説明

自動車の三角窓支持枠構造

【課題】三角窓支持枠のデザインの多様化要請に十分答えることができるとともに、フロントピラーの超高強度化をも果たし得る自動車の三角窓支持枠構造を提供する。
【解決手段】フロントピラーアウタ11とともに閉断面形状のフロントピラー1に三角窓8を装着する場合に、フロントピラーインナ12に、三角窓支持枠設置用開口部12aを有する三角窓支持枠設置部12bを形成するとともに、三角窓8を支承する三角窓支持枠5を、フロントピラーインナ12とは別体構成とする。三角窓支持枠5は、フロントピラーインナ12にスポット溶接等により溶接することにより三角窓支持枠設置部12bに装着設置される。また、取付けフランジ部5eに、補強部材7及びフロントピラーアウタ11の開口フランジ7a、11aを重合させた状態において、三角窓8が接着剤8により接着設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のフロントピラーに三角窓を設置するための三角窓支持枠構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の三角窓用窓枠構造は、フロントピラーインナとフロントピラーアウタとを各端末フランジ部同士を互いに接合することにより閉断面形状のフロントピラーに一体構成の三角窓支持枠を形成し、該三角窓支持枠に三角窓を支承させることによって設置するようにしていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−193001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車におけるフロントピラーは、センタピラー等の他の骨格構造体と同様に、自動車の前面衝突時や側面衝突時などの衝突エネルギーを確実に緩和可能にする構造が求められており、かかる要請は最近特に高度化する傾向にある。そこで、フロントピラーは、強度の高い高張力鋼板を使用して構成されている。
【0005】
しかしながら、かかる高張力鋼板で構成されたフロントピラーに一体構成の三角窓支持枠を形成することは、フロントピラー自体の強度が非常に高いが故に、プレス成形を困難にしている。加えて、近来の自動車デザインの多様化要請に答えるべく、三角窓支持枠の形状が意匠的に複雑化してきており、かかる点からも、フロントピラーのプレス成形性をますます困難にしている。そして、三角窓支持枠のデザイン面からフロントピラーの成形性を重視した場合には、強度の比較的低いハイテン材を勢い選択せざるを得なくなってしまう。
【0006】
そこで、この発明は、かかる従来の技術における未解決課題に鑑み、三角窓支持枠のデザインの多様化要請に十分答えることができるとともに、フロントピラーの高強度化に対する要請をも果たし得る自動車の三角窓支持枠構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る自動車の三角窓支持枠構造は、フロントピラーに三角窓を装着すべくなした自動車の三角窓用窓枠構造であって、フロントピラーに三角窓支持枠設置用開口部を形成し、三角窓支持枠設置用開口部に、別体構成の三角窓支持枠を装着設置して、三角窓支持枠が三角窓を支承するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成する上記発明は、フロントピラーに対して三角窓を支承する三角窓支持枠を別体構成にしたことにより、三角窓支持枠自体のデザイン性、例えば三角窓支持枠における車室側奥行きを厚く形成する等のデザインの選択自由度を広げて、デザインの多様化要請に十分答えることができる。
【0009】
しかも、上記発明に係るフロントピラーは、三角窓支持枠を別体構成にしたことにより、三角窓支持枠のプレス成形性を考慮しなくてもデザインすることができることになって、強度の非常に高い高張力鋼板で構成することができ、自動車の衝突事故等に遭遇した際の衝撃エネルギーを効率よく緩和して、自動車の安全走行性能を益々向上させることができる。
【0010】
本発明者の試作実験の結果によれば、三角窓支持枠自体は、別体構成ゆえに例えば590Mpa級の高張力鋼板を使用して、プレス成形性を高めることができる一方、三角窓支持枠を別体構成としたフロントピラーは、440Mpa級の高張力鋼板を使用して高強度化構成にしたとしても、そのプレス成形性に問題を起こすことがなかった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一般的な自動車車体を概略的に描画した側面図である。
【図2】この発明に係るプレス成形部材の一の実施例として図1における三角窓支持枠をフロントピラーに組付けた状態を車外側から描画した斜視図である。
【図3】同じく、図1におけるフロントピラーから三角窓支持枠を取り外した状態を車室外側から描画した分解斜視図である。
【図4】図2におけるA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施例における自動車の三角窓支持枠構造は、三角窓支持枠のデザイン性の自由度確保の要請に十分答えることができるとともに、フロントピラーの高強度化をも果たし得るように構成している。以下、図1〜図4を用いて、この発明を採用した実施例に係る自動車の三角窓支持枠構造について説明する。
【0013】
図1に示すように、フロントピラー1は、ウインドガラス2の側部に沿うように設置されて、自動車の車体3の前部骨格の一部を構成しており、図4に示すように、車体3の外側に位置するフロントピラーアウタ11と車体3の内側(車室側)に位置するフロントピラーインナ12とを、その各端末フランジ部同士を互いに接合することにより閉断面形状の骨格部材として構成している。
【0014】
そして、フロントピラーインナ12には、図3及び図4に示すように、ドアー4の前側部に沿うような位置において、三角窓支持枠設置用開口部12aが形成されているとともに、三角窓支持枠設置用開口部12aを取り囲むように三角窓支持枠設置部12bが、車外側に膨出するように形成されている。三角窓支持枠設置部12bには、図3において明らかなように、フロントピラー1に対して別体構成の三角窓支持枠5が設置されている。
【0015】
三角窓支持枠5は、中央部に開口部5aを有する略椀型を呈して構成されている。開口部5aを囲繞する立壁状の側壁部5bは、若干の傾斜面を呈しているとともに、縦方向に延在する複数個の補強ビード部5cが互いに離間した状態で形成されている。側壁部5bにおける各補強ビード部5cの間には、スポット溶接等の溶接を施すための支持枠側溶接面部5dが形成されている。支持枠側溶接面部5dに関連して、フロントピラーインナ12の三角窓支持枠設置部12bは、やはり若干の傾斜面を呈する起立壁形状に形成されている。
【0016】
そして、別体構成の三角窓支持枠5をフロントピラーインナ12に装着設置するには、先ず、三角窓支持枠5側の支持枠側溶接面部5dとフロントピラーインナ12側の三角窓支持枠設置部12bとを順次互いに当接した状態で重合しておく。次に、図2に示すように、支持枠側溶接面部5dと三角窓支持枠設置部12bとは、共にスポット溶接等により溶接して、図2に示すように、複数個所に溶接部6を形成することによって接合することになる。更に、三角窓支持枠4は、その取付けフランジ部5eを、図4に示すように、補強部材7及びフロントピラーアウタ11の開口フランジ7a、11aに順次重合させた状態において、フロントピラーアウタ11の開口フランジ11aの車外側に接着剤8を塗布することにより、三角窓9を接着設置されている。かかる状態において、三角窓9は、三角窓支持枠5によって支承されることになる。
【0017】
上記のように構成する本発明に係る実施例は、フロントピラー1に対して三角窓9を支承する三角窓支持枠5を別体構成にしたことにより、比較的深絞りを可能とするプレス成形性のよいパネル材を使用することができることから、三角窓支持枠5自体のデザイン性、例えば三角窓支持枠5における車室側奥行き(図14の符号「W」を参照)を厚く形成する等のデザインの選択自由度を広げるとともに、車室の拡大にも繋げることができる。
【0018】
しかも、上記発明に係るフロントピラー1は、三角窓支持枠5を別体構成にしたことにより、三角窓支持枠5のプレス成形性を考慮しなくてもデザインすることができることになって、剛性の非常に高い高張力鋼板で構成することができ、自動車の衝突事項等に遭遇した際の衝撃エネルギーを効率よく緩和して、自動車の安全走行性能を益々向上させることができる。
【0019】
本発明者の試作実験の結果によれば、三角窓支持枠5自体は、例えば590Mpa級の高張力鋼板を使用したとしても、プレス成形性を高めることができる一方、三角窓支持枠5を別体構成としたフロントピラー1は、440Mpa級の高張力鋼板を使用して高強度化構成にしたとしても、そのプレス成形性に問題を起こすことがなかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上説明したこの発明は、三角窓支持枠のデザイン性の自由度確保の要請に十分答えることができるとともに、フロントピラーの高強度化をも果たし得る自動車の三角窓支持枠構造を提供することができるため、自動車のフロントピラーに三角窓を設置するための三角窓支持枠構造等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0021】
1 フロントピラー
11 フロントピラーアウタ
12 フロントピラーインナ
12a 三角窓支持枠設置用開口部
5 三角窓支持枠
5a 開口部
9 三角窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントピラーに三角窓を装着すべくなした自動車の三角窓用窓枠構造であって、前記フロントピラーに三角窓支持枠設置用開口部を形成し、該三角窓支持枠設置用開口部に、別体構成の三角窓支持枠を装着設置して、該三角窓支持枠により前記三角窓を支承するように構成したことを特徴とする自動車の三角窓支持枠構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−66631(P2012−66631A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211116(P2010−211116)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
【Fターム(参考)】