説明

自動生体分析器内部の温度制御システム

【課題】自動生体分析器内部の温度制御システムの提供。
【解決手段】本発明は、:
・通路上に位置する反応キュベット設置部を所定数含む反応キュベット用の土台、誘導装置及び段階的輸送手段、
・分析試料用土台回転台、
・所定量の試料及び反応物を採取して反応キュベット中に注入する手段である反応物用土台回転台、
・キュベット洗浄手段、
・測定結果を視覚的に読み取る手段、及び、プログラム済分析サイクルを実行可能なコンピュータ制御システム:
を本質的に含む自動生体分析器内部の温度制御システムに関する。
上記システムは実際、測定用反応物用土台回転台下部に連結され、かつ、内部に:
・入口空気偏向板、
・出口空気偏向板、
・入り口偏向板と出口偏向板の間の環状空気移動通路、及び、
・環状通路中で空気を循環させるための手段:
を含むためにシステム内の入口の空気と出口の空気の温度差を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料中の様々な物質を免疫学的に測定するための装置であって、ELISA,RIA,FIA,LIA,FPIA及び/又はCLIA等の測定を自動化可能な装置に関する。より正確には、本発明は、上記測定装置内の測定用反応物を温度制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は本出願人による特許文献1及び特許文献2中に既に記載されていて、これらの文献には実施された測定についての記載が含まれている。これらの公知の装置は、通路上に位置する反応キュベット設置部を所定数含む反応キュベット用の土台、誘導装置及び段階的輸送手段、分析試料用土台回転台、所定量の試料及び反応物を採取して反応キュベット中にこれを注入するための手段である反応物用土台回転台、キュベット洗浄手段、測定結果を視覚的に読み取るための手段、及び、あらかじめプログラムされた分析サイクルを実行可能なコンピュータ制御システムを本質的に含み、一種又は二種の反応物の測定に対応している、これらの公知の装置は、前者について毎時約120回、後者について毎時360回の速度で測定する。
【0003】
しかし、これらの免疫学的測定装置において、測定用反応物の保存に適した十分低い温度に測定用反応物用土台回転台を維持して、最適反応条件の維持を保証するための手段は何も備わっていない。
【0004】
特許文献3は、本発明の温度制御システムを設置するのに適切な自動機械に類似する自動機械に関する。その内部にある空気移動通路は非常に重要である。適切な温度を維持するためには、冷却された空気をカバー等のハウジング内に導入する空気冷却装置の使用が推奨される(この点に関しては、記載される図29及び図30、並びに、9ページ8〜10行目を参照)。
【0005】
しかし、上記解決策は、冷気入り口と熱気出口の温度差が比較的大きいため、比較的長い移動通路には適切でない。この温度勾配が、自動分析装置によって取得可能な生体測定の結果に対して悪影響を及ぼすのは明らかである。
【特許文献1】PCT特許出願WO−A−91/07662
【特許文献2】PCT特許出願WO−A−96/14582
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願EP−A−0864866
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来技術に照らして、本発明の重要な目的は、自動分析装置内部で使用される反応物の温度を、反応物の位置にかかわらず、分析中常に一定に制御かつ維持可能なシステムの提供である。
【0007】
本発明の更に重要な目的は、反応物を蒸発させない冷却空気の循環に基づいて、開放容器中の反応物の温度を制御可能なシステムの提供である。
【0008】
本発明によれば、温度制御システムが自動生体分析器内部に提供され、上記目的が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のことから、上記目的を達成するため、本発明は、
以下:
・通路上に位置する反応キュベット設置部を所定数含む反応キュベット用の土台、誘導装置及び段階的輸送手段、
・分析試料用土台回転台、
・所定量の試料及び反応物を採取して反応キュベット中にこれを注入するための手段である反応物用土台回転台、
・キュベット洗浄手段、
・測定結果を視覚的に読み取るための手段、及び、あらかじめプログラムされた分析サイクルを実行可能なコンピュータ制御システム:
を本質的に含む自動生体分析器内部の温度制御システムであって、
上記温度制御システムは、上記測定用反応物用土台回転台の下部に連結されていて、かつ、
上記システムはその内部に:
・少なくとも一つの入り口空気偏向板、
・少なくとも一つの出口空気偏向板、
・上記入り口偏向板と上記出口偏向板の間に位置する環状空気移動通路、及び、
・上記環状通路中で空気を循環させるための手段:
を含むために、上記温度制御システム内の入口の空気と出口の空気の温度差を小さくすることができる
ことを特徴とする温度制御システムに関する。
【0010】
ある好ましい実施形態において、上記システムは、本質的に環状で断面がU字型のカバーによって形成される。
【0011】
ある好ましい実施形態において、上記システムは、外側直立壁、内側直立壁、及び、上面が本質的に平面である底面水平壁を有するカバーによって形成される。
【0012】
後者の実施形態によれば、上記水平壁には少なくとも二つの開口部が環状空気移動通路中に互いに本質的に180°の位置にあいていて、上記空気偏向板が上記開口部上部の上記水平壁の上面上に設置されている。
【0013】
上記全ての場合において、各空気偏向板は、上部板、及び、上記水平壁を上記上部板に連結させる少なくとも一つのスペーサーからなることが有利である。
【0014】
また、上記上部板は、上記水平壁の上面と本質的に平行であってよい。
【0015】
また、上記全ての場合において、測定用反応物用土台回転台の下部には温度制御システムにつながる穴があいている。
【0016】
好ましくは、ボトル又は広口ビン等の容器中の測定用反応物は、回転台にあいている開口部の中のみに入っている。
【0017】
付随の図面は説明を目的とする例示として記載するものであり、制限を加えるものではない。これらの図面により、本発明についてより明瞭に理解可能となる。
【0018】
図1は、正常状態において取り付けられる自動生体分析器から外した状態の温度制御システムの透視立面図を示す。
【0019】
図2は、図1の断面A−Aを示す。
【0020】
図3は、出口空気偏向板を貫く図1の断面B−Bを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記温度制御システムは自動生体分析器内部に位置する。この自動分析器はヨーロッパ特許出願EP−A−0837331中に明瞭に記載され、この特許出願を参照すれば、上記制御システムが設置される技術的かつ構造的な範囲についての更に詳細な情報が得られるであろう。この自動分析器の概略的な構造は、検体試料用土台回転台、測定用反応物用土台回転台、並びに、所定量の試料及び所定量の反応物をそれぞれ採取して反応キュベット中に入れるための手段(PCT特許出願WO−A−96/14582中に記載されるものと同型)が取り付けられた骨組みを含む。
【0022】
使用される反応物は磁気ビーズ型であり、本発明による装置は、上記国際出願中に既に記載されるものと同型であって液体吸引/注入用針を含む、上記磁気ビーズを洗浄する又はすすぐ手段を垂直方向に含み、かつ、反応物の磁気ビーズを磁力によって引きつけて反応キュベットの壁に一時的に固定するための永久磁石を反応キュベットの通路の両側に設置して含む。上記洗浄手段は更に、反応キュベット中に基質を入れるための針を洗浄液注入/吸引用針の真下に設置して含む。
【0023】
PCT特許出願WO−A−00/16075中に既に記載されるものと同型の、測定結果を視覚的に読み取るための手段は、骨組み上の注入/洗浄手段の近傍に設置されている。この手段は発光によって作動する。
【0024】
本発明による装置は更に、長方形の通路上に位置する一連の反応キュベットを輸送するための手段であって、この手段の一方の端が一連の反応キュベットの自動供給及びこれらのキュベットの注入を目的とするものであるような手段を含む。
【0025】
この装置において、供給位置へ運搬された一連の反応キュベットは、完全な長方形の通路を、一種の反応物を測定する場合には二回、二種の反応物を測定する場合には三回必ず移動した後で放出される。本発明による装置は、PCT特許出願WO−A−96/14582中に記載されるのと同様に、完全に自動的に、毎時120回の測定速度で作動する。
【0026】
本発明は、測定用反応物用土台回転台の下に取り付けられた温度制御システムに関する(図示せず)。上記温度制御システムが検体試料用土台回転台の中にも設置されること、又は、他の任意の液体が自動生体分析器の中に存在することも明らかに考慮される。
【0027】
図1中に示すように、上記温度制御システムは、測定用反応物を支持する回転台の下を通過するであろう気流を隔離しているカバー1からなる。
【0028】
このカバー1は、中央開口部9が存在する中心部に多数の壁を更に含み、これらの壁が一緒になって環を形成している。構造上、中央開口部9を、特に(例えばカバー1上部の回転台のための)回転駆動軸、又は、上記回転台のための他の任意の駆動機構が貫通している。この環状形状は、外側直立壁6及び内側直立壁7が底面水平壁8で連結して組み立てられていることにより形成される。これについては、空気を容易に調節又は制御不可能とし、これにより温度も容易に調節又は制御不可能となるように角度を最小にするため、様々な形状をとるのが理想的であると考えられる。
【0029】
このカバー1の外周、すなわち外側直立壁6の中に、反応物の広口ビン上にあるデータを読み取ることのできるバーコード読み取り装置(図示せず)又は任意の同等の装置を受ける小型カバー10がある。小型カバー10は、バーコード読み取り装置の信号電波は通過するがカバー1内で循環する空気は通過させない透明材料製の直立壁14によってカバー1から隔てられている。
【0030】
本質的に水平な、カバー1の底において、すなわち底面水平壁8の上部において、空調制御可能な二つの空気偏向板2及び3、並びに、下記図2及び3に記載される偏向板2及び3がある。しかし、これらの偏向板2及び3の下には、壁6、7及び8によって定義された環状通路4中に位置する開口部15(図1中には図示せず)があり、上記開口部15は、各偏向板2及び3の下に存在していて、冷気をF1に沿って流入させ、また熱気をF3に沿って放出可能である。F1に沿った空気の流入は入り口偏向板2の下で生じ、F3に沿った空気の放出は出口偏向板3の下で生じる。環状空気移動通路4に関しては、空気は、明らかに開口部15を通って、入り口偏向板2からF2に沿って出口偏向板3へと移動する。
【0031】
環状空気移動通路4中において、温度が上部回転台中の反応物の保存温度である気流、すなわちこの空気の移動はF2で示し、この環状通路4に沿った移動する。従って、空気の移動F2は、中央開口部9の両側の二本の通路に沿って生じる。また、外側直立壁6の上部延長部は環状溝16を有し、この溝は、上記システム全体が自動分析器内部の所定の位置にある場合、環状通路4を外部及びその上に位置する回転台(図示せず)と離して密閉していてもよい。このように密閉されることにより、気流と、開放空気中にある反応物容器の頂部との接触が妨げられ、また、上記反応物の蒸発が妨げられる。
【0032】
図2について、この図は図1のA−Aにおける断面図である。この図は、環状空気移動通路4の境界を形成している外側直立壁6、内側直立壁7及び底面水平壁8を含むカバー1構成要素のアセンブリーを明瞭に強調している。カバー1が測定用反応物用土台回転台の下に固定されている場合、外側直立壁6の上部には環状溝16があって密閉手段5を構成している。
【0033】
図3についても本質的に同一であるが、空気偏向板を貫く、より正確には出口空気偏向板3を貫く断面である図1の断面B−Bを示す。ここで、底面水平壁8は、空気偏向板3の下の環状通路4中に位置する開口部15を含む。この空気偏向板3は、上部板11、及び、壁8を上部板11に連結させている多数のスペーサー12からなる。このようにして形成される空間13により、もう一方の偏向板2の入り口においても偏向板3の下の出口においても、F3に沿って空気が通過でき、かつ、流速の調節が可能となる。従って、この特徴により、空気が偏向板2の下の内部に吹き付けられる場合、上記偏向板2及び3がない場合よりも温度差が小さくなるように調節することが可能である。偏向板がない状態で上記自動分析器を使用すると、F1に沿って流入した空気とF3に沿って放出された空気の温度差が5℃であることが実証された。偏向板2及び3が存在する場合には、この温度差はわずか3℃である。このことは、温度が確実に14℃であれば偏向板2の入り口の温度を12.5℃かつ出口の温度を15.5℃とすることができることと同意義であり、この温度は、本発明による自動生体分析器について許容される値の範囲を構成する。この場合、上記生体測定の結果は著しく再現性がありかつ一定である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】正常状態において取り付けられる自動生体分析器から外した状態の温度制御システムの透視立面図を示す。
【図2】図1の断面A−Aを示す。
【図3】出口空気偏向板を貫く図1の断面B−Bを示す。
【符号の説明】
【0035】
1.冷却装置のカバー
2.入り口偏向板
3.出口偏向板
4.環状空気移動通路
5.密閉手段
6.外側直立壁
7.内側直立壁
8.底面水平壁
9.中央開口部
10.バーコード読み取り装置用のカバー
11.偏向板2又は3の上部板
12.壁8を上部板11に連結させているスペーサー
13.スペーサー12によって形成される空間
14.透明な直立壁
15.空気偏向板3の下の環状通路4に位置する開口部
16.環状空気移動通路4を密閉するための環状溝
F1.冷気入り口
F2.生体物質の保存温度における空気移動
F3.熱気出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
・通路上に位置する反応キュベット設置部を所定数含む反応キュベット用の土台、誘導装置及び段階的輸送手段、
・分析試料用土台回転台、
・所定量の試料及び反応物を採取して反応キュベット中にこれを注入するための手段である反応物用土台回転台、
・キュベット洗浄手段、
・測定結果を視覚的に読み取るための手段、及び、あらかじめプログラムされた分析サイクルを実行可能なコンピュータ制御システム:
を本質的に含む自動生体分析器内部の温度制御システムであって、
前記温度制御システムは、前記測定用反応物用土台回転台の下部に連結されていて、かつ、
前記システムはその内部に:
・少なくとも一つの入口空気偏向板(2)、
・少なくとも一つの出口空気偏向板(3)、
・前記入り口偏向板(2)と前記出口偏向板(3)の間に位置する環状空気移動通路(4)、及び、
・前記環状通路(4)中で空気を循環させるための手段:
を含むために、前記温度制御システム内の入口の空気と出口の空気の温度差を小さくすることができる
ことを特徴とする温度制御システム。
【請求項2】
本質的に環状で断面がU字型のカバー(1)によって形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
外側直立壁(6)、内側直立壁(7)、及び、上面が本質的に平面である底面水平壁(8)を有するカバー(1)によって形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記水平壁(8)には少なくとも二つの開口部(14及び15)が環状空気移動通路(4)中に互いに本質的に180°の位置にあいていて、前記空気偏向板(2及び3)が前記開口部(14及び15)上部の前記水平壁(8)の上面上に設置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
各空気偏向板(2又は3)は、上部板(11)、及び、前記水平壁(8)を前記上部板(11)に連結させる少なくとも一つのスペーサーからなる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記上部板(11)は、前記水平壁(8)の上面と本質的に平行である
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
測定用反応物用土台回転台の下部には温度制御システムにつながる穴があいている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
ボトル又は広口ビン等の容器中の測定用反応物は、回転台にあいている開口部の中のみに入っている
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−500354(P2007−500354A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530443(P2006−530443)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050202
【国際公開番号】WO2004/109294
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【Fターム(参考)】