説明

自動車の環境管理システム及び方法

【課題】乗員の意思に反する空調制御を抑制して運転乗員の快適度要件を充足することと、運転者に曇りのない視界を提供するために急速に且つ効率的にフロントガラスの防曇を行うこととを両立させる。
【解決手段】空調制御システム40は、乗員によって決定された環境快適度基準の近傍で動作しつつ、急速に且つ効率的に自動車のフロントガラスの防曇を行うために、自動車の空調システム20を自動運転する。具体的には、手動オーバーライドが選択されていないと判定されたときに、フロントガラスの防曇を達成するための、空調システム20の自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行する(各オプション1乃至5における状態1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の環境管理システム及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車において自動的な空調制御が急速に普及している。ある自動車においては、運転者は温度設定をただ選ぶだけであり、すると制御装置が目標温度を達成するように空調制御システムを運転する。空調制御システムは、ファン(例えば、オン/オフ及びファン速度)及び冷房装置の機能を制御し得る。そのような空調制御システムはまた、エバポレータ・コア又はヒータ・コアを通る空気の流れ、自動車内を通る空気の内気循環、外気の取り入れ、又はそれらの幾つかの組合せを制御するために、種々の空気ダンパー又は空気流ドアの位置及び動作を制御し得る。
【0003】
自動空調制御システムの幾つかは、フロントガラスの防曇運転が必要かどうかを判定するために、車室内の温度及び湿度レベルを監視する。自動的な防曇運転が必要であると判定されたときは、冷房装置は、迅速に防曇運転を行うため、比較的乾燥した空気をフロントガラスに供給するように運転されるのが一般的である。そのようなシステムの制約の一つが、空調コンプレッサーが比較的大量のエネルギーを使用することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンプレッサーがエンジンによって機械的に駆動される一般的な自動車の場合には、増大されたエンジン負荷が、効率を低下し、燃料消費を増大させる。ハイブリッド電気自動車(HEV)の場合には、バッテリーが過放電されないことを確実にするために、コンプレッサーの動作がエンジンの起動を必要とすることが多い。HEVのメリットの一つは、エンジンが停止される時間を最大化しつつ電気モータの動力を使って自動車を駆動することにより達成される、燃料節約である。このように、自動的な防曇運転はHEVを運転することによって得られるメリットの一部を消失する場合がある。
【0005】
従来の自動防曇システムの別の制約は、空調制御システムが自動車の乗員の意思に反して運転されるときに、乗員の快適度が損なわれ得ることである。逆に、もし自動車の乗員が自動的な防曇運転を手動オーバーライド(manual override:手動解除)することが完全に許容されるならば、フロントガラスの曇りは期待されるほど迅速には晴れない場合がある。このように、自動車の乗員の快適度要件を充足することと、運転者にクリアな視界を提供するために迅速に且つ効率的にフロントガラスの防曇を行うこととを両立させる自動車の空調制御システム及び方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、自動車の乗員によって決定された環境快適度指針において又はその近傍にて動作したままで、迅速に且つ効率的に自動車のフロントガラスのような自動車のガラスを防曇すべく自動車の空調制御システムを自動運転する、自動車の環境管理システム及び方法を提供する。本発明の実施形態は、自動車の乗員の快適要件と、自動車のフロントガラス又は他の自動車ガラスの自動防曇の目的とを両立させるために、多数の工程を含む自動車の環境管理方法を提供する。
【0007】
実施形態の一つにおいて、本発明の方法は、車室内の温度及び湿度のような、自動車の特定の環境状態を判定する工程を含む。温度及び湿度は、空調制御のための有用な情報を提供するのに効果的な車室内の任意の場所にて、検出され得る。例えば、容量式湿度センサが、フロントガラス、インストルメント・パネル、又はフロントガラスが曇り状態となる可能性を判定するための他の適切な場所の近傍に配置される場合がある。温度計測と湿度計測の特定の組合せが、この技術分野にて一般的に使用されるような、曇り可能性チャートと比較され得る。
【0008】
実施形態の一つにおいて、本発明の方法は、所望の結果を達成するように、空調システムに相当する暖房、換気及び冷房(heating, ventilating and air conditioning: HVAC)システムを運転するため、前もってプログラムされたアルゴリズムを備えて構成されるHVAC制御装置(空調制御装置)によって実行される場合がある。多数のセンサが、制御装置に入力信号を提供可能であり、そして、曇り可能性に関連するデータが、例えば参照テーブルの形式にて、制御器に記憶され得る。制御装置はまた、自動車の乗員によって操作可能な多数の手動オーバーライドから、入力信号を受けることができる。前もってプログラムされたアルゴリズムは、乗員の快適度とフロントガラスの防曇とを適切に両立させるように、空調システムを運転するための種々の入力信号に従って作動するように構成される。
【0009】
空調制御装置は、空気流を生成するファン装置、空気流を冷却する冷房装置、空調システムに導入される外気及び内気循環空気の量を制御する内気循環装置、空気流の向きを制御するモード装置、及び、空気流を加熱する暖房装置の動作制御を含む多数の機能を実行するように動作する。自動車の多くにおいて、暖房装置はヒータ・コアを含むであろう。その結果、空気流の加熱は、空気流の少なくとも一部をヒータ・コアを通るよう迂回させることによって行なわれる。機能の少なくとも一部は、フロントガラスの自動防曇を達成するために自動制御可能であり、そして、自動制御可能な機能の少なくとも一部は、自動車の乗員による手動オーバーライドされることがある。
【0010】
関連する環境状態を示すセンサからの入力信号に基づいて、フロントガラスを防曇するのが望ましいか否かが判定される。その後、手動オーバーライドの状態が判定され、その結果、手動オーバーライドが選択されていないと判定されたときに、空調システムは、フロントガラスの防曇をもたらすために自動制御される。
【0011】
本発明の実施形態の幾つかにおいて、もし手動オーバーライドが選択されるならば、自動的な防曇運転は終了される、或いは、実行が許容されない。これは、自動車の乗員に対して最大制御を提供する。他の実施形態において、冷房装置に対する手動オーバーライド又は内気循環装置に対する手動オーバーライドが選択されたときには、自動的な防曇運転は実行は許容されるものの、制限される。そして、冷房装置や内気循環装置に対する手動オーバーライドが選択されずに、ファン装置に対する手動オーバーライドが選択される場合にも、自動的な防曇運転は実行が許容されるものの、制限されることになる。後者の例においては、少しの速度調整のみが許容されるように、ファン装置の自動制御を制限するのが望ましい場合がある。これは、自動防曇システムが、自動車の乗員による選択の範囲外でありながら、逸脱が目立たないように乗員の選択に十分近い領域で、効果的にファンを運転するのを可能とする。
【0012】
本発明の他の実施形態においては、制限された自動的な防曇運転が、選択された手動オーバーライドに関わらず、許容される。例えば、ファン装置に対する手動オーバーライドが選ばれた場合、自動的な防曇運転は、空調調整の制限を伴うものの、許容される。このように、乗員が冷房を停止するように要求しているときであっても、冷房装置は断続的に運転され得る。反対に、もしファン装置に対する手動オーバーライドが選択されず、その代わりに冷房装置に対する手動オーバーライド又は内気循環装置に対する手動オーバーライドのいずれかが選択されるならば、自動的な防曇運転は、冷房装置及びファン装置の両方の動作に制限を伴うものの、許容される。後述するように、他の実施形態が、自動車の乗員によって要求される環境状態と、フロントガラスの自動防曇を行う目的との両立が達成されるように、本発明の範囲内となるように企図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一般的に、自動車内における温度制御及びフロントガラスの防曇(defogging)制御は、自動車の車室(cabin)内に供給される空気の温度及び流量を調整するための種々のアクチュエータを用いて達成される。図1が、本発明の実施形態に従った自動車の環境管理システム10を概略的に示す。自動車は、概略的に20で示される、空調システムとしての暖房、換気及び冷房(heating, ventilating and air conditioning: HVAC)システムを含む。HVACシステム20は、各々、インストルメント・パネル−デフロスト(防曇)、フロア(floor)−インストルメント・パネル、及び外気−内気循環空気の各々のアクチュエータ又はドア22、24及び28を含む空気流ドアの配列を含む。
【0014】
ドアは、調和空気の流れを、周知のように例えばフロントガラス、フロア又はインストルメント・パネルのような自動車の乗員室の様々な場所に向ける、空気分配装置の一部である。ドア22、24及び28は、図1にて示されるような一般的な形態で、それらの各種吸引位置、部分吸引位置及び非吸引位置の間を、真空モータ(不図示)によって駆動され得る。或いは、電気サーボ・モータによって駆動される場合もある。温度を制御する混合ドア26も設けられ、電気サーボ・モータ(不図示)によって駆動され得る。
【0015】
HVACシステム20はまた、空気流を生成するための、ブロワ・ホイール(blower wheel)32を含む可変速のファン装置30を含む。HVACシステム20は、図1に示されるヒータ・コア34としての暖房装置、及び、エバポレータ・コア36及びコンプレッサー37を含む冷房装置35を更に含む。コンプレッサー37は、エンジンによって機械的に駆動されるコンプレッサーではなく、電動コンプレッサーであり得る。電動コンプレッサーは、その速度がエンジン速度と密接に関連する機械的なコンプレッサーとは異なり、可変速動作すべく構成され得るので、HVACシステム20のより高度な動作制御を提供する。
【0016】
ヒータ・コア34及びエバポレータ・コア36は各々、ファン装置30により生成される空気流を加熱及び冷却する。生成された空気流は、空気流分配装置及び付随するダクト38を通じて、分配される。HVACシステム20は、温度、空気流の方向、及び外気と内気循環空気の比率を制御する。HVACシステム20は、コンプレッサー37に連通する低圧サイクル・スイッチ(low pressure cycle switch)39を更に含む。低圧サイクル・スイッチ39は、特定の条件において、コンプレッサー37を停止させるように動作可能である。加えて、コンプレッサー37は、エバポレータ・コア36の温度が所定値を下回るときに停止される場合があり、これはエバポレータ・コア36の凍結を防止する一助となる。
【0017】
より詳細に後述するように、HVACシステム20の動作は、空調制御システムとしての制御装置40によって制御される。図2は、電子制御器42を含む制御装置40を示す。制御器42は、種々の入力信号に応じて、HVACシステム20を制御する信号を生成する。例えば、制御器42は、乗員室温度センサ44、外気温度センサ46、エンジン冷却液温度センサ48、エバポレータ温度センサ50、湿度センサ52、及び吹出温度センサ54からの入力信号を受ける。センサ44乃至54は各々、車室内温度、外気(車外)温度、エバポレータ温度、エンジン冷却液温度(ECT)、乗員室の相対湿度、及び吹出温度(すなわち、HVACシステム20から車室内に吹き出される空気の温度)を表す信号を提供する。
【0018】
センサ44乃至54からの入力信号を受けるのに加えて、制御器42はまた、入力装置56を介して自動車の乗員からの入力信号を受ける場合がある。入力装置56は、自動車のインストルメント・パネルで一般的に使用されそして図4にて示されるような操作パネルであり得る。より詳細に後述するように、入力装置56は、自動車の乗員がHVAC機能を手動制御することを可能にし、そして場合によっては、HVACシステム20の自動運転を解除する。制御器42は、温度及び空気流量を調節して、そして最終的には自動車内の運転者及び乗員の快適度を維持するために、ドア22乃至28のみならず、コンプレッサー37の動作を制御する。加えて、制御器42は、自動車のフロントガラスの自動防曇を行うアルゴリズムを備えてプログラムされる。ここで、これらセンサ44乃至54からの入力信号によって、自動車の特定の環境状態を判定することができ、その環境状態に基づいて、フロントガラスの防曇をいつ行うのが望ましいのかを判定することができる。
【0019】
図3を参照すると、チャート58が本発明の多数の実施形態を示す。この説明のために、図1及び図2に示されたHVACシステム20及びその制御装置40が参照に使用されるであろう。図3に示されるオプション1乃至5の各々において、本発明の方法は特定のHVAC機能の手動オーバーライドを調べる。具体的には、三つの手動オーバーライドが使用される。それらは、ファン装置30、冷房装置35、及び内気循環装置(すなわち、内気循環ドア28)に対する手動オーバーライドである。これらの手動オーバーライドは、図4にて示される選択スイッチの一つ又は二つ以上を作動させることによって、選択され得る。なお後述するように、自動制御可能な機能の少なくとも幾つかは、自動車の乗員による手動オーバーライドの影響を受けることになる。
【0020】
図4は、図2にて概略的に示された操作パネル56を、詳細に示す。操作パネル56は、自動車の乗員のための入力装置としての機能を果たし、種々の空調制御機能に対する手動選択を許容する。モード選択スイッチ60は、インストルメント・パネル(PANEL)、デフロスタ(DEF)、フロア/デフロスタの両方(FLR/DEF)、及びフロア(FLR)の中から、空気流がどこに向けられることになるのかを乗員が選ぶのを可能にする。温度選択スイッチ62は冷風(COOL)と暖風(WARM)の間で乗員が選択することで空気温度制御を提供し、ファン選択スイッチ64はオフ(OFF)、低(LO)、中(MED)、及び高(HI)の中から乗員が選択することでファンのオン/オフ及びファン速度の制御を提供する。内気循環スイッチ66は、内気循環(RECIRC)と外気(FRESH)の間で乗員が選択することで車室空気の完全な内気循環、完全な外気導入、或いはそれらの幾つかの組合せを含む。A/C(冷房)スイッチ68は、乗員が冷房をオンとオフのいずれかを手動選択するのを可能にする。
【0021】
操作パネル56は、本発明と共に使用され得る操作パネルの単なる一例である。他のアナログ操作パネル又はデジタル操作パネルを含む別の操作パネルも、使用可能である。
【0022】
本発明の実施形態においては、図4にて示されるように手動制御可能な五つの空調制御の機能(すなわちモード、温度、ファン、内気循環及び冷房)のいずれかを自動制御することができる。図3に示されるオプション1乃至5の各々は相互に排他的であることが企図される。すなわち、図2に示される制御装置40のような制御装置は、いかなる時であっても、五つのオプションの内の一つのみに応じて、自動的な防曇運転を行うように構成されることになる。どのオプションを使用するかに関する決定は、例えばどの程度の空調制御を自動車の乗員に割り当てるか、どの程度の自動空調制御を許容するか、いつ自動空調制御を許容するか、及び自動空調制御のどのレベルの機能が許容されるべきかのような考慮に基づいて、自動車の製造者によってなされ得る。
【0023】
図3に示される五つのオプションは実施において幾つかの相違点を有するが、類似点もまた存在する。例えば、図3に示されるオプション1乃至5の各々において、もし三つの手動オーバーライドがいずれも選択されていなければ、自動的な防曇運転(自動防曇機能)が実行される。すなわち、フロントガラスの防曇を達成するために自動制御可能な三つの機能の少なくとも幾つかは、自動車の乗員による手動オーバーライドの影響を受ける可能性があり、手動オーバーライドのいずれもが選択されていないと判定されたときに、フロントガラスの防曇を達成するための、HVACシステム20の自動制御可能な機能の少なくとも幾つかが実行されることになる。すなわち、いずれの機能も手動制御されていないと判定されたときに、HVACシステム20の自動制御可能な機能の少なくとも幾つかを自動制御して、それによって上記フロントガラスの自動防曇を達成することになる。七つの状態を有するオプション1は、七つの状態の内の六つが同じなので、二つの状態に要約され得る。つまり、もしオプション1において三つの手動オーバーライドのいずれかが選ばれるならば、自動的な防曇運転(少なくとも幾つかの自動制御可能な機能)が終了される、或いは、実行されない(すなわち、自動的な防曇運転は禁止される)。反対に、オプション2においては、状態1がオプション1及び他の三つのオプションと共通であるものの、四つの状態が存在する。オプション2において、もし冷房装置35に対する手動オーバーライド又は内気循環装置に対する手動オーバーライドのいずれかが選択されるならば(状態2或いは3)、自動的な防曇運転(少なくとも幾つかの自動制御可能な機能の自動制御)が終了される、或いは、実行されない。しかしながら、もしファン装置30に対する手動オーバーライドのみが選択されるならば(すなわち、ファン装置30が手動制御されていて、且つ冷房装置35及び内気循環装置28のいずれも手動制御されていないとき=状態4)、自動的な防曇運転は実行が許容される。
【0024】
状態4にて自動的な防曇運転は実行可能であるけれども、自動的な防曇運転は制限されたモード、すなわち、ファン動作の少しだけの増量調整のみが許容されるモードにて実行される。つまり、この状態4のとき、すなわち、ファン装置30が手動制御されていて、且つ冷房装置35及び内気循環装置28のいずれも手動制御されていないときには、乗員が手動で選択したファン動作レベルの近傍内(所定作動範囲内)でのファン装置30の作動を維持すべく、ファン装置30の自動制御が制限される。或いは、ファン装置30の自動制御は、手動オーバーライドが選択されたときのファン動作レベルに対して、その近傍内(所定作動範囲内)でのファン動作が維持されるように制限される場合もある。上述したように、HVACシステムのそのような制限された動作は、自動的な防曇運転を自動車の乗員に気付かせなくするのに役立つ。チャート58にて示される機能に加えて、モード機能及び温度機能の自動運転が状態1、2及び4において許容される。
【0025】
オプション3においては、自動車の乗員によって三つの手動オーバーライドのいずれが選択されていようとも、制限された自動防曇運転機能が許容される。すなわち、オプション3の状態3乃至8に示されるように、冷房装置35に対する手動オーバーライド又は内気循環装置28に対する手動オーバーライドの少なくとも一つが選択されているときには、HVACシステム20の自動制御可能な機能の少なくとも幾つかを、制限された自動制御にて実行する。また、オプション3の状態2に示されるように、ファン装置30に対する手動オーバーライドが選択されていて、且つ冷房装置35に対する手動オーバーライド及び内気循環装置28に対する手動オーバーライドのいずれもが選択されていないときには、HVACシステム20の自動制御可能な機能の少なくとも幾つかを、制限された自動制御にて実行する。以上のことから、状態2乃至8においては、HVACシステム20の自動制御は、制限されることになる。モード機能及び温度機能の自動運転が、八つの状態の全てにおいて許容されるが、状態3、5及び7は自動的な防曇運転の機能の一部を制限する。例えば、オプション2の状態4におけるのと全く同様に、オプション3の状態3、5及び7は、ファン装置30の制限された自動制御のみを許容する。加えて、状態2乃至8においては、冷房装置35の自動運転が制限される。これは、たとえ手動のA/Cスイッチ68(図4参照)がオフ(OFF)位置にあったとしても、コンプレッサー37を断続的、及び/又は、短時間使用することを含み得る。ここに、冷房装置35の自動制御が、外気温度によって更に制限されることを記しておく。例えば、-1℃(30°F)のような所定温度が、それ以下ではコンプレッサー37の運転が許容されない最低温度として選ばれ得る。
【0026】
もし、状態2、4、6及び8のように、ファン装置30に対する手動オーバーライド(又は手動制御)がオプション3にて選択されるならば、自動的な防曇運転は、冷房装置35の制限された動作ではあるが、実行が許容される。これは、コンプレッサー37の断続的な動作、又はその速度の変化を伴う場合がある。もし、オプション3の状態3、5及び7のように、ファン装置30に対する手動オーバーライド(又は手動制御)が選択されないものの、冷房装置35に対する手動オーバーライド(又は手動制御)又は内気循環装置28に対する手動オーバーライド(又は手動制御)のいずれかが選択されるならば、自動的な防曇運転は、ファン装置30及び冷房装置35の両方の制限された動作(自動制御)を伴って許容される。
【0027】
前述の三つのオプションと同様に、オプション4は、三つの手動オーバーライドのいずれもが選択されないときには、完全に自動的な防曇運転を許容する。その一方で、オプション4は、内気循環機能に対する手動オーバーライドに優先権を与え、もし内気循環装置に対する手動オーバーライドが選ばれたならば(他の二つの手動オーバーライドの選択に関わらずに)、自動的な防曇運転を禁止する。すなわち、オプション4の状態5乃至8のように、内気循環装置28に対する手動オーバーライド(又は自動制御)が選択されているときには、HVACシステム20の上記自動制御可能な機能の実行を禁止する。オプション4において、モード機能及び温度機能の自動運転は状態1乃至4にてのみ許容される。
【0028】
状態2乃至4においては、ファン装置30に対する手動オーバーライド(又は手動制御)と冷房装置35に対する手動オーバーライド(又は手動制御)の両方又はいずれかが選択されるが、内気循環装置に対する手動オーバーライド(又は手動制御)は選択されない。これらの三つの状態において、自動的な防曇運転は、ファン装置30、冷房装置35及び内気循環ドア28の実行が、制限された動作ではあるが、許容される。この場合におけるファン装置30及び冷房装置35の自動運転における制限は、上述の通りであり得、さらに、内気循環装置の自動運転における制限は、自動車の乗員によって手動で選ばれた内気循環の設定レベルの近傍にて、自動制御をわずかな変化のみに制限することを含み得る(オプション4の状態2乃至4)。具体的には、乗員が手動で選択した内気循環動作レベルの近傍内(所定作動範囲内)での内気循環装置の作動を維持すべく、内気循環装置28の自動制御が制限され得て、或いは、手動オーバーライドが選択されたときの内気循環動作レベルに対して、その近傍内(所定作動範囲内)での内気循環動作が維持されるように制限される場合もある。
【0029】
オプション5は、最初の四つの状態にて、自動的な防曇運転の完全な機能を提供する。すなわち、内気循環装置に対する手動オーバーライドが選択されない限り、HVACシステムの自動運転の全てが許容される。しかしながら、状態5乃至8に示されるように、もし内気循環装置28に対する手動オーバーライドが選択されたならば、自動的な防曇運転(冷房装置35、内気循環装置28及びファン装置30)は、依然として実行が許容されるが、制限された態様のみである。オプション5の状態5乃至8における自動制御の制限は、オプション4の状態2乃至4と同様な形態で行なわれ得る。また、オプション3と同様に、モード機能及び温度機能の自動運転が、全ての状態において許容される。本発明の他の実施形態が、自動車の乗員の快適性と、フロントガラスの防曇運転の自動的で効率的な実行とをバランスさせる所望の結果を達成するために、自動及び手動の空調制御動作の種々の組合せを使用し得ることを記しておく必要がある。
【0030】
本発明を実施する最良の形態を詳述してきたが、この発明が関連する技術分野の当業者は、特許請求の範囲により規定される発明を実施するための種々の代替設計及び実施形態を理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に従った自動車の環境管理システムを表す概略図である。
【図2】図1にて示される環境管理システムの制御装置を表すブロック図である。
【図3】本発明の方法の実施形態を表すチャートである。
【図4】図2にて概略的に表される操作パネルの前面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 自動車の環境管理システム
20 HVAC(空調)システム
28 内気循環ドア(装置)
30 ファン装置
35 冷房装置
40 制御装置
44 乗員室温度センサ
46 外気温センサ
48 エンジン冷却液温度センサ
50 エバポレータ温度センサ
52 湿度センサ
54 吹出温度センサ
56 操作パネル
58 チャート
60 モード選択スイッチ
62 温度選択スイッチ
64 ファン選択スイッチ
66 内気循環スイッチ
68 A/C(冷房)スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスと、自動車の各々の環境状態を検出する少なくとも一つのセンサと、空調システムと、を有し、
上記空調システムは、複数の機能を実行するよう動作可能な空調制御装置を含み、
上記複数の機能は、空気流を生成するファン装置、上記空気流を冷却する冷房装置、上記空調システムに導入される外気の量及び内気循環空気の量を制御する内気循環装置、上記空気流の向きを制御するモード装置、及び上記空気流を加熱する暖房装置の動作制御を含み、
上記機能の少なくとも一部は、上記フロントガラスの防曇を達成するために自動制御可能であって、
上記自動制御可能な機能の少なくとも一部は、自動車の乗員による手動オーバーライドの制約を受ける
自動車の環境管理方法であって、
上記自動車の特定の環境状態を判定する工程と、
上記判定された環境状態に基づいて、上記フロントガラスの防曇をいつ行うのが望ましいのかを判定する工程と、
上記手動オーバーライドの状態を判定する工程と、
上記手動オーバーライドが選択されていないと判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行する工程と、
を備える自動車の環境管理方法。
【請求項2】
上記手動オーバーライドが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の実行を禁止する工程、を更に備える請求項1に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項3】
上記冷房装置に対する上記手動オーバーライド又は上記内気循環装置に対する上記手動オーバーライドの少なくとも一つが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を、制限された自動制御にて実行する工程、を更に備える請求項1に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項4】
上記ファン装置に対する上記手動オーバーライドが選択されていると判定され、且つ上記冷房装置に対する上記手動オーバーライド及び上記内気循環装置に対する上記手動オーバーライドのいずれもが選択されていないと判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を、制限された自動制御にて実行する工程、を更に備える請求項3に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項5】
上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行する工程は、上記ファン装置の動作を上記ファン装置に対する上記手動オーバーライドが選択した動作レベルの近傍に維持するための、上記ファン装置の制限された自動制御を含む、請求項3又は4に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項6】
上記ファン装置が手動制御されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を、上記冷房装置の制限された自動制御にて実行する工程、を更に備える請求項1及び3乃至5のいずれか一つに記載の自動車の環境管理方法。
【請求項7】
上記ファン装置に対する上記手動オーバーライドが選択されていないと判定され、且つ上記冷房装置又は上記内気循環装置に対する上記手動オーバーライドの少なくとも一つが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行する工程、を更に備える請求項1及び3乃至6のいずれか一つに記載の自動車の環境管理方法。
【請求項8】
上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行する工程は、上記ファン装置に対する上記手動オーバーライドが選択されていると判定され、且つ上記冷房装置又は上記内気循環装置に対する上記手動オーバーライドの少なくとも一つが選択されていると判定されたときに、上記冷房装置及び上記ファン装置の制限された自動制御を含む、請求項7に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項9】
上記内気循環装置に対する上記手動オーバーライドが選択されていないと判定され、且つ上記ファン装置又は上記冷房装置に対する上記手動オーバーライドの少なくとも一つが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行する工程、を更に備える請求項1に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項10】
上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の少なくとも一部を実行する工程は、上記内気循環装置に対する上記手動オーバーライドが選択されていないと判定され、且つ上記ファン装置又は上記冷房装置に対する上記手動オーバーライドの少なくとも一つが選択されていると判定されたときに、上記冷房装置、上記内気循環装置及び上記ファン装置の制限された自動制御を含む、請求項9に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項11】
上記内気循環装置に対する上記手動オーバーライドが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能の実行を禁止する工程、を更に備える請求項1に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項12】
上記内気循環装置に対する上記手動オーバーライドが選択されていると判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するための、上記空調システムの上記自動制御可能な機能を、上記冷房装置、上記内気循環装置及び上記ファン装置の制限された自動制御にて実行する工程、を更に備える請求項9又は10に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項13】
フロントガラスと、自動車の各々の環境状態を検出する少なくとも一つのセンサと、空調システムと、を有し、
上記空調システムは、複数の機能を実行するよう動作する空調制御装置を含み、
上記複数の機能は、空気流を生成するファン装置、上記空気流を冷却する冷房装置、上記空調システムに導入される外気及び内気循環空気の量を制御する内気循環装置、上記空気流の向きを制御するモード装置、及び上記空気流を加熱する暖房装置の動作制御を含み、
上記機能の少なくとも一部は、自動車の乗員によって手動制御可能であり、
上記機能の少なくとも一部は、上記センサからの入力信号を使用する前もってプログラムされた所定のアルゴリズムに基づいて、自動制御可能であり、
上記前もってプログラムされたアルゴリズムは、上記フロントガラスの防曇を達成するように構成される、
自動車の環境管理方法であって、
上記自動車の特定の環境状態を判定する工程と、
上記判定された環境状態に基づいて、上記フロントガラスの防曇をいつ行うのが望ましいのかを判定する工程と、
上記空調システムの手動制御可能な機能の状態を判定する工程と、
上記機能が手動制御されていないと判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能を自動制御して、それによって上記フロントガラスの自動防曇を達成する工程と、
を備える自動車の環境管理方法。
【請求項14】
上記機能が手動制御されていると判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能の自動制御を禁止する工程、を更に備える請求項13に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項15】
上記冷房装置又は上記内気循環装置の少なくとも一つが手動制御されていると判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能の自動制御を禁止する工程、を更に備える請求項13に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項16】
上記ファン装置が手動制御されていると判定され、且つ上記冷房装置及び上記内気循環装置のいずれも手動制御されていないと判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調装置における上記少なくとも一部の機能を自動制御する工程、を更に備える請求項15に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項17】
上記ファン装置が手動制御されていると判定され、且つ上記冷房装置及び上記内気循環装置のいずれも手動制御されていないと判定されたときに、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能の上記自動制御は、上記ファン装置の動作を上記自動車の乗員によって手動で選ばれた動作レベルの近傍に維持するための、上記ファン装置の制限された自動制御を含む、請求項16に記載の自動車の環境管理装置。
【請求項18】
上記ファン装置が手動制御されていると判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能を、上記冷房装置の制限された自動制御にて自動制御する工程、を更に備える請求項13に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項19】
上記ファン装置が手動制御されていないと判定され、且つ上記冷房装置又は上記内気循環装置の少なくとも一つが手動制御されていると判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能を自動制御する工程、を更に備える請求項13又は18に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項20】
上記ファン装置が手動制御されていないと判定され、且つ上記冷房装置又は上記内気循環装置の少なくとも一つが手動制御されているときに、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能の上記自動制御は、上記冷房装置及び上記ファン装置の制限された自動制御を含む、請求項19に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項21】
上記内気循環装置が手動制御されていないと判定され、且つ上記ファン装置又は上記冷房装置の少なくとも一つが手動制御されていると判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能を自動制御する工程、を更に備える請求項13に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項22】
上記内気循環装置が手動制御されていないと判定され、且つ上記ファン装置又は上記冷房装置の少なくとも一つが手動制御されていると判定されたときに、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能の上記自動制御は、上記冷房装置、上記内気循環装置及び上記ファン装置の制限された自動制御を含む、請求項21に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項23】
上記内気循環装置が手動制御されていると判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能の自動制御を禁止する工程、を更に備える請求項21又は22に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項24】
上記内気循環装置が手動制御されていると判定されたときに、上記前もってプログラムされたアルゴリズムに応じて、上記空調システムにおける上記少なくとも一部の機能を、上記冷房装置、上記内気循環装置及び上記ファン装置の制限された自動制御にて自動制御する工程、を更に備える請求項13に記載の自動車の環境管理方法。
【請求項25】
フロントガラスを有する自動車の環境管理システムであって、
上記自動車の各々の環境状態を検出する少なくとも一つのセンサと、
空調システムと、を有し、
上記空調システムは、空気流を生成するファン装置、上記空気流を冷却する冷房装置、上記空調システムに導入される外気及び内気循環空気の量を制御する内気循環装置、上記空気流の向きを制御するモード装置、上記空気流を加熱する暖房装置、上記ファン装置、上記冷房装置、上記内気循環装置、上記モード装置及び上記暖房装置の少なくとも一つの手動操作を達成するために、操作可能な手動操作セレクター、及び、少なくとも一つの制御器を含む空調制御装置を備え、
上記空調制御装置は、上記少なくとも一つのセンサ及び上記手動操作セレクターからの入力信号に基づいて、上記ファン装置、上記冷房装置、上記内気循環装置、上記モード装置及び上記暖房装置の動作を制御するように構成され、
上記空調制御装置は更に、上記手動操作セレクターが上記ファン装置、上記冷房装置又は上記内気循環装置の手動操作を達成するために操作されていないと判定されたときに、上記フロントガラスの防曇を達成するため、空調システムを自動制御するための前もってプログラムされたアルゴリズムを備えて構成される、
自動車の環境管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−184154(P2008−184154A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18983(P2008−18983)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(503136222)フォード グローバル テクノロジーズ、リミテッド ライアビリティ カンパニー (236)
【Fターム(参考)】