説明

自動搬送装置

【課題】生産工場等で広く使用されている自動搬送装置に関し、騒音や反響の多い場所であっても、自動搬送車10の作業状態を作業者等に確実に注意喚起し、安全性に優れる。
【解決手段】所定の搬送路を走行する自動搬送車10と、自動搬送車10の作業状態を示す音声信号を発生する音声装置12と、音声信号を高周波電波により送信する送信機13と、高周波電波による音声信号を受信して当該音声信号を報知する受信機15,18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送車の行動状況や行動予定を報知するための注意音声を微弱電波に乗せて送信し、微弱電波が到達できる範囲内の受信機にて受信して注意音声を発声する自動搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、生産工場等では、搬送路に沿って部品やユニット等を載せて自動走行する無人の自動搬送車が広く使用されている。
【0003】
自動搬送車の多くは、灯火等の視覚的手段の他、サイレン、チャイムあるいは音声等の聴覚的手段によって、移動や作業中であることを報知し、周囲の作業者等に注意を喚起している。
【0004】
図4に、従来からある自動搬送装置を示す。
【0005】
図4において、70は搬送路71に沿って自動走行する自動搬送車であり、自動搬送車70は周囲の作業者Mpに聴覚的手段によって注意を喚起するためのスピーカ72を備えている。自動搬送車70は、プログラムや遠隔操作によって、所定の搬送ルートを搬送路71に沿って自動走行する。この際、スピーカ72からサイレン、チャイムあるいは音声等の聴覚的手段によって、搬送ルートの周囲の作業者Mpに注意喚起を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図4に示した従来の自動搬送装置では、自動搬送車70と作業者Mpとの間に騒音源73が存在すると、その騒音源73から発せられる騒音によって、スピーカ72から発せられるチャイム等の報知音声が作業者Mpに聞き取り難かったり、あるいは工場内の反響物74によって報知音声が反響し、自動搬送車70の正確な位置が作業者Mpに特定され難かったりすることで、安全対策として不十分であるという問題があった。
【0007】
したがって本発明は、騒音や反響の多い場所であっても、自動搬送車の接近を作業者等に確実に注意喚起でき、安全性に優れた自動搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動搬送装置は、所定の搬送路を走行する搬送手段と、前記搬送手段の作業状態を示す音声信号を発生する音声信号発生手段と、前記音声信号を高周波電波により送信する送信手段と、前記高周波電波による前記音声信号を受信して当該音声信号を報知する報知手段とを備えたものである。
【0009】
また本発明の自動搬送装置は、前記搬送手段に載置され当該搬送手段の動作を制御する制御手段をさらに備え、前記音声信号発生手段と前記送信手段とは前記搬送手段に載置されるとともに、前記音声信号発生手段は前記制御手段によって制御されるものである。
【0010】
前記制御手段は、予め前記搬送手段の搬送経路や作業手順を記憶し、当該搬送経路や作業手順に沿って当該搬送手段を制御する。
【0011】
前記高周波電波は、概ね前記搬送手段の搬送または作業によって周囲と干渉する可能性がある限定範囲内でのみ有効に受信することができる微弱電波である。
【0012】
本発明の自動搬送装置によると、音声信号発生手段にて発生した搬送手段の搬送や作業の状態を示す音声信号を、送信手段にて送信し報知手段にて受信して報知するので、騒音や反響の多い場所であっても、それら騒音源や反響物の影響を回避して報知手段を配置することで、搬送手段の搬送や作業の状態を作業者に正確に報知することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動搬送装置は、騒音や反響の多い場所であっても、自動搬送車の作業状態を作業者等に確実に注意喚起でき、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例における自動搬送装置の概略構成図
【図2】本発明の実施例における音声再生機能付きプログラマブルコントローラの構成図
【図3】本発明の実施例における自動搬送装置の動作説明図
【図4】従来例における自動搬送装置の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の自動搬送装置の実施例を、図1〜3を用いて説明する。
【0016】
図1は自動搬送装置の概略構成図、図2は音声再生機能付きプログラマブルコントローラの構成図、図3は自動搬送装置の動作説明図を示している。
【0017】
図1において、10は自動搬送車であり、プログラマブルコントローラ(以下、PLCと称する)11、音声装置12、送信用アンテナ14を有した送信機13が載置されている。また、15は受信用アンテナ16およびスピーカ17を有した受信機である。さらに、18は作業者Mが携帯する受信機であり、受信用アンテナ19およびレシーバ20を有している。なお、自動搬送車10が搬送手段を、PLC11が制御手段を、音声装置12が音声信号発生手段を、送信機13が送信手段を、受信機15,18が報知手段をそれぞれ構成している。
【0018】
図2において、PLC11は音声再生機能付きプログラマブルコントローラである。PLC11は、プログラマブルコントローラ部30を実装したPLC基板31と、音声装置12となる音声再生コントローラ部32を実装した音声基板33とを備え、これらプログラマブルコントローラ部30と音声再生コントローラ部32は上記両基板31,33に実装されたバスインターフェース、好ましくはパラレルバスインターフェース34,35を介して接続されている。
【0019】
プログラマブルコントローラ部30は、複数の通信ポート36,37,38、ラダープログラムやその他のプログラム、データ等を格納する各種メモリ39、ラダープログラムを実行するCPU40、さらに、上記パラレルバスインターフェース34、ならびに外部シリアルバスインターフェース41を備えている。上記各通信ポート36,37,38には、プログラミングツール42、汎用シリアル通信機器43、他のPLC44、プログラマブル表示器45、パーソナルコンピュータ46等が接続され、外部シリアルバスインターフェース41には増設入出力(I/O)モジュール47が接続される。
【0020】
プログラマブルコントローラ部30においては、上記ラダープログラムの一部に、音声再生コントローラ部32における音声再生制御に用いるプログラム要素が組み込まれている。そしてプログラマブルコントローラ部30は、上記したプログラム要素を実行して音声再生コントローラ部32に対して音声再生を実行させることができるようになっている。
【0021】
音声再生コントローラ部32は、上記音声再生の実行指令に応答して、音声を再生できるように、USBポート48、USBコントローラ49を備えると共に、CPU40に対して上記バスインターフェース34,35で接続されCPU40からの音声再生に関する指令を実行するMPU50、音声データを格納するメモリの例であるフラッシュROM51、MPU50の音声再生に関する指令により上記フラッシュROM51内の音声データを再生する音声合成LSI52、および入出力回路54を備える。
【0022】
USBポート48には図示略のUSBメモリから音声データが入力され、MPU50はこの音声データをフラッシュROM51に格納する。フラッシュROM51は、複数のメモリバンクを持つ。各メモリバンクはそれぞれ音声管理エリアと、音声データ格納エリアとを備え、この音声データ格納エリアに音声データが格納され、この格納された音声データは、それぞれのメモリバンクの音声管理エリアで管理され、音声合成LSI52に出力されるようになっている。
【0023】
音声合成LSI52からの音声データは、PLC11に接続された送信機13に出力され、高周波電波Rにより受信機15,18に送信される。これら送信機13,受信機15,18による無線通信は、自動搬送車10による搬送または作業によって概ね自動搬送車10と干渉する可能性がある限定範囲内でのみ有効に受信することができるもの、具体的には受信可能範囲が数十m程度の微弱電波によるもの等でよく、例えば、特定小電力無線等が挙げられる。受信機15,18は、上述の送信機13に対応する専用の受信機の他、汎用の受信機でもよく、送信機13から変調されて送信されてきた信号を復調して音声データを取り出し、スピーカ17またはレシーバ20から外部に音声を出力する。
【0024】
受信機15は、自動搬送車10の搬送ルート周辺に所定間隔毎もしくは騒音源や反響物の影響を回避できる所定位置に設置し、受信機18は、自動搬送車10の搬送ルート周辺で作業もしくは通行する作業者が携行する。また、搬送ルート周辺に設置する受信機15は、隣接する受信機の受信可能範囲をもカバーすることにより、音声報知の空白領域がなくなるように配置してもよい。
【0025】
次に、図3を用いて、自動搬送装置の動作について説明する。
【0026】
自動搬送車10は、PLC11のプログラマブルコントローラ部30のメモリ39に予め記憶された搬送経路や作業手順に沿ってプログラム巡回により自動走行する。図3の例では、搬送ライン60に沿って走行してきた自動搬送車10が、搬送ライン61に入るものとする。また、自動搬送車10は、メモリ39に格納されたプログラムに基づいて、フラッシュROM51に記憶された音声データを送信機13から送信する。送信機13から送信された音声データは、受信可能範囲62内に存在する受信機15,18にて受信され報知される。このように、自動搬送車10は、受信機15,18から、例えば「走行中です」「搬送ライン61に入ります」「荷役中です」等の報知音声を報知しながら、走行ならびに荷役作業を行う。
【0027】
図3の例では、自動搬送車10は、送信機13から音声データを送信しながら搬送ライン60に沿って走行し、それに伴って受信可能範囲62も移動し、受信機15,18が受信可能範囲62内に入ると音声データを受信し、自動搬送車10が搬送ライン61に入ることを作業者M1,M2に報知する。受信可能範囲62は、作業者M1,M2が送信機13から送信された音声データを受信できる範囲であるが、自動搬送車10と作業者M1,M2とが遭遇する可能性がある範囲となる。
【0028】
自動搬送車10と作業者M1との間に騒音源63が存在しても、作業者M1の身近にある受信機15のスピーカ17から発声される報知音声によって作業者M1に報知される。また、受信機18を携帯している作業者M2には、騒音源63にじゃまされることなく、その受信機18のレシーバ20から報知される。なお、従来のように自動搬送車10から報知音声は発声されるものではないので、反響物64で反響することなく、しかも受信可能範囲62の外にある受信機15´には、送信機13から送信された音声データは届かないので、反響や不要な報知によって作業者が自動搬送車10の正確な位置の特定を誤ることはない。
【0029】
このように構成された自動搬送装置によると、音声再生コントローラ部32にて発生した自動搬送車10の搬送や作業の状態を示す音声信号を、送信機13にて送信し受信機15,18にて受信して報知するので、騒音や反響の多い場所であっても、それら騒音源63や反響物64の影響を回避して、自動搬送車10の走行もしくは作業が想定される領域内に音声で有効的に注意を喚起することができ、安全確保のために自動搬送車10を緊急停止させる等により作業効率を低下させることがなくなる。
【0030】
なお、図3は一例であり、自動搬送車10の搬送経路や作業手順、受信機15,18による報知音声は特にこれに限らない。
【0031】
また、自動搬送車10の搬送経路や作業手順は、PLC11のメモリ39に記憶されたプログラムによるものに限らず、外部から遠隔操作によって自動搬送車10の搬送経路や作業手順の指示が与えられるものでもよい。また、報知音声に関しても、メモリ39に記憶されたプログラムによるものに限らず、外部から遠隔操作によってフラッシュROM51内の音声データを選択して送信機13から送信させるものでもよい。
【0032】
また、音声再生機能付きPLC11を用いて音声信号発生手段を備えた制御手段を構成したが、制御手段と音声信号発生手段が別体からなるものでもよい。
【0033】
さらに、自動搬送車が従来のスピーカから聴覚的手段によって作業者に注意喚起を行うものにおいて、本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、生産工場等で広く使用されている自動搬送装置に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
10 自動搬送車(搬送手段)
11 プログラマブルコントローラ(制御手段)
12 音声装置(音声信号発生手段)
13 送信機(送信手段)
15,18 受信機(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送路を走行する搬送手段と、
前記搬送手段の作業状態を示す音声信号を発生する音声信号発生手段と、
前記音声信号を高周波電波により送信する送信手段と、
前記高周波電波による前記音声信号を受信して当該音声信号を報知する報知手段とを備えた自動搬送装置。
【請求項2】
前記搬送手段に載置され当該搬送手段の動作を制御する制御手段をさらに備え、
前記音声信号発生手段と前記送信手段とは前記搬送手段に載置されるとともに、前記音声信号発生手段は前記制御手段によって制御されることを特徴とする請求項1に記載の自動搬送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、予め前記搬送手段の搬送経路や作業手順を記憶し、当該搬送経路や作業手順に沿って当該搬送手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の自動搬送装置。
【請求項4】
前記高周波電波は、概ね前記搬送手段の搬送または作業によって周囲と干渉する可能性がある限定範囲内でのみ有効に受信することができる微弱電波であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の自動搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−191876(P2010−191876A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38042(P2009−38042)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】