説明

自動車内装材用発泡積層シートおよび自動車内装材

【課題】変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡積層シートを用いた、ガラスフリーで非常に軽量、好適な意匠性、深絞り成形加工性を有し、耐熱性、耐寒性、耐摩耗性および耐傷性に優れ、長期間の使用においても外観を悪化させない耐候性に優れた安価な自動車内装材用発泡積層シートおよび自動車内装材を提供する。
【解決手段】変性PPE系樹脂を押出発泡成形して得られた発泡層11,13の両面に、変性PPE系樹脂および/または耐熱PS系樹脂からなる非発泡層を積層してなる熱可塑性樹脂発泡積層シート30であって、室内側非発泡層の表面に紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤を含有してなるポリアミド系樹脂フィルムを意匠層として積層することにより、上記特性を有する自動車内装材用発泡積層シートおよび自動車内装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装材用発泡積層シートおよび自動車内装材に関する。更に詳しくは、耐候性に優れた自動車内装材用発泡積層シートおよび自動車内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車天井材のような自動車内装材として、ウレタンフォームにガラス繊維を積層したシートあるいは、ポリプロピレン系樹脂にガラス繊維を混合または積層した積層シートが広く用いられている。それらの自動車内装材は、成形加工性・耐熱特性に優れているという特徴がある。
【0003】
しかしながら、上記のような自動車内装材は、ガラス繊維を構成材料とするため、環境適合性(即ちリサイクル性、特にサーマルリサイクル性)に問題がある。
【0004】
更に、これらのガラス繊維を含有する複合材料では、ガラス繊維を用いているため、軽量化に限界があり、自動車の燃費が上がることによるCO量の増加による環境負荷という面においても環境適合性に劣るものであった。
【0005】
このような問題を解決するため、軽量で耐熱性のある変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下「変性PPE系樹脂」と記す。)発泡層の両面に、変性PPE系樹脂非発泡層を積層した発泡積層シートを用いた自動車内装用発泡積層シートが提案されている(特許文献1)。変性PPE系樹脂を用いた自動車内装材用発泡積層シートは、耐熱性に優れ、軽量であるだけでなく、ガラスフリーの素材で構成されているため、リサイクル性を含み環境適合性に優れた素材である。
【0006】
自動車内装材としては、前記発泡積層シートのような基材に意匠性を付与するために装飾用の表面材として、ポリ塩ビニル樹脂シート(特許文献2)、熱可塑性エラストマーシート(特許文献3)、織布や不織布などのファブリックが表皮材として、積層あるいは一体成形したものが使用されている。これら表皮材のうち、ポリ塩化ビニル樹脂は、従来より表面硬度や柔軟性に優れるために幅広く使用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニル樹脂を燃焼すると、塩化ビニルモノマーや塩素ガスなどの有害物質が発生するため、焼却等の廃棄処理する際に焼却炉を傷めたり、環境を汚染する恐れがある等の問題があった。
【0007】
一方で、オレフィン系樹脂からなる熱可塑性エラストマーを意匠用の表面材として用いた場合、環境汚染の恐れがなく、無公害な表皮材として用いられるが、耐摩耗性、耐傷付性に劣り、意匠として製品表面に外観を加飾するために必要なエンボス加工によるシボ模様の転写によるシボ付けが必ずしも良好でないという問題があった。
【0008】
また、織布や不織布等のファブリックを表皮材をとして用いた場合、意匠性が限定されるだけではなく、コストの大幅な増加につながるという問題があった。
【0009】
上述の課題を解決する方法として、熱可塑性樹脂を押出発泡成形して得られた発泡シートの両面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層し、室内側非発泡層の表面に、ポリアミド系樹脂層を表皮層として積層した熱可塑性樹脂発泡積層シートが提案されている(特許文献4)。この方法では安価で深絞り成形性および好適な意匠性を有し、耐摩耗性、耐傷付性、寸法安定性に優れた自動車内装材用発泡積層シートを得ることができる。しかしながら、この方法で得られた自動車内装材は、時間経過による耐候性低下に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平4−11162号公報
【特許文献2】特開昭60−83832号公報
【特許文献3】特開昭59−1561号公報
【特許文献4】特開2009−262361号公報(B080167JP01)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、変性PPE系樹脂を基材とする発泡積層シートを用いた、ガラスフリーで非常に軽量、好適な意匠性、深絞り成形加工性を有し、耐熱性、耐寒性、耐摩耗性および耐傷性に優れ、長期間の使用においても外観を悪化させない耐候性に優れた安価な自動車内装材用発泡積層シートおよび自動車内装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、熱可塑性樹脂として、耐熱性樹脂、特に、ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、「PPE系樹脂」と記す)およびポリスチレン系樹脂(以下、「PS系樹脂」と記す)との混合樹脂である変性PPE系樹脂を押出発泡成形して得られた発泡層の両面に、変性PPE系樹脂または耐熱PS系樹脂からなる非発泡層を積層してなる熱可塑性樹脂発泡積層シートに対して、室内側非発泡層の表面に、紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤を含有してなるポリアミド系樹脂フィルムを意匠層として積層することにより、好適な製品外観の保持を必要とする内装材の成形において、良好な成形延伸性を備えたガラスフリーにて、非常に軽量で寸法安定性に優れ、環境適合性を兼ね備えた良好な外観意匠性を有する安価な自動車内装材用発泡積層シート、および自動車内装材が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
[1] 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が積層されている発泡積層シートの、室内側非発泡層の表面に、紫外線吸収剤を0.1〜5重量部およびヒンダートアミン系光安定剤を0.1〜5重量部含有してなるポリアミド系樹脂フィルム層が表皮層として積層されてなることを特徴とする、自動車内装材用発泡積層シート、
[2] ポリアミド系樹脂フィルムが、ポリアミド系樹脂単層フィルムまたは、ポリアミド系樹脂とポリスチレン系樹脂との複層フィルムであることを特徴とする、[1]に記載の自動車内装材用発泡積層シート、
[3] 発泡層の基材樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂25〜70重量%およびポリスチレン系樹脂75〜30重量%からなる混合樹脂であることを特徴とする、[1]または[2]のいずれかに記載の自動車内装材用発泡積層シート、
[4] 非発泡層の基材樹脂が変性ポリフェニレンエーテル系樹脂である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の自動車内装材用発泡積層シート、
[5] 非発泡層の基材樹脂が耐熱ポリスチレン系樹脂である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の自動車内装材用発泡積層シート、および
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の自動車内装材用発泡積層シートを、ポリアミド系樹脂フィルム層を表皮層として配置し、エンボス加工が施工された金型を用いて成形プレスにより成形してなることを特徴とする、自動車内装材
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、熱可塑性樹脂を押出発泡成形して得られた発泡シートの両面に、熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層した熱可塑性樹脂発泡積層シートであって、室内側非発泡層の表面に、紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤を含有してなるポリアミド系樹脂層を表皮層として積層することにより、安価で、オールプラスチック素材からなるガラスフリーで非常に軽量であり、環境適合性に優れると共に、好適な意匠性を有し、深絞り成形加工性に優れ、且つ、長時間の使用における光による外観の悪化を抑制できる自動車内装材用発泡積層シートを得ることができる。
【0015】
本発明では、さらに、該自動車内装材用発泡積層シートを成形してなる自動車内装材は、成形加工時にエンボス加工を施した金型を用いてプレス成形を行うことにより、金型表面のエンボス模様を効率的に表皮層に転写して、より簡便な方法で、表面外観の良好な成形品を製造できる等、より安価の方法で好適な意匠性を有し、自動車内装材に要求される諸特性を満たす(耐熱性、耐摩耗性および耐傷性に優れる)自動車内装材を得ることができる点で、工業的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る自動車内装材用発泡積層シートの要部拡大断面説明図。
【図2】本発明に係る自動車内装材の一例を示す側面説明図。
【図3】本発明に係る自動車内装材の一例を示す上面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、熱可塑性樹脂を押出発泡成形して得られた発泡層の両面に、熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層し、かつ、室内側非発泡層の表面に、紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤を含有してなるポリアミド系樹脂層を表皮層として積層することにより、自動車トランクルーム内装部材であるラゲージサイド、デッキサイドのような深絞り形状に対応する成形延伸性(深絞り成形加工性)を有し、より安価で好適な意匠性と耐熱変形等の寸法安定性を有する自動車内装材用発泡積層シート、及びそれを成形してなる自動車内装材に関する。
【0018】
本発明の自動車内装材用発泡積層シートおよび自動車内装材を、図面に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の一実施形態に係わる自動車内装材用発泡積層シートまたは自動車内装材の断面構成を、図1に示している。図1では、自動車内装材用発泡積層シート30として、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする押出発泡シートである発泡層10の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層11および13(室内側非発泡層11および室外側非発泡層13)が形成され、室内側非発泡層11の表面に、表皮層18が積層され、室外側非発泡層13の表面に異音防止層20が積層される。
【0020】
本発明における押出発泡シートである発泡層10の基材樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体等の耐熱性ポリスチレン系樹脂;PPE系樹脂とPS系樹脂との樹脂混合物、PPEへのスチレングラフト重合体等のスチレン・フェニレンエーテル共重合体、等の変性PPE系樹脂;、ポリカーボネート樹脂;ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートで例示されるポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、耐熱性、剛性等の品質に優れ、加工性および製造が容易である点で、変性PPE系樹脂が好ましい。
【0021】
本発明における変性PPE系樹脂は、PPE系樹脂とPS系樹脂とを混合することによって変性を行ったものであり、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂をいう。PPE系樹脂とPS系樹脂との混合による変性は、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0022】
変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレンー1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
これらのうちで、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)が、原料の汎用性、コストの点から好ましい。また、難燃性を付与したい場合には、ハロゲン系元素が含まれるポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)が好ましい。
【0024】
変性PPE系樹脂中のPS系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレンで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体などがあげられる。これらのうちでは、ポリスチレンがその汎用性、コストの点から好ましい。
【0025】
本発明において、発泡シートである発泡層10に使用される基材樹脂として、変性PPE系樹脂を使用する場合は、変性PPE系樹脂である混合樹脂におけるPPE系樹脂とPS系樹脂の割合としては、PPE樹脂25〜70重量%およびPS系樹脂30〜75重量%であることが好ましく、PPE系樹脂30〜60重量%およびPS系樹脂40〜70重量%であることがより好ましい。PPE樹脂の混合割合が25重量%未満では、耐熱性が劣る傾向にあり、70重量%を超えると、加熱流動時の粘度が上昇し、発泡成形が困難になる場合がある。
【0026】
本発明における発泡シートである発泡層10は、発泡剤として炭化水素系発泡剤を用いて、押出発泡成形して得られるものが好ましい。
【0027】
発泡シートである発泡層10を得る際に使用される炭化水素系発泡剤としては、揮発性発泡剤が好ましく、具体的には、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどがあげられる。なかでも、発泡剤の溶解度を示すカウリブタノール値(KB値)が20〜50である炭化水素系発泡剤が好ましい。また、この範囲よりもKB値の高いものと低いものとを2種以上適宜混合して前記範囲としたものも使用することができる。
【0028】
本発明においては、前記発泡剤の具体例のなかでも、発泡剤の適度な溶解性および発泡剤の逸散性が小さく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が小さい点で、イソブタン、または、イソブタンおよびノルマルブタンの混合体であって、イソブタンの比率が高いものが好ましい。発泡剤がイソブタンおよびノルマルブタンの混合体である場合は、混合体中のイソブタン含有量は、50重量%以上が好ましい。イソブタン含有量が50重量%より少ないと発泡剤の逸散性が大きく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が大きくなる傾向がある。
【0029】
本発明における押出発泡成形時の炭化水素系発泡剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、2.0〜5.0重量部であることが好ましく、2.5〜4.5重量部であることがより好ましい。炭化水素系発泡剤の添加量が2.0重量部より少ないと、成形加熱時の二次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得、良好な成形性を得るのに悪影響を与える傾向があり、5.0重量部を超えると、押出発泡が不安定になり、発泡シートの表面荒れが発生する傾向がある。
【0030】
本発明においては、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さとしては、1.0〜5.0mmが好ましく、1.5〜3.5mmがより好ましい。発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さが1.0mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない場合がある。一方、5.0mmを超えると、成形時の加熱の際、発泡層10(1次発泡層)はさらに発泡(2次発泡)するが、発泡層10の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行えず、成形性が低下する傾向がある。また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡層表面のセルに破泡などが生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる傾向がある。
【0031】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率は3〜20倍が好ましく、5〜15倍がより好ましい。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が3倍より低いと、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また、軽量化の効果が少なくなる傾向がある。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が20倍を超えると、強度が低下し、中心部まで加熱しにくいことにより、成形性が低下する傾向がある。
本発明における、発泡シートである発泡層10を形成する一次発泡層の独立気泡率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。独立気泡率が70%未満では、断熱性、剛性に劣るとともに、成形加熱によって目的とする二次発泡倍率を得ることが困難となり、成形性に劣る傾向がある。
【0032】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)のセル径は0.05〜0.9mmが好ましく、0.1〜0.7mmがより好ましい。セル径が0.05mmより小さいと、充分な強度が得られ難くい傾向があり、0.9mmを超えると、断熱性に劣る傾向がある。
【0033】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の目付は100〜300g/mが好ましく、120〜200g/mがより好ましい。目付が100g/mより低いと、内装用基材としての剛性が不足する傾向があり、目付が300g/mを超えると、重量増により軽量性の効果が低下する傾向がある。
【0034】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)中の残存揮発成分量は、発泡層10の全重量に対して1.0〜5.0重量%が好ましく、2.0〜4.0重量%がより好ましい。残存揮発成分量が1.0重量%より少ないと、2次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得るため、良好な成形性を得るのに影響を与える傾向がある。また、残存揮発成分量が5.0重量%を超えると、接着剤層との間に空気溜まりが発生したり、経時による寸法安定性が低下する傾向がある。なお、発泡層10中の残存揮発成分量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層10の試験片を耐熱性樹脂が軟化を始める温度以上でかつ分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定することができる。
【0035】
一般に、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)においては、押出発泡成形時に延伸され扁平となっていたセルが、成形加熱時に扁平率を解消する方向にその形状を変化させることにより、加熱収縮が発現させる。その加熱収縮が、結果的に自動車内装材の耐熱変形を起こす。
【0036】
本発明において、「耐熱変形」とは、自動車内装材を加熱試験した場合、加熱前後での発泡セルの加熱収縮による形状変形等により自動車内装材の寸法変化が発生することを意味する。
【0037】
本発明においては、耐熱変形等の形状変化を抑制するためには、発泡層10(1次発泡層)のセル形状としては、発泡層の両面表層部のセル密度アップを押出発泡成形シート化時に両表面とも均一に冷却することによりハードスキン層として形成することにより、発泡層の表層部を剛直化することで加熱収縮の量を抑制することができる。
【0038】
さらに、発泡層10のセル内圧の変化をなるべく小さくすることにより、加熱収縮量を小さくできる。例えば、発泡層10の押出発泡成形後、非発泡層11および13を積層加工するまでの養生時間を30日以上確保することにより、セル内圧の変化をなるべく小さくすることができる。
【0039】
さらに、加熱収縮による耐熱変形量は、二次加熱成形時の加熱温度を130〜155℃の範囲に制御し、発泡層10のセルに加熱成形時の歪みを与えない条件にて成形加工することによっても、非発泡層11または13を積層しない場合でも小さくすることができる。
【0040】
本発明において使用される発泡シートである発泡層10の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤、タルクなどを添加してもよい。
【0041】
本発明において、非発泡層11または13に用いられる熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、PS系樹脂、耐熱PS系樹脂、変性PPE系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうちでも、発泡層10との接着性の観点から、変性PPE系樹脂、耐熱PS系樹脂が好ましく使用される。
【0042】
本発明において、非発泡層11または13に用いられる熱可塑性樹脂として変性PPE系樹脂を用いる場合は、上述の発泡層10の場合と同様に、変性PPE系樹脂は、PPE系樹脂とPS系樹脂とを混合することによって変性を行ったものであり、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂をいう。PPE系樹脂とPS系樹脂との混合による変性は、製造が容易である等の点から好ましい。
【0043】
非発泡層におけるPPE系樹脂、PS系樹脂の具体例や好ましいものの例示、それを使用する理由などは、発泡層10において説明した場合と同様である。ただし、PS系樹脂の好ましい具体例として、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)で代表されるスチレン−ブタジエン共重合体が、非発泡層11または13の耐衝撃性改善効果が大きいという点から好ましい。
【0044】
本発明において、非発泡層11または13に用いられる熱可塑性樹脂として、変性PPE系樹脂を用いる場合には、変性PPE系樹脂である混合樹脂におけるPPE系樹脂とPS系樹脂の割合としては、PPE樹脂5〜70重量%およびPS系樹脂30〜95重量%であることが好ましく、PPE系樹脂7〜50重量%およびPS系樹脂50〜93重量%であることがより好ましい。PPE樹脂の混合割合が5重量%未満では、耐熱性が劣る傾向にあり、70重量%を超えると、加熱流動時の粘度が上昇し、非発泡層の押出加工成形が困難になる場合がある。
【0045】
本発明において、非発泡層11または13に用いられる熱可塑性樹脂として耐熱PS系樹脂を使う場合は、使用される耐熱PS系樹脂としては、スチレンまたはその誘導体と、耐熱性の改善効果を有する他の単量体との共重合体である。耐熱性の改善効果を有し、スチレンまたはその誘導体と共重合可能な単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物;アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物またはその誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたはゴムラテックスを添加して重合させたものと、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物との共重合体であってもよい。このうちでは、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が、その耐熱性改善効果、汎用性およびコストの面から好ましい。耐熱PS系樹脂は、単独で用いても良く、または2種類以上組み合わせても良い。
【0047】
本発明においては、耐熱PS系樹脂は、他の熱可塑性樹脂とブレンドして用いてもよく、ブレンドする熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、HIPS、ポリカーボネート、ポリエステルやそれらの共重合体などがあげられる。これらのうちでは、汎用性、均一分散が可能であること、非発泡層の耐衝撃性改善効果が大きいこと、コストの面等からHIPSが好ましい。HIPSとしては公知のものが使用でき、ゴム成分の含有量は通常1〜15重量%である。
【0048】
本発明における非発泡層11および13の目付は、50〜300g/mが好ましく、75〜200g/mがより好ましい。非発泡層の目付が50g/mより低い場合には、強度、剛性、耐熱性などが低下する傾向があり、300g/mより高い場合には、発泡積層シートの成形性が劣る傾向にある。
【0049】
本発明においては、非発泡層を形成する場合、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤等を、単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0050】
耐衝撃性改良剤は、非発泡層11および13を発泡層10に積層し、加熱成形時に2次発泡させた積層シートを自動車内装材として成形する際のパンチング加工や、積層シートや成形体を輸送する際に、非発泡層11および13の割れなどを防止するのに有効である。本発明における耐衝撃性改良剤としては、基材樹脂に混合することによってその効果を発揮するものであれば、特に限定なく使用し得る。耐衝撃性改良剤は、重合による変性で熱可塑性樹脂に導入した耐衝撃性改良効果を発揮し得る成分であってもよく、例えば、HIPSなどのように耐衝撃性改良成分を含むものを混合して非発泡層に使用する場合も、非発泡層11または13に耐衝撃性を付与することができる。
【0051】

本発明で用いられる表皮層18を構成する樹脂層としては、耐熱性、耐油性、耐溶剤性、耐摩耗性および耐傷付性の観点から、ポリアミド系樹脂フィルム層が選択される。
【0052】
本発明で用いられるポリアミド系樹脂としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−又はp−キシリレンジアミン等の脂肪族、脂環族、芳香族等のジアミンとアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸の脂肪族、脂環族、芳香族等のジカルボン酸との重縮合により得られるポリアミド、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸の縮合により得られるポリアミド、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムから得られるポリアミドあるいはこれらの成分からなる共重合ポリアミド、これらポリアミドの混合物等が挙げられる。具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロン6/11等が挙げられる。
【0053】
これらポリアミド系樹脂のなかでも、複合シートが変性PPE系樹脂からなる発泡層と、変性PPE系樹脂および/または耐熱PS系樹脂からなる非発泡層とから構成される場合、複合シートとの接着性、並びに、成形加工時に表皮層の表面でのエンボス加工を施しやすくする(熱セット性)ためには、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66が好ましい。
【0054】
本発明においては、ポリアミド系樹脂(フィルム)層は、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤を含有することにより、時間経過に伴うフィルム層の黄変を抑制することができる。
【0055】
本発明における表皮層18を構成するポリアミド系樹脂に含有される紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−tert−ブチル−4’−(2−メタクロイルオキシエトキシエトキシ)ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−C〜C 混合アルコキシカルボニルエチルフェニル)トリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2' −メチレンビス(4−tert−オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジtert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−tert−アミルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;2−エチル−2' −エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4' −ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド系紫外線吸収剤;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
これらのうちでも、特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が、吸収範囲が紫外線の全領域にわたり、吸収能力が最も優れているため、好ましい。
【0057】
本発明における紫外線吸収剤の含有量は、ポリアミド系樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.1重量部未満では、表皮層18の黄変を防止する効果が得られにくい傾向があり、5重量部を超えると、添加量に見合うだけの効果が得られず、いたずらにコスト増を招いてしまう傾向がある。
【0058】
本発明における表皮層18を構成するポリアミド系樹脂に含有されるヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−tert−オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6テトラメチル−1−ピペリジルエタノールの重合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4、7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン等が挙げられる。
【0059】
本発明におけるヒンダートアミン系光安定剤の含有量は、ポリアミド系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。ヒンダートアミン系光安定剤の含有量が0.1重量部未満では、表皮層18の黄変を防止する効果が得られにくい傾向があり、5重量部を超えると、添加量に見合うだけの効果が得られず、いたずらにコスト増を招いてしまう傾向がある。
【0060】
本発明における表皮層18として使用するポリアミド系樹脂には、得られるフィルムの特性を損なわない範囲で、粘着付与剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤等を配合してもよい。
【0061】
本発明において用いられる表皮層18となるポリアミド系樹脂フィルム層としては、ポリアミド樹脂の単一フィルム層からのみなるものを使用してもよいし、2層以上の複層構造からなるフィルム層を使用してもよい。2層の複層構造としては、ポリアミドとPS系樹脂とからなる複層フィルムが、特に、ポリアミド層を表面層とし、PS系樹脂層を下層とする複層フィルムが、複合シートとの接着性の観点で好ましい。
【0062】
ポリアミドとPS系樹脂との複層フィルムを用いる場合、PS系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、HIPSで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体などがあげられる。これらのうちでは、複合シートとの接着性を保持すること、および意匠層としてポリアミド樹脂層の衝撃性、熱セット性を効果的に発現させるためには、HIPSがその汎用性、コストの点から好ましい。
本発明における表皮層18に使用するポリアミド系樹脂層のフィルム化方法は、特に限定されるものではなく、押出Tダイ法、押出インフレーション法、ドライラミネート法、押出しラミネート法等の、公知のフィルム製造方法が適用できる。
【0063】
表皮層18の厚みは、20〜300μmが好ましく、20〜150μmが更に好ましい。表皮層18の厚みが20μmより薄い場合には強度、剛性、耐熱性等に劣る傾向があり、300μmより厚い場合には成形性に劣る傾向がある。
【0064】
表皮層18の表面へのシボ付け模様等の立体感の付与を効果的に行うためには、表皮層18としてのポリアミド系樹脂層の目付として、30〜200g/mであることが好ましく、50〜180g/mがより好ましい。該樹脂層の目付けが30g/m未満の場合、表皮層18への立体感付与に必要な樹脂層の厚みが不足し、有効な立体感の付与が困難となる傾向がある。一方で、該樹脂層目付けが200g/mを超えると、成形加工性に不具合を生じたり、いたずらにコストの上昇を引き起こす虞れがある。
ここで、意匠層への立体感の付与は、自動車内装材製品に高級感を与える上で重要な要素であって、金型の表面にエンボス加工を施工することにより、表皮層表面に凹凸の立体感(シボ付け)を与えることができ、表皮層表面に金型の模様を効果的に転写することで立体感を付与し、シボ付けにより製品としての自動車内装材等の成形品に多様化が図られる。
【0065】
なお、本発明においては、自動車内装材の表皮層にエンボス加工を施す工程は、自動車内装材用発泡積層シートの製造時、あるいは、該発泡積層シートの冷却成型プレス時に実施することができる。
【0066】
すなわち、自動車内装材用発泡積層シートの製造時に、エンボスロールを用いることにより、詳しくは、複合シートに前記ポリアミド系樹脂フィルム層を表皮層18として積層する際にポリアミド系樹脂層に、エンボス処理を施しているロールを用いてエンボス加工を施すことにより、表皮層18の表面に凸凹の立体間を付与することができる。
【0067】
他方、複合シートにポリアミド系樹脂フィルム層を表皮層18として積層した自動車内装材用発泡積層シートを、自動車内装材として冷却プレス成形する際に、エンボス加工が施された金型用いて成形加工することによっても、表皮層18の表面に凸凹の立体間を付与することができる。自動車内装材用発泡積層シートの加熱による可塑化での表皮表面の凹凸が消失せず、表皮層に良好な凹凸のシボ状模様を有効に付与できることから、自動車内装材として冷却プレス成形する際に実施する方が好ましい。
【0068】
本発明において、表皮層18に必要なエンボス処理を施す場合、表皮表面の凹凸高さは、必要な意匠性により適宜選択され、特に限定される必要はない。
【0069】
本発明における異音防止層20としては、繊維素材で構成される不織布を用いることができる。
【0070】
本発明における異音防止層20に使用される不織布としては、原料繊維を接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であればいずれの種類でも用いることができる。原料繊維の種類としては、特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも用いることができる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿、セルロース等の天然繊維を使用することができるが、中でもポリエステル系繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。これら繊維を単独で使用することも、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0071】
不織布の種類として、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンポンド布、スプレファイバー布、ウォーターニードル布、あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も用いることができる。これら不織布のうち、長繊維フィラメントからなるスパンボンド布、ウォーターニードル布が好ましい。両者は、さらに、フィラメントに捲縮性があり、強度が高く、柔らかな風合いを有し、音を吸収するに都合が良い。
【0072】
次に、異音防止層20は、成形加工性、品質及びコストを考慮すると、15〜100g/mの目付けを有していることが好ましく、さらには20〜60g/mの目付けを有していることが好ましい。15g/m未満の目付けでは、有効な異音防止効果が認められず、成形加工での金型に接触冷却時に、材料の冷却が進行することによる伸び性の不良が発生する傾向がある。一方、100g/mを越える目付けでは、軽量性に劣り、コストが無駄に増加したり、異音防止層20を構成する繊維構成体の成形歪みにより自動車内装材に変形などが生じたりする傾向がある。
【0073】
異音防止層20を室外側非発泡層13に積層する方法としては、図1に示したように、異音防止層積層用接着剤層16を介して、室外側非発泡層13に異音防止層20を接合する方法がある。
異音防止層積層用接着剤16を介して異音防止層20の繊維構成体と非発泡層13とを接合する方法としては、ホットメルト等のような膜状または粉末状の固形接着剤を介して積層する方法、ラテックス接着剤のような液状接着剤を介して積層する方法、等が挙げられる。
【0074】
ホットメルト接着剤の具体例としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系等の樹脂を主成分とするものが挙げられる。
【0075】
ホットメルトのような膜状または粉末状の固形接着剤層を介して異音防止層20の繊維構成体を積層する方法としては、ホットメルト接着剤層を予め室外側非発泡層13の上に積層し、熱ラミネーション法により接着剤層を熱軟化させ、異音防止層20の繊維構成体に圧着することにより接合する方法、発泡層10と室外側非発泡層13とのバインダーラミネーション加工時に、ホットメルト接着剤層を室外側非発泡層13と異音防止層20の繊維構成体とで挟み込み圧着して接合する方法が挙げられる。
【0076】
ラテックス接着剤の具体例としては、ポリスチレン系樹脂(PS系樹脂)ラテックス、スチレン−ブタジエン系共重合体(SB系樹脂)ラテックス、カルボキシル化変性スチレン−ブタジエン共重合体樹脂ラテックス(以下、「カルボキシル化変性SB系樹脂ラテックス」と記す。)、カルボキシル化変性アクリロニトリル−スチレン系共重合体樹脂ラテックス(以下、「カルボキシル化変性AS系樹脂ラテックス」と記す。)が挙げられ、これらを単独で用いることも可能であるが、自動車内装材としての種々の要求特性を満たすためには、数種のラテックスを混合して使用することが好ましい。その中で、低温成膜性の良好なバインダーラテックスおよび耐熱性が高いレジンラテックスとの混合物を使用することにより、製造工程内の乾燥処理条件に依存しない安定で強固な初期接着強度とラテックス接着剤層の耐熱性を両立することができ、また、機械安定性の向上により製造工程での取扱い性を改善することができることからより好ましい。
【0077】
本発明におけるバインダーラテックスとしては、カルボキシル化変性SB系樹脂を構成樹脂とするラテックスが、機械安定性が良好な点および、非発泡層14と相溶性を有する点から好ましい。
【0078】
本発明におけるラテックス混合物中でのレジンラテックスの混合割合は、20〜50重量%が好ましく、30〜50重量%がさらに好ましい。レジンラテックスの混合割合が20重量%未満では、接着剤層の耐熱性が低下し、内装材の実用特性として要求されるレベルに達しない場合があり、50重量%を超えると、バインダーラテックスが連続相とならず、ラテックス混合物の最低成膜温度が20℃以上となり、室温での乾燥によりフィルムの形成が起こらず接着不良が発生する可能性がある。
【0079】
本発明におけるラテックス混合物の最低成膜温度は、20℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。ラテックス混合物の最低成膜温度が20℃を超えると、室温での乾燥によりフィルムの形成が起こらず、接着不良が発生する場合がある。
【0080】
本発明におけるラテックス接着剤による室外側非発泡層13と異音防止層20の繊維構成体との接着方法としては、イ)ラテックス接着剤を室外側非発泡層13表面に塗布し、未乾燥状態の塗布面に不織布層20を積層した状態で乾燥し、仮接着させた後、加熱プレスすることで接着させる方法、ロ)異音防止層20の繊維構成体に予めラテックス接着剤を塗布し、未乾燥状態の塗布面に室外側非発泡層13が接する様に熱可塑性樹脂発泡積層シートを積層した状態で乾燥し、仮接着させた後、加熱プレスする方法がある。ラテックス接着剤を塗布し、未乾燥状態で室外側非発泡層13および異音防止層20の繊維構成体を積層させることにより、変性PPE系樹脂発泡シート等を使用した場合には、発泡シートの熱的ダメージを受けない加熱温度での加熱プレスによっても、要求される接着性が安定的に発現される。
【0081】
本発明におけるラテックスとしては、カーペットバッキング用、塗工紙用、不織布繊維処理用として当業者に知られるいずれのラテックスを使用することができる。
【0082】
ラテックス原液中の固形分濃度としては、通常、40重量%以上であるが、塗布量および塗布方法にあわせ、任意に水で希釈した後使用することが可能である。但し、ラテックス水希釈溶液の固形分濃度が低すぎると、工程内での乾燥が不十分となり、接着不良を引き起こす可能性があるため、20重量%以上が好ましい。
【0083】
本発明において使用するバインダーラテックスおよびレジンラテックスは、製造工程でポンプ輸送、配合の際の攪拌、コーティングの際のロールコーターによる剪断等間断なく機械的操作を受けるため機械安定性が良好なラテックスが好ましい。
【0084】
機械安定性を改善する方策としては、乳化剤の添加量を増加させる、pHをアルカリ側に調整する、ラテックスをカルボキシル化変性する等があげられるが、カルボキシル化変性が最も有効であるため、カルボキシル化変性のラテックスの使用が好ましい。
【0085】
本発明におけるラテックスの塗布方法としては、各種ロールコーター法、スプレー法、泡噴霧法等の方法が挙げられ、塗布量、塗布面の形状により選択される。
【0086】
本発明におけるラテックスは、配合添加剤として、必要に応じて、安定剤、老化防止剤、加硫促進剤、分散剤、充填剤、増粘剤、着色剤、消泡剤、ゲル化剤、凍結防止剤、軟化剤、増粘樹脂等を含有してもよい。
【0087】
本発明における異音防止層積層用接着剤層16としてのラテックスの構成樹脂塗布量は、使用する熱可塑性樹脂の種類、必要とされる異音防止層20との接着強度により任意に選択されるが、一般的に、混合ラテックス中の固形分として、1mあたり5〜50gが好ましく、10〜30gがより好ましい。接着剤層16の構成樹脂塗布量が5g未満の場合は、接着性の改善効果が発現されない可能性が有り、50gを超える場合は、成形時に異音防止層20より接着剤層16であるラテックスが染み出し金型を汚染する可能性がある。
【0088】
次に、本発明の自動車内装材用発泡積層シートの製造法について説明する。
【0089】
本発明において使用される発泡層10(1次発泡層)は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、基材樹脂である耐熱性樹脂に対し、必要に応じて各種添加剤をブレンドしたものを、押出機を用いて樹脂温度150〜400℃にて溶融・混練する。次いで、高温高圧(樹脂温度150〜400℃および樹脂圧3〜50MPa)下にある押出機内へ、耐熱性樹脂100重量部に対して炭化水素系発泡剤2.0〜5.0重量部を圧入し、さらに、樹脂温度を発泡適正温度域(150〜300℃)に調節した後、サーキュラーダイなどを用い、低圧帯(通常は大気中)に押出し発泡させる。その後、マンドレル(円筒状冷却筒)などに接触させながら、例えば0.5〜40m/分の速度で引き取ることによりシート状に成形し、カットした後、巻き取るなどの方法により製造することができる。
【0090】
本発明において使用される表皮層18は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、基材樹脂であるポリアミド系樹脂に紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤、および必要に応じて各種添加剤をブレンドしたものを、二軸押出機を用いて樹脂温度220〜270℃にて溶融・混練し、Tダイにて冷却ロール上に押出してフィルム化するなどの方法により製造することができる。
【0091】
発泡層10に対し、非発泡層11および13、表皮層18、異音防止層20を積層する方法としては、特に限定されるものではないが、予め発泡成形して巻き取られた発泡層10を繰り出しながら、押出機から供給される溶融状態の室内側非発泡層11の基材樹脂を、表皮層18とで挟み込む形で層状に積層した後、冷却ローラーなどによって圧着する方法(押出ラミネート法)、発泡層10と押出機から供給される溶融状態の室外側非発泡層13の基材樹脂を発泡層10と異音防止層20で挟み込む形で層状に積層した後、冷却ローラーなどによって圧着する方法により製造することができる。なかでも、発泡層10の押出発泡シート成形と非発泡層11および13の押出とをインラインで行って積層する方法が、製造工程の簡略化という点で好ましい。この際、必要に応じて、表皮層18を構成する面に、エンボス加工を施したロールを用いることにより、表皮層にエンボス加工を施すことができる。
【0092】
得られた自動車内装材用発泡積層シート(1次発泡積層シート)から賦型により自動車内装材(2次発泡積層成形体)を得る成形方法としては、上下にヒーターを持つ加熱炉の中央に1次発泡積層シートをクランプして導き、成形に適した温度(例えば、発泡積層シートの表面温度を130〜155℃)になるように加熱させた後、温度調節した金型にて表皮材と貼合の上、プレス冷却し、賦型する方法が挙げられる。
【0093】
成形方法の例としては、具体的には、例えば、プラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などの方法があげられる。
【0094】
この際、必要に応じて、エンボス加工が施された金型を用いることにより、表皮層18にエンボス加工を施すことができる。
【0095】
本発明における自動車内装材用発泡積層シートは、室外側非発泡層13に異音防止層20を積層することにより、該積層発泡シートの成形加工における金型との接触による冷却を防止することができ、該シートを用いた成形品の加工歪みを低減することができる。さらに、自動車の振動等による自動車内装材と自動車ボディ本体の擦れによって発生する異音を防止することができる。
【0096】
本発明において、自動車内装材用発泡積層シート中の発泡層(1次発泡シート)を加熱により2次発泡させる場合には、1次発泡シートに対して、通常1.2〜4倍に2次発泡させるのが好ましく、さらには1.5〜3倍に2次発泡させるのが好ましい。従って、2次発泡後の発泡層(2次発泡シート)の発泡倍率は、3.6〜80倍が好ましく、7.5〜45倍がより好ましく、10〜40倍がさらに好ましい。2次発泡倍率が1.2倍未満では、柔軟性に劣り、曲げ等による破損が生じ易い傾向がある。2次発泡倍率が4倍を超えると、強度が低下する傾向がある。
【0097】
2次発泡後の発泡層(2次発泡シート)の厚さは、1.2〜20mmが好ましく、2.25〜10.5mmがより好ましく、3.0〜7.0mmがさらに好ましい。2次発泡後の発泡層の厚さが1.2mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない場合がある。厚さが20mmを超えると、成形賦型時の形状発現性が劣り、さらに必要以上に嵩高くなり車室内が狭くなる傾向がある。
【0098】
このようにして自動車内装材用発泡積層シートを表皮材と貼合の上、成形して得られる自動車内装材の全体目付けは、200〜990g/mが好ましく、240〜950g/mがさらに好ましい。自動車内装材の全体目付けが200g/m未満では、強度が劣り、曲げ等による破損が生じ易い傾向がある。990g/mを超えると、重量増に伴う取扱い性(作業者のハンドリング性)が低下し、本発明の課題である軽量性に反する傾向がある。
【0099】
以上、本発明に係わる自動車内装材用発泡積層シートおよび自動車内装材の実施態様を種々説明したが、本発明は前記の態様に限定されるものではない。例えば、自動車内装材用発泡積層シートは用途として電車、航空機、建築物の室内などの内装材用発泡積層シートにも使用することができ、広義に解釈されるべきものである。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【0101】
実施例または比較例に用いた樹脂を表1に、表皮層18として用いたポリアミド系樹脂フィルムの構成を表2に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
なお、表1、表2に示した各符号に関する記載は次の通りである。
PPE :ポリフェニレンエーテル樹脂
PS :ポリスチレン樹脂
HIPS :ハイインパクトポリスチレン樹脂
SB :スチレン・ブタジエン系共重合樹脂。
【0105】
実施例または比較例にて実施した評価方法を以下に示す。
【0106】
(発泡層および成形体の厚さ)
得られた1次発泡シートおよび成形体に対し、幅方向に20ヵ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0107】
(発泡倍率)
得られた1次発泡シートの密度dfをJIS K7222に準じて測定し、別途、変性PPE系樹脂の密度dpをJIS K7112に準じて測定し、発泡倍率=dp/dfの式により算出した。
【0108】
(セル径)
得られた1次発泡シート発泡層の断面を光学顕微鏡で観察して20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0109】
(独立気泡率)
得られた1次発泡シートの独立気泡率は、ASTMD−2859に準じて、マルチピクノメーター(ベックマン社製)を用いて測定した。
【0110】
(目付)
用いた材料の任意の5ヵ所より、100mm角の大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定した後、平均値を算出し、m当たりに換算した。
【0111】
(外観)
得られた自動車内装材の外観を、目視で、以下の基準にて評価した。
○:異常なし。
△:一部にシボ飛びが発生しているが、割れ、裂けなど著しい外観不良なし。
×:割れ、裂け、シボ流れが発生した。
【0112】
(シボ深さ)
自動車内装材から、100mm角の試験片を切り出し、表皮材の面内5点のシボ深さを測定し、金型に付与した皮シボ模様のシボ平均高さ(凹凸高さ)に対する転写率を指標とした。
○:転写率が70%以上。
△:転写率が50%以上70%未満。
×:転写率が50%未満。
【0113】
(風合い)
得られた自動車内装材の表皮層の表面を触手にて、その感触を3段階評価した。
S:柔らかく感じる。
M:中間。
H:硬く感じる。
【0114】
(耐摩耗性)
得られた自動車内装材の表皮層の表面を、テーバー磨耗試験機を用い、CS−11磨耗輪、荷重500gの条件で行い、1000回転後の表皮表面の磨耗減量を測定し、以下の基準により、耐摩耗性を評価した。
○:1mg未満。
△:1mg以上10mg未満。
×:10mg以上。
【0115】
(耐傷付き性)
テーバー式スクラッチテスターを用い、荷重100gでカッター刃先を自動車内装材の表皮層の表面に接触させ、1rpmで1回転させた後の表面引掻き傷を観察した。
A:全く認められない。
B:わずかに認められる。
C:明らかに認められる。
【0116】
(耐候性試験)
キセノンウェザーメーター(スガ試験機製)を用い、BPT:83℃、湿度:50%RH、放射照度:150W/m、積算放射照度:300MJ、回転速度:12rpmの条件にて、耐候性試験を行い、以下の基準により評価した。
○:表面に黄変が発生していない。
×:表面に黄変が発生している。
【0117】
(実装耐熱性試験)
図2および図3に示す形状のデッキサイド22(幅400mm×長さ900mm)の室内側非発泡層面側を上面にして、デッキサイド用検具に装着した。なお、デッキサイド成形品について、平滑部4箇所、深絞り部2箇所、屈曲部2箇所の8箇所の測定点を刻印した(図2、図3中a〜h)。
測定点付近に標線を設け、垂直方向の距離を測定した。
次に、50℃±1℃、相対湿度95%に設定した恒温恒湿室に23.5時間投入放置した後、23℃±1℃、相対湿度50%に設定された条件に変更し、30分間放置した。
その後、−30℃±1℃、相対湿度50%に設定された条件で7.5時間放置した後、23℃±1℃、相対湿度50%に設定された条件に戻し、30分間放置した。
その後、80±1℃に設定した条件に15.5時間放置後、23℃±1℃、相対湿度50%に設定された条件に戻し、1時間放置した。
その成形体に刻印された測定点の垂直方向の寸法変化量を測定し、a〜hの最大値を記録した。
寸法変化量の絶対値の最大量より、耐熱変形性を以下のように判断した。
○:変化量 ±2.0mm以内
△:変化量 ±2.0mm超、±3.5mm以内
×:変化量 ±3.5mm超 なお、最大変位量は、垂直反り上がり方向をプラス(+)、垂直垂れ下がり方向をマイナス(−)として測定した値である。
【0118】
(実施例1)
<発泡層の製造>
PPE樹脂成分40重量%およびPS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1重量部およびPS樹脂(B)42.9重量部とを混合した混合樹脂100重量部に対して、iso−ブタンを主成分とする炭化水素系発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15重量%)3.5重量部およびタルク0.32重量部を押出機により樹脂温度270℃にて混練し、樹脂温度を196℃まで冷却し、圧力10MPaでサーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻取り、一次発泡層の厚さ2.4mm、一次発泡倍率14.0倍、独立気泡率87%、セル径0.18mmおよび目付150g/mの1次発泡シートの巻物を得た。
<ポリアミド系樹脂フィルムの製造>
ポリアミド系樹脂[東レ(株)製、アラミンCM1041LO]100重量部に対して、紫外線吸収剤としてTINUVIN 900[チバ・ジャパン(株)製]1重量部およびヒンダートアミン系光安定剤としてTINUVIN 144[チバ・ジャパン(株)製]1重量部を添加した樹脂組成物を、二軸押出機にて樹脂温度250℃で混練し、押出機の先端に設置したTダイを用いて30℃の冷却ロール上に押し出し、ポリアミド系樹脂フィルム(厚み70μm、目付70g/m)を得た。
<室外側非発泡層の積層>
前記1次発泡シートをロールより繰り出しながら、PPE樹脂成分30.0重量%、PS樹脂成分62.9重量%およびゴム成分7.1重量%となるようにPPE樹脂(A)42.9重量部およびHIPS樹脂(C)57.1重量部を混合した混合樹脂を、押出機を用いて樹脂温度250℃にて溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押出し、溶融状態でフィルム状の室外側非発泡層を前記1次発泡シートに積層し、目付120g/mの変性PPE系樹脂非発泡層を形成した。
その際、変性PPE系樹脂室外側非発泡層を積層時に、異音防止層として、前記カルボキシル化変性SB系樹脂ラテックス接着剤[JSR(株)製、0569]が10g/m塗布されたスパンボンド不織布[旭化成せんい(株)製、PC8045]を積層した。
<室内側非発泡層の積層>
得られた変性PPE系樹脂非発泡層を形成した発泡積層シートに、PPE樹脂成分7.0重量%、PS樹脂成分89.2重量%およびゴム成分3.8重量%となるようにPPE樹脂(A)10重量部、PS樹脂(B)60重量部およびHIPS樹脂(C)30重量部を混合した混合樹脂を、押出機を用いて樹脂温度が255℃となるようフィルム状に押し出し、変性PPE系樹脂室外側非発泡層を形成したシートの反対面および表皮層18の構成部位となるHIPSフィルム[東和化工(株)製、HIフィルム]の間に積層し、目付180g/mの変性PPE系樹脂室内側非発泡層を形成した。
続いて、加熱炉を通し、HIPSフィルム表面側を100℃に加熱した後、表皮層18の構成部位として、前記ポリアミド系樹脂フィルムを積層した。
<自動車内装材の成形>
得られた自動車内装材用発泡積層シートを、室外側非発泡層面側を上面側となるよう配置し、該発泡積層シートの幅方向2方をクランプして加熱炉に入れ、自動車内装材用発泡積層シートの表面温度が、発泡積層シートの表面温度が150℃となるように33秒加熱した。
その後、デッキサイド用金型[幅400mm、長さ900mm、深絞り形状部の深さ300mmの成形品が2個取りできる形状の金型、上凹型、下凸型形状、下型表面に皮シボ加工(凹凸50μm)施工]を用い、プラグ成形を実施した。その後、トリミング、パンチング加工を施し、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイド成形体の外観を観察したところ、割れ等の外観異常は観察されなかった。
一方、得られたデッキサイド成形体および成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0119】
(実施例2)
表皮層のポリアミド系樹脂フィルムを、表2に記載の組成(紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤の含有量を共に3重量部に変更した)にて、実施例1と同様の方法により製造して得られたポリアミド系樹脂フィルムに変更した以外は、実施例1と同様な方法により自動車内装材用発泡積層シートを得、成形加工を行って、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイドの外観を観察したところ、割れ等外観異常は観察されなかった。
一方、得られたデッキサイド成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0120】
(実施例3)
表皮層のポリアミド系樹脂フィルムを、表2に記載の組成に変更し(紫外線吸収剤種をTINUVIN 384−2に、ヒンダートアミン系光安定剤種をTINUVIN 123に変更した)、ポリスチレン系樹脂フィルムを使用しないポリアミド系樹脂フィルム単層構成とした以外は、実施例1と同様な方法で自動車内装材用発泡積層シートを得、成形加工を行って、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイドの外観を観察したところ、割れ等外観異常は観察されなかった。
一方、得られたデッキサイド成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0121】
(実施例4)
表皮層のポリアミド系樹脂フィルムを、表2に記載の組成(紫外線吸収剤種をLA−36に、ヒンダートアミン系光安定剤種をSANOL LS770に変更した)にて実施例1と同様の方法により製造して得られたポリアミド系樹脂フィルムに変更した以外は、実施例1と同様な方法により自動車内装材用発泡積層シートを得、成形加工を行って、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイドの外観を観察したところ、割れ等外観異常は観察されなかった。
一方、得られたデッキサイド成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0122】
(実施例5)
室外側非発泡層として、スチレン−メタクリル酸共重合体(D)50.0重量部およびHIPS(D)50.0重量部を混合した混合樹脂を、押出機を用い樹脂温度250℃にて溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押出し、溶融状態でフィルム状の室外側非発泡層を前記1次発泡シートに積層し、目付120g/mの耐熱PS樹脂非発泡層を形成した以外は、実施例1と同様の方法により、自動車内装材用発泡積層シートを得、成形加工を行って、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイドの外観を観察したところ、割れ等外観異常は観察されなかった。
一方、得られたデッキサイド成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0123】
(比較例1)
表皮層のポリアミド系樹脂フィルムを、表2に記載の組成(紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤の含有量を共に0.05重量部に変更した)にて実施例1と同様の方法により製造して得られたポリアミド系樹脂フィルムに変更した以外は、実施例1と同様な方法で自動車内装材用発泡積層シートを得、成形加工を行って、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイドの外観を観察したところ、割れ等外観異常は観察されなかった。一方、得られたデッキサイド成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0124】
(比較例2)
表皮層のポリアミド系樹脂フィルムを、表2に記載の組成(ヒンダートアミン系光安定剤のみを未使用に変更した)にて実施例1と同様の方法により製造して得られたポリアミド系樹脂フィルムに変更した以外は、実施例1と同様な方法で自動車内装材用発泡積層シートを得、成形加工を行って、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイドの外観を観察したところ、割れ等外観異常は観察されなかった。一方、得られたデッキサイド成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0125】
(比較例3)
表皮層のポリアミド系樹脂フィルムを、表2に記載の組成(紫外線吸収剤のみを未使用に変更した)にて実施例1と同様の方法により製造して得られたポリアミド系樹脂フィルムに変更した以外は、実施例1と同様な方法で自動車内装材用発泡積層シートを得、成形加工を行って、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイドの外観を観察したところ、割れ等外観異常は観察されなかった。一方、得られたデッキサイド成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0126】
(比較例4)
表皮層のポリアミド系樹脂フィルムを、表2に記載の組成(紫外線吸収剤およびヒンダートアミン系光安定剤を共に未使用に変更)にて実施例1と同様の方法により製造して得られたポリアミド系樹脂フィルムに変更した以外は、実施例1と同様な方法で自動車内装材用発泡積層シートを得、成形加工を行って、自動車内装部材としてのデッキサイド成形体を得た。
取得したデッキサイドの外観を観察したところ、割れ等外観異常は観察されなかった。一方、得られたデッキサイド成形体から試験片を切り出し、各種評価項目について評価試験を実施し、表3に示した結果を得た。
【0127】
【表3】

【符号の説明】
【0128】
10 発泡層
11 室内側非発泡層
13 室外側非発泡層
16 異音防止層積層用接着層
18 表皮層
20 異音防止層
30 熱可塑性樹脂発泡積層シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡層の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層が積層されている発泡積層シートの、室内側非発泡層の表面に紫外線吸収剤を0.1〜5重量部およびヒンダートアミン系光安定剤を0.1〜5重量部含有してなるポリアミド系樹脂フィルム層が表皮層として積層されてなることを特徴とする、自動車内装材用発泡積層シート。
【請求項2】
ポリアミド系樹脂フィルムが、ポリアミド系樹脂単層フィルムまたは、ポリアミド系樹脂とポリスチレン系樹脂との複層フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の自動車内装材用発泡積層シート。
【請求項3】
発泡層の基材樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂25〜70重量%およびポリスチレン系樹脂75〜30重量%からなる混合樹脂であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動車内装材用発泡積層シート。
【請求項4】
非発泡層の基材樹脂が変性ポリフェニレンエーテル系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車内装材用発泡積層シート。
【請求項5】
非発泡層の基材樹脂が耐熱ポリスチレン系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車内装材用発泡積層シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の自動車内装材用発泡積層シートを、ポリアミド系樹脂フィルム層を表皮層として配置し、エンボス加工が施工された金型を用いて成形プレスにより成形してなることを特徴とする、自動車内装材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−230477(P2011−230477A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105313(P2010−105313)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】