説明

自動車用の衝撃吸収支持装置

この自動車用の衝撃吸収支持装置は、支持装置(1)の第1端部(4)に設けられた底部(2)と、支持装置(1)の第2端部(5)に設けられた弾性変形可能な緩衝装置(3)と、底部(2)から伸び、緩衝装置(3)を保持する支持部材(6)を有する。本発明の自動車用の衝撃吸収支持装置は、支持部材(6)は、弾性圧縮部材(7)と、所定の最大長さ(9)よりも小さい可変の長さのケース(8)とを有し、ケース(8)は、弾性圧縮部材(7)をプレストレス状態に維持し、緩衝装置(3)と弾性圧縮部材(7)は、それぞれ第1剛性と第2剛性を有し、第1剛性は、第2剛性よりも大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、衝撃吸収支持装置に関する。
特に本発明は、支持装置の第1端部に設けられた底部と、上記支持装置の第2端部に設けられた、弾性的に変形可能な緩衝装置と、上記底部から伸び、上記緩衝装置を保持する支持部材を有する、自動車用の衝撃吸収支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車と歩行者との正面衝突の際には、一般に歩行者の頭部が自動車のボディに衝突するようになり、主にフロントフード、窓の支柱またはフロントガラスと接触する。
このことが、多くの自動車製造者が、自動車と衝突した歩行者が受ける衝撃を緩和するための様々な対策を開発してきた理由であり、この衝撃は、例えば衝撃吸収支持装置によって緩和することができる。
【0003】
このような衝撃の緩和を可能にする、「技術分野」で定義したような支持装置が、例えばフォルクスワーゲン社出願の特許文献EP−1 104 726 A2に記載されている。
【0004】
図5−A及び5−Bは、先行技術文献に開示されたような、歩行者の衝撃を吸収するための支持装置を示す。衝突前の位置が図5−Aに示され、衝突後の、支持装置の全体が変形した後の位置が図5−Bに示されている。
【0005】
図5−Aの支持装置1は、自動車のフード15の上に設けられ、それ自身はボディ16の固定部材に取り付けられた塑性変形可能な構造18に対向して支持されるようになる。
【0006】
緩衝装置は円筒形をなし、その外周上に一連の溝17を有する。支持部材6は、内面形状が緩衝装置の円筒形の外面形状と合致する管状部を有する。溝17に相補的な形状の肩が溝の中に位置づけされ、緩衝装置3の支持部材6に対する移動のストッパーを構成する。
【0007】
衝突の瞬間に、フードはボディの部材の方向へ落ち込む傾向がある。ボディの部材は、弾性変形する緩衝装置3へのフードの落ち込み方向と反対向きの力を相関的にもたらす。フードに作用する力が極めて大きいときには、緩衝装置3は完全に変形し、溝17が変形して緩衝装置3の移動ストッパーは圧壊する。溝17の変形は、緩衝装置3の支持部材6に対する滑動をもたらす。
【0008】
緩衝装置と支持部材の間のこの組み立ての変形可能性は、歩行者の衝撃による応力の一部を吸収することを可能にする。
【0009】
同様に、歩行者の衝突の際に、変形して圧壊する6面体形の形状を有する塑性変形可能な構造18は、フード15のボディ16の固定部材に対する移動時に、衝撃を吸収することができる。
【0010】
支持部材上におけるこの支持装置のセットは、元に戻すことが困難な変形可能なセットであり、このことは、衝突の度毎に支持装置の交換を余儀なくする。さらに、衝突の際に、変形可能な支持装置のセットは不意に圧壊し、このことは、支持装置によってフードに対して作用される、落ち込みに対する抗力の不連続性をもたらす。最後に、一旦変形すると、塑性変形可能な構造18は戻ることができず、このことは、支持装置の機構の少なくとも一部の交換を強要し、修理を複雑にする。
【0011】
【特許文献1】EP−1 104 726 A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このため、本発明は、フードを通常の閉鎖位置に維持する弾性支持装置の機能と、歩行者の衝突の場合の衝撃吸収機能とを可能にする、自動車用の衝撃吸収支持装置を提供することを目的とする。支持装置によってフードに対して作用される抗力は、フードの落ち込み移動の間、連続して増大するべきである。衝撃吸収後、支持装置はその最初の位置へ戻ることができ、衝撃吸収機能の反復性を可能にするべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の自動車用の衝撃吸収支持装置は、一方では上記の「技術分野」に記載した一般的な定義に合致し、特に、上記支持部材は、弾性圧縮部材と、所定の最大長さよりも小さい可変の長さのケースとを有し、上記ケースは、上記弾性圧縮部材をプレストレス状態に維持し、上記緩衝装置と上記弾性圧縮部材は、それぞれ第1剛性と第2剛性を有し、上記第1剛性は、上記第2剛性よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
上記支持装置は、上記支持装置の圧縮の大きさに応じて、閉鎖形態と、衝撃吸収形態を選択的にとる。閉鎖形態から衝撃吸収形態への移行は、上記支持装置に対して作用される圧縮力が、上記弾性圧縮部材のプレストレス力を超えるようになるときの、上記支持装置の圧縮運動の際に行われる。
【0015】
このようにして、上記支持装置が閉鎖形態にあるときには、上記支持装置に加えられる圧縮力は、プレストレス状態の上記弾性圧縮部材を圧縮するのに不十分であり、上記緩衝装置のみが弾性変形される。この閉鎖形態においては、上記支持装置は、自動車の走行の際やフードの閉鎖のときに一般的に発生する振動と弱い衝撃を吸収することを可能にする。
【0016】
大きな力が上記支持装置に加えられる衝突の際には、上記支持装置に加えられる圧縮力は、上記弾性圧縮部材のプレストレス力を超えるようになる。このとき、上記弾性圧縮部材は、長さが可変の上記ケースと同時に弾性変形し、衝撃エネルギの一部の吸収を可能にする。
【0017】
本発明の上記支持装置によれば、閉鎖形態から衝撃吸収形態への上記支持装置の移行の際を含めて、上記支持装置の圧縮抗力は連続である。
【0018】
上記緩衝装置の第1剛性は、上記弾性圧縮部材の第2剛性よりも大きい。このため、閉鎖形態における上記衝撃吸収支持装置の剛性は、衝撃吸収形態における剛性よりも大きい。
【0019】
特有の実施の形態においては、上記弾性圧縮部材は、例えばコイルバネである、バネを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のその他の特徴と利点は、参考として非限定手的に添付図面を参照する、以下に記載する説明によって明確になるであろう。これらの図において:
図1は、閉鎖形態における、本発明による衝撃吸収支持装置の断面を表し;
図2は、衝撃吸収形態における、本発明による衝撃吸収支持装置の断面を表し;
図3は、本発明による衝撃吸収支持装置が装着される自動車の一般的な図を表し;
図4は、支持装置の圧縮の大きさの関数としての力の変化の典型的な曲線を表し;
図5−A、5−Bは、先行技術の衝撃吸収支持装置を表す。
【0021】
先に述べたように、本発明は、自動車用の衝撃吸収支持装置に関する。
図1、2に示された衝撃吸収支持装置は、支持装置1の第1端部4に設けられた底部2と、支持装置1の第2端部5に設けられた、弾性的に変形可能な緩衝装置3と、底部2から伸び、緩衝装置3を保持する支持部材6を有する。弾性的に変形可能な緩衝装置3は、例えば弾性ゴムであるエラストマ材料のような、柔軟で弾性的な材料から構成される。この緩衝装置3は、第1剛性K1を有し、また約40N/mmの硬度を有する。
【0022】
支持部材6は、プレストレス状態のバネのような弾性圧縮部材7を保持する、長さが可変のケース8を有する。伸縮式で、圧縮可能なケース8は、一方が他方の中で滑動する、金属の第1チューブ10と第2チューブ11から形成される。第2チューブ11は、その内径が第2チューブ11の外径と略等しくて僅かに大きい第1チューブ10の中に設けられる。これらの2つのチューブは、劣化と組立体の固着のリスクを回避するために、密封状態に組み立てることが望ましい。このため、2つのチューブの間の連接箇所に、耐水継ぎ手と耐塵継ぎ手の少なくとも一方を使用することができる。
【0023】
第1チューブ10の底部2側の第1端部は、支持装置1の底部2を形成する円板によって塞がれる。第1チューブ10の第2端部は、ボディ16の部材に支持されるための、肩19を有する。
【0024】
また、第1チューブ10は、支持部材6の第1チューブを、それが支持されて組み合わされるべきボディ16の部材に対して位置決めして締め付けて、クリップ止めによって固定するための、クリップ装置20を有する。このクリップ装置は、第1チューブ10の肩19に近接した部位に形成され、第1チューブ10の外側へ伸びる弾性の爪を有する。
【0025】
支持装置1の第1チューブ10は、肩19がボディ16の部材の第1サイドに支持され、クリップ装置20の爪がボディ16の部材の第2サイドに支持されるように、ボディの部材に作られた開口部へ挿入される。
【0026】
このようにして、第1チューブ10は、一旦ボディの部材上に組みつけられると、爪の弾性的な締め付けによって定位置に維持され、一方の向きへは肩19によって、他方の向きへはクリップ装置20の爪によって、移動が止められる。
【0027】
第2チューブ11は、支持装置1の第2端部5の側の端部の1つにおいて、緩衝装置3を支持する。弾性的な緩衝装置3は、第1剛性K1を有する。この緩衝装置3は、第2チューブ11に対して中心決めされた円錐形部22と、第2チューブ11の内部の肩に支持されるようになる平面形部から形成され、このようにして緩衝装置3の第2チューブ11に対する移動が止められている。弾性的な緩衝装置3は、第2チューブ11の中へ部分的に挿入されて組み込まれており、このようにして緩衝装置3の一部は、第2チューブ11の外へはみ出している。緩衝装置3の、第2チューブ11の外へはみ出している部分は、支持装置1に対する外力の作用を受けて圧縮されて変形するのに適した第1剛性K1を有する。
【0028】
これらの2つのチューブの間の相対的な回転を回避し、また2つのチューブの間の並進運動の大きさを制限するために、第1チューブ10に対する第2チューブ11の案内装置を用いることが望ましい。この案内装置は、一般に、第1チューブ10と第2チューブ11との2つのチューブの少なくとも一方に形成され、他方のチューブの壁に設けられた細長い開口部の中を滑動するようになる、少なくとも1つの爪12を有する。図1においては、第2チューブ11が、第1チューブ10に設けられた細長い開口部13の中を滑動する爪12を有する。細長い開口部13は、支持装置1の圧縮軸21に平行に伸ばされる。
【0029】
支持装置1が閉鎖形態にあるときには、ケース8は最大限に伸ばされており、爪12は、ケース8の長さを制限するために、細長い開口部13の一端に支持されるようになる。そのとき、第1チューブ10の第2チューブ11に相対的な滑動による引き離しは、爪12が細長い開口部13の中で支持されることによって、止められる。
【0030】
弾性圧縮部材7が、第1チューブ10と第2チューブ11の中に設けられ、第1チューブ10の内面の少なくとも一部分と第2チューブ11の内面の少なくとも一部分とによって、それぞれ支持されるようになり、このようにして、圧縮軸21に沿ってこれらのチューブを互いに遠ざける力を作用させる。
【0031】
図3は、本発明による衝撃吸収支持装置1を使用する自動車を表す。
この自動車は、自動車のボディ16の部材に対して可動なフード15を有する。
ボディ16の部材に取り付けられる支持装置1は、フード15とボディ16の部材との間に設けられる。
フードの閉鎖位置においては、フード15は、緩衝装置3に支持されるようになり、緩衝装置3は、激しい衝撃を受けていないときには、部分的に変形されている。
【0032】
まだ衝撃を受けていないときに、支持装置の緩衝装置3に対してフードによって加えられる圧縮力は、例えば650Nである弾性圧縮部材7のプレストレス力より小さい。従って、衝撃を受けていなくて、支持装置1に加えられる力がプレストレス力より小さいときには、第1剛性K1を有する緩衝装置3のみが衝撃吸収作用を可能にしている。
【0033】
例えば歩行者の衝突のような激しい衝撃を受けたときには、支持装置の圧縮力は弾性圧縮部材7のプレストレス力より大きくなる。そのとき弾性圧縮部材7は圧縮され、長さが可変のケース8の相関的な圧縮がもたらされる。従って、ケース8の長さは、支持装置1上と、第2剛性K2を有する弾性圧縮部材7上に加えられる圧縮力に比例して減少する。
【0034】
弾性圧縮部材7の第2剛性K2は、緩衝装置3の第1剛性K1よりも小さいので、支持装置がプレストレス力を超えて圧縮されるときには、支持装置全体の剛性は第1剛性K1以下である。
【0035】
従って、支持装置は、支持装置に加えられる圧縮力に応じて段階付けられた衝撃吸収作用を果たすことができる。この段階付けられた衝撃吸収作用は、支持装置が、自動車の走行中のような小さな圧縮力を受けるか、歩行者の衝突の際のような、弾性圧縮部材7のプレストレス力を超える圧縮力を受けるかに応じて、異なる剛性を有する。
【0036】
この段階付けられた衝撃吸収作用は、図4の曲線によって表されている。
この曲線は、支持装置の圧縮抗力の変化を、mm単位で表す支持装置の圧縮変形の大きさの関数として、ニュートン(Newton)単位で表す。
ゼロとM1mmとの間で圧縮される支持装置の圧縮変形の大きさに対しては、圧縮抗力は、略第1剛性K1に等しい一定の傾斜の、強い増加率の曲線に沿って増大する。
圧縮変形の大きさがM1mmを超えると、圧縮抗力の曲線の傾斜は小さくなり、この傾斜は第2剛性K2よりも概ね大きくて第2剛性K2に近い。
従って、この曲線は、強い剛性K1による弱い強さの力の緩衝と、弱い剛性K2による、歩行者の衝突の際のような強い強さの力の緩衝との、支持装置の主要な2つの作用を示している。
【0037】
支持装置の衝撃吸収及びケース8の圧縮段階の後には、支持装置は、弾性圧縮部材7を介して弾性エネルギを蓄えている。従って、支持装置1は、この弾性エネルギの効果の下に、ケース8の圧縮運動24と反対向きの弛緩運動23に従う延伸によって、その最初の形態と長さを取り戻す傾向を有する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持装置(1)の第1端部(4)に設けられた底部(2)と、上記支持装置(1)の第2端部(5)に設けられた弾性変形可能な緩衝装置(3)と、上記底部(2)から伸び、上記緩衝装置(3)を保持する支持部材(6)を有する、自動車用の衝撃吸収支持装置において、上記支持部材(6)は、弾性圧縮部材(7)と、所定の最大長さ(9)よりも小さい可変の長さのケース(8)とを有し、上記ケース(8)は、上記弾性圧縮部材(7)をプレストレス状態に維持し、上記緩衝装置(3)と上記弾性圧縮部材(7)は、それぞれ第1剛性と第2剛性を有し、上記第1剛性は、上記第2剛性よりも大きいことを特徴とする、自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項2】
上記弾性圧縮部材(7)は、例えばコイルバネである、バネを含むことを特徴とする、請求項1に記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項3】
上記ケース(8)は、伸縮式または圧縮可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項4】
上記ケース(8)は、一方が他方の中を滑動可能な、第1チューブ(10)と第2チューブ(11)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項5】
上記第2チューブ(11)は、上記第1チューブ(10)の内部に設けられ、上記第1チューブ(10)の中を滑動することを特徴とする、請求項4に記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項6】
上記第1チューブ(10)と上記第2チューブ(11)との2つのチューブの少なくとも1つ(11)は、他方のチューブ(10)に設けられた細長い開口部(13)の中を滑動する爪(12)を有することを特徴とする、請求項4または5に記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項7】
上記爪(12)は、上記第1チューブ(10)の上記第2チューブ(11)に相対的な滑動の大きさを制限するように、上記細長い開口部(13)の端部によって縦方向に支持されるようになることを特徴とする、請求項6に記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項8】
上記支持部材(6)は、上記支持部材(6)を、上記支持装置を支持する支持にクリップ止めによって固定する手段を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項9】
上記緩衝装置(3)は、少なくとも部分的に、柔軟なエラストマ材料から構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項10】
上記ケースは金属製であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載の自動車用の衝撃吸収支持装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の自動車用の衝撃吸収支持装置の、自動車のフード(15)に対する歩行者の衝撃の吸収への適用において、上記フード(15)は上記フードの閉鎖位置の両側へ可動であり、上記支持装置(1)は上記フード(15)とボディ(16)の部材との間に設けられ、上記緩衝装置(3)は衝撃を受けていないときに、上記フードの閉鎖位置において、部分的に変形されていることを特徴とする、自動車用の衝撃吸収支持装置の、自動車のフードに対する歩行者の衝撃の吸収への適用。

【公表番号】特表2006−520717(P2006−520717A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505734(P2006−505734)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000653
【国際公開番号】WO2004/083009
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】