説明

自動工具交換装置

【課題】クーラントや切粉の飛散防止を目的とした開閉シャッタの開閉が、ツールマガジンの旋回機能を利用して行われる構造簡易でコンパクトな自動工具交換装置を提供する。
【解決手段】砥石車2を保持する複数のツールハンド30を備えるツールマガジン5の周囲を囲繞し保護するマガジンカバー6の一部に、工具交換位置Pに開口する工具交換窓36が開設されるとともに、ツールマガジン5におけるツールハンド30の配設箇所の一つに開閉シャッタ34が設けられてなり、ツールマガジン5が工具非交換位置に回転停止している時、開閉シャッタ34がマガジンカバー6の工具交換窓36を閉止する配置構成とされている。これにより、開閉シャッタ34の開閉が、独立した開閉機構や装置を必要とすることなく、ツールマガジン5の基本動作である回転動作に連動して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動工具交換装置に関し、さらに詳細には、複数種類の機械加工を行う工作機械に備えられて、複数種類の加工工具を備えるとともに、工作機械の主軸ヘッドとの間で複数種類の加工工具の一つを選択的に自動交換する工具自動交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動工具交換装置(ATC)は、ターニングセンタやマシニングセンタ、あるいは複合型研削盤など、複数種類の機械加工を行う多機能工作機械に共通して備えられる装置で、従来多種多様な構成のものが開発されている。
【0003】
例えば、ドラム式ATCとしては、図6(a)および(b)に示すように、加工工具aを取外し可能に保持する複数のツール保持部b、b、…を備えるツールマガジンcが、上記ツール保持部b、b、…のいずれか一つを工具交換位置Pに選択的に割出し割出し回転するように構成されており、また、このツールマガジンcは、工作機械の加工時に使用するクーラントや加工時に生じる切粉がツール保持部b、b、…の加工工具a、a、…に飛散して付着等しないようにマガジンカバーdにより被覆保護されている。
【0004】
このため、マガジンカバーdの一部には、上記工具交換位置Pに開口する工具交換窓eが開設されるとともに、この工具交換窓eが開閉シャッタfにより開閉可能とされ、工具交換時のみ工具交換窓eが開口される構成とされている。
【0005】
上記開閉シャッタfの開閉構造は、マガジンカバーdの形状等との関係で適宜設計され、例えば図6(a)に示すような矩形箱状のマガジンカバ−dにおいては、開閉シャッタfが直線状に移動開閉する直動式とされ、また、図6(b)に示すような円筒ドラム状のマガジンカバーdにおいては、開閉シャッタfがマガジンカバーdの円筒壁に沿って円弧状に移動開閉する旋回式とされているが、いずれの開閉構造においても、シリンダ装置や駆動モータ装置等の動力装置により、あるいはリンク機構やカム機構等の開閉機構により独立して開閉される構成とされていた(例えば、特許文献1、2および3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平05−016108号公報
【特許文献2】実開昭62−015441号公報
【特許文献3】特開平07−112341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ドラム式自動工具交換装置において、クーラントや切粉の飛散防止を目的とした開閉シャッタの開閉が、ツールマガジンの旋回機能を利用して行われる構造簡易でコンパクトな自動工具交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の自動工具交換装置は、複数種類の機械加工を行う工作機械に備えられて、複数種類の加工工具を備えるとともに、上記工作機械の主軸ヘッドとの間で上記複数種類の加工工具の一つを選択的に自動交換する工具自動交換装置であって、加工工具を取外し可能に保持する複数のツール保持手段が回転方向へ等間隔をもって配設されてなる回転可能なツールマガジンと、このツールマガジンの上記ツール保持手段のいずれか一つを工具交換位置に割出し回転させる回転駆動手段と、上記ツールマガジンの周囲を囲繞し保護するマガジンカバーとを備えてなり、上記マガジンカバーの一部に上記工具交換位置に開口する工具交換窓が開設されるとともに、上記ツールマガジンにおける上記ツール保持手段の配設箇所の一つに開閉シャッタが設けられてなり、上記ツールマガジンが工具非交換位置に回転停止している時、上記開閉シャッタが上記マガジンカバーの工具交換窓を閉止する配置構成とされていることを特徴とする。
【0009】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記ツールマガジンのツール保持手段のいずれか一つが上記工具交換位置にある時、上記開閉シャッタが上記マガジンカバーの内部に収納されるとともに、上記ツールマガジンのツール保持手段が上記マガジンカバーの内部に収納される時、上記開閉シャッタが上記マガジンカバーの工具交換窓を閉止する配置構成とされている。
【0010】
(2)上記開閉シャッタが上記マガジンカバーの工具交換窓を閉止した状態において、これら両者の隙間をシールするシール手段が、少なくとも上記開閉シャッタおよび上記マガジンカバーの工具交換窓の一方に設けられている。
【0011】
(3)上記マガジンカバーの工具交換窓は、上記ツールマガジンのツール保持手段がこの工具交換窓に回転停止された状態において、上記工作機械の主軸ヘッドが上記ツール保持手段に接近して加工工具の交換が可能な形状寸法に設定されている。
【0012】
(4)上記工作機械の主軸ヘッドを駆動する駆動手段と連動して上記回転駆動手段を制御する制御手段を備え、この制御手段は、上記工作機械の主軸ヘッドと上記ツールマガジンのツール保持手段の一つとの間で加工工具の交換作業を行う際に、交換対象となる上記ツール保持手段を上記工具交換位置に割出し回転するとともに、この加工工具の交換作業が完了すると、上記開閉シャッタを上記工具交換位置に割出し回転して上記工具交換窓を閉止するよう上記回転駆動手段を制御する構成とされている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動工具交換装置によれば、加工工具を保持する複数のツール保持手段を備えるツールマガジンの周囲を囲繞し保護するマガジンカバーの一部に、工具交換位置に開口する工具交換窓が開設されるとともに、上記ツールマガジンにおける上記ツールハンドの配設箇所の一つに開閉シャッタが設けられてなり、上記ツールマガジンが工具非交換位置に回転停止している時、上記開閉シャッタが上記マガジンカバーの工具交換窓を閉止する配置構成とされているから、上記開閉シャッタの開閉が、独立した開閉機構や装置を必要とすることなく、上記ツールマガジンの基本動作である回転動作に連動して行われ、構造簡易でコンパクトな自動工具交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る一実施形態に係る自動工具交換装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】同自動工具交換装置の主要構成部を示し、図2(a)は平面断面図、また図2(b)は図2(a)のB−B線に沿った縦断面図である。
【図3】同自動工具交換装置におけるツールマガジンの回転動作と開閉シャッタの開閉動作の関係を示す平面断面図で、図3(a)は一つの加工工具交換時の状態を、また図3(b)は他の加工工具交換時の状態を示す。
【図4】同自動工具交換装置の加工工具交換工程を説明するための斜視図である。
【図5】同自動工具交換装置を搭載する複合型研削盤の全体構成を示す斜視図である。
【図6】従来の自動工具交換装置を示し、図6(a)は直動式開閉シャッタを備える構造、また図6(b)は旋回式開閉シャッタを備える構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0016】
本発明に係る自動工具交換装置が図1〜図4に示されており、この自動工具交換装置1は、具体的には、図5に示すように、複数種類の研削加工を行う複合型研削盤に搭載されるものであり、複数種類の加工工具である砥石車2(2a、2b、…)を備えるとともに、上記研削盤の主軸ヘッドである砥石台13との間で上記砥石車2(2a、2b、…)の一つを選択的に自動交換する構成とされている。
【0017】
上記研削盤は、ワークテーブル11に回転支持されたワークWに対して、コラム12に設けられた砥石車2が主として上下垂直方向(Z軸方向)へ送られながら研削加工する立型研削盤であって、ベッド15上に上記ワークテーブル11とコラム12が配置され、このコラム12に、砥石車2を回転支持する上記砥石台13が、旋回ユニット21、上下スライドユニット22および左右スライドユニット23を介して設けられてなる。また、上記ワークテーブル11の側部近傍位置には、砥石車2をドレッシングするドレッサ25が設けられるとともに、さらにその側部には、本発明に係る上記自動工具交換装置1が設けられている。
【0018】
自動工具交換装置1は、図1および図2に示すように、ツールマガジン5、マガジンカバー6、回転駆動部(回転駆動手段)7およびATC制御部(制御手段)8を主要部として構成されている。
【0019】
ツールマガジン5は、研削盤の加工工具である砥石車2を複数種類(図示の実施形態においては5種類)保持するとともに、研削盤の砥石台13との間でこれら複数種類の砥石車2(2a、2b、…)の一つを選択的に自動交換するもので、上記砥石車2を取外し可能に保持するツールハンド(ツール保持手段)30が回転方向へ等間隔をもって配設されてなる。
【0020】
これに関連して、砥石車2の軸心位置には、取付け部としての取付軸35が一体的に設けられており、上記砥石台13の砥石軸40に対する砥石車2の取り付け、および上記ツールハンド30に対する砥石車2の取り付けは、上記取付軸35を介して行われることになる。
【0021】
具体的には、円盤状の装置基体31に、回転主軸32が回転可能に垂直状態で軸支されるとともに、この回転主軸32の上端に、アーム部33が回転方向へ等間隔をもって一体的にかつ水平方向へ放射状に6つ配設されてなり(6等配)、これらアーム部33、33、…に上記ツールハンド30がそれぞれ一体的に設けられている。
【0022】
上記ツールハンド30は、従来公知の構造を備え、具体的には、常時閉止方向へ弾発付勢される一対のチャッキング爪30a、30aを有する。そして、これら一対のチャッキング爪30a、30aが、後述する砥石台13の砥石軸との協働作用により、砥石車2の取付軸35の環状溝(図示省略)を着脱可能に挟持状にチャッキング支持する。
【0023】
また、ツールマガジン5におけるツールハンド30の配設箇所の一つに開閉シャッタ34が設けられている。つまり、上記アーム部33、33、…のうちの1つには、上記ツールハンド30に代えて、開閉シャッタ34が一体的に設けられている。
【0024】
この開閉シャッタ34は、後述するマガジンカバー6の工具交換窓36を開閉するもので、図1および図2示すように、工具交換窓36の開口形状寸法に対応した形状寸法を有する。
【0025】
マガジンカバー6は、上記ツールマガジン5の周囲を囲繞し保護するもので、具体的には、装置基体31を含めてツールマガジン5の外周全体を覆う平面正六角形状の筒体とされ、研削盤のベッド15上に固定的に設けられている。
【0026】
このマガジンカバー6の一部には、工具交換位置Pに開口する工具交換窓36が開設されている。この工具交換窓36は、上記ツールマガジン5のツールハンド30が工具交換窓36に回転停止された状態において、上記研削盤の砥石台13がこのツールハンド30に接近して砥石車3の交換が可能な形状寸法に設定されている。
【0027】
また、この工具交換窓36は、上記ツールマガジン5に設けられた開閉シャッタ34により開閉される構成とされている。この目的のため、開閉シャッタ34の外周縁部34aは、図1および図2に示すように、上記工具交換窓36の開口縁部36aに係合合致する輪郭形状寸法を有する。
【0028】
換言すれば、上記工具交換窓36は、図示のごとくマガジンカバー6の一部が開口縁部36aに沿って切開されてなり、開閉シャッタ34の外周縁部34aがこの開口縁部36aに対応した輪郭形状寸法に形成されている。また、上記工具交換窓36の開口縁部36aにより囲繞形成された空間が上記工具交換位置Pを形成している。
【0029】
そして、上記ツールマガジン5が工具非交換位置に回転停止している時、上記開閉シャッタ34が上記マガジンカバー6の工具交換窓36を閉止する配置構成とされている。
【0030】
具体的には、上記ツールマガジン5のツールハンド30(30A、30B、30C、30D、30E)のいずれか一つが上記工具交換位置Pにある時、例えば、図3(a)に示すように、ツールハンド30Aが工具交換位置Pにある時、あるいは、図3(b)に示すように、ツールハンド30Cが工具交換位置Pにある時、上記開閉シャッタ34はマガジンカバー6の内部に収納される。一方、上記ツールマガジン5のツールハンド30(30A、30B、30C、30D、30E)のすべてがマガジンカバー6の内部に収納される時、上記開閉シャタ34は、図1および図2(a)、(b)に示すように、マガジンカバー6の工具交換窓36を閉止する配置構成とされている。
【0031】
これに関連して、上記開閉シャッタ34が上記工具交換窓36を閉止した状態において、つまり、開閉シャッタ34の外周縁部34aと工具交換窓36の開口縁部36aとが対向一致した状態において、これら両者34a、36aの隙間をシールするシール部材(シール手段)37が、少なくとも上記開閉シャッタ34および工具交換窓36の一方に設けられている。図示の実施形態においては、開閉シャッタ34の外周縁部34aの全周にわたって設けられている。
【0032】
さらに、図2および図3(a)、(b)に示すように、上記工具交換窓36の開口縁部の全周はシール凸部38の形態とされて(図面は工具交換窓36の起立部の構成のみが示されている。)、開閉シャッタ34が閉止位置にある時、開閉シャッタ34のシール部材37がこのシール凸部38にシール接触する構成とされている。このような構成とされることにより、開閉シャッタ34による工具交換窓36閉止時において、マガジンカバー6内へのミストやスラッジの侵入を有効に防止するとともに、開閉シャッタ34のマガジンカバー6内部への回転収納時において、開閉シャッタ34のシール部材37が、マガジンカバー6内周面に接触することによる接触音の防止、シール部材37の長寿命化が図られる。
【0033】
回転駆動部(回転駆動手段)7は、上記ツールマガジン5のツールハンド30、30、…のいずれか一つを工具交換位置Pに割出し回転させるもので、具体的には図2(b)に示すように、装置基体31の底部に設けられた駆動モータからなる。この駆動モータ7は、減速歯車機構を内蔵するギヤードモータであり、そのモータ軸(図示省略)が上記装置基体31を貫通して、上記ツールマガジン5の回転主軸32に駆動連結されるとともに、ATC制御部8に電気的に接続されている。
【0034】
そして、駆動モータ7の回転駆動により、回転主軸32が回転して、上記ツールマガジン5のツールハンド30、30、…のいずれか一つまたは開閉シャッタ34が工具交換位置Pに割出し回転される。
【0035】
この割出し回転は、いずれか一方(時計方向または反時計方向)への回転とされるか、交換対象となる砥石車2を保持するツールハンド30が工具交換位置Pに近い回転方向への回転(時計方向および反時計方向への正逆回転)とされるかは、目的に応じて適宜設定される。図示の実施形態においては、後者の、交換対象となる砥石車2を保持するツールハンド30が工具交換位置Pに近い回転方向へ正逆回転する構成とされている。
【0036】
ATC制御部(制御手段)8は、具体的には、後述する研削盤の装置制御部16の一部を構成するもので、工具交換工程を実行するように、研削盤の砥石台13を駆動する各駆動部(駆動手段)(後述)と連動して上記回転駆動部7を制御する。
【0037】
具体的には、ATC制御部8は、研削盤の砥石台13と上記ツールマガジン5のツールハンド30の一つとの間で砥石車2の交換作業を行う際に、交換対象となるツールハンド30を上記工具交換位置Pに割出し回転するとともに、その砥石車2の交換作業が完了すると、上記開閉シャッタ34を上記工具交換位置Pに割出し回転して、工具交換位置Pに開口する工具交換窓36を研削加工時を含めて常時閉止するよう上記回転駆動部7を制御する構成とされている。
【0038】
ワークテーブル11は、図5に示すように、ベッド15上面の前側位置に設けられており、具体的には図示しないが、駆動モータにより垂直軸周りに回転駆動される構成とされている。また、ワークテーブル11の上面11aは、円盤状の平坦面に形成されるとともに、電磁力による吸着作用によりワークWを支持固定する電磁チャックの形態とされている。なお、チャッキング手段としては、電磁チャックに限らず、機械的にチャッキング支持するチャック機構等、目的に応じて種々の形式のチャッキング手段が選択採用される。
【0039】
コラム12は、ベッド15上面の後側位置つまり上記ワークテーブル11の後方位置に起立状に設けられ、上記3つのユニット21〜23を介して、砥石車2を旋回可能、上下垂直方向(Z軸方向)へ移動可能および左右水平方向(X軸方向)へ移動可能に支持する。
【0040】
砥石車2は、その取付軸35が上記砥石台13の砥石軸40の先端部に、図示しないクランプ機構により取り外し可能に取付け固定されている。砥石軸40は砥石台13に回転支持されるとともに、砥石台13の後端部に搭載された駆動モータ41に駆動連結されている。駆動モータ41としては、内蔵型のビルトインモータが好適に採用されている。
【0041】
そして、この駆動モータ41による砥石軸40の回転駆動により、砥石車2は所定の高速度で回転されるとともに、後述するように、上記自動工具交換装置1により、研削工程に応じて他の砥石車2と交換される。
【0042】
上記砥石台13は、旋回ユニット21の旋回テーブル42上に搭載されており、図示の実施形態においては、一対の砥石台13、13が旋回テーブル42の旋回軸42aに対して対称位置に配置されている。
【0043】
旋回ユニット21は、上記砥石台13、13さらには砥石軸40、40の砥石車2、2を旋回させるもので、これら砥石台13、13を搭載した旋回テーブル42が旋回軸42a周りに回転可能に軸支されるとともに、歯車機構(図示省略)を介して旋回駆動モータ43に駆動連結されている。上記歯車機構としては、ウォームギヤ歯車機構が使用されている。
【0044】
そして、旋回駆動モータ43による旋回テーブル42の旋回軸42a周りの回転により、砥石台13、13さらには砥石軸40、40の砥石車2、2の一方が、研削加工姿勢(図5の左側の砥石車2の姿勢)に選択的に旋回されて位置決め配置され、またその研削角度を調整制御される。
【0045】
これら一対の砥石車2、2としては、ワークWの研削個所等により異なる外径(例えば、ワークWの内径面を研削する場合は小径の砥石車、外径面を研削する場合は大径の砥石車など)や、異なる砥石面形状(例えば、ワークWの内外径面を研削する場合は円筒砥石面の砥石車、平坦面を研削する場合は円環状平坦砥石面のカップ型砥石車など)のものが設置されて、複合的な研削加工が実施可能とされている。
【0046】
上下スライドユニット22は、上記研削加工姿勢にある砥石軸40の砥石車2を上下垂直方向(Z軸方向)に昇降移動させるもので、具体的には、上記旋回ユニット21を搭載した上下スライドテーブル45が上下案内レール(図示省略)に沿って移動可能に支持されるとともに、送り機構(図示省略)を介して上下駆動モータ48に駆動連結されている。上記送り機構としては、ボールねじ等の送りねじ機構が使用されている。
【0047】
そして、上下駆動モータ48による上下スライドテーブル45の上下垂直方向(Z軸方向)の移動により、上記研削加工姿勢にある砥石軸40の砥石車2が、上下スライドユニット22で規定される昇降ストロークを昇降移動する。
【0048】
左右スライドユニット23は、上記研削加工姿勢にある砥石軸40の砥石車2を左右水平方向(X軸方向)に水平移動させるもので、具体的には、上記上下スライドユニット22を搭載した左右スライドテーブル50が左右案内レール(図示省略)に沿って移動可能に支持されるとともに、送り機構(図示省略)を介して左右駆動モータ(図示省略)に駆動連結されている。上記送り機構としては、ボールねじ等の送りねじ機構が使用されている。
【0049】
そして、左右駆動モータによる左右スライドテーブル50の左右水平方向(X軸方向)の移動により、上記研削加工姿勢にある砥石軸40の砥石車2が、左右スライドユニット23で規定される水平移動ストロークを往復移動する。
【0050】
装置制御部16は、上述した砥石車2、ワークテーブル11、旋回ユニット21、上下スライドユニット22、左右スライドユニット23、ドレッサ25および自動工具交換装置1の各駆動部の動作を相互に連動して自動制御するもので、具体的には、CPU,ROM,RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
【0051】
この装置制御部16は、上記各駆動部等に電気的に接続されて、研削盤による複合研削を自動で行うべく上記各駆動部を駆動制御するとともに、ATC制御部8により自動工具交換装置1の駆動部を他の駆動部と連動して制御して、以下のように砥石車2の交換作業を自動で行う(図4参照)。
【0052】
(1)図4(a)に示すように、旋回ユニット21により、交換すべき砥石台13の砥石車2を、旋回または停止したままで交換姿勢にするとともに、上下スライドユニット22および左右スライドユニット23により、上記砥石台13の砥石車2を、上下方向(Z軸方向)および左右方向(X軸方向)に移動させて、自動工具交換装置1の工具交換位置Pへ接近させる。
【0053】
(2)これと同時に、または続いて、図4(b)に示すように、自動工具交換装置1のツールマガジン5の回転により、上記交換すべき砥石車2を受け取る空のツールハンド30が旋回して、上記工具交換位置Pへ割出し回転される。この時、ツールマガジン5の回転に伴って、マガジンカバー6の工具交換窓36を閉止していた開閉シャッタ34がマガジンカバー6内へ移動して、工具交換窓36が解放され、これにより、上記ツールハンド30は工具交換位置Pに位置することとなる。
【0054】
(3)図4(c)に示すように、左右スライドユニット23により、上記砥石台13の砥石車2を、左右方向(X軸方向)に移動させて、自動工具交換装置1の工具交換位置Pにあるツールハンド30にチャッキングさせる。
【0055】
(4)図4(d)に示すように、砥石台13の砥石軸40が砥石車2をアンクランプした後、上下スライドユニット22により、上記砥石台13を上昇させて、砥石台13がツールマガジン5の回転によるツールハンド30の旋回と干渉しない位置へ移動させる。
【0056】
(5)ツールマガジン5の回転により、砥石台13に新たに取り付けるべき砥石車2を保持するツールハンド30が旋回して上記工具交換位置Pへ割出し回転される(図示省略)。
【0057】
(6)上記と逆の動作((4)→(3)→(2)→(1))により、上記新しい砥石車2を砥石台13に取付け交換する。
【0058】
(7)砥石車2の交換作業完了後、ツールマガジン5の回転により、すべてのツールハンド30、30、…がマガジンカバー6内に移動収納されるとともに、開閉シャッタ34がマガジンカバー6内から移動して工具交換窓36を閉止する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の自動工具交換装置1によれば、砥石車2を保持する複数のツールハンド30、30、…を備えるツールマガジン5の周囲を囲繞し保護するマガジンカバー6の一部に、工具交換位置Pに開口する工具交換窓36が開設されるとともに、上記ツールマガジン5におけるツールハンド30、30、…の配設箇所の一つに開閉シャッタ34が設けられてなり、上記ツールマガジン5が工具非交換位置に回転停止している時、上記開閉シャッタ34が上記マガジンカバー6の工具交換窓36を閉止する配置構成とされているから、上記開閉シャッタ34の開閉が、独立した開閉機構や装置を必要とすることなく、上記ツールマガジン5の基本動作である回転動作に連動して行われ、構造簡易でコンパクトな自動工具交換装置1を提供することができる。
【0060】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲内において種々の設計変更が可能である。
例えば、図示の実施形態は、複合型研削盤に搭載される自動工具交換装置1について説明したが、本発明に係る自動工具交換装置は、これ以外の複数種類の機械加工を行う工作機械にも搭載適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
W ワーク
P 工具交換位置
1 自動工具交換装置
2 砥石車(加工工具)
5 ツールマガジン
6 マガジンカバー
7 回転駆動部(回転駆動手段)
8 ATC制御部(制御手段)
11 ワークテーブル
12 コラム
13 砥石台(主軸ヘッド)
15 ベッド
16 装置制御部
21 旋回ユニット
22 上下スライドユニット
23 左右スライドユニット
30 ツールハンド(ツール保持手段)
32 回転主軸
33 アーム部
34 開閉シャッタ
35 取付軸
36 工具交換窓
37 シール部材(シール手段)
40 砥石軸
42 旋回テーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の機械加工を行う工作機械に備えられて、複数種類の加工工具を備えるとともに、前記工作機械の主軸ヘッドとの間で前記複数種類の加工工具の一つを選択的に自動交換する工具自動交換装置であって、
加工工具を取外し可能に保持する複数のツール保持手段が回転方向へ等間隔をもって配設されてなる回転可能なツールマガジンと、
このツールマガジンの前記ツール保持手段のいずれか一つを工具交換位置に割出し回転させる回転駆動手段と、
前記ツールマガジンの周囲を囲繞し保護するマガジンカバーとを備えてなり、
前記マガジンカバーの一部に前記工具交換位置に開口する工具交換窓が開設されるとともに、前記ツールマガジンにおける前記ツール保持手段の配設箇所の一つに開閉シャッタが設けられてなり、
前記ツールマガジンが工具非交換位置に回転停止している時、前記開閉シャッタが前記マガジンカバーの工具交換窓を閉止する配置構成とされている
ことを特徴とする自動工具交換装置。
【請求項2】
前記ツールマガジンのツール保持手段のいずれか一つが前記工具交換位置にある時、前記開閉シャッタが前記マガジンカバーの内部に収納されるとともに、前記ツールマガジンのツール保持手段が前記マガジンカバーの内部に収納される時、前記開閉シャッタが前記マガジンカバーの工具交換窓を閉止する配置構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の自動工具交換装置。
【請求項3】
前記開閉シャッタが前記マガジンカバーの工具交換窓を閉止した状態において、これら両者の隙間をシールするシール手段が、少なくとも前記開閉シャッタおよび前記マガジンカバーの工具交換窓の一方に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の自動工具交換装置。
【請求項4】
前記マガジンカバーの工具交換窓は、前記ツールマガジンのツール保持手段がこの工具交換窓に回転停止された状態において、前記工作機械の主軸ヘッドが前記ツール保持手段に接近して加工工具の交換が可能な形状寸法に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の自動工具交換装置。
【請求項5】
前記工作機械の主軸ヘッドを駆動する駆動手段と連動して前記回転駆動手段を制御する制御手段を備え、
この制御手段は、前記工作機械の主軸ヘッドと前記ツールマガジンのツール保持手段の一つとの間で加工工具の交換作業を行う際に、交換対象となる前記ツール保持手段を前記工具交換位置に割出し回転するとともに、この加工工具の交換作業が完了すると、前記開閉シャッタを前記工具交換位置に割出し回転して前記工具交換窓を閉止するよう前記回転駆動手段を制御する構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の自動工具交換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−148382(P2012−148382A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10312(P2011−10312)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000167222)光洋機械工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】