説明

自動車におけるスペアタイヤの配置

本発明の自動車におけるスペアタイヤ(7)の配置は、自動車のフロア(2)の下の自動車の外側において自動車のリヤアクスル(8)の上に最初は位置するスペアタイヤ(7)を含み、リヤアクスル(8)は、少なくとも1つの横方向部材(10)を有し、自動車の構造に固定された偏向装置(20)が、自動車が衝撃を受けた後に、自動車の座席と燃料タンク(11)との少なくとも一方を回避するように、スペアタイヤ(7)を下向きの方向へ案内し、偏向装置(20)は、スペアタイヤ(7)を、リヤアクスル(8)の横方向部材(10)へ向けて案内する傾向を有する傾斜形状部(30)を有し、横方向部材(10)は、スペアタイヤ(7)の初期位置と燃料タンク(11)との間に配置される。偏向装置(20)は、スペアタイヤ(7)が不動化されているときに、スペアタイヤ(7)と接触していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車におけるスペアタイヤの配置に関し、特に自動車の構造に取り付けられた部材が、上記自動車が衝撃を受けた後に、自動車の座席と燃料タンクとの少なくとも一方を回避するように、スペアタイヤを下向きの方向へ案内する配置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、自動車の後部における衝突の後で、例えば、スペアタイヤが燃料タンクまたは後部座席のシートバックと接触するようになることを妨げることによって、搭乗者を保護することを目的とする。
【0003】
特開2002−321642には、サブセンタメンバが、自動車のリヤサイドメンバの間で、スペアタイヤの上に配置され、サブセンタメンバは、後部衝撃を受けた際に、スペアタイヤの上に落下し、スペアタイヤに路面へ向けた運動を加えるように、あらかじめ成型された、スペアタイヤの配置が開示されている。後部衝撃を受けた際におけるこのような配置の有効性は、衝撃のレベルに依存する。衝撃のレベルが極めて低いために、サブセンタメンバがスペアタイヤの前方へ押圧されないときには、スペアタイヤが燃料タンクまたは後部座席に衝突するリスクがある。他のリスクは、衝撃の強さがサブセンタメンバの後端部から後退して位置してスペアタイヤに衝撃を加えるのに充分でなかったときにも、サブセンタメンバが変形し、スペアタイヤの運動をもたらすことがあることが観察されるということである。さらに、この解決策は、追加の部材を設ける必要があるという欠点を有する。この追加の部材の主要な機能は、衝突の際にスペアタイヤを除去することを可能にすることにあり、最初にあらかじめ成型することを要するこの部材は、追加の重量とコストを要することを意味する。
【特許文献1】特開2002−321642
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、スペアタイヤが、自動車の燃料タンクまたは座席の方向から離れた方向へ確実に案内されることを可能とするスペアタイヤの配置を提供することにある。
【0005】
また本発明は、様々な自動車メーカの不変の目標に応えて、低コストでコンパクトなスペアタイヤの配置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、自動車のフロアの下の自動車の外側において上記自動車のリヤアクスルの上に最初は位置するスペアタイヤを含み、上記リヤアクスルは、少なくとも1つの横方向部材を有する、自動車におけるスペアタイヤの配置であって、上記自動車の構造に固定された少なくとも1つの偏向装置が、上記自動車が衝撃を受けた後に、上記自動車の座席と燃料タンクとの少なくとも一方を回避するように、上記スペアタイヤを下向きの方向へ案内する自動車におけるスペアタイヤの配置を提供する。この装置は、少なくとも1つの上記偏向装置が、上記スペアタイヤを上記リヤアクスルの上記横方向部材へ向けて案内する傾向を有する傾斜形状部を有し、上記横方向部材は、上記スペアタイヤの初期位置と上記燃料タンクとの間に位置することを特徴とする。
【0007】
本発明のその他の特徴によれば:
−少なくとも1つの上記偏向装置は、上記スペアタイヤが不動化されているときに、上記スペアタイヤと接触しており、
−少なくとも1つの上記偏向装置は、上記自動車の後部構造のクロスメンバの下と上記フロアの下へ溶接され、
−少なくとも1つの上記偏向装置は、上記スペアタイヤの方へ向けられ、後方衝突の際に、上記スペアタイヤを上記自動車の底部へ向けて案内するための、上記自動車の後から前へ向けて下向きに縦方向に傾斜した面を有し、
−2つの上記偏向装置は、上記自動車の後部構造のクロスメンバの下と上記フロアの下へ溶接され、各上記偏向装置は、上記スペアタイヤが不動化されているときに、上記スペアタイヤと接触しており、
−各上記偏向装置は、上記スペアタイヤの方へ向けられた支持面を有し、上記支持面は、一方では、後方衝突の際に、上記スペアタイヤを上記自動車の底部へ向けて案内するための、上記自動車の後から前へ向けて下向きに縦方向に傾斜した面であり、他方では、上記スペアタイヤが不動化されているときに、上記スペアタイヤの二重の支持を可能にする、横方向に傾斜した面であり、
−少なくとも1つの上記偏向装置は、上記燃料タンクから上記偏向装置の下へ伸びるアームへ取り付けられ、
−上記偏向装置の上記スペアタイヤの方へ向けられた上記支持面に開口が設けられ、上記開口は栓によって閉じられ、上記栓は、上記偏向装置の上記支持面が上記スペアタイヤと平らに接するように、上記開口の周囲に形成された凹部の中に収容される。
【0008】
また本発明は、上記のいずれか1つの特徴を有する、自動車におけるスペアタイヤの配置を有し、2つの縦方向のアームを接続する少なくとも1つのクロスメンバによって形成された柔軟なアクスルを有することを特徴とする自動車も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のその他の特徴及び利点は、理解のために添付図面を参照する以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。これらの添付図面において:
−図1は、自動車の後部構造の略図であり;
−図2は、本発明による、自動車におけるスペアタイヤの配置の後部構造の側面図であり;
−図3は、本発明による、自動車におけるスペアタイヤの配置の偏向装置の1実施の形態の斜視図であり;
−図4は、本発明による、自動車におけるスペアタイヤの配置の偏向装置の1実施の形態の、自動車のフロアを除く平面図である。
【0010】
以下の記載においては、自動車産業において従来から用いられ、図1の3面体L、V、Tによって示された方向に従って、縦、垂直、横方向を非限定的に採用する。
【0011】
図1に示すように、自動車の後部構造1は、フレームによって形成され、このフレームにフロア2が取り付けられる。このフレームは、自動車の後部へ向かって概ね縦方向に伸びる2つの縦桁3から構成される。これらの縦桁3は、一方では、後部中央のクロスメンバ4によって、他方では、縦桁3の後端部における、後端部のクロスメンバ5によって、自動車に対して横方向に連結される。概ね長方形の後部構造1のフレームの内側にこのようにして形成されたスペース6は、フロア2の上に位置するトランク領域と、自動車の下のスペアタイヤ7の位置に該当する。
【0012】
図2〜4に示すように、スペアタイヤ7は、フロア2の下に位置し、フロア2が溶接される後部中央のクロスメンバ4から後へずらされている。スペアタイヤ7が自動車の下に位置し、フロア2に取り付けられた保持器の中にはないという事実が、後部のオーバハングが極めて短い自動車を得ることを可能にする。しかしながら、構造上の理由によって、このスペアタイヤ7は、自動車のリヤアクスル8のストロークを妨げないように、リヤアクスル8の上に充分高く位置する必要がある。リヤアクスル8には、様々なタイプのものがあることがある。例として、ここでは2つの縦方向のアーム9と横方向部材10とを有する概ね「H状」の形状を有する柔軟なアクスルとする。
【0013】
自動車の燃料タンク11は、周知のように、スペアタイヤ7と燃料タンク11が、後部中央のクロスメンバ4とリヤアクスル8の横方向部材10とによって分離されるように、フロア2の下において、後部中央のクロスメンバ4とリヤアクスル8の前に配置される。
【0014】
本発明によれば、少なくとも1つの偏向装置20が、後部中央のクロスメンバ4に溶接され、スペアタイヤ7の少なくとも1つの支持点を設けるように、自動車の後へ向けられる。偏向装置20は、縦方向に伸びる側面と、概ね長方形の断面とからなる。この側面は、シールされ、閉じた部品であることができ、あるいは、図3、4に示す実施の形態によれば、偏向装置20の後部中央のクロスメンバ4への溶接を可能にするための取付け部22を提供することを可能にする、自動車の前方と後部中央のクロスメンバ4へ向かって開いた側を有することができる。同様に、偏向装置20の上部は、偏向装置20のフロア2との溶接を可能にする、取付け部22を提供するための開いた側を有することができる。
【0015】
偏向装置20の下面24は、概ね平らな面を有し、下面24に、例えば凝縮した水がこの部分に溜まることを回避するための排出孔26と、偏向装置20を、例えば燃料タンク11から伸びるアーム12へ取り付けることを可能にする取付け部品の通過を可能にする孔28が設けられる。この下面24は、自動車の前へ向けられた、後部中央のクロスメンバ4への取付け部22と、自動車の後へ向けられた、偏向装置20の後端部の傾斜形状部30との間を連結する。
【0016】
この後端部の傾斜形状部30は、一方では、取り付け中及び取り付け後におけるスペアタイヤ7の支持を可能にし、他方では、後部衝突の際に、スペアタイヤ7が後部座席と燃料タンク11のいずれとも接触しないようにスペアタイヤ7を導く案内を可能にするように最適化される。
【0017】
偏向装置20aと偏向装置20bとの、2つの偏向装置20を後部中央のクロスメンバへ溶接すると有利である。これらの偏向装置20は、スペアタイヤ7の中心を通る縦方向の軸を含む垂直面に対して対称である。左の偏向装置20a、すなわち自動車の後方から全体を見たときに、上に定義した垂直面の左に位置する偏向装置20aは、自動車の内側へ向けて、及び右側の偏向装置20bへ向けて位置する傾斜形状部30の側部31aが、自動車の外側へ向けて位置する傾斜形状部30の側部32aよりも自動車に対してより前方になるように、横方向に傾斜した傾斜形状部30を有する。右の偏向装置20b、すなわち自動車の後方から全体を見たときに、上に定義した垂直面の右に位置する偏向装置20bは、自動車の内側へ向けて、及び左側の偏向装置20aへ向けて位置する傾斜形状部30の側部31bが、自動車の外側へ向けて位置する傾斜形状部30の側部32bよりも自動車に対してより前方になるように、横方向に傾斜した傾斜形状部30を有する。実際、そこにスペアタイヤ7が載る2つの偏向装置の支持面34は、スペアタイヤ7の改良された支持を可能にするように、互いに向かって向けられている。
【0018】
各偏向装置の傾斜形状部30は、横方向の傾斜に加えて、後部衝突の際に自動車の底部へ向けてスペアタイヤ7を案内するための、自動車の後部から前部へ向けて下方に傾斜した、縦方向に傾斜した面36を有する。傾斜形状部30の縦方向に傾斜した面36は、スペアタイヤ7がリヤアクスル8の横方向部材10へ向けて案内されるように設計される。また、燃料タンク11から伸びるアーム12の位置と厚さは、偏向装置20の燃料タンクに対する連結を容易にするように最適化される。このようにしないと、衝撃を受けた際に、アーム12がスペアタイヤ7の軌跡を妨害する。衝撃が、スペアタイヤ7を長い距離にわたって移動させるのに充分大きいときには、スペアタイヤ7は、横方向部材10と接触するようになり、衝撃によって発生されたエネルギは、シャーシの構造によって吸収される。燃料タンク11とリヤアクスル8の横方向部材10との間に存在する初期間隔は、燃料タンク11が打撃を受け、穴が開けられるリスクなしに、衝撃のエネルギの吸収が可能であるように、リヤアクスル8が衝撃力を受けて移動することを可能にする。
【0019】
図3に示すように、偏向装置に、シールおよび防錆処理のためのワックスの注入を可能にする開口38が設けられる。偏向装置の傾斜形状部30に位置するこの開口38は、自動車の下へのスペアタイヤ7の取付前であって、偏向装置の後部中央のクロスメンバ4及びフロア2への溶接後における、ワックス注入用のノズルの通過を可能にする。開口38に適合化された栓40は、ワックスの注入後に、偏向装置が封止されることを可能にする。偏向装置20の支持面34の開口38の周りに、栓40が支持面34から突出することがなく、また栓40が、後部衝撃を受けたときにおけるスペアタイヤ7の、偏向装置の縦方向に傾斜した面に沿った移動を妨げないように、スペアタイヤ7に対する凹部42が設けられる。
【0020】
本発明は、例としてのみ開示され、図示された実施の形態に限定されるものではない。従って、偏向装置の傾斜の方向は、スペアタイヤを案内するために望まれる個所に応じて、変更することができる。この傾斜の方向は、スペアタイヤが自動車の前部に位置し、前部衝突の場合に対応するように、容易に変更することが可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロア(2)の下の自動車の外側において上記自動車のリヤアクスル(8)の上に最初は位置するスペアタイヤ(7)を含み、上記リヤアクスル(8)は、少なくとも1つの横方向部材(10)を有する、自動車におけるスペアタイヤ(7)の配置であって、上記自動車の構造に固定された少なくとも1つの偏向装置(20)が、上記自動車が衝撃を受けた後に、上記自動車の座席と燃料タンク(11)との少なくとも一方を回避するように、上記スペアタイヤ(7)を下向きの方向へ案内し、少なくとも1つの上記偏向装置(20)は、上記スペアタイヤ(7)を、上記リヤアクスル(8)の上記横方向部材(10)へ向けて案内する傾向を有する傾斜形状部(30)を有し、上記横方向部材(10)は、上記スペアタイヤ(7)の初期位置と上記燃料タンク(11)との間に位置する、自動車におけるスペアタイヤの配置において、少なくとも1つの上記偏向装置(20)は、上記スペアタイヤ(7)が不動化されているときに、上記スペアタイヤ(7)と接触していることを特徴とする、自動車におけるスペアタイヤの配置。
【請求項2】
少なくとも1つの上記偏向装置(20)が、上記自動車の後部構造(1)のクロスメンバ(4)の下と上記フロア(2)の下へ溶接されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車におけるスペアタイヤの配置。
【請求項3】
少なくとも1つの上記偏向装置(20)が、上記スペアタイヤ(7)の方へ向けられ、後方衝突の際に、上記スペアタイヤ(7)を上記自動車の底部へ向けて案内するための、上記自動車の後から前へ向けて下向きに縦方向に傾斜した面(36)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車におけるスペアタイヤの配置。
【請求項4】
2つの上記偏向装置(20a、20b)が、上記自動車の後部構造(1)のクロスメンバ(4)の下と上記フロア(2)の下へ溶接され、各上記偏向装置(20a、20b)は、上記スペアタイヤ(7)が不動化されているときに、上記スペアタイヤ(7)と接触していることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車におけるスペアタイヤの配置。
【請求項5】
各上記偏向装置(20a、20b)が、上記スペアタイヤ(7)の方へ向けられた支持面(34)を有し、上記支持面(34)は、一方では、後方衝突の際に、上記スペアタイヤ(7)を上記自動車の底部へ向けて案内するための、上記自動車の後から前へ向けて下向きに縦方向に傾斜した面(36)であり、他方では、上記スペアタイヤ(7)が不動化されているときに、上記スペアタイヤ(7)の二重の支持を可能にする、横方向に傾斜した面であることを特徴とする、請求項4に記載の自動車におけるスペアタイヤの配置。
【請求項6】
少なくとも1つの上記偏向装置(20)が、上記燃料タンク(11)から上記偏向装置(20)の下へ伸びるアーム(12)へ取り付けられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の自動車におけるスペアタイヤの配置。
【請求項7】
上記偏向装置(20)の上記スペアタイヤ(7)の方へ向けられた上記支持面(34)に開口(38)が設けられ、上記開口(38)は栓(40)によって閉じられ、上記栓(40)は、上記偏向装置(20)の上記支持面(34)が上記スペアタイヤ(7)と平らに接するように、上記開口(38)の周囲に形成された凹部(42)の中に収容されることを特徴とする、請求項5に記載の自動車におけるスペアタイヤの配置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の自動車におけるスペアタイヤの配置を有し、2つの縦方向のアームを接続する少なくとも1つのクロスメンバによって形成された柔軟なアクスルを有することを特徴とする自動車。

【公表番号】特表2007−537922(P2007−537922A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517368(P2007−517368)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050224
【国際公開番号】WO2005/113319
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(503471868)
【Fターム(参考)】