説明

自動変速機

【課題】 全体として伝達効率を向上させた自動変速機を提供する。
【解決手段】 第6要素Rmが第1ギヤ列G1を介して出力軸3に連結され、第8要素Crが第2ギヤ列G2を介して出力軸3に連結され、第1要素Sfと第7要素Srとを連結して第1連結体が構成され、第2要素Cfと第4要素Smとを連結して第2連結体が構成される。第1噛合機構D1と第2連結体、入力軸2と第5要素Cm、第3要素Rfと変速機ケース1を夫々連結する摩擦係合機構C1,C2,B1が備えられる。第1噛合機構D1は、摩擦係合機構C1を第1連結体若しくは変速機ケース1に連結する状態又はこの連結を断つ状態に切換自在である。第2噛合機構は、第5要素Cmと変速機ケース1とを連結自在に構成され、第3噛合機構D3は、第5要素Cmと第9要素Rrとを連結自在に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転を入力軸と同心に配置した複数のプラネタリギヤ機構を介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1により、入力用の第1プラネタリギヤ機構と変速用の複式プラネタリギヤ機構と6個の摩擦係合機構とを用いて、前進8段の変速を行うことができるようにした自動変速機が知られている。このもので複式プラネタリギヤ機構は、第2と第3の2つのプラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤの一部を互いに連結することで構成される4つの回転要素を有する。例えば、第2プラネタリギヤ機構のサンギヤと第3プラネタリギヤ機構のキャリアとを連結することで構成される第1回転要素と、第2プラネタリギヤ機構のキャリアと第3プラネタリギヤ機構のリングギヤとを連結することで構成される第2回転要素と、第2プラネタリギヤ機構のリングギヤから成る第3回転要素と、第3プラネタリギヤ機構のサンギヤから成る第4回転要素とを有する。これら第1〜第4回転要素は、速度線図においてギヤ比に対応する間隔を存して順に並ぶ。そして、第3回転要素が出力部材に連結される。
【0003】
また、摩擦係合機構として、入力部材の回転を第1プラネタリギヤ機構を介して第4回転要素に伝達する状態とこの伝達を断つ状態とに切換自在な第1クラッチと、入力部材の回転を第1プラネタリギヤ機構を介して第1回転要素に伝達する状態とこの伝達を断つ状態とに切換自在な第2クラッチと、入力部材と第2回転要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3クラッチと、入力部材と第1回転要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第4クラッチと、第1回転要素を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第1ブレーキと、第2回転要素を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第2ブレーキとを備えている。
【0004】
以上の構成によれば、第1クラッチと第2ブレーキとを係合することで1速段が確立され、第1クラッチと第1ブレーキとを係合することで2速段が確立され、第1クラッチと第2クラッチとを係合することで3速段が確立され、第1クラッチと第4クラッチとを係合することで4速段が確立され、第1クラッチと第3クラッチとを係合することで5速段が確立され、第3クラッチと第4クラッチとを係合することで6速段が確立され、第2クラッチと第3クラッチとを係合することで7速段が確立され、第3クラッチと第1ブレーキとを係合することで8速段が確立される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−130152号公報(図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例のものでは、プラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%であるロック状態になる変速段は6速段のみであって、全体として噛合伝達効率が悪いという不具合がある。また、上記従来例のものは、6個の摩擦係合機構のうち各変速段において係合する摩擦係合機構の数が2個になるため、開放している残りの4個の摩擦係合機構の引き摺りによるフリクションロスが大きくなり、全体として変速機の効率が悪化するという不具合がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、全体として伝達効率を向上させた自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、入力軸の回転を該入力軸と同心に配置した複数のプラネタリギヤ機構を介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、第1プラネタリギヤ機構、第2プラネタリギヤ機構及び第3プラネタリギヤ機構を備え、前記第1プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、前記入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、前記第6要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、前記第8要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、前記第1要素と前記第7要素とを連結して第1連結体が構成され、前記第2要素と前記第4要素とを連結して第2連結体が構成され、前記第1連結体が前記入力軸に連結され、第1〜第3の3つの噛合機構と、前記第1噛合機構と前記第2連結体とを解除自在に連結する第1摩擦係合機構と、前記入力軸と前記第5要素とを解除自在に連結する第2摩擦係合機構と、前記第3要素を前記変速機ケースに解除自在に固定する第3摩擦係合機構とを備え、前記第1噛合機構は、前記第1連結体と前記第1摩擦係合機構とを連結する状態、前記第1摩擦係合機構を前記変速機ケースに固定する状態、前記第1連結体と前記第1摩擦係合機構との連結を断つと共に前記第1摩擦係合機構の前記変速機ケースへの固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成され、前記第2噛合機構は、前記第5要素を前記変速機ケースに解除自在に固定し、前記第3噛合機構は、前進1速段から前進4速段以上の所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第5要素と前記第9要素とを連結する状態に切換えられ、前記中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第5要素と前記第9要素との連結を断つ状態に切換えられることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、第2プラネタリギヤ機構の各要素が相対回転不能なロック状態となり第2プラネタリギヤ機構の第6要素から出力軸に出力される変速段、及び第3プラネタリギヤ機構の各要素が相対回転不能なロック状態となり第3プラネタリギヤ機構の第8要素から出力軸に出力される変速段の2つの変速段で、プラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる。
【0010】
従って、従来のプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる変速段が1つだけのものに比し、自動変速機全体としての噛合伝達効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の第1の態様では、係合機構として、開放状態においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構が3個、開放状態においてもフリクションロスが発生しない噛合機構を3個備える。従って、全ての変速段においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構の開放数が3個以下になり、従来の全ての変速段において開放数が4個となるものに比し、自動変速機の伝達効率を向上させることができる。
【0012】
即ち、1速段を除く前記低速段域では3個の摩擦係合機構のうち1個が係合状態となるため、前記低速段域における摩擦係合機構の開放数は2個となり、前記低速段域における伝達効率を向上させることができる一方、第3噛合機構が開放状態となる前記高速段域では3個の摩擦係合機構のうち2個が係合状態となるため、前記高速段域における摩擦係合機構の開放数は1個となり、前記高速段域における伝達効率をより向上させることができるので、全ての変速段域に亘って燃費を向上させることができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、入力軸の回転を該入力軸と同心に配置した複数のプラネタリギヤ機構を介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、第1プラネタリギヤ機構、第2プラネタリギヤ機構及び第3プラネタリギヤ機構を備え、前記第1プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、前記入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、前記第6要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、前記第8要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、前記第5要素と前記第9要素とを連結して第1連結体が構成され、前記第2要素と前記第4要素とを連結して第2連結体が構成され、前記第1要素が前記入力軸に連結され、第1〜第3の3つの噛合機構と、前記第1噛合機構と前記第2連結体を解除自在に連結する第1摩擦係合機構と、前記入力軸と前記第5要素とを解除自在に連結する第2摩擦係合機構と、前記第3要素を前記変速機ケースに解除自在に連結する第3摩擦係合機構とを備え、前記第1噛合機構は、前記第1要素と前記第1摩擦係合機構とを連結する状態、前記第1摩擦係合機構を前記変速機ケースに固定する状態、前記第1要素と前記第1摩擦係合機構との連結を断つと共に前記第1摩擦係合機構の前記変速機ケースへの固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成され、前記第2噛合機構は、前記第1連結体を前記変速機ケースに解除自在に固定し、前記第3噛合機構は、前進1速段から前進4速段以上の所定の中速段に亘る低速段の全ての変速段域を確立させる際には、前記第1要素と前記第7要素とを連結する状態に切換えられ、前記中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第1要素と前記第7要素との連結を断つ状態に切換えられることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様においても、第2プラネタリギヤ機構の各要素が相対回転不能なロック状態となり第2プラネタリギヤ機構の第6要素から出力軸に出力される変速段、及び第3プラネタリギヤ機構の各要素が相対回転不能なロック状態となり第3プラネタリギヤ機構の第8要素から出力軸に出力される変速段の2つの変速段で、プラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる。
【0015】
従って、従来のプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる変速段が1つだけのものに比し、自動変速機全体としての噛合伝達効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様においても、係合機構として、開放状態においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構が3個、開放状態においてもフリクションロスが発生しない噛合機構を3個備える。従って、全ての変速段においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構の開放数が3個以下になり、従来の全ての変速段において開放数が4個となるものに比し、自動変速機の伝達効率を向上させることができる。
【0017】
即ち、1速段を除く前記低速段域では3個の摩擦係合機構のうち1個が係合状態となるため、前記低速段域における摩擦係合機構の開放数は2個となり、前記低速段域における伝達効率を向上させることができる一方、第3噛合機構が開放状態となる前記高速段域では3個の摩擦係合機構のうち2個が係合状態となるため、前記高速段域における摩擦係合機構の開放数は1個となり、前記高速段域における伝達効率をより向上させることができるので、全ての変速段域に亘って燃費を向上させることができる。
【0018】
本発明の第3の態様には、入力軸の回転を該入力軸と同心に配置した複数のプラネタリギヤ機構を介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、第1プラネタリギヤ機構、第2プラネタリギヤ機構及び第3プラネタリギヤ機構を備え、前記第2プラネタリギヤ機構及び前記第3プラネタリギヤ機構とで複式プラネタリギヤ機構が構成され、前記第1プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素、及び前記第2プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素は、速度線図においてギヤ比に対応する間隔で並ぶ4個の回転要素を構成し、これら回転要素を速度線図における並び順に夫々第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素、第4回転要素とし、前記第3プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素として、前記入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、前記第4回転要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、前記第2要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、前記第1要素が前記入力軸に連結され、第1と第2の2つの噛合機構と、前記第1噛合機構と前記第2回転要素を解除自在に連結する第1摩擦係合機構と、前記入力軸と前記第3回転要素とを解除自在に連結する第2摩擦係合機構と、前記第1回転要素を前記変速機ケースに解除自在に固定する第3摩擦係合機構とを備え、前記第1噛合機構は、前記入力軸と第1摩擦係合機構とを連結する状態、前記第1摩擦係合機構を前記変速機ケースに固定する状態、前記入力軸と第1摩擦係合機構との連結を断つと共に前記第1摩擦係合機構の前記変速機ケースへの固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成され、前記第2噛合機構は、前記第3回転要素と前記第3要素とを連結する状態、前記第3回転要素を前記変速機ケースに固定する状態、前記第3回転要素と前記第3要素との連結を断つと共に前記第3回転要素の前記変速機ケースへの固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成されると共に、前進1速段から前進4速段以上の所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第3回転要素と前記第3要素とを連結する状態に切換えられ、前記所定の中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第3回転要素と前記第3要素との連結を断つと共に前記第3回転要素の前記変速機ケースへの固定が解除された状態に切換えられることを特徴とする。
【0019】
本発明の第3の態様においても、第1プラネタリギヤ機構及び第2プラネタリギヤ機構の各要素が相対回転不能なロック状態となり第4回転要素から出力軸に出力される変速段、及び第3プラネタリギヤ機構の各要素が相対回転不能なロック状態となり第3プラネタリギヤ機構の第2要素から出力軸に出力される変速段の2つの変速段で、プラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる。
【0020】
従って、従来のプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる変速段が1つだけのものに比し、自動変速機全体としての噛合伝達効率を向上させることができる。
【0021】
また、本発明の第3の態様では、係合機構として、開放状態においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構が3個、開放状態においてもフリクションロスが発生しない噛合機構を2個備える。従って、全ての変速段においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構の開放数が3個以下になり、従来の全ての変速段において開放数が4個となるものに比し、自動変速機の伝達効率を向上させることができる。
【0022】
即ち、1速段を除く前記低速段域では3個の摩擦係合機構のうち1個が係合状態となるため、前記低速段域における摩擦係合機構の開放数は2個となり、前記低速段域における伝達効率を向上させることができる一方、第2噛合機構が開放状態となる前記高速段域では3個の摩擦係合機構のうち2個が係合状態となるため、前記高速段域における摩擦係合機構の開放数は1個となり、前記高速段域における伝達効率をより向上させることができるので、全ての変速段域に亘って燃費を向上させることができる。
【0023】
本発明の第3の態様において、第4回転要素は、第1プラネタリギヤ機構のサンギヤと第2プラネタリギヤ機構のリングギヤとを連結し一体化して構成され、第1プラネタリギヤ機構が前記第2プラネタリギヤ機構の径方向外側に配置されることが好ましい。
【0024】
このように、第1プラネタリギヤ機構を第2プラネタリギヤ機構の径方向外側に配置することにより、第1及び第2プラネタリギヤ機構を軸方向に並べた場合に対し、自動変速機の軸長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の自動変速機の第1実施形態のスケルトン図。
【図2】第1実施形態のプラネタリギヤ機構の速度線図。
【図3】第1実施形態の各変速段での各係合要素の係合状態をまとめて示した図。
【図4】本発明の自動変速機の第2実施形態のスケルトン図。
【図5】第2実施形態のプラネタリギヤ機構の速度線図。
【図6】本発明の自動変速機の第3実施形態のスケルトン図。
【図7】第3実施形態のプラネタリギヤ機構の速度線図。
【図8】第3実施形態の各変速段での各係合要素の係合状態をまとめて示した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1は、本発明の自動変速機の第1実施形態を示している。この第1実施形態は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と平行に配置した出力部材たる出力軸3とを備えている。出力軸3の回転は、出力軸3に固定の出力ギヤ3aに噛合するファイナルドリブンギヤ4aを固定したデファレンシャルギヤ4を介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0027】
また、変速機ケース1内には、第1プラネタリギヤ機構5、第2プラネタリギヤ機構6、及び第3プラネタリギヤ機構7が入力軸2と同心に配置されている。第1プラネタリギヤ機構5は、サンギヤSf、リングギヤRf、及びサンギヤSfとリングギヤRfとに噛合するピニオンPfを自転及び公転自在に支持するキャリアCfとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤ機構で構成されている。
【0028】
第2プラネタリギヤ機構6は、サンギヤSm、リングギヤRm、及びサンギヤSmとリングギヤRmとに噛合するピニオンPfを自転及び公転自在に支持するキャリアCmとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤ機構で構成されている。第3プラネタリギヤ機構7は、サンギヤSr、リングギヤRr、及びサンギヤSrとリングギヤRrとに噛合するピニオンPrを自転及び公転自在に支持するキャリアCrとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤ機構で構成されている。
【0029】
図2の上段に示す第1プラネタリギヤ機構5の速度線図(サンギヤ、キャリア、リングギヤの3個の要素の回転速度を直線で表すことができる図)を参照して、第1プラネタリギヤ機構5のサンギヤSf、キャリアCf及びリングギヤRfから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSf、第2要素はキャリアCf、第3要素はリングギヤRfになる。
【0030】
ここで、サンギヤSfとキャリアCf間の間隔とキャリアCfとリングギヤRf間の間隔との比は、第1プラネタリギヤ機構5のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとして、i:1に設定される。尚、速度線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0031】
図2の中段に示す第2プラネタリギヤ機構6の速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ機構6のサンギヤSm、キャリアCm及びリングギヤRmから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSm、第5要素はキャリアCm、第6要素はリングギヤRmになる。尚、サンギヤSmとキャリアCm間の間隔とキャリアCmとリングギヤRm間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ機構6のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0032】
図2の下段に示す第3プラネタリギヤ機構7の速度線図を参照して、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr、キャリアCr及びリングギヤRrから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSr、第8要素はキャリアCr、第9要素はリングギヤRrになる。尚、サンギヤSrとキャリアCr間の間隔とキャリアCrとリングギヤRr間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ機構7のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0033】
第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)は、リングギヤRm(第6要素)に連結する第1駆動ギヤG1aと、第1駆動ギヤG1aに噛合し出力軸3に固定される第1従動ギヤG1bとからなる第1ギヤ列G1を介して、出力軸3に連結される。
【0034】
第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)は、キャリアCr(第8要素)に連結する第2駆動ギヤG2aと、第2駆動ギヤG2aに噛合し出力軸3に固定される第2従動ギヤG2bとからなる第2ギヤ列G2を介して、出力軸3に連結される。
【0035】
ここで、第1ギヤ列G1のギヤ比(従動ギヤの歯数/駆動ギヤの歯数)をp、第2ギヤ列G2のギヤ比をqとして、p<qになっている。また、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ機構6のキャリアCrは、両ギヤ列G1,G2を介して出力軸3で連結されることになる。そして、第3プラネタリギヤ機構6のキャリアCrは、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRmの回転速度のq/pの速度で回転する。
【0036】
また、第1プラネタリギヤ機構5のサンギヤSf(第1要素)と第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第7要素)とを連結して第1連結体Sf−Srが構成され、第1プラネタリギヤ機構5のキャリアCf(第2要素)と第2プラネタリギヤ機構6のサンギヤSm(第4要素)とを連結して第2連結体Cf−Smが構成され、第1連結体Sf−Srが入力軸2に連結されている。
【0037】
第1実施形態の自動変速機は、第1〜第3の3個のシンクロメッシュ機構(噛合機構)D1,D2,D3を備えている。また、第1実施形態では、摩擦係合機構として、第1シンクロメッシュ機構D1と第2連結体とを解除自在に連結する第1クラッチ(第1摩擦係合機構)C1と、入力軸2と第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)とを解除自在に連結する第2クラッチ(第2摩擦係合機構)C2と、第1プラネタリギヤ機構5のリングギヤRf(第3要素)を変速機ケース1に解除自在に固定するブレーキ(第3摩擦係合機構)B1とを備えている。
【0038】
第1噛合機構たる第1シンクロメッシュ機構D1は、第1連結体Sf−Srと第1クラッチC1とを連結する状態、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態、第1連結体Sf−Srと第1クラッチC1との連結を断つと共に第1クラッチC1の変速機ケース1への固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成されている。
【0039】
第2噛合機構たる第2シンクロメッシュ機構D2は、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)を変速機ケース1に解除自在に固定する。
【0040】
第3噛合機構たる第3シンクロメッシュ機構D3は、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とを連結する状態、又はこの連結を断つ状態に切換自在に構成されている。
【0041】
また、第1実施形態の自動変速機は、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)の正転(車両の前進方向の回転)を許容し、逆転(車両の後進方向の回転)を阻止する一方向クラッチF1が、第2シンクロメッシュ機構D2に並設されている。
【0042】
第1実施形態においては、第3シンクロメッシュ機構D3を、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とを連結する状態に切り換えると、一方向クラッチF1の働きで第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)の回転速度が「0」になる。そして、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第7要素)が入力軸2と同一回転速度である「1」で回転し、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)が1/(k+1)で回転して、出力軸3の回転速度が1/{(k+1)q}となり、1速段が確立される。
【0043】
なお、1速段において、第2シンクロメッシュ機構D2を、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)を変速機ケース1に固定する状態に切り換えれば、エンジンブレーキを効かせられる状態とすることができる。また、1速段においては、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態としてもよい。これによれば、第1クラッチC1を係合させるだけで2速段へアップシフトすることができ、変速をスムーズに行うことができ、1速段と2速段との間の変速の制御性を向上させることができる。
【0044】
第1クラッチC1を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態とし、第3シンクロメッシュ機構D3を、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とを連結する状態とすると、第2プラネタリギヤ機構6のサンギヤSm(第4要素)の回転速度が「0」、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第7要素)の回転速度が「1」となり、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とが同一速度で回転すると共に、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)が第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)のq/pの速度で回転して、第2プラネタリギヤ機構6と第3プラネタリギヤ機構7の速度線は図2に「2nd」で示す線になる。
【0045】
そして、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)の回転速度は(j+1)p/{(j+1)(k+1)q−jkp}、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)の回転速度は(j+1)q/{(j+1)(k+1)q−jkp}になり、出力軸3が(j+1)/{(j+1)(k+1)q−jkp}の速度で回転して、2速段が確立される。
【0046】
ブレーキB1を係合させ、第3シンクロメッシュ機構D3を、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とを連結する状態とすると、第2連結体Cf−Smが第1プラネタリギヤ機構5の出力速度N1たる1/(i+1)で回転し、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第7要素)の回転速度が「1」となり、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とが同一速度で回転すると共に、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)が第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)のq/pの速度で回転して、第1〜第3プラネタリギヤ機構5,6,7の速度線は図2に「3rd」で示す線になる。
【0047】
そして、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)の回転速度は{(i+1)(j+1)+k}p/{(i+1)[(j+1)(k+1)q−jkp]}、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)の回転速度は{(i+1)(j+1)+k}q/{(i+1)[(j+1)(k+1)q−jkp]}になり、出力軸3が{(i+1)(j+1)+k}/{(i+1)[(j+1)(k+1)q−jkp]}の速度で回転して、3速段が確立される。
【0048】
なお、3速段において、図示省略したトランスミッション・コントロール・ユニット(TCU)が車両速度等の車両情報に基づき2速段へのダウンシフトを予測している場合には、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態とし、TCUが車両速度等の車両情報に基づき4速段へのアップシフトを予測している場合には、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と第1連結体Sf−Srとを連結する状態とする。これにより、第1クラッチC1を係合させると共にブレーキB1を開放させるだけでダウンシフト又はアップシフトができ、スムーズな変速を行うことができる。
【0049】
第1クラッチC1を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1連結体Sf−Srと第1クラッチC1とを連結する状態にし、第3シンクロメッシュ機構D3を、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とを連結する状態とすると、第1連結体Sf−Sr及び第2連結体Cf−Smの回転速度が「1」、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)が同一速度で回転すると共に、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)が第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)のq/pの速度で回転して、第2,第3プラネタリギヤ機構6,7の速度線は図2に「4th」で示す線になる。
【0050】
そして、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)の回転速度は(j+k+1)p/{(j+1)(k+1)q−jkp}、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)の回転速度は(j+k+1)q/{(j+1)(k+1)q−jkp}になり、出力軸3が(j+k+1)/{(j+1)(k+1)q−jkp}の速度で回転して、4速段が確立される。
【0051】
第2クラッチC2を係合させ、第3シンクロメッシュ機構D3を第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とを連結する状態とすると、第1連結体Sf−Sr及び第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)の回転速度が「1」となり、第3プラネタリギヤ機構7の各要素が相対回転不能なロック状態となる。そして、第3プラネタリギヤ機構7の速度線は図2に示す「5th」になって、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第8要素)の回転速度も「1」になり、出力軸3が1/qの速度で回転して、5速段が確立される。
【0052】
なお、5速段においては、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と第1連結体Sf−Srとを連結する状態としてもよい。これにより、スムーズな変速を行うことができる。
【0053】
第1クラッチC1と第2クラッチC2を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を第1連結体Sf−Srと第1クラッチC1とを連結する状態にすると、第2連結体Cf−Sm及び第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)の回転速度が「1」となり、第2プラネタリギヤ機構6の各要素が相対回転不能なロック状態となる。そして、第2プラネタリギヤ機構6の速度線は図2に示す「6th」になって、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)の回転速度も「1」となり、出力軸3が1/pの速度で回転して、6速段が確立される。
【0054】
第2クラッチC2とブレーキB1を係合させると、第1連結体Sf−Sr及び第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)の回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ機構5のリングギヤRf(第3要素)の回転速度が「0」、第2連結体Cf−Smの回転速度が第1プラネタリギヤ機構5の出力速度N1になり、第1,第2プラネタリギヤ機構5,6の速度線は図2に「7th」で示す線になる。
【0055】
そして、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)の回転速度は{i(j+1)+j}/{(i+1)j}になり、出力軸3が{i(j+1)+j}/{(i+1)jp}の速度で回転して、7速段が確立される。
【0056】
なお、7速段において、図外のTCUが車両速度等の車両情報に基づき6速段へのダウンシフトを予測している場合には、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と第1連結体Sf−Srとを連結する状態とする。逆に、TCUが車両速度等の車両情報に基づき8速段へのアップシフトを予測している場合には、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態とする。これにより、スムーズに変速を行うことができる。
【0057】
第1クラッチC1と第2クラッチC2を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態にすると、第2連結体Cf−Smの回転速度が「0」、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)の回転速度が「1」となり、第2プラネタリギヤ機構6の速度線は図2に「8th」で示す線になって、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)が(j+1)/jの速度で回転し、出力軸3が(j+1)/(jp)の速度で回転して、8速段が確立される。
【0058】
ブレーキB1と第2シンクロメッシュ機構D2とを係合させると、第1プラネタリギヤ機構5のリングギヤRf(第3要素)及び第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)の回転速度が「0」、第2連結体Cf−Smの回転速度がN1となり、第1,第2プラネタリギヤ機構5,6の速度線は図2に「Rev1」で示す線になって、第2プラネタリギヤ機構5のリングギヤRm(第6要素)が−1/{(i+1)j}の速度で回転し、出力軸3が−1/{(i+1)jp}の速度で回転して、後進1速段が確立される。
【0059】
第1クラッチC1と第2シンクロメッシュ機構D2とを係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1連結体Sf−Srと第1クラッチC1とを連結する状態にすると、第2連結体Cf−Smの回転速度が「1」、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)の回転速度が「0」になり、第2プラネタリギヤ機構6の速度線は図2に「Rev2」で示す線になって、第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRm(第6要素)が−1/jの速度で回転し、出力軸3が−1/(jp)の速度で回転して、後進2速段が確立される。
【0060】
ここで、後進1速段においては、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1連結体Sf−Srと第1クラッチC1とを連結する状態としてもよい。これによれば、第1クラッチC1とブレーキB1との係合・開放の切り換えだけで、後進1速段と後進2速段とを切り換えることができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0061】
なお、図2中の点線で示す速度線は、動力伝達するプラネタリギヤ機構に追従して他のプラネタリギヤ機構の各要素が回転することを表している。
【0062】
図3は、上述した各変速段とクラッチC1,C2,ブレーキB1、及びシンクロメッシュ機構D1,D2,D3の係合状態との関係をまとめて表示した図であり、「○」は係合を表している。
【0063】
また、第1シンクロメッシュ機構D1の欄の「(B)」は第1クラッチC1を変速機ケース1に固定した状態としてもよいことを示し、「(B/C)」はTCUにより第1クラッチC1を変速機ケース1に固定した状態、又は第1連結体Sf−Srと第1クラッチC1とを連結した状態の何れかの状態としてもよいことを示し、「(C)」は第1連結体Sf−Srと第1クラッチC1とを連結した状態としてもよいことを示している。
【0064】
また、図3は、第1プラネタリギヤ機構5のギヤ比iを1・667、第2プラネタリギヤ機構6のギヤ比jを2.500、第3プラネタリギヤ機構7のギヤ比kを2.800、第1ギヤ列G1のギヤ比pを0.950、第2ギヤ列G2のギヤ比qを1.250とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力軸3の回転速度)も示している。
【0065】
これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切になると共に、1速段の公比の欄に示すレシオレンジ(1速レシオ/8速レシオ)も適切になる。
【0066】
以上、第1実施形態の自動変速機によれば、5速段及び6速段の2つの変速段でプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる。従って、従来のプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる変速段が1つだけのものに比し、自動変速機全体の噛合伝達効率を向上させることができる。
【0067】
また、図3から明らかなように、開放状態においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構たる湿式多板クラッチの開放数は、1速段で3個、それ以外の変速段では2個以下となる。従って、従来の各変速段でのクラッチの開放数が4個であるものに比し、フリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることができる。
【0068】
特に、第3シンクロメッシュ機構D3は、1速段から所定の中速段たる5速段に亘る低速段域の変速段を確立させる際には係合状態となり、5速段を超える6速段から8速段に亘る高速段域の変速段を確立させる際には開放状態となる。そして、高速段域においては、クラッチC1,C2、ブレーキB1のうち2個が係合状態となるため、開放数は1個となる。従って、高速段域における伝達効率をより向上させることができ、燃費を向上させることができる。
【0069】
[第2実施形態]
図4は、本発明の自動変速機の第2実施形態を示している。第2実施形態の自動変速機では、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第9要素)とを連結して第1連結体Cm−Rrを構成し、第3噛合機構たる第3シンクロメッシュ機構D3は、第1プラネタリギヤ機構5のサンギヤSf(第1要素)と第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第7要素)とを解除自在に連結する。他の構成は第1実施形態と同一であり、1速段から8速段及び後進1,2速段も第1実施形態と同一に確立される。
【0070】
なお、第2実施形態においては、図5の下段に点線で示す速度線から明らかなように、動力伝達する第2プラネタリギヤ機構6に追従して回転する第3プラネタリギヤ機構7の各要素の回転速度が第1実施形態のものと異なる(6〜8速段、後進1,2速段参照)。
【0071】
以上、第2実施形態によっても、5速段及び6速段の2つの変速段でプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる。従って、従来のプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる変速段が1つだけのものに比し、自動変速機全体の噛合伝達効率を向上させることができる。
【0072】
また、開放状態においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構たる湿式多板クラッチの開放数は、1速段で3個、それ以外の変速段では2個以下となる。従って、従来の各変速段でのクラッチの開放数が4個であるものに比し、フリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることができる。
【0073】
特に、第3シンクロメッシュ機構D3は、1速段から所定の中速段たる5速段に亘る低速段域の変速段を確立させる際には係合状態となり、5速段を超える6速段から8速段に亘る高速段域の変速段を確立させる際には開放状態となる。そして、高速段域においては、クラッチC1,C2、ブレーキB1のうち2個が係合状態となるため、開放数は1個となる。従って、高速段域における伝達効率をより向上させることができ、燃費を向上させることができる。
【0074】
[第3実施形態]
図6は、本発明の自動変速機の第3実施形態を示している。この第3実施形態は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と平行に配置した出力部材たる出力軸3とを備えている。出力軸3の回転は、出力軸3に固定の出力ギヤ3aに噛合するファイナルドリブンギヤ4aを固定したデファレンシャルギヤ4を介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0075】
また、変速機ケース1内には、第1プラネタリギヤ機構5、第2プラネタリギヤ機構6、及び第3プラネタリギヤ機構7が入力軸2と同心に配置されている。第1プラネタリギヤ機構5は、サンギヤSf、リングギヤRf、及びサンギヤSfとリングギヤRfとに噛合するピニオンPfを自転及び公転自在に支持するキャリアCfとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤ機構で構成されている。
【0076】
第2プラネタリギヤ機構6は、サンギヤSm、リングギヤRm、及びサンギヤSmとリングギヤRmとに噛合するピニオンPfを自転及び公転自在に支持するキャリアCmとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤ機構で構成されている。第3プラネタリギヤ機構7は、サンギヤSr、リングギヤRr、及びサンギヤSrとリングギヤRrとに噛合するピニオンPrを自転及び公転自在に支持するキャリアCrとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤ機構で構成されている。
【0077】
図7の上段に示す第1プラネタリギヤ機構5及び第2プラネタリギヤ機構6の速度線図(サンギヤ、キャリア、リングギヤの各要素の回転速度を直線で表すことができる図)を参照して、第1プラネタリギヤ機構5及び第2プラネタリギヤ機構6からなる複式プラネタリギヤ機構8は4個の回転要素を構成する。
【0078】
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1回転要素Y1、第2回転要素Y2、第3回転要素Y3、第4回転要素Y4とすると、第1回転要素Y1は第1プラネタリギヤ機構5のリングギヤRf、第2回転要素は第1プラネタリギヤ機構5のキャリアCfと第2プラネタリギヤ機構6のサンギヤSmとを連結した連結体Cf−Sm、第3回転要素Y3は第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCm、第4回転要素Y4は第1プラネタリギヤ機構5のサンギヤSfと第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRmとを連結した連結体Sf−Rmで構成される。
【0079】
ここで、第1プラネタリギヤ機構5のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をi、第2プラネタリギヤ機構6のギヤ比をjとして、第1回転要素Y1と第2回転要素間Y2の間隔と、第2回転要素Y2と第3回転要素Y3間の間隔と、第3回転要素Y3と第4回転要素Y4間の間隔との比は、(j+1)/i:j:1に設定される。
【0080】
第3実施形態の自動変速機では、第4回転要素Y4を構成する第1プラネタリギヤ機構5のサンギヤSfと第2プラネタリギヤ機構6のリングギヤRmとを一体化して、第1プラネタリギヤ機構5を第2プラネタリギヤ機構6の径方向外側に配置している。これにより、第1,第2プラネタリギヤ機構5,6を軸方向に並べて配置した場合に比し、自動変速機の軸長を短くすることができ、FF式車両への搭載性を向上させることができる。
【0081】
図7の下段に示す第3プラネタリギヤ機構7の速度線図を参照して、第3プラネタリギヤ7のサンギヤSr、キャリアCr及びリングギヤRrから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSr、第2要素はキャリアCr、第3要素はリングギヤRrになる。尚、サンギヤSrとキャリアCr間の間隔とキャリアCrとリングギヤRr間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ機構7のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0082】
連結体Sf−Rmからなる第4回転要素Y4は、連結体Sf−Rmに連結する第1駆動ギヤG1aと、第1駆動ギヤG1aに噛合し出力軸3に固定される第1従動ギヤG1bとからなる第1ギヤ列G1を介して、出力軸3に連結される。
【0083】
第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)は、キャリアCr(第2要素)に連結する第2駆動ギヤG2aと、第2駆動ギヤに噛合し出力軸3に固定される第2従動ギヤG2bとからなる第2ギヤ列G2を介して、出力軸3に連結される。
【0084】
ここで、第1ギヤ列G1のギヤ比(従動ギヤの歯数/駆動ギヤの歯数)をp、第2ギヤ列G2のギヤ比をqとして、p<qになっている。また、第4回転要素Y4と第3プラネタリギヤ機構6のキャリアCr(第2要素)は、両ギヤ列G1,G2を介して出力軸3で連結されることになる。そして、第3プラネタリギヤ機構6のキャリアCr(第2要素)は、第4回転要素Y4の回転速度のq/pの速度で回転する。また、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第1要素)が入力軸2に連結されている。
【0085】
第3実施形態の自動変速機は、第1噛合機構たる第1シンクロメッシュ機構D1と、第2噛合機構たる第2シンクロメッシュ機構D2を備えている。
【0086】
また、第3実施形態では、摩擦係合機構として、第1シンクロメッシュ機構D1と第2回転要素Y2を解除自在に連結する第1クラッチ(第1摩擦係合機構)C1と、入力軸2と第3回転要素Y3とを解除自在に連結する第2クラッチ(第2摩擦係合機構)C2と、第1回転要素Y1を変速機ケース1に解除自在に固定するブレーキ(第3摩擦係合機構)B1とを備えている。
【0087】
第1シンクロメッシュ機構D1は、入力軸2と第1クラッチC1とを連結する状態、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態、入力軸2と第1クラッチC1との連結を断つと共に第1クラッチC1の変速機ケース1への固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成されている。
【0088】
第2シンクロメッシュ機構D2は、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とを連結する状態、第3回転要素Y3を変速機ケース1に固定する状態、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)との連結を断つと共に第3回転要素Y3の変速機ケース1への固定を解除した状態の何れか1の状態に切換自在に構成されている。
【0089】
また、第3実施形態の自動変速機には、第2プラネタリギヤ機構6のキャリアCmからなる第3回転要素Y3の正転(車両の前進方向の回転)を許容し、逆転(車両の後進方向の回転)を阻止する一方向クラッチF1が設けられている。
【0090】
第3実施形態においては、第2シンクロメッシュ機構D2を、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とを連結する状態に切り換えると、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第1要素)の回転速度が「1」、一方向クラッチF1の働きで第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)の回転速度が「0」になり、速度線は図7に示す「1st」になって、出力軸3が第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)の回転速度の1/qの速度で回転し、1速段が確立される。
【0091】
なお、1速段においては、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態としてもよい。これによれば、第1クラッチC1を係合させるだけで2速段へアップシフトすることができ、変速をスムーズに行うことができ、1速段と2速段との間の変速の制御性を向上させることができる。
【0092】
第1クラッチC1を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態にし、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とを連結する状態とすると、第2回転要素Y2の回転速度が「0」、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第1要素)の回転速度が「1」となり、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とが同一速度で回転すると共に、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)が第4回転要素Y4のq/pの速度で回転して、複式プラネタリギヤ機構8と第3プラネタリギヤ機構7の速度線は図7に「2nd」で示す線になり、出力軸3が第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)の回転速度の1/qの速度で回転し、2速段が確立される。
【0093】
ブレーキB1を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と入力軸2との連結を断つと共に第1クラッチC1の変速機ケース1への固定を解除させた状態とし、第2シンクロメッシュ機構D2を、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とを連結する状態とすると、第1回転要素Y1の回転速度が「0」、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第1要素)の回転速度が「1」となる。
【0094】
そして、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とが同一速度で回転すると共に、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)が第4回転要素Y4の回転速度のq/pで回転して、速度線は図7に示す「3rd」になり、出力軸3が第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)の回転速度の1/qの速度で回転し、3速段が確立される。
【0095】
なお、3速段において、図外のTCUが車両速度等の車両情報に基づき2速段へのダウンシフトを予測している場合には、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態とし、前記TCUが車両速度等の車両情報に基づき4速段へのアップシフトを予測している場合には、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と入力軸2とを連結させる状態とする。
【0096】
これにより、第1クラッチC1を係合させると共にブレーキB1を開放させるだけで、2速段へのダウンシフト又は4速段へのアップシフトをすることができ、スムーズな変速を行うことができる。
【0097】
第1クラッチC1を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と入力軸2とを連結した状態とし、第2シンクロメッシュ機構D2を、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とを連結した状態とすると、第2回転要素Y2及び第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第1要素)の回転速度が「1」となり、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とが同一速度で回転すると共に、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)が第4回転要素Y4のq/pの速度で回転して、速度線が図7に「4th」で示す線になり、出力軸3が第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)の回転速度の1/qの速度で回転し、4速段が確立される。
【0098】
第2クラッチC2を係合させ、第2シンクロメッシュ機構D2を、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)とを連結する状態とすると、第3プラネタリギヤ機構7のサンギヤSr(第1要素)、リングギヤRr(第3要素)及び第3回転要素Y3の回転速度が「1」となり、第3プラネタリギヤ機構7の各要素が相対回転不能なロック状態となる。そして、第3プラネタリギヤ機構7のキャリアCr(第2要素)の回転速度も「1」である「5th」になって、出力軸3が1/qの速度で回転し、5速段が確立される。
【0099】
なお、5速段においては、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と入力軸2とを連結した状態としてもよい。これによれば、第2クラッチC2を開放して第1クラッチC1を係合させるだけで4速段へダウンシフトすることができ、また、第1クラッチC1を係合させ、第2シンクロメッシュ機構D2を、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)の連結を断つと共に第3回転要素Y3の変速機ケース1への固定を解除させた状態とするだけで、6速段へアップシフトすることができる。従って、変速をスムーズに行うことができる。
【0100】
第1クラッチC1と第2クラッチC2を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と入力軸2とを連結した状態にし、第2シンクロメッシュ機構D2を、第3回転要素Y3と第3プラネタリギヤ機構7のリングギヤRr(第3要素)との連結を断つと共に第3回転要素Y3の変速機ケース1への固定を解除させた状態にすると、第2回転要素Y2、及び第3回転要素Y3の回転速度が「1」とな複式プラネタリギヤ機構8の各要素が相対回転不能なロック状態となる。そして、第4回転要素Y4の回転速度も「1」である「6th」になって、出力軸3が1/pの速度で回転し、6速段が確立される。
【0101】
第2クラッチC2とブレーキB1を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と入力軸2との連結を断つと共に第1クラッチC1の変速機ケース1への固定を解除させた状態とすると、第1回転要素Y1の回転速度が「0」、第3回転要素Y3の回転速度が「1」となり、複式プラネタリギヤ機構8の速度線が図7の上段の速度線図に「7th」で示す線になって、出力軸3が第4回転要素Y4の回転速度の1/pの速度で回転し、7速段が確立される。
【0102】
なお、7速段においては、図外のTCUが車両速度等の車両情報に基づき6速段へのダウンシフトを予測している場合には、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と入力軸2とを連結させる状態とし、前記TCUが車両速度等の車両情報に基づき8速段へのアップシフトを予測している場合には、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態とする。
【0103】
これにより、第1クラッチC1を係合させると共にブレーキB1を開放させるだけで、6速段へのダウンシフト又は8速段へのアップシフトをすることができ、スムーズな変速を行うことができる。
【0104】
第1クラッチC1と第2クラッチC2を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1を変速機ケース1に固定する状態にすると、第2回転要素Y2の回転速度が「0」、第3回転要素Y3の回転速度が「1」となり、複式プラネタリギヤ機構8の速度線が図7に「8th」で示す線になって、出力軸3が第4回転要素Y4の回転速度の1/pの速度で回転し、8速段が確立される。
【0105】
第1クラッチC1を係合させ、第1シンクロメッシュ機構D1を、第1クラッチC1と入力軸2とを連結する状態とし、第2シンクロメッシュ機構D2を、第3回転要素Y3を変速機ケース1に固定する状態とすると、第2回転要素Y2の回転速度が「1」、第3回転要素Y3の回転速度が「0」となり、複式プラネタリギヤ機構8の速度線が図7に「Rev」で示す線になって、第4回転要素Y4が逆転(後進方向の回転)し、出力軸3が第4回転要素Y4の回転速度の1/pで回転して、後進段が確立される。
【0106】
図8は、各変速段におけるクラッチC1,C2、ブレーキB1、及びシンクロメッシュ機構D1,D2の係合状態との関係をまとめて表示した図であり、「○」は係合を表している。
【0107】
また、第1シンクロメッシュ機構D1の欄の「(B)」は第1クラッチを変速機ケース1に固定した状態としてもよいことを示し、「(B/C)」はTCUにより第1クラッチを変速機ケース1に固定した状態、又は入力軸2と第1クラッチC1とを連結した状態の何れかの状態としてもよいことを示し、「(C)」は入力軸2と第1クラッチC1とを連結した状態としてもよいことを示している。
【0108】
以上、第3実施形態によっても、5速段及び6速段の2つの変速段でプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる。従って、従来のプラネタリギヤ機構の噛合伝達効率が100%になる変速段が1つだけのものに比し、自動変速機全体の噛合伝達効率を向上させることができる。
【0109】
また、図8から明らかなように、開放状態においてフリクションロスが発生する摩擦係合機構たる湿式多板クラッチの開放数は、1速段で3個、それ以外の変速段では2個以下となる。従って、従来の各変速段でのクラッチの開放数が4個であるものに比し、フリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることができる。
【0110】
特に、第3シンクロメッシュ機構D3は、1速段から所定の中速段たる5速段に亘る低速段域の変速段を確立させる際には係合状態となり、5速段を超える6速段から8速段に亘る高速段域の変速段を確立させる際には開放状態となる。そして、高速段域においては、クラッチC1,C2、ブレーキB1のうち2個が係合状態となるため、開放数は1個となる。従って、高速段域における伝達効率をより向上させることができ、燃費を向上させることができる。
【符号の説明】
【0111】
1…変速機ケース、2…入力軸(入力部材)、3…出力軸(出力部材)、3a…出力ギヤ、4…デファレンシャルギヤ、4a…ファイナルドリブンギヤ、5…第1プラネタリギヤ機構、6…第2プラネタリギヤ機構、7…第3プラネタリギヤ機構、8…複式プラネタリギヤ機構、Sf…第1プラネタリギヤ機構のサンギヤ(第1,第2実施形態の第1要素)、Cf…第1プラネタリギヤ機構のキャリア(第1,第2実施形態の第2要素)、Rf…第1プラネタリギヤ機構のリングギヤ(第1,第2実施形態の第3要素)、Sm…第2プラネタリギヤ機構のサンギヤ(第4要素)、Cm…第2プラネタリギヤ機構のキャリア(第5要素)、Rm…第2プラネタリギヤ機構のリングギヤ(第6要素)、Sr…第3プラネタリギヤ機構のサンギヤ(第1,第2実施形態の第7要素。第3実施形態の第1要素)、Cr…第3プラネタリギヤ機構のキャリア(第1,第2実施形態の第8要素。第3実施形態の第2要素)、Rr…第3プラネタリギヤ機構のリングギヤ(第1,第2実施形態の第9要素。第3実施形態の第3要素)、C1…第1クラッチ(第1摩擦係合機構)、C2…第2クラッチ(第2摩擦係合機構)、B1…ブレーキ(第3摩擦係合機構)、D1…第1シンクロメッシュ機構(第1噛合機構)、D2…第2シンクロメッシュ機構(第2噛合機構)、D3…第3シンクロメッシュ機構(第3噛合機構)、G1…第1ギヤ列、G1a…駆動ギヤ、G1b…従動ギヤ、G2…第2ギヤ列、G2a…駆動ギヤ、G2b…従動ギヤ、Y1〜Y4…第1〜第4回転要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転を該入力軸と同心に配置した複数のプラネタリギヤ機構を介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、
第1プラネタリギヤ機構、第2プラネタリギヤ機構及び第3プラネタリギヤ機構を備え、
前記第1プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、
前記入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、前記第6要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、前記第8要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、
前記第1要素と前記第7要素とを連結して第1連結体が構成され、前記第2要素と前記第4要素とを連結して第2連結体が構成され、前記第1連結体が前記入力軸に連結され、
第1〜第3の3つの噛合機構と、
前記第1噛合機構と前記第2連結体とを解除自在に連結する第1摩擦係合機構と、
前記入力軸と前記第5要素とを解除自在に連結する第2摩擦係合機構と、
前記第3要素を前記変速機ケースに解除自在に固定する第3摩擦係合機構とを備え、
前記第1噛合機構は、前記第1連結体と前記第1摩擦係合機構とを連結する状態、前記第1摩擦係合機構を前記変速機ケースに固定する状態、前記第1連結体と前記第1摩擦係合機構との連結を断つと共に前記第1摩擦係合機構の前記変速機ケースへの固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成され、
前記第2噛合機構は、前記第5要素を前記変速機ケースに解除自在に固定し、
前記第3噛合機構は、前進1速段から前進4速段以上の所定の中速段に亘る低速段の全ての変速段域を確立させる際には、前記第5要素と前記第9要素とを連結する状態に切換えられ、前記中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第5要素と前記第9要素との連結を断つ状態に切換えられることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
入力軸の回転を該入力軸と同心に配置した複数のプラネタリギヤ機構を介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、
第1プラネタリギヤ機構、第2プラネタリギヤ機構及び第3プラネタリギヤ機構を備え、
前記第1プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、
前記入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、前記第6要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、前記第8要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、
前記第5要素と前記第9要素とを連結して第1連結体が構成され、前記第2要素と前記第4要素とを連結して第2連結体が構成され、前記第1要素が前記入力軸に連結され、
第1〜第3の3つの噛合機構と、
前記第1噛合機構と前記第2連結体を解除自在に連結する第1摩擦係合機構と、
前記入力軸と前記第5要素とを解除自在に連結する第2摩擦係合機構と、
前記第3要素を前記変速機ケースに解除自在に連結する第3摩擦係合機構とを備え、
前記第1噛合機構は、前記第1要素と前記第1摩擦係合機構とを連結する状態、前記第1摩擦係合機構を前記変速機ケースに固定する状態、前記第1要素と前記第1摩擦係合機構との連結を断つと共に前記第1摩擦係合機構の前記変速機ケースへの固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成され、
前記第2噛合機構は、前記第1連結体を前記変速機ケースに解除自在に固定し、
前記第3噛合機構は、前進1速段から前進4速段以上の所定の中速段に亘る低速段の全ての変速段域を確立させる際には、前記第1要素と前記第7要素とを連結する状態に切換えられ、前記中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第1要素と前記第7要素との連結を断つ状態に切換えられることを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
入力軸の回転を該入力軸と同心に配置した複数のプラネタリギヤ機構を介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、
第1プラネタリギヤ機構、第2プラネタリギヤ機構及び第3プラネタリギヤ機構を備え、
前記第2プラネタリギヤ機構及び前記第3プラネタリギヤ機構とで複式プラネタリギヤ機構が構成され、
前記第1プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素、及び前記第2プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素は、速度線図においてギヤ比に対応する間隔で並ぶ4個の回転要素を構成し、これら回転要素を速度線図における並び順に夫々第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素、第4回転要素とし、
前記第3プラネタリギヤ機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素として、
前記入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、前記第4回転要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、前記第2要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、前記第1要素が前記入力軸に連結され、
第1と第2の2つの噛合機構と、
前記第1噛合機構と前記第2回転要素を解除自在に連結する第1摩擦係合機構と、
前記入力軸と前記第3回転要素とを解除自在に連結する第2摩擦係合機構と、
前記第1回転要素を前記変速機ケースに解除自在に固定する第3摩擦係合機構とを備え、
前記第1噛合機構は、前記入力軸と第1摩擦係合機構とを連結する状態、前記第1摩擦係合機構を前記変速機ケースに固定する状態、前記入力軸と第1摩擦係合機構との連結を断つと共に前記第1摩擦係合機構の前記変速機ケースへの固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成され、
前記第2噛合機構は、前記第3回転要素と前記第3要素とを連結する状態、前記第3回転要素を前記変速機ケースに固定する状態、前記第3回転要素と前記第3要素との連結を断つと共に前記第3回転要素の前記変速機ケースへの固定を解除させた状態の何れか1の状態に切換自在に構成されると共に、前進1速段から前進4速段以上の所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第3回転要素と前記第3要素とを連結する状態に切換えられ、前記所定の中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記第3回転要素と前記第3要素との連結を断つと共に前記第3回転要素の前記変速機ケースへの固定が解除された状態に切換えられることを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項3記載の自動変速機において、
前記第4回転要素は、前記第1プラネタリギヤ機構のサンギヤと前記第2プラネタリギヤ機構のリングギヤとを連結し一体化して構成され、前記第1プラネタリギヤ機構が前記第2プラネタリギヤ機構の径方向外側に配置されることを特徴とする自動変速機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−17424(P2011−17424A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164192(P2009−164192)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】