説明

自動搬送装置

【課題】電力供給用及び通信用のケーブルを不要とし得、ケーブルの曲げに必要なスペースをなくして省スペース化を図り得ると共に、ケーブルが引っ掛かるというトラブルを回避して荷の移動を高速化することができ、且つ充電装置やバッテリーも不要とし得る自動搬送装置を提供する。
【解決手段】スタッカクレーン3の上下方向へ延びる直線軌道としてのマスト5に沿ってトロリー線19を敷設し、前記マスト5に沿って昇降可能な往復移動手段としてのケージ7に、前記トロリー線19に対して摺動自在に接触する集電子20を設け、搬送台車6とケージ7とにそれぞれ、制御器10と前記駆動モータ11及び検出手段12との間での信号の授受を行う光伝送装置21,22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動搬送装置としては、例えば、自動倉庫に用いられるスタッカクレーンが知られているが、該自動倉庫は、図3及び図4に示される如く、倉庫1内に設けられた収納棚2に対し、自動搬送装置としてのスタッカクレーン3を用いて自動的に荷4の出し入れが行われるようになっている。
【0003】
前記自動搬送装置としてのスタッカクレーン3は、図3〜図5に示される如く、上下方向へ延びるよう立設された直線軌道としてのマスト5を備えて倉庫1内を移動し得る搬送台車6と、前記マスト5に沿って昇降可能な往復移動手段としてのケージ7と、該ケージ7より倉庫1内の収納棚2へ向け伸縮自在で荷4を入出庫するための移載手段としてのフォーク部8とを備えてなる構成を有しており、前記搬送台車6には、ワイヤー等を巻上下げしてケージ7を昇降させるウインチ等の動力部9と、ケージ7並びにフォーク部8を駆動制御するための制御器10とが配置される一方、前記ケージ7には、フォーク部8を駆動する駆動モータ11と、荷4の有無、荷くずれ、フォーク部8の位置、昇降停止位置等を監視するための各種検出センサやリミットスイッチ等の検出手段12とが配置されている。
【0004】
ここで、前記制御器10は、図6に示される如く、ケージ7及びフォーク部8の主電源となる電源部13と、駆動モータ11及び検出手段12を制御する指令部14と、該指令部14に接続されて駆動モータ11の駆動を調整するインバータ又はサーボ機構等の駆動調整部15と、電源部13からの電力を変換して駆動調整部15及び検出手段12等へ供給するAC/DC変換電源回路等の安定化電源部16とを備えている。
【0005】
一方、前記ケージ7に配置された駆動モータ11及び検出手段12は、電力供給用及び通信用のケーブル17を介して制御器10の指令部14、駆動調整部15及び安定化電源部16にそれぞれ接続されており、前記ケーブル17は、数十の多芯数の配線を束ねるよう平型ケーブル、ケーブルベア(登録商標)、丸形ケーブル等により構成され、且つマスト5に沿うように配置されている。又、マスト5にはケーブル用ガイド(図示せず)が設けられ、ケージ7の下降動作に伴って生じるケーブル17の垂れ下がり部分18をガイドするようになっている。
【0006】
前述の如きスタッカクレーン3を用いて荷4を倉庫1の収納棚2へ入出庫する際には、搬送台車6を走行させつつ、ケージ7を昇降させ、更にフォーク部8を伸縮させ、荷4を三次元方向に移動させるようになっている。
【0007】
尚、図3〜図6に示されるようなスタッカクレーン3と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1や特許文献2がある。
【特許文献1】特開平8−217208号公報
【特許文献2】特開2003−81408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の如き従来の自動搬送装置としてのスタッカクレーン3においては、ケージ7の昇降に伴ってケーブル17が曲げを生じながら垂れ下がるため、ケーブル17の曲げ径に対応した余分なスペースが必要になると共に、ケーブル17は曲げ伸ばしを繰り返し受け、寿命低下につながるという問題があった。
【0009】
又、ケーブル17に生じる垂れ下がり部分18は、搬送台車6の移動によりケーブル用ガイドにガイドされることなく大きな振れを生じて、収納棚2に引っ掛かってしまうといった不具合も生じていた。
【0010】
一方、特許文献1に開示されたクレーンでは、充電装置とバッテリーが必要で、それらの劣化が問題になると共に、メンテナンスにも手間がかかるという欠点を有していた。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、電力供給用及び通信用のケーブルを不要とし得、ケーブルの曲げに必要なスペースをなくして省スペース化を図り得ると共に、ケーブルが引っ掛かるというトラブルを回避して荷の移動を高速化することができ、且つ充電装置やバッテリーも不要とし得る自動搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、倉庫内の収納棚へ荷を入出庫する移載手段が搭載され且つ直線軌道に沿って往復移動自在な往復移動手段を備えた自動搬送装置において、
トロリー線を往復移動手段の直線軌道に沿って敷設し且つ該トロリー線に対して摺動自在に接触する集電子を往復移動手段に設け、前記直線軌道の一端側に固定設置される制御器の電源部からトロリー線と集電子を介して、前記往復移動手段に搭載された移載手段用の駆動モータ及び前記往復移動手段に設けられた検出手段に給電するよう構成すると共に、
前記制御器と前記駆動モータ及び検出手段との間での信号の授受を光伝送装置によって行うよう構成したことを特徴とする自動搬送装置にかかるものである。
【0013】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0014】
前述の如く構成すると、倉庫内の収納棚へ荷を入出庫するよう往復移動手段が直線軌道に沿って移動する際には、該往復移動手段に設けた集電子がトロリー線に対し摺動して移動し、前記往復移動手段に搭載された移載手段用の駆動モータ及び前記往復移動手段に設けられた検出手段に給電されると共に、前記制御器と前記駆動モータ及び検出手段との間での信号の授受が光伝送装置によって行われる。
【0015】
この結果、電力供給用及び通信用のケーブルが不要になるので、該ケーブルの曲げ径に対応した余分なスペースが必要なくなると共に、ケーブルの寿命を考慮しなくて済み、又、ケーブルに生じる垂れ下がり部分が収納棚に引っ掛かってしまうといった不具合も生じなくなる一方、充電装置とバッテリーが不要で、それらの劣化が問題になる心配もなく、メンテナンスにも手間がかからない。
【0016】
更に、制御器と前記駆動モータ及び検出手段との間での信号の授受が光伝送装置によって行われることから、ノイズが混入することを回避可能となり、ノイズによる誤動作等の心配もなくなり、往復移動手段の移動速度や加減速度を上げることも可能となる。
【0017】
前記自動搬送装置においては、倉庫内を移動可能な搬送台車に、上下方向へ延びる直線軌道としてのマストを立設すると共に、該マストに沿って昇降可能となるよう往復移動手段としてのケージを配設し、該ケージに、駆動モータによって駆動され且つ前記倉庫内の収納棚へ荷を入出庫する移載手段としてのフォーク部を配設し、前記搬送台車に制御器を固定設置し、前記ケージに検出手段を設けたスタッカクレーンの、前記マストに沿ってトロリー線を敷設し、前記ケージに、トロリー線に対して摺動自在に接触する集電子を設け、前記搬送台車とケージとにそれぞれ、前記制御器と前記駆動モータ及び検出手段との間での信号の授受を行う光伝送装置を設けるようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の自動搬送装置によれば、電力供給用及び通信用のケーブルを不要とし得、ケーブルの曲げに必要なスペースをなくして省スペース化を図り得ると共に、ケーブルが引っ掛かるというトラブルを回避して荷の移動を高速化することができ、且つ充電装置やバッテリーも不要とし得、更に、制御器と前記駆動モータ及び検出手段との間での信号の授受を光伝送装置によって行うことにより、ノイズの混入を回避して該ノイズによる誤動作等を防止し得、運転の信頼性を高め且つ高効率化を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図3〜図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、スタッカクレーン3の上下方向へ延びる直線軌道としてのマスト5に沿ってトロリー線19を敷設し、前記マスト5に沿って昇降可能な往復移動手段としてのケージ7に、前記トロリー線19に対して摺動自在に接触する集電子20を設け、搬送台車6とケージ7とにそれぞれ、制御器10と前記駆動モータ11及び検出手段12との間での信号の授受を行う光伝送装置21,22を設けるようにしたものである。
【0021】
本図示例の場合、前記トロリー線19は、図2に示す如く、制御器10の電源部13に接続し、前記光伝送装置21は、制御器10の指令部14に接続してある。
【0022】
又、ケージ7側に、図1に示す如く、駆動モータ11の駆動を調整するインバータ又はサーボ機構等の駆動調整部15と、AC/DC変換電源回路等の安定化電源部16とを配備し、光伝送装置22及び駆動調整部15にそれぞれ、図2に示す如く、前記トロリー線19に対して接触する集電子20から給電を行うと共に、該集電子20から安定化電源部16を介して検出手段12へ給電を行うようにしてある。
【0023】
尚、前記光伝送装置21,22として、各種信号をダイレクトに送信できるシリアル/パラレル変換器付きのものを用いることが、前記光伝送装置22と検出手段12との間にコントローラ等を介在させずに直接信号のやり取りをする上で有効となる。
【0024】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0025】
前述の如く構成すると、倉庫1内の収納棚2へ荷4を入出庫するよう往復移動手段としてのケージ7が直線軌道としてのマスト5に沿って移動する際には、該ケージ7に設けた集電子20がトロリー線19に対し摺動して移動し、前記ケージ7に搭載された移載手段用の駆動モータ11に駆動調整部15を介して給電が行われ且つ前記ケージ7に設けられた検出手段12に安定化電源部16を介して給電が行われると共に、前記制御器10と前記駆動モータ11及び検出手段12との間での信号の授受が光伝送装置21,22によって行われる。
【0026】
この結果、電力供給用及び通信用のケーブルが不要になるので、該ケーブルの曲げ径に対応した余分なスペースが必要なくなると共に、ケーブルの寿命を考慮しなくて済み、又、ケーブルに生じる垂れ下がり部分が収納棚2に引っ掛かってしまうといった不具合も生じなくなる一方、充電装置とバッテリーが不要で、それらの劣化が問題になる心配もなく、メンテナンスにも手間がかからない。
【0027】
更に、制御器10と前記駆動モータ11及び検出手段12との間での信号の授受が光伝送装置21,22によって行われることから、ノイズが混入することを回避可能となり、ノイズによる誤動作等の心配もなくなり、ケージ7の移動速度や加減速度を上げることも可能となる。
【0028】
こうして、電力供給用及び通信用のケーブルを不要とし得、ケーブルの曲げに必要なスペースをなくして省スペース化を図り得ると共に、ケーブルが引っ掛かるというトラブルを回避して荷4の移動を高速化することができ、且つ充電装置やバッテリーも不要とし得、更に、制御器10と前記駆動モータ11及び検出手段12との間での信号の授受を光伝送装置21,22によって行うことにより、ノイズの混入を回避して該ノイズによる誤動作等を防止し得、運転の信頼性を高め且つ高効率化を図り得る。
【0029】
尚、本発明の自動搬送装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、スタッカクレーンに限らず、天井クレーン、或いは直線軌道上を往復するシャトル式搬送台車等の自動搬送装置にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す側面図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例における電気系統及び通信系統を示すブロック図である。
【図3】自動搬送装置を備えた自動倉庫の平面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】従来の自動搬送装置の一例を示す側面図である。
【図6】従来の自動搬送装置の一例における電気系統及び通信系統を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
1 倉庫
2 収納棚
3 スタッカクレーン(自動搬送装置)
4 荷
5 マスト(直線軌道)
6 搬送台車
7 ケージ(往復移動手段)
8 フォーク部(移載手段)
10 制御器
11 駆動モータ
12 検出手段
13 電源部
14 指令部
15 駆動調整部
16 安定化電源部
19 トロリー線
20 集電子
21 光伝送装置
22 光伝送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倉庫内の収納棚へ荷を入出庫する移載手段が搭載され且つ直線軌道に沿って往復移動自在な往復移動手段を備えた自動搬送装置において、
トロリー線を往復移動手段の直線軌道に沿って敷設し且つ該トロリー線に対して摺動自在に接触する集電子を往復移動手段に設け、前記直線軌道の一端側に固定設置される制御器の電源部からトロリー線と集電子を介して、前記往復移動手段に搭載された移載手段用の駆動モータ及び前記往復移動手段に設けられた検出手段に給電するよう構成すると共に、
前記制御器と前記駆動モータ及び検出手段との間での信号の授受を光伝送装置によって行うよう構成したことを特徴とする自動搬送装置。
【請求項2】
倉庫内を移動可能な搬送台車に、上下方向へ延びる直線軌道としてのマストを立設すると共に、該マストに沿って昇降可能となるよう往復移動手段としてのケージを配設し、該ケージに、駆動モータによって駆動され且つ前記倉庫内の収納棚へ荷を入出庫する移載手段としてのフォーク部を配設し、前記搬送台車に制御器を固定設置し、前記ケージに検出手段を設けたスタッカクレーンの、前記マストに沿ってトロリー線を敷設し、前記ケージに、トロリー線に対して摺動自在に接触する集電子を設け、前記搬送台車とケージとにそれぞれ、前記制御器と前記駆動モータ及び検出手段との間での信号の授受を行う光伝送装置を設けた請求項1記載の自動搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−22689(P2007−22689A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203085(P2005−203085)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】