説明

自動搬送装置の遠隔操作方法及び装置

【課題】オペレータが自動搬送装置の通路内に入ることなく復旧作業等を効率良く行うことができ、且つその際の操作装置に対する情報表示のリアルタイム性を確保し得る自動搬送装置の遠隔操作方法及び装置を提供する。
【解決手段】通常時に地上制御装置14に接続される操作装置16を、非常時に地上制御装置14から切り離して光伝送装置15に直接接続し、該操作装置16と機上制御装置10との間で地上制御装置14を介さずに光伝送装置15,17のみを介して信号の授受を行い、自動搬送装置としてのスタッカクレーン3を手動操作するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送装置の遠隔操作方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動搬送装置としては、例えば、自動倉庫に用いられるスタッカクレーンが知られているが、該自動倉庫は、図2及び図3に示される如く、倉庫1内に設けられた収納棚2に対し、自動搬送装置としてのスタッカクレーン3を用いて自動的に荷4の出し入れが行われるようになっている。
【0003】
前記自動搬送装置としてのスタッカクレーン3は、図2〜図4に示される如く、上下方向へ延びるよう立設された直線軌道としてのマスト5を備えて倉庫1内を移動し得る搬送台車6と、前記マスト5に沿って昇降可能な往復移動手段としてのケージ7と、該ケージ7より倉庫1内の収納棚2へ向け伸縮自在で荷4を入出庫するための移載手段としてのフォーク部8とを備えてなる構成を有しており、前記搬送台車6には、ワイヤー等を巻上下げしてケージ7を昇降させるウインチ等の動力部9と、ケージ7並びにフォーク部8を駆動制御するための機上制御装置10とが配置される一方、前記ケージ7には、フォーク部8を駆動する駆動モータ11と、荷4の有無、荷くずれ、フォーク部8の位置、昇降停止位置等を監視するための各種検出センサやリミットスイッチ等の検出手段12とが配置されている。
【0004】
前述の如きスタッカクレーン3を用いて荷4を倉庫1の収納棚2へ入出庫する際には、搬送台車6を走行させつつ、ケージ7を昇降させ、更にフォーク部8を伸縮させ、荷4を三次元方向に移動させるようになっている。
【0005】
一方、前述の如きスタッカクレーン3の場合、近年においては、図5に示される如く、地上側に設置された基地局としての操作ステーション13に地上制御装置14を設け、該地上制御装置14に、光伝送装置15とタッチパネル等の操作装置16とを接続し、スタッカクレーン3に搭載された機上制御装置10に光伝送装置17を接続し、地上制御装置14と機上制御装置10との間での各種信号の授受を前記光伝送装置15,17を介して行うことにより、スタッカクレーン3の運転状態等の情報を前記操作装置16に表示してオペレータが把握すると共に、必要に応じて前記操作装置16からオペレータが入力操作を行うようにしたものが開発されている。
【0006】
尚、クレーンの分野において、監視用のテレビカメラの制御を光伝送装置を介して行うようにした技術を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開平9−165188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図5に示されるようなスタッカクレーン3において、何らかの故障等の発生に伴ってアラームが発せられたような場合には、オペレータがスタッカクレーン3の通路内に入り、手動操作用ハンディータッチパネル等の手動操作装置18を機上制御装置10に接続し、該手動操作装置18からオペレータが入力操作を行うことにより、スタッカクレーン3を直接復旧させるようになっている。
【0008】
しかしながら、前述の如く、アラーム発令時にその都度オペレータがスタッカクレーン3の通路内に入り、手動操作用ハンディータッチパネル等の手動操作装置18を機上制御装置10に接続し、該手動操作装置18からオペレータが入力操作を行うのでは、スタッカクレーン3の復旧までに手間と時間がかかるという欠点を有していた。
【0009】
又、前記手動操作装置18から入力される情報は、機上制御装置10から一旦、光伝送装置17,15を介して地上制御装置14に光伝送された後、同じ経路を再度戻る形でやり取りされ、続いて、スタッカクレーン3の運転状態等の情報が前記手動操作装置18に表示されるため、タイムラグが生じてリアルタイム性に欠ける等の問題もあった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、オペレータが自動搬送装置の通路内に入ることなく復旧作業等を効率良く行うことができ、且つその際の操作装置に対する情報表示のリアルタイム性を確保し得る自動搬送装置の遠隔操作方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、地上側に設けられた地上制御装置に、光伝送装置と操作装置とを接続し、倉庫内の収納棚へ荷を入出庫する自動搬送装置に搭載された機上制御装置に光伝送装置を接続し、前記地上制御装置と機上制御装置との間での信号の授受を前記光伝送装置を介して行うよう構成した自動搬送装置の遠隔操作方法であって、
通常時に地上制御装置に接続される操作装置を、非常時に地上制御装置から切り離して光伝送装置に直接接続し、該操作装置と機上制御装置との間で地上制御装置を介さずに光伝送装置のみを介して信号の授受を行い、自動搬送装置を手動操作することを特徴とする自動搬送装置の遠隔操作方法にかかるものである。
【0012】
本発明の自動搬送装置の遠隔操作方法においては、通常時に地上制御装置に接続されていた操作装置は、何らかの故障等の発生に伴う非常時には、地上制御装置から切り離されて光伝送装置に直接接続され、該操作装置と機上制御装置との間で地上制御装置を介さずに光伝送装置のみを介して信号の授受が行われ、自動搬送装置が手動操作されることとなる。
【0013】
又、本発明は、地上側に設けられた地上制御装置に、光伝送装置と操作装置とを接続し、倉庫内の収納棚へ荷を入出庫する自動搬送装置に搭載された機上制御装置に光伝送装置を接続し、前記地上制御装置と機上制御装置との間での信号の授受を前記光伝送装置を介して行うよう構成した自動搬送装置の遠隔操作装置であって、
操作装置と機上制御装置とをつなぐ操作装置接続ライン途中と、光伝送装置と機上制御装置とをつなぐ光伝送装置接続ライン途中とを直結ラインによって接続し、該直結ライン途中に、通常時に開き非常時に閉じる常開接点を設けると共に、前記直結ラインの接続点より地上制御装置側における操作装置接続ライン途中と、前記直結ラインの接続点より地上制御装置側における光伝送装置接続ライン途中とにそれぞれ、通常時に閉じ非常時に開く常閉接点を設けたことを特徴とする自動搬送装置の遠隔操作装置にかかるものである。
【0014】
本発明の自動搬送装置の遠隔操作装置においては、通常時には、常開接点は開き、常閉接点は閉じ、操作装置と機上制御装置とが操作装置接続ラインを介してつながれ、光伝送装置と機上制御装置とが光伝送装置接続ラインを介してつながれているが、何らかの故障等の発生に伴う非常時には、常開接点は閉じ、常閉接点は開くことから、通常時に地上制御装置に接続されていた操作装置は、地上制御装置から切り離され直結ラインを介して光伝送装置に直接接続され、該操作装置と機上制御装置との間で地上制御装置を介さずに光伝送装置のみを介して信号の授受が行われ、自動搬送装置が手動操作されることとなる。
【0015】
この結果、本発明の自動搬送装置の遠隔操作方法及び装置においては、非常時にオペレータが自動搬送装置の通路内に入らなくて済み、自動搬送装置の復旧までに手間と時間がかからなくなる。
【0016】
又、前記操作装置から入力される情報並びに自動搬送装置の運転状態等の情報は、操作装置と機上制御装置との間で地上制御装置を介さずに光伝送装置のみを介してやり取りされるため、操作装置に対する情報表示にタイムラグが生じることが避けられ、リアルタイム性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動搬送装置の遠隔操作方法及び装置によれば、オペレータが自動搬送装置の通路内に入ることなく復旧作業等を効率良く行うことができ、且つその際の操作装置に対する情報表示のリアルタイム性を確保し得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図2〜図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図2〜図5に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1に示す如く、通常時に地上制御装置14に接続される操作装置16を、非常時に地上制御装置14から切り離して光伝送装置15に直接接続し、該操作装置16と機上制御装置10との間で地上制御装置14を介さずに光伝送装置15,17のみを介して信号の授受を行い、自動搬送装置としてのスタッカクレーン3を手動操作するよう構成した点にある。
【0020】
本図示例の場合、操作装置16と機上制御装置10とをつなぐ操作装置接続ライン19途中と、光伝送装置15,17と機上制御装置10とをつなぐ光伝送装置接続ライン20途中とを直結ライン21によって接続し、該直結ライン21途中に、通常時に開き非常時に閉じる常開接点22を設けると共に、前記直結ライン21の接続点より地上制御装置14側における操作装置接続ライン19途中と、前記直結ライン21の接続点より地上制御装置14側における光伝送装置接続ライン20途中とにそれぞれ、通常時に閉じ非常時に開く常閉接点23,24を設けるようにしてある。
【0021】
尚、前記常開接点22は、開状態から電磁リレー25に対する通電によって閉じる一方、前記常閉接点23,24は、閉状態から電磁リレー25に対する通電によって開くようにしてある。
【0022】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0023】
通常時には、電磁リレー25に通電は行われておらず、常開接点22は開き、常閉接点23,24は閉じ、操作装置16と機上制御装置10とが操作装置接続ライン19を介してつながれ、光伝送装置15と機上制御装置10とが光伝送装置接続ライン20を介してつながれているが、何らかの故障等の発生に伴う非常時には、電磁リレー25に通電が行われ、常開接点22は閉じ、常閉接点23,24は開くことから、通常時に地上制御装置14に接続されていた操作装置16は、地上制御装置14から切り離され直結ライン21を介して光伝送装置15に直接接続され、該操作装置16と機上制御装置10との間で地上制御装置14を介さずに光伝送装置15,17のみを介して信号の授受が行われ、自動搬送装置としてのスタッカクレーン3が手動操作されることとなる。
【0024】
尚、前記光伝送装置15,17としてシリアル/パラレル変換器付きのものを使用した場合、前記操作装置16から入力されるパラレル信号及びシリアル信号は、光伝送装置15内でシリアル信号に変換されて光伝送され、光伝送装置17内でパラレル信号及びシリアル信号に戻され、機上制御装置10へ入力される。
【0025】
この結果、非常時にオペレータがスタッカクレーン3の通路内に入らなくて済み、スタッカクレーン3の復旧までに手間と時間がかからなくなる。
【0026】
又、前記操作装置16から入力される情報並びにスタッカクレーン3の運転状態等の情報は、操作装置16と機上制御装置10との間で地上制御装置14を介さずに光伝送装置15,17のみを介してやり取りされるため、操作装置16に対する情報表示にタイムラグが生じることが避けられ、リアルタイム性を確保することが可能となる。
【0027】
こうして、オペレータがスタッカクレーン3の通路内に入ることなく復旧作業等を効率良く行うことができ、且つその際の操作装置16に対する情報表示のリアルタイム性を確保し得る。
【0028】
尚、本発明の自動搬送装置の遠隔操作方法及び装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、スタッカクレーンに限らず、天井クレーン、或いは直線軌道上を往復するシャトル式搬送台車等の自動搬送装置にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施する形態の一例における制御系統を示すブロック図である。
【図2】自動搬送装置を備えた自動倉庫の平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視図である。
【図4】従来の自動搬送装置の一例を示す側面図である。
【図5】従来の自動搬送装置の一例における制御系統を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1 倉庫
2 収納棚
3 スタッカクレーン(自動搬送装置)
4 荷
10 機上制御装置
13 操作ステーション
14 地上制御装置
15 光伝送装置
16 操作装置
17 光伝送装置
19 操作装置接続ライン
20 光伝送装置接続ライン
21 直結ライン
22 常開接点
23 常閉接点
24 常閉接点
25 電磁リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上側に設けられた地上制御装置に、光伝送装置と操作装置とを接続し、倉庫内の収納棚へ荷を入出庫する自動搬送装置に搭載された機上制御装置に光伝送装置を接続し、前記地上制御装置と機上制御装置との間での信号の授受を前記光伝送装置を介して行うよう構成した自動搬送装置の遠隔操作方法であって、
通常時に地上制御装置に接続される操作装置を、非常時に地上制御装置から切り離して光伝送装置に直接接続し、該操作装置と機上制御装置との間で地上制御装置を介さずに光伝送装置のみを介して信号の授受を行い、自動搬送装置を手動操作することを特徴とする自動搬送装置の遠隔操作方法。
【請求項2】
地上側に設けられた地上制御装置に、光伝送装置と操作装置とを接続し、倉庫内の収納棚へ荷を入出庫する自動搬送装置に搭載された機上制御装置に光伝送装置を接続し、前記地上制御装置と機上制御装置との間での信号の授受を前記光伝送装置を介して行うよう構成した自動搬送装置の遠隔操作装置であって、
操作装置と機上制御装置とをつなぐ操作装置接続ライン途中と、光伝送装置と機上制御装置とをつなぐ光伝送装置接続ライン途中とを直結ラインによって接続し、該直結ライン途中に、通常時に開き非常時に閉じる常開接点を設けると共に、前記直結ラインの接続点より地上制御装置側における操作装置接続ライン途中と、前記直結ラインの接続点より地上制御装置側における光伝送装置接続ライン途中とにそれぞれ、通常時に閉じ非常時に開く常閉接点を設けたことを特徴とする自動搬送装置の遠隔操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−55731(P2007−55731A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242588(P2005−242588)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】