説明

自動搬送車

【課題】ワークの受渡しを円滑に行うことができ、しかも、ワークの受渡しにかかる時間を短縮することができる自動搬送車を提供する。
【解決手段】所定の搬送経路に沿って走行し、ワークを搬送する自動搬送車1であって、ワークを載置するための載置台2と、載置台2の下方に設けられた基台3と、載置台2と基台3との間に挟まれ、球面において載置台2または基台3の中心に当接した球面体4と、球面体4を中心として載置台2の下面に点対称に設けられ、載置台2を水平方向に傾動させる4つの傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4と、少なくとも載置台2を昇降させる昇降装置6と、傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4および昇降装置6を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送経路に沿って走行し、ワークを搬送する自動搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動搬送車は、所定位置においてワークの受渡しを行うために、ワークが載置される載置台の高さ調整を行う必要がある。特に、路面に固定設置された定置コンベアとの間でワークの受渡しを行う場合には、載置台の載置面を定置コンベアの搬送面に面一状に整合させることが要求される。
【0003】
このため、従来の自動搬送車100は、図4に示すように、路面に対して突出可能なアウトリガー20を備えている(例えば、特許文献1参照)。このアウトリガー20は、ピストンロッド22を有する油圧シリンダ21から構成されている。
【0004】
従来の自動搬送車100では、ピストンロッド22の先端部が路面に設けられた円錐状のコーン23に嵌合するように該ピストンロッド22を伸長させることで、載置台24の載置面24aを定置コンベアの搬送面に面一状に整合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−201050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の自動搬送車100では、走行中にピストンロッド22を伸長させることができないので、所定位置付近で停止した後に載置台24の載置面24aを定置コンベアの搬送面に面一状に整合させる必要があった。このため、従来の自動搬送車100では、ワークWの受渡しに時間がかかっていた。
【0007】
また、従来の自動搬送車100では、経年変化等によって路面(自動搬送車100の搬送経路や停止位置付近等)に段差が生じた場合、段差により車体とともに載置台24が傾いてしまい、載置台24の高さ調整を行っても、載置台24の載置面24aを定置コンベアの搬送面に面一状に整合させることができない場合があった。このため、従来の自動搬送車100では、ワークWの受渡しを円滑に行うことができなくなるおそれがあった。
【0008】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、ワークの受渡しを円滑に行うことができ、しかも、ワークの受渡しにかかる時間を短縮することができる自動搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動搬送車は、所定の搬送経路に沿って走行し、ワークを搬送する自動搬送車であって、ワークを載置するための載置台と、載置台の下方に設けられた基台と、載置台と基台との間に挟まれ、球面において載置台または基台の中心に当接した球面体と、球面体を中心として載置台の下面に点対称に設けられ、載置台を水平方向に傾動させる4つの傾動装置と、載置台、基台、球面体および4つの傾動装置を昇降させる昇降装置と、4つの傾動装置および昇降装置を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、載置台を昇降させる昇降装置および載置台を水平方向に傾動させる4つの傾動装置を備えているので、載置台の高さだけでなく傾きも調節することができ、ワークの受渡しを円滑に行うことができる。
さらに、この構成によれば、走行中であっても、載置台の高さおよび傾きを調節することができるので、ワークの受渡しにかかる時間を短縮することができる。
【0011】
本発明に係る自動搬送車は、載置台を固定するための固定装置を、さらに備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、走行中の振動やワークの重量等によって載置台の高さや傾きが変わってしまうのを確実に防ぐことができる。
【0013】
本発明に係る自動搬送車において、上記傾動装置は、例えば、第1球面ブッシュを介して載置台の下面を支持するねじ軸と、基台に第2球面ブッシュを介して設けられ、ねじ軸を回転自在に保持する保持手段と、保持手段に設けられ、制御装置の制御下でねじ軸を回転させることにより保持手段に対してねじ軸を昇降させるねじ軸昇降手段と、から構成することができる。
【0014】
また、本発明に係る自動搬送車において、上記球面体は、例えば、載置台または基台の一方と一体形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワークの受渡しを円滑に行うことができ、しかも、ワークの受渡しにかかる時間を短縮することができる自動搬送車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る自動搬送車であって、(a)は平面図、(b)は(a)の線A−Aにおける断面図である。
【図2】本発明における制御装置、昇降装置および傾動装置の関係を示すブロック図である。
【図3】本発明における載置台の高さ調整および傾き調整を説明するための図であって、(a)は初期状態を示す断面図、(b)は(a)の状態から載置台を上昇させた状態を示す断面図、(c)は(b)の状態から載置台を傾動させた状態を示す断面図である。
【図4】従来の自動搬送車の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る自動搬送車の好ましい実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態に係る自動搬送車1は、図1(a)に示すように、車体四隅に設けられた車輪10−1、10−2、10−3、10−4と、走行経路に敷設された走行ガイドGの位置を検知するガイドセンサとを備え、走行ガイドGに沿って走行し、所定位置においてワークの受渡しを行うものであり、特に、走行ガイドGと直交する方向に固定設置された定置コンベア12(不図示)との間でワークの受渡しを行うものである。
【0019】
定置コンベア12との間でワークの受渡しを行うために、本実施形態に係る自動搬送車1は、図1(a)および(b)に示すように、ワークを載置するための載置台2と、載置台2の下方に設けられた基台3と、載置台2と基台3との間に設けられた球面体4と、載置台2を水平方向に傾動させる4つの傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4と、載置台2、基台3、球面体4および傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4を一括して昇降させる昇降装置6と、傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4および昇降装置6を制御する制御装置9(不図示)とを備えている。
【0020】
載置台2は、ワークの受渡しを行う際に、定置コンベア12の搬送面との間に大きな隙間ができないように、車体上面の略全体を占める平面視正方形状に形成されている。この載置台2は、下面の中心に基台3と一体形成された球面体4が当接されており、四隅が傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の各ねじ軸5aによって支持されている。載置台2とねじ軸5aとの間には第1球面ブッシュ7が設けられている。このため、載置台2は、互いに対角に位置するねじ軸5aのうち、一方のねじ軸5aを上昇させるとともに他方のねじ軸5aを下降させることにより、球面体4の当接部分を支点として水平方向に傾動可能になっている。
【0021】
また、載置台2の側面には、走行中の振動やワークの重量等によって載置台2の高さや傾きが変わってしまうのを防ぐために固定装置(不図示)が設けられている。この固定装置は、載置台2の側面から突出自在になっており、該側面から突出して該側面と対向する車体の対向面を押圧することにより、載置台2を固定している。
【0022】
基台3は、載置台2よりも一回り小さい平面視正方形状に形成され、昇降装置6の昇降台6b上に載設されている。基台3の上面には、球面において載置台2の中心に当接した金属製の球面体4が一体形成されている。また、基台3の下面四隅には、傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4を取り付けるための取付フレーム11が設けられている。
【0023】
傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4は、それぞれねじ軸5aと、ねじ軸5aを回転自在に保持する保持手段5bと、保持手段5bに対してねじ軸5aを昇降させるねじ軸昇降手段とを有し、球面体4を中心として載置台2および基台3の下面四隅に点対称(本実施形態では、90度間隔)に設けられている。
ねじ軸5aは、雄ねじ部を有している。
保持手段5bは、ねじ軸5aの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部と、一端が第2球面ブッシュ8を介して雌ねじ部と一体形成されるとともに他端がねじ軸昇降手段を支持する支持部とを有している。また、保持手段5bは、基台3の取付フレーム11に第2球面ブッシュ8を介して取り付けられている。
ねじ軸昇降手段は、一対の平歯車5cと、減速機付きモーター5dとを有している。一対の平歯車5cは、減速機付きモーター5dのモーター軸に設けられた第1平歯車と、ねじ軸5aの一端に設けられ、第1平歯車が回転した時に回転し、該ねじ軸5aとともに昇降する第2平歯車とからなる。
【0024】
昇降装置6は、固定基台6a、昇降台6bおよびX状の交叉リンク6cからなるパンタグラフ機構と、該パンタグラフ機構を伸縮させて昇降台6bを昇降させる昇降台昇降手段6dとを備えた電動式リフターである。昇降装置6は、昇降台6bを昇降させることにより、載置台2、基台3および傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4を昇降させる。
【0025】
制御装置9は、図2に示すように、制御部9aおよび記憶部9bから構成されている。
記憶部9bには、昇降装置6および各傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の操作量に関する指令値が予め格納されている。なお、これらの指令値は、定置コンベア12の搬送面と載置台2の載置面との位置関係に基づいて算出されたものである。
記憶部9bに格納された各指令値は、路面の状況に合わせて、メンテナンス時等に更新される。
【0026】
制御部9aは、記憶部9bに格納された上記指令値に基づいて昇降装置6の昇降台昇降手段6dおよび傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の各ねじ軸昇降手段(減速機付きモーター5d)を制御している。
【0027】
すなわち、本実施形態に係る自動搬送車1によれば、制御部9aの制御下で、昇降装置6の昇降台6bを昇降させるとともに傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の各ねじ軸5aを昇降させることにより、載置台2の高さおよび傾きを調整して、載置台2の載置面を定置コンベア12の搬送面に面一状に整合させることができる。
【0028】
次に、本実施形態における載置台2の高さ調整および傾き調整について、図3を参照して具体的に説明する。
なお、本具体例では、自動搬送車1の停止位置において、車輪10−2、10−4の下方に凹部が形成されているものとする。このため、図3(a)に示すように、載置台2を所定の基準位置に復帰させた初期状態では、載置台2は路面に対して傾いた状態になっている。
また、制御装置9の記憶部9bには、この凹部を考慮して算出された昇降装置6および各傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の操作量に関する指令値が予め格納されているものとする。
【0029】
図3(b)に示すように、自動搬送車1は、まず、記憶部9bに格納された昇降装置6の操作量に関する指令値に基づいて、制御部9aの制御下で、昇降装置6の昇降台6bを上昇させる。より具体的には、載置台2の載置面のうち球面体4の当接部分と対向した対向部分2aと、定置コンベア12の搬送面の幅方向中央部分12aとの高さが一致するように、昇降装置6の昇降台6bを上昇させる。
【0030】
続いて、図3(c)に示すように、自動搬送車1は、記憶部9bに格納された各傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の操作量に関する指令値に基づいて、制御部9aの制御下で、傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の各ねじ軸5aを昇降させる。より具体的には、載置台2の載置面と定置コンベア12の搬送面とが面一状になるように、載置台2の対向部分2aと定置コンベア12の幅方向中央部分12aとの高さを一致させた状態のまま、減速機付きモーター5dを駆動させて一対の平歯車5cを回転させることにより、傾動装置5−2、5−4のねじ軸5aを上昇させるとともに、傾動装置5−2、5−4のねじ軸5aを上昇させた分だけ傾動装置5−1、5−3のねじ軸5aを下降させる。
【0031】
結局、本実施形態に係る自動搬送車1によれば、まず、昇降装置6の昇降台6bを昇降させて載置台2の高さ調整を行い、次に、傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の各ねじ軸5aを昇降させて載置台2の傾き調整を行うことで、路面に凹部等の段差が形成されていても、載置台2の載置面を定置コンベア12の搬送面と面一状にすることができ、定置コンベア12との間でワークの受渡しを円滑に行うことができる。
【0032】
さらに、本実施形態に係る自動搬送車1では、路面状況を考慮して算出された昇降装置6および各傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の操作量に関する指令値が予め記憶部9bに格納されているので、走行中であっても載置台2の高さ調整および傾き調整を行うことができる。このため、本実施形態に係る自動搬送車1によれば、ワークの受渡しにかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0033】
以上、本発明に係る自動搬送車の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0034】
例えば、上記実施形態では、載置台2および基台3を平面視正方形状に形成しているが、これらの形状は任意に変更することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、4つの傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4を載置台2および基台3の下面四隅に設けているが、球面体4を中心として点対称に設けられていれば、傾動装置5−1、5−2、5−3、5−4の位置および数は任意に変更することができる。
【0036】
さらに、上記実施形態では、球面体4が基台3と一体形成されているが、載置台2と一体形成されていてもよく、載置台2および基台3と別体として形成されていてもよい。なお、球面体4の形状は、球面において載置台2または基台3に当接可能な形状であれば、球状であっても半球状であってもよい。
【0037】
さらに、上記実施形態では、固定装置を載置台2の側面に設けているが、載置台2の側面と対向する車体の対向面に設けてもよい。この場合、車体の対向面に設けられた固定装置は、載置台2の側面を押圧することにより、載置台2を固定することになる。
【0038】
さらに、上記実施形態では、車輪10−2、10−4の下方に凹部が形成されていたため、傾動装置5−2、5−4のねじ軸5aを上昇させるとともに傾動装置5−1、5−3のねじ軸5aを下降させることにより載置台2の傾き調整を行ったが、例えば、自動搬送車1の停止位置において車輪10−2の下方にのみ凸部が形成されている場合は、傾動装置5−2を下降させ、球面体4を中心として傾動装置5−2と点対称に設けられている傾動装置5−3を上昇させることにより載置台2の傾き調整を行ってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 自動搬送車
2 載置台
3 基台
4 球面体
5−1、5−2、5−3、5−4 傾動装置
5a ねじ軸
5b 保持手段
5c 一対の平歯車
5d 減速機付きモーター
6 昇降装置
6a 固定基台
6b 昇降台
6c 交叉リンク
6d 昇降台昇降手段
7 第1球面ブッシュ
8 第2球面ブッシュ
9 制御装置
9a 制御部
9b 記憶部
10−1、10−2、10−3、10−4 車輪
11 取付フレーム
12 定置コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って走行し、ワークを搬送する自動搬送車であって、
前記ワークを載置するための載置台と、
前記載置台の下方に設けられた基台と、
前記載置台と前記基台との間に挟まれ、球面において前記載置台または前記基台の中心に当接した球面体と、
前記球面体を中心として前記載置台の下面に点対称に設けられ、前記載置台を水平方向に傾動させる4つの傾動装置と、
前記載置台、前記基台、前記球面体および前記4つの傾動装置を昇降させる昇降装置と、
前記4つの傾動装置および前記昇降装置を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする自動搬送車。
【請求項2】
前記載置台を固定するための固定装置を、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動搬送車。
【請求項3】
前記傾動装置は、
第1球面ブッシュを介して前記載置台の下面を支持するねじ軸と、
前記基台に第2球面ブッシュを介して設けられ、前記ねじ軸を回転自在に保持する保持手段と、
前記保持手段に設けられ、前記制御装置の制御下で前記ねじ軸を回転させることにより前記保持手段に対して前記ねじ軸を昇降させるねじ軸昇降手段と、
からなることを特徴とする請求項1または2に記載の自動搬送車。
【請求項4】
前記球面体は、前記載置台または前記基台の一方と一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の自動搬送車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−126238(P2012−126238A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279011(P2010−279011)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】