自動車のルーフ構造
【課題】ルーフサイドレールのレールフランジがルーフリインフォースメントの突き当てにより捲れ上がらないようにして、ルーフリインフォースメントの抜けを防止するようにした自動車のルーフ構造を提供する。
【解決手段】ルーフサイドレール11の車室側に突出したレールフランジ11aの下側でルーフリインフォースメント12の端部がブラケット13に連結している自動車のルーフ構造10で、ブラケット13が車幅方向に延出した縦壁13cを有し、縦壁の縁13dをルーフリインフォースメントの長手方向の延長上に配置すると共に、縁の下端が縁の上端の位置から車両外側にずれて配置されるように縦壁の縁を車両外側下方へ傾斜して形成し、車両側面衝突時にルーフリインフォースメントの端部がブラケットの縦壁に当接すると、ルーフリインフォースメントの端部が縦壁の縁にガイドされてレールフランジの下側に移動する。
【解決手段】ルーフサイドレール11の車室側に突出したレールフランジ11aの下側でルーフリインフォースメント12の端部がブラケット13に連結している自動車のルーフ構造10で、ブラケット13が車幅方向に延出した縦壁13cを有し、縦壁の縁13dをルーフリインフォースメントの長手方向の延長上に配置すると共に、縁の下端が縁の上端の位置から車両外側にずれて配置されるように縦壁の縁を車両外側下方へ傾斜して形成し、車両側面衝突時にルーフリインフォースメントの端部がブラケットの縦壁に当接すると、ルーフリインフォースメントの端部が縦壁の縁にガイドされてレールフランジの下側に移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフサイドレールとルーフリインフォースメントとを備えた自動車のルーフ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、図7に示すように、自動車のルーフ構造1は、ルーフの両側縁に沿ってそれぞれ延びるルーフサイドレール2と、これらのルーフサイドレール2をその長手方向中央付近にて横方向に互いに連結するように取り付けたルーフリインフォースメント3と、このルーフリインフォースメント3の両端をルーフサイドレール2に対して連結するブラケット4(図9〜11)と、を含んで構成されている。図中に示す矢印Frは車両前方、Upは車両上方、Wは車幅方向を示す。
【0003】
ルーフリインフォースメント3は、図8に示すように、二枚の鋼板、即ち上方のルーフリインフォースメントアッパー3aと、下方のルーフリインフォースメントロア3bとを接合して構成される。
【0004】
図9に示すように、ルーフリインフォースメントアッパー3aの先端はルーフサイドレール2の上端から車室側に向かって突出するレールフランジ2aから離反した状態で対向していると共に、図10に示すように、ルーフリインフォースメントロア3bの先端はブラケット4のフランジ部4aに接合している。
【0005】
ブラケット4はルーフリインフォースメント3と同様に鋼製であって、フランジ部4aとは反対側の端部領域4bが、図9に示すようにルーフサイドレール2の車室側の面に固定されている。なお、ブラケット4は、自動車のセンターピラー5(図7参照)の上端部とルーフリインフォースメント3との接合ポイントに近接した位置に配設されている。
【0006】
このように構成された自動車のルーフ構造1では、車両側面衝突時に、衝突側のセンターピラー5に加えられた荷重は、ルーフサイドレール2,ブラケット4を介してルーフリインフォースメント3に伝達され、さらに反対側のブラケット4を介して反対側のルーフサイドレール2に伝達される。このように、衝突側のルーフサイドレール2に加えられる荷重が軽減されることで、ルーフサイドレール2の車室内側への変形が抑制される。
【0007】
これに対して、特許文献1には、側面からの荷重による応力集中を防止したセンターピラー上部の結合構造が開示されている。この結合構造では、ルーフサイドレールにブラケットの一端を接合すると共に、このブラケットに形成した段部をルーフサイドレールのフランジと接合することで、ルーフサイドレールとセンターピラーリインフォースとから成る閉じた断面構造を形成する。そして、センターピラーリインフォースのブラケットとの結合部に形成したフランジをルーフリインフォースのフランジ及びブラケットのフランジによって挟持して接合することで、センターピラーからルーフリインフォースで連続した断面構造とする。
【0008】
このような構成により、側方からセンターピラーに荷重が加えられたとき、センターピラーの撓みにより発生する応力は、センターピラーからルーフリインフォースに分散されるので、センターピラーとルーフリインフォースとの結合部近傍に応力が集中することが回避される。
【特許文献1】特開平09−175429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した自動車のルーフ構造1では、車両側面衝突時に、例えば図11(A)において矢印Aで示すように、右方からセンターピラー5に対して荷重が加えられたとき、まず衝突初期には、図12(A)に示すように、この荷重がセンターピラー5からサイドレール2を介してルーフリインフォースメント3に伝達される。
【0010】
そして、この荷重がルーフリインフォースメント3に伝達された後、例えば20msが経過したとき、図11(B)に示すように、ルーフサイドレール2のフランジ部2aのエッジ2bが、ルーフリインフォースメントロア3bの先端に突き当たってしまい、さらに30ms後には、図12(B)に示すように、ルーフサイドレール2のフランジ部2aが起き上がってしまう。
【0011】
この状態で、さらに荷重によりルーフサイドレール2が左方に変形すると、40ms後には、ルーフサイドレール2のフランジ部2aのエッジ2bがルーフリインフォースメント3と当接していることから、図11(C)及び図13に示すように、ルーフサイドレール2のレールフランジ2aが捲れ上がることになる。
このようにして、ルーフサイドレール2のレールフランジ2aが捲れ上がってしまうと、ルーフリインフォースメント3がルーフサイドレール2から外れて、所謂ルーフリインフォースメント3の抜けが発生するおそれがある。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みて創作されたものであり、車両側面衝突時に、ルーフサイドレールのレールフランジがルーフリインフォースメントの突き当てにより捲れ上がらないようにした自動車のルーフ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、自動車のルーフ両側縁にそれぞれ設けたルーフサイドレールと、これらのルーフサイドレールを連結するように取り付けたルーフリインフォースメントと、ルーフサイドレールにそれぞれ固定されていてルーフリインフォースメントの端部に連結したブラケットと、を備え、ルーフサイドレールの車室側に突出したレールフランジの下側でルーフリインフォースメントの端部がブラケットに連結している自動車のルーフ構造であって、ブラケットが車幅方向に延出した縦壁を有し、縦壁の縁がルーフリインフォースメントの長手方向の延長上に配置されていると共に、上記縁の下端がこの縁の上端の位置から車両外側にずれて配置されるように縦壁の縁が車両外側下方へ傾斜して形成されており、車両側面衝突時に、ルーフリインフォースメントの端部がブラケットの縦壁に当接すると、ルーフリインフォースメントの端部が縦壁の縁にガイドされてレールフランジの下側に移動することを特徴としている。
本発明の自動車のルーフ構造において、好ましくは、ルーフリインフォースメントの端部は楔状に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ルーフリインフォースメントの両端部が車両側面衝突時にレールフランジのエッジに当接することなく、ブラケットの端面の縦壁に接触するので、車両側面衝突時に、一方のルーフサイドレールからルーフリインフォースメントに対して内側に向かって荷重が加えられると、この荷重が、一方のブラケットからルーフリインフォースメントを介して他方のブラケットを介して、反対側のルーフサイドレールに伝達されるので、一方のルーフサイドレールに加えられる荷重が軽減される。
【0015】
その際、ルーフリインフォースメントの両端部が、ルーフサイドレールのレールフランジのエッジに当接することがないので、ルーフサイドレールのレールフランジが、ルーフリインフォースメントとの突き当てによって捲れ上がるようなことがない。
従って、ルーフサイドレールのレールフランジの捲れ上がりによって、ルーフリインフォースメントの抜けが発生することがないので、車両側面衝突による衝撃が確実に吸収され、ルーフリインフォースメントの軸入力荷重が高められる。これにより、車両側面衝突性能が向上する。
【0016】
ルーフリインフォースメントの両端部が、その上面において断面楔形状に切り欠かれている場合には、車両側面衝突時に、ルーフリインフォースメントの両端部がルーフサイドレールのレールフランジのエッジに当接することが確実に回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図中に示す矢印Frは車両前方、Upは車両上方、Wは車幅方向を示す。
図1は本発明の一実施形態に係る自動車のルーフ構造10の構成を示している。自動車のルーフ構造10は、図7に示した自動車のルーフ構造とほぼ同様に構成されており、ルーフの両側縁に沿って延びた一対のルーフサイドレール11と、これらのルーフサイドレール11をその長手方向中央付近にて横方向に互いに連結したルーフリインフォースメント12と、ルーフサイドレール11にそれぞれ固定されていてルーフリインフォースメント12の端部に連結したブラケット13と、を備えている。
【0018】
ここで、このルーフリインフォースメント12は、図8に示した従来のルーフリインフォースメント3と同様に、二枚の鋼板、即ち上方のルーフリインフォースメントアッパー12aと、下方のルーフリインフォースメントロア12bとを重ね合わせて構成されている。
【0019】
ルーフリインフォースメントアッパー12aの先端は、図1に示すように、ルーフサイドレール11の上端から車室側に向かって突出したレールフランジ11aから離反した状態で対向していると共に、ルーフリインフォースメントロア12bの先端は、図2に示すように、ブラケット13のフランジ部13aに例えばスポット溶接によって固定されている。
【0020】
ブラケット13は、ルーフリインフォースメント12と同様に鋼製であって、このブラケット13のフランジ部13aとは反対側の端部領域13bが、図1に示すように、ルーフサイドレール11の車室側の面に固定されている。このブラケット13は、自動車のセンターピラーの上端部とルーフリインフォースメント11との接合ポイントに近接した位置に配設されている。
【0021】
以上の構成は、図9及び図10に示した従来の自動車のルーフ構造1と同様の構成であるが、本発明による自動車のルーフ構造10は、以下のように構成されている点に特徴がある。
本実施形態に係るブラケット13は車幅方向に延出した縦壁13cを有し、縦壁13cの縁13dが、ルーフリインフォースメント12の長手方向の延長上に配置されていると共に、車両外側下方へ延びて形成されている。即ち、ルーフリインフォースメント12の端部と対向するブラケット13の縁13dは、縁13dの下端131が縁13dの上端132の位置から車両外側に所定距離ずれて配置されて、車室側から車両側方へ行くにつれて下がるように形成されている。これにより、ブラケット13の端面は、図2に示すように、その下端で奥行きがdだけ凹むように形成されている。
【0022】
本実施形態に係るルーフリインフォースメント12にあっては、図2に示すように、ルーフリインフォースメントロア12bの両端部の先端上面が斜めに切り欠かれて、このルーフリインフォースメントロア12bの両端部は楔形状に形成されている。これにより、ルーフリインフォースメント12は、そのロア12bの両端部が上下方向に関して先細になり、厚さがtだけ薄くなるように形成されている。
【0023】
本実施形態による自動車のルーフ構造10は以上のように構成されており、車両側面衝突時において、例えば図3(A)にて矢印Bで示すように、右方からセンターピラー14に対して荷重が加えられたとき、まず衝突初期には、図4(A)に示すように、この荷重がセンターピラー14からルーフサイドレール11を介してルーフリインフォースメント12に伝達される。
【0024】
そして、この荷重がルーフリインフォースメント12に伝達された後、例えば20msが経過したとき、図3(B)に示すように、ルーフサイドレール11のフランジ部11aのエッジ11bが、ルーフリインフォースメントロア12bの先端に接近する。
このとき、前述したように、ルーフリインフォースメントロア12bの先端が楔形状に切り欠かれていることにより、このロア12bの先端が、ルーフサイドレール11のフランジ部11aのエッジ11bには当接せず、ブラケット13の縦壁13cに当接することになる。
【0025】
さらに、例えば30ms後には、図4(B)に示すように、ルーフリインフォースメントロア12bの先端がブラケット13の縦壁13cの傾斜した縁13dに沿って下方に移動することにより、ルーフサイドレール11のフランジ部11aの下側に潜り込むことになる。
【0026】
そして、例えば40ms後に、図3(C)及び図5に示すように、荷重によりルーフリインフォースメント12の端部にブラケット13の縁13dが押し付けられてブラケット13が変形してさらにルーフサイドレール11が左方に変形したとしても、既にルーフリインフォースメントロア12bの先端がルーフサイドレール11のフランジ部11aの下側に潜り込んでいるので、ルーフリインフォースメント12の端部によってルーフサイドレール11のレールフランジ11aが捲れ上がるようなことはない。
【0027】
このように、本発明の自動車のルーフ構造10では、車両側面衝突時に、ルーフリインフォースメント12の端部がルーフサイドレール11のフランジ部11aの下側に潜り込むので、所謂ルーフリインフォースメント12の抜けの発生を回避できる。これにより、車両側面衝突性能をより一層向上することができる。
【0028】
図6は、上述した自動車のルーフ構造10の車両側面衝突のシミュレーションにおけるルーフリインフォースメントの軸入力荷重の時間経過を示すグラフである。
図1に示した自動車のルーフ構造10において、t=4mm,d=3.5mmとしたときのルーフリインフォースメント12の軸入力荷重は、図6のグラフにて符号Cで示すように変化し、最大軸荷重Fyは、約20kNとなる。これに対して、従来の自動車のルーフ構造1(t=0mm,d=0mm)の場合の軸入力荷重は、図6のグラフにて符号Dで示すように変化し、最大軸荷重Fyは、約17kNとなる。従って、本発明による自動車のルーフ構造10では、ルーフリインフォースメント12の軸入力荷重は、従来と比較して約13%増大することになり、車両側面衝突性能が向上することになる。
【0029】
以上説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。本発明は、例えばフロントピラー又はリヤピラーとサイドレール11の前端又は後端との接合ポイントに近接して配置されたブラケットと、このブラケットに支持されるルーフリインフォースメントとに関しても、適用できることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による自動車のルーフ構造の一実施形態におけるルーフサイドレールとルーフリインフォースメントの連結部分を示す部分拡大断面図である。
【図2】図1の自動車のルーフ構造における連結部分をより詳細に示す部分拡大断面図である。
【図3】図1の自動車のルーフ構造における車両側面衝突時の変形状態を順次に示す概略断面図である。
【図4】(A)は図3の車両側面衝突時の初期を、(B)は30秒後の変形状態をそれぞれ示す部分拡大斜視図である。
【図5】図3の車両側面衝突時の40秒後の変形状態を示す部分拡大斜視図である。
【図6】図1の自動車のルーフ構造及び従来の自動車のルーフ構造におけるルーフリインフォースメントの軸入力荷重の時間経過を示すグラフである。
【図7】従来の自動車のルーフ構造の一例の構成を示す概略斜視図である。
【図8】図7のα−α線断面図である。
【図9】図7の自動車のルーフ構造におけるルーフサイドレールとルーフリインフォースメントの連結部分を示す部分拡大断面図である。
【図10】図9の連結部分をより詳細に示す部分拡大断面図である。
【図11】図7の自動車のルーフ構造における車両側面衝突時の変形状態を順次に示す概略断面図である。
【図12】(A)は図11の車両側面衝突時の初期を、(B)は30秒後の変形状態をそれぞれ示す部分拡大斜視図である。
【図13】図11の車両側面衝突時のルーフサイドレールのレールフランジが捲れ上がった状態を示す部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10 自動車のルーフ構造
11 ルーフサイドレール
11a レールフランジ
11b エッジ
12 ルーフリインフォースメント
12a ルーフリインフォースメントアッパー
12b ルーフリインフォースメントロア
13 ブラケット
13a フランジ部
13b 反対側の端部領域
13c ブラケットの縦壁
13d ブラケットの縦壁の縁
14 センターピラー
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフサイドレールとルーフリインフォースメントとを備えた自動車のルーフ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、図7に示すように、自動車のルーフ構造1は、ルーフの両側縁に沿ってそれぞれ延びるルーフサイドレール2と、これらのルーフサイドレール2をその長手方向中央付近にて横方向に互いに連結するように取り付けたルーフリインフォースメント3と、このルーフリインフォースメント3の両端をルーフサイドレール2に対して連結するブラケット4(図9〜11)と、を含んで構成されている。図中に示す矢印Frは車両前方、Upは車両上方、Wは車幅方向を示す。
【0003】
ルーフリインフォースメント3は、図8に示すように、二枚の鋼板、即ち上方のルーフリインフォースメントアッパー3aと、下方のルーフリインフォースメントロア3bとを接合して構成される。
【0004】
図9に示すように、ルーフリインフォースメントアッパー3aの先端はルーフサイドレール2の上端から車室側に向かって突出するレールフランジ2aから離反した状態で対向していると共に、図10に示すように、ルーフリインフォースメントロア3bの先端はブラケット4のフランジ部4aに接合している。
【0005】
ブラケット4はルーフリインフォースメント3と同様に鋼製であって、フランジ部4aとは反対側の端部領域4bが、図9に示すようにルーフサイドレール2の車室側の面に固定されている。なお、ブラケット4は、自動車のセンターピラー5(図7参照)の上端部とルーフリインフォースメント3との接合ポイントに近接した位置に配設されている。
【0006】
このように構成された自動車のルーフ構造1では、車両側面衝突時に、衝突側のセンターピラー5に加えられた荷重は、ルーフサイドレール2,ブラケット4を介してルーフリインフォースメント3に伝達され、さらに反対側のブラケット4を介して反対側のルーフサイドレール2に伝達される。このように、衝突側のルーフサイドレール2に加えられる荷重が軽減されることで、ルーフサイドレール2の車室内側への変形が抑制される。
【0007】
これに対して、特許文献1には、側面からの荷重による応力集中を防止したセンターピラー上部の結合構造が開示されている。この結合構造では、ルーフサイドレールにブラケットの一端を接合すると共に、このブラケットに形成した段部をルーフサイドレールのフランジと接合することで、ルーフサイドレールとセンターピラーリインフォースとから成る閉じた断面構造を形成する。そして、センターピラーリインフォースのブラケットとの結合部に形成したフランジをルーフリインフォースのフランジ及びブラケットのフランジによって挟持して接合することで、センターピラーからルーフリインフォースで連続した断面構造とする。
【0008】
このような構成により、側方からセンターピラーに荷重が加えられたとき、センターピラーの撓みにより発生する応力は、センターピラーからルーフリインフォースに分散されるので、センターピラーとルーフリインフォースとの結合部近傍に応力が集中することが回避される。
【特許文献1】特開平09−175429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した自動車のルーフ構造1では、車両側面衝突時に、例えば図11(A)において矢印Aで示すように、右方からセンターピラー5に対して荷重が加えられたとき、まず衝突初期には、図12(A)に示すように、この荷重がセンターピラー5からサイドレール2を介してルーフリインフォースメント3に伝達される。
【0010】
そして、この荷重がルーフリインフォースメント3に伝達された後、例えば20msが経過したとき、図11(B)に示すように、ルーフサイドレール2のフランジ部2aのエッジ2bが、ルーフリインフォースメントロア3bの先端に突き当たってしまい、さらに30ms後には、図12(B)に示すように、ルーフサイドレール2のフランジ部2aが起き上がってしまう。
【0011】
この状態で、さらに荷重によりルーフサイドレール2が左方に変形すると、40ms後には、ルーフサイドレール2のフランジ部2aのエッジ2bがルーフリインフォースメント3と当接していることから、図11(C)及び図13に示すように、ルーフサイドレール2のレールフランジ2aが捲れ上がることになる。
このようにして、ルーフサイドレール2のレールフランジ2aが捲れ上がってしまうと、ルーフリインフォースメント3がルーフサイドレール2から外れて、所謂ルーフリインフォースメント3の抜けが発生するおそれがある。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みて創作されたものであり、車両側面衝突時に、ルーフサイドレールのレールフランジがルーフリインフォースメントの突き当てにより捲れ上がらないようにした自動車のルーフ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、自動車のルーフ両側縁にそれぞれ設けたルーフサイドレールと、これらのルーフサイドレールを連結するように取り付けたルーフリインフォースメントと、ルーフサイドレールにそれぞれ固定されていてルーフリインフォースメントの端部に連結したブラケットと、を備え、ルーフサイドレールの車室側に突出したレールフランジの下側でルーフリインフォースメントの端部がブラケットに連結している自動車のルーフ構造であって、ブラケットが車幅方向に延出した縦壁を有し、縦壁の縁がルーフリインフォースメントの長手方向の延長上に配置されていると共に、上記縁の下端がこの縁の上端の位置から車両外側にずれて配置されるように縦壁の縁が車両外側下方へ傾斜して形成されており、車両側面衝突時に、ルーフリインフォースメントの端部がブラケットの縦壁に当接すると、ルーフリインフォースメントの端部が縦壁の縁にガイドされてレールフランジの下側に移動することを特徴としている。
本発明の自動車のルーフ構造において、好ましくは、ルーフリインフォースメントの端部は楔状に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ルーフリインフォースメントの両端部が車両側面衝突時にレールフランジのエッジに当接することなく、ブラケットの端面の縦壁に接触するので、車両側面衝突時に、一方のルーフサイドレールからルーフリインフォースメントに対して内側に向かって荷重が加えられると、この荷重が、一方のブラケットからルーフリインフォースメントを介して他方のブラケットを介して、反対側のルーフサイドレールに伝達されるので、一方のルーフサイドレールに加えられる荷重が軽減される。
【0015】
その際、ルーフリインフォースメントの両端部が、ルーフサイドレールのレールフランジのエッジに当接することがないので、ルーフサイドレールのレールフランジが、ルーフリインフォースメントとの突き当てによって捲れ上がるようなことがない。
従って、ルーフサイドレールのレールフランジの捲れ上がりによって、ルーフリインフォースメントの抜けが発生することがないので、車両側面衝突による衝撃が確実に吸収され、ルーフリインフォースメントの軸入力荷重が高められる。これにより、車両側面衝突性能が向上する。
【0016】
ルーフリインフォースメントの両端部が、その上面において断面楔形状に切り欠かれている場合には、車両側面衝突時に、ルーフリインフォースメントの両端部がルーフサイドレールのレールフランジのエッジに当接することが確実に回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図中に示す矢印Frは車両前方、Upは車両上方、Wは車幅方向を示す。
図1は本発明の一実施形態に係る自動車のルーフ構造10の構成を示している。自動車のルーフ構造10は、図7に示した自動車のルーフ構造とほぼ同様に構成されており、ルーフの両側縁に沿って延びた一対のルーフサイドレール11と、これらのルーフサイドレール11をその長手方向中央付近にて横方向に互いに連結したルーフリインフォースメント12と、ルーフサイドレール11にそれぞれ固定されていてルーフリインフォースメント12の端部に連結したブラケット13と、を備えている。
【0018】
ここで、このルーフリインフォースメント12は、図8に示した従来のルーフリインフォースメント3と同様に、二枚の鋼板、即ち上方のルーフリインフォースメントアッパー12aと、下方のルーフリインフォースメントロア12bとを重ね合わせて構成されている。
【0019】
ルーフリインフォースメントアッパー12aの先端は、図1に示すように、ルーフサイドレール11の上端から車室側に向かって突出したレールフランジ11aから離反した状態で対向していると共に、ルーフリインフォースメントロア12bの先端は、図2に示すように、ブラケット13のフランジ部13aに例えばスポット溶接によって固定されている。
【0020】
ブラケット13は、ルーフリインフォースメント12と同様に鋼製であって、このブラケット13のフランジ部13aとは反対側の端部領域13bが、図1に示すように、ルーフサイドレール11の車室側の面に固定されている。このブラケット13は、自動車のセンターピラーの上端部とルーフリインフォースメント11との接合ポイントに近接した位置に配設されている。
【0021】
以上の構成は、図9及び図10に示した従来の自動車のルーフ構造1と同様の構成であるが、本発明による自動車のルーフ構造10は、以下のように構成されている点に特徴がある。
本実施形態に係るブラケット13は車幅方向に延出した縦壁13cを有し、縦壁13cの縁13dが、ルーフリインフォースメント12の長手方向の延長上に配置されていると共に、車両外側下方へ延びて形成されている。即ち、ルーフリインフォースメント12の端部と対向するブラケット13の縁13dは、縁13dの下端131が縁13dの上端132の位置から車両外側に所定距離ずれて配置されて、車室側から車両側方へ行くにつれて下がるように形成されている。これにより、ブラケット13の端面は、図2に示すように、その下端で奥行きがdだけ凹むように形成されている。
【0022】
本実施形態に係るルーフリインフォースメント12にあっては、図2に示すように、ルーフリインフォースメントロア12bの両端部の先端上面が斜めに切り欠かれて、このルーフリインフォースメントロア12bの両端部は楔形状に形成されている。これにより、ルーフリインフォースメント12は、そのロア12bの両端部が上下方向に関して先細になり、厚さがtだけ薄くなるように形成されている。
【0023】
本実施形態による自動車のルーフ構造10は以上のように構成されており、車両側面衝突時において、例えば図3(A)にて矢印Bで示すように、右方からセンターピラー14に対して荷重が加えられたとき、まず衝突初期には、図4(A)に示すように、この荷重がセンターピラー14からルーフサイドレール11を介してルーフリインフォースメント12に伝達される。
【0024】
そして、この荷重がルーフリインフォースメント12に伝達された後、例えば20msが経過したとき、図3(B)に示すように、ルーフサイドレール11のフランジ部11aのエッジ11bが、ルーフリインフォースメントロア12bの先端に接近する。
このとき、前述したように、ルーフリインフォースメントロア12bの先端が楔形状に切り欠かれていることにより、このロア12bの先端が、ルーフサイドレール11のフランジ部11aのエッジ11bには当接せず、ブラケット13の縦壁13cに当接することになる。
【0025】
さらに、例えば30ms後には、図4(B)に示すように、ルーフリインフォースメントロア12bの先端がブラケット13の縦壁13cの傾斜した縁13dに沿って下方に移動することにより、ルーフサイドレール11のフランジ部11aの下側に潜り込むことになる。
【0026】
そして、例えば40ms後に、図3(C)及び図5に示すように、荷重によりルーフリインフォースメント12の端部にブラケット13の縁13dが押し付けられてブラケット13が変形してさらにルーフサイドレール11が左方に変形したとしても、既にルーフリインフォースメントロア12bの先端がルーフサイドレール11のフランジ部11aの下側に潜り込んでいるので、ルーフリインフォースメント12の端部によってルーフサイドレール11のレールフランジ11aが捲れ上がるようなことはない。
【0027】
このように、本発明の自動車のルーフ構造10では、車両側面衝突時に、ルーフリインフォースメント12の端部がルーフサイドレール11のフランジ部11aの下側に潜り込むので、所謂ルーフリインフォースメント12の抜けの発生を回避できる。これにより、車両側面衝突性能をより一層向上することができる。
【0028】
図6は、上述した自動車のルーフ構造10の車両側面衝突のシミュレーションにおけるルーフリインフォースメントの軸入力荷重の時間経過を示すグラフである。
図1に示した自動車のルーフ構造10において、t=4mm,d=3.5mmとしたときのルーフリインフォースメント12の軸入力荷重は、図6のグラフにて符号Cで示すように変化し、最大軸荷重Fyは、約20kNとなる。これに対して、従来の自動車のルーフ構造1(t=0mm,d=0mm)の場合の軸入力荷重は、図6のグラフにて符号Dで示すように変化し、最大軸荷重Fyは、約17kNとなる。従って、本発明による自動車のルーフ構造10では、ルーフリインフォースメント12の軸入力荷重は、従来と比較して約13%増大することになり、車両側面衝突性能が向上することになる。
【0029】
以上説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。本発明は、例えばフロントピラー又はリヤピラーとサイドレール11の前端又は後端との接合ポイントに近接して配置されたブラケットと、このブラケットに支持されるルーフリインフォースメントとに関しても、適用できることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による自動車のルーフ構造の一実施形態におけるルーフサイドレールとルーフリインフォースメントの連結部分を示す部分拡大断面図である。
【図2】図1の自動車のルーフ構造における連結部分をより詳細に示す部分拡大断面図である。
【図3】図1の自動車のルーフ構造における車両側面衝突時の変形状態を順次に示す概略断面図である。
【図4】(A)は図3の車両側面衝突時の初期を、(B)は30秒後の変形状態をそれぞれ示す部分拡大斜視図である。
【図5】図3の車両側面衝突時の40秒後の変形状態を示す部分拡大斜視図である。
【図6】図1の自動車のルーフ構造及び従来の自動車のルーフ構造におけるルーフリインフォースメントの軸入力荷重の時間経過を示すグラフである。
【図7】従来の自動車のルーフ構造の一例の構成を示す概略斜視図である。
【図8】図7のα−α線断面図である。
【図9】図7の自動車のルーフ構造におけるルーフサイドレールとルーフリインフォースメントの連結部分を示す部分拡大断面図である。
【図10】図9の連結部分をより詳細に示す部分拡大断面図である。
【図11】図7の自動車のルーフ構造における車両側面衝突時の変形状態を順次に示す概略断面図である。
【図12】(A)は図11の車両側面衝突時の初期を、(B)は30秒後の変形状態をそれぞれ示す部分拡大斜視図である。
【図13】図11の車両側面衝突時のルーフサイドレールのレールフランジが捲れ上がった状態を示す部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10 自動車のルーフ構造
11 ルーフサイドレール
11a レールフランジ
11b エッジ
12 ルーフリインフォースメント
12a ルーフリインフォースメントアッパー
12b ルーフリインフォースメントロア
13 ブラケット
13a フランジ部
13b 反対側の端部領域
13c ブラケットの縦壁
13d ブラケットの縦壁の縁
14 センターピラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のルーフ両側縁にそれぞれ設けたルーフサイドレールと、これらのルーフサイドレールを連結するように取り付けたルーフリインフォースメントと、上記ルーフサイドレールにそれぞれ固定されていて上記ルーフリインフォースメントの端部に連結したブラケットと、を備え、上記ルーフサイドレールの車室側に突出したレールフランジの下側で上記ルーフリインフォースメントの端部が上記ブラケットに連結している自動車のルーフ構造であって、
上記ブラケットが車幅方向に延出した縦壁を有し、
上記縦壁の縁が上記ルーフリインフォースメントの長手方向の延長上に配置されていると共に、上記縁の下端が該縁の上端の位置から車両外側にずれて配置されるように上記縦壁の縁が車両外側下方へ傾斜して形成されており、
車両側面衝突時に、上記ルーフリインフォースメントの端部が上記ブラケットの縦壁に当接すると、上記ルーフリインフォースメントの端部が上記縦壁の縁にガイドされて上記レールフランジの下側に移動することを特徴とする、自動車のルーフ構造。
【請求項2】
前記ルーフリインフォースメントの端部が楔状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動車のルーフ構造。
【請求項1】
自動車のルーフ両側縁にそれぞれ設けたルーフサイドレールと、これらのルーフサイドレールを連結するように取り付けたルーフリインフォースメントと、上記ルーフサイドレールにそれぞれ固定されていて上記ルーフリインフォースメントの端部に連結したブラケットと、を備え、上記ルーフサイドレールの車室側に突出したレールフランジの下側で上記ルーフリインフォースメントの端部が上記ブラケットに連結している自動車のルーフ構造であって、
上記ブラケットが車幅方向に延出した縦壁を有し、
上記縦壁の縁が上記ルーフリインフォースメントの長手方向の延長上に配置されていると共に、上記縁の下端が該縁の上端の位置から車両外側にずれて配置されるように上記縦壁の縁が車両外側下方へ傾斜して形成されており、
車両側面衝突時に、上記ルーフリインフォースメントの端部が上記ブラケットの縦壁に当接すると、上記ルーフリインフォースメントの端部が上記縦壁の縁にガイドされて上記レールフランジの下側に移動することを特徴とする、自動車のルーフ構造。
【請求項2】
前記ルーフリインフォースメントの端部が楔状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動車のルーフ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−195116(P2008−195116A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29831(P2007−29831)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]