説明

自動車両内部でのステレオ音響信号の音響処理方法、および前記方法を実施した自動車両

本発明は、自動車両内部でのステレオ音響信号の音響処理方法に関する。第1の実施形態(「運転者」モード)では、ステレオ音響源の中心が、「運転者」受聴位置用にダッシュボードの中央に配置される。この理由で、遅延(t1〜t4)が、スピーカによって伝達されるチャネルの周波数帯に導入され、したがって、運転者(62)が、自動車の受聴位置が設定されている円(C)の中心にいると感じられることになる。第2の実施形態(「全搭乗者」モード)では、2つの前方チャネル信号の位相が等化され、音源の中心(67、68)が、車両の運転者(62)および前方搭乗者(70)に配置されていると感じられることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両内で伝達されるステレオ音響信号の音響処理方法、および本方法を実施した自動車両に関する。詳細には、本発明の目的は、車両内部でのオーディオ・トラックの受聴品質を向上させることである。このオーディオ・トラックには、例えば、電話通話および/または音楽が含まれ得る。
【背景技術】
【0002】
本発明は、2つの入力チャネルと、4つ、5つ、または6つの出力チャネルとを有するオーディオ・システムを用いて実施される音響処理方法に適用すると、特に有利である。
【0003】
自動車内では、ステレオ音響源(カー・ラジオなど)によって生成される左音響信号(第1のチャネル)および右音響信号(第2のチャネル)から構成されたステレオ信号が、4つのチャネルを介して伝達される。
【0004】
2つのチャネル(前方左右のチャネル)が車両の前方トランスデューサによって伝達され、他の2つのチャネル(後方左右のチャネル)が後方トランスデューサによって伝達される。ダッシュボードの中央に配置されたトランスデューサによって、第5のチャネルを生成し、伝達することもできる。
【0005】
本願では、トランスデューサとは、電気音響信号をアコースティック音響信号に変換するシステムを意味する。
【0006】
一般に、所与のチャネルに接続されたトランスデューサは、2台のスピーカを含み、これらのスピーカは、そのチャネルによって搬送される電気音響信号の高周波部分と、低周波部分とをそれぞれ伝達する。
【0007】
したがって、「ツィータ」と呼ばれる第1のスピーカが、チャネル信号の高周波部分を伝達し、「ウーファ」と呼ばれる第2のスピーカが、チャネル信号の低周波部分を伝達する。
【0008】
既知の様式では、音が車両の底部から到来すると感じられるように、あるトランスデューサが配置されることがあるが、この配置では、搭乗者にはあまり快適な受聴体験は得られない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、各搭乗者の耳の水平面、各搭乗者の前方、かつ/または車両のダッシュボードの中央に音像を配置することによって、この課題を解決することを可能とする。
【0010】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1人の搭乗者の頭部位置で受け取った左右の信号間の逆位相作用を最小限に抑えることである。
【0011】
「運転者」モードと呼ばれる本発明の第1の実施形態では、ステレオ音響源の中心が、「運転者」受聴位置用にダッシュボードの中央に配置される。したがって、すべてのスピーカが、運転者から最も遠いスピーカと同じ距離にあると感じられるように、各スピーカの周波数帯に遅延が導入される。
【0012】
「全搭乗者」モードと呼ばれる第2の実施形態では、各搭乗者の前方に音源の中心があると感じられるように、受聴者が結果として知覚する前方チャネル信号の位相と、後方チャネル信号の位相とが等化される。さらに、このモードでは、「ツィータ/ウーファ」対を時間整合させるように、前方チャネル信号に遅延が導入される。
【0013】
したがって、本発明は、自動車両内部での、左電気音響信号および右電気音響信号から構成されたステレオ音響信号の音響処理方法であって、
− これらの電気音響信号の位相が、一搭乗者のほぼ頭部位置で受け取ったこれらの左右の信号の周波数帯における逆位相作用を最小限に抑えるように等化され、
− 位相等化された左電気音響信号と、位相等化された右電気音響信号とがそれぞれ、車両の前方左部分に配置された前方左トランスデューサと、車両の前方右部分に配置された前方右トランスデューサとによって伝達される方法に関する。
【0014】
一実施形態によれば、逆位相を最小限に抑えるために、フィルタが、左電気音響信号および/または右電気音響信号に適用され、したがって、搭乗者の頭部位置で受け取った左右の電気音響信号間の位相差曲線が、左右の電気音響信号が逆位相となる点をバイパスすることになる。
【0015】
一実施形態によれば、逆位相作用を最小限に抑えるために、全通過フィルタが、左または右の信号に適用され、これらの全通過フィルタはそれぞれ、受け取った左右の電気音響信号が逆位相となる周波数帯の中央周波数に実質的に等しいカットオフ周波数を有する。
【0016】
一実施形態によれば、逆位相作用を最小限に抑えるために、全通過フィルタ対が適用され、このフィルタ対の一方が左電気音響信号に適用され、フィルタ対の他方が右電気音響信号に適用され、このフィルタ対は、受け取った左右の電気音響信号が逆位相となる周波数帯の中央周波数を取り囲むカットオフ周波数を有する。
【0017】
一実施形態によれば、全通過フィルタは、無限インパルス応答(IIR)型フィルタである。
【0018】
一実施形態によれば、フィルタは、有限インパルス応答(FIR)型フィルタであり、これらのフィルタはそれぞれ位相応答を有し、それぞれが受け取った信号が逆位相となる周波数帯において−180度の値を有する逆ゲート曲線を有する。
【0019】
一実施形態によれば、受け取った電気音響信号は、これらの信号間の位相差が、360度を法(modulo)として180度プラスまたはマイナス20度に等しい場合、逆位相となると考えられる。
【0020】
一実施形態によれば、逆位相作用は、20hz〜2kHzの間の周波数帯で最小限に抑えられる。
【0021】
一実施形態によれば、左右の電気音響信号の周波数スペクトルは、スペクトル補正モジュールによって、車両前方での音響効果が補償されるように等化される。
【0022】
一実施形態によれば、各電気音響信号の周波数帯がフィルタリングされ、これらの周波数帯に遅延が導入される。こうした遅延は、これらの周波数帯を伝達する前方左トランスデューサのスピーカと、前方右トランスデューサのスピーカとを時間整合させるように選択される。
【0023】
一実施形態によれば、各電気音響信号の低周波部分と、高周波部分とがフィルタリングされ、遅延が、左電気音響信号の低周波部分と、高周波部分とをそれぞれ伝達するスピーカを時間整合させるように選択され、遅延が、右電気音響信号の低周波部分と、高周波部分とをそれぞれ伝達するスピーカを時間整合させるように選択される。
【0024】
一実施形態によれば、車両の幾何形状のため、高周波スピーカに印加される左右の遅延は同一であり、低周波スピーカに印加される左右の遅延も同一である。しかし、変形形態では、それらの遅延は異なってもよい。
【0025】
一実施形態によれば、スピーカの周波数帯は、それらのスピーカが伝達するフィルタリング済み信号の周波数帯に対応する。
【0026】
一実施形態によれば、左電気音響信号の周波数帯は、再構築左電気音響信号に組み合わされ、この再構築左電気音響信号は、前方左トランスデューサによって伝達される。一方、右電気音響信号の周波数帯は、再構築右電気音響信号に組み合わされ、この再構築右電気音響信号は、前方右トランスデューサによって伝達される。
【0027】
一実施形態によれば、電気音響信号の周波数帯は、ゲイン・セルによって音量調節される。
【0028】
一実施形態によれば、中央電気音響信号が、ステレオ音響源から生じる左右の電気音響信号の同相スペクトル成分から生成され、この中央電気音響信号は、遅延の導入、ならびにレベルおよび音量の調節後、ダッシュボードの中央に配置されたトランスデューサによって伝達される。
【0029】
一実施形態によれば、左電気音響信号および右電気音響信号は、元の左電気音響信号のスペクトル成分、および元の右電気音響信号のスペクトル成分から、中央電気音響信号のスペクトル成分をそれぞれ減ずることによって得られる。
【0030】
一実施形態によれば、後方左右の電気音響信号が、左右の電気音響信号の実質的に位相が外れた成分から生成され、これらの信号は、遅延の導入、ならびにレベルおよび音量の調節後、後方左トランスデューサと、後方右トランスデューサとによってそれぞれ伝達される。
【0031】
本発明はまた、自動車両内部での、左電気音響信号および右電気音響信号から構成されたステレオ音響信号の音響処理方法であって、各電気音響信号の周波数帯がフィルタリングされ、これらの周波数帯に遅延が導入される方法に関する。
【0032】
遅延は、これらの周波数帯を伝達するトランスデューサが、事実上円上に配設されるように選択され、この円は、その中心として運転者が位置する位置を有し、かつ運転者から、運転者から最も遠く離れたトランスデューサまでの距離に等しい半径を有する。
【0033】
一実施形態によれば、各電気音響信号の低周波部分と、高周波部分とがフィルタリングされ、トランスデューサがそれぞれ、低周波スピーカおよび高周波スピーカを備え、遅延が、左電気音響信号の低周波部分と、高周波部分とをそれぞれ伝達するスピーカを時間整合させるように選択される。
【0034】
遅延は、右電気音響信号の低周波部分と、高周波部分とをそれぞれ伝達するスピーカを時間整合させるように選択される。高周波スピーカに印加される左右の遅延は同一であり、また、低周波スピーカに印加される左右の遅延も同一である。
【0035】
また、本発明は、自動車内部でステレオ信号を生成する音源を備える自動車両であって、このステレオ信号が、左電気音響信号および右電気音響信号から構成され、これらの左右の電気音響信号が、ただ1台のスピーカだけを備える前方左トランスデューサと、ただ1台のスピーカだけを備える前方右トランスデューサとによってそれぞれ伝達されるように、本発明の方法に従って処理される自動車両に関する。
【0036】
一実施形態によれば、前方左右のスピーカは、広帯域スピーカである。
【0037】
本発明は、以下の説明を読み、添付の図を検討することによってよりよく理解されよう。これらの図は、例として挙げるものにすぎず、いかなる形でも本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による「運転者」モードを実施したオーディオ・システムの機能を示す概略図である。
【図2】本発明による「全搭乗者」モードを実施したオーディオ・システムの機能を示す概略図である。
【図3】2つの入力チャネルと、6つの出力チャネルとを備えた、本発明によるオーディオ・システムの機能を示す概略図である。
【図4】本発明による方法を「運転者」モードで実施した場合と、本発明による方法を「全搭乗者」モードで実施した場合とをそれぞれ示す、音像の中心の仮想位置を示す概略図である。
【図5】本発明による方法を「運転者」モードで実施した場合と、本発明による方法を「全搭乗者」モードで実施した場合とをそれぞれ示す、音像の中心の仮想位置を示す概略図である。
【図6】位相補正前および補正後の、一搭乗者の頭部位置で受け取った前方左右の信号間の位相差を示すグラフである。
【図7】一搭乗者の頭部位置で受け取った音響信号間の逆位相を最小限に抑えるために使用する「全通過」フィルタの位相応答を示すグラフである。
【図8a−8b】2つの「全通過」フィルタ、およびそれらの組合せの位相応答、ならびに有限インパルス応答フィルタの位相応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
各図において、同じ要素には、同じ参照符号が付与されている。
【0040】
図1は、「運転者」モードを実施したオーディオ・システムの機能を示す概略図を示し、このモードでは、音像の中心を車両の運転席の受聴位置用に配置することが可能である。
【0041】
本発明によるオーディオ・システムは、2つの入力チャネル2および3と、4つの出力チャネル20、25、34”、および35”とを有し、これらの出力チャネルは、トランスデューサ21、26、39、41によってそれぞれ伝達される。
【0042】
より正確には、CDプレーヤなどの音源1によって、左電気音響信号2および右電気音響信号3(2つの入力チャネル)から構成されたステレオ信号が生成される。
【0043】
これらの信号2および3は、音響レベル・スペクトルを補正するモジュール4.1に入力として印加される。このモジュール4.1は、信号2および3のスペクトルを等化する。
【0044】
この目的で、モジュール4.1は、電気音響信号2および3の知覚されるスペクトル応答を平滑化するフィルタを備え、したがって、所与のパワーで発せられる周波数がすべて、運転者には同じレベルの振幅で知覚される傾向になる。
【0045】
一実施形態では、モジュール4.1、例えば「ピーク/ノッチ」型フィルタのフィルタ係数を計算するために、既知の信号が、前方左右のトランスデューサ21、26を介して伝達され、その信号は、マイクによって運転者の頭部位置で録音される。ここから、「車両伝達関数」と呼ばれる伝達関数が演繹され、この「車両伝達関数」の逆伝達関数を用いてフィルタ係数をパラメータ化し、したがって、録音信号のスペクトル欠陥が、初期の信号のスペクトルを再構築する形で補償されることになる。
【0046】
したがって、このモジュール4.1は、トランスデューサ21、26によって車両の前方に伝達され、(音響信号が車両内に伝達された後に)運転者が知覚する音響信号が、元の音響信号のスペクトルにできるだけ近いスペクトルを有するように、車両の音響効果を補償するスペクトル形状を生成する。
【0047】
等化された左電気音響信号5、および等化された右電気音響信号6が、モジュール4.1からの出力として得られる。これらの信号5および6は、信号5および6を空間的に補正するブロック7に入力として印加される。
【0048】
より正確には、これらの信号5および6は、高域通過型フィルタ9、および低域通過型フィルタ10に入力としてそれぞれ印加される。左高周波電気音響信号5a、および右高周波電気音響信号6aが、フィルタ9からの出力として得られる。左低周波電気音響信号5b、および右低周波電気音響信号6bが、フィルタ10からの出力として得られる。
【0049】
フィルタ9および10のカットオフ周波数は、フィルタリング済み信号を伝達するために使用されるスピーカのカットオフ周波数に対応する。一実施形態では、これらのカットオフ周波数は、実質的に同一である。言い換えれば、フィルタリング済み信号の周波数帯は、これらのフィルタリング済み信号を伝達するスピーカの周波数帯に対応する。
【0050】
この場合、2台のスピーカ22.1、22.2、および27.1、27.2が、高周波帯と、低周波帯とをそれぞれ伝達するように各チャネルに接続される。チャネルにつき、高、中、および低周波音響信号をそれぞれ伝達する3台のスピーカを備える車両に関する変形形態では、左右の電気音響信号はそれぞれ、3つのフィルタによってフィルタリングされ、これらのフィルタはそれぞれ、3台のスピーカの周波数帯(高、中、または低)の1つに対応する。
【0051】
次いで、信号5a、5b、および6a、6bはそれぞれ、遅延セル13.1〜13.4に入力として印加される。導入される遅延t1〜t4は、自動車内のスピーカの配置に応じて、特に、スピーカと運転者との距離に応じて設定される。
【0052】
より正確には、遅延t1〜t4は、前方スピーカがすべて、運転者62の頭部から最も遠いトランスデューサ41までの距離RHPmaxと同じ距離で配置されている(図4参照)と感じられるように、信号5a、5b、および6a、6bに導入される。
【0053】
したがって、最も遠いスピーカによって伝達すべき周波数帯は遅延されず、運転者の頭部により近いスピーカによって伝達される周波数帯が、遅延によって遅延され、したがって、これらのより近いスピーカによって伝達される音は、運転者の頭部レベルで、最も遠いスピーカからの信号が知覚されるのと同時に知覚されたと感じられることになる。言い換えれば、すべてのスピーカによって伝達される音が、運転者の頭部位置で同時に知覚されるような形で、周波数帯が遅延される。
【0054】
したがって、図4に示すように、運転者62は、スピーカ22.1、22.2、27.1、27.2からの音像S1〜S4が配置された半径RHPmaxの円Cの中心に位置する。
【0055】
実際には、運転者から各スピーカまでの距離をまず測定し、すべてのスピーカが、最も遠いスピーカまでの距離RHPmaxに位置すると感じられるように、この測定値の関数として、最も遠いスピーカ以外のスピーカによって伝達される周波数帯に遅延を導入する。
【0056】
運転者モードでは、すべてのトランスデューサを運転者(少なくとも搭乗者の1人)から同じ距離だけ離して配置することによって、耳にあまり心地良くない逆位相作用を完全に打ち消す。
【0057】
セル13.1〜13.4からの出力として見受けられる遅延信号5a’、6a’、6b’、および6b’が、ゲイン・セル15.1〜15.4に入力として印加される。これらのセル15.1〜15.4は、高周波音響信号および低周波音響信号の音量を調節する。こうするために、遅延信号に、係数K1〜K4、例えば0〜1を乗じる。
【0058】
セル15.1からの出力として見受けられる処理済みの左高周波電気音響信号5a”、およびセル15.3からの出力として見受けられる処理済みの左低周波電気音響信号5b”が、加算器17.1に入力として印加される。
【0059】
次いで、この加算器17.1からの出力として、再構築左電気音響信号20が見受けられる。この信号20は、車両の前方左部分に配置された2台のスピーカ22.1および22.2を備えるトランスデューサ21によって伝達される前方左チャネル(第1の出力チャネル)に対応する。
【0060】
第1のスピーカ22.1(「ツィータ」)は、信号20の高周波部分を伝達し、第2のスピーカ22.2(「ウーファ」)は、信号20の低周波部分を伝達する。
【0061】
同様に、セル15.2からの出力として見受けられる処理済みの右高周波電気音響信号6a”、およびセル15.4からの出力として見受けられる処理済みの右低周波電気音響信号6b”が、加算器17.2に入力として印加される。
【0062】
次いで、この加算器17.2からの出力として、再構築左電気音響信号25が見受けられる。この信号25は、車両の前方右部分に配置された2台のスピーカ27.1および27.2を備えるトランスデューサ26によって伝達される前方右チャネル(第2の出力チャネル)に対応する。
【0063】
第1のスピーカ27.1(「ツィータ」)は、信号25の高周波部分を伝達し、第2のスピーカ27.2(「ウーファ」)は、信号25の低周波部分を伝達する。
【0064】
スピーカ22.1、22.2、および27.1、27.2によって伝達される信号20および25の高周波部分と、低周波部分とは、上記から分かるように、高周波フィルタ9と、低周波フィルタ10とによってフィルタリングされた周波数帯に対応する。
【0065】
変形形態では、高周波電気音響信号5a”および6a”はそれぞれ、高周波帯を有するただ1台のスピーカ31、32だけを備えるトランスデューサ29および30によって伝達される。一方、トランスデューサ21および26は、信号5b”および6b”を直接伝達する。したがって、チャネルにつき、2台のスピーカがあるのではなく、チャネルにつき1台のスピーカがある。この場合、加算器17.1および17.2は不要となる。
【0066】
さらに、信号2および3は、レベル・スペクトルを補正する第2のモジュール4.2に入力として印加される。車両の前方チャネル20、25用のモジュール4.1と同様に、このモジュール4.2も、車両の後方チャネル34”、35”の車両音響効果を補償する。等化された左右の電気音響信号34、35が、モジュール4.2からの出力として見受けられる。
【0067】
これらの信号34および35は、信号34および35の空間補正を行う第2のブロック7bisに入力として印加される。
【0068】
より正確には、これらの信号34および35(第3および第4の出力チャネル)は、遅延セル13.5および13.6の入力としてそれぞれ印加される。これらのセル13.5、13.6はそれぞれ、図4で示すように、すべてのトランスデューサが、事実上運転者から最も遠いスピーカまでの距離RHPmaxにあると感じられるように、信号34および35に遅延t5およびt6を導入する。
【0069】
遅延セルからの出力として見受けられる信号34’および35’が、ゲイン・セル15.5、15.6に入力として印加され、これらのゲイン・セルは、ゲインK5、K6を乗じることによって、信号34’、35’の音量を調節する。
【0070】
セル15.5および15.6からの出力として見受けられる処理済みの電気音響信号34”および35”が、後方トランスデューサ39および41に入力としてそれぞれ印加されて、伝達されることになる。
【0071】
トランスデューサ39および41はそれぞれ、信号34”、35”をそれぞれ伝達するスピーカ40.1および42.1を備える。
【0072】
変形形態では、後方トランスデューサ39、41は、数台のスピーカを備える。
【0073】
変形形態では、このシステムは、信号20、25を搬送する2つの前方チャネルしか有さず、信号34”、35”を搬送する後方チャネルがない。
【0074】
変形形態では、スペクトル補正モジュール4.1および4.2は使用せず、その場合、信号2および3は、ブロック7、およびセル13.5、13.6に入力として直接印加される。
【0075】
図2の「全搭乗者」実施形態では、信号2および3は、モジュール4.1および4.2に入力として印加される前に、位相等化モジュール45に入力として印加される。モジュール45からの出力として、位相等化された左右の電気音響信号2bisおよび3bisが得られる。次いで、これらの信号2bisおよび3bisは、ブロック4.1および7によって処理されてから、前方トランスデューサ21および26によって伝達され、また、ブロック4.2および7bisによって処理されてから、後方トランスデューサ39および41によって伝達される。
【0076】
この目的で、モジュール45は、搭乗者によって知覚される位相欠陥を補正するフィルタを備える。一実施形態では、モジュール45のフィルタ係数を計算するために、位相応答がゼロである既知の信号が、搭乗者、例えば運転者に対して非対称に配置された前方左右のトランスデューサ21、26によって伝達される。実際には、トランスデューサ21、26の一方から搭乗者の頭部までの距離は、トランスデューサ21、26の他方から搭乗者の頭部までの距離とは異なる。
【0077】
トランスデューサ21を介して左チャネルから発せられた信号が、マイクによって一搭乗者の頭部位置で録音され、ここから、受け取った左信号の、周波数の関数としての位相変動を示す、受け取った左チャネル信号の位相応答φLが演繹される。
【0078】
同様に、トランスデューサ26を介して右チャネルから発せられた信号が、マイクによって一搭乗者の頭部位置で録音され、ここから、受け取った右信号の、周波数の関数としての位相変動を示す、受け取った右チャネル信号の位相応答φRが演繹される。
【0079】
これらの位相応答φLおよびφRは、例えば、受け取った信号のフーリエ変換から計算される。
【0080】
次いで、マイクによって受け取った左右の信号間の位相差φL−φRが、得られた2つの位相応答間で減算φL−φRを実施することによって演繹される。図6に示すように、周波数の関数としてこの位相差を表す曲線C1は、線形形状を有する。
【0081】
次いで、この位相差で位相が外れている周波数帯A〜C、すなわち、受け取った左右の信号間の位相差が、180度プラスまたはマイナス20度に等しく、360度を法とする周波数帯が決定される。
【0082】
例えば「全通過」型フィルタである、ブロック45のフィルタ45.1および45.2の係数が、左電気音響信号2および右電気音響信号3にそれぞれ印加され、次いで、これらの周波数帯における逆位相作用を最小限に抑えるようにパラメータ化される。これらの全通過フィルタは、例えばIIR(無限インパルス応答)型フィルタである。
【0083】
左チャネルから受け取った信号と、右チャネルから受け取った信号との間の逆位相を最小限に抑えることによって、車両内の全搭乗者に、トランスデューサ21、26が搭乗者各自に対して対称的に配置されているという印象が得られ、このため、各自の受聴体験の質が向上する。
【0084】
図6に示す全通過フィルタG1の位相応答は、0からマイナス360度まで、位相がマイナス180度に等しい変曲点(カットオフ周波数に対応する)を通過して進む。
【0085】
電気信号2、3の一方に、カットオフ周波数fcが、問題となる位相外れの周波数帯の中央周波数f1、f2に等しい全通過フィルタを適用することによって、受け取った信号が逆位相となる点で180度の位相遅延が導入される。こうすることによって、受け取った左右の信号が逆位相となる周波数帯が排除される。
【0086】
したがって、曲線C2は、カットオフ周波数f1の全通過フィルタが左または右の電気音響信号の一方に適用された場合の位相差を表し、曲線C3は、カットオフ周波数がそれぞれf1およびf2の全通過フィルタが、電気信号の一方に適用された場合の位相差を表す。曲線C1〜C3は、互いに360度間隔が空いていることに留意されたい。
【0087】
変形形態では、左電気音響信号2および右電気音響信号3の位相にそれぞれ適用される、2つの全通過フィルタG2、G3の組合せが使用される。カットオフ周波数fc1、fc2は、図8aに示すように、位相外れ周波数帯の中央周波数f1、f2を取り囲んでいる。
【0088】
これらのフィルタG2およびG3を組み合わせることによって、図8bに示すフィルタG4を得ることが可能となり、このフィルタG4は、ゼロからマイナス180度の最低値まで次第に下降し、次いでゼロまで上昇して戻る(逆ガウス曲線の形状)位相応答を有し、したがって、図8aの曲線G2とG3との間の位相差Dの値を辿っている。
【0089】
これらのフィルタ対を適用することによって、位相差曲線G4(点線で示す)が、受け取った信号が逆位相となる周波数値f1、f2から局所的に外れ、その後曲線C1に戻ることが可能となる。言い換えれば、これらの全通過フィルタ対を使用することによって、逆位相となる周波数帯A〜Cを局所的に抑制することが可能となる。
【0090】
実際には、位相外れ周波数帯は、[20Hz、2000Hz]の範囲で補正される。
【0091】
変形形態では、所望の位相応答を設計することが可能なFIRすなわち有限インパルス応答型フィルタG5が使用され、その位相応答は、全通過フィルタを組み合わせた曲線を有することができる。好ましくは、これらのフィルタはそれぞれ、受け取った左右の信号が逆位相となる周波数帯において−180度の値を有する逆ゲート曲線を有する位相応答を有する。
【0092】
実際には、かかるFIRフィルタを開発するには、周波数領域において所望される周波数応答をまずプロットし、時間領域におけるフィルタのインパルス応答を得るために逆フーリエ変換を実施する。
【0093】
一搭乗者、好ましくは運転者の頭部位置で位相補正オペレーションを実施するだけで、この補正に伴う効果が全搭乗者に知覚されるのに十分である。
【0094】
本質的に、車両は、その左右の部分間で対称であり、したがって、前方搭乗者によって知覚される音響効果は、運転者によって知覚される音響効果と同じとなる。さらに、車両はまた、その前後の部分間でも対称であり、したがって、後方に伝達される左右の信号2、3の位相補正に伴う音響効果は、後方の全搭乗者にも等しく知覚される。
【0095】
しかし、本発明による方法の設定を調節するために、後方で位相補正オペレーションを繰り返すことが可能である。
【0096】
したがって、この位相等化は、信号20、34”、35”、および25が伝達されると、搭乗者は、図5に示すように、音像67、68、69、71の中心がその搭乗者の前方にあると知覚するような形のものである。
【0097】
「全搭乗者」実施形態では、遅延t1〜t14が、「ツィータ/ウーファ」対22.1および22.2、ならびに対27.1および27.2を時間整合させるように導入される。時間整合とは、最も近いスピーカから発せられた音波が、信号が遅延されていないスピーカによって発せられた音波と同時に知覚されるように、最も近いスピーカからの信号に遅延を導入することを意味する。
【0098】
したがって、遅延t1およびt2、次いでt3およびt4は、対で同一であり、すなわち、ツィータ22.1、27.1に印加される左右の遅延は同一であり(t1=t2)、ウーファ22.2、27.2に印加される左右の遅延も同一である(t3=t4)。
【0099】
図3は、6つの入力電気音響信号51〜55が、2つの入力電気音響信号2および3から生成される変形形態を示す。これらの信号は、WO2006/125931号として公開されている特許に記載された音響処理方法を実施することによって生成される。
【0100】
より正確には、左電気音響信号2および右電気音響信号3の実質的に同相のスペクトル成分だけを含む中央電気音響信号55が生成される。この信号55はまず、スペクトル補正モジュール4.3によって補正される。
【0101】
次に、得られた信号が、セル13.7の遅延t7によって遅延され、セル15.7によって音量調節され、次いでトランスデューサ61によって伝達されることになる。このトランスデューサ61は、車両モデルに応じて、1台または2台のスピーカ63を含み、好ましくはダッシュボードの中央に配置される。
【0102】
さらに、前方左電気音響信号51および前方右電気音響信号52が、左電気音響信号のスペクトル成分、および右電気音響信号3のスペクトル成分からそれぞれ、信号55のスペクトル成分を減ずることによって生成される。
【0103】
次いで、信号51、52、53、および54は、図1および2で説明した「運転者」モードまたは「全搭乗者」モードで処理される。
【0104】
別の電気音響信号56を、左右の電気音響信号2および3の低周波をフィルタリングすることから生成することができる。他の信号と同様に、この信号56も、遅延セル13.8によって遅延させ、セル15.8によって音量調節してから、低周波スピーカ65を備えるトランスデューサ64によって伝達することができる。
【0105】
変形形態では、6つの入力信号(6つの入力チャネル)を備えたDVDプレーヤなどの音源が既に利用可能である。
【0106】
変形形態では、利用できる入力チャネルが6つあるが、出力チャネルが2つまたは4つしかない場合、出力チャネルは、利用可能な6つの入力チャネルの組合せに対応する。
【0107】
「全搭乗者」および「運転者」モードでは、1台のスピーカを備えたトランスデューサ21、26および39、42を用いた音響演出は、処理は行わないがトランスデューサにつき数台のスピーカを備えた音響演出に少なくとも類似することに留意されたい。
【0108】
本発明は、トランスデューサにつきスピーカがただ1台しかない初心者向けの車両に使用すると特に有利である。その場合、トランスデューサ21または26の単一スピーカは、好ましくは広帯域スピーカである。
【符号の説明】
【0109】
1 音源;
2 左電気音響信号(入力チャネル);
3 右電気音響信号(入力チャネル);
5 等化された左電気音響信号; 6 等化された右電気音響信号;
7 信号5および6を空間的に補正するブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両内部での、左電気音響信号(2)および右電気音響信号(3)から構成されたステレオ音響信号(2、3)の音響処理方法であって、
左電気音響信号(2)および右電気音響信号(3)が、前方左右のトランスデューサ(21、26)によって伝達され、
前記左トランスデューサによって発せられた前記信号が、マイクによって一搭乗者の頭部位置で録音され、ここから、前記受け取った左信号の、周波数の関数としての位相変動を示す、前記受け取った左チャネル信号の位相応答(φL)が演繹され、
前記右トランスデューサによって発せられた前記信号が、のマイクによって一搭乗者の頭部位置で録音され、ここから、前記受け取った右信号の、周波数の関数としての位相変動を示す、前記受け取った右チャネル信号の位相応答(φR)が演繹され、
次いで、前記マイクによって受け取った前記左右の信号間の位相差(φL−φR)が、前記得られた2つの位相応答間で減算(φL−φR)を行うことによって演繹され、
前記搭乗者の頭部位置で、前記左チャネルから受け取った信号と、右チャネルから受け取った信号との間の逆位相を最小限に抑えるように、前記左電気音響信号(2)および前記右電気音響信号(3)の位相が改変されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記左チャネルから受け取った信号と、前記右チャネルから受け取った信号との間の前記逆位相作用が、前記車両内の全搭乗者の頭部位置で最小限に抑えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記逆位相を最小限に抑えるために、フィルタが、前記左電気音響信号(2)および/または前記右電気音響信号(3)に適用され、したがって、前記搭乗者の頭部位置で受け取った前記左右の電気音響信号(2、3)間の位相差曲線(φL−φR)が、前記左右の電気音響信号が逆位相となる点をバイパスすることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記逆位相作用を最小限に抑えるために、全通過フィルタが、前記左または右の信号(2、3)に適用され、前記全通過フィルタがそれぞれ、前記受け取った左(2)および右(3)電気音響信号が逆位相となる周波数帯(A〜C)の中央周波数(f1、f2)に実質的に等しいカットオフ周波数(fc)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記逆位相作用を最小限に抑えるために、全通過フィルタ対が適用され、前記フィルタ対の一方が前記左電気音響信号に適用され、前記フィルタ対の他方が前記右電気音響信号に適用され、前記フィルタ対が、前記受け取った左(2)および右(3)電気音響信号が逆位相となる周波数帯(A〜C)の中央周波数(f1)を取り囲むカットオフ周波数(fc1、fc2)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記全通過フィルタが、無限インパルス応答(IIR)型フィルタであることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルタが、有限インパルス応答(FIR)型フィルタであり、前記フィルタがそれぞれ位相応答を有し、それぞれが前記受け取った信号が逆位相となる周波数帯において−180度の値を有する逆ゲート曲線を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記受け取った電気音響信号が、前記信号間の前記位相差が、360度を法として180度プラスまたはマイナス20度に等しい場合、逆位相となると考えられることを特徴とする、請求項3から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記逆位相作用が、20hz〜2kHzの間の周波数帯で最小限に抑えられることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記左右の電気音響信号(2、3)の周波数スペクトルが、スペクトル補正モジュール(4.1)によって、前記車両前方での音響効果が補償されるように等化される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
各電気音響信号(2bis、3bis)の周波数帯がフィルタリングされ、
前記周波数帯に遅延(t1〜t4)が導入され、
前記遅延(t1〜t4)が、前記周波数帯を伝達する前記前方左トランスデューサのスピーカと、前記前方右トランスデューサのスピーカとを時間整合させるように選択される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
各電気音響信号(2bis、3bis)の低周波部分と、高周波部分とがフィルタリングされ、
前記トランスデューサ(21、26)がそれぞれ、低周波スピーカ(22.2、27.2)、および高周波スピーカ(22.1、27.1)を備え、
前記遅延(t1、t3)が、前記左電気音響信号(20)の前記低周波部分(5b)と、高周波部分(5a)とをそれぞれ伝達する前記スピーカ(22.1、22.2)を時間整合させるように選択され、
前記遅延(t2、t4)が、前記右電気音響信号(25)の前記低周波部分(6b)と、高周波部分(6a)とをそれぞれ伝達する前記スピーカ(27.1、27.2)を時間整合させるように選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記高周波スピーカ(22.1、27.1)に印加される前記左右の遅延(t1、t2)が同一であり、
前記低周波スピーカ(22.2、27.2)に印加される前記左右の遅延(t3、t4)が同一である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スピーカ(22.1、22.2、27.1、27.2)の周波数帯が、前記スピーカが伝達するフィルタリング済み信号の周波数帯に対応する、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記左電気音響信号(5)の前記周波数帯が、再構築左電気音響信号(20)に組み合わされ、前記再構築左電気音響信号(20)が、前記前方左トランスデューサ(21)によって伝達され、
前記右電気音響信号(6)の前記周波数帯が、再構築右電気音響信号(25)に組み合わされ、前記再構築右電気音響信号が、前記前方右トランスデューサ(26)によって伝達される、請求項11から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記電気音響信号(5、6)の前記周波数帯が、ゲイン・セル(15.1〜15.4)によって音量調節される、請求項11から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
中央電気音響信号(55)が、ステレオ音響源(1)から生じる左右の電気音響信号(2、3)の同相スペクトル成分から生成され、
前記中央電気音響信号(55)が、遅延(t7)の導入、ならびにレベルおよび音量の調節後、ダッシュボードの中央に配置されたトランスデューサ(61)によって伝達される、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記左電気音響信号(51)および前記右電気音響信号(52)が、元の左電気音響信号(2)のスペクトル成分、および元の右電気音響信号(3)のスペクトル成分から、前記中央電気音響信号(55)のスペクトル成分をそれぞれ減ずることによって得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
後方左右の電気音響信号(53、54)が、前記左右の電気音響信号(2、3)の実質的に位相が外れた成分から生成され、
前記信号(53、54)が、遅延(t5、t6)の導入、ならびにレベルおよび音量の調節後、後方左トランスデューサ(39)と、後方右トランスデューサ(41)とによってそれぞれ伝達される、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
各電気音響信号(2bis、3bis)の周波数帯がフィルタリングされ、
前記周波数帯に遅延(t1〜t4)が導入され、
前記遅延(t1、t4)が、前記周波数帯を伝達する前記トランスデューサが、事実上円(C)上に配設されるように選択され、前記円(C)が、その中心として運転者が位置する位置を有し、かつ前記運転者から、前記運転者から最も遠く離れた前記トランスデューサまでの距離に等しい半径(RHPmax)を有する、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
各電気音響信号(2bis、3bis)の低周波部分と、高周波部分とがフィルタリングされ、
前記トランスデューサ(21、26)がそれぞれ、前方ドアに配置された低周波スピーカ(22.2、27.2)と、前記車両の前記ダッシュボードに配置された高周波スピーカ(22.1、27.1)とを備え、
前記遅延(t1、t3)が、前記左電気音響信号(20)の前記低周波部分(5b)と、高周波部分(5a)とをそれぞれ伝達する前記スピーカ(22.1、22.2)を時間整合させるように選択され、
前記遅延(t2、t4)が、前記右電気音響信号(25)の前記低周波部分(6b)と、高周波部分(6a)とをそれぞれ伝達する前記スピーカ(27.1、27.2)を時間整合させるように選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記高周波スピーカ(22.1、27.1)に印加される前記左右の遅延(t1、t2)が同一であり、
前記低周波スピーカ(22.2、27.2)に印加される前記左右の遅延(t3、t4)が同一である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
自動車内部でステレオ信号(2、3)を生成する音源(1)を備える自動車両であって、
前記ステレオ信号が、左電気音響信号(2)および右電気音響信号(3)から構成され、
前記左右の電気音響信号(2、3)が、ただ1台のスピーカ(22.2)だけを備える前方左トランスデューサ(21)と、ただ1台のスピーカ(27.2)だけを備える前方右トランスデューサ(26)とによってそれぞれ伝達されるように、請求項1から18のいずれかに記載の方法によって処理される自動車両。
【請求項24】
前記前方左右のスピーカ(22.2、27.2)が、広帯域スピーカである、請求項24に記載の車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate


【公表番号】特表2010−532613(P2010−532613A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514065(P2010−514065)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051164
【国際公開番号】WO2009/004268
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510005797)
【Fターム(参考)】