説明

自動製パン器

【課題】パン原料が投入される容器の冷却とパン生地の乾燥防止との両方を製パン動作中に自動で行える自動製パン器を提供する。
【解決手段】自動製パン器1は、パン原料を投入する容器50と、容器50内のパン原料をパン生地に練り上げる混練手段(混練ブレード52を含む)と、容器50内のパン原料を加熱する加熱手段41を有し、前記容器50が配置される焼成室40と、水が貯留される水タンク91と、水タンク91の水を焼成室41内に噴霧する噴霧手段(ポンプ92と、パイプ93a、93b、93bと、ノズル94とを含む)と、前記混練手段、前記加熱手段、及び前記噴霧手段を制御する制御手段と、備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭での使用に好適な自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器としては、製パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内の製パン原料を混練ブレードで混練して捏ね上げ、発酵工程を経た後に、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる、という仕組みのものが一般的である。このような自動製パン器は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また、パンを焼く場合に、レーズンやナッツ等の具材を入れることがある。このようなパン焼きに対応すべく、レーズン、ナッツ類、チーズ等の製パン副材料を自動的に投入する手段を備えた自動製パン器が、例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【特許文献2】特許第3191645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような自動製パン器を用いてパンを焼く場合に、製パン原料を混練ブレードで混練して捏ね上げる工程(混練工程)で、パン生地の温度が所望の温度より高くなって不出来なパンを製造してしまうことがあった。また、パン生地を発酵させる発酵工程ではなるべく湿度の高い環境下にパン生地を置いて、パン生地が乾燥しないようにすることが美味しいパンを製造する上で好ましい条件となる。しかし、従来の自動製パン器では、発酵工程中にパン生地が乾燥して不出来なパンを製造してしまうことがあった。
【0006】
また、本出願人らは、パン原料の入ったパン容器内で穀物粒を粉砕する粉砕工程を備えることにより、穀物粒からパンを製造できる自動製パン器の開発を行っている。この自動製パン器では、穀物粒を粉砕する際に発生する熱でパン容器の温度が高くなり易い。パン容器の温度が高くなりすぎる状況は、例えば、イースト菌の活動にとって好ましくない状況であり、不出来なパンを製造する原因となる。このために、この粉砕工程において、パン容器の温度の上昇を抑制できる仕組みが望まれた。
【0007】
また、自動製パン器でパンを作る場合でも、ユーザは製パン中にパン生地の状態を見てパン生地に水を与えたいと考える場合がある。このような場合に、従来の自動製パン器では、ユーザは自動製パン器の蓋を開けて、自らの手でパン生地に水を与えるしかない。この点、蓋を開けることなく水を与えられると、安全性が増す等の利点があり、好ましいと考えられる。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、パン原料が投入される容器の冷却とパン生地の乾燥防止との両方を製パン動作中に自動で行うことができる自動製パン器を提供することである。また、本発明の第2の目的は、穀物粒からパンを製造するのに便利な仕組みを備えた自動製パン器を提供することである。更に、本発明の第3の目的は、製パン中にパン生地に水を与え易い自動製パン器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、パン原料を投入する容器と、前記容器内のパン原料をパン生地に練り上げる混練手段と、前記容器内のパン原料を加熱する加熱手段を有し、前記容器が配置される焼成室と、水を貯留する水タンクと、前記水タンクの水を前記焼成室内に噴霧する噴霧手段と、前記混練手段、前記加熱手段、及び前記噴霧手段の動作を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本構成によれば、焼成室内に水を噴霧することが可能であるために、このことを利用して、パン原料が投入される容器の冷却とパン生地の乾燥防止との両方を製パン動作中に自動で行うことができる。また、焼成室内に水を噴霧する噴霧手段は制御手段によって制御される構成であるために、ユーザが製パン中にパン生地に水を与えやすい構成を実現できる。
【0011】
上記構成の自動製パン器において、パン原料として前記容器内に投入された穀物粒を粉砕する粉砕手段を更に備え、前記制御手段は、前記混練手段、前記加熱手段、及び前記噴霧手段に加えて前記粉砕手段を制御することとしてもよい。
【0012】
本構成によれば、自動製パン器が粉砕手段を有するために、製粉した粉を用いることなく、穀物粒からパンを製造することが可能である。すなわち、本構成の自動製パン器によれば、穀物粉を買い求めることなく、手持ちの穀物粒からパンを焼き上げることが可能である。また、穀物粒の粉砕中に焼成室に配置された容器に水を噴霧して容器の冷却が行えるために、パン原料が投入される容器の温度上昇を抑制できる。したがって、本構成によれば、穀物粒から出来の良いパンを製造しやすい。
【0013】
上記構成の自動製パン器において、前記噴霧手段は、前記焼成室に配置される前記容器の外面に向けて水を噴霧することとしてもよい。これによれば、パン原料が投入される容器温度の上昇を抑制しやすい。
【0014】
上記構成の自動製パン器において、前記噴霧手段は、前記焼成室に配置される前記容器の外面に向けて水を噴霧する第1の噴霧手段と、前記容器の内部に向けて水を噴霧する第2の噴霧手段と、を有することとしてもよい。これによれば、例えば、第1の噴霧手段にパン原料が投入される容器の温度上昇を抑制する役目を担わせることができ、第2の噴霧手段にパン生地に直接水を与える役目を担わせることができる。また、この構成においては、前記第1の噴霧手段による水の噴霧の可不可を切り換える第1の切換手段と、前記第2の噴霧手段による水の噴霧の可不可を切り換える第2の切換手段と、を備えることとしてもよい。これにより、第1の噴霧手段と第2の噴霧手段とを部品の一部(例えばポンプや水路となるパイプ)を共用して構成しつつ、両者をそれぞれ適切なタイミングで動作させることができる。
【0015】
上記構成の自動製パン器において、前記容器の外面には凹凸が形成されているのが好ましい。これにより、容器外面の表面積が増加し、容器温度の冷却効果を高めることができる。
【0016】
上記構成の自動製パン器において、前記噴霧手段は、前記焼成室に配置される前記容器の内部に向けて水を噴霧することとしてもよい。これによれば、パン生地に直接水を与え易い。
【0017】
上記構成の自動製パン器において、前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いてパン生地を練り上げる混練工程が含まれ、前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記混練工程において前記容器の外面に向けて水を噴霧させることとしてもよい。本構成によれば、混練工程における容器(パン原料が投入される容器)の温度上昇を噴霧手段によって適切に抑制しながら、パンの製造工程を進めることができる。
【0018】
上記構成の自動製パン器において、前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いて練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が含まれ、前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記発酵工程において前記容器の外面に向けて水を噴霧させることとしてもよい。本構成によれば、発酵工程において焼成室内の湿度を高めてパン生地の乾燥を防止しながら、パンの製造工程を進めることができる。
【0019】
上記構成の自動製パン器において、前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いて練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が含まれ、前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記発酵工程において前記容器の内部に向けて水を噴霧させることとしてもよい。本構成によれば、発酵工程においてパン生地に水を直接与えてパン生地の乾燥を防止しながら、パンの製造工程を進めることができる。
【0020】
上記構成の自動製パン器において、前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いて練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が含まれ、前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記発酵工程において前記容器の外面及び前記容器の内部に向けて水を噴霧させることとしてもよい。本構成によれば、発酵工程において、焼成室内の湿度を高めると共に、パン生地に水を直接与えることによってパン生地の乾燥を防止して、パンの製造工程を進めることができる。
【0021】
上記構成の自動製パン器において、前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いて練り上げられたパン生地を発酵させた後に焼成する焼成工程が含まれ、前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記焼成工程の初期段階で前記容器の内部に向けて水を噴霧させることとしてもよい。本構成によれば、出来上がりのパンについて、パンの皮を薄く、パリッとしたものにできる。
【0022】
上記構成の自動製パン器において、前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記粉砕手段を用いて前記穀物粒を粉砕する粉砕工程が含まれ、前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記粉砕工程において前記容器の外面に向けて水を噴霧させることとしてもよい。本構成によれば、粉砕時に発生する熱で温度上昇しやすい容器の温度を低く抑えながら、パンの製造工程を進めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、パン原料が投入される容器の冷却とパン生地の乾燥防止との両方を製パン中に行うことができる自動製パン器の提供が可能である。また、本発明によると、穀物粒からパンを製造することができる自動製パン器であって、粉砕時における温度上昇を抑制しやすいといった便利な仕組みを備えた自動製パン器の提供が可能である。更に、本発明によれば、製パン中にパン生地に水を与え易い自動製パン器の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態の自動製パン器の構成を示す概略断面図
【図2】図1に示した自動製パン器の蓋を取り除いて上から見た場合の概略平面図
【図3】第1実施形態の自動製パン器が水を焼成室内に噴霧できるように備えた構成を説明するための図
【図4】第1実施形態の自動製パン器の制御ブロック図
【図5】第1実施形態の自動製パン器によって穀物粒からパンを製造する場合に実行されるパンの製造工程を示す図
【図6】第2実施形態の自動製パン器の構成を説明するための図
【図7】第2実施形態の自動製パン器の制御ブロック図
【図8】第2実施形態の自動製パン器によって穀物粒からパンを製造する場合に実行されるパンの製造工程を示す図
【図9】第3実施形態の自動製パン器の構成を説明するための図
【図10】第3実施形態の自動製パン器の制御ブロック図
【図11】第3実施形態の自動製パン器によって米粉からパンを製造する場合に実行されるパンの製造工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の自動製パン器の構成を示す概略断面図である。なお、図1において、図の左側が自動製パン器1の正面(前面)側、図の右側が自動製パン器1の背面(後面)側である。また、図1においては、説明の都合上、自動製パン器1が水を焼成室40内に噴霧するために備えている部材については省略して示している。図2は、図1に示した自動製パン器の蓋を取り除いて上から見た場合の概略平面図である。図3は、第1実施形態の自動製パン器が水を焼成室内に噴霧できるように備えた構成を説明するための図である。この図1から図3を参照しながら、第1実施形態の自動製パン器1の全体構成について説明する。
【0026】
自動製パン器1は、例えば合成樹脂で形成される箱形の本体10を有する。本体10には、その左側面と右側面の両端に連結したコの字状のハンドル11(例えば合成樹脂製)が設けられ(図2参照)、これにより運搬容易となっている。本体10の上面前部には操作部20が設けられる。この操作部20には、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造工程を選択する選択キー等の操作キー群21と、操作キー群21によって設定された内容、パンの製造状況、エラー等を表示する液晶表示パネル22と、が設けられている。
【0027】
操作部20から後ろの本体上面は、例えば合成樹脂からなる蓋30で覆われる。蓋30は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として垂直面内で回動する構成となっている。蓋30の焼成室40(詳細は後述)を覆う部分には、例えば板金をドーム状に成型した天井31が設けられている。この天井31の頂部は、蓋30に設けられた耐熱性の透明部材(例えば耐熱ガラス)からなる覗き窓32につながっている。
【0028】
本体10の内部には、例えば板金を用いて形成される焼成室40が設けられている。この焼成室40は上面が開口しており、ここからパン容器50が入れられる。焼成室40は水平断面矩形の周側壁40aと底壁40bとを備える。焼成室40の内部には、加熱装置41が焼成室40に収容されたパン容器50を包囲するように配置されている。この加熱装置41は例えばシーズヒータを用いて構成される。なお、この加熱装置41は本発明の加熱手段の実施形態である。
【0029】
また、本体10の内部には、例えば板金製の基台12が設置されている。基台12には、焼成室40の中心にあたる箇所に、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなるパン容器支持部13が固定されている。パン容器支持部13の内部は焼成室40の内部に露出している。
【0030】
パン容器支持部13は、パン容器50の底面に固定された筒状の台座51を受け入れてパン容器50を支える。パン容器支持部13の中心には、内軸14aと外軸14bとにより構成される二重軸が垂直に支持されている。内軸14a及び外軸14bの下端は共にパン容器支持部13の下面から突き出ており、内軸14aはプーリ15aに固定され、外軸14bはプーリ15bに固定されている。
【0031】
パン容器50は例えば板金によって形成され、バケツのような形状をしている。このパン容器50の口縁部には、手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器50の水平断面は四隅を丸めた矩形であり、四辺のうち対向する二辺の内面には、垂直方向に延びるうね状の突部50aが形成されている。また、パン容器50の外側面50bには、パン容器50の外面の表面積を増やす目的で凹凸が形成されている。
【0032】
パン容器50の底部中心には、例えば金属製の混練ブレード52と粉砕ブレード70とが配置されている。内軸53aと外軸53bとにより構成される二重軸が、パン容器50の中心にシール対策を施した上で垂直に支持されている。内軸53aに混練ブレード52が取り付けられており、外軸53bに粉砕ブレード70が取り付けられている。混練ブレード52と粉砕ブレード70との配置は同軸配置であり、これにより、パン容器50の底部という決して広いとは言えない場所に、混練ブレード52と粉砕ブレード70とをコンパクトに併存させることが可能となっている。
【0033】
混練ブレード52は、平面視略矩形状の板状の羽根を有している。この混練ブレード52は、内軸53aの上端の非円形断面部に単なる嵌め込みで取り付けられており、工具を用いることなく着脱できる。このために、異なる種類の混練ブレードに容易に交換可能である。
【0034】
粉砕ブレード70は、混練ブレード52の下面に当たらないように外軸53bに取り付けられている。この粉砕ブレード70も単なる嵌め込みで取り付けられるようにしてもよい。粉砕ブレード70は、金属製円板71の上面に複数の切削刃72を散在させたものである(図2参照)。切削刃72は、ジューサーのカッターやおろし金の歯のように形成されている。複数の切削刃72は、放射方向に延びる複数列の横隊を構成している。各横隊における各切削刃突起の円板71の中心からの距離は、横隊毎に前後の横隊と少しずつ、ずれている。このため、複数の切削刃72は、その配置領域全体に満遍なく粉砕作用を及ぼすことができるようになっている。
【0035】
パン容器50に設けられる内軸53aは、パン容器支持部13に設けられる内軸14aに連結されて動力を伝達される。また、パン容器50に設けられる外軸53bは、パン容器支持部13に設けられる外軸14bに連結されて動力を伝達される。動力伝達手段としては台座51に囲い込まれるカップリング54a、54bが用いられる。カップリング54aを構成する2部材のうち、一方の部材は内軸53aの下端に固定され、もう一方の部材は内軸14aの上端に固定されている。同様に、カップリング54bを構成する2部材のうち、一方の部材は内軸53bの下端に固定され、もう一方の部材は内軸14bの上端に固定されている。
【0036】
パン容器支持部材13の内周面と台座51の外周面とには、それぞれ図示しない突起が形成されており、これらの突起は周知のバヨネット結合を構成する。パン容器50をパン容器支持部13に取り付ける際、台座51の突起がパン容器支持部13の突起に干渉しないようにしてパン容器50を下ろす。そして、台座51がパン容器支持部13に嵌り込んだ後、パン容器50を水平にひねると、パン容器支持部13の突起の下面に台座51の突起が係合する。これにより、パン容器50が上方に抜けなくなる。また、この操作で、上述したカップリング54aの連結とカップリング54bの連結とが、それぞれ同時に達成される。
【0037】
なお、パン容器50取り付け時のひねり方向は、混練ブレード52及び粉砕ブレード70の回転方向に一致させている。これにより、混練ブレード52及び粉砕ブレード70が回転してもパン容器50は外れないようになっている。
【0038】
混練用モータ60aは、例えば板金製の基台12に取り付けられ、粉砕用モータ60bは基台12とは別に本体10に設けられたビーム16に取り付けられている。混練用モータ60aと粉砕用モータ60bとはいずれも竪軸であって、混練用モータ60aの下面からは出力軸61aが突出し、粉砕用モータ60bの下面からは出力軸61bが突出する。混練用モータの出力軸61aにはプーリ62aが固定され、このプーリ62aは内軸14aが固定されるプーリ15aにベルト63aで連結される。粉砕用モータの出力軸61bにはプーリ62bが固定され、このプーリ62bは外軸14bが固定されるプーリ15bにベルト63bで連結される。
【0039】
なお、混練ブレード52を回転させる内軸14aは、低速・高トルクの回転が求められる。一方、粉砕ブレード70を回転させる外軸14bは高速回転が求められる。このため、プーリ62aはプーリ15aを減速回転させ、プーリ62bはプーリ15bを等速ないし増速回転させるようにプーリ同士の直径比が設定されている。更に、粉砕用モータ60bには高速回転タイプのものが選ばれている。
【0040】
図3に示す水タンク91は例えば合成樹脂からなり、本体10の下部側に着脱可能に配置されている。この水タンク91は、自動製パン器1の側面部から引き出せるようになっている。この水タンク91は、水を焼成室40に向けて噴霧する際の水源となる。水タンク91の上部は、水タンク91から焼成室40へと至る水路の一部を形成する金属製のパイプ93aの一端がカップリング部材(図示せず)によって接続できるように構成されている。
【0041】
水タンク91の上部には、水タンク91の水を送り出すためのポンプ92が本体10内に固定された状態で配置されている。ポンプ92の吸込口は、一端が水タンク91に接続される上述のパイプ93aの他端にカップリング部材(図示せず)を介して接続される。ポンプ92の吐出口には、これまた水タンク91から焼成室40へと至る水路の一部を形成する金属製のパイプ93bの一端がカップリング部材(図示せず)を介して接続される。
【0042】
ポンプ92の吐出口に接続されるパイプ93bは、ポンプ92の近傍でパイプ93cと接続されており、ポンプ92から吐出される水は2方向に送り出されるようになっている。すなわち、ポンプ92から吐出された水は、自動製パン器1の前面側(図3の左側)と背面側(図3の右側)から焼成室40内に水を噴霧できるようになっている。自動製パン器1の前面側へと至るパイプ93c及び背面側へと至るパイプ93bは、それぞれ、更にパン容器50の外側面50bの上側及び下側に水を噴霧できるように2つに枝分かれされている。このため、焼成室40内には、パイプ93bの端部が2つ、パイプ93cの端部が2つ、計4つのパイプの端部が突出した状態となっている。なお、焼成室40の周側壁40aのパイプが突出する部分(4箇所)にはシール対策が施されている。
【0043】
焼成室40に突出した4つのパイプの先端には、それぞれ複数の小孔が形成された、例えば金属製のノズル94が取り付けられている。水タンク91からポンプ92によって送り出された水は、このノズル94によって霧状に噴出される。ポンプ92、パイプ93a、93b、93c及びノズル94は、本発明の噴霧手段の実施形態である。
【0044】
なお、噴霧手段によって水を噴霧させる箇所は1箇所のみとしても良いが、本実施形態のように複数箇所とするのが好ましい。これにより、パン容器50の広範囲に水を吹きかけることが可能となる。また、本実施形態では、焼成室40の4つの周側壁40aのうちの2面から水が噴霧されるように噴霧手段を構成しているが、4面全てから水が噴霧されるように噴霧手段を構成してもよいし、更には、焼成室40の上面及び下面を加えた、6面から水が噴霧されるように噴霧手段を構成してもよい。このようにすることで、噴霧効率を向上できる。
【0045】
また、本実施形態では、水タンク91から焼成室40へと至る水路を金属製のパイプ93a、93b、93cで形成しているが、この水路は、例えば耐熱性のチューブで形成してもよく、更に、金属製のパイプと耐熱性のチューブとで形成してもよい。
【0046】
図4は、第1実施形態の自動製パン器の制御ブロック図である。図4に示すように、自動製パン器1には、その動作を制御するための制御装置80が備えられる。この制御装置80は、本体10内の適所に配置されている。なお、制御装置80は、焼成室40の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。
【0047】
制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)81と、このマイコン81に電気的に接続された混練用モータ駆動回路82a、粉砕用モータ駆動回路82b、ヒータ駆動回路83、及びポンプ駆動回路84と、を備えている。
【0048】
また、制御装置80が備えるマイコン81には、上述した操作部20の各種キーが電気的に接続されており、ユーザは各種キーからマイコン81に指示を与えられるようになっている。更に、マイコン81は、焼成室40の内側に配置され、焼成室40内の温度を検出する温度センサ18と電気的に接続されている。
【0049】
混練用モータ駆動回路82aは、マイコン81からの指令の下で、混練ブレード52を回転させる混練用モータ60aの駆動を制御する回路である。また、粉砕用モータ駆動回路82bは、マイコン81からの指令の下で、粉砕ブレード70を回転させる粉砕用モータ60bの駆動を制御する回路である。ヒータ駆動回路83は、温度センサ18からの情報を受け取るマイコン81からの指令の下で、シーズヒータからなる加熱装置41の動作を制御する回路である。ポンプ駆動回路84は、マイコン81からの指令の下で、ポンプ92の動作を制御する回路である。
【0050】
マイコン81は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造工程に係るプログラムを読み出す。そして、マイコン81は、混練用モータ駆動回路82aを介して混練ブレード52の回転、及び、粉砕用モータ駆動回路82bを介して粉砕ブレード70の回転を制御する。また、マイコン81は、ヒータ駆動回路83を介して加熱装置41の加熱動作、及び、ポンプ駆動回路84を介してポンプの動作も制御する。マイコン81は各回路を介して各部の制御動作を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
【0051】
なお、制御装置80は本発明の制御手段の実施形態である。また、混練ブレード52及び混練用モータ60aは本発明の混練手段の実施形態である。また、粉砕ブレード70及び粉砕用モータ60bは本発明の粉砕手段の実施形態である。
【0052】
続いて、以上のように構成される第1実施形態の自動製パン器1における噴霧手段の使用例について説明する。ここでは、自動製パン器1によって穀物粒からパンを製造する場合を例に、噴霧手段の使用例を説明する。図5は、第1実施形態の自動製パン器によって穀物粒からパンを製造する場合に実行されるパンの製造工程を示す図である。図5における矢印は、その矢印が付された工程で水の噴霧が行われることを示すものである。
【0053】
なお、自動製パン器1でパンを製造する場合に用いる穀物粒の代表例としては米粒が挙げられるが、この他に、小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の穀物粒を用いてもよい。
【0054】
自動製パン器1で穀物粒を用いてパンを製造するにあたって、ユーザは、パン容器50に混練ブレード52と粉砕ブレード70とを取り付ける。そして、ユーザは、穀物粒と水をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器50に入れる。なお、ここでは、穀物粒と水とを混ぜることにしているが、単なる水の代わりに、例えば、だし汁のような味成分を有する液体、果汁、アルコールを含有する液体等を用いてもよい。
【0055】
ユーザは、穀物粒と水とを投入したパン容器50を焼成室40に入れて蓋30を閉じ、操作部20によって穀物粒用のパンの製造工程が実行されるように設定し、スタートキーを押す。これにより、穀物粒からパンを製造するパンの製造工程が開始される。具体的には、図5に示すように、スタートキーが押されると、吸液工程、粉砕工程、混練工程、発酵工程、ガス抜き工程、発酵工程、焼成工程がこの順で順次遂行される。
【0056】
吸液工程は、穀物粒(代表的には米粒)に液体(代表的には水)を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、穀物粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。この吸液工程では、穀物粒と液体との混合物をパン容器50内で静置した状態で、所定の時間放置する。この所定の時間は、例えば、後の粉砕工程を効率良く行える時間として実験等によって求められる。
【0057】
なお、この吸液工程は、吸液効率を高めるために温度を例えば40〜50℃に昇温した状態で行ってもよい。また、吸液工程の初期段階で粉砕ブレード70を回転させ、その後も断続的に粉砕ブレードを回転させるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率を高められる。
【0058】
吸液工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いて粉砕工程が実行される。この粉砕工程は、米粒を粉砕してペースト化する工程である。制御装置80は、粉砕用モータ60bを制御して粉砕ブレード70を高速回転させる。この粉砕ブレード70の高速回転によって、切削刃72により米粒が粉砕される。この粉砕は、米粒に水が浸み込んだ状態で行われるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。また、パン容器50の内面に形成された突部50aが米粒と水との混合物の流動を抑制し、粉砕を助ける。更に、混練ブレード52を停止させておけば、混練ブレード52も米粒と水との混合物の流動を抑制し、粉砕を助ける。
【0059】
粉砕工程は、粉砕ブレード70による粉砕時間が所定の時間となった時点で終了される。この所定の時間は、所望の粒径(或いは粒度分布)の粉砕粉が得られる時間として実験的に求められる。なお、粉砕工程における粉砕ブレード70の回転は、連続回転としてもよいし、間欠回転としてもよい。間欠回転とすることにより、米粒を対流させて満遍なく米粒を粉砕できるために、間欠回転とするのが好ましい。
【0060】
この粉砕工程においては、粉砕ブレード70を回転して穀物粒を粉砕する際に発生する熱によって、放っておくとパン容器50内の温度が望ましくない温度まで上昇してしまう場合がある。この温度上昇を抑制するために、制御装置80はポンプ92を制御して、ノズル94から所定のタイミングで、所定の量の水を噴霧させるようになっている。これは、ノズル94から噴霧されてパン容器50の外側面50bに吹きかけられた水が、パン容器50から熱を奪って気化し、パン容器50を冷却することを狙ったものである。そして、この狙いを満足するように、水を噴霧するタイミング(上記所定のタイミング)や水の噴霧量(上記所定の量)は決定される。
【0061】
なお、上述したようにパン容器50の外側面50bには凹凸が形成されている。この凹凸を形成しない構成としても良いが、本実施形態のように凹凸を設けるのが好ましい。これは、パン容器50の外側面50bに凹凸を設けることにより、凹凸を設けない場合に比べてパン容器50の外側面50bの表面積を増加することができ、気化熱を利用した冷却が行い易くなるからである。
【0062】
粉砕工程の終了は、例えば操作部20の液晶パネル22における表示や報知音等によってユーザに知らされる。この粉砕工程の終了後には混練工程が実行されるが、この混練工程は即実行されず、一時製パン作業が停止するように制御装置80は制御動作を行う。これは、ユーザによってグルテンや、食塩、砂糖、ショートニングといった調味料をパン容器50に投入する期間を与えるためである。ユーザは、グルテンや調味料といったパン原料を好みに応じてパン容器50に投入し、その後、パン容器50の蓋30をして、スタートキーを押す。なお、第1実施形態の自動製パン器1では、ユーザがグルテンや調味料を投入することとしているが、これらの材料を自動投入することとしてもよい。
【0063】
ユーザがスタートキーを押すことにより、粉砕工程で粉砕された穀物粒の粉砕粉を含むパン容器50内のパン原料を生地に練り上げる混練工程が開始される。制御装置80は、混練用モータ60aを制御して混練ブレード52を回転させる。なお、混練ブレード52の回転は低速・高トルクとなっている。
【0064】
この混練ブレード52の回転によってパン原料は混練され、所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード52が生地を振り回してパン容器50の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。パン容器50の内壁に形成された突部50aが「捏ね」を助ける。混練工程における混練ブレード52の回転は、連続回転としてもよいし、間欠回転としてもよい。混練工程は、混練ブレード52による混練時間が所定の時間となった時点で終了する。この時間は所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験等によって求められる。
【0065】
なお、本明細書では、混練工程が開始され練りが進行した後は、半完成状態であっても「生地」と呼称することとしている。
【0066】
この混練工程においては、混練ブレード52を回転して生地を練る際に発生する熱によって、放っておくとパン容器50内の温度が望ましくない温度まで上昇してしまう場合がある。この温度上昇を抑制するために、制御装置80はポンプ92を制御して、ノズル94から所定のタイミングで、所定の量の水を噴霧させるようになっている。この狙いは、粉砕工程の場合と同様であり、この狙いを満足するように、上記所定のタイミングや所定の量は決定される。
【0067】
また、混練工程においては、制御装置80は上記水の噴霧を適宜行いながら、加熱装置41を適宜制御して焼成室40の温度が所定の温度(例えば30℃前後)となるように調整する。この調整により焼成室40の温度が所定の温度となった時点で、パン生地にイースト菌(例えばドライイースト)が投入される。このイースト菌の投入は、第1実施形態の自動製パン器1ではユーザが投入することとしているが、自動投入することとしてもよい。自動製パン器1では、ユーザが投入する構成のために、所定の温度となったことを例えば液晶パネル22の表示や報知音等で知らせることにしている。
【0068】
混練工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いて発酵工程が実行される。この発酵工程では、制御装置80は加熱装置41を制御して、焼成室40の温度を、発酵が進む温度(例えば32℃)にする。そして、この発酵が進む環境下で、パン容器50内のパン生地は所定の時間放置される。
【0069】
出来の良い(美味しい)パンを製造するためには、この発酵工程においてパン生地を乾燥させないのが好ましい。このために、制御装置80は、この発酵工程においても、ポンプ92を制御してノズル94から所定のタイミングで、所定の量の水を噴霧させるようになっている。これにより、焼成室40内の湿度を出来るだけ高い状態に保つことが可能となり、パン生地の乾燥を防ぐことができる。水を噴霧させるタイミング(上記所定のタイミング)や水の量(上記所定の量)は、パン生地を乾燥させないという目的を満たすように実験等によって決められる。
【0070】
この発酵工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いてガス抜き工程が実行される。このガス抜き工程では、制御装置80は混練用モータ60bを制御して混練ブレード52を所定の時間(本実施形態では0.1分)回転させる。この混練ブレード52の回転によって生地に含まれる炭酸ガスが抜かれる。
【0071】
ガス抜き工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いて発酵工程が再度実行される。この発酵工程では、制御装置80は加熱装置41を制御して、焼成室40の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)にする。そして、この発酵が進む環境下で、パン容器50内の生地は所定の時間放置される。なお、この場合も、制御装置80は、パン生地の乾燥を防止するために、ポンプ92を制御してノズル94から所定のタイミングで、所定の量の水を噴霧させる。
【0072】
発酵工程が終了すると、制御装置80の指令によって続いて焼成工程が実行される。制御装置80は、加熱装置41を制御して、焼成室40の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させ、焼成環境下でパンを焼き上げる。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶パネル22における表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋30を開けてパン容器50を取り出す。これにより、穀物粒からパンを製造する工程が完了となる。
【0073】
以上説明したように、第1実施形態の自動製パン器1には、ポンプ92、パイプ93a、93b、93c及びノズル94からなる噴霧手段が備えられている。そして、この噴霧手段の動作を制御装置80によって適宜制御しながら製パン動作を行うようになっている。このために、自動製パン器1では、パン容器50(容器内の内容物)の温度が好ましくない温度に上昇するのを抑制しながら製パンを行える。また、自動製パン器1では、パン容器50が置かれる空間の湿度を調整してパン生地の乾燥を防止しながら製パンを行える。特に、自動製パン器1は穀物粒からパンを製造できるように粉砕工程を含むが、この粉砕工程でもパン容器50の温度上昇を適切に抑制できる。すなわち、この自動製パン器1は穀物粒からパンを製造するのに便利な仕組みを備えた自動製パン器と言える。
(第2実施形態)
次に、本発明が適用される第2実施形態の自動製パン器の構成について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、第2実施形態の自動製パン器の構成を説明するための図で、より詳細には、第2実施形態の自動製パン器2が水を焼成室内に噴霧できるように備えた構成を説明するための図ある。図7は、第2実施形態の自動製パン器の制御ブロック図である。
【0074】
第2実施形態の自動製パン器2は、水を焼成室内に噴霧するための構成が第1実施形態の自動製パン器2の構成と異なり、他の部分については第1実施形態の自動製パン器1と同様の構成となっている。このために、以下では、水を焼成室に噴霧するための構成を中心に説明する。また、第1実施形態の自動製パン器1と重複する部分については同一の符号を付し、特に説明の必要がない場合にはその説明を省略する。
【0075】
図6に示すように、第2実施形態の自動製パン器2も第1実施形態の自動製パン器1と同様に、水タンク91を備え、更に、水タンク91の水を焼成室40内に噴霧する噴霧手段を備える構成となっている。ただし、第2実施形態の噴霧手段は、第1の噴霧手段と第2の噴霧手段とを有する構成となっており、この点で第1実施形態の噴霧手段とは異なる。
【0076】
自動製パン器2の噴霧手段は、パン容器50の外側面50bに水を噴霧する第1の噴霧手段に加えて、パン容器51の内部に水を噴霧する第2の噴霧手段を備えている。第1の噴霧手段は、第1実施形態の噴霧手段と同様の構成で、ポンプ92と、パイプ93a、93b、93cと、ノズル94aとで構成される。ただし、自動製パン器2の背面側の空間を通るパイプ93bが枝分かれすることによって、蓋30に向かって延びるパイプ93dが設けられる構成となっている点で、第1実施形態の構成とは異なる(図3を比較参照)。なお、このような構成とするのは、第2の噴霧手段を得るためである。
【0077】
パイプ93bから枝分かれして蓋30へと延びるパイプ93dは、蓋30の略中央付近に延び出すように構成され、更に、その位置において、パイプ93dの端部の開口がパン容器50と対向するように折り曲げられている。このパイプ93dの一端にノズル94bが取り付けられており、これにより、水タンク91の水をパン容器50の内部に向かって噴霧できるようになっている。このポンプ92と、パイプ92b、93dと、ノズル94bとで構成される噴霧手段が第2の噴霧手段である。
【0078】
なお、パイプ93cは、蓋30の開閉時の動きを邪魔しないように、その少なくとも一部が柔軟製を有する素材で構成されている。
【0079】
自動製パン器2においては、図6に示すように、第1の噴霧手段による水の噴霧の可不可を切り換える第1電磁弁95と、第2の噴霧手段による水の噴霧の可不可を切り換える第2電磁弁96と、が設けられている。これは、自動製パン器2においては、第1の噴霧手段と第2の噴霧手段とがポンプ92を共用する構成となっているにもかかわらず、第1の噴霧手段と第2の噴霧手段とを別々に動作できるようにするためのものである。
【0080】
なお、本実施形態の構成と異なり、第1の噴霧手段と第2の噴霧手段とが異なるポンプを使用する構成とすることも可能である。この場合には、水の噴霧の可不可を切り換える切換手段である電磁弁は用いない構成とできる。また、電磁弁は、水の可不可を切り換える切換手段の一例であり、制御装置80によって動作制御できて、水の噴霧の可不可を切り換えられるものであれば他のものでもよい。
【0081】
自動製パン器2は、上述のように第1電磁弁95と第2電磁弁96とを備える。このために、図7に示すように、制御装置80は、マイコン81からの指令の下で第1電磁弁95の動作を制御する回路である第1電磁弁駆動回路85と、マイコン81からの指令の下で第2電磁弁96の動作を制御する回路である第2電磁弁駆動回路86と、を備える構成となっている。
【0082】
続いて、以上のように構成される第2実施形態の自動製パン器2における噴霧手段の使用例について説明する。ここでは、第1実施形態の場合と同様に、自動製パン器2によって穀物粒からパンを製造する場合を例に、噴霧手段の使用例を説明する。図8は、第2実施形態の自動製パン器によって穀物粒からパンを製造する場合に実行されるパンの製造工程を示す図である。
【0083】
穀物粒からパンを製造する工程は、第1実施形態で説明した構成(図5参照)と同様であり、吸液工程、粉砕工程、混練工程、発酵工程、ガス抜き工程、発酵工程、焼成工程がこの順で順次遂行されるようになっている。ただし、上述のように焼成室40に向けて水を噴霧する噴霧手段の構成が第1実施形態の構成と異なり、この噴霧手段の動作制御も第1実施形態の場合と異なる。以下、この異なる点について主に説明する。
【0084】
吸液工程では、制御装置80はポンプ92を作動させず、噴霧手段を用いた水の噴霧は行われない。このために、制御装置80は第1電磁弁95及び第2電磁弁96が閉じられるように制御する。
【0085】
粉砕工程及び混練工程においては、パン容器50の温度上昇を抑制するために、パン容器50の外側面50bに、適宜、水が噴霧されるように制御装置80は噴霧手段を制御する。具体的には、制御装置80は、第1電磁弁95を開き、第2電磁弁96は閉じた状態とする。そして、制御装置80は、ポンプ92を適宜動作させて水タンク91の水を送り出して、ノズル94aからパン容器50の外側面50bに向けて水を噴霧させる。すなわと、第1の噴霧手段による水の噴霧のみを実行させる。
【0086】
2度行われる発酵工程においては、いずれの場合も、パン容器50内のパン生地が乾燥しないように、制御装置80は噴霧手段を制御する。具体的には、制御装置80は、第1電磁弁95及び第2電磁弁96をいずれも開いた状態とする。そして、制御装置80は、ポンプ92を適宜動作させて水タンク91の水を送り出して、ノズル94aからパン容器50の外側面50b向けて水を噴霧させ、ノズル94bからパン容器50の内部に向けて水を噴霧させる。すなわち、第1の噴霧手段及び第2の噴霧手段による水の噴霧が行われる。これにより、焼成室40内の湿度を高くできると共に、パン生地に直接水を噴霧できるために、パン生地の乾燥を防止できる。
【0087】
なお、この例では、発酵工程における第1の噴霧手段と第2の噴霧手段の動作タイミングが同一となるように、制御装置80は噴霧手段を制御している。しかしながら、この発酵工程における、第1電磁弁95と第2電磁弁96との開閉パターンを異なる構成とし、第1の噴霧手段による水の噴霧と、第2の噴霧手段による水の噴霧と、のタイミングが異なるようにしても勿論よい。
【0088】
焼成工程においては、出来上がりのパンの皮が薄く、パリッとした感じにパンが焼き上がるように、制御装置80は噴霧手段の制御を行う。具体的には、制御装置80は、第1電磁弁95を閉じ、第2電磁弁96は焼成の初期段階において開いた状態とする。そして、制御装置80は、第2電磁弁96が開いている際に、ポンプ92を適宜動作させて水タンク91の水を送り出して、ノズル94bからパン容器50の内部に向けて水を噴霧させる。すなわち、第2の噴霧手段による水の噴霧のみを実行させる。
【0089】
なお、第2電磁弁96が開いている焼成の初期段階については、上記したパリッとした感じのパン皮を有するパンを得るという目的が達成されるように、実験等によって決められるものである。
【0090】
以上説明したように、第2実施形態の自動製パン器2が備える噴霧手段は、第1実施形態の自動製パン器1が備える機能に加えて、パン容器50の内部に水を噴霧する機能を備える。このために、パン生地の乾燥を防止し易い。また、パンをパリッとした感じに焼き上げることが可能となる。
【0091】
更に、第2実施形態の自動製パン器2のように噴霧手段を設けた場合には、混練工程において、パン生地が硬いとユーザが感じた時に、ユーザの指令でパン容器50の内部に水を噴霧させるということも可能となる。なお、この場合には、操作部20に水をパン容器50の内部に噴霧させるための指令を入力するための入力キーを設け、この入力キーからの指令によってマイコン81が噴霧手段を制御するように構成する必要がある。
(第3実施形態)
次に、本発明が適用される第3実施形態の自動製パン器の構成について、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、第3実施形態の自動製パン器の構成を説明するための図である。図10は、第3実施形態の自動製パン器の制御ブロック図である。第3実施形態の自動製パン器3を説明するにあたっては、第1及び第2実施形態の自動製パン器1、2と異なる部分について主に説明し、第1及び第2実施形態の自動製パン器1、2と重複する部分については同一の符号を付して、特に必要がない場合には、その説明を省略する。
【0092】
第3実施形態の自動製パン器3は、まず、粉砕ブレード70(例えば図1参照)を備えない点で第1及び第2実施形態の自動製パン器1、2とは異なる。このため、第3実施形態の自動製パン器3は、小麦や米等の製粉した粉を入手して、これをパン原料としてパンを製造する必要がある。すなわち、自動製パン器3は、それだけでは、穀物粒からパンを製造することはできない構成となっている。
【0093】
また、第3実施形態の自動製パン器3は、パン容器50の外側面50bには水を噴霧させることができず、パン容器50の内部にのみ水を噴霧させることができる構成となっている点で、第1及び第2実施形態の自動製パン器1、2とは異なる。パン容器50の内部に水を噴霧するための構成は、ポンプ92の吐出口と接続されるパイプ93bを、自動製パン器3の背面側の空間を通って蓋30に至らしめ、蓋30の略中央付近においてパイプ93bの端部開口がパン容器50と対向するように設け、この端部にノズル94を取り付けることによってなる。
【0094】
なお、この構成は、第2実施形態の自動製パン器2における、第2の噴霧手段の構成と同様である。そして、本実施形態の場合も、パイプ93bが蓋30の開閉時の動きを邪魔しないように、パイプ93bの少なくとも一部が柔軟製を有する素材で構成されている。
【0095】
また、第3実施形態の自動製パン器3においては、粉砕手段、及び、噴霧手段に備えられる切換手段(電磁弁)がない。このために、図10に示すように、制御装置80はこれらを制御するための回路(粉砕用モータ駆動回路や電磁弁駆動回路)を有しない。
【0096】
続いて、以上のように構成される第3実施形態の自動製パン器3における噴霧手段の使用例について説明する。ここでは、自動製パン器3によって米粉からパンを製造する場合を例に、噴霧手段の使用例を説明する。図11は、第3実施形態の自動製パン器によって米粉からパンを製造する場合に実行されるパンの製造工程を示す図である。
【0097】
なお、ここでは、パン原料として米粉を使用する場合を示すが、これはあくまでも一例であり、パン原料が米粉に限定される趣旨ではない。また、図11における矢印は、その矢印が付された工程で水の噴霧が行われることを示すものである。
【0098】
米粉から自動製パン器3でパンを製造するにあたって、ユーザは、パン容器50に混練ブレード52を取り付ける。そして、所定の量の水をパン容器50に入れた後、所定量の米粉、グルテン、砂糖、塩、ショートニングを入れる。最後に、イースト菌(ドライイースト)を水に触れないようにパン容器50に入れた後に、パン容器50を焼成室40に入れて蓋30を閉じ、操作部20によって米粉を原料とするパンの製造工程が実行されるように設定し、スタートキーを押す。これにより、米粉からパンを製造する工程が開始される。図11に示すように、スタートキーが押されると、混練工程、発酵工程、ガス抜き工程、発酵工程、焼成工程がこの順で順次遂行される。
【0099】
なお、グルテンや、食塩、砂糖、ショートニングといった調味料は、ユーザの好みで投入されるものであり、全てをパン材料として投入しなくてもよい。
【0100】
混練工程においては、噴霧手段を用いた水の噴霧は行わないため、制御装置80はポンプ92を動作させない。ただし、パン生地が硬いとユーザが感じた時に、ユーザの指令でパン容器50の内部に水を噴霧させることができるように構成しても構わない。
【0101】
2度行われる発酵工程においては、いずれの場合も、パン容器50内のパン生地が乾燥しないように噴霧手段の制御が行われる。具体的には、制御装置80は、ポンプ92を適宜動作させて水タンク91の水を送り出して、ノズル94からパン容器50の内部に向けて水を噴霧させる。
【0102】
焼成工程においては、出来上がりのパンの皮が薄く、パリッとした感じにパンが焼き上がるように、制御装置80は噴霧手段の制御を行う。具体的には、制御装置80は、焼成の初期段階において、ポンプ92を適宜動作させて水タンク91の水を送り出して、パン容器50の内部に水を噴霧させる。なお、ここでいう焼成の初期段階は、上記したパリッとした感じのパンを得るという目的が達成されるように実験等によって決められるものである。
【0103】
第3実施形態として示した自動製パン器3のように、穀物粒からのパンを製造する機能を備えない自動製パン器についても、焼成室40内に向けて水を噴霧する噴霧手段を備える構成としてよい。このような自動製パン器3でも、パン生地の乾燥を防止できる構成や、焼成工程において焼成室40へ水を噴霧できる構成を備えていると便利である。
【0104】
また、第3実施形態の自動製パン器3の場合も、第2実施形態の場合と同様に、混練工程において、パン生地が硬いとユーザが感じた時に、ユーザの指令で噴霧手段を用いてパン容器50の内部に水を噴霧させるという構成を備えるようにしても良い。これにより、ユーザは蓋30を開けることなくパン生地に水を吹きかけられる。
【0105】
なお、穀物粒からのパンを製造する機能を備える自動製パン器についても、第3実施形態のように、焼成室40内に向けて水を噴霧する噴霧手段のみを備える構成としてよい。しかし、穀物粒からパンを製造する機能を備える自動製パン器では、パン原料が投入されるパン容器50の温度上昇を抑制する機能を備えるのが好ましく、第1及び第2実施形態のような構成とするのが好ましい。
(その他)
なお、以上に示した実施形態は、本発明が適用された自動製パン器の一例を紹介するものにすぎず、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態の構成に限定されるものではない。
【0106】
例えば、穀物粒からのパンを製造する機能を備えない自動製パン器についても、第1実施形態や第2実施形態で示した噴霧手段を備える構成として勿論構わない。これにより、混練工程におけるパン容器の温度上昇を抑制できると共に、パン生地の乾燥を防止できる自動製パン器を提供できる。
【0107】
また、以上の実施形態で示した、水タンクの水を焼成室内に噴霧する構成は例示であり、他の構成としても勿論構わない。例えば、水タンクや水を噴霧するためのノズルの数は適宜変更しても構わない。勿論、これらの変更等に伴って、水路(例えばパイプによって構成される)の構成ついて、適宜変更して構わない。また、焼成室内に水を噴霧させるノズルの位置についても適宜変更可能である。
【0108】
その他、以上に示した実施形態では、穀物粒を粉砕するための粉砕ブレードを、混練ブレードとは別に設ける構成とした。しかし、これに限らず、混練ブレードが粉砕ブレードを兼ねるようにブレードの構成を工夫し、穀物粒からパンを製造できる自動製パン器が、粉砕と混練で兼用される1つのブレードのみを備える構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、家庭用の自動製パン器に対して好適である。
【符号の説明】
【0110】
1、2、3 自動製パン器
40 焼成室
41 加熱装置(加熱手段)
50 パン容器
50b パン容器の外側面
52 混練ブレード(混練手段の一部)
60a 混練用モータ(混練手段の一部)
60b 粉砕用モータ(粉砕手段の一部)
70 粉砕ブレード(粉砕手段の一部)
80 制御装置(制御手段)
91 水タンク
92 ポンプ(噴霧手段の一部)
93a〜93d パイプ(噴霧手段の一部)
94、94a、94b ノズル(噴霧手段の一部)
95 第1電磁弁(第1の切換手段)
96 第2電磁弁(第2の切換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン原料を投入する容器と、
前記容器内のパン原料をパン生地に練り上げる混練手段と、
前記容器内のパン原料を加熱する加熱手段を有し、前記容器が配置される焼成室と、
水を貯留する水タンクと、
前記水タンクの水を前記焼成室内に噴霧する噴霧手段と、
前記混練手段、前記加熱手段、及び前記噴霧手段の動作を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする自動製パン器。
【請求項2】
パン原料として前記容器内に投入された穀物粒を粉砕する粉砕手段を更に備え、
前記制御手段は、前記混練手段、前記加熱手段、及び前記噴霧手段に加えて前記粉砕手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記噴霧手段は、前記焼成室に配置される前記容器の外面に向けて水を噴霧することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記噴霧手段は、前記焼成室に配置される前記容器の外面に向けて水を噴霧する第1の噴霧手段と、前記容器の内部に向けて水を噴霧する第2の噴霧手段と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記第1の噴霧手段による水の噴霧の可不可を切り換える第1の切換手段と、
前記第2の噴霧手段による水の噴霧の可不可を切り換える第2の切換手段と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の自動製パン器。
【請求項6】
前記容器の外面には凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項7】
前記噴霧手段は、前記焼成室に配置される前記容器の内部に向けて水を噴霧することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項8】
前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いてパン生地を練り上げる混練工程が含まれ、
前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記混練工程において前記容器の外面に向けて水を噴霧させることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項9】
前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いて練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が含まれ、
前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記発酵工程において前記容器の外面に向けて水を噴霧させることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項10】
前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いて練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が含まれ、
前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記発酵工程において前記容器の内部に向けて水を噴霧させることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項11】
前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いて練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が含まれ、
前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記発酵工程において前記容器の外面及び前記容器の内部に向けて水を噴霧させることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項12】
前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記混練手段を用いて練り上げられたパン生地を発酵させた後に焼成する焼成工程が含まれ、
前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記焼成工程の初期段階で前記容器の内部に向けて水を噴霧させることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項13】
前記制御手段が実行させるパンの製造工程には、前記粉砕手段を用いて前記穀物粒を粉砕する粉砕工程が含まれ、
前記制御手段は前記噴霧手段を制御して、前記粉砕工程において前記容器の外面に向けて水を噴霧させることを特徴とする請求項2に記載の自動製パン器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−45413(P2011−45413A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194124(P2009−194124)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】