説明

自動溶出装置

【課題】長時間の溶出工程を有する試料を効率的に多数、分析することのできる自動溶出装置を提供する。
【解決手段】下記(1)〜(3)の機構を具備することを特徴とする自動溶出装置。
(1)容器と、該容器の内容物を密封し得る栓と、該栓及び該容器を振蘯させる振蘯器と
を有し、該栓には溶媒供給管及び空気抜きが接続されている振蘯機構
(2)機構(1)の容器に溶媒を供給するための溶媒供給管及び溶媒供給手段と、溶媒槽
とを有し、溶媒供給管には溶媒流量を測定する溶媒流量計が具備されている溶媒供
給機構
(3)前記機構(1)及び(2)を起動するために必要なデータを入力する入力部と、前
記機構(1)及び(2)を制御するために必要なデータを記憶する記憶部と、前記
入力部及び前記記憶部のデータに基づいて前記機構の制御情報を算出する算出部と
、前記制御情報を前記機構(1)及び(2)に発信する発信部とを有する制御機構

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料から測定物質を溶出させる自動溶出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌汚染対策法に指定された土壌汚染物質としては、例えば、カドミウム、全シアン、鉛、六価クロム、砒素、アルキル水銀、PCB、セレンなどが挙げられ、土壌中における該物質の含有量を測定する方法については環境庁告示第46号(非特許文献1)で詳細に定められている。具体的には、採取した試料(土壌)を風乾、粗砕したのち、目開き2mmの篩を通過させ、続いて、試料が10%となるように水に混合したのち、常温・常圧で毎分約200回、4〜5cmの幅で6時間連続振蘯させて、試料から測定物質である土壌汚染物質を溶出させた検液を得る溶出工程と、該検液をそれぞれの測定物質に応じて分析する分析工程とからなる測定方法が例示される。
【0003】
【非特許文献1】土壌の汚染に係る環境基準について、付表(平成3年8月23日、環境庁告示第46号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定方法が、長時間の溶出工程を含む場合、測定担当者の昼間の勤務が8時間程度に限られていることから、土壌汚染物質の測定方法では1つ程度の試料しか測定できず、交代制にするなどしなければ多くの試料を測定できないという課題があった。
かかる課題を解決するために、多くの振蘯器を並列的に並べて、多くの試料について同時に溶出工程を実施する方法も考えられるが、分析工程を速やかに実施しないと、例えば、試料から測定物質がさらに溶出する、例えば、溶出された測定物質が試料に再び吸着するなどの理由により、検液間で異なる測定結果を与える場合があり、迅速に分析工程が実施されない限り、多くの試料数を溶出させることができないという問題があった。
本発明の目的は、長時間の溶出工程を有する試料を効率的に多数、測定することのできる自動溶出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、下記(1)〜(3)の機構を具備することを特徴とする自動溶出装置である。
(1)容器と、該容器の内容物を密封し得る栓と、該栓及び該容器を振蘯させる振蘯器と
を有し、該栓には溶媒供給管及び空気抜きが接続されている振蘯機構
(2)機構(1)の容器に溶媒を供給するための溶媒供給管及び溶媒供給手段と、溶媒槽
とを有し、溶媒供給管には溶媒流量を測定する溶媒流量計が具備されている溶媒供
給機構
(3)前記機構(1)及び(2)を起動するために必要なデータを入力する入力部と、前
記機構(1)及び(2)を制御するために必要なデータを記憶する記憶部と、前記
入力部及び前記記憶部のデータに基づいて前記機構の制御情報を算出する算出部と
、前記制御情報を前記機構(1)及び(2)に発信する発信部とを有する制御機構
【発明の効果】
【0006】
本発明の自動溶出装置は、長時間の振蘯を要する溶出工程を有する測定方法において、任意の時刻に溶媒が供給されて振蘯を開始できることから、例えば、多数の試料を予め装置内に設置しておき、夜間などに溶出工程を時間間隔を置いて順次、開始させることにより、昼間に検液が順次得られ、多くの試料を順次、分析工程に供することができる。このことによっり、所望の時間内に多くの試料を測定することができ、長時間の振蘯を要する溶出工程を有する測定方法を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施態様である図1に基づいて詳細に説明する。
本発明は、振蘯機構(1)、溶媒供給機構(2)及び制御機構(3)からなる自動溶出装置であり、振蘯機構(1)は、溶媒供給管(1−2)を介して溶媒供給機構(2)と接続しており、振蘯機構(1)及び溶媒供給機構(2)を制御するために必要な起動情報は、制御機構(3)から無線及び/又は有線を介して振蘯機構(1)及び溶媒供給機構(2)の各部に電気信号又は光信号として伝達される。尚、無線及び/又は有線は図面が煩雑になることから記載を省略した。
【0008】
振蘯機構(1)について、さらに詳細に説明するために図2に基づいて説明する。振蘯機構(1)は、容器(1−1)と、該容器の内容物を密封し得る栓(1−4)と、該栓(1−4)及び該容器(1−1)を振蘯させる振蘯器(1−5)とを有する。
振蘯器(1−5)は、栓(1−4)及び容器(1−1)を振蘯させる部位と、振蘯によって栓及び容器がはずれたり、容器の内容物が漏洩しないような部位とを有するものである。振蘯器(1−5)が往復運動式であれば、例えば、栓保持部(1−5−1)及び容器保持部(1−5−2)が固定部(1−5−3)を介して連結し、固定部がスライド式になっているので容器を栓保持部(1−5−1)及び容器保持部(1−5−2)の間に挟み込む仕組みになっており、振蘯器(1−5)が上下に往復運動で振蘯することによって容器も上下し、試料から溶媒に測定物質を溶出させることができるのである。
振蘯器を振蘯させる方法としては、例えば、往復運動式、回転式などが挙げられる。往復運動式及び回転式などの振蘯器を振蘯させる方法は、例えば、特開昭63−7829号公報、実開平5−3929号公報に記載の方法及びこれに準じる方法などが挙げられる。
【0009】
栓(1−4)には溶媒供給管(1−2)及び空気抜き(1−3)が接続され、容器(1−1)に含まれる土壌などの試料及び溶出に用いられる溶媒などの内容物を密封し得る栓であり、通常、溶媒供給管(1−2)及び空気抜き管(1−3)が栓(1−4)を貫通するように具備されている。
栓(1−4)の形状は、容易に密封される形状であり、例えば、図2に栓(1−4)の断面が示されているように、円錐の頂部が底面に略平行に切断された形状である。中でも、図3の如く、多段状であると、容器の容量によって容器の口の大きさが変わっても、同じ栓で対応できることから好ましい。
【0010】
容器(1−1)は、土壌などの試料及び溶出に用いる溶媒などを収納する容器であり、容器を振蘯させることによって測定物質を溶媒に溶出させる。容器としては、例えば、ガラス瓶、例えば、ポリエチレン瓶、ポリプロピレン瓶などの樹脂製の瓶などが挙げられる。
容器(1−1)の形状は、栓によって密封されれば、特に限定されないが、広口瓶の形状のものが振蘯の際にも安定に容器を保持でき、試料の収納などの取り扱いが容易で、入手も容易なことから好ましい。
【0011】
図1に基づいて溶媒供給管を説明すると、溶媒供給管(1−2)は、溶媒供給機構(2)の溶媒槽(2−3)からポンプ(2−1)及び栓(1−4)を経由して容器(1−1)に接続されており、溶媒槽(2−3)から容器(1−1)に溶媒を供給するラインである。
溶媒供給管としては、例えば、フッ素樹脂チューブ、シリコーンチューブ、ポリエチレンチューブ、ポリプロピレンチューブ、合成ゴムチューブなどの樹脂管、例えば、ガラス管、例えば、鋼管、銅管、ステンレス管などの金属管等が挙げられる。溶媒供給管として前記材料の複合材料や、これらの管の組み合わせを用いてもよい。中でも、樹脂管は弾力性があり、容器が振蘯する際に溶媒供給管を容易に連動させることができることから好ましい。
溶媒供給管(1−2)には、溶媒が供給される際に容器から空気を抜いた後、振蘯により内容物が容器から漏洩しないよう密封するために、通常、栓の外部に自動弁(1−2−A)が設置される。自動弁(1−2−A)としては、例えば、溶媒の供給が完了した旨の電気信号を制御機構(3)から受信すれば閉止する弁、例えば、溶媒供給時刻を予め設定しておき、制御機構(3)から溶媒を供給する旨の信号を受信したら予め設定された時刻で閉止する弁などが挙げられる。
【0012】
空気抜き管(1−3)は、図2に示したように、容器(1−1)から栓(1−4)を経由して大気中に開放され、容器(1−1)に溶媒を供給する際に、溶媒供給前の容器から空気を抜くための管である。
空気抜き管(1−3)としては、前記溶媒供給管と同様の管が例示される。
空気抜き管(1−3)には、溶媒が供給される際に容器から空気を抜いた後、振蘯により内容物が容器から漏洩しないよう密封するために、通常、栓の外部に自動弁(1−3−A)が設置される。自動弁(1−3−A)としては、例えば、溶媒の供給が完了した旨の電気信号を制御機構(3)から受信すれば閉止する弁、例えば、溶媒供給時刻を予め設定しておき、制御機構(3)から溶媒を供給する旨の信号を受信したら予め設定された時刻で閉止する弁などが挙げられる。
【0013】
振蘯機構(1)において、溶媒供給管と、該容器から空気抜くための空気抜き管と、栓と、保持具と、振蘯器との組み合わせは、多くのサンプルを処理するために、図1の如く複数であることが、好ましい。
溶媒供給管の配置は、図1の(a)のみから構成されているように1本の溶媒供給管に容器がそれぞれ接続されていても、(a)(b)(c)・・・のユニットに前記組み合わせが配置され、それぞれのユニットごとに溶媒供給管が配置される形式でもよい。
同じ分析を複数の試料で測定する必要がある場合、このようにユニットになっていると、1つのユニットについて同じ溶出条件で行い、ユニットごとに振蘯開始時刻を順次、設定すればよい。
【0014】
溶媒供給機構(2)は、溶媒の貯槽である溶媒槽(2−3)と、機構(1)の容器(1−1)に溶媒を供給するための溶媒供給管(1−2)と、溶媒供給管を経由して容器に溶媒を供給するための溶媒供給手段(2−1)とを有し、溶媒供給管(1−2)には溶媒流量を測定する溶媒流量計(2−2)が具備されている。
溶媒供給手段(2−1)としては、例えば、ポンプや、溶媒を圧力によって送液する手段などが挙げられる。図1ではポンプが例示されている。
【0015】
溶媒供給管には適宜、自動弁が配置されており、例えば、制御機構の発信部(3−4)からの信号によって、ポンプ(2−1)が起動し、自動弁(2−1−A)が開放される。
溶媒流量計(2−2)は、容器への溶媒の供給量を測定する機器であり、例えば、制御部(3)から入力された溶媒供給量が信号によって溶媒流量計(2−2)に送られ、溶媒流量計(2−2)で検出された溶媒供給量が所望量に達すると、自動弁(2−1−A)が閉止されるなどの設定によって容器への溶媒の供給量が制御される。
【0016】
溶媒供給機構(2)には、溶媒供給管(1−2)に溶媒が残存して液ダレしたり、容器(1−1)が複数ある場合には溶媒供給管(1−2)に液が残らないように2番目以降の容器に正確な量で溶媒を供給するため、溶媒押出ライン(2−4)及び還流ライン(2−5)が具備されることが好ましい。
図1の左上部に例示したように、溶媒押出ライン(2−4)には、例えば、エアフィルター(2−4−2)を有するエアポンプ(2−4−1)などで空気によって残溶媒を押出す方法、例えば、窒素ボンベなどのガス圧により押出す方法(図示せず)などが挙げられる。また、溶媒押出ラインで押出された溶媒は、例えば、還流ライン(2−5)を経由して溶媒槽(2−3)に還流される。
【0017】
制御機構(3)は、前記機構を起動や停止などの制御するために必要なデータを入力する入力部(3−1)と、前記機構を制御するために必要なデータを記憶する記憶部(3−2)と、前記入力部及び前記記憶部のデータに基づいて前記機構の制御情報を算出する算出部(3−3)と、前記制御情報を(1)及び(2)に発信する発信部(3−4)とを有する。好ましい実施態様で各部の連携を以下に説明する。
入力部(3−1)に入力される必要なデータの具体例としては、溶出工程開始時刻、容器への溶媒供給量などが挙げられる。容器が複数ある場合には、容器を指定する番号、及びそれぞれの容器における溶出工程開始時刻及び溶媒供給量などが必要なデータの具体例として挙げられる。
記憶部(3−2)には、入力部から得られるデータが記憶される。また、入力部以外のデータとして予め、溶出工程開始時刻を基準として、例えば、各弁の開放に必要な時刻、振蘯器起動に必要な時刻、振蘯器の稼動時間などが決定されているのであれば記憶されていてもよく、さらに、弁の開放順序などのデータが記憶されていてもよい。
算出部(3−3)は、前記入力部及び前記記憶部のデータに基づいて前記機構の制御情報、例えば、ポンプの起動及び停止時刻、弁の開放及び閉止時刻、振蘯開始及び停止時刻などがCPU、MPU、マイクロコンピュータなどで算出される。
発信部(3−4)は、前記起動情報を有線及び/又は無線等で電気信号及び/又は光信号などで振蘯機構(1)及び溶媒供給機構(2)に発信する。尚、有線及び/又は無線は図示されていない。
【0018】
制御機構(3)には、さらに提示部を有していてもよく、提示部が入力部と同じ画面であってもよい。提示部による提示例を図5及び6に示す。
図5には、溶出工程開始時刻を入力及び提示する画面が示されており、現在の時刻が予め提示され、1番最初の容器の溶出工程開始時刻である運転開始時刻が入力されるようになっており、2番目以降の容器については、注入間隔で溶出工程開始時刻を入力するようになっている。もちろん、それぞれの容器について溶出工程開始時刻を入力できるような提示例でもよい。
図6には、容器への溶媒供給量の入力及び提示する画面が例示されている。
【0019】
例えば、測定物質を分析するために1ユニット(種類)につき1時間が必要な場合、1時間ごとに検液の振蘯が終了する必要がある。このような場合には、例えば、朝9時から作業を開始すると、8時間以内では表1に示したように2ユニットのサンプルが処理することが難しいが、本発明の自動溶出装置を用いると、表2のような設定を行うことにより、8ユニットの処理をすることができた。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本装置は、振蘯による溶出工程を要する測定方法に用いられ、例えば、土壌汚染物質の測定、廃棄物の測定(環境庁告示第13号、第14号)などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の自動溶出装置の概略図
【図2】振蘯機構(1)の1つ(容器1個)の断面図
【図3】振蘯機構(1)の栓の斜視図
【図4】振蘯機構(1)の振蘯器の斜視図
【図5】制御機構(3)の提示部及び入力部の画面例(溶出工程開始時刻)
【図6】制御機構(3)の提示部及び入力部の画面例(溶媒供給量)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)の機構を具備することを特徴とする自動溶出装置。
(1)容器と、該容器の内容物を密封し得る栓と、該栓及び該容器を振蘯させる振蘯器と
を有し、該栓には溶媒供給管及び空気抜きが接続されている振蘯機構
(2)機構(1)の容器に溶媒を供給するための溶媒供給管及び溶媒供給手段と、溶媒槽
とを有し、溶媒供給管には溶媒流量を測定する溶媒流量計が具備されている溶媒供
給機構
(3)前記機構(1)及び(2)を起動するために必要なデータを入力する入力部と、前
記機構(1)及び(2)を制御するために必要なデータを記憶する記憶部と、前記
入力部及び前記記憶部のデータに基づいて前記機構の制御情報を算出する算出部と
、前記制御情報を前記機構(1)及び(2)に発信する発信部とを有する制御機構
【請求項2】
栓が、多段状であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
溶媒供給機構(2)が、さらに溶媒押出ラインを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
溶媒供給機構(2)が、さらに還流ラインを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
機構(3)がさらに提示部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−205746(P2007−205746A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21872(P2006−21872)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【出願人】(592157098)ラボテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】