50は、マニュアルバルブ45から後進油路48を経由して供給されたオイルの圧力を調整し、摩擦係合装置95の油圧アクチュエータ106に供給可能である。油圧アクチュエータ106は、リニアソレノイドバルブ50から供給される作動油によって作動する。
【0030】
リニアソレノイドバルブ51〜54は、前進変速段の成立に関与する摩擦係合装置96〜99に対応して設けられる。リニアソレノイドバルブ51〜54は、マニュアルバルブ45から前進油路47を経由して供給されたオイルの圧力を調整し、対応する油圧アクチュエータに供給可能である。油圧アクチュエータ107〜110は、対応するリニアソレノイドバルブから供給されるオイルによって作動する。摩擦係合装置96〜99のいずれを係合させるかは、複数の前進用変速段毎に予め決められている。
【0031】
「第1供給油路」としての供給油路60は、第2吐出油路33のうち逆止弁34に対し第1吐出油路23側と、後述の油路切替弁65の第3ポート69とを接続する。供給油路60には流量制限手段61が設けられる。この流量制限手段61は、例えば絞り弁等から構成される。供給油路60は、第1吐出油路23のオイルを油路切替弁65の第3ポート69に供給可能である。
【0032】
「油路切替手段」としての油路切替弁65は、第2吐出油路33のうち逆止弁34と電気式ポンプ30との間に設けられる。油路切替弁65は、第2吐出油路33の電気式ポンプ30側に接続する第1ポート67と、第2吐出油路33の第1吐出油路23側に接続する第2ポート68と、供給油路60に接続する第3ポート69とを有するスプール式3方向弁である。
油路切替弁65は、第2吐出油路33を連通させ、且つ、供給油路60と電気式ポンプ30とを遮断する第1作動位置、および、供給油路60と電気式ポンプ30とを連通させ、且つ、第2吐出油路33を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替弁65は、第2作動位置に作動すると、供給油路60のオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給する。
【0033】
油路切替弁65には、機械式ポンプ21と逆止弁24との間で第1吐出油路23から分岐する分岐油路26が接続する。油路切替弁65は、分岐油路26から供給される機械式ポンプ21の吐出オイルの流体力によって作動する。つまり、油路切替弁65は、電力を消費することなしに作動する。具体的には、油路切替弁65は、機械式ポンプ21の吐出圧が所定圧未満のときスプリング66の付勢力により第1作動位置に作動する。また、油路切替弁65は、機械式ポンプ21の吐出圧が前記所定圧を超えるとき機械式ポンプ21が吐出するオイルの作用力により第2作動位置に作動する。前記所定圧は、例えば、前記ライン圧の目標値に設定される。
分岐油路26には流量制限手段27が設けられる。この流量制限手段27は、例えば絞り弁等から構成される。
【0034】
次に、油圧制御装置10の作動を図1、図4〜図6に基づき説明する。図4〜図6の破線の矢印Aはオイルの流れを示す。
(エンジン始動前)
図1は、エンジン始動前の状態を示す。この状態では、機械式ポンプ21が停止しライン圧が所定圧未満であるため、油路切替弁65の作動位置が第1作動位置となる。
【0035】
(エンジン作動時かつライン圧が所定圧より高いとき)
図1の状態から、エンジンが始動するとともに機械式ポンプ21が作動し、ライン圧が所定圧より高くなると、図4に示すように油路切替弁65が第2作動位置に作動する。このとき、供給油路60と電気式ポンプ30の吐出口35とが連通する。オイルパン111のオイルは、油圧アクチュエータやトルクコンバータ等との間を行き来し、各所で熱を吸収し温まっている。供給油路60は、機械式ポンプ21がオイルパン111から吸入し第1吐出油路23に吐出するオイルの一部を、油路切替弁65を通じて電気式ポンプ30に供給する。電気式ポンプ30のロータは、供給油路60が供給するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転する。
【0036】
これにより、油路切替弁65が第2作動位置に作動する前に電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内にあったすべてのオイルは、供給油路60が供給するオイルに押し出されてオイルパン111に排出される。そして、電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内は比較的高温のオイルで満たされる。
流量制限手段61は、供給油路60を通過するオイルの流量を制限することで、第1吐出油路23のオイルが急激に流出することを防ぐ。
【0037】
(エンジン作動時かつライン圧が所定圧未満であるとき)
図4の状態から、例えば油圧制御装置10内のオイルが高温かつ車速が低速となり、ライン圧が所定圧未満になると、図5に示すように油路切替弁65が第1作動位置に作動する。このとき、供給油路60と電気式ポンプ30の吐出口35とが遮断される。これにより、供給油路60から電気式ポンプ30および第2吸入油路32へのオイルの供給が停止する。
【0038】
(エンジン停止時かつ電気式ポンプ30の作動時)
図5の状態から、例えば車両が停車しアイドリングストップ機能によりエンジンが停止する、あるいは、車両が減速しエンジンストップ機能によりエンジンが停止すると、図6に示すように油路切替弁65が第1作動位置に作動し、電気式ポンプ30が作動する。このとき、供給油路60と電気式ポンプ30とが遮断されるとともに、電気式ポンプ30と第1吐出油路23とが第2吐出油路33を通じて連通する。ライン圧は、エンジン停止直前に係合していた摩擦係合装置がその係合を維持することができる程度の圧力に設定される。電気式ポンプ30は、上記圧力を送出可能な最小限のものが選定される。
【0039】
図6の状態から、エンジンが再始動すると、ライン圧の上昇とともに図5の状態を経て図4の状態になる。
ここで、図4の状態から図6の状態に至る場合、および、図6の状態から図4の状態に至る場合等もある。
【0040】
以上説明したように、第1実施形態による油圧制御装置10は、供給油路60および油路切替弁65を備える。供給油路60は、第1吐出油路23と電気式ポンプ30の吐出口35とを接続する。油路切替弁65は、第2吐出油路33を連通させ、且つ、供給油路60と電気式ポンプ30とを遮断する第1作動位置、および、供給油路60と電気式ポンプ30とを連通させ、且つ、第2吐出油路33を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替弁65は、第2作動位置に作動すると、供給油路60のオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給する。
【0041】
このような油圧制御装置10によれば、機械式ポンプ21の駆動時に油路切替弁65が第2作動位置に作動すると、機械式ポンプ21がオイルパン111から吸入し第1吐出油路23に吐出するオイルの一部は、供給油路60を経由して電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給される。電気式ポンプ30および第2吸入油路32のすべてのオイルは、供給油路60から供給される温かいオイルと入れ替わる。したがって、電気式ポンプ30の始動に先立って電気式ポンプ30および第2吸入油路32のオイルが予熱されるので、電気式ポンプ30の始動時の吸入抵抗を低減することができる。よって、第2吸入油路32のサイズを拡大することなく電気式ポンプ30に小型の駆動モータ31を使用することができ、それゆえ消費電力を低減しつつ、確実に始動直後の電気式ポンプ30にオイルを吸入および吐出させることができる。
【0042】
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、油路切替弁65は、機械式ポンプ21が吐出するオイルによって作動する。この構成では、油路切替弁65を作動させるとき電力を消費しない。そのため、消費電力を少なくすることができる。
また、油路切替弁65の作動に関して例えば電磁弁、電気回路、及び、それらを駆動するための制御等が不要である。そのため、油圧制御装置10の構成を簡素にすることができる。
【0043】
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、油路切替弁65は、機械式ポンプ21の吐出圧が所定圧未満のとき第1作動位置に作動し、機械式ポンプ21の吐出圧が前記所定圧を超えるとき第2作動位置に作動する。前記所定圧は、油圧アクチュエータ106〜110を作動させるために必要な最小値に設定される。この構成では、機械式ポンプ21が吐出するオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給することに起因して変速制御が不能になる事態を回避することができる。
【0044】
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、油路切替弁65の作動位置が第2作動位置であるとき、電気式ポンプ30は、機械式ポンプ21が吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられる。これにより、電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内のオイルを入れ替え可能である。
【0045】
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、第2吐出油路33は、第1吐出油路23に接続する。第2吐出油路33には、電気式ポンプ30から第1吐出油路23へのオイルの流れのみを許容する逆止弁34が設けられる。これによれば、油路切替弁65の作動位置が第1作動位置であるとき、第1吐出油路23のオイルが電気式ポンプ30および第2吸入油路32を経由してオイルパン111に流出することを回避することができる。そのため、ライン圧の低下を防ぐことができる。
また、第1実施形態による油圧制御装置10では、供給油路60に流量制限手段61が設けられる。そのため、機械式ポンプ21が吐出するオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給することに起因してライン圧が急激に低下する事態を回避することができる。
【0046】
(第1実施形態の変形例)
図7は、第1実施形態の変形例の油圧制御装置を示す図である。図7に破線の矢印Aで示すように、油圧制御装置70では、電気式ポンプ30内を流れるオイルの少なくとも一部は、電気式ポンプ30を駆動する駆動モータ31内を通過する。これによれば、駆動モータ31のコイルがオイルにより温められるので、駆動モータ31の始動時の駆動電流が低下し、消費電力を抑えることができる。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による油圧制御装置を説明する。図8〜図11に示すように、第2実施形態による油圧制御装置75は、「圧力調整手段」としてのライン圧制御弁40の第2リリーフ口43と油路切替弁65の第3ポート69とを接続する「第2供給油路」としての供給油路76を備える。図9〜図11の破線の矢印Aはオイルの流れを示す。
(エンジン始動前)
エンジン始動前では、図8に示すように油路切替弁65の作動位置が第1作動位置となる。
【0048】
(エンジン作動時かつライン圧が所定圧より高いとき)
図1の状態から、エンジンが始動するとともに機械式ポンプ21が作動し、ライン圧が所定圧より高くなると、図9に示すように油路切替弁65が第2作動位置に作動する。このとき、供給油路76と電気式ポンプ30の吐出口35とが連通する。供給油路76は、オイルパン111から機械式ポンプ21および第1吐出油路23を経由しライン圧制御弁40から排出されるオイルの一部を、油路切替弁65を通じて電気式ポンプ30に供給する。電気式ポンプ30のロータは、供給油路76が供給するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転する。
【0049】
これにより、油路切替弁65が第2作動位置に作動する前に電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内にあったすべてのオイルは、供給油路76が供給するオイルに押し出されてオイルパン111に排出される。そして、電気式ポンプ30内および第2吸入油路32内は比較的高温のオイルで満たされる。
【0050】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、ライン圧が例えばエンジンの負荷に応じて決定される目標値を超える場合、第1吐出油路23のオイルがライン圧制御弁40の第1リリーフ口42および第2リリーフ口43から排出される。図2に示すように、ライン圧を目標値に設定するために必要な機械式ポンプの吐出流量Qnを超える余剰分が、ライン圧制御弁のリリーフ流量Qrとなる。第1リリーフ口42のリリーフ流量Q1と第2リリーフ口43のリリーフ流量Q2との和がリリーフ流量Qrに一致する。
流量制限手段77は、供給油路76を通過するオイルの流量を制限することで、トルクコンバータ93へ供給されるオイルの流量を確保する。
【0051】
(エンジン作動時かつライン圧が所定圧未満であるとき)
図9の状態から、例えば油圧制御装置10内のオイルが高温かつ車速が低速となり、ライン圧が所定圧未満になると、図10に示すように油路切替弁65が第1作動位置に作動する。このとき、供給油路76と電気式ポンプ30の吐出口35とが遮断される。これにより、供給油路76から電気式ポンプ30および第2吸入油路32へのオイルの供給が停止する。
【0052】
(エンジン停止時かつ電気式ポンプ30の作動時)
図10の状態から、例えば車両が停車しアイドリングストップ機能によりエンジンが停止する、あるいは、車両が減速しエンジンストップ機能によりエンジンが停止すると、図11に示すように油路切替弁65が第1作動位置に作動し、電気式ポンプ30が作動する。このとき、供給油路76と電気式ポンプ30とが遮断されるとともに、電気式ポンプ30と第1吐出油路23とが第2吐出油路33を通じて連通する。ライン圧は、エンジン停止直前に係合していた摩擦係合装置がその係合を維持することができる程度の圧力に設定される。
【0053】
以上説明したように、第2実施形態による油圧制御装置75は、供給油路76および油路切替弁65を備える。供給油路76は、ライン圧制御弁40の第2リリーフ口43と電気式ポンプ30とを接続する。油路切替弁65は、第2吐出油路33を連通させ、且つ、供給油路76と電気式ポンプ30とを遮断する第1作動位置、および、供給油路76と電気式ポンプ30とを連通させ、且つ、第2吐出油路33を遮断する第2作動位置に作動する。油路切替弁65は、第2作動位置に作動すると、第2リリーフ口43からリリーフされるオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給する。
【0054】
このような油圧制御装置75によれば、機械式ポンプ21の駆動時に油路切替弁65が第2作動位置に作動すると、機械式ポンプ21がオイルパン111から吸入し第1吐出油路23に吐出するオイルの一部は、ライン圧制御弁40の第2リリーフ口43からリリーフされ、供給油路60を経由して電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給される。電気式ポンプ30および第2吸入油路32のすべてのオイルは、供給油路60から供給される温かいオイルと入れ替わる。したがって、電気式ポンプ30の始動に先立って電気式ポンプ30および第2吸入油路32のオイルが予熱されるので、電気式ポンプ30の始動時の吸入抵抗を低減することができる。よって、第2吸入油路32のサイズを拡大することなく電気式ポンプ30に小型の駆動モータ31を使用することができ、それゆえ消費電力を低減しつつ、確実に始動直後の電気式ポンプ30にオイルを吸入および吐出させることができる。
【0055】
また、第2実施形態では、供給油路76に流量制限手段77が設けられるので、第2リリーフ口43からリリーフされるオイルを電気式ポンプ30および第2吸入油路32に供給することに起因してトルクコンバータ圧制御回路112に供給されるオイルが不足する事態を回避することができる。
【0056】
(第2実施形態の変形例)
図12は、第2実施形態の変形例の油圧制御装置を示す図である。図12に破線の矢印Aで示すように、油圧制御装置80では、電気式ポンプ30内を流れるオイルの少なくとも一部は、電気式ポンプ30を駆動する駆動モータ31内を通過する。これによれば、駆動モータ31のコイルがオイルにより温められるので、駆動モータ31の始動時の駆動電流が低下し、消費電力を抑えることができる。
【0057】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、自動変速機は、遊星歯車式有段変速機に限らず、例えば平行歯車式有段変速機、摩擦式無段変速機、油圧機械式無段変速機および歯車式無段変速機などで構成してもよい。
本発明の他の実施形態では、油圧アクチュエータは、摩擦係合装置の油圧シリンダに限らず、例えば、ベルト式無段変速機の溝幅可変プーリを作動させる油圧シリンダ等、他の形式の油圧アクチュエータであってもよい。
本発明の他の実施形態では、油路切替手段は、電気的に駆動する形式の弁から構成されてもよい。この場合、油路切替手段の作動を制御装置が制御するように構成してもよい。
本発明の他の実施形態では、供給油路に流量制限手段が設けられなくてもよい。
【0058】
本発明の他の実施形態では、圧力調整手段は、パイロット式バルブに限らず、例えば直動式バルブであってもよい。
本発明の他の実施形態では、油圧アクチュエータに供給する作動油を直接的に制御する弁は、リニアソレノイドバルブ等の直動式バルブに限らず、パイロット式バルブであってもよい。また、油圧アクチュエータに供給する作動油を直接的に制御する弁は、電磁式駆動部を有するものに限らず、例えば電動式駆動部を有するものであってもよい。
本発明の他の実施形態では、自動変速機は、図1に示すような縦置型に限らず、横置型のものであってもよい。また、自動変速機は、トルクコンバータが無い形式のものであってもよい。
【0059】
このように本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10,70,75,80・・・自動変速機用油圧制御装置
21・・・機械式ポンプ
25・・・吐出口
23・・・第1吐出油路
30・・・電気式ポンプ
32・・・第2吸入油路(吸入油路)
33・・・第2吐出油路
35・・・吐出口
60・・・供給油路(第1供給油路)
65・・・油路切替弁(油路切替手段)
76・・・供給油路(第2供給油路)
90・・・自動変速機
91・・・エンジン
106〜110・・・油圧アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力回転を加減速する自動変速機の油圧アクチュエータに作動油を供給可能な自動変速機用油圧制御装置であって、
前記エンジンによって駆動可能な機械式ポンプと、
前記エンジンの作動状況に拘らず電気的に駆動可能な電気式ポンプと、
前記機械式ポンプの吐出口に接続する第1吐出油路と、
前記電気式ポンプの吐出口に接続する第2吐出油路と、
前記第1吐出油路と前記電気式ポンプの前記吐出口とを接続する第1供給油路と、
前記第2吐出油路を連通させ且つ前記第1供給油路を遮断する第1作動位置、および、前記第1供給油路を連通させ且つ前記第2吐出油路を遮断する第2作動位置に作動し、前記第1作動位置に作動すると前記電気式ポンプが吐出するオイルを前記油圧アクチュエータに供給可能であり、前記第2作動位置に作動すると前記第1供給油路のオイルを前記電気式ポンプの吸入油路に供給する油路切替手段と、
を備えることを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。
【請求項2】
前記油路切替手段は、前記機械式ポンプが吐出するオイルによって作動することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項3】
前記油路切替手段は、前記機械式ポンプの吐出圧が所定圧未満のとき前記第1作動位置に作動し、前記機械式ポンプの吐出圧が前記所定圧を超えるとき前記第2作動位置に作動することを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項4】
前記所定圧は、前記油圧アクチュエータを作動させるために必要な最小値に設定されることを特徴とする請求項3に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項5】
前記油路切替手段の作動位置が前記第2作動位置であるとき、前記電気式ポンプは、前記機械式ポンプが吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項6】
前記第2吐出油路は、前記第1吐出油路に接続し、
前記第2吐出油路に設けられ、前記電気式ポンプから前記第1吐出油路へのオイルの流れのみを許容する逆止弁をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項7】
前記第1供給油路に設けられ、当該第1供給油路を流通するオイルの流量を制限する流量制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項8】
前記電気式ポンプ内を流れるオイルの少なくとも一部は、前記電気式ポンプの駆動モータ内を通過することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項9】
エンジンの出力回転を加減速する自動変速機の油圧アクチュエータに作動油を供給可能な自動変速機用油圧制御装置であって、
前記エンジンによって駆動可能な機械式ポンプと、
前記エンジンの作動状況に拘らず電気的に駆動可能な電気式ポンプと、
前記機械式ポンプの吐出口に接続する第1吐出油路と、
前記電気式ポンプの吐出口に接続する第2吐出油路と、
前記第1吐出油路のオイルを排出することで当該第1吐出油路の油圧を調整する圧力調整手段と、
前記圧力調整手段の排出口と前記電気式ポンプの前記吐出口とを接続する第2供給油路と、
前記第2吐出油路を連通させ且つ前記第2供給油路を遮断する第1作動位置、および、前記第2供給油路を連通させ且つ前記第2吐出油路を遮断する第2作動位置に作動し、前記第1作動位置に作動すると前記電気式ポンプが吐出するオイルを前記油圧アクチュエータに供給可能であり、前記第2作動位置に作動すると前記第2供給油路のオイルを前記電気式ポンプの吸入油路に供給する油路切替手段と、
を備えることを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。
【請求項10】
前記油路切替手段は、前記機械式ポンプが吐出するオイルによって作動することを特徴とする請求項9に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項11】
前記油路切替手段は、前記機械式ポンプの吐出圧が所定圧未満のとき前記第1作動位置に作動し、前記機械式ポンプの吐出圧が前記所定圧を超えるとき前記第2作動位置に作動することを特徴とする請求項9または10に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項12】
前記所定圧は、前記油圧アクチュエータを作動させるために必要な最小値に設定されることを特徴とする請求項11に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項13】
前記油路切替手段の作動位置が前記第2作動位置であるとき、前記電気式ポンプは、前記機械式ポンプが吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項14】
前記第2吐出油路は、前記第1吐出油路に接続し、
前記第2吐出油路に設けられ、前記電気式ポンプから前記第1吐出油路へのオイルの流れのみを許容する逆止弁をさらに備えることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項15】
前記第1供給油路に設けられ、当該第1供給油路を流通するオイルの流量を制限する流量制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項16】
前記電気式ポンプ内を流れるオイルの少なくとも一部は、前記電気式ポンプの駆動モータ内を通過することを特徴とする請求項9〜15のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項1】
エンジンの出力回転を加減速する自動変速機の油圧アクチュエータに作動油を供給可能な自動変速機用油圧制御装置であって、
前記エンジンによって駆動可能な機械式ポンプと、
前記エンジンの作動状況に拘らず電気的に駆動可能な電気式ポンプと、
前記機械式ポンプの吐出口に接続する第1吐出油路と、
前記電気式ポンプの吐出口に接続する第2吐出油路と、
前記第1吐出油路と前記電気式ポンプの前記吐出口とを接続する第1供給油路と、
前記第2吐出油路を連通させ且つ前記第1供給油路を遮断する第1作動位置、および、前記第1供給油路を連通させ且つ前記第2吐出油路を遮断する第2作動位置に作動し、前記第1作動位置に作動すると前記電気式ポンプが吐出するオイルを前記油圧アクチュエータに供給可能であり、前記第2作動位置に作動すると前記第1供給油路のオイルを前記電気式ポンプの吸入油路に供給する油路切替手段と、
を備えることを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。
【請求項2】
前記油路切替手段は、前記機械式ポンプが吐出するオイルによって作動することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項3】
前記油路切替手段は、前記機械式ポンプの吐出圧が所定圧未満のとき前記第1作動位置に作動し、前記機械式ポンプの吐出圧が前記所定圧を超えるとき前記第2作動位置に作動することを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項4】
前記所定圧は、前記油圧アクチュエータを作動させるために必要な最小値に設定されることを特徴とする請求項3に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項5】
前記油路切替手段の作動位置が前記第2作動位置であるとき、前記電気式ポンプは、前記機械式ポンプが吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項6】
前記第2吐出油路は、前記第1吐出油路に接続し、
前記第2吐出油路に設けられ、前記電気式ポンプから前記第1吐出油路へのオイルの流れのみを許容する逆止弁をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項7】
前記第1供給油路に設けられ、当該第1供給油路を流通するオイルの流量を制限する流量制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項8】
前記電気式ポンプ内を流れるオイルの少なくとも一部は、前記電気式ポンプの駆動モータ内を通過することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項9】
エンジンの出力回転を加減速する自動変速機の油圧アクチュエータに作動油を供給可能な自動変速機用油圧制御装置であって、
前記エンジンによって駆動可能な機械式ポンプと、
前記エンジンの作動状況に拘らず電気的に駆動可能な電気式ポンプと、
前記機械式ポンプの吐出口に接続する第1吐出油路と、
前記電気式ポンプの吐出口に接続する第2吐出油路と、
前記第1吐出油路のオイルを排出することで当該第1吐出油路の油圧を調整する圧力調整手段と、
前記圧力調整手段の排出口と前記電気式ポンプの前記吐出口とを接続する第2供給油路と、
前記第2吐出油路を連通させ且つ前記第2供給油路を遮断する第1作動位置、および、前記第2供給油路を連通させ且つ前記第2吐出油路を遮断する第2作動位置に作動し、前記第1作動位置に作動すると前記電気式ポンプが吐出するオイルを前記油圧アクチュエータに供給可能であり、前記第2作動位置に作動すると前記第2供給油路のオイルを前記電気式ポンプの吸入油路に供給する油路切替手段と、
を備えることを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。
【請求項10】
前記油路切替手段は、前記機械式ポンプが吐出するオイルによって作動することを特徴とする請求項9に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項11】
前記油路切替手段は、前記機械式ポンプの吐出圧が所定圧未満のとき前記第1作動位置に作動し、前記機械式ポンプの吐出圧が前記所定圧を超えるとき前記第2作動位置に作動することを特徴とする請求項9または10に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項12】
前記所定圧は、前記油圧アクチュエータを作動させるために必要な最小値に設定されることを特徴とする請求項11に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項13】
前記油路切替手段の作動位置が前記第2作動位置であるとき、前記電気式ポンプは、前記機械式ポンプが吐出するオイルによって、ポンプ作用を行う回転方向とは反対方向に回転させられることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項14】
前記第2吐出油路は、前記第1吐出油路に接続し、
前記第2吐出油路に設けられ、前記電気式ポンプから前記第1吐出油路へのオイルの流れのみを許容する逆止弁をさらに備えることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項15】
前記第1供給油路に設けられ、当該第1供給油路を流通するオイルの流量を制限する流量制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項16】
前記電気式ポンプ内を流れるオイルの少なくとも一部は、前記電気式ポンプの駆動モータ内を通過することを特徴とする請求項9〜15のいずれか一項に記載の自動変速機用油圧制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−57342(P2013−57342A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194980(P2011−194980)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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