説明

自動車の後部車体構造

【課題】 車体後部にバッテリおよび水素タンクを搭載する場合に搭載性の向上および耐衝撃性の向上を図る。
【解決手段】 車体後方に向けて凸に湾曲する湾曲部16aの両端から車体前方に向けて左右の直線部16bが延出するようにパイプ部材をU字状に湾曲させてU字状フレーム16を形成し、U字状フレーム16の左右の直線部16bの前端間および後端間をそれぞれ第1、第2クロスメンバ17,18で接続してリヤサブフレーム15を構成したので、湾曲していることで剛性が高いU字状フレーム16の湾曲部16aで後面衝突の荷重を受け止め、左右の直線部16bおよび第1、第2クロスメンバ17,18により区画された前部枠体20の内部に支持したバッテリ26と、湾曲部16aおよび第2クロスメンバ18により区画された後部枠体21の内部に支持した水素タンク27とを効果的に保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後部車体に着脱自在に固定されるサブフレームにバッテリおよび水素タンクを搭載する自動車の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の後部車体フレームを、車体前後方向に延びる左右一対の第1リヤフレームの後端に半円状の第2リヤフレームを結合して全体としてU字状に形成するとともに、左右一対の第1リヤフレームの前端間および後端間をそれぞれ車幅方向に延びるミドルクロスメンバおよびリヤクロスメンバで結合して構成したものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2007−137326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池自動車では、燃料となる水素を貯留する水素タンクと、水素を燃料として発電した電力を蓄電するバッテリとを搭載する必要がある。これらのバッテリおよび水素タンクを個別に車体に搭載すると作業性が良くないため、予めサブフレームにバッテリおよび水素タンクを固定しておき、このサブフレームを一括して車体に搭載することが考えられる。この場合、車体に後面衝突の衝撃が加わってもバッテリおよび水素タンクが損傷を受けないように、サブフレームの構造を考慮する必要がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車体後部にバッテリおよび水素タンクを搭載する場合に搭載性の向上および耐衝撃性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、自動車の後部車体に着脱自在に固定されるリヤサブフレームにバッテリおよび水素タンクを搭載する自動車の後部車体構造であって、前記リヤサブフレームは、車体後方に向けて凸に湾曲する湾曲部の両端から車体前方に向けて左右の直線部が延出するようにパイプ部材をU字状に湾曲させて構成したU字状フレームと、前記左右の直線部の前端間を車幅方向に接続する第1クロスメンバと、前記左右の直線部の後端間を車幅方向に接続する第2クロスメンバとを備え、前記左右の直線部、前記第1クロスメンバおよび前記第2クロスメンバにより区画された前部枠体の内部に前記バッテリを支持するとともに、前記湾曲部および前記第2クロスメンバにより区画された後部枠体の内部に前記水素タンクを支持することを特徴とする自動車の後部車体構造が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第2クロスメンバを、前記バッテリの支持および前記水素タンクの支持に共用することを特徴とする自動車の後部車体構造が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記リヤサブフレームの前端をリヤサイドフレームに接続することを特徴とする自動車の後部車体構造が提案される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、車体後方に向けて凸に湾曲する湾曲部の両端から車体前方に向けて左右の直線部が延出するようにパイプ部材をU字状に湾曲させてU字状フレームを形成し、U字状フレームの左右の直線部の前端間および後端間をそれぞれ第1、第2クロスメンバで接続してリヤサブフレームを構成したので、湾曲していることで剛性が高いU字状フレームの湾曲部で後面衝突の荷重を受け止め、左右の直線部および第1、第2クロスメンバにより区画された前部枠体の内部に支持したバッテリと、湾曲部および第2クロスメンバにより区画された後部枠体の内部に支持した水素タンクとを効果的に保護することができる。また予めバッテリおよび水素タンクをリヤサブフレームに支持しておくことで、リヤサブフレームごとバッテリおよび水素タンクを一括して車体に搭載することが可能となって搭載性が向上するだけでなく、バッテリおよび水素タンクは周囲をU字状フレームおよび第1、第2クロスメンバで囲まれているので、衝突荷重による損傷をより確実に回避することができる。
【0010】
また請求項2の構成によれば、第2クロスメンバをバッテリの支持および水素タンクの支持に共用したので、部品点数を増加およびリヤサブフレームの車体前後方向寸法の増加を回避しながら、バッテリおよび水素タンクを支持することができる。
【0011】
また請求項3の構成によれば、リヤサブフレームの前端をリヤサイドフレームに接続したので、後面衝突によりリヤサブフレームの後端に入力された衝突荷重を強度メンバであるリヤサイドフレームに伝達して効果的に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自動車の車体後部の斜視図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】図2の3方向拡大矢視図
【図4】図2の4−4線拡大断面図
【図5】図2の5−5線拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図5に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1および図2に示すように、燃料電池自動車の後部には、左右一対のリヤサイドフレーム11,11が車体前後方向に配置されており、それらの前端は車室の左右両側部を車体前後方向に延びる左右一対のサイドシル12,12の後端に接続される。左右のリヤサイドフレーム11,11の前端間が車幅方向に延びるミドルクロスメンバ13により接続され、かつ後端間が車幅方向に延びるリヤクロスメンバ14により接続される。
【0015】
車体後部に着脱自在に固定されるリヤサブフレーム15は、円形断面あるいは楕円形断面のパイプ材をU字状に湾曲させたU字状フレーム16を備える。U字状フレーム16は、車体後方に向かって凸に湾曲する半円状の湾曲部16aと、湾曲部16aの両端から車体前方に向かって直線状に延びる左右一対の直線部16b,16bとを一体に備える。
【0016】
U字状フレーム16の直線部16b,16bの左右前端間は車幅方向に延びる第1クロスメンバ17により接続され、U字状フレーム16の直線部16b,16bの左右後端間、つまり湾曲部16aの左右前端間は車幅方向に延びる第2クロスメンバ18により接続され、U字状フレーム16の湾曲部16aの後部間は車幅方向に延びる第3クロスメンバ19により接続される。第1〜第3クロスメンバ17〜19は断面四角形のパイプ部材からなり、その下面を半円状に切り欠いた部分がU字状フレーム16に上方から嵌合して溶接により固定される(図4参照)。
【0017】
その結果、リヤサブフレーム15には、車体前側に位置してU字状フレーム16の左右の直線部16b,16bおよび第1、第2クロスメンバ17,18により区画された矩形状の前部枠体20と、車体後側に位置してU字状フレーム16の湾曲部16aおよび第2クロスメンバ18により区画された半円状の後部枠体21とが形成される。
【0018】
第1クロスメンバ17はU字状フレーム16の左右の直線部16b,16bから車幅方向外側に長めに突出しており、その突出部が左右各2本のボルト22,22で左右のリヤサイドフレーム11,11の上面に着脱自在に固定される(図1および図4参照)。またリヤクロスメンバ14の前面に当接する湾曲部16aの後端は金属板を屈曲させた取付部材23の凹部に嵌合し、その取付部材23をリヤクロスメンバ14の上面および前面にボルト24,24;25,25で締結することで固定される(図5参照)。
【0019】
直方体状のバッテリ26は、リヤサブフレーム15の矩形状の前部枠体20の下面に吊り下げ支持される。即ち、バッテリ26の左右両側部に金属帯板で矩形状に形成した取付バンド28,28が巻き付けられており、各々の取付バンド28の前後の固定部28a,28bが第1クロスメンバ17の下面のブラケット17a(図2および図4参照)および第2クロスメンバ18の下面のブラケット18a(図2参照)にそれぞれボルト29,30で締結される。
【0020】
また水素タンク27は、高圧に耐えるように中央の円筒部27aの両端に半球部27b,27bを結合した形状を有しており、リヤサブフレーム15の半円状の後部枠体21の下面に吊り下げ支持される。即ち、水素タンク27の左右両側部に金属帯板で円形に形成した取付バンド31,31が巻き付けられており、各々の取付バンド31の前後の固定部31a,31bが第2クロスメンバ18の下面のブラケット18b(図2および図3参照)および第3クロスメンバ19の下面のブラケット19a(図2参照)にそれぞれボルト32,33で締結される。
【0021】
以上のように、予めバッテリ26および水素タンク27をリヤサブフレーム15に支持しておくことで、リヤサブフレーム15ごとバッテリ26および水素タンク27を一括して車体に搭載することが可能となって搭載性が向上するだけでなく、既存の電気自動車やガソリン自動車のフレームに大きな改造を施すことなく、バッテリ26および水素タンク27を搭載することが可能となる。
【0022】
また湾曲部16aおよび一対の直線部16b,16bを有するU字状フレーム16をパイプ部材をU字状に湾曲させて構成し、そのU字状フレーム16を車幅方向に延びる第1〜第3クロスメンバ17〜19で接続してリヤサブフレーム15としたので、リヤサブフレーム15を低コストで製造することができる。しかも湾曲していることで剛性が高いU字状フレーム16の湾曲部16aで後面衝突の荷重を受け止めるので、左右の直線部16b,16bおよび第1、第2クロスメンバ17,18により区画された前部枠体20の内部に支持したバッテリ26と、湾曲部16aおよび第2、第3クロスメンバ18,19により区画された後部枠体21の内部に支持した水素タンク27とを効果的に保護することができる。特に、バッテリ26および水素タンク27は、周囲を360°に亙ってU字状フレーム16および第1〜第3クロスメンバ17〜19で囲まれているので、衝突荷重に対する損傷をより確実に回避することができる。
【0023】
更に、リヤサブフレーム15の第2クロスメンバ18をバッテリ26の取付バンド28,28の支持および水素タンク27の取付バンド31,31の支持に共用したので、部品点数を増加させることなく、またリヤサブフレーム15の車体前後方向の寸法を増加させることなく、バッテリ26および水素タンク27を支持することができる。また平面視が矩形状のバッテリ26をリヤサブフレーム15の平面視が矩形状の前部枠部20に支持し、平面視が繭形の水素タンク27をリヤサブフレーム15の平面視が半円状の後部枠体21に支持したので、リヤサブフレーム15における空間の利用効率が向上する。
【0024】
更にまた、リヤサブフレーム15の前端をリヤサイドフレーム11,11に接続したので、後面衝突によりリヤサブフレーム15の湾曲部16aに入力された衝突荷重を、リヤサブフレーム15の左右の直線部16b,16bから強度メンバである左右のリヤサイドフレーム11,11に伝達し、更にそこから強度メンバである左右のサイドシル12,12に伝達して効果的に吸収することができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0026】
例えば、実施の形態のU字状フレーム16は湾曲部16aの後端に第3クロスメンバ19を備えているが、その第3クロスメンバ19は省略することも可能である。この場合、水素タンク27を支持する取付バンド31,31を湾曲部16aに固定したブラケットに締結すれば良い。
【符号の説明】
【0027】
11 リヤサイドフレーム
15 リヤサブフレーム
16 U字状フレーム
16a 湾曲部
16b 直線部
17 第1クロスメンバ
18 第2クロスメンバ
20 前部枠体
21 後部枠体
26 バッテリ
27 水素タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の後部車体に着脱自在に固定されるリヤサブフレーム(15)にバッテリ(26)および水素タンク(27)を搭載する自動車の後部車体構造であって、
前記リヤサブフレーム(15)は、車体後方に向けて凸に湾曲する湾曲部(16a)の両端から車体前方に向かって左右の直線部(16b)が延出するようにパイプ部材をU字状に湾曲させて構成したU字状フレーム(16)と、前記左右の直線部(16b)の前端間を車幅方向に接続する第1クロスメンバ(17)と、前記左右の直線部(16b)の後端間を車幅方向に接続する第2クロスメンバ(18)とを備え、
前記左右の直線部(16b)、前記第1クロスメンバ(17)および前記第2クロスメンバ(18)により区画された前部枠体(20)の内部に前記バッテリ(26)を支持するとともに、前記湾曲部(16a)および前記第2クロスメンバ(18)により区画された後部枠体(21)の内部に前記水素タンク(27)を支持することを特徴とする自動車の後部車体構造。
【請求項2】
前記第2クロスメンバ(18)を、前記バッテリ(26)の支持および前記水素タンク(27)の支持に共用することを特徴とする、請求項1に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項3】
前記リヤサブフレーム(15)の前端をリヤサイドフレーム(11)に接続することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動車の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−184574(P2010−184574A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29553(P2009−29553)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】