説明

自動車用サイレンサー及びその製造方法

【課題】車室内の騒音に対する吸音性を、軽量化を確保しつつ、良好に維持するようにした自動車用サイレンサー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】前側フィルム層50aは、前側融着フィルム51と、後側融着フィルム53と、当該前後両側融着フィルム51、53の間に融着されるバリアフィルム52とからなるもので、前側融着層53は、前側層40の中央右側中間部位41に融着されている。後側フィルム層50bは、前側融着フィルム54と、後側融着フィルム56と、当該前側融着フィルム54及び後側融着フィルム56の間に融着されるバリアフィルム55とでもって、平膜部50c及び空気を内包する複数の円筒部50dとを有するように構成されており、後側フィルム56のうち各円筒部50dの頂部に対する対応部位にて、後側層60の中央右側中間部位61に融着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室内に伝播する騒音や車室内で発生する騒音等を低減するに適した自動車用サイレンサー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車用サイレンサーとしては、下記特許文献1に記載された超軽量な防音材が提案されている。この防音材は、吸音層に非通気性共振層を積層してなる2層構造でもって構成されている。
【0003】
このように構成した防音材は、車両のエンジンルームと車室とを隔離するダッシュパネルに沿い、ダッシュサイレンサーとして配設されている。ここで、当該ダッシュサイレンサーにおいては、吸音層は、通気性を有するように、例えば、熱可塑性フェルトで形成されており、この吸音層は、エンジンルーム側に位置するように配設されている。一方、非通気性共振層は、非通気性を有するように、例えば、オレフィン系樹脂フィルムにより形成されており、当該非通気性共振層は、車室内側に位置するように配設されている。
【0004】
しかして、このように構成したダッシュサイレンサーにおいては、吸音層が、その通気性により、主として、エンジンルームから伝搬される騒音を吸音する。一方、非通気性共振層は、その非通気性のもとに、主として、車室内に生ずる騒音を遮音するとともに吸音層との間の共振により、車室内の騒音を吸音する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3498085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように構成したダッシュサイレンサーにおいては、非通気性共振層は、上述のごとく、フィルムであることから、当該非通気性共振層は、熱可塑性フェルトからなる吸音層に比べて、かなり薄く形成されている。
【0007】
従って、ダッシュサイレンサーが、その板厚方向において凹凸形状を有するように成形される場合、非通気性共振層ではなく、必然的に、吸音層が、その板厚方向において凹凸形状を有するように成形されることとなる。
【0008】
このため、ダッシュサイレンサーのうち板厚を厚くしたい部位は、熱可塑性フェルトの重量を増加する必要がある。しかしながら、このように熱可塑性フェルトの重量を増加した場合、吸音性を良好に確保し得たとしても、ダッシュサイレンサーとしての重量の増加を招く。このことは、ダッシュサイレンサーの軽量化の要請に反することになる。
【0009】
そこで、本発明は、このようなことに対処するため、少なくとも1つの気泡部を内包するフィルム積層構成を有効に活用して、車室内の騒音に対する吸音性を、軽量化を確保しつつ、良好に維持するようにした自動車用サイレンサー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る自動車用サイレンサーは、請求項1の記載によれば、
【0011】
多孔質材料により形成してなる多孔質層(60)と、当該多孔質層の少なくとも一部位(61)に積層されるフィルム積層体(70、80)とを備えて、
【0012】
当該フィルム積層体は、
【0013】
熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂により形成してなる第1バリアフィルム(71、81)と、当該第1バリアフィルムに積層されてこの第1バリアフィルムに上記融点よりも低い温度にて融着した上記熱可塑性樹脂からなる第1融着フィルム(72、82)とを有する第1フィルム層(70a、80a)と、
【0014】
上記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂により形成してなる第2バリアフィルムであってその外周縁部にて上記第1融着フィルムの外周縁部に上記第1バリアフィルムとは反対側から上記融点よりも低い温度にて融着してなる第2バリアフィルム(73,83)と、この第2バリアフィルムに積層されて当該第2バリアフィルムに上記融点よりも低い温度にて融着した上記熱可塑性樹脂からなる第2融着フィルム(74、84)とを有する第2フィルム層(70b、80b)とを具備しており、
【0015】
当該第2フィルム層は、
【0016】
上記第2バリアフィルムの上記外周縁部の内周側部位及びこれに対する上記第2融着フィルムの対応融着部位の双方の少なくとも各一部を、上記第1融着フィルムに向けて開口するように当該第1融着フィルムとは離れる方向に突出させてなる少なくとも1つの筒部(70d、80d)と、
【0017】
上記第2バリアフィルムの上記内周側部位及び上記第2融着フィルムの上記対応融着部位の双方のうち上記少なくとも1つの筒部以外の各部位からなる平膜部(70c、80c)とを有して、
【0018】
上記少なくとも1つの筒部は、独自に或いは前記平膜部の少なくとも一部位と共に、上記第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する気泡部として形成されており、
【0019】
上記多孔質層は、その上記少なくとも一部位にて、上記少なくとも1つの筒部の頂部に対する上記第2融着フィルムの対応部に前記融点よりも低い温度にて融着されている。
【0020】
このように、当該サイレンサーは、多孔質層と、上記第1融着フィルムとの間にて独自に或いは平膜部の少なくとも一部位と共に、気泡部として形成してなる少なくとも1つの筒部を有するフィルム積層体とでもって構成されている。ここで、多孔質層の少なくとも一部位が、サイレンサーの厚さ増大部位であれば、フィルム積層体が、筒部の変形を招くことなく、筒部にて空気を内包して筒状に維持されている。このため、多孔質層の少なくとも一部位の厚さが適正に確保され得る。
【0021】
このように、多孔質層の少なくとも一部位の厚さは、多孔質層の形成材料を増大させるのではなく、フィルム積層体の筒部の高さでもって確保されているので、当該少なくとも一部位の重量が、フィルム積層体によって増大されることがない。
【0022】
また、多孔質層は、多孔質材料からなるため、良好な通気性のもとに良好な吸音性を発揮し得る。さらに、フィルム積層体は、非通気性を有するフィルムでもって構成されているが、当該フィルム積層体は、そのフィルム構成のもとに、騒音に対し共振現象を発揮することで、吸音性を確保し得る。その結果、サイレンサーは、軽量であることは勿論のこと、良好な吸音性を発揮し得る。
【0023】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の自動車用サイレンサーにおいて、
【0024】
上記平膜部は、上記第2バリアフィルムの上記内周側部位の全体でもって、上記第1融着フィルムの上記内周側部位に対する対応部位に上記融点よりも低い温度にて融着されており、
【0025】
上記少なくとも1つの筒部は、上記平膜部の複数の部位からそれぞれ上記第1融着フィルムに向けて開口するように当該第1融着フィルムとは離れる方向に独立気泡部として突出する複数の筒部であることを特徴とする。
【0026】
このように、少なくとも1つの筒部が、それぞれ独立気泡部である複数の筒部であっても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0027】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1に記載の自動車用サイレンサーにおいて、
【0028】
上記少なくとも1つの筒部は、上記平膜部の少なくとも一部位と共に、上記第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する少なくとも1つの連通気泡部として形成されていることを特徴とする。
【0029】
このように、少なくとも1つの筒部は、上記平膜部の少なくとも一部位と共に、上記第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する少なくとも1つの連通気泡部として形成されていても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0030】
また、本発明に係る自動車用サイレンサーは、請求項4の記載によれば、
【0031】
多孔質材料により形成してなる多孔質層(40)と、当該多孔質層の少なくとも一部位(41)に積層されるフィルム積層体(70)とを備えて、
【0032】
当該フィルム積層体は、
【0033】
熱可塑性樹脂により形成してなる第1融着フィルム(72a)と、この第1融着フィルムに積層されて当該第1融着フィルムに上記融点よりも低い温度にて融着した上記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂からなる第1バリアフィルム(71a)とを有する第1フィルム層(70a)と、
【0034】
上記熱可塑性樹脂により形成してなる第2融着フィルムであってその外周縁部にて上記第1バリアフィルムの外周縁部に上記融点よりも低い温度にて融着してなる第2融着フィルム(74a)と、この第2融着フィルムに積層されて当該第2融着フィルムに上記融点よりも低い温度にて融着した上記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂からなる第2バリアフィルム(73a)とを有する第2フィルム層(70b)とを具備しており、
【0035】
当該第2フィルム層は、
【0036】
上記第2融着フィルムの上記外周縁部の内周側部位及びこれに対する上記第2バリアフィルムの対応融着部位の双方の少なくとも各一部を、上記第1バリアフィルムに向けて開口するように当該第1バリアフィルムとは離れる方向に突出させてなる少なくとも1つの筒部(70d)と、
【0037】
上記第2融着フィルムの上記内周側部位及び上記第2バリアフィルムの上記対応融着部位の双方のうち上記少なくとも1つの筒部以外の各部位からなる平膜部(70c)とを有して、
【0038】
上記少なくとも1つの筒部は、独自に或いは上記平膜部の少なくとも一部位と共に、上記第1バリアフィルムとの間にて、空気を内包する気泡部として形成されており、
【0039】
上記多孔質層は、その上記少なくとも一部位にて、上記第1フィルム層の上記第1融着フィルムに上記融点よりも低い温度にて融着されている。
【0040】
このように、請求項1に記載の発明とは異なり、第1フィルム層が、その第1融着フィルムにて、上記多孔質層の上記少なくとも一部位と融着されていても、フィルム積層体が、上記第1バリアフィルムとの間にて独自に或いは平膜部の少なくとも一部位と共に、気泡部として形成してなる少なくとも1つの筒部を有することにおいて変わりがなく、その結果、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0041】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項4に記載の自動車用サイレンサーにおいて、
【0042】
上記平膜部は、上記第2融着フィルムの上記内周側部位の全体でもって、上記第1バリアフィルムの上記内周側部位に対する対応部位に前記融点よりも低い温度にて融着されており、
【0043】
上記少なくとも1つの筒部は、上記平膜部の複数の部位からそれぞれ上記第1バリアフィルムに向けて開口するように当該第1バリアフィルムとは離れる方向に独立気泡部として突出する複数の筒部であることを特徴とする。
【0044】
このように、少なくとも1つの筒部が、それぞれ独立気泡部である複数の筒部であっても、請求項4に記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0045】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項4に記載の自動車用サイレンサーにおいて、
【0046】
上記少なくとも1つの筒部は、上記平膜部の少なくとも一部位と共に、上記第1バリアフィルムとの間にて、空気を内包する少なくとも1つの連通気泡部として形成されていることを特徴とする。
【0047】
このように、少なくとも1つの筒部は、上記平膜部の少なくとも一部位と共に、上記第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する少なくとも1つの連通気泡部として形成されていても、請求項4に記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0048】
また、本発明に係る自動車用サイレンサーは、請求項7の記載によれば、
【0049】
多孔質材料により形成してなる両多孔質層(40、60)と、当該両多孔質層の少なくとも各対向部位(41、61)の間に積層されるフィルム積層体(50、90)とを備えて、
【0050】
当該フィルム積層体は、
【0051】
熱可塑性樹脂により形成してなる両第1融着フィルム(51、53、91、93)と、上記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂により形成されて上記両第1融着フィルムの間に上記融点よりも低い温度にて融着してなる第1バリアフィルム(52、92)とを有する第1フィルム層(50a、90a)と、
【0052】
上記熱可塑性樹脂により形成してなる両第2融着フィルム(54、56、94、96)の一方の第2融着フィルムであってその外周縁部にて上記両第1融着フィルムの一方の第1融着フィルム(53、93)の外周縁部に上記融点よりも低い温度にて融着してなる一方の第2融着フィルム(54、94)と、この一方の第2融着フィルムに積層されて当該一方の第2融着フィルムに上記融点よりも低い温度にて融着した上記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂からなる第2バリアフィルム(55、95)と、この第2バリアフィルムに積層されて当該第2バリアフィルムに上記融点よりも低い温度にて融着した他方の第2融着フィルム(56、96)とを有する第2フィルム層(50b、90b)とを具備しており、
【0053】
当該第2フィルム層は、上記一方の第2融着フィルム(54、94)の上記外周縁部の内周側部位並びにこれに対する前記第2バリアフィルム及び前記他方の第2融着フィルムの各対応融着部位の少なくとも各1部を、上記一方の第1融着フィルム(53、93)に向けて開口するように当該一方の第1融着フィルムとは離れる方向に突出させてなる少なくとも1つの筒部(50d、90d)と、
【0054】
上記一方の第2融着フィルムの上記内周側部位、上記第2バリアフィルムの上記対応融着部位及び上記他方の第2融着フィルムの上記対応融着部位のうち上記少なくとも1つの筒部以外の各部位からなる平膜部(50c、90c)とを有して、
【0055】
上記少なくとも1つの筒部は、独自に或いは前記平膜部の少なくとも一部位と共に、上記一方の第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する気泡部として形成されており、
【0056】
上記両多孔質層の一方は、その上記少なくとも一部位にて、上記他方の第1融着フィルムに上記融点よりも低い温度にて融着され、他方の多孔質層は、その上記少なくとも一部位にて、上記少なくとも1つの筒部の頂部に対する上記他方の第2融着フィルムの対応部に前記融点よりも低い温度にて融着されている。
【0057】
このような構成においては、請求項1或いは請求項4に記載の発明とは異なり、フィルム積層体が両多孔質層の間に積層されているものの、フィルム積層体が、独自に或いは平膜部の少なくとも一部位と共に、一方の第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する気泡部として形成した少なくとも1つの筒部を有することにおいて変わりがなく、その結果、請求項1或いは請求項4に記載の発明と実質的に同様の作用効果が達成され得る。
【0058】
また、本発明に係る自動車用サイレンサーの製造方法は、請求項10の記載によれば、
【0059】
両多孔質層用多孔質部材を準備するとともに、熱可塑樹脂材料からなる両融着フィルム及びこれら両融着フィルムの間に融着されて上記熱可塑樹脂材料の融点よりも高い融点を有する樹脂材料からなるバリアフィルムによりそれぞれ形成してなる第1及び第2の3層フィルムを準備して、
【0060】
上記第2の3層フィルムを、平膜部からその厚さ方向へ複数の筒部を突出させる構成となるように真空成形し、
【0061】
上記両多孔質層用多孔質部材の一方の少なくとも一部位に上記第1の3層フィルム層を積層し、上記複数の筒部を上記第1の3層フィルム層とは逆方向に突出させるように、上記第2の3層フィルム層を上記第1の3層フィルム層に積層し、かつ上記両多孔質層用多孔質部材の他方の上記少なくとも一部位に対する対向部位を上記複数の筒部を介し上記第2の3層フィルム層に積層した構成に対し、上記各融着フィルムを溶融するように加熱後、冷間加圧成形を施すようにした。
【0062】
これによれば、請求項7に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る自動車用サイレンサーの製造が可能となる。ここで、当該サイレンサーの製造過程において、両多孔質層用多孔質部材の一方、第1の3層フィルム、複数の筒部を形成してなる第2の3層フィルム及び他方の多孔質層用多孔質部材が、上述のような積層のもとに、各融着フィルムを溶融するように加熱後、冷間加圧成形される。
【0063】
これに伴い、両多孔質層用多孔質部材の成形と、当該両多孔質層用多孔質部材、第1及び第2の3層フィルムとの間の融着による接着が同時になされ得る。其の結果、サイレンサーの製造工程が、接着材を別途採用することなく、簡素化され得る。
【0064】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るダッシュサイレンサーの第1実施形態を適用した自動車の模式的部分概略断面図である。
【図2】図1のダッシュサイレンサーの斜視図である。
【図3】図2の3−3線に沿うダッシュサイレンサーの拡大縦断面図である。
【図4】図3のフィルム積層体の部分拡大縦断面図である。
【図5】図4のフィルム積層体の部分拡大断面図である。
【図6】図3のフィルム積層体の部分破断正面図である。
【図7】上記第1実施形態におけるフィルム積層体の成形工程からダッシュサイレンサーまでの製造工程図である。
【図8】図7の真空成形工程において真空成形に用いられる金型の概略斜視図である。
【図9】上記第1実施形態における実施例及び比較例の吸音率と周波数との関係をそれぞれ示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態のフィルム積層体の要部を示す部分拡大断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態のフィルム積層体の要部を示す部分拡大断面図である。
【図12】図11のフィルム積層体の部分拡大断面図である。
【図13】上記第3実施形態における実施例及び比較例の吸音率と周波数との関係をそれぞれ示すグラフである。
【図14】本発明の第4実施形態のフィルム積層体の要部を示す部分拡大断面図である。
【図15】図14のフィルム積層体の部分拡大断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態のフィルム積層体の部分破断正面図である。
【図17】図16のフィルム積層体の部分拡大縦断面図である。
【図18】図17のフィルム積層体の部分拡大断面図である。
【図19】上記第5実施形態における実施例及び比較例の吸音率と周波数との関係をそれぞれ示すグラフである。
【図20】本発明の第6実施形態のフィルム積層体の要部を示す部分拡大断面図である。
【図21】図20のフィルム積層体の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
【0067】
図1は、セダン型自動車に適用してなる本発明の第1実施形態を示している。当該自動車は、エンジンルーム10及び車室20を備えており、車室20は、当該自動車において、エンジンルーム10に後続して設けられている。なお、エンジンルーム10内には、エンジンEが配設されている。また、車室20内には、前側座席Sが配設されている。
【0068】
また、当該自動車は、ダッシュボード30(ダッシュパネル30ともいう)を備えており、このダッシュボード30は、図1の縦断面形状にて示すごとく、その中央部から上下両側部を後方へ上下に傾斜状に屈曲するように延出させて形成されている。このように構成したダッシュボード30は、エンジンルーム10と車室20との境界に設けられて、これらエンジンルーム10及び車室20を相互に区画している。なお、ダッシュボード30は、その延出上端部にて、車室20のフロントウインドシールドの下縁部に連結されており、このダッシュボード30の延出下端部は、車室20の床壁の前縁部に連結されている。
【0069】
また、当該自動車は、ダッシュサイレンサーDSを備えている。このダッシュサイレンサーDSは、図1にて示すごとく、ダッシュボード30に沿い車室20側から組み付けられており、当該ダッシュサイレンサーDSは、図2にて示すごとく、その上下方向中央部にて、当該自動車の後方側からみて凹な湾曲板形状となるように、かつ、その上縁部から下縁部にかけて、図3にて例示するような縦断面凹凸板形状を有するように構成されている。
【0070】
当該ダッシュサイレンサーDSは、図3或いは図4にて示すごとく、前側層40、フィルム積層体50及び後側層60を備えており、これら前側層40、フィルム積層体50及び後側層60は、順次、当該自動車の前側から後側にかけて積層して形成されている。
【0071】
前側層40は、図3の縦断面形状にて例示するごとく、その中央部から上下両側部を後方へ上下に傾斜状に屈曲して延出させるように、所定の前側層用多孔質材料により形成されており、この前側層40は、その前面にて、ダッシュボード30にその後面に沿い組み付けられている。
【0072】
本第1実施形態において、上述した前側層40の厚さは、8(mm)を基準に設定されている。また、上述した所定の前側層用多孔質材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)からなるフェルトであって、所定の目付量(単位面積当たりの重量)を有するフェルト(以下、前側層用フェルトという)が採用されている。ここで、当該前側層用フェルトの上記所定の目付量は、300(g/m2)である。
【0073】
フィルム積層体50は、図2或いは図3から分かるごとく、前側層40及び後側層60の各中央右側中間部位41、61の間に挟持されている。本第1実施形態では、前側層40及び後側層60の各中央右側中間部位41、61は、それぞれ、ダッシュサイレンサーDSの厚さ増大部位(図2にて符号R参照)に対応する。
【0074】
当該フィルム積層体50は、図4にて例示するごとく、前側フィルム層50a及び後側フィルム層50bからなるもので、後側フィルム層50bは、後述のごとく、前側フィルム層50aにその後面側から積層されている。
【0075】
前側フィルム層50aは、図5にて例示するごとく、前側融着フィルム51、バリアフィルム52及び後側融着フィルム53を積層して平膜状に形成されている。前側融着フィルム51は、所定の前側融着フィルム用熱可塑性材料により、所定の厚さでもって平膜状に形成されており、この前側融着フィルム51は、その前面にて、前側層40の中央右側中間部位41にその後面に沿い融着されている。
【0076】
本第1実施形態において、上述した前側融着フィルム51の所定の厚さは、20(μm)に設定されている。また、上述した所定の前側融着フィルム用熱可塑性材料としては、ポリエチレンが採用されている。
【0077】
バリアフィルム52は、所定のバリアフィルム用熱可塑性材料により、所定の厚さでもって平膜状に形成されており、このバリアフィルム52は、前側融着フィルム51にその後面側から融着されている。
【0078】
本第1実施形態において、上述したバリアフィルム52の所定の厚さは、15(μm)に設定されている。また、上述した所定のバリアフィルム用熱可塑性材料としては、ナイロンが採用されている。なお、本第1実施形態において、上述のごとく、所定のバリアフィルム用熱可塑性材料としてナイロンを採用したのは、ナイロンが、上述した前側融着フィルム51の形成材料であるポリエチレンよりも高い融点を有するためである。
【0079】
後側融着フィルム53は、所定の後側融着フィルム用熱可塑性材料により、平膜状に形成されており、この後側融着フィルム53は、バリアフィルム52にその後面側から融着されている。本第1実施形態において、上述した所定の後側融着フィルム用熱可塑性材料としては、前側融着フィルム51と同様に、ポリエチレンが採用されている。なお、上述したバリアフィルム52の前側融着フィルム51及び後側フィルム53との融着は、ナイロンの融点よりも低い温度にてなされている。
【0080】
後側フィルム層50bは、図5にて例示するごとく、前側融着フィルム54、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56を積層して形成されている。本第1実施形態では、前側融着フィルム54、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56の各形成材料は、それぞれ、前側フィルム層50aの前側融着フィルム51、バリアフィルム52及び後側融着フィルム53の各形成材料と同様である。
【0081】
当該後側フィルム層50bは、図4或いは図5にて例示するごとく、平膜部50cと、多数の円筒部50dとにより構成されており、当該後側融着フィルム層50bは、平膜部50cにて、前側フィルム層50aにその後面側から融着されて、多数の円筒部50dを前側フィルム層50aとは逆方向に突出している。
【0082】
ここで、平膜部50cは、図5にて例示するごとく、前側融着フィルム54、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56の平膜部50cに対する各対応部位に相当し、また、多数の円筒部50dは、前側融着フィルム54、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56の多数の円筒部50dに対する各対応部位に相当する。従って、前側融着フィルム54が、後側融着フィルム53にその後面側から融着されることで、平膜部50cが、前側フィルム層50aのうち平膜部50cに対する対応部位に融着されている。なお、後側フィルム層50bにおいて上述のようになされる融着は、ナイロンの融点よりも低い温度にてなされている。
【0083】
当該後側フィルム層50bの多数の円筒部50dは、図6にて示すごとく、前側フィルム層50aの面方向に沿い互いに千鳥足状に配列して形成されている。また、当該多数の円筒部50dは、それぞれ、図5にて例示するごとく、前側フィルム層50aのうち各円筒部50dに対する対応部位から平膜部50cの厚さ方向に向け円筒状に隆起して形成されている。換言されば、各円筒部50dが、その開口端部にて、前側フィルム層50aに対し開口している。
【0084】
しかして、このように形成した多数の円筒部50dの各内部には、空気が封入されている。このことは、多数の円筒部50dが、それぞれ、円筒状の独立気泡部であることを意味する。
【0085】
本第1実施形態において、多数の円筒部50dは、以下に述べるようにして、千鳥足状に配列されている。即ち、多数の円筒部50dのうちの1つの円筒部50dを選択すると、この選択円筒部50dは、図6にて示すごとく、正6角形状に配列した6つの円筒部50dにより包囲されており、当該選択円筒部50dと上記6つの円筒部50dの各々との各中心間隔及び当該6つの円筒部50dのうちの各両隣接円筒部50dの中心間隔は、所定の同一間隔となっている。
【0086】
また、各円筒部50dは、それぞれ、所定の外径(例えば、20(mm))及び所定の高さ(例えば、7(mm))を有する。ここで、上記所定の外径は、円筒状円筒部50dの周壁の外径に相当する。また、上記所定の高さは、前側フィルム層50aの後面から円筒部50dの頂壁部の後面までの間隔に相当する。また、円筒部50dの数は、ダッシュサイレンサーDSに吸音性を良好に発揮させ得るように、できる限り多くしてある。なお、フィルム積層体50の厚さは、12(mm)である。
【0087】
後側層60は、図3の縦断面形状にて示すごとく、その中央部から上下両側部を後方へ上下に傾斜状に屈曲して延出させるように、所定の後側層用多孔質材料により形成されており、この後側層60は、フィルム積層体50に対する対応部位以外の部位にて、前側層40のその後面側から直接熱圧着されるとともに、フィルム積層体50に対する対応部位にて、フィルム積層体50の後側フィルム層50bにその後面側から圧着されている。
【0088】
本第1実施形態において、後側層60の厚さは、前側層40とは異なり、5(mm)を基準に設定されている。また、上述の所定の後側層用多孔質材料としては、ポリエチレンテレフタレートからなるフェルトであって所定の目付量を有するフェルト(以下、後側層用フェルトという)が採用されている。ここで、当該後側層用フェルトの所定の目付量は、上記前側層用フェルトとは異なり、800(g/m2)である。なお、ダッシュサイレンサーDSの合計目付量は、1,200(g/m2)である。
【0089】
次に、上述のように構成した当該ダッシュサイレンサーDSは以下のようにして製造される。まず、上述した前側層用フェルトを、ダッシュボード30の外形寸法に合わせた外形寸法を有するように切断し、8(mm)の厚さの前側層用フェルトとして準備する。また、上述した後側層用フェルトを、ダッシュボード30の外形寸法に合わせた外形寸法を有するように切断し、5(mm)の厚さの後側層用フェルトとして準備する。
【0090】
次に、図7のインフレーション成形工程S1において、フィルム積層体50の前側フィルム層50a用3層フィルム及び後側フィルム層50b用3層フィルムを、多層インフレーション成形機(図示しない)により、インフレーション成形する。
【0091】
即ち、多層インフレーション成形機において、前側融着フィルム用溶融ポリエチレン、バリアフィルム用溶融ナイロン及び後側融着フィルム用溶融ポリエチレンが、それぞれ、複数の押出機(本第1実施形態では3つの押出機)により上方に向け押し出されると、これら前側融着フィルム用溶融ポリエチレン、バリアフィルム用溶融ナイロン及び後側融着フィルム用溶融ポリエチレンが、空気流により、共に、筒フィルム状に膨張形成される。
【0092】
このとき、前側融着フィルム用溶融ポリエチレンからなる筒フィルムが、バリアフィルム用溶融ナイロンからなる筒フィルムを内包するとともに、このバリアフィルム用溶融ナイロンからなる筒フィルムが、後側融着フィルム用溶融ポリエチレンからなる筒フィルムを内包するようにして、3層筒フィルム体が形成される。
【0093】
しかして、このように形成された3層筒フィルム体は、多層インフレーション成形機において、そのまま、冷却しながら相互に接合して、前側融着フィルム用ポリエチレンフィルム、バリアフィルム用ナイロンフィルム及び後側融着フィルム用ポリエチレンフィルムからなる単一の筒フィルムとなる。
【0094】
このように単一の筒フィルムを形成した後は、当該単一の筒フィルムを軸方向に切断して前側フィルム層50a用3層フィルムを形成する。
【0095】
次に、後側フィルム層50b用3層フィルムも、前側フィルム層50a用3層フィルムと同様にして形成する。
【0096】
然る後、真空成形工程S2において、後側フィルム層50b用3層フィルムを、真空金型K(図8参照)を用いて、真空成型機(図示しない)により、加熱軟化させて、平板部(平膜部50cに対応)から多数の円筒部(円筒部50dに対応)を後側融着フィルム用ポリエチレンフィルム側へ円筒状に突出させるように真空成形する。
【0097】
ここで、真空金型Kは、後側フィルム層50bの平膜部50cに対応する平板部K1から多数の円筒部50dに対応する円筒部K2を千鳥足状に突出させるように構成されている。なお、真空成型機による加熱温度は、ナイロンの融点よりも低く、ポリエチレンの融点よりも高いため、バリアフィルム用ナイロンフィルムが、溶融することはない。
【0098】
ついで、加熱工程S3において、多数の円筒部が、前側フィルム層50a用3層フィルムとは反対側へ突出するように、後側フィルム層50b用3層フィルムを前側フィルム層50a用3層フィルムにその後側から接合する。この接合は、後側フィルム層50b用3層フィルムの前側融着フィルム用ポリエチレンフィルムを前側フィルム層50a用3層フィルムの後側融着フィルム用ポリエチレンフィルムに接合することでなされる。
【0099】
このような接合後、プレス機(図示しない)により、所定の金型を用いて、加熱及び加圧して、後側フィルム層50b用3層フィルムを前側フィルム層50a用3層フィルムにその後側から融着する。この融着は、後側フィルム層50b用3層フィルムの前側融着フィルム用ポリエチレンフィルムを前側フィルム層50a用3層フィルムの後側融着フィルム用ポリエチレンフィルムに融着させることでなされる。なお、プレス機による加熱温度は、ナイロンの融点よりも低く、ポリエチレンの融点よりも高いため、バリアフィルム用ナイロンフィルムが、溶融することはない。
【0100】
ついで、冷間加圧成形工程S4において、後側層用フェルトを、後側フィルム層50b用3層フィルム及び前側フィルム層50a用3層フィルムを介し前側層用フェルトに積層する。この積層は、後側層用フェルトのうち後側層60の中央右側中間部位61に対する対応部位を、後側フィルム層50b用3層フィルムにその後側から積層するとともに、前側層用フェルトのうち前側層40の中央右側中間部位41に対する対応部位を、前側フィルム層50a用3層フィルムにその前側から積層するようになされる。このとき、後側フィルム層50b用3層フィルムは、その各円筒部内に空気を内包した状態で、前側フィルム層50a用3層フィルムに積層される。
【0101】
そして、冷間加圧成形装置(図示しない)により、その冷間加圧成形用金型を用いて、前側層用フェルト、前側フィルム層50a用3層フィルム、後側フィルム層50b用3層フィルム及び後側層用フェルトからなる積層体を、所定の加熱温度に加熱後、冷間加圧成形する。
【0102】
ここで、冷間加圧成形用金型は、後側フィルム層50b用3層フィルムの各円筒部を変形させないように形成されている。また、上記所定の加熱温度は、ナイロンの融点よりも低く、ポリエチレンの融点よりも高い。従って、前側フィルム層50a用3層フィルムの両ポリエチレンフィルム及び後側フィルム層50b用3層フィルムの両ポリエチレンフィルムが、ともに溶融する。
【0103】
このため、前側フィルム層50a用3層フィルムは、その前側融着フィルム用ポリエチレンフィルムにてその溶融により前側層用フェルトに融着し、後側フィルム層50b用3層フィルムは、その前側融着フィルム用ポリエチレンフィルムにて、前側フィルム層50a用3層フィルムの後側融着フィルム用ポリエチレンフィルムに、溶融により融着し、かつ、後側フィルム層50b用3層フィルムは、その後側融着フィルム用ポリエチレンフィルムにて、その溶融により、後側層用フェルトに融着する。
【0104】
これにより、前側フィルム層50a用3層フィルム及び後側フィルム層50b用3層フィルムが、それぞれ、前側フィルム層50a及び後側フィルム層50bとなり、前側層用フェルト及び後側層用フェルトが、それぞれ、前側層40及び後側層60となって、上述したダッシュサイレンサーDSが、製造される。
【0105】
このようにして製造したダッシュサイレンサーDSにおいて、厚さの増加を要請される部位、即ち、厚さ増大部位R(図3参照)においては、フィルム積層体50が前側層40と後側層60との間に挟持されている。ここで、フィルム積層体50は、気泡を内包する多数の円筒部を内包する構成となっており、フィルム積層体50が、後側フィルム層50bの各円筒部50dの変形を招くことなく、各円筒部50dにて空気を内包して円筒状に維持されている。従って、後側層60の中央右側中間部位61は、前側層40の中央右側中間部位41に対し後方へ各円筒部50dの高さでもって離れて維持される。このため、ダッシュサイレンサーDSの厚さ増大部位Rが適正に確保され得る。
【0106】
このように、当該厚さ増大部位Rの厚さは、前側層40や後側層60の形成材料であるフェルトを増大させるのではなく、フィルム積層体50の各円筒部50dの高さでもって確保されているので、当該厚さ増大部位Rの重量が、フィルム積層体50によって増大されることがない。
【0107】
また、上述のように製造したダッシュサイレンサーDSにおいて、前側層40及び後側層60は、共に、フェルトからなるため、良好な通気性のもとに良好な吸音性を発揮し得る。さらに、フィルム積層体50は、非通気性を有するフィルムでもって構成されているが、当該フィルム積層体50は、そのフィルム構成のもとに、騒音に対し共振現象を発揮することで、吸音性を確保し得る。
【0108】
従って、エンジンルーム10から前側層40を通りフィルム積層体50に伝播する騒音や車室20から後側層60を通りフィルム積層体50に伝播する騒音は、フィルム積層体50によりその前側フィルム層50aや後側フィルム層50bの共振でもって良好に吸音される。
【0109】
その結果、ダッシュサイレンサーDSは、軽量であることは勿論のこと、良好な吸音性を発揮し得る。
【0110】
また、上述のようなダッシュサイレンサーDSの製造工程において、前側フィルム層50a用3層フィルム及び後側フィルム層50b用3層フィルムの各ポリエチレンフィルムを溶融させた上で、これら各対応のポリエチレンフィルムにより前側フェルトと前側フィルム層50a用3層フィルムとの間、前側フィルム層50a用3層フィルムと後側フィルム層50b用3層フィルムとの間及び後側フィルム層50b用3層フィルムと後側フェルトとの間が融着により接着される。
【0111】
従って、ダッシュサイレンサーDSの製造にあたり、接着剤を塗布するという工程を経ることなく、上記融着が、前側層40、フィルム積層体50及び後側層60の成形時に、同時になされ得る。このことは、ダッシュサイレンサーDSの成形が、前側層40及びフィルム積層体50の前側フィルム層50aの間の融着、フィルム積層体50における前側フィルム層50a及び後側フィルム層50bの間の融着及びフィルム積層体50の後側フィルム層50b及び後側層60の間の融着と同時になされて、製造工程の簡素化につながることを意味する。
【0112】
ちなみに、上述のように製造したダッシュサイレンサーDSを実施例1−1とし、この実施例1−1の吸音特性を、比較例1−1との対比において、いわゆる残響室法吸音率試験により、測定してみた。
【0113】
ここで、上記比較例1−1は、上記実施例1−1のフィルム積層体50に代えて、単層のフィルムを採用した構成を有する。従って、当該比較例1−1は、上記実施例1−1の前側層40、後側層60及び上記単層のフィルムの積層構造でもって構成されている。なお、上記単層のフィルムは、前側層40の中央右側中間部位41と後側層60の中央右側中間部位61との間に挟持されている。
【0114】
また、残響室法吸音率試験は、上記実施例1−1或いは上記比較例1−1によるエンジンEからの音(即ち、エンジン音)その他の音に対する吸音率をエンジン音その他の音の周波数との関係において測定する試験である。
【0115】
以上のような前提のもとに、上記実施例1−1及び上記比較例1−1に対し残響室法吸音率試験を行ったところ、図9にて示すような結果が得られた。図9においては、各グラフ1、2が、それぞれ、上記実施例1−1及び上記比較例1−1の吸音率と周波数との関係を示す。
【0116】
ここで、各グラフ1、2を対比してみると、両グラフ1、2では、吸音率が、周波数の増大に応じて、ほぼ同様の増大傾向となるように変化している。このように対比してみると、上記実施例1−1の吸音特性は、上記比較例1−1の吸音特性とほぼ一致していることが分かる。換言すれば、上記実施例1−1は、上記比較例1−1よりも軽量であるにもかかわらず、従来品と同様に、車室内の騒音を良好に吸音し得ることが分かる。
(第2実施形態)
【0117】
図10は、本発明に係るダッシュサイレンサーの第2実施形態の要部を示している。この第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50において、後側フィルム層50bが、上記第1実施形態とは異なり、前側融着フィルム54を廃止して、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56のみでもって構成されている。
【0118】
これに伴い、前側フィルム層50aの後側フィルム層50bとの間の融着は、前側フィルム層50aの後側融着フィルム53と後側フィルム層50bのバリアフィルム55との間の融着でもってなされる。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0119】
このように構成した本第2実施形態では、上述のごとく、後側フィルム層50bが、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56のみでもって構成されており、かつ、前側フィルム層50aの後側フィルム層50bとの間の融着が、前側フィルム層50aの後側融着フィルム53と後側フィルム層50bのバリアフィルム55との間の融着でもってなされる。
【0120】
その結果、フィルム積層体50の後側フィルム層50bの構成を簡素化しつつ、上記第1実施形態と同様の作用効果を達成することができる。
(第3実施形態)
【0121】
図11は、本発明に係るダッシュサイレンサーの第3実施形態の要部を示している。この第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSにおいて、前側層40及びフィルム積層体50に代えて、フィルム積層体70を採用した構成となっている。
【0122】
フィルム積層体70は、図11にて示すごとく、前側フィルム層70aと、この前側フィルム層70aに積層してなる後側フィルム層70bとを備えている。
【0123】
前側フィルム層70aは、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50の前側フィルム層50aにおいて、前側融着フィルム層51を除いた構成を有する。
【0124】
即ち、前側フィルム層70aは、前側フィルム層50aのバリアフィルム52及び後側融着フィルム53に対応するバリアフィルム71及び後側融着フィルム72でもって構成されている(図12参照)。ここで、バリアフィルム71及び後側融着フィルム72は、その各構成及び形成材料において、それぞれ、上記第1実施形態にて述べた前側フィルム層50aのバリアフィルム52及び後側融着フィルム53の各構成及び各形成材料と同一である。
【0125】
しかして、前側フィルム層70aにおいて、バリアフィルム71は、後側融着フィルム72にその前面側から融着されている。
【0126】
一方、後側フィルム層70bは、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50の後側フィルム層50bにおいて、前側融着フィルム層54を除いた構成を有する。
【0127】
即ち、後側フィルム層70bは、後側フィルム層50bのバリアフィルム55及び後側融着フィルム56にそれぞれ対応するバリアフィルム73及び後側融着フィルム74でもって構成されている(図12参照)。ここで、バリアフィルム73及び後側融着フィルム74は、その各構成及び各形成材料において、それぞれ、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56の各構成及び各形成材料と同一である。
【0128】
また、後側フィルム層70bは、後側フィルム層50bの平膜部50c及び多数の円筒部50dにそれぞれ対応する平膜部70c及び多数の円筒部70dにより構成されている。ここで、平膜部70cは、バリアフィルム73及び後側融着フィルム74の平膜部70cに対する各対応部位に相当し、また、多数の円筒部70dは、バリアフィルム73及び後側融着フィルム74の多数の円筒部70dに対する各対応部位に相当する。
【0129】
しかして、後側フィルム層70bは、平膜部70c(バリアフィルム73の平膜部70cに対する対応部位)にて、前側フィルム層70aの後側融着フィルム72にその後面側から融着されている。この融着は、バリアフィルム73のうち平膜部70cに対する対応部位を、後側融着フィルム72に融着させることでなされている。これにより、多数の円筒部70dは、その各開口端部にて、それぞれ、前側フィルム層70aに対し開口するとともに、当該前側フィルム層70aとは反対方向へ(後側層60側へ)、それぞれ、独立気泡部として円筒状に突出している。
【0130】
また、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べた後側層60は、フィルム積層体70を介しダッシュパネル30にその後面側から装着されている。ここで、当該後側層60は、その中央右側中間部位61にて、後側フィルム層70bの各円筒部70dの頂壁部にその後面側から融着されることで、後側フィルム層70bに融着されている。この融着は、後側融着フィルム74のうち各円筒部70dの頂壁部に対する各対応部位を後側層60の中央右側中間部位61に融着することでなされている。その他の構成及びダッシュサイレンサーの製造方法は、上記第1実施形態と同様である。
【0131】
このように構成した本第3実施形態では、上述のごとく、ダッシュサイレンサーが、上記第1実施形態とは異なり、上記第1実施形態にて述べた前側層40を廃止して、フィルム積層体70及び後側層60のみで構成され、フィルム積層体70が、上記第1実施形態とは異なり、上述のように構成したバリアフィルム71及び後側融着フィルム72の2層構造からなる前側フィルム層70aとバリアフィルム73及び後側融着フィルム74の2層構造からなる後側フィルム層70bとの積層構造で構成されている。
【0132】
その結果、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50に対応するフィルム積層体70の構成及びダッシュサイレンサーとしての構成を簡素化しつつ、上記第1実施形態と実質的に同様の作用効果を達成することができる。
【0133】
ちなみに、本第3実施形態におけるダッシュサイレンサーを実施例3−1とし、この実施例3−1の吸音特性を、比較例3−1との対比において、上記残響室法吸音率試験により、測定してみた。ここで、比較例3−1は、厚さ20(mm)及び目付量600(g/m2)のフェルトの単層構造からなるものである。
【0134】
以上の前提のもとに、上記実施例3−1及び上記比較例3−1に対し残響室法吸音率試験を行ったところ、図13にて示すような結果が得られた。図13においては、各グラフ3、4が、それぞれ、上記実施例3−1及び上記比較例3−1の吸音率と周波数との関係を示す。
【0135】
しかして、各グラフ3、4を対比してみると、両グラフ3、4では、吸音率が、周波数の増大に応じて、ほぼ同様の増大傾向となるように変化している。ここで、周波数が約1000(Hz)より低い範囲では、グラフ3による吸音率がグラフ4による吸音率よりも幾分低くなる傾向にあるが、周波数が約1000(Hz)より高い範囲では、グラフ3による吸音率が、周波数の増大に伴い、グラフ4による吸音率よりも幾分高くなる傾向にあることが分かる。
(第4実施形態)
【0136】
図14及び図15は、本発明に係るダッシュサイレンサーの第4実施形態の要部を示している。この第4実施形態では、上記第3実施形態にて述べたダッシュサイレンサーにおいて、後側層60を廃止して、上記第1実施形態にて述べた前側層40を採用した構成となっている。
【0137】
これに伴い、本第4実施形態では、前側フィルム層70aが、上記第3実施形態にて述べたバリアフィルム71に代わる前側融着フィルム72aと、上記第3実施形態にて述べた後側融着フィルム72に代わるバリアフィルム71aとにより構成されており、バリアフィルム71aは、前側融着フィルム72aにその後面側から融着されている。ここで、前側融着フィルム72a及びバリアフィルム71aは、その各構成及び各形成材料において、それぞれ、上記第3実施形態にて述べた後側融着フィルム72及びバリアフィルム71の各構成及び各形成材料と同様である。
【0138】
また、後側フィルム層70bは、上記第3実施形態にて述べたバリアフィルム73に代わる前側融着フィルム74aと、上記第3実施形態にて述べた後側融着フィルム74に代わるバリアフィルム73aとにより構成されており、当該後側フィルム層70bは、前側融着フィルム74a及びバリアフィルム73aでもって、上記第3実施形態にて述べた後側フィルム層70bと同様に、平膜部70c及び複数の円筒部70dを一体的に有するように形成されている。
【0139】
しかして、本第4実施形態では、前側フィルム層70aは、その前側融着フィルム72aにて、前側層40の中央右側中間部位41にその後面側から融着されている。また、後側フィルム層70bは、その前側融着フィルム74aのうち平膜部70cに対する対応部位にて、多数の円筒部70d内に空気を内包するように前側フィルム層70aのバリアフィルム71aに融着されている。その他の構成及びダッシュサイレンサーの製造方法は、上記第1実施形態と実質的に同様である。
【0140】
このように構成した本第4実施形態では、上述のごとく、ダッシュサイレンサーが、上記第3実施形態とは異なり、後側層60を廃止して前側層40を採用したことを除き、上記第3実施形態と同様の構成を有する。このように構成しても、上記第3実施形態と実質的に同様の作用効果を達成することができる。
(第5実施形態)
【0141】
図16及び図17は、本発明に係るダッシュサイレンサーの第5実施形態の要部を示している。当該第5実施形態では、上記第3実施形態にて述べたフィルム積層体70(上記第1実施形態にて述べた前側層40及びフィルム積層体50に対応する)に代えて、フィルム積層体80が採用されている。
【0142】
当該フィルム積層体80は、図16或いは図17にて示すごとく、前側フィルム層80aと、この前側フィルム層80aに積層してなる後側フィルム層80bとを備えている。
【0143】
前側フィルム層80aは、上記第3実施形態にて述べたフィルム積層体70の前側フィルム層70a(図11及び図12参照)と同様の構成を有するもので、当該前側フィルム層80aは、前側フィルム層70aのバリアフィルム71及び後側融着フィルム72にそれぞれ対応するバリアフィルム81及び後側融着フィルム82でもって構成されている(図18参照)。ここで、バリアフィルム81及び後側融着フィルム82は、その各構成及び各形成材料において、それぞれ、バリアフィルム71及び後側融着フィルム72の各構成及び各形成材料と同一である。
【0144】
しかして、このように構成してなる前側フィルム層80aにおいて、バリアフィルム81は、後側融着フィルム82にその前面側から融着されている。
【0145】
一方、後側フィルム層80bは、上記第3実施形態にて述べたフィルム積層体70の後側フィルム層70bのバリアフィルム73及び後側融着フィルム74にそれぞれ対応するバリアフィルム83及び後側融着フィルム84でもって構成されている(図18参照)。ここで、バリアフィルム83及び後側融着フィルム84は、その各形成材料において、それぞれ、後側フィルム層70bのバリアフィルム73及び後側融着フィルム74の各形成材料と同一である。
【0146】
また、当該後側フィルム層80bは、上記第3実施形態にて述べたフィルム積層体70の後側フィルム層70bの平膜部70c及び多数の円筒部70dにそれぞれ対応する平膜部80c及び多数の円筒部80dにより構成されている(図16〜図18参照)。
【0147】
ここで、平膜部80cは、バリアフィルム83及び後側融着フィルム84の平膜部80cに対する各対応部位に相当し、また、多数の円筒部80dは、バリアフィルム83及び後側融着フィルム84の多数の円筒部80dに対する各対応部位に相当する。
【0148】
但し、本第5実施形態では、上記第3実施形態とは異なり、後側フィルム層80bは、その外周縁部(平膜部80cの外周縁部)を除く中央側部位にて、前側フィルム層80a(換言すれば、後側融着フィルム82)に対し所定間隙Gaを介して対向するように前側フィルム層80aから分離して形成されており、当該後側フィルム層80bは、その外周縁部(平膜部80cの外周縁部)にて、前側フィルム層80aの外周縁部にその後面側から融着されている。この融着は、バリアフィルム83のうち平膜部80cの外周縁部に対する対応部位を、後側融着フィルム82の外周縁部に融着させることでなされている。
【0149】
これにより、多数の円筒部80dは、その各開口端部85(図17参照)にて、前側フィルム層80aと後側フィルム層80bの平膜部80cとの間にて所定間隙Gaに対応して形成される連通領域86(図17参照)内に連通している。換言すれば、多数の円筒部80dは、その各内部にて、連通領域86と連通している。
従って、空気は、上記第3実施形態のように各独立気泡部としての各円筒部70dとは異なり、各円筒部80dの内部及び連通領域86に亘り充満されている。このことは、本第5実施形態では、上記第3実施形態にて述べた各円筒部70dのような各独立気泡部ではなく、各円筒部80d及び連通領域86に亘る単一の連通気泡部88が構成されることを意味する。
【0150】
但し、本第5実施形態では、上述した所定間隙Gaは、次のように設定されている。即ち、所定間隙Gaは、上記第3実施形態にて述べたフィルム積層体70と実質的に同様に吸音性能を発揮し得るように、後側層60と前側フィルム層80aとの間の間隔の25(%)、より好ましくは、10(%)に設定されている。
【0151】
また、本第5実施形態では、上記第1実施形態にて述べた後側層60は、フィルム積層体80を介しダッシュパネル30にその後面側から装着されている。ここで、当該後側層60は、その中央右側中間部位61にて、後側フィルム層80bの各円筒部80dの頂壁部にその後面側から融着されることで、後側フィルム層80bに融着されている。この融着は、後側融着フィルム84のうち各円筒部70dの頂壁部に対する各対応部位を後側層60の中央右側中間部位61に融着することでなされている。
【0152】
また、後側層60と前側フィルム層80aとの間隔は、上記第3実施形態にて述べた後側層60と前側フィルム層70aとの間隔と同一である。また、本第5実施形態における後側層60の形成材料は、上記第1或いは第3の実施形態にいう後側層60の形成材料と同一である。但し、本第5実施形態における後側層60の厚さ及び目付量は、上記第1或いは第3の実施形態にいう後側層60とは異なり、それぞれ、10(mm)及び600(g/m2)である。その他の構成及びダッシュサイレンサーの製造方法は、上記第1実施形態と同様である。
【0153】
このように構成した本第5実施形態においては、上述のごとく、ダッシュサイレンサーが、上記第3実施形態と同様に、上記第1実施形態にて述べた前側層40を廃止して、フィルム積層体80及び後側層60のみで構成され、フィルム積層体80が、上述のように構成したバリアフィルム81及び後側融着フィルム82の2層構造からなる前側フィルム層80a並びにバリアフィルム83及び後側融着フィルム84の2層構造からなる後側フィルム層80bの積層構造で構成されている。
【0154】
ここで、本第5実施形態では、後側フィルム層80bが、その外周縁部以外の部位にて、上述のごとく、所定間隙Gaを介して前側フィルム層80aに対向することで、平膜部80cと前側フィルム層80aとの間には、各円筒部80bの内部及び連通領域86でもって、単一の連通気泡部88を形成している。
【0155】
しかも、所定間隙Gaは、上記第3実施形態にて述べたフィルム積層体70と実質的に同様に吸音性能を発揮し得るように、後側層60と前側フィルム層80aとの間の間隔の25(%)、より好ましくは、10(%)に設定されている。
【0156】
その結果、本第5実施形態のように、フィルム積層体80が、上記第3実施形態にて述べたフィルム積層体70の多数の円筒部70dからなる多数の独立気泡部とは異なり、各円筒部80bの内部及び連通領域86でもって、単一の連通気泡部88を形成していても、本第5実施形態のダッシュサイレンサーは、上記第3実施形態にて述べたダッシュサイレンサーと同様の吸音特性を発揮し得る。
【0157】
ちなみに、本第5実施形態におけるダッシュサイレンサーを実施例5‐1とし、この実施例4の吸音特性を、比較例5‐1との対比において、上記残響室法吸音率試験により、測定してみた。ここで、比較例5‐1は、上記第3実施形態にて述べたダッシュサイレンサーと同一の構成を有するが、当該比較例5‐1の後側層は、実施例5‐1の後側層の形成材料(フェルト)、厚さ及び目付量と同一の形成材料(フェルト)、厚さ及び目付量を有す以上の前提のもとに、上記実施例5−1及び上記比較例5−1に対し残響室法吸音率試験を行ったところ、図19にて示すような結果が得られた。図19においては、各グラフ5、6が、それぞれ、上記実施例5−1及び上記比較例5−1の吸音率と周波数との関係を示す。
【0158】
しかして、各グラフ5、6を対比してみると、両グラフ5、6では、吸音率が、周波数の増大に応じて、ほぼ同様の増大傾向となるように変化している。これによれば、本第5実施形態のフィルム積層体80のように、上記第3実施形態のフィルム積層体70にいう多数の独立気泡部とは異なり、連通気泡部88を有するように構成しても、上記第3実施形態と同様の吸音特性を確保し得ることが分かる。
(第6実施形態)
【0159】
図20は、本発明に係るダッシュサイレンサーの第6実施形態の要部を示している。当該第6実施形態にいうダッシュサイレンサーは、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーにおいて、フィルム積層体50に代えて、フィルム積層体90を採用した構成を有する。即ち、本第6実施形態にいうダッシュサイレンサーは、上記第1実施形態にて述べた前側層40、フィルム積層体90及び上記第1実施形態にて述べた後側層60でもって構成されている。
【0160】
フィルム積層体90は、図20或いは図21にて示すごとく、前側層40と後側層60との間に積層されているもので、当該フィルム積層体90は、前側フィルム層90aと、この前側フィルム層90aに積層してなる後側フィルム層90bとを備えている。
【0161】
前側フィルム層90aは、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50の前側フィルム層50a(図4及び図5参照)と同様の構成を有するもので、当該前側層90aは、上記第1実施形態にて述べた前側フィルム層50aの前側融着フィルム51、バリアフィルム52及び後側融着フィルム53にそれぞれ対応する前側融着フィルム91、バリアフィルム92及び後側融着フィルム93でもって構成されている。ここで、前側融着フィルム91、バリアフィルム92及び後側融着フィルム93は、その各構成及び各形成材料において、それぞれ、前側融着フィルム51、バリアフィルム52及び後側融着フィルム53の各構成及び各形成材料と同一である。
【0162】
しかして、このように構成してなる前側フィルム層90aにおいて、バリアフィルム92は、前側融着フィルム91にその後面側から融着されるとともに、後側融着フィルム93にその前面側から融着されている。
【0163】
一方、後側フィルム層90bは、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50の前側融着フィルム54、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56にそれぞれ対応する前側融着フィルム94、バリアフィルム95及び後側融着フィルム96でもって構成されている(図21参照)。ここで、前側融着フィルム94、バリアフィルム95及び後側融着フィルム96は、その各形成材料において、それぞれ、前側融着フィルム54、バリアフィルム55及び後側融着フィルム56の各形成材料と同一である。
【0164】
また、当該後側フィルム層90bは、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50の後側フィルム層50bの平膜部50c及び多数の円筒部50dにそれぞれ対応する平膜部90c及び多数の円筒部90dにより構成されている(図21及び図22参照)。
【0165】
ここで、平膜部90cは、前側融着フィルム94、バリアフィルム95及び後側融着フィルム96の平膜部90cに対する各対応部位に相当し、また、多数の円筒部90dは、前側融着フィルム94、バリアフィルム95及び後側融着フィルム96の多数の円筒部90dに対する各対応部位に相当する。
【0166】
但し、本第6実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、後側フィルム層90bは、その外周縁部(平膜部90cの外周縁部)を除く中央側部位にて、前側フィルム層90aに対し所定間隙Gbを介して対向するように前側フィルム層90aから分離して形成されており、当該後側フィルム層90bは、その外周縁部(平膜部90cの外周縁部)にて、前側フィルム層90aの外周縁部にその後面側から融着されている。この融着は、前側融着フィルム94のうち平膜部90cの外周縁部に対する対応部位を、前側フィルム層90aの後側フィルム層93の外周縁部に融着させることでなされている。
【0167】
これにより、多数の円筒部90dは、その各開口端部97(図21参照)にて、前側フィルム層90aと後側フィルム層90bの平膜部90cとの間にて所定間隙Gbに対応して形成される連通領域98(図20及び図21参照)内に連通している。換言すれば、多数の円筒部90dは、その各内部にて、連通領域98と連通している。
従って、空気は、上記第1実施形態のように各独立気泡部としての各円筒部50dとは異なり、各円筒部90dの内部及び連通領域98に亘り充満されている。このことは、本第6実施形態では、上記第1実施形態にて述べた各円筒部50dのような各独立気泡部ではなく、各円筒部90d及び連通領域98に亘る単一の連通気泡部99が構成されることを意味する。
【0168】
但し、本第6実施形態においては、上述した所定間隙Gbは、次のように設定されている。即ち、所定間隙Gbは、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50と実質的に同様に吸音性能を発揮し得るように、後側層60と前側フィルム層90aとの間の間隔の25(%)、より好ましくは、10(%)に設定されている。なお、本第6実施形態では、Gb=Gaである。
【0169】
また、本第6実施形態では、上記第1実施形態にて述べた後側層60は、フィルム積層体90を介し前側層40にその後面側から装着されている。ここで、前側フィルム層90aは、その前側融着フィルム層91にて、前側層40にその後面側から融着されている。一方、後側層60は、その中央右側中間部位61にて、後側フィルム層90bの各円筒部90dの頂壁部にその後面側から融着されることで、後側フィルム層90bに融着されている。この融着は、後側融着フィルム96のうち各円筒部90dの頂壁部に対する各対応部位を後側層60の中央右側中間部位61に融着することでなされている。その他の構成及びダッシュサイレンサーの製造方法は、上記第1実施形態と同様である。
【0170】
このように構成した本第6実施形態においては、上述のごとく、ダッシュサイレンサーが、上記第1実施形態と同様に、前側層40、フィルム積層体90及び後側層60で構成され、フィルム積層体90が、上述のように構成した前側融着フィルム91、バリアフィルム92及び後側融着フィルム93の3層構造からなる前側フィルム層90a並びに前側融着フィルム94、バリアフィルム95及び後側融着フィルム96の3層構造からなる後側フィルム層90bの積層構造で構成されている。
【0171】
ここで、本第6実施形態では、後側フィルム層90bが、その外周縁部以外の部位にて、上述のごとく、所定間隙Gbを介して前側フィルム層90aに対向することで、平膜部90cと前側フィルム層90aとの間には、各円筒部90bの内部及び連通領域98でもって、単一の連通気泡部98を形成している。
【0172】
しかも、所定間隙Gbは、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体90と実質的に同様に吸音性能を発揮し得るように、後側層60と前側フィルム層90aとの間の間隔の25(%)、より好ましくは、10(%)に設定されている。
【0173】
その結果、本第6実施形態のように、フィルム積層体90が、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50の多数の円筒部50dからなる多数の独立気泡部とは異なり、各円筒部90bの内部及び連通領域98でもって、単一の連通気泡部99を形成していても、本第6実施形態のダッシュサイレンサーは、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーと同様の吸音特性を発揮し得る。
【0174】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)フィルム積層体50、70、80或いは90において、バリアフィルムの形成材料は、ナイロンに限ることなく、ポリエステルのフィルム等の樹脂でもよい。また、各融着フィルムの形成材料は、バリアフィルムの形成材料よりも低融点(融点200(℃)以下)の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートや不飽和ポリエステルであればよい。なお、フィルム積層体の円筒部の成形は、連続或いは単発による成形であってもよい。
(2)前側層40或いは後側層60の形成材料は、上記各実施形態にて述べたものに限ることなく、PETやウール等の有機繊維、グラスウール等の無機繊維の構造体材料或いはウレタンフォーム等の多孔質合成樹脂材料であればよい。
(3)フィルム積層体50、70、80或いは90において、前側融着フィルム53、71、81、91或いは93及び後側融着フィルム53、82、93或いは96の各形成材料は、バリアフィルム52、55、72、74、82、84、92或いは95の形成材料よりも低い融点を有すればよく、それぞれ、互いに異なる熱可塑性樹脂材料であってもよい。
(4)上述したダッシュサイレンサーDSの製造にあたっては、上記各実施形態とは異なり、前側融着フィルム用シート状ポリエチレン、バリアフィルム用シート状ナイロン及び後側融着フィルム用シート状ポリエチレンをそれぞれ予め準備して、バリアフィルム用シート状ナイロンを前側融着フィルム用シート状ポリエチレン及び後側融着フィルム用シート状ポリエチレンでもって挟持するように積層して、上述の単一のシート状フィルムを形成するようにしてもよい。
(5)ダッシュサイレンサーDSに対する騒音としては、エンジン音に限ることなく、エンジンルーム内に入る種々の騒音を含めてもよい。
(6)本発明の実施にあたり、ダッシュサイレンサーに限ることなく、フロアサイレンサー、ピラーサイレンサー、ルーフサイレンサー、ルームパーティションサイレンサー、フードサイレンサー、エンジンアンダカバーサイレンサー等に本発明を適用してもよい。
(7)本発明の実施にあたり、フィルム積層体50は、非通気性のものに限ることなく、通気性のものであってもよい。具体的には、フィルム積層体50の全面に亘り、多数の小孔を、所定の直径(例えば、5(mm))及び所定の開口ピッチ(例えば、30(mm))にて、貫通状に形成するようにしてもよい。
(8)本発明の実施にあたり、フィルム積層体は、上記実施形態とは異なり、ダッシュサイレンサーの1カ所に限ることなく、製品全体や複数の厚さ増大部位の各々に適用するようにしてもよい。
(9)本発明の実施にあたり、フィルム積層体は、ダッシュサイレンサーの厚さ増大部位に限ることなく、ダッシュサイレンサーの厚さ圧縮部位に適用してもよい。この場合、フィルム積層体の円筒部が完全につぶれない程度に圧縮すれば、吸音性を良好に確保することができる。
【0175】
また、ダッシュサイレンサーのうち板厚を薄くしたい部位は、熱可塑性フェルトを圧縮する必要があるが、これでは、薄さは確保し得ても、当該薄くしたい部位の密度が高くなり、その結果、フェルトとしての吸音性を損なうこととなる。
(10)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べたダッシュサイレンサーにおいて、フィルム積層体50は、上記第1実施形態とは異なり、前側フィルム層50aを後側層60の中央右側中間部位61側に位置させ、後側フィルム層50bを前側層40の中央右側中間部位41側に位置させるようにして、前側フィルム層50aと後側フィルム層50bとの間に積層するようにしてもよい。
(11)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べたフィルム積層体50の後側フィルム層50bにおける多数の円筒部50dは、千鳥状に限ることなく、例えば、格子状に分散するように形成されてもよい。ここで、円筒部50dは、例えば、四角筒部、三角筒部等の種々の形状を有する筒部であってもよい。
(12)上記実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSの製造工程において、インフレーション成形工程に代えて、押し出し成形工程を採用してもよい。
(13)上記実施形態にて述べたダッシュサイレンサーDSの製造工程において、加熱工程S3及び冷間加圧成形工程S4は、インフレーション成形工程S1及び真空成形工程S2に対する連続工程に限ることなく、インフレーション成形工程S1及び真空成形工程S2とは別の工程であってもよい。
(14)本発明の実施形態にあたり、上記第5或いは第6の実施形態にて述べた円筒部は、多数の円筒部に限ることなく、少なくとも1つの円筒部であってもよい。
(14)本発明の実施形態にあたり、上記第5或いは第6の実施形態にて述べた平膜部は、その全体に限ることなく、少なくとも一部にて、これに対する前側フィルム層の対応部位に融着されていてもよい。
【符号の説明】
【0176】
40…前側層、41、61…中央右側中間部位、
50、70、80、90…フィルム積層体、50c、70c、80c、90c…平膜部、
50d、70d、80d、90d…円筒部、
50a、70a、80a、90a…前側フィルム層、
50b、70b、80b、90b…後側フィルム層、
52、55、71、73、71a、73a、81、83、92、95…バリアフィルム、
51、54、56、74a、91、94…前側融着フィルム、
53、56、72、72a、74a、82、84、93、96…後側融着フィルム、
60…後側層、DS…ダッシュサイレンサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料により形成してなる多孔質層と、当該多孔質層の少なくとも一部位に積層されるフィルム積層体とを備えて、
当該フィルム積層体は、
熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂により形成してなる第1バリアフィルムと、当該第1バリアフィルムに積層されてこの第1バリアフィルムに前記融点よりも低い温度にて融着した前記熱可塑性樹脂からなる第1融着フィルムとを有する第1フィルム層と、
前記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂により形成してなる第2バリアフィルムであってその外周縁部にて前記第1融着フィルムの外周縁部に前記第1バリアフィルムとは反対側から前記融点よりも低い温度にて融着してなる第2バリアフィルムと、この第2バリアフィルムに積層されて当該第2バリアフィルムに前記融点よりも低い温度にて融着した前記熱可塑性樹脂からなる第2融着フィルムとを有する第2フィルム層とを具備しており、
当該第2フィルム層は、
前記第2バリアフィルムの前記外周縁部の内周側部位及びこれに対する前記第2融着フィルムの対応融着部位の双方の少なくとも各一部を、前記第1融着フィルムに向けて開口するように当該第1融着フィルムとは離れる方向に突出させてなる少なくとも1つの筒部と、
前記第2バリアフィルムの前記内周側部位及び前記第2融着フィルムの前記対応融着部位の双方のうち前記少なくとも1つの筒部以外の各部位からなる平膜部とを有して、
前記少なくとも1つの筒部は、独自に或いは前記平膜部の少なくとも一部位と共に、前記第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する気泡部として形成されており、
前記多孔質層は、その前記少なくとも一部位にて、前記少なくとも1つの筒部の頂部に対する前記第2融着フィルムの対応部に前記融点よりも低い温度にて融着されている自動車用サイレンサー。
【請求項2】
前記平膜部は、前記第2バリアフィルムの前記内周側部位の全体でもって、前記第1融着フィルムの前記内周側部位に対する対応部位に前記融点よりも低い温度にて融着されており、
前記少なくとも1つの筒部は、前記平膜部の複数の部位からそれぞれ前記第1融着フィルムに向けて開口するように当該第1融着フィルムとは離れる方向に独立気泡部として突出する複数の筒部であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項3】
前記少なくとも1つの筒部は、前記平膜部の少なくとも一部位と共に、前記第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する少なくとも1つの連通気泡部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項4】
多孔質材料により形成してなる多孔質層と、当該多孔質層の少なくとも一部位に積層されるフィルム積層体とを備えて、
当該フィルム積層体は、
熱可塑性樹脂により形成してなる第1融着フィルムと、この第1融着フィルムに積層されて当該第1融着フィルムに前記融点よりも低い温度にて融着した前記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂からなる第1バリアフィルムとを有する第1フィルム層と、
前記熱可塑性樹脂により形成してなる第2融着フィルムであってその外周縁部にて前記第1バリアフィルムの外周縁部に前記融点よりも低い温度にて融着してなる第2融着フィルムと、この第2融着フィルムに積層されて当該第2融着フィルムに前記融点よりも低い温度にて融着した前記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂からなる第2バリアフィルムとを有する第2フィルム層とを具備しており、
当該第2フィルム層は、
前記第2融着フィルムの前記外周縁部の内周側部位及びこれに対する前記第2バリアフィルムの対応融着部位の双方の少なくとも各一部を、前記第1バリアフィルムに向けて開口するように当該第1バリアフィルムとは離れる方向に突出させてなる少なくとも1つの筒部と、
前記第2融着フィルムの前記内周側部位及び前記第2バリアフィルムの前記対応融着部位の双方のうち前記少なくとも1つの筒部以外の各部位からなる平膜部とを有して、
前記少なくとも1つの筒部は、独自に或いは前記平膜部の少なくとも一部位と共に、前記第1バリアフィルムとの間にて、空気を内包する気泡部として形成されており、
前記多孔質層は、その前記少なくとも一部位にて、前記第1フィルム層の前記第1融着フィルムに前記融点よりも低い温度にて融着されている自動車用サイレンサー。
【請求項5】
前記平膜部は、前記第2融着フィルムの前記内周側部位の全体でもって、前記第1バリアフィルムの前記内周側部位に対する対応部位に前記融点よりも低い温度にて融着されており、
前記少なくとも1つの筒部は、前記平膜部の複数の部位からそれぞれ前記第1バリアフィルムに向けて開口するように当該第1バリアフィルムとは離れる方向に独立気泡部として突出する複数の筒部であることを特徴とする請求項4に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項6】
前記少なくとも1つの筒部は、前記平膜部の少なくとも一部位と共に、前記第1バリアフィルムとの間にて、空気を内包する少なくとも1つの連通気泡部として形成されていることを特徴とする請求項4に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項7】
多孔質材料により形成してなる両多孔質層と、当該両多孔質層の少なくとも各対向部位の間に積層されるフィルム積層体とを備えて、
当該フィルム積層体は、
熱可塑性樹脂により形成してなる両第1融着フィルムと、前記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂により形成されて前記両第1融着フィルムの間に前記融点よりも低い温度にて融着してなる第1バリアフィルムとを有する第1フィルム層と、
前記熱可塑性樹脂により形成してなる両第2融着フィルムの一方の第2融着フィルムであってその外周縁部にて前記両第1融着フィルムの一方の第1融着フィルムの外周縁部に前記融点よりも低い温度にて融着してなる一方の第2融着フィルムと、この一方の第2融着フィルムに積層されて当該一方の第2融着フィルムに前記融点よりも低い温度にて融着した前記熱可塑性樹脂よりも高い融点を有する樹脂からなる第2バリアフィルムと、この第2バリアフィルムに積層されて当該第2バリアフィルムに前記融点よりも低い温度にて融着した他方の第2融着フィルムとを有する第2フィルム層とを具備しており、
当該第2フィルム層は、前記一方の第2融着フィルムの前記外周縁部の内周側部位並びにこれに対する前記第2バリアフィルム及び前記他方の第2融着フィルムの各対応融着部位の少なくとも各1部を、前記一方の第1融着フィルムに向けて開口するように当該一方の第1融着フィルムとは離れる方向に突出させてなる少なくとも1つの筒部と、
前記一方の第2融着フィルムの前記内周側部位、前記第2バリアフィルムの前記対応融着部位及び前記他方の第2融着フィルムの前記対応融着部位のうち前記少なくとも1つの筒部以外の各部位からなる平膜部とを有して、
前記少なくとも1つの筒部は、独自に或いは前記平膜部の少なくとも一部位と共に、前記一方の第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する気泡部として形成されており、
前記両多孔質層の一方は、その前記少なくとも一部位にて、前記他方の第1融着フィルムに前記融点よりも低い温度にて融着され、他方の多孔質層は、その前記少なくとも一部位にて、前記少なくとも1つの筒部の頂部に対する前記他方の第2融着フィルムの対応部に前記融点よりも低い温度にて融着されている自動車用サイレンサー。
【請求項8】
前記平膜部は、前記一方の第2融着フィルムの前記内周側部位の全体でもって、前記一方の第1融着フィルムの前記内周側部位に対する対応部位に前記融点よりも低い温度にて融着されており、
前記少なくとも1つの筒部は、前記平膜部の複数の部位からそれぞれ前記一方の第1融着フィルムに向けて開口するように当該一方の第1融着フィルムとは離れる方向に独立気泡部として突出する複数の筒部であることを特徴とする請求項7に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項9】
前記少なくとも1つの筒部は、前記平膜部の少なくとも一部位と共に、前記一方の第1融着フィルムとの間にて、空気を内包する連通気泡部として形成されていることを特徴とする請求項7に記載の自動車用サイレンサー。
【請求項10】
両多孔質層用多孔質部材を準備するとともに、熱可塑樹脂材料からなる両融着フィルム及びこれら両融着フィルムの間に融着されて前記熱可塑樹脂材料の融点よりも高い融点を有する樹脂材料からなるバリアフィルムによりそれぞれ形成してなる第1及び第2の3層フィルムを準備して、
前記第2の3層フィルムを、平膜部からその厚さ方向へ複数の筒部を突出させる構成となるように真空成形し、
前記両多孔質層用多孔質部材の一方の少なくとも一部位に前記第1の3層フィルム層を積層し、前記複数の筒部を前記第1の3層フィルム層とは逆方向に突出させるように、前記第2の3層フィルム層を前記第1の3層フィルム層に積層し、かつ前記両多孔質層用多孔質部材の他方の前記少なくとも一部位に対する対向部位を前記複数の筒部を介し前記第2の3層フィルム層に積層した構成に対し、前記各融着フィルムを溶融するように加熱後、冷間加圧成形を施すようにした自動車用サイレンサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−96778(P2012−96778A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172719(P2011−172719)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(509069892)豊和繊維工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】