説明

自動車用のラックアンドピニオンステアリングのクリアランスを補償する押圧装置

本発明は、回転パッド(10)を有する押圧装置(8)に関し、該回転パッド(10)の内周面(11)は外周面(12)に対して偏心していて、ラック(3)の背面に適用され、それによって、ラック(3)はステアリングピニオン(5)の歯部に対して押圧される。クリアランス補償機構(17)は、パッド(10)の径方向アーム(18)に対して圧縮スプリング(20)によって押圧される押圧部材(19)を有している。圧縮スプリング(20)は、該押圧部材(19)と、パッド(10)の支持部材(13)に固定された要素(23)との間に挿入されている。可動ストッパ(21)は、押圧部材(19)の突起部と協働するずらし配置された歯を有する歯部形成を有していて、要素(23)に回動可能に固定されている。ストッパ(21)はねじりスプリング(22)によって要素(23)に連結されている。突起部は、上記ずらし配置された歯と継続的に協働する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のラックアンドピニオンステアリングに関する技術分野に属する。特に、いわゆる直線駆動の押圧装置、又は、より簡潔には、歯部の噛み合い不良を低減しながらラックのステアリングピニオンに対する噛合力を一定に維持する機能を備えたステアリング用押圧装置に関し、この装置によれば、ラックアンドピニオンステアリングシステムのケーシングにピニオンを容易に取り付けることができる。また特に、本発明は、ラックとピニオンとの間のクリアランス(隙間)を自動的に補償する(埋める)システムを備えた偏心押圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックアンドピニオンステアリングシステムを備えた自動車において、ステアリングピニオンは通常、ステアリングコラムに回転可能に接続されていて、車両のステアリングホイールによって、しばしば液圧又は電気的アシストシステムの助けを借りて駆動される。ステアリングピニオンは、ステアリングギアボックスの長手方向にスライド可能に取り付けられたラックに係合している。ラックの両端は、ボックスの外側において2つのタイロッドにそれぞれ連結されており、各タイロッドはそれぞれ車両の左右のホイールに連結されている。このような方法によれば、ステアリングコラムによりピニオンに伝達された一方向又は他方向へのホイールの回転はラックの平行移動に変換されて、この結果、右側ホイール又は左側ホイールはロッドを介してステアリングホイールの回転方向に向けられる。
【0003】
この種のステアリングシステムにおいて、ロッドを介して自動車の前輪に連結されたラックアンドピニオン機構は、自動車の走行路面に依存する負荷荷重や衝撃及び振動の影響を受け易い。ラックに対するロッドの角度に起因してラックに荷重が作用する結果、ラックがピニオンから離間する虞がある。このため、ラックは、押圧装置によって、ピニオンに対して常時、継続的に押し付けられている。該押圧装置は、ラックの歯部をピニオンに対して強固に押圧するために、ラックの背面におけるピニオン領域に弾性力を持って作用する。この種の押圧装置によれば、ラックとピニオンとの噛合い不良が低減される。前記押圧装置はまた、ステアリングにおけるラックの摺動力を制御しながら、ラックのガイド性を向上させることができる。
【0004】
最も一般的な例において、上記押圧装置は押圧部材を備えており、詳しくは、この押圧部材は、ラックの長手方向に垂直な方向に平行移動可能に構成された剛体からなるとともに、端部の最適形状(特に凹形状)によってラックの背面部に弾性手段により押し付けられ、パッドとラックとの間の摩擦係数を低く抑えることができる一般的な摩擦パッドにより形成されている。これらの弾性手段は、螺旋状スプリングによって又は金属又はゴム製の弾性ワッシャによって又はこの種の弾性要素の組合わせによって構成することができる。これらの弾性手段は調整螺子に支持され、この調整螺子は、押圧部材の後退量を調整可能にしながら、押圧部材の移動端を規定する。
【0005】
調整ネジと押圧部材との間における弾性部材の作用によって、ピニオン、ラック、及び摩擦パッドの作動中における摩耗を低減することができる。しかし、この場合、後退量、すなわち、調整ネジによって形成される押圧部材とそのストッパとの間の隙間は、これら3つの要素の摩耗の累積によって増加する。
【0006】
この種の押圧部材の主な欠点及び後退量(減少しない)が増加することによる影響は、自動車が悪路面を走行する際の旋回時(特に全負荷運転時)におけるノイズの発生の可能性や、ギヤ歯とピニオンとの接触領域における曲げモーメントの増加を招く点にある。
【0007】
この押圧装置の他の欠点は、組立てラインにおいて高価な調整を必要とする点にある。押圧装置は、これとは異なる設計によっても公知である。この装置は、所謂オフセット押圧装置と呼ばれていて、例えば、特許文献1(US 6247375 B1)、特許文献2(FR2219868)、特許文献3(EP 0770538 A2)、特許文献4(US2008/0190229 A1)に記載されている。この種の装置において、回転パッドは、ラックをピニオンに押し付ける偏心部を有している。この回転パッドは、ラックの長手方向に平行な軸回りに回転可能な状態でケーシング内に取り付けられている。このパッドの内周面は外周面に対して偏心しているため、この偏心した部分は、パッドがケーシング内において回転するときにラックの背面に押し付けられ且つ該背面部をピニオンのギヤ歯側に向かって押圧することでそれらの係合を維持する手段を構成する。
【0008】
偏心押圧装置の具体的は、例えば、出願人により2008年11月6日に提出され、2010年5月7日に公報発行されたフランス特許出願に係る特許文献5(FR 2938034)に記載されている。このものでは、回転パッドは、支持ハウジングに回転可能に取り付けられ、延いては、ステアリングギヤボックスに対して、ラックの歯部形成面と平行な方向及びラックの軸線に直交する方向に摺動可能に取り付けられている。摺動ハウジングの壁面と回転パッドとの間には、上記パッドを回転方向の所定の向きに押圧するために圧縮スプリングのような弾性要素が配設されている。摺動ハウジングと静止部材(例えばステアリングギアボックス)との間には、Oリングのような他の弾性要素が配設されている。上記パッドは径方向アームを有しており、このアーム上に圧縮スプリングの力が作用するようになっている。パッドは、曲面状の角部を有しており、これにより、装置のコンパクト化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6247375号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第2219868号明細書
【特許文献3】欧州特許第0770538号明細書
【特許文献4】米国特許第20080190229号明細書
【特許文献5】仏国特許発明第2219868号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、一般的に、現在の偏心押圧装置は、ギヤ歯のクリアランスを吸収するための僅かなクリアランスを許容する強固で且つ不可逆のシステムを備えていない。
【0011】
それ故、本発明の目的は、押圧部材の後退を制御することで、クリアランスを自動的に調整する機能を備えた偏心押圧装置を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、内周面が外周面に対して偏心した湾曲形状のパッドを備え、上記パッドは、付勢手段(弾性手段)により回転方向の一側に付勢されているとともに、ラックをステアリングピニオンのギヤ歯部に対して押圧するべく、偏心した内周面を介して該ラックの背面部に押し付けられており、上記パッドはさらに、付勢手段(弾性手段)は、該パッドに固定された径方向アーム上に位置し且つラック歯部に対して平行な平面内で作動することが好ましい)が設けられた支持部材の上に回動可能に取り付けられている、自動車用のラックアンドピニオンステアリングシステムの偏心押圧装置であって、クリアランスを補償するための(埋めるための)機構を備え、上記機構は押圧部材を含み、上記押圧部材は、支持部材に対して回転不能であるものの平行移動可能に連結され、該支持部材又は該支持部材に固定された要素と、該押圧部材との間に配設された圧縮スプリングによって、径方向アームに対して押し付けられている一方、可動ストッパは、支持部材又は該支持部材に固定された上記要素に対して回動可能に取り付けられて、圧縮スプリングに対して同軸をなしており、上記可動ストッパのパッドに近い側の端部は、ギヤ歯を段階状に配置してなり且つ押圧部材に形成された少なくとも一つの突起部と協働する少なくとも一つの歯部形成部を有し、上記可動ストッパの上記端部とは逆側の端部はまた、上記突起部が、歯部形成部を構成するずらし配置されたギヤ歯と継続的に協働することができるように、ねじりスプリングを介して、上記支持部材又は該支持部材に固定された上記要素に連結されているものとした。
【0013】
上記可動ストッパは、ギヤ歯をずらして配置してなる少なくとも2つの歯部形成部を備え、各歯部形成部は、例えば、直径方向において対向配置されてそれぞれが180°の区域を占めており、上記押圧部材は、機構を安定させるべく、これら歯部形成部と協働する突起部を歯部形成部の数と同数だけ有していることが好ましい。
【0014】
上記押圧部材は、径方向において対向配置され且つ軸方向に延びる2つの溝部を有し、上記2つの溝部は、上記押圧部材を平行移動可能に案内し且つ回動不能になるように、支持部材における相対向する面に各溝部に対応して設けられた2つのリブと協働するように構成されていることが好ましい。
【0015】
このように、偏心した押圧部材は、一のギヤ歯から他のずれたギヤ歯に向かう敷居高さに基づいて作動するクリアランス補償機構を備えており、これにより、作動クリアランスが減少する。この機構の構成要素によって、偏心した押圧部材の基本的な動作が実現される。すなわち、押圧部材は、圧縮スプリングによって生じる力をパッドに伝達する部材であり、この圧縮スプリングはまた、ラックをピニオンに接触した状態に維持するための力を発生させるべく、上記押圧部材を圧迫する。
【0016】
通常動作において、2つのクリアランス調整部材間において、上記機構は、押圧部材の複数の突起部が、可動ストッパのギヤ歯に対して接触(当接)するように配置されており、この接触は、ねじりスプリングによって維持される。摩耗した後、圧縮スプリングの作用のもと、クリアランスが所定値を超えると、押圧部材の突起部と、可動ストッパのギヤ歯とはもはや接触しなくなり、ねじりスプリングは、押圧部材の複数の突起部と可動ストッパの歯部形成部のギヤ歯との間に新たな接触が創り出されるまで前記可動ストッパを回転させる。こうして、上記クリアランスはより小さい値まで減少する。
【0017】
この発明に関して、偏心押圧装置の一例を示す添付の図面を参照して以下の説明を読むことで、より一層理解が深まるであろう。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の偏心押圧装置によると、押圧部材の後退量を制御することで、クリアランスを自動的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る偏心押圧装置を備えたパワーステアリングシステムの外観を示す図である。
【図2】図1のII-II線断面図であって、ラックの軸方向に垂直で且つ偏心押圧装置を通る平面で切断した断面図である。
【図3】押圧装置の分解斜視図である。
【図4】押圧装置のクリアランス補償機構を示す分解斜視図である。
【図5】クリアランス補償機構の可動ストッパを示す拡大図である。
【図6】可動ストッパにおける歯部形成部側とは反対側から見た斜視図である。
【図7】クリアランス補償機構のベアリング部材の斜視図である。
【図8】クリアランス補償機構の押圧部材を示す斜視図である。
【図9】クリアランス補償機構の動作例を示す図である。
【図10】クリアランス補償機構の動作例を示す図である。
【図11】図9及び図10と同様の図であって、可動ストッパの歯部形成部に関する変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ステアリングピニオンに作用する補助システムを備えた自動車用のパワーステアリングシステムを示している。ステアリングシステムは、軸線Aに沿って延びるステアリングギアボックス2を有している。ステアリングギアボックス2にスライド可能に取り付けられているのはラック3である。ラック3の端部は、ケーシング2から突出してタイロッド(図示省略)に連結されている。パワーアシストモータ4は、減速ギヤを介して、ラック3(図2参照)の歯部6に係合するステアリングピニオン5に連結されている。符号7は、ステアリングピニオン5に連結される入力シャフトを示し、このピオニオン5には、自動車のステアリングホイールにより駆動されるステアリングコラム(図示省略)が連結される。
【0021】
符号8により差し示さされた押圧装置は、ラック3の歯部6をピニオン5に押圧をするために、ステアリングピニオン5の近くに配設されている。押圧装置8の詳細を図2に示すとともに以下で説明する。
【0022】
押圧装置8はラック3の背面側9、換言すると、ラック3の歯部6の反対側であってピニオン5の反対側に配設されている。この押圧装置8は、ステアリングギアボックス2の対応する部分に収容されている。偏心タイプの押圧装置8は、主要構成要素としてパッド10を有しており、このパッド10は、丸味を帯びた形状を有しており、より詳しくは、角部の形状がアーチ状をなしている。パッド10は、円形の一部である円弧状をなす外周面12に対して偏心して配置された、同じく円弧状をなす内周面11を有している。パッド10の内周面11は、このように偏心配置されていて、ラック3の背面部9を押圧する手段を形成している。
【0023】
パッド10は、支持部材13に取り付けられて該支持部材13によりガイドされ、延いては、パッド10は、ステアリングギアボックス2に取り付けられている。支持部材13の構成は図3に明確に示されている。上記支持部材13は、湾曲した形状を有するクレイドル部14からなり、その上には、パッド10の外周面12が摺動可能に支持されている。サポート13の一端部には、長方形状の突出部15が形成され、該突出部15は、ケーシングに設けられた対応する凹部16に係合している。
【0024】
パッド10は、一部品として示されているが、一方がラック3に対して且つ他方が支持部材13に対して摺動可能に接触する、2以上の別部品で構成するようにしてもよい。支持部材13のクレイドル部14によりパッド10をガイドする方法により、パッド10と支持部材13とを互いに回動可能に結合することができる。
【0025】
パッド10は、クリアランス補償機構18によって発揮される押圧荷重が、パッド10に設けられた径方向アーム18に対して加わることにより、支持部材13に対して回動可能にセットされる。
【0026】
図2及び図4並びに以下の説明においてクリアランス補償機構17の詳細を示す。
【0027】
クリアランス補償機構17は5つの主要部品、すなわち、押圧部材19、圧縮スプリング20、可動ストッパ21、ねじりスプリング22、及びベアリング部材23からなり、これらは互いに同軸に配設されている。
【0028】
ベアリング部材23(図7にのみ示す)は、作動中に該ベアリング部材23と支持部材13との間に相対運動が生じないように、突出部15とは反対側の部分において支持部材13に連結されている。
【0029】
可動ストッパ21は、全体的に円筒状をなしており、その中心部には凹部が形成されている(図5参照)。そして、可動ストッパ21は、ベアリング部材23に対して回動可能に支持され、可動ストッパ21は該ベアリング部材23に嵌合(適合)している。可動ストッパ21は、ベアリング部材23から離間する端部に2つのずらし配置された(階段状の)歯部形成部24を有しており、それぞれが180°の範囲に跨って延びている。各歯部形成部24はそれぞれ連続するギヤ歯25を有している。
【0030】
図6に示すように、可動ストッパ21の歯部形成部24とは反対側の端部には、ねじりスプリング22の一端部を受け入れる収容部26が形成されている。ねじりスプリング22の他端部は、ベアリング部材23(図7参照)に設けられた固定用領域27に受け入れられている。
【0031】
押圧部材19(図8にのみを示す)は、全体として略円筒状をなしている。押圧部材19は、径方向において相対向して配置され且つ軸方向に延びる溝部28を有しており、この溝部28は、上記押圧部材19を回転不能とする一方で平行移動可能に案内するように、支持部材13の表面に形成されたリブ29(図2参照)と協働する。押圧部材19は、パッド10の径方向アーム18に対して押圧される。押圧部材19はまた、径方向において相対向して配置された2つの突起部30を有しており、各突起部30は、歯部形成部24の複数のギヤ歯25のうちの一つと協働するようにそれぞれ設けられている。
【0032】
図示の例に示すように、クリアランス補償機構17を取付けた状態において、圧縮コイル20は可動ストッパ21の外側に嵌め合わされている。圧縮スプリング20の一端部は、ベアリング部材23により支持されている一方、他端部は押圧部材21を圧迫する。ねじりバネ22は、可動ストッパ21の中心凹部に収容されている。このねじりバネ22は、収容部26内において一端部が上記可動ストッパ21に引っ掛けられている一方、他端部が押圧部材23の固定用領域27に固定されている。
【0033】
図9に示すように、通常作動中は、押圧部材19を構成する各突起部30が、可動ストッパ18の歯部形成部24の各ギヤ歯25の歯面に当接(接触)するように構成され、この当接は、図の矢印F1の向きに作用するねじりスプリング22によって維持される。圧縮スプリング20からの押圧力は、軸方向における矢印F2の向きに作用して押圧部材19に付加される。この押圧部材19は、ラック3とステアリングピニオン5との接触が維持されるように、上記押圧力をパッド10に伝達する。この作動状態では、クリアランスJは、最小クリアランス値J1と最大クリアランス値J2との間の値に維持される。
【0034】
相対的に大きくなった摩耗に起因してクリアランスJが最大クリアランス値J2を上回ったとき、押圧部材19の突起部30と、可動ストッパ21のギヤ歯25との間の接触はもはやなくなる(図10参照)。その時、ねじりスプリング22は、押圧部材19の各突起部30と、可動ストッパ21の歯部形成部24におけるギヤ歯25との間に新たな接触が生じるまで、可動ストッパ21を回転させる。このようにして、クリアランスJは、最小限のクリアランス値J1まで減少する。そして、クリアランス補償機構17は、図9に示す状態に戻って、次に続くより高い位置にある歯部形成部24のギヤ歯25の接触を生み出す。
【0035】
図9及び図10に示すように、少なくとも一つのずらし配置された歯部形成部24のギヤ歯25は、全体的に三角形状を呈している。
【0036】
このような構成により、可動ストッパ21が回転する間、パッド10の理想位置からの下方への僅かな変位が許容されて、これにより、ラック3とステアリングピニオン5との間に、両者の噛み合い不良を吸収するためのクリアランスを確保することができる。
【0037】
図11は、歯部形成部24のギヤ歯25の変形例を示す図である。三角形状の外観を維持するために、ここではギヤ歯25は、凹凸及び/又はノッチ31を有しており、ノッチ31は、理想位置において可動ストッパ21を安定化させるべく、突起部30を埋込み可能に形成されている。
【0038】
最後に、図示しない方法において、支持部材13は、ケーシングの対応する部分に、ノイズ及び振動を吸収可能な1つ又は2つ以上のシールを介して取り付けられていてもよい。
【0039】
添付の請求の範囲において定義したように、可動ストッパの歯部形成部の詳細の変更は、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0040】
同様の構成であれば、クリアランス補償機構における部品の位置を逆にすることもできる。例えば、可動ストッパの外側に配設されるより大きな直径のねじりスプリングや、可動ストッパの内側に配設されるより小径の圧縮スプリング、又は、押圧部材にずらし配置された歯部形成部を設けて可動ストッパに突起部を設けるようにしてもよい。
【0041】
このタイプの押圧装置は、手動ステアリング、油圧補助式のパワーアシストステアリング等、全てのタイプのステアリングシステムに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、自動車用のラックアンドピニオンステアリングのクリアランスを補償する押圧装置に有用であり、特に偏心押圧装置に有用である。
【符号の説明】
【0043】
3 ラック
5 ステアリングピニオン
8 偏心押圧装置
9 背面部
10 パッド
11 内周面
12 外周面
13 支持部材
17 機構
18 径方向アーム
19 押圧部材
20 圧縮スプリング
21 可動ストッパ
22 スプリング
23 ベアリング部材(要素)
24 歯部形成部
25 ギヤ歯
28 溝部
29 リブ
30 突起部
31 ノッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面(11)が外周面(12)に対して偏心した湾曲形状のパッド(10)を備え、上記パッド(10)は、付勢手段により回転方向の一側に付勢されているとともに、ラック(3)をステアリングピニオン(5)のギヤ歯部に対して押圧するべく、偏心した内周面(11)を介して該ラック(3)の背面部(9)に押し付けられており、上記パッド(10)はさらに、付勢手段が設けられた支持部材(13)の上に回動可能に取り付けられている、自動車用のラックアンドピニオンステアリングシステムの偏心押圧装置(8)であって、
クリアランスを補償するための機構(17)を備え、
上記機構(17)は押圧部材(19)を含み、
上記押圧部材(19)は、支持部材(13)に対して回転不能であるものの平行移動可能に連結され、該支持部材(13)又は該支持部材(13)に固定された要素(23)と、該押圧部材(19)との間に配設された圧縮スプリング(20)によって、径方向アーム(18)に対して押し付けられている一方、
可動ストッパ(21)は、支持部材(13)又は該支持部材(13)に固定された上記要素(23)に対して回動可能に取り付けられて、圧縮スプリング(20)に対して同軸をなしており、
上記可動ストッパ(21)のパッド(10)に近い側の端部は、ギヤ歯(25)を段階状に配置してなり且つ押圧部材(19)に形成された少なくとも一つの突起部(30)と協働する少なくとも一つの歯部形成部(24)を有し、
上記可動ストッパ(21)の上記端部とは逆側の端部はまた、突起部(30)が、歯部形成部(24)を構成するずらし配置されたギヤ歯(25)と継続的に協働することができるように、ねじりスプリング(22)を介して、上記支持部材(13)又は該支持部材(13)に固定された上記要素(23)に連結されていることを特徴とする偏心押圧装置。
【請求項2】
請求項1記載の偏心押圧装置において、
上記可動ストッパ(21)は、ギヤ歯(25)をずらして配置してなる少なくとも2つの歯部形成部(24)を備え、
上記押圧部材(19)は、機構を安定させるべく、これら歯部形成部(24)と協働する突起部(30)を該歯部形成部(24)の数と同数だけ有していることを特徴とする偏心押圧装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の偏心押圧装置において、
上記押圧部材(19)は、径方向において対向配置され且つ軸方向に延びる2つの溝部(28)を有し、
上記2つの溝部(28)は、上記押圧部材(19)を平行移動可能に案内し且つ回動不能になるように、支持部材(13)における相対向する面に各溝部(28)に対応して設けられた2つのリブ(29)と協働するように構成されていることを特徴とする偏心押圧装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の偏心押圧装置において、
上記圧縮スプリング(20)は、上記可動ストッパ(21)の外側に配設されているとともに、上記支持部材(13)に固定されたベアリング部材(23)に支持され、
上記可動ストッパ(21)は、ベアリング部材(23)に対して回転可能に取り付けられていることを特徴とする偏心押圧装置。
【請求項5】
請求項4記載の偏心押圧装置において、
上記可動ストッパ(21)は、その中心部において窪んでいて、この中央の凹所にねじりスプリング(22)が収容されており、
上記ねじりスプリング(22)は、その一端部が上記可動ストッパ(21)に固定され、且つ、他端部が上記ベアリング部材(23)に固定されていることを特徴とする偏心押圧装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の偏心押圧装置において、
少なくとも一つの歯部形成部(24)のずらし配置された上記ギヤ歯(25)は、三角形状をなしていることを特徴とする偏心押圧装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の偏心押圧装置において、
歯部形成部(24)を構成するずらし配置されたギヤ歯(25)は、対応する突起部(30)を埋込み可能な凹凸及び/又はノッチ(31)を有していることを特徴とする偏心押圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−508638(P2013−508638A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534747(P2012−534747)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052233
【国際公開番号】WO2011/048328
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(511110625)
【Fターム(参考)】