説明

自動車の車体後部構造

【課題】車体後部における剛性を向上させること。
【解決手段】リヤサイドエクステンション18は、リヤフロアパネルの車幅方向の外側端部に結合される第1結合部26と、リヤホイルハウスインナの後端に結合される第2結合部40と、第1結合部26の後端部から第2結合部40側に向かう上りの傾斜部からなる辺部42と、第1結合部26と第2結合部40と辺部42とによって囲繞される面部44と、リヤピラーのフランジ部と結合される延出部48とを備え、辺部42の剛性又は強度は、少なくとも、面部44の剛性又は強度よりも高く設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤサイド周辺部に係る自動車の車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術に係る自動車の車体後部構造を図7に示す(特許文献1参照)。図7(a)は、リヤホイルハウスとリヤフロアパネルとの接合部周りの斜視図、図7(b)は、リヤフロアサイドエクステンションの斜視図、図7(c)は、図7(a)のC−C線に沿った縦断面図である。
【0003】
特許文献1の車体後部構造では、図7に示されるように、リヤフロアサイドエクステンション1を上下方向及び前後方向に拡大成形し、その前縁部1aをリヤホイルハウスアウタ2aの後側部の合わせフランジ3の接合部に接合してリヤボデイサイドにサブアッセンブリし、リヤフロアアッセンブリとの組付時にリヤフェンダパネル4のドラフター開口部5(図7(c)参照)を通じて、リヤフロアサイドエクステンション1とリヤフロアサイドパネル6の立壁部6aとを車幅方向に接合している。この特許文献1の車体後部構造では、リヤフロアサイドエクステンション1の接合作業に支障をきたすことが無く拡大成形を可能とし、リヤサイド部の補強効果を高めることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−29453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リヤフロアパネル7(リヤフロアサイドパネル6)とリヤサイドエクステンション1との結合部A(図7(a)参照)には、サスペンション入力点(リヤホイルハウス2)からの上下方向、前後方向及び左右方向の荷重が入力される。さらに、この結合部Aは、車体後端の下端部であり、且つ、側端の隅部(角部)に配置される部位であることから、車体後部の剛性に大きな影響を与える。
【0006】
上記の点を考慮すると、特許文献1に開示された車体後部構造では、結合部Aと結合部B(リヤフロアサイドエクステンション1とリヤホイルハウス2との結合部)との間に形成された面部Mの上端の傾斜辺Hが、結合部Bから結合部Aまで到達していないため(図7(a)参照)、車体後部における剛性への寄与度が低くなっている。
【0007】
また、特許文献1に開示された車体後部構造では、結合部Aと結合部C(リヤフロアサイドエクステンション1とボデイサイドパネルとの結合部)とが上下方向で離間して配置されているため(図7(a)参照)、結合部Aと結合部Cとの間は、1枚の板部材のみで形成されており(図7(c)参照)、車体後部における剛性への寄与度が低下している。
【0008】
さらに、特許文献1に開示された車体後部構造では、リヤフロアパネル7とリヤホイルハウス2との間は、リヤフロアサイドパネル6とリヤフロアサイドエクステンション1とからなる2部品を介して結合されているため、前記2部品との間での結合部位が多くなる分だけ、車体後部における剛性への寄与度が低下している。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、車体後部における剛性を向上させることが可能な自動車の車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、車体後部のリヤフロアパネルと、前記リヤフロアパネルの車幅方向の両側部に配置されるリヤホイルハウスと、前記リヤフロアパネルの車幅方向の両側部で、且つ、前記リヤホイルハウスの後方に配置されるリヤサイドエクステンションとを有する自動車の車体後部構造であって、前記リヤサイドエクステンションは、前記リヤフロアパネルの車幅方向の外側端部に結合される第1結合部と、前記リヤホイルハウスの後端に結合される第2結合部と、前記第1結合部と前記第2結合部との間に掛け渡される辺部と、前記第1結合部と前記第2結合部と前記辺部とによって囲繞される面部と、を備え、前記辺部の剛性又は強度は、少なくとも、前記面部の剛性又は強度よりも高く設定されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、リヤサイドエクステンションにおける面部の剛性又は強度よりも、辺部の剛性又は強度を高く設定している。従って、本発明では、面部よりも高剛性・高強度からなる辺部が、第1結合部と第2結合部との間を掛け渡して面部の囲繞部位を固めることで、例えば、面部に付与される引張り変形、圧縮変形や曲げ変形等に対する剛性が向上し、リヤフロアパネルとリヤホイルハウスとの間での荷重の伝達を効率的に遂行することができる。この結果、本発明では、車体後部の剛性を向上させることができる。なお、「剛性」とは、外力による車体の変形しにくさ(車体の変形しない強さ)をいう。また、「強度」とは、圧縮強度、引張強度、捩れ強度、曲げ強度等の種々の強度を含む総合的な強度をいう。
【0012】
また、本発明は、前記辺部が、複数の屈曲部によって形成された稜線部を有する断面形状からなることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、リヤサイドエクステンションにおける辺部が、複数の屈曲部によって形成された稜線部を備えることにより、簡単な構成で前記辺部を高剛性・高強度とすることができる。
【0014】
さらに、本発明は、前記リヤフロアパネルの後端部にはリヤパネルが配置され、前記リヤパネルの車幅方向の両側部から上方に延在するリヤピラーが設けられ、前記リヤサイドエクステンションは、前記辺部の長手方向の途中から車体後方側に向かって延出し、前記リヤパネルと前記リヤピラーのうち、少なくとも、いずれか一方に結合される延出部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、リヤサイドエクステンションが、リヤパネルとリヤピラーのうち、少なくとも、いずれか一方と延出部を介して結合することにより、リヤパネル又はリヤピラーとリヤサイドエクステンションとの相互間で荷重を伝達することが可能となる。この結果、本発明では、リヤパネル又はリヤピラーに付与される車体前後方向への倒れ作用を抑制し、リヤパネル又はリヤピラー、さらにはリヤピラーの下方に位置するリヤフロアパネル及びリヤフレームの後端部に付与される上下方向の振動を抑制することができる。
【0016】
さらにまた、本発明は、前記リヤパネルと前記リヤピラーのうち、少なくとも、いずれか一方には、車体前方側に向かって前記面部に沿って突出するフランジ部が設けられ、前記延出部は、前記フランジ部に結合されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、リヤサイドエクステンションにおける延出部が、リヤパネル又はリヤピラーのフランジ部に結合されている。この場合、リヤパネル又はリヤピラーと延出部との結合部位には、リヤサイドエクステンションの面部に沿った方向の荷重が入力されるが、面部に沿ったフランジ部と延出部とを結合することにより、前記荷重の入力に対してせん断方向で荷重を受けることができ、結合強度を向上させることができる。
【0018】
またさらに、本発明は、前記延出部が、前記第1結合部の後端部近傍から上方側に向けて立ち上がる第1辺と、前記辺部の長手方向中央部から車体後方且つ上方側に向けて立ち上がる第2辺とによって略三角形の面状とされることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、第1辺と第2辺とによって延出部が略三角形の面状とされることにより、リヤパネル又はリヤピラーから付与される荷重を辺部(面部)の長手方向に渡って末広がり状に拡散して伝達することができ、荷重伝達効率を向上させることができる。
【0020】
またさらに、本発明は、前記第1辺と前記第2辺のうち、少なくとも、いずれか一方が、前記延出部の他の部位よりも剛性又は強度が高く設定されることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、リヤサイドエクステンションにおける延出部の第1辺又は第2辺が、延出部の他の部位と比較して剛性又は強度が高く設定されることにより、リヤピラーから付与される荷重の拡散効果を促進させ、荷重伝達効率をより一層向上させることができる。
【0022】
またさらに、本発明は、前記辺部と前記第1辺と前記第2辺のうち、少なくともいずれか1つが、複数の屈曲部によって形成された稜線部を有する断面形状からなることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、リヤサイドエクステンションにおける辺部、第1辺又は第2辺のうち、少なくとも1つが複数の屈曲部によって形成された稜線部を有することにより、延出部の第1辺及び第2辺と辺部とを、簡単な構成で高剛性又は高強度とすることができる。
【0024】
またさらに、本発明は、前記リヤホイルハウスが、室内側のリヤホイルハウスインナと、室外側のリヤホイルハウスアウタとからなり、前記リヤサイドエクステンションが、前記リヤホイルハウスアウタと一体成形されることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、リヤサイドエクステンションを別体とすることがなく、リヤホイルハウスアウタと一体成形することにより、部品点数を削減して組付工数を減少させると共に、リヤサイドエクステンションとリヤホイルハウスアウタとの結合部を削減して荷重伝達効率を向上させることができる。
【0026】
またさらに、本発明は、前記リヤフロアパネルの後端部から上方に向けて立ち上がるように配置されたリヤパネルが設けられ、前記第1結合部の後端部は、前記リヤパネルの近傍位置まで延在し、前記辺部は、前記第1結合部の後端部から前記第2結合部に向けて延在することを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、リヤサイドエクステンションにおける第1結合部の後端部が、リヤフロアパネルとリヤパネルとが結合する部位の近傍まで延在するように設けられる。この結果、本発明では、第1結合部の後端部から第2結合部に向かって辺部が延びているため、リヤフロアパネル又はリヤパネルとリヤホイルハウスとの間で相互に荷重の伝達が効率的に遂行され、車体後部の剛性を向上させることができる。
【0028】
またさらに、本発明は、前記リヤパネルが、車室内側のリヤインナパネルと、車室外側のリヤアウタパネルとからなり、前記リヤフロアパネルは、前記リヤインナパネルに結合され、前記リヤサイドエクステンションの後端部は、前記リヤアウタパネルに結合されていることを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、リヤフロアパネルとリヤインナパネルとの結合部を介在させ、リヤサイドエクステンションの後端部とリヤアウタパネルとの結合部を設けることにより、簡単な構成で第1結合部を高剛性・高強度とすることができる。
【0030】
またさらに、本発明は、前記リヤホイルハウスアウタの室外側を覆うサイドパネルが設けられ、前記サイドパネルは、前記サイドパネルの下端に、前記第1結合部及び前記リヤフロアパネルの車幅方向の外側端部と車幅方向に沿って重畳されるサイドパネルフランジを有し、前記第1結合部と前記リヤフロアパネルの外側端部と前記サイドパネルフランジの3つが重畳されて結合されることを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、従来技術に係る特許文献1の構造と比較して、リヤフロアパネルとリヤサイドエクステンションの結合部Aと、リヤサイドエクステンションとサイドパネルとの結合部Cとが、車体上下方向において同一位置にあるため結合強度を向上させることができる。また、本発明では、前記結合部Aと前記結合部Cとの間に面が存在しないため、車体後側部の剛性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、車体後部における剛性を向上させることが可能な自動車の車体後部構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る車体後部構造が適用された自動車の車体後側部を車室内側から見た一部破断側面図である。
【図2】図1に示す車体後側部を斜め方向から見た一部省略拡大側面図である。
【図3】図3は、リヤホイルハウスアウタと一体成形されたリヤサイドエクステンションの平面図である。
【図4】(a)は、リヤサイドエクステンションの拡大平面図、(b)は、(a)のIVB−IVB線に沿った縦断面図、(c)は、(a)のIVC−IVC線に沿った縦断面図である。
【図5】(a)は、図1のVA−VA線に沿った端面図、(b)は、(a)のA部拡大縦断面図である。
【図6】(a)は、図5(a)のVIA−VIA線に沿った一部省略横断面図、(b)は、(a)のB部拡大横断面図である。
【図7】従来技術に係る自動車の車体後部構造を示したものであり、(a)は、リヤホイルハウスとリヤフロアパネルとの接合部周りの斜視図、(b)は、リヤフロアサイドエクステンションの斜視図、(c)は、(a)のC−C線に沿った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車体後部構造が適用された自動車の車体後側部を車室内側から見た一部破断側面図、図2は、図1に示す車体後側部を斜め方向から見た一部省略拡大側面図である。なお、以下に示される、上下方向、前後方向及び左右方向は、図1及び図2に示される方向に従うものとする。
【0035】
図1に示すように、図示しない自動車は、車体10の後部側であって車幅方向(左右方向)にそれぞれ所定長だけ離間して配置され、車体10の前後方向に沿って略平行に延在するリヤフレーム12と、車体10の後部側の両側部であって前記リヤフレーム12上にそれぞれ配置されるリヤフロアパネル14と、前記リヤフロアパネル14の車幅方向の両側部にそれぞれ配置されるリヤホイルハウス16とを備える。
【0036】
また、図示しない自動車は、前記リヤフロアパネル14の車幅方向の両側部であって、且つ、前記リヤホイルハウス16の後方にそれぞれ配置されるリヤサイドエクステンション(図1及び図2の網点参照)18と、車幅方向に沿った一方のリヤフロアパネル14と他方の図示しないリヤフロアパネル14との間に配置され、前記一方及び他方のリヤフロアパネル14の側部にそれぞれ結合されると共に、下方側に向かって窪む凹部(後記する5(a)参照)を有するフロアパン20と、車体10の後端部に配置され、前記リヤフロアパネル14及び前記フロアパン20の後端部と結合されるリヤパネル28とを備える。
【0037】
なお、本実施形態において、「結合」とは、例えば、スポット溶接、レーザ溶接、摩擦撹拌接合等の結合手段によって、複数の部材が一体的に強固に固定されることをいう。また、本実施形態では、車幅方向に沿って分割形成された一対のリヤフロアパネル14の間にフロアパン20を配置するようにしているが、リヤフロアパネル14を分割形成することがなく、リヤフロアパネル14とフロアパン20とを一体的に形成するようにしてもよい。
【0038】
リヤホイルハウス16は、車室内側に配置されるリヤホイルハウスインナ16aと、車室外側に配置されるリヤホイルハウスアウタ16bとから構成される。この場合、リヤサイドエクステンション18は、後記する図3に示されるように、リヤホイルハウスアウタ16bと一体成形される。
【0039】
リヤサイドエクステンション18の車外側には、リヤホイルハウスアウタ16bの車室側を覆うように形成されたサイドパネル24(後記する図5(a)参照)が設けられる。このサイドパネル24の下端には、後記するように、リヤサイドエクステンション18の第1結合部26及びリヤフロアパネル14の車幅方向の外側端部14aと車幅方向で重畳するサイドパネルフランジ24a(後記する図5(b)参照)が設けられる。
【0040】
図2に示されるように、リヤフロアパネル14の後端部14bから上方に向けて立ち上がるようにリヤパネル28が配置される。このリヤパネル28は、車室内側のリヤインナパネル28aと、車室外側のリヤアウタパネル28bとから構成される(図1及び後記する図6(b)参照)。
【0041】
リヤインナパネル28aの車幅方向の両側部から上方に向かって延在するリヤピラー(Dピラー)30が設けられ、前記リヤピラー30の下方側には、後記するように、リヤサイドエクステンション18の延出部48と結合されるフランジ部30aが設けられる(図2参照)。なお、図1に示されるように、リヤピラー30の上部は、ルーフサイド部材34と結合され、前記ルーフサイド部材34には、前記リヤピラー30の前方で前記リヤピラー30よりも幅広に形成された他のリヤピラー(Cピラー)36が結合される。
【0042】
図3は、リヤホイルハウスアウタと一体成形されたリヤサイドエクステンションの平面図、図4(a)は、リヤサイドエクステンションの拡大平面図、図4(b)は、図4(a)のIVB−IVB線に沿った縦断面図、図4(c)は、図4(a)のIVC−IVC線に沿った縦断面図、図5(a)は、図1のVA−VA線に沿った端面図、図5(b)は、図5(a)のA部拡大縦断面図、図6(a)は、図5(a)のVIA−VIA線に沿った一部省略横断面図、図6(b)は、図6(a)のB部拡大横断面図である。
【0043】
リヤサイドエクステンション18は、図3に示されるように、リヤホイルハウスアウタ16bと一体的に形成され、車体前後方向に沿った前記リヤホイルハウスアウタ16bの後部側に設けられる。このリヤサイドエクステンション18は、図4(a)に示されるように、前後方向に沿って延在する底辺からなり、リヤフロアパネル14の車幅方向の外側端部14aに結合される第1結合部26と、複数のボルト取付孔27を有し、リヤホイルハウスインナ16aの後端の平面部に2本のボルト38(図2参照)を介して結合される第2結合部40とを備える。
【0044】
リヤサイドエクステンション18の第1結合部26と結合されるリヤフロアパネル14の外側端部14aは、車体10の下方側に向かって屈曲して形成される(図5(b)参照)。この場合、図5に示されるように、リヤサイドエクステンション18の第1結合部26と、リヤフロアパネル14の外側端部14aと、サイドパネル24下端のサイドパネルフランジ24aとが重畳して一体的に結合される。
【0045】
また、リヤサイドエクステンション18は、第1結合部26と第2結合部40との間に掛け渡され、第1結合部26の後端部から第2結合部40側に向かう上りの傾斜部からなる辺部42と、第1結合部26と第2結合部40と辺部42とによって囲繞されるように形成され、略三角形状の凹部からなる面部44とを有する。
【0046】
この場合、前記辺部42は、図4(b)に示されるように、複数の屈曲部によって形成された第1稜線部46a及び第2稜線部46bを有し、前記辺部42の剛性又は強度は、少なくとも前記面部44の剛性又は強度よりも高く設定される。この点については、後記で詳細に説明する。なお、「剛性」とは、外力による車体の変形しにくさ(車体の変形しない強さ)をいう。また、「強度」とは、圧縮強度、引張強度、捩れ強度、曲げ強度等の種々の強度を含む総合的な強度をいう。
【0047】
図4(b)に示されるように、第1結合部26の近傍部位には、複数の屈曲部によって第3稜線部46cが形成され、辺部42の第2稜線部46bと第3稜線部46cとの間で、凹部からなる面部44が形成される。
【0048】
また、前記辺部42の長手方向の途中(略中央部)から車体10の後方側に向かって延出(突出)し、リヤピラー30のフランジ部30aと結合される延出部48が設けられる。なお、本実施形態では、その一例として、リヤピラー30にフランジ部30aを設けているが、例えば、リヤパネル28(リヤインナパネル28a)に図示しないフランジ部を設けて延出部48と結合されるようにしてもよい。
【0049】
延出部48は、第1結合部26の後端部26aの近傍部位から上方側に向かって立ち上がる第1辺50aと、前記辺部42の長手方向の略中央部から車体10の後方側で、且つ、上方側に向かって立ち上がる第2辺50bとを有する。延出部48は、前記した第1辺50aと第2辺50bと辺部42とによって略三角形の面状に形成される。
【0050】
第1辺50a又は第2辺50bのうち、少なくともいずれか一方は、延出部48における他の部位よりも剛性又は強度が高く設定される。本実施形態では、その一例として、延出部48の第2辺50bの近傍部位に平面視して略台形状の凹部52が形成されているため、この凹部52を構成する複数の屈曲部によって稜線部53が形成される(図4(c)参照)。この稜線部53によって第2辺50bの剛性又は強度が、第1辺50aを含む延出部48の他の部位の剛性又は強度よりも高く設定されている。
【0051】
次に、リヤサイドエクステンション18と他の部材との結合関係について概略説明する。
第1結合部26は、リヤフロアパネル14の車幅方向の外側端部14aに結合される。また、第2結合部40は、2本のボルト38を介して、リヤホイルハウスインナ16aの後端の平面部に結合される。延出部48は、リヤピラー30のフランジ部30aに結合される。
【0052】
本実施形態に係る車体後部構造が適用された車体10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0053】
本実施形態では、リヤサイドエクステンション18における面部44の剛性又は強度よりも、辺部42の剛性又は強度を高く設定している。従って、本実施形態では、面部44よりも高剛性・高強度からなる辺部42が、第1結合部26と第2結合部40との間を掛け渡して面部44の囲繞部位を固めることで、例えば、面部44に付与される引張り変形、圧縮変形や曲げ変形等に対する剛性が向上し、リヤフロアパネル14とリヤホイルハウス16との間での荷重の伝達を効率的に遂行することができる。この結果、本実施形態では、車体後部の剛性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、リヤサイドエクステンション18における辺部42が複数の屈曲部によって形成された第1稜線部46a及び第2稜線部46bを備えることにより(図4(b)参照)、簡単な構成で前記辺部42を高剛性・高強度とすることができる。なお、稜線部は、少なくとも、1つの稜線部があればよい。
【0055】
さらに、本実施形態では、リヤサイドエクステンション18における辺部42とリヤピラー30とを、延出部48を介して結合することにより(図2参照)、リヤピラー30とリヤサイドエクステンション18との相互間で荷重を伝達することが可能となる。この結果、本実施形態では、リヤピラー30に付与される車体前後方向への倒れ作用を抑制し、リヤピラー30、さらにはリヤピラー30の下方に位置するリヤフロアパネル14及びリヤフレーム12の後端部に付与される上下方向の振動を抑制することができる。
【0056】
さらにまた、本実施形態では、リヤサイドエクステンション18における延出部48が、リヤピラー30のフランジ部30aに結合されている(図2参照)。この場合、延出部48とリヤピラー30との結合部位には、リヤサイドエクステンション18の面部44に沿った方向の荷重が入力されるが、面部44に沿ったフランジ部30aと延出部48とを結合することにより、前記荷重の入力に対してせん断方向で荷重を受けることができ、結合強度を向上させることができる。
【0057】
またさらに、本実施形態では、第1辺50aと第2辺50bとによって延出部48が略三角形の面状とされることにより(図4(a)参照)、リヤピラー30から付与される荷重を辺部42(面部44)の長手方向に渡って末広がり状に拡散して伝達することができ、荷重伝達効率を向上させることができる。
【0058】
またさらに、本実施形態では、リヤサイドエクステンション18における延出部48の第2辺50bが、延出部48の他の部位と比較して剛性又は強度が高く設定されることにより、リヤピラー30から付与される荷重の拡散効果を促進させ、荷重伝達効率をより一層向上させることができる。
【0059】
またさらに、本実施形態では、リヤサイドエクステンション18における延出部48の第2辺50bが複数の屈曲部によって形成された稜線部53を有することにより(図4(c)参照)、延出部48の第1辺50a及び第2辺50bと辺部42とを、簡単な構成で高剛性又は高強度とすることができる。
【0060】
またさらに、本実施形態では、リヤサイドエクステンション18を別体とすることがなく、リヤホイルハウスアウタ16bと一体成形することにより(図3参照)、部品点数を削減して組付工数を減少させると共に、リヤサイドエクステンション18とリヤホイルハウスアウタ16bとの結合部を削減して荷重伝達効率を向上させることができる。
【0061】
仮に、リヤサイドエクステンション18をリヤホイルハウスインナ16aと一体成形した場合、サイドパネル24の結合相手がホイルアーチ部位ではリヤホイルハウスアウタ16bとなり、第1結合部26に及ぶ部分ではリヤホイルハウスインナ16aと、それぞれ異なる部材と結合されるため、サイドパネル24の結合精度が低下し、外観見栄えに影響するおそれがある。これに対して、本実施形態では、リヤサイドエクステンション18とリヤホイルハウスアウタ16bとを一体成形することで前記の点を解消することができる。
【0062】
またさらに、本実施形態では、リヤサイドエクステンション18における第1結合部26の後端部26aが、リヤフロアパネル14とリヤパネル28とが結合する部位の近傍まで延在するように設けられる(図6参照)。この結果、本実施形態では、第1結合部26の後端部26aから第2結合部40に向かって辺部42が延びているため、リヤフロアパネル14又はリヤパネル28とリヤホイルハウス16との間で相互に荷重の伝達が効率的に遂行され、車体後部の剛性を向上させることができる。
【0063】
またさらに、本実施形態では、図6(b)に示されるように、リヤフロアパネル14の後端部14bとリヤインナパネル28aとの結合部位60を介在させ、リヤサイドエクステンション18の第1結合部26の後端部26aとリヤアウタパネル28bとの結合部位62を設けることにより、簡単な構成で第1結合部26を高剛性・高強度とすることができる。
【0064】
またさらに、本実施形態では、従来技術に係る特許文献1の構造と比較して、リヤフロアパネル14(後端部14b)とリヤサイドエクステンション18の結合部Aと、リヤサイドエクステンション18とサイドパネル24との結合部Cとが、図5に示されるように車体上下方向において同一位置にあるため結合強度を向上させることができる。この場合、本実施形態では、従来技術のように前記結合部Aと前記結合部Cとの間に面が存在することがなく、リヤフロアパネル14とリヤサイドエクステンション18とサイドパネル24とからなる3つの部材が一体的に重畳して結合されているため(図5(b)参照)、車体後側部の剛性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 車体
14 リヤフロアパネル
14a 外側端部
16 リヤホイルハウス
16a リヤホイルハウスインナ
16b リヤホイルハウスアウタ
18 リヤサイドエクステンション
24 サイドパネル
24a サイドパネルフランジ
28 リヤパネル
28a リヤインナパネル
28b リヤアウタパネル
26 第1結合部
30 リヤピラー
30a フランジ部
40 第2結合部
42 辺部
44 面部
46a、46b、53 稜線部
48 延出部
50a 第1辺
50b 第2辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部のリヤフロアパネルと、
前記リヤフロアパネルの車幅方向の両側部に配置されるリヤホイルハウスと、
前記リヤフロアパネルの車幅方向の両側部で、且つ、前記リヤホイルハウスの後方に配置されるリヤサイドエクステンションとを有する自動車の車体後部構造であって、
前記リヤサイドエクステンションは、
前記リヤフロアパネルの車幅方向の外側端部に結合される第1結合部と、
前記リヤホイルハウスの後端に結合される第2結合部と、
前記第1結合部と前記第2結合部との間に掛け渡される辺部と、
前記第1結合部と前記第2結合部と前記辺部とによって囲繞される面部と、
を備え、
前記辺部の剛性又は強度は、少なくとも、前記面部の剛性又は強度よりも高く設定されることを特徴とする自動車の車体後部構造。
【請求項2】
前記辺部は、複数の屈曲部によって形成された稜線部を有する断面形状からなることを特徴とする請求項1記載の自動車の車体後部構造。
【請求項3】
前記リヤフロアパネルの後端部にはリヤパネルが配置され、
前記リヤパネルの車幅方向の両側部から上方に延在するリヤピラーが設けられ、
前記リヤサイドエクステンションは、前記辺部の長手方向の途中から車体後方側に向かって延出し、前記リヤパネルと前記リヤピラーのうち、少なくとも、いずれか一方に結合される延出部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の自動車の車体後部構造。
【請求項4】
前記リヤパネルと前記リヤピラーのうち、少なくとも、いずれか一方には、車体前方側に向かって前記面部に沿って突出するフランジ部が設けられ、前記延出部は、前記フランジ部に結合されることを特徴とする請求項3記載の自動車の車体後部構造。
【請求項5】
前記延出部は、前記第1結合部の後端部近傍から上方側に向けて立ち上がる第1辺と、前記辺部の長手方向中央部から車体後方且つ上方側に向けて立ち上がる第2辺とによって略三角形の面状とされることを特徴とする請求項3又は4記載の自動車の車体後部構造。
【請求項6】
前記第1辺と前記第2辺のうち、少なくとも、いずれか一方は、前記延出部の他の部位よりも剛性又は強度が高く設定されることを特徴とする請求項5記載の自動車の車体後部構造。
【請求項7】
前記辺部と前記第1辺と前記第2辺のうち、少なくともいずれか1つは、複数の屈曲部によって形成された稜線部を有する断面形状からなることを特徴とする請求項5又は6記載の自動車の車体後部構造。
【請求項8】
前記リヤホイルハウスは、室内側のリヤホイルハウスインナと、室外側のリヤホイルハウスアウタとからなり、
前記リヤサイドエクステンションは、前記リヤホイルハウスアウタと一体成形されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の自動車の車体後部構造。
【請求項9】
前記リヤフロアパネルの後端部から上方に向けて立ち上がるように配置されたリヤパネルが設けられ、
前記第1結合部の後端部は、前記リヤパネルの近傍位置まで延在し、
前記辺部は、前記第1結合部の後端部から前記第2結合部に向けて延在することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の自動車の車体後部構造。
【請求項10】
前記リヤパネルは、車室内側のリヤインナパネルと、車室外側のリヤアウタパネルとからなり、
前記リヤフロアパネルは、前記リヤインナパネルに結合され、
前記リヤサイドエクステンションの後端部は、前記リヤアウタパネルに結合されていることを特徴とする請求項9記載の自動車の車体後部構造。
【請求項11】
前記リヤホイルハウスアウタの室外側を覆うサイドパネルが設けられ、
前記サイドパネルは、前記サイドパネルの下端に、前記第1結合部及び前記リヤフロアパネルの車幅方向の外側端部と車幅方向に沿って重畳されるサイドパネルフランジを有し、
前記第1結合部と前記リヤフロアパネルの外側端部と前記サイドパネルフランジの3つが重畳されて結合されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の自動車の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−183919(P2012−183919A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48372(P2011−48372)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】