説明

自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物

【課題】特定の溶出ホッパーを備えた自動洗浄機で用いることで、優れた洗浄力と溶解性を示す、自動洗浄機用の粉末洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】粉末洗浄剤組成物を収容する特定の溶出ホッパーを備えた自動洗浄機用の粉末洗浄剤組成物であって、該組成物中に含まれるナトリウムイオンのモル濃度に対するカリウムイオンのモル濃度の比が、0.16〜0.4である、自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物及び食器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテル、レストラン、給食センター、社員食堂等の厨房では、食器、調理器具、容器の洗浄の機械化・自動化が進み、それに伴い、自動食器洗浄機が普及している。従来、自動食器洗浄機用の洗浄剤としては、苛性アルカリ、トリポリ燐酸ナトリウム、珪酸塩、及び高分子物質等を含有する洗浄剤が用いられている。
【0003】
一般に、業務用自動食器洗浄機による洗浄の際には、洗浄剤は供給装置によって業務用自動食器洗浄機内部に一定量任意に移送され、適正な洗浄液の濃度が維持される。洗浄剤が液体である場合は、業務用自動食器洗浄機専用のチューブを洗浄剤が充填されたプラスチック等の容器の中に直接差し込み、吸い上げて供給する。また、洗浄剤が固体や粉末状である場合は、業務用自動食器洗浄機専用ホッパーに洗浄剤が充填されたプラスチック等の容器ごと決められた方向にセットして、或いはパウチ容器等に充填された洗浄剤を業務用自動食器洗浄機専用ホッパーに移しかえて、水や温水をスプレーやシャワーなどで洗浄剤に噴霧して、溶解した洗浄液を業務用自動食器洗浄機内部へ供給する。
【0004】
業務用の食器自動洗浄機等の洗浄機においては、洗浄用に使用される洗剤の濃度を適正に管理する必要があり、例えば洗剤自動供給装置にセットされた洗剤を自動洗浄機の洗浄槽に適宜供給して、当該自動洗浄機において使用される洗剤溶液が所定の洗剤濃度に保持されるようにしている。このような洗浄機においては、洗剤として粉粒状の洗剤を用いることが多く、粉粒状の洗剤は、溶出ホッパーを介して自動洗浄機の洗浄槽に供給されることになる。特許文献1には、洗剤等の被溶出物を供給された溶出液に溶出させて溶解液を得るための溶出ホッパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−105305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の溶出ホッパーは、内部に収容された洗浄剤を、溶出液を全体に容易に行きわたらせつつ無理なく溶出させることにより、洗浄剤の溶解液を効率良く得ることができるものであるが、洗浄剤によっては、一度溶解した洗浄液が温度や硬度などの影響で溶解性の悪化が考えられ、溶解水の温度低下などによるゲル化物や結晶の発生で供給機から洗浄機への経路で詰まりを生ずる場合がある。
【0007】
本発明の課題は、特許文献1のような特定の溶出ホッパーに適した自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物であって、食器洗浄機用洗浄剤の洗浄性能を低下させることがなく、洗浄剤を低温の水を使用した場合や温度変化がある条件でも供給機から洗浄機への洗浄剤溶液を安定して供給し、洗浄剤水溶液の滲み出しを少なくすることで洗浄機の洗浄剤濃度上昇を抑える食器洗浄機用洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粉末洗浄剤組成物を収容する溶出ホッパーを備えた自動洗浄機用の粉末洗浄剤組成物であって、
前記溶出ホッパーが、下端部分に排出口を有する有底筒状体からなるホッパー本体と、該ホッパー本体の内側に配置されて粉末洗浄剤組成物を収容する有底筒状体からなる内側収納容器と、該内側収納容器に収容される粉末洗浄剤組成物に溶出水を供給する給水ノズルを含んで構成される溶出ホッパーであり、
ナトリウムイオンのモル濃度に対するカリウムイオンのモル濃度の比が、0.16〜0.4である、
自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、粉末洗浄剤組成物を収容する溶出ホッパーを備えた自動洗浄機を用いた食器の洗浄方法であって、
前記溶出ホッパーが、下端部分に排出口を有する有底筒状体からなるホッパー本体と、該ホッパー本体の内側に配置されて粉末洗浄剤組成物を収容する有底筒状体からなる内側収納容器と、該内側収納容器に収容される粉末洗浄剤組成物に溶出水を供給する給水ノズルを含んで構成される溶出ホッパーであり、
前記粉末洗浄剤組成物がナトリウムイオンのモル濃度に対するカリウムイオンのモル濃度の比が0.16〜0.4の粉末洗浄剤組成物である、
食器の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の溶出ホッパーを備えた自動洗浄機で用いることで、優れた洗浄力と溶解性を示す、自動洗浄機用の粉末洗浄剤組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る溶出ホッパーの構成を説明する略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物>
本発明の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物は、アルカリ剤を40〜90質量%含有することが好ましい。なかでも、炭酸塩及び珪酸塩から選ばれる1種以上のアルカリ剤を、組成物中、40〜90質量%、更に43〜85質量%、より更に45〜60質量%含有することが好ましい。
【0013】
炭酸塩としては、炭酸アルカリ金属塩が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。また、珪酸塩としては、珪酸アルカリ金属塩が好ましく、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等が挙げられる。
【0014】
本発明の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物は、キレート剤を1〜50質量%含有することが好ましい。なかでも、有機キレート剤を、組成物中、1〜50質量%更に10〜40質量%、より更に20〜30質量%含有することが好ましい。
【0015】
有機キレート剤は、有機酸又はその塩が好ましく、クエン酸又はその塩、エチレンジアミンテトラ酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩、及びL−グルタミン酸二酢酸又はその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、クエン酸三ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸四ナトリウム、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム、及びL−グルタミン酸二酢酸四ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0016】
本発明の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物は、芒硝、界面活性剤、漂白剤、酵素、消泡剤、防腐剤、防錆剤、殺菌剤、抗菌剤、色素、香料、水溶性ポリマー、ハイドロトロープ剤等を配合することができる。
【0017】
本発明の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物に配合される界面活性剤は、目的に応じて、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができるが、洗浄性の観点からは、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0018】
本発明に使用できるノニオン界面活性剤は特に限定されるわけではないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマー、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミスチリン酸ジエタノールアミド、ミスチリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルグルコシド類、アミンオキサイド類、等があげられ、特に、洗浄性の観点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマーが好ましい。これらノニオン界面活性剤は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ノニオン界面活性剤の含有量は、組成物中、0.1〜10質量%が好ましく、洗浄性と他の成分とのバランスや経済性の点から、0.5〜5質量%がより好ましい
【0020】
本発明の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物に配合される水溶性ポリマーは、アクリル酸のホモポリマー又はその塩、及びアクリル酸とマレイン酸のコポリマー又はその塩から選ばれるポリマーが好ましい。具体的には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、アクリル酸とマレイン酸のコポリマー、アクリル酸とマレイン酸のコポリマーのナトリウム塩、アクリル酸とマレイン酸のコポリマーのカリウム塩等が挙げられ、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、アクリル酸とマレイン酸のコポリマーのナトリウム塩、アクリル酸とマレイン酸のコポリマーのカリウム塩がより好ましい。アクリル酸とマレイン酸のコポリマーは、アクリル酸/マレイン酸のモル比が99/1〜1/99、更に90/10〜10/90であることが好ましい。
【0021】
【0022】
本発明の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物は、該組成物総量中において、ナトリウムイオンのモル濃度(以下、MNaと表記する)に対するカリウムイオンのモル濃度(以下、MKと表記する)の比、すなわちMK/MNaが、0.16〜0.4であり、好ましくは0.2〜0.35、より好ましくは、0.25〜0.35である。本発明では、MK/MNaが、前記範囲であれば、本発明のホッパーに使用した場合、作用機作の詳細は不明であるが、驚くべき事に、洗浄剤水溶液の滲み出しを少なくすることができ、洗浄機の洗浄剤濃度上昇を抑えることができる。
【0023】
組成物中のMKやMNaは、アルカリ剤、キレート剤、その他のビルダー等として配合される成分に依存する。本発明では、MK/MNaが前記範囲となるように組成を調整する必要がある。組成物中のMK及びMNaは、配合成分が既知の場合は、計算により求めることができる。また、配合成分が未知の場合は、公知の原子吸光分析法による金属定量分析により求めることができる。
【0024】
K/MNaが前記範囲にあることで、保存安定性も良好となり、耐ケーキング性にも優れたものとなる。また、アルカリ度が適切となり、洗浄性の面でも好ましい。
【0025】
本発明の粉末洗浄剤組成物において、カリウム塩は、塩全体における比率を高くすることが溶解性の面では好ましい。無機塩、有機塩が組成物の5〜99質量%を占める場合、塩の全量中、カリウム塩の比率が10〜50モル%の割合であることが好ましく、より好ましくは15〜40モル%の割合でカリウム塩が含まれることが好ましい。特に好ましくは、20〜30モル%の割合でカリウム塩が含まれることが好ましい。
【0026】
自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物の無機塩、有機塩は、結晶水を持たないものが好ましく、例えば、無水珪酸塩や無水クエン酸塩などの方が、滲み出し量が少なく洗浄剤濃度をコントロールする面でより好ましい。
【0027】
本発明における自動食器洗浄機用粉末洗浄剤組成物は、特に限定されるものではないが、以下のような方法で製造することも出来る。
1)攪拌混合装置内に粉体成分を入れ、攪拌しながら液体成分を滴下、噴霧し粉末洗浄剤組成物を得る方法
2)各成分を混合したスラリー状水溶液を噴霧乾燥することにより粉末洗浄剤組成物を得る方法
【0028】
各成分の攪拌、混合を行う装置としては、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0029】
本発明の粉末洗浄剤組成物は、粉立ち防止性、粉末物性、溶解性等の点から、平均粒径が3000μm以下であることが好ましく、50〜3000μmであることがより好ましい。また、粒径100〜2000μmの粒子の割合が90質量%以上であることが更に好ましい。
【0030】
本発明の粉末洗浄剤組成物は、嵩密度が0.6〜1.2g/cm3であることが好ましい。
【0031】
<溶出ホッパー>
本発明の粉末洗浄剤組成物は、特定の溶出ホッパーを備えた自動洗浄機用である。前記溶出ホッパーは、下端部分に排出口を有する有底筒状体からなるホッパー本体と、該ホッパー本体の内側に配置されて粉末洗浄剤組成物を収容する有底筒状体からなる内側収納容器と、該内側収納容器に収容される粉末洗浄剤組成物に溶出水を供給する給水ノズルを含んで構成される。
【0032】
より詳細には、前記溶出ホッパーは、
下端部分に排出口を有する有底筒状体からなるホッパー本体と、該ホッパー本体の内側に配置されて粉末洗浄剤組成物を収容する有底筒状体からなる内側収容容器と、該内側収容容器に収容される粉末洗浄剤組成物に溶出水を供給する給水ノズルとからなり、
前記内側収容容器は、その筒状の側壁部の少なくとも一部に、前記粉末洗浄剤組成物の溶解液が通過可能な多数の孔が開口形成されると共に前記ホッパー本体の内周面との間に前記排出口に向かう流水空間を保持して配置される部分を有しており、前記給水ノズルから溶出水を供給して前記内側収容容器に収容された粉末洗浄剤組成物を溶出させ、得られた溶解液を前記側壁部の多数の孔及び前記流水空間を介して前記排出口に向けて前記ホッパー本体の下部に流下させる溶出ホッパー〔以下、溶出ホッパー(I)という〕が好ましい。前記給水ノズルは、内側収容容器に収容される粉末洗浄剤組成物の上方、側方、下方いずれに配置されていても良いが、粉末洗浄剤組成物に溶出水を均一に接触させる観点から、粉末洗浄剤組成物の上方に配置するのが好ましい。
【0033】
溶出ホッパー(I)は、ホッパー本体の内部に収容された洗剤等の粉末洗浄剤組成物を、溶出液を全体に容易に行きわたらせつつ無理なく溶出させることにより、粉末洗浄剤組成物の溶解液を効率良く得ることができるものであるが、本発明の粉末洗浄剤組成物は、溶出ホッパー(I)に用いられることで、溶解液の量や性状が適正で安定した供給が可能となり、より効果的に優れた洗浄力を得ることができる。
【0034】
溶出ホッパー(I)において、更に、前記ホッパー本体は、矩形又は正方形の平面形状を有しており、前記内側収容容器は、一対の多孔板を向かい合わせに立設配置して一方の対向する一対の側壁面とすると共にその下端縁部を底壁部となる平板部材を介して連結した断面コの字状の部材を、前記ホッパー本体の本体側壁部の対向する一方の内壁面に跨るように取り付けて、当該本体側壁部の対向する一対の内壁面と一対の多孔板とによって四方が囲まれる矩形又は正方形の平面形状を備える有底筒状体となっているものが好ましい。
【0035】
また、溶出ホッパー(I)には、前記内側収容容器の少なくとも一部に設けられた多数の孔による開口面積を調整する開口量調整手段が設けられていることが好ましい。
【0036】
また、溶出ホッパー(I)は、前記内側収容容器の底壁部に、前記粉末洗浄剤組成物の溶解液が通過可能な多数の孔が開口形成されていることが好ましい。
【0037】
上記溶出ホッパー(I)は、本発明の粉末洗浄剤組成物を粉末洗浄剤組成物とし、洗剤溶液を前記溶解液として食器洗浄機等の洗浄機に供給する装置に組み込まれて用いられるのが好ましい。
【0038】
かかる溶出ホッパー(I)の一例の概略を図1に示す。溶出ホッパー10は、図1に示すように、下端部分に排出口11を有する有底筒状体からなるホッパー本体12と、ホッパー本体12の内側に配置されて粉末洗浄剤組成物13を収容する有底筒状体からなる内側収容容器14と、内側収容容器14に収容される粉末洗浄剤組成物13の上方に配置されて溶出水15を供給する給水ノズル16とによって構成されている。また内側収容容器14は、その筒状の側壁部17の少なくとも一部に、粉末洗浄剤組成物13の溶解液である洗剤溶液18が通過可能な多数の孔19が開口形成されると共にホッパー本体12の内周面との間に排出口11に向かう流水空間20を保持して配置される部分を有しており、給水ノズル16から溶出水15を供給して内側収容容器14に収容された粉末洗浄剤組成物13を溶出させ、得られた洗剤溶液18を内側収容容器14の側壁部17の多数の孔19及び流水空間20を介して排出口11に向けてホッパー本体12の下部に流下させるようになっている。ホッパー本体12は、縦50〜1000mm程度、横50〜1000mm程度の矩形又は正方形の平面形状を有する、50〜1000mm程度の高さの筒状の本体側壁部21の下端部に、扁平な4角錐形状の本体底壁部22を接合一体化してなるもので、本体底壁部22を構成する略三角形状の4面は、0〜70°程度の角度で下方に傾斜する傾斜面となっていると共に、傾斜面の下端部分には、タケノコ状に下方に突出させて排出スリーブ(図示せず)が設けられて、ホッパー本体12の下端部分に排出口11が形成される。
【0039】
溶出ホッパー10によれば、ホッパー本体12の内部に収容された粉末洗浄剤組成物13を、溶出液15を全体に容易に行きわたらせつつ無理なく溶出させることにより、洗剤溶液18を効率良く得ることが可能になる。すなわち、本実施形態によれば、内側収容容器14に収容された粉末洗浄剤組成物13に対して、溶出水15が上方から供給され、溶出水15は例えば重力や毛管現象等によって、横方向に拡がりつつ流路を形成しながら下方に自然に浸透してゆき、無理なく全体に容易に行きわたって、粉末洗浄剤組成物13の全体から当該洗剤13を効率良く溶出させることが可能になる。また、本実施形態によれば、内側収容容器14に収容された粉末洗浄剤組成物13は、上方から自然に流下する溶出水15によって上方部分の粉末洗浄剤組成物13から順次溶出されることになり、下方から当該粉末洗浄剤組成物13に向けて勢い良く溶出水15が噴射されることがないので、未溶解の粉末洗浄剤組成物を含有する高濃度スラリーとして排出口11に落下することがなく、したがって排出口11よりも下流側に配設された配管等を詰まらせることがない。
【0040】
尚、溶出水15を供給する給水ノズル16は、内側収容容器14の側壁部17の一部を貫通して内側収容容器14に収容された粉末洗浄剤組成物13に供給されるように配置しても良いし、内側収容容器14の底部26の一部を貫通して内側収容容器14に収容された粉末洗浄剤組成物13に供給されるように配置しても良い。
【0041】
溶出ホッパー(I)は、例えば、特開2004−105305号公報を参照することができる。
【0042】
<食器の洗浄方法>
本発明の食器の洗浄方法は、本発明の粉末洗浄剤組成物を収容する溶出ホッパーを備えた自動洗浄機を用いた食器の洗浄方法である。本発明の洗浄方法で用いられる溶出ホッパーは、下端部分に排出口を有する有底筒状体からなるホッパー本体と、該ホッパー本体の内側に配置されて粉末洗浄剤組成物を収容する有底筒状体からなる内側収納容器と、該内側収納容器に収容される粉末洗浄剤組成物に溶出水を供給する給水ノズルを含んで構成される溶出ホッパー、好ましくは溶出ホッパー(I)である。また、本発明の洗浄方法で用いられる粉末洗浄剤組成物は、ナトリウムイオンのモル濃度に対するカリウムイオンのモル濃度の比が0.16〜0.4の粉末洗浄剤組成物である。
【0043】
本発明の洗浄方法では、粉末洗浄剤組成物は、0.04〜0.5質量%の濃度で使用されるのが好ましく、経済性、洗浄性の観点から、0.05〜0.3質量%がより好ましく、0.07〜0.25質量%が更に好ましい。食器の洗浄時間は、洗浄性の観点から、10秒〜3分が好ましく、さらに好ましくは、20秒〜2分である。洗浄液の洗浄温度は、短時間での洗浄性を高めるためには、非常に重要で40℃以上が好ましく、特に40〜70℃が好ましい。食器は洗浄された後、通常、同じ業務用食器洗浄機にて速やかに水、温水、又は70〜90℃の熱水で濯ぎが行われる。本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、リンス剤を用いなくても、食器の乾燥を速め、ウォータースポットの低減を可能にすることができるので、濯ぎは水、温水又は70〜90℃の熱水のみで行うことができる。
【0044】
業務用食器洗浄機では、食器を連続洗浄する場合、洗浄液はポンプで循環させて繰り返し使用し、洗浄することができる。
【0045】
業務用食器洗浄機により食器を連続洗浄する場合、食器による洗浄液の持ち出しや、洗浄槽への濯ぎ水のキャリーオーバーなどによって、洗浄回数とともに洗浄液の濃度が減少する。適切な洗浄液の濃度を維持するため、自動供給装置によって適正濃度となるように洗浄機用洗浄剤組成物が供給される。
【0046】
洗浄機用洗浄剤組成物の自動供給装置としては、前記特定の溶出ホッパーを備えたものであれば特に限定されるものではないが、洗浄液の濃度をセンシングし、シグナルを受信して、水や温水をスプレーやシャワー状で洗浄機用洗浄剤組成物に噴霧して、必要量の洗浄機用洗浄剤組成物を供給するものが挙げられる。
【0047】
こうした自動供給装置は、1日の洗浄回数が非常に多い業務用には好適に用いられ、洗浄回数毎の手投入に比べ、格段に手間が省けるという利点があり、またそれ以外に、1日中(洗浄中)適正濃度を維持することが容易となる。
【実施例】
【0048】
〔1〕粉末洗浄剤組成物の製造方法
表1に示す粉末洗浄剤組成物成分である、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)ならびにクエン酸ナトリウムを所定量卓状ポータブルミキサーに投入し、撹拌しながらノニオン界面活性剤を少しずつ滴下して、所定量滴下終了後、10分間撹拌を続ける。その後撹拌を継続しながら、表1の組成となるように他の成分を添加し、すべての成分を仕込んだ後、さらに10分間撹拌を続ける。得られた混合物を、粒径2000μm以下のものだけを篩い分けして粉末洗浄剤組成物とした(合計1000g)。
【0049】
〔2〕洗浄性評価
・モデル汚垢の作製
(変性卵黄汚れ)
磁器製の皿(新品、直径20cm)の中央部に、卵黄2gを刷毛で直径約10cmの円形に均一塗布し、80℃に設定した電気乾燥機に入れた。30分後、卵黄を塗布した磁器製皿を取り出して、自然冷却したものを変性卵黄汚れ(タンパク汚れ)のモデル汚垢として洗浄性評価に用いた。
【0050】
(油汚れ)
ポリプロピレン製の皿(新品、直径20cm)の中央部に、市販サラダ油をスダンIV 0.1質量%にて着色したもの5gを直径約10cmの円形に均一塗布し、油汚れのモデル汚垢として、洗浄性評価に用いた。
【0051】
・評価方法
業務用食器洗浄機〔三洋電機(株)製 SANYO DR53〕の洗浄槽(38L)に、表1の粉末洗浄剤組成物57gを投入して、50℃の温水で溶解させた。専用ラックにモデル汚垢を塗布した皿4枚(変性卵黄汚れ2枚、油汚れ2枚)をセットして、50℃の洗浄液にて40秒間洗浄した後、専用ラックから磁器製皿(変性卵黄汚れ2枚)を取り出し、エリスロシン色素1質量%水溶液にて着色させて、以下に示した判定基準にて洗浄性を評価した。またポリプロピレン製皿(油汚れ2枚)は、ノルマルヘキサン100gにて完全にすすぎ、ディスポーセルに取り出し、HITACHI製分光光度系(520nm)にて測色を実施。検量線より皿1枚当たりの油の残存量(mg)を算出、以下に示した判定基準にて洗浄性を評価した。
【0052】
*変性卵黄汚れ洗浄性の判定基準
◎;着色痕が全く認められず、完全に汚れが除去されており、食器の再生使用ができる
〇;着色痕を認めるが、汚れが除去されており食器の再生使用ができる
△;明らかに着色痕を認め、汚れが残留しており食器の再生使用ができない
×;殆どの皿に着色痕が認められ、多くの汚れが残留しており食器の再生使用ができない
【0053】
*油汚れ洗浄性の判定基準
○;油の残存量が20mg未満であり、食器の再生使用ができる
△;油の残存量が20mg以上30mg未満であり、食器の再生使用ができない
×;油の残存量が30mg以上であり、食器の再生使用ができない
【0054】
〔3〕ホッパー適性評価
・評価方法
自動洗浄機の溶出ホッパー(花王(株)製 RH−2005、概略は図1の通り、上部から水をスプレーするタイプ)の下部にホースを取り付け樹脂製結束バンドで閉じる。表1の粉末洗浄剤組成物を2kgホッパーに入れて表面をスパーテルで平らにならし、適正温度に調整した水道水を1.7L(組成物が浸る程度)静かに注ぐ。10分放置後水を抜き出し、ホッパー内部に含水した組成物からの滲み出した液を、接水5分後から25分後の20分間採取し、採取した滲み出し液の全質量を測定しこれを滲み出し量とした。また、得られた滲み出し液の状態を観察し、以下の基準で性状を判定した。この評価では、滲み出し量が少ないこと、また、滲み出し液が低粘度で流動性があることが、良好であることを意味する。
【0055】
*滲み出し液の性状判定基準
○:溶液状で流動性あり
△:スラリー状で流動性あり
×:ゲル化物で流動性無し
【0056】
【表1】

【0057】
表中の成分は以下のものである。
・AAポリマー:アクリル酸ホモポリマーのナトリウム塩〔重量平均分子量4000、ソカランPA25(BASFジャパン(株)製)〕
・MAポリマー:アクリル酸/マレイン酸コポリマーのナトリウム塩〔重量平均分子量70000、アクリル酸/マレイン酸コポリマー比=70/30、ソカランCP−5(BASFジャパン(株)製)〕
・ノニオン界面活性剤:PO・EO・POブロックポリマー、プルロニックRPE2520(BASFジャパン(株)製)
【符号の説明】
【0058】
10 溶出ホッパー
11 排出口
12 ホッパー本体
13 粉末洗浄剤組成物
14 内側収容容器
15 溶出水
16 給水ノズル
17 側壁部
18 洗剤溶液(粉末洗浄剤組成物が溶出された溶解液)
19 多数の孔
20 流水空間
21 本体側壁部
22 本体底壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末洗浄剤組成物を収容する溶出ホッパーを備えた自動洗浄機用の粉末洗浄剤組成物であって、
前記溶出ホッパーが、下端部分に排出口を有する有底筒状体からなるホッパー本体と、該ホッパー本体の内側に配置されて粉末洗浄剤組成物を収容する有底筒状体からなる内側収納容器と、該内側収納容器に収容される粉末洗浄剤組成物に溶出水を供給する給水ノズルを含んで構成される溶出ホッパーであり、
前記粉末洗浄剤組成物中に含まれるナトリウムイオンのモル濃度に対するカリウムイオンのモル濃度の比が、0.16〜0.4である、
自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物。
【請求項2】
炭酸塩及び珪酸塩から選ばれる1種以上のアルカリ剤を40〜90質量%含有する請求項1記載の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物。
【請求項3】
有機キレート剤を1〜50質量%含有する請求項1又は2記載の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物。
【請求項4】
有機キレート剤が、クエン酸三ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸四ナトリウム、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム、及びL−グルタミン酸二酢酸四ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の自動洗浄機用粉末洗浄剤組成物。
【請求項5】
粉末洗浄剤組成物を収容する溶出ホッパーを備えた自動洗浄機を用いた食器の洗浄方法であって、
前記溶出ホッパーが、下端部分に排出口を有する有底筒状体からなるホッパー本体と、該ホッパー本体の内側に配置されて粉末洗浄剤組成物を収容する有底筒状体からなる内側収納容器と、該内側収納容器に収容される粉末洗浄剤組成物に溶出水を供給する給水ノズルを含んで構成される溶出ホッパーであり、
前記粉末洗浄剤組成物が該組成物中に含まれるナトリウムイオンのモル濃度に対するカリウムイオンのモル濃度の比が0.16〜0.4の粉末洗浄剤組成物である、
食器の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−92194(P2012−92194A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239482(P2010−239482)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】