説明

自動監視システム

【課題】従来の自動監視システムに、奥行き方向の位置情報を付加した3次元空間での自動監視システムを簡易に提供するものである。
【解決手段】監視カメラと測距機能を用い設定した監視領域10-2に検出対象が検出された場合、監視カメラから検出対象までの距離を測り、この距離が予め設定しておいた範囲内にあった場合にのみ「侵入者あり」と判断する様にしたものである。これにより、撮影画像の画面上に監視領域を設定する方法はそのままに、奥行き方向の情報を付加した3次元空間での自動監視システムを簡易に提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、監視カメラを用いた自動監視システムに関し、特に画面上に監視エリアを設定する自動監視システムにおいて、監視カメラに奥行き方向の情報を付加しより正確な自動監視をするものである。
【背景技術】
【0002】

監視カメラを用いた自動監視システムは、所定時間経過後の最低でも2つの画像を比較し検出対象が移動しているかどうかを判断し、静止していれば風景、移動していれば侵入者であると区別する。

監視領域としては視野に入る全てを監視対象とする方法と、監視エリアを設定しこの領域内のみを監視する方法があるが、誤動作、即応性、簡便性やシステム規模などの面からは監視領域を指定しこの領域内のみを監視する方法の方が適している。
【0003】

監視領域の設定については、2次元平面を用いるもの(特許文献1)や1次元の線分(特許文献2)で行うものなどが提案されている。いずれの方法も画面上に複数の監視領域を設定できるなどの実用上の工夫がなされているが、監視領域に奥行き方向の情報が無いため活用できるのは、通路や出入り口などの人の動きが物理的に制限される空間に限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-165666号公報
【特許文献2】特開2009-225239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

旧来の自動監視システムにおいて、撮影画像の画面上に監視領域を設定した場合、1台の監視カメラでの撮影では2次元(監視領域を線分で設定した場合は1次元)の情報しか取得できず、例えば監視カメラを概略水平にセットした場合は、監視カメラから見て監視領域に重なる範囲は、監視カメラの直前から遥か遠方までの全てが監視対象となってしまい、実際に監視したい空間とは異なる空間を監視してしまう不具合がある。

図2、図3を用いて改めて説明すると、監視カメラ1は全視野のうち監視領域10-1を監視しようとしているが、該監視カメラ1と該監視領域10-1との直線上を人が通過すると、人が該監視領域10-2の手前側であっても(4-1)、人が該監視領域10-1の奥側であっても(4-2)、図3に示すように該監視カメラ1には該監視領域10-1に侵入しているように写ってしまい、誤報を出してしまう不都合がある。

この為、旧来の自動監視システムは廊下や出入り口での侵入者の監視の様に人の流れがほぼ一定である条件下では有効であるが、例えば大きな広間の中央に置かれた被監視物周辺への侵入者の監視など、人の動線が不均一の3次元空間の監視には適さないという使用上の制約もある。
【0006】

これら不都合の対策としては、監視領域の直上からの監視にするとか、異方向の複数台の監視カメラからの情報から3次元情報を算出するとか、圧力センサを床面に設置するなどの方法が考えられるが、例えば監視領域が複数箇所有る場合などはいずれの方法でもシステムは複雑なものになってしまう。

また簡易的には斜め上方から監視することでこの不都合は緩和されるが、完全な解決策ではなく更に該監視カメラ1の設置場所や視野に制限が発生し、本来監視したい視野を得られない場合もあり得る。
【0007】

これらを鑑み本発明では、撮影画像の画面上に監視領域を設定する方法はそのままに、簡易に奥行き方向の情報を付加した3次元空間での自動監視システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】

自動監視システムにおいて、設定した監視領域に検出対象を検知した場合(つまり監視領域内に移動するものが写った)は、下記に説明する測距方法を用い監視カメラから検出対象までの距離を測り、この距離が予め設定しておいた範囲内にあった場合にのみ「侵入者あり」と判断する様にしたものである。
【0009】

測距方法は、レーザーや超音波の反射を活用した測距装置でも良いし、検出対象からの反射光をカメラで受けその強さを測定(近いと反射光は強く、遠ざかるに従い反射光は弱くなる)しても良いし、監視カメラ自身が持っているピント合わせ機能による測距でも良い。
【発明の効果】
【0010】

以上の様に構成することにより、1台の該監視カメラで、撮影画像の画面上に監視領域を設定する方法はそのままに、簡易に奥行き方向の情報を付加できるようにすることにより、任意の視野で信頼度の高い3次元空間での自動監視システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】

【図1】本発明の第1及び第4の実施形態で奥行き方向測距の概念図。
【図2】従来の監視システムでの不具合の説明図(鳥観図)。
【図3】従来の監視システムでの不具合の説明図(撮影画像)。
【発明を実施するための形態】
【0012】

(第1の実施形態)

第1の実施形態として図1を用いて説明する。

監視カメラ1は概略水平を向いており、予め設定された監視領域10-1を監視している。

該監視カメラ1の近傍には、該監視領域10-1の方向を向いた測距装置2が配置されている。該測距装置2の測距原理はレーザー光の反射でも良いし、超音波の反射でも良い。

処理部3は、該監視カメラ1と該測距装置2を制御し、これらから送られてくる情報を処理し、自動監視システム全体を統括するものであり、一般的にはパソコンを用いると便利である。

自動監視システム全体については、該測距装置2を駆動すること、これによって得られたデータを判断要素に加味すること以外は、自動監視システムの分野における公知技術を準用できる。
【0013】

該監視カメラ1が該監視領域10-1に検出対象4を検知した場合は、該測距装置2により該検出対象4までの距離Yaを測り、このYaが予め設定しておいたY1,Y2に対しY1≦Ya≦Y2が成り立ったときに、「侵入者あり」と判断し、警報を発する。つまり図1におけるX×Z×(Y2-Y1)の3次元空間の監視が可能となる。

以上の様に構成することにより、1台の該監視カメラで、撮影画像5の画面上に監視領域を設定する方法はそのままに、簡易に奥行き方向の情報を付加できるようにすることにより、任意の設置場所且つ任意の視野で信頼度の高い3次元空間での自動監視システムを提供することが可能となる。
【0014】

上記説明では該監視領域10-1は2次元平面を例としたが、これは1次元の線分でも良いし、面積を限りなく小さくした点であっても良い。

また、該監視領域10-2は1つのみ設定された例を説明してきたが、これも複数あっても良い。このとき該測距装置2を複数台設置するのか、自動可動台を用い1台の該測距装置2を反応があった該監視領域10-2に向けるのか、該測距装置2は1台で且つ測距範囲も固定で良い(出入りする人が非常に少ない場合など)のかは、その状況により適した方法を採用することになる。
【0015】

(第2の実施形態)

第1の実施形態では測距方法としてレーザー光や超音波を活用した測距装置2を具体例として挙げたが、測距方法としては検出対象4の反射の強さを該監視カメラ1で測定し、距離Yaを把握しても良い。具体的には、該監視領域10-1に検出対象4を検知した場合、その部分の反射光の強さ(撮影画像5上の当該部位の輝度)を、予め求めておいた実際の使用環境におけるY1位置及びY2位置からの該監視カメラ1への反射光の強さと比較することで、該監視領域10-2での該検出対象4が侵入者であるのかどうかを判断することができる。
【0016】

(第3の実施形態)

更に、測距方法としては監視カメラ1のピント合わせ機能を活用しても良い。具体的には該監視領域10-1に検出対象4を検知した場合、該監視カメラ1のピント合わせ機能を用い該検出対象4までの距離Yaを測り、該監視領域10-2での該検出対象4が侵入者であるのかどうかを判断することができる。。
【0017】

第2、第3の実施形態の測距方法は、第1の実施形態と比べ測距精度は劣るが、例えば該監視カメラ1の目の前にある窓ガラスへの外乱光の影響を排除したいときなど、厳密な測距精度を必要としない状況も多々考えられ、測距装置2を用いない分簡易な構成で必要とする機能を実現できるメリットがある。
【0018】

(第4の実施形態)

以上第1の実施形態から第3の実施形態までは、該監視領域10-2への侵入者の監視について説明してきたが、本発明のうち該測距装置2を備える構成では、侵入者が該監視カメラ1の視野を覆いなどで遮蔽し自動監視を妨害するという行為の対策にも活用できる。

該撮影画像5の所定の割合(例えば80%)で所定時間(例えば2秒)暗転した場合は、該測距装置2でY0よりも近くに物体があるかどうかを判定することで(図1)、部屋の照明が消えたのか(該測距装置2に反応無し)、該監視カメラ1の直前を人や物が通過しただけなのか(該測距装置2の反応が「有り」から「無し」へ変化)、実際に覆いを被せられたのか(該監視カメラ1の間近に人がいるまたは物がある)を判断することができ、誤報対策ができる。

また、暗転の判定には、該撮影画像5全体の明るさダウンとしても良いし(半透明の遮蔽物対策)、上記の面積をパラメータとした方法と併用しても良い。
【符号の説明】
【0019】

1:監視カメラ

2:測距装置

3:処理部

4-1:人(監視領域より手前)

4-2:人(監視領域より奥)

5:撮影画像(モニタの枠)

10-1:監視領域(2次元平面)

10-2:監視領域(3次元空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】

監視カメラを備えた自動監視システムであって、

該監視カメラに設定した監視領域に検出対象が検知された時は、該監視カメラから該検出対象までの距離を測定し、この距離が予め設定した範囲内にある場合のみ、該検出対象が侵入者であると判断し、通報することを特徴とする自動監視システム。
【請求項2】

上記請求項1において、

測距方法が、レーザ光の反射を活用した測距装置を用いる方法であることを特徴とする自動監視システム。
【請求項3】

上記請求項1において、

測距方法が、超音波の反射を活用した測距装置を用いる方法であることを特徴とする自動監視システム。
【請求項4】

上記請求項1において、

測距方法が、該カメラに入射する該検出対象からの反射光の強さを測定することにより、該カメラと該検出対象との距離を把握することを特徴とする自動監視システム。
【請求項5】

上記請求項1において、

測距方法が、カメラ自身の自動ピント合わせ機能を活用した方法であることを特徴とする自動監視システム。
【請求項6】

監視カメラを備えた自動監視システムであって、

該監視カメラ近傍には測距装置が設置され、該監視カメラの視野が閉ざされ、且つ測距装置に所定の距離より近くからの反射が検知された時は、自動監視が妨害されていると判断し通報することを特徴とする自動監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−98886(P2012−98886A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245551(P2010−245551)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(710008349)株式会社sky G laboratory (5)
【Fターム(参考)】