説明

自動車のルーフ構造

【課題】製造コストや車体重量の増大を必要最小限に抑えながら、ルーフパネルの振動を効果的に低減する。
【解決手段】ルーフパネル3の下面に沿って車幅方向に延び、その両端部が左右一対のルーフサイドレール1,1に固定されるとともに、上面が制振材29を介して上記ルーフパネル3と当接するレインフォースメント18を備えた自動車のルーフ構造において、上記レインフォースメント18の車幅方向の中間部23に、左右の側方部27,27よりも車両前方および後方に突出する拡大部25を設け、この拡大部25を含む上記レインフォースメント18の中間部23に、上記制振材29を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、その間を覆うように設置されるルーフパネルとを有した自動車のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、左右一対のルーフサイドレールの間がルーフパネルで覆われた自動車のルーフ構造において、上記一対のルーフサイドレールの間に、車幅方向に延びて両者を互いに連結するルーフレインフォースメントを設けるとともに、このルーフレインフォースメントの上面に、ウレタン製のクッション材等からなる制振材を設け、この制振材を介して上記ルーフレインフォースメントに上記ルーフパネルを支持させることにより、ルーフサイドレール等から上記ルーフパネルに伝達された振動エネルギーを減衰させてルーフパネルの振動を低減することが行われている。
【特許文献1】特開2006−36134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような構成において、ルーフパネルの振動をより効果的に低減するには、上記ルーフレインフォースメントの前後幅をできるだけ大きくし、その上面に確保されたより広範な領域に上記制振材を配置することが望ましい。しかしながら、上記ルーフレインフォースメントの前後幅をむやみに大きくすると、車体重量が必要以上に重くなるとともに、製造コストの増大を招いてしまう。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、製造コストや車体重量の増大を必要最小限に抑えながら、ルーフパネルの振動を効果的に低減することのできる自動車のルーフ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、その間を覆うように設置されるルーフパネルとを有した自動車のルーフ構造であって、上記ルーフパネルの下面に沿って車幅方向に延び、その両端部が上記一対のルーフサイドレールに固定されるとともに、上面が制振材を介して上記ルーフパネルと当接するルーフレインフォースメントを備え、該ルーフレインフォースメントは、その車幅方向の中間部に、左右の側方部よりも車両前方または後方に突出するように形成された拡大部を有し、この拡大部を含む上記ルーフレインフォースメントの中間部に、上記制振材が設けられたことを特徴とするものである(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、ルーフレインフォースメントの中間部に車両前方または後方に突出する拡大部を設け、振動時の振幅が大きくなり易いルーフパネルの中間領域(つまりルーフパネル下面のうちルーフサイドレールから車幅方向に離間した領域)を、上記拡大部の存在により前後幅が相対的に大きくされた上記中間部に制振材を介して支持させるようにしたため、上記ルーフパネルに伝達される振動エネルギーを効率よく減衰させてルーフパネルの振動を効果的に低減することができる。
【0007】
しかも、上記ルーフレインフォースメントの中間部にのみ上記のような拡大部を設けたことにより、その左右の側方部の前後幅をルーフ部の補強上必要な範囲で比較的小さい寸法に抑えることができるため、上記ルーフレインフォースメント全体の前後幅が必要以上に大きくなって製造コストや車体重量が増大するのを効果的に抑制することができる。
【0008】
上記ルーフレインフォースメントの前方には、上記ルーフサイドレールの前端部どうしを連結するフロントルーフヘッダが設けられ、上記ルーフレインフォースメントは、上記左右一対のルーフサイドレールのうちセンターピラーの上端が接続される部位どうしを互いに連結する第1のレインフォースメントと、この第1のレインフォースメントと上記フロントルーフヘッダとの間に配設される第2のレインフォースメントとを有し、上記拡大部は、上記第2のレインフォースメントに設けられていることが好ましい(請求項2)。
【0009】
このように、ルーフ部の前端に位置するフロントルーフヘッダと、ルーフ部の前後方向中央に位置する第1のレインフォースメントとの間に、第2のレインフォースメントを配設し、この第2のレインフォースメントに上記拡大部を設けた場合には、エンジン等の駆動系に近いために他の部位に比べてより大きな振動エネルギーが入力される傾向にあるルーフパネルの前方部を、上記拡大部の存在により面積が拡大された上記第2のレインフォースメントの中間部で支持することができるため、車体重量等の増大を抑制しながらより効率的にルーフパネルの振動を低減できるという利点がある。
【0010】
この場合、上記第2のレインフォースメントが、上記第1のレインフォースメントとフロントルーフヘッダとの間の前後方向略中央位置に配設され、上記拡大部が、その左右の側方部よりも車両前方および後方の両側に突出するように形成されていることが好ましい(請求項3)。
【0011】
このようにすれば、各拡大部の個別の前後方向突出量をそれほど大きくしなくても、上記第2のレインフォースメントの中間部に比較的大きな面積が確保されるとともに、この大面積の中間部によってルーフパネルが前後方向にバランスよく支持されるため、各拡大部の支持剛性を充分に確保しつつルーフパネルの振動を効果的に低減できるという利点がある。
【0012】
上記第2のレインフォースメントが、上記第1のレインフォースメントとフロントルーフヘッダとの間の前後方向中央から車両後方側にオフセットした位置に配設され、上記拡大部が、その左右の側方部よりも車両前方側にのみ突出するように形成されていることも、また好ましい(請求項4)。
【0013】
このようにすれば、変形が生じ易いルーフ部の中央部を重点的に補強しながら、上記第2のルーフレインフォースメントの中間部によるルーフパネルの支持領域を適正に確保して上記ルーフパネルの振動を効果的に低減できるという利点がある。
【0014】
上記ルーフレインフォースメントには、そのうちの少なくとも拡大部に、下方に凹入された凹入部が、車幅方向に延びるように設置されていることが好ましい(請求項5)。
【0015】
このようにすれば、上記拡大部の車幅方向に延びる軸線に関する曲げ剛性を簡単かつ効果的に向上させることができ、当該拡大部により上記ルーフパネルを高剛性に支持してその振動をより効果的に低減できるという利点がある。
【0016】
上記凹入部は、上記拡大部のうち少なくとも車幅方向の側端部を除いた領域に設けられていることが好ましい(請求項6)。
【0017】
このようにすれば、上記拡大部の前後方向の突出量が比較的大きい場合においても、この拡大部の前後方向に延びる軸線に関する曲げ剛性を充分に確保できるという利点がある。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の自動車のルーフ構造によれば、製造コストや車体重量の増大を必要最小限に抑えながら、ルーフパネルの振動を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態にかかる自動車のルーフ構造を図1〜図4に基づいて説明する。なお、図1は上記ルーフ構造が採用された車体の基本骨格を示す斜視図、図2は車体のルーフ部を下から(車室内側から)見た底面図、図3は図2のIII−III線に沿った断面図、図4は図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【0020】
図1に示すように、ルーフ部の左右両側辺部には、車体の前後方向に延びる一対のルーフサイドレール1,1が設置されており、この各ルーフサイドレール1,1の間の領域が、鋼板製パネル等からなるルーフパネル3によって覆われている。上記ルーフサイドレール1の前端部、後端部、およびその間の前後方向中心部には、上下方向に延びるフロントピラー5、リヤピラー6、センターピラー7の各ピラーの上端部がそれぞれ接続されている。また、これら各ピラー5〜7は、その下端部が、車体の下部側辺を構成するサイドシル11に直接または間接的に接続されるようになっている。なお、図中の9はフロントサイドフレームであり、このフロントサイドフレーム9は、エンジンルームの左右両側辺部を前後方向に延びるように設置されている。
【0021】
図2に示すように、上記一対のルーフサイドレール1,1の間には、ルーフパネル3の前縁部および後縁部の下面に沿って車幅方向に延びるフロントルーフヘッダ13およびリヤルーフヘッダ15が設置されるとともに、これら両部材の間には、ルーフパネル3の下面に沿って車幅方向に延びる第1〜第3のレインフォースメント17〜19からなるルーフレインフォースメント20が設置されている。
【0022】
上記フロントルーフヘッダ13、リヤルーフヘッダ15、および第1〜第3のレインフォースメント17〜19は、それぞれの両端部が、上記ルーフサイドレール1,1の前後方向各部にスポット溶接等によって接合(固定)されることにより、上記ルーフサイドレール1,1を相互に連結するように構成されている。すなわち、ルーフサイドレール1,1の前端部どうしが上記フロントルーフヘッダ13によって連結されるとともに、ルーフサイドレール1,1の後端部どうしが上記リヤルーフヘッダ15によって連結され、さらにこれら各ルーフヘッダ13,15の間に位置するルーフサイドレール1,1の前後方向3箇所が、第1〜第3のレインフォースメント17〜19によって相互に連結されている。
【0023】
上記ルーフレインフォースメント20のうちの第1のレインフォースメント17は、ルーフパネル3下面の前後方向中心付近に配設されることにより、上記一対のルーフサイドレール1,1のうちセンターピラー7の上端が接続される部位どうしを連結するように構成されている。そして、この第1のレインフォースメント17と上記フロントルーフヘッダ13との間に第2のレインフォースメント18が配設されるとともに、上記第1のレインフォースメント17と上記リヤルーフヘッダ15との間に第3のレインフォースメント19が配設され、これら前後方向に並設された第1〜第3のレインフォースメント17〜19により、ルーフ部が前後方向の略全体に亘って効果的に補強されるようになっている。
【0024】
また、上記ルーフレインフォースメント20のうち、ルーフ部の略中央に位置する第1のレインフォースメント17は、一様に大きな前後幅をもって車幅方向に延びるように形成され、ルーフレインフォースメント20の中で最も強度の高い補強部材として構成されている。これにより、上記各ルーフヘッダ13,15からの前後方向の離間距離が大きいために最も変形が生じ易いルーフ部の中央部が充分に補強されて、例えば車両の側突時におけるキャビンの変形がより効果的に抑制されるようになっている。すなわち、車両の側突時にセンターピラー7等を通じて横向きの大きな衝撃荷重がルーフ部に入力された場合においても、その衝撃荷重が高剛性な上記第1のレインフォースメント17を介して効率よく車体各部に分散されることにより、キャビンが車幅方向につぶれるように変形することが効果的に抑制され、キャビン内の乗員の安全性が充分に確保されるようになっている。
【0025】
一方、上記第1のレインフォースメント17の前後の第2および第3のレインフォースメント18,19は、各ルーフヘッダ13,15と上記第1のレインフォースメント17との間に補完的に配設されてその間の領域を補強することにより、上記のような耐側突性能をさらに高める役割を果たしている。ただし、これら第2および第3のレインフォースメント18,19には、上記第1のレインフォースメント17ほど大きな補強能力が要求されないため、各レインフォースメント18,19の前後幅は上記第1のレインフォースメント17よりも小さい値に設定されている。
【0026】
このような第2および第3のレインフォースメント18,19のうち、前方側に位置する第2のレインフォースメント18は、その車幅方向の中間部23の前後幅が、左右の側方部27,27よりも大きくなるように形成されている。すなわち、第2のレインフォースメント18は、その車幅方向の中間部23に、左右の側方部27,27よりも車両前方および後方に突出するように形成された前後一対の拡大部25,25を有しており、この拡大部25の分だけ、上記中間部23の前後幅が左右の側方部27,27よりも大きくなるように形成されている。
【0027】
また、上記第2のレインフォースメント18は、上記第1のレインフォースメント17とフロントルーフヘッダ13との間の前後方向略中央位置に配設されている。具体的に、上記第2のレインフォースメント18は、その車幅方向に延びる中心線Aが、上記第1のレインフォースメント17およびフロントルーフヘッダ13から略等間隔を置いて位置するように配設されている。
【0028】
図2および図3に示すように、上記各ルーフヘッダ13,15、および各レインフォースメント17〜19の上面には、ウレタンや合成ゴム等の弾性体、または弾性を有する接着剤等からなる複数の制振材29がそれぞれ設けられており、この制振材29を介してルーフパネル3の前後方向各部が上記各ルーフヘッダ13,15やレインフォースメント17〜19に支持されている。なお、図3では、リヤルーフヘッダ15が設置されるルーフ部の後端部が省略されているが、その構造は反対側のフロントルーフヘッダ13の設置部と同様である。また、図3において30はフロントガラスである。
【0029】
上記制振材29は、ルーフパネル3の下面に当接する状態で各ルーフヘッダ13,15やレインフォースメント17〜19の上面に固定されている。このように構成された制振材29は、上記ルーフパネル3に伝達される振動を低減する役割を果たす。すなわち、ルーフパネル3には、エンジンやミッション等の駆動系で発生する振動や、走行時にサスペンション等から入力される様々な振動が、それらの振動源とつながったフロントサイドフレーム9やサイドシル11、各ピラー5〜7等の部材から左右のルーフサイドレール1を通じて伝達されるが、上記ルーフパネル3の各部が弾性体等からなる上記制振材29を介して支持されていることから、このルーフパネル3に伝達された振動エネルギーは、上記制振材29によって効率よく吸収されて減衰する。
【0030】
上記制振材29は、各ルーフヘッダ13,15、および各レインフォースメント17〜19のそれぞれの上面において、車幅方向に略等間隔を置いて並ぶように設置されている。このうち、特に第2のレインフォースメント18の上面に設けられた制振材29に着目すると、このレインフォースメント18上の制振材29は、その多くが、上記拡大部25を含む中間部23の上面に設けられている。具体的に、この中間部23の上面において、上記制振材29は、前後の拡大部25,25の端縁部と、その間の2箇所(各拡大部25の基端部付近)との、前後方向4箇所でそれぞれ車幅方向に並ぶように設置されている。
【0031】
図2〜図4に示すように、上記第2のレインフォースメント18には、下方に凹入する凹入部31が、車幅方向に延びる中心線Aに沿って設置されている。また、第2のレインフォースメント18の前後の拡大部25,25にも、それぞれ車幅方向に延びる凹入部33が設置されている。そして、これら凹入部31,33の存在により、第2のレインフォースメント18の車幅方向に延びる軸線に関する断面係数(つまり図3や図4に示される車幅方向と直交する断面の断面係数)が増大し、当該レインフォースメント18の車幅方向の曲げ剛性、つまり、車幅方向の中間部23を左右の側方部27に対し上下方向に変位させる荷重等に対する剛性が強化されるようになっている。特に、この第2のレインフォースメント18の中間部23には、左右の側方部27よりも広い前後幅が確保されている上に、車幅方向に延びる3つの凹入部33,31,33が形成されているため、その剛性は高いものとなる。また、各凹入部33,31,33の間および前後の4箇所は、相対的に上方に突出しており、当該突出箇所の上面に、上記制振材29がそれぞれ設けられている。
【0032】
一方、上記第1および第3のレインフォースメント17,19にも、車幅方向に延びる1つまたは複数の凹入部35,37がそれぞれ設けられ、これら凹入部35,37の前後において上方に突出した箇所(各レインフォースメント17,19の前後縁部)に、上記制振材29がそれぞれ設けられている。
【0033】
上記のように車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール1と、その間を覆うように設置されるルーフパネル3とを有した自動車のルーフ構造において、上記一対のルーフサイドレール1の間に、ルーフパネル3の下面に沿って車幅方向に延び、上面が制振材29を介して上記ルーフパネル3と当接する第1〜第3のレインフォースメント17〜19からなるルーフレインフォースメント20を設けるとともに、このうちの第2のレインフォースメント18の車幅方向の中間部23に、左右の側方部27,27よりも車両前方および後方に突出するように形成された拡大部25,25を設け、この拡大部25を含む上記レインフォースメント18の中間部23に、上記制振材29を設けるようにした上記第1実施形態の構成によれば、製造コストや車体重量の増大を必要最小限に抑えながら、ルーフパネル3の振動を効果的に低減できるという利点がある。
【0034】
すなわち、上記のような拡大部25を設けて第2のレインフォースメント18の中間部23の前後幅を相対的に大きくし、この中間部23の上面に制振材29を設けることにより、振動時の振幅が大きくなり易いルーフパネル3の中間領域(つまりルーフパネル3下面のうちルーフサイドレール1から車幅方向に離間した領域)が、比較的広い面積を有する上記レインフォースメント18の中間部23に制振材29を介して支持されるように構成したため、上記ルーフパネル3に伝達される振動エネルギーを効率よく減衰させてルーフパネル3の振動を効果的に低減することができる。
【0035】
しかも、上記レインフォースメント18の中間部23にのみ上記のような拡大部25を設けたことにより、その左右の側方部27の前後幅をルーフ部の補強上必要な範囲で比較的小さい寸法に抑えることができるため、上記レインフォースメント18全体の前後幅が必要以上に大きくなって製造コストや車体重量が増大するのを効果的に抑制することができる。
【0036】
特に、上記第1実施形態のように、ルーフ部の前端に位置するフロントルーフヘッダ13と、ルーフ部の前後方向中央に位置する第1のレインフォースメント17との間に、上記第2のレインフォースメント18を配設し、この第2のレインフォースメント18に上記拡大部25を設けた場合には、エンジン等の駆動系に近いために他の部位に比べてより大きな振動エネルギーが入力される傾向にあるルーフパネル3の前方部を、上記拡大部25を含んだ大きな面積の中間部23で支持することができるため、車体重量等の増大を抑制しながらより効率的にルーフパネル3の振動を低減できるという利点がある。
【0037】
さらに、上記第1実施形態のように、第1のレインフォースメント17とフロントルーフヘッダ13との間の前後方向中央位置に上記第2のレインフォースメント18を配設し、当該レインフォースメント18の左右の側方部27よりも車両前方および後方の両側に突出するように上記拡大部25,25を設けた場合には、各拡大部25,25の個別の前後方向突出量をそれほど大きくしなくても、上記第2のレインフォースメント18の中間部23に比較的大きな面積が確保されるとともに、この大面積の中間部23によってルーフパネル3が前後方向にバランスよく支持されるため、各拡大部25,25の支持剛性を充分に確保しつつルーフパネル3の振動を効果的に低減できるという利点がある。
【0038】
また、上記第1実施形態では、第1〜第3のレインフォースメント17〜19に、下方に凹入する凹入部(31や35等)を車幅方向に延びるような状態で設置することにより、各レインフォースメント17〜19の車幅方向に延びる軸線に関する断面係数を増大させるようにしたため、上記各レインフォースメント17〜19の車幅方向の曲げ剛性、つまり、車幅方向の中間部23を左右の側方部27に対し上下方向に変位させる荷重等に対する剛性を効果的に向上させてルーフ部をより効率よく補強できるという利点がある。
【0039】
特に、上記第1実施形態では、第2のレインフォースメント18の拡大部25にも凹入部33を設けたため、ルーフパネル3の中間領域を支持する上記レインフォースメント18の中間部23の剛性をより効果的に向上させてルーフパネル3の振動をさらに低減できるという利点がある。
【0040】
(実施形態2)
図5〜図8は、本発明の第2の実施形態を示しており、図5はルーフ部を下から(車室内側から)見た底面図、図6は図5のVI−VI線に沿った断面図、図7は図5のVII−VII線に沿った断面図、図8は図5のVIII−VIII線に沿った断面図である。なお、これらの図において、上記第1実施形態と同一構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図5に示すように、当第2実施形態の自動車のルーフ構造では、左右一対のルーフサイドレール1の間に設けられる補強用のルーフレインフォースメント20のうち、第2のレインフォースメント18が、フロントルーフヘッダ13と第1のレインフォースメント17との間の前後方向中央から所定距離だけ後方側にオフセットした位置に配設されている。すなわち、第2のレインフォースメント18は、その車幅方向に延びる中心線B(拡大部45を除いた部分の中心線B)が、前後方向で第1のレインフォースメント17寄りに位置するように配設されている。
【0042】
上記第2のレインフォースメント18の車幅方向の中間部43には、その左右の側方部47,47よりも前方側に突出する拡大部45が設けられている。すなわち、当第2実施形態における第2のレインフォースメント18は、上記第1実施形態の場合(つまり第2のレインフォースメント18の前後両側に拡大部25,25が設けられた構成)と異なり、車両前方側にのみ拡大部45を有している。なお、当第2実施形態では、上記第2のレインフォースメント18の中間部43に対し、上記第1実施形態の中間部23と略同一の面積が確保されるようにするため、上記拡大部45の前方への突出量が、上記第1実施形態における拡大部25,25の各突出量よりも若干大きく設定されている。
【0043】
図5〜図7に示すように、上記第2のレインフォースメント18の上面には、上記第1実施形態と同様に、ルーフパネル3の振動を抑制するための制振材29が、車幅方向に略等間隔を置いて並ぶように設置されている。このレインフォースメント18上の制振材29は、その多くが、上記拡大部45を含む中間部43の上面に設けられている。具体的に、この中間部43の上面において、制振材29は、拡大部45の前端部および基端部と、この拡大部45とは反対側の端部(中間部43の後端部)との、前後方向3箇所でそれぞれ車幅方向に並ぶように設置されている。
【0044】
また、上記第2のレインフォースメント18には、下方に凹入する2つの凹入部51,51が、左右の側方部47とその間の中間部43とに亘って車幅方向に延びるように設置されているとともに、上記第2のレインフォースメント18のうちの拡大部45にも、車幅方向に延びる凹入部53が設置されている。そして、これら凹入部51,51,53の間やその前後において相対的に上方に突出するように形成された箇所に、上記制振材29が適宜設けられている。
【0045】
図5および図8に示すように、上記拡大部45の凹入部53は、拡大部45の車幅方向両端部を除いた領域に形成されている。すなわち、上記拡大部45の車幅方向両端部は、凹入部53の前縁部および後縁部(制振材29が設けられる一段高い部分)と同じ高さでつながったフランジ部55とされ、このフランジ部55を除いた車幅方向所定範囲に、上記凹入部53が形成されている。
【0046】
以上のように、上記第2実施形態では、フロントルーフヘッダ13と第1のレインフォースメント17との間の前後方向中央から車両後方側にオフセットした位置に第2のレインフォースメント18を配設することにより、この第2のレインフォースメント18がルーフ部の中央部により近接して位置するように構成したため、上記フロントルーフヘッダ13からの離間距離が大きいために最も変形が生じ易いルーフ部の中央部を重点的に補強してルーフ部の剛性をより効果的に向上させることができる。
【0047】
しかもこの場合において、上記第2のレインフォースメント18の中間部43に、その左右の側方部47よりも車両前方側にのみ突出するような状態で拡大部45を設けたため、上記のように第2のレインフォースメント18の前後位置をオフセットしてルーフ部の補強効果を高めながらも、上記中間部43によるルーフパネル3の支持領域を、上記フロントルーフヘッダ13と第1のレインフォースメント17との間で前後方向に大きな片寄りなく確保することができ、このような中間部43によって支持される上記ルーフパネル3の前方部の振動を効果的に低減できるという利点がある。
【0048】
また、上記第2実施形態では、拡大部45の車幅方向両端部(フランジ部55)を除いた領域に凹入部53を設けることにより、上記拡大部45の前後方向に延びる軸線に関する断面係数(つまり図8に示したような車体前後方向と直交する断面の断面係数)を増大させるようにしたため、上記拡大部45の前後方向の曲げ剛性を効果的に向上させることができる。すなわち、上記のように拡大部45の断面係数を増大させることにより、上記拡大部45の前端部に図6の矢印Cに示すような上下方向の荷重が加わった場合においても、この荷重に応じて拡大部45がその基端部を支点に大きく折れ曲がるように変形するのを簡単かつ効果的に抑制することができる。
【0049】
このような構成は、特に、上記第2実施形態のように拡大部45の突出量が比較的大きい場合に有効である。すなわち、拡大部45の突出量が大きいと、上記のような拡大部45の変形が起こり易くなるが、凹入部53の設置範囲を制限して拡大部45の断面係数を増大させた上記構成によれば、拡大部45の突出量が大きくてもその剛性が充分に確保されるため、当該拡大部45により上記ルーフパネル3を高剛性に支持してその振動を効果的に低減できるという利点がある。
【0050】
なお、以上説明したような第1および第2の実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記各実施形態では、第2のレインフォースメント18の中間部23(43)にのみ拡大部25(45)を設けたが、同様の拡大部を他のレインフォースメント(17や19)に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明にかかる自動車のルーフ構造の第1実施形態を説明するための図であり、上記ルーフ構造が採用された車体の基本骨格を示す斜視図である。
【図2】上記第1実施形態におけるルーフ部を車室内側から見た底面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】本発明にかかる自動車のルーフ構造の第2実施形態を説明するための図であり、ルーフ部を車室内側から見た底面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ルーフサイドレール
3 ルーフパネル
7 センターピラー
13 フロントルーフヘッダ
17 第1のレインフォースメント
18 第2のレインフォースメント
20 ルーフレインフォースメント
23,43 中間部
25,45 拡大部
27,47 側方部
33,53 凹入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、その間を覆うように設置されるルーフパネルとを有した自動車のルーフ構造であって、
上記ルーフパネルの下面に沿って車幅方向に延び、その両端部が上記一対のルーフサイドレールに固定されるとともに、上面が制振材を介して上記ルーフパネルと当接するルーフレインフォースメントを備え、
該ルーフレインフォースメントは、その車幅方向の中間部に、左右の側方部よりも車両前方または後方に突出するように形成された拡大部を有し、この拡大部を含む上記ルーフレインフォースメントの中間部に、上記制振材が設けられたことを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車のルーフ構造において、
上記ルーフレインフォースメントの前方には、上記ルーフサイドレールの前端部どうしを連結するフロントルーフヘッダが設けられ、
上記ルーフレインフォースメントは、上記左右一対のルーフサイドレールのうちセンターピラーの上端が接続される部位どうしを互いに連結する第1のレインフォースメントと、この第1のレインフォースメントと上記フロントルーフヘッダとの間に配設される第2のレインフォースメントとを有し、
上記拡大部は、上記第2のレインフォースメントに設けられていることを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項3】
請求項2記載の自動車のルーフ構造において、
上記第2のレインフォースメントが、上記第1のレインフォースメントとフロントルーフヘッダとの間の前後方向略中央位置に配設され、上記拡大部が、その左右の側方部よりも車両前方および後方の両側に突出するように形成されたことを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項4】
請求項2記載の自動車のルーフ構造において、
上記第2のレインフォースメントが、上記第1のレインフォースメントとフロントルーフヘッダとの間の前後方向中央から車両後方側にオフセットした位置に配設され、上記拡大部が、その左右の側方部よりも車両前方側にのみ突出するように形成されたことを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車のルーフ構造において、
上記ルーフレインフォースメントのうちの少なくとも上記拡大部に、下方に凹入された凹入部が、車幅方向に延びるように設置されたことを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項6】
請求項5記載の自動車のルーフ構造において、
上記凹入部が、上記拡大部のうち少なくとも車幅方向の側端部を除いた領域に設けられたことを特徴とする自動車のルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−195361(P2008−195361A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35717(P2007−35717)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】