説明

自動車用ヒッチメンバーガード、自動車用ヒッチメンバーガードユニット及び車体構造

【課題】ヒッチメンバーを有する自動車の車体後部における外観品質を向上させるとともに、後面衝突時における安全性を向上させる。
【解決手段】ヒッチメンバーガード20は、左右方向の長さがヒッチメンバー3よりもやや長尺な板状の部材であって、ヒッチメンバー3よりも上下方向の幅がやや広い主体部13と、上縁フランジ14と下縁フランジ15が形成されている。主体部13と上縁フランジ14には、ヒッチメンバーガード20を車体1に装着した装着状態において、前記連結部4と固定部材41と対向する部位に、切欠部16が形成され、また、主体部13には、前記装着状態において前記配索部5に対応する部位に、配索用開口部17が設けられている。ヒッチメンバーガード20は、ブラケット8を介して、リヤサイドメンバー2、2の後端部であってヒッチメンバー3の両端部に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラーが連結されるヒッチメンバーを備えた自動車に装着される自動車用ヒッチメンバーガード、自動車用ヒッチメンバーガードユニット及び車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トレーラーの牽引機能を備えた乗用自動車が公知である。この自動車は、車体前後方向に配設された左右一対のリヤサイドメンバーと、この一対のリヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定されて車幅方向に延在するヒッチメンバーとを備えている(例えば、特許文献1参照。)。そして、ヒッチメンバーに設けられた連結部にトレーラーを連結することにより、これを牽引するものである。
【特許文献1】特開2002−220071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなトレーラーの牽引機能を備えた乗用自動車は、トレーラーが連結されていない非牽引状態においても使用される。この非牽引状態においては、車両の後部に車幅方向に延在するヒッチメンバーが露呈することとなる。このため、後方よりヒッチメンバーが目視されることにより、車体後部における外観品質が低下してしまう。
【0004】
また、非牽引状態において当該自動車の後部に他の車両が追突したり、当該自動車の後退時に後部が障害物に衝突する後面衝突が発生すると、その衝撃がヒッチメンバーに直接的に入力される。このため、後面衝突時における衝撃が車体や乗員に直接的に作用し、乗員の安全性を低下させる一因となってしまう。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、ヒッチメンバーを有する自動車の車体後部における外観品質を向上させるとともに、後面衝突時における安全性を向上させるための自動車用ヒッチメンバーガード、自動車用ヒッチメンバーガードユニット及び車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1記載の発明に係る自動車用ヒッチメンバーガードは、車体前後方向に配設された左右一対のリヤサイドメンバーと、この一対のリヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定されて車幅方向に延在し、トレーラーが連結されるヒッチメンバーとを備えた自動車に装着されるガード部材であって、前記ヒッチメンバーに沿ってその後方に配置され、両端部を前記リヤサイドメンバー固定されることを特徴とする。
【0007】
したがって、この自動車用ヒッチメンバーガードは、ヒッチメンバーに沿ってその後方に配置され、両端部を前記リヤサイドメンバー固定されることにより、ヒッチメンバーを有する自動車に装着される。
【0008】
これにより、ヒッチメンバーは、その後部にてヒッチメンバーガードによって遮蔽されることから、ヒッチメンバーにトレーラーが連結されていない非牽引状態において、車体後部にヒッチメンバーが露呈することがない。したがって、後方よりヒッチメンバーが目視されることがなく、車体後部における外観品質を向上させることができる。
【0009】
また、非牽引状態において当該自動車の後部に他の車両が追突したり、当該自動車の後退時に後部が障害物に衝突する後面衝突が発生した場合には、先ずヒッチメンバーガードに他の車両や障害物が衝突する。これにより、ヒッチメンバーガードが変形して衝突エネルギーを吸収する。したがって、後面衝突時の衝撃がヒッチメンバーに直接的に入力されることを回避することができるとともに、衝撃を緩和することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明に係る自動車用ヒッチメンバーガードにあっては、前記ヒッチメンバーには、前記トレーラーを連結するための連結部と、前記トレーラーからの配線を配索するための配索部とが設けられ、前記連結部に対向する部位と前記配索部に対向する部位とに開口部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
したがって、ヒッチメンバーガードが装着されていても、開口部を介して支障なくヒッチメンバーにトレーラーを連結し、自動車とトレーラーとを電気的に接続することができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明に係る自動車用ヒッチメンバーガードにあっては、前記リヤサイドメンバーには、前記ヒッチメンバーよりも後方に突出するブラケットが固定され、このブラケットの先端部に固定されることを特徴とする。
【0013】
したがって、後面衝突時にはブラケットの変形によっても衝突エネルギーを吸収することができ、後面衝突時における衝突エネルギーの吸収効果を高めることができる。
【0014】
また、請求項4記載の発明に係る自動車用ヒッチメンバーガードユニットにあっては、車体前後方向に配設された左右一対のリヤサイドメンバーと、この一対のリヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定されて車幅方向に延在し、トレーラーが連結されるヒッチメンバーとを備えた自動車に装着されるガードユニットであって、前記リヤサイドメンバーの後端部に固定されて、前記ヒッチメンバーよりも後方に突出するブラケットと、このブラケットの先端部に固定されて、前記ヒッチメンバーに沿ってその後方に配置されるヒッチメンバーガードとからなることを特徴とする。
【0015】
したがって、前記ブラケットとヒッチメンバーガードとからなる自動車用ヒッチメンバーガードユニットをヒッチメンバーを有する自動車に装着することにより、車体後部における外観品質を向上させることができるのみならず、後面衝突時における衝突エネルギーの吸収効果を高めることができる。
【0016】
また、請求項5記載の発明に係る車体構造にあっては、車体前後方向に配設された左右一対のリヤサイドメンバーと、この一対のリヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定されて車幅方向に延在し、トレーラーが連結されるヒッチメンバーとを備えた自動車の車体構造であって、前記リヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定され、前記ヒッチメンバーに沿ってその後方に延在するカバー部材を設けたことを特徴とする。
したがって、車体構造として請求項1記載の発明と同様の作用効果を奏する。
【0017】
また、請求項6記載の発明に係る車体構造にあっては、前記リヤサイドメンバーに、前記ヒッチメンバーよりも後方に突出するブラケットを固定し、このブラケットの先端部に前記ガード部材を固定したことを特徴とする。
したがって、車体構造として請求項3記載の発明と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヒッチメンバーにトレーラーが連結されていない非牽引状態において、車体後部にヒッチメンバーが露呈することを防止して、車体後部における外観品質を向上させることができる。
【0019】
また、非牽引状態において当該自動車の後部に他の車両が追突したり、当該自動車の後退時に後部が障害物に衝突する後面衝突が発生した場合において、その衝撃がヒッチメンバーに直接的に入力されることを回避することができるとともに、衝撃を緩和して、安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1に示すように、乗用自動車の車体1には、車体前後方向に配設された左右一対のリヤサイドメンバー2、2が設けられている。これら一対のリヤサイドメンバー2、2は、車体の後端部まで達する長さを有している。
【0021】
前記リヤサイドメンバー2、2の後端部には、車幅方向に延在するヒッチメンバー3の両端部が固定されている。ヒッチメンバー3の中央部には、トレーラーを連結するため連結部4が固定部材41とともに設けられている。この連結部4の側部には、トレーラーからの配線を配索するための配索部5が設けられており、配索部5内にはトレーラーからの配線の先端部に設けられているプラグを差し込むためのコンセント(図示せず)が設けられている。
【0022】
前記一対のリヤサイドメンバー2、2の後端部であって、ヒッチメンバー3の両端部には、ボルト6及びこのボルト6に螺合されるナット7より、ブラケット8が固定される。このブラケット8は、取り付け状態において先端部が前記連結部4よりも後方に突出する前後長を有している。また、ブラケット8は、図2に示すように対称形状であって、車体前後方向に延在する側面部9と、この側面部9の先端部に設けられ、相近接する方向に屈曲する上部屈曲部10及び下部屈曲部11が設けられている。これら、側面部9と上部屈曲部10及び下部屈曲部11には、固定用の貫通孔12が設けられている。
【0023】
一方、図3に示すように、ヒッチメンバーガード20は、左右方向の長さがヒッチメンバー3よりもやや長尺な板状の部材であって、例えばステンレスSUS304により成形されている。このヒッチメンバーガード20は、ヒッチメンバー3よりも上下方向の幅がやや広い主体部13を有し、主体部13の上縁部には斜め前方上方に屈曲された上縁フランジ14が形成され、下縁部には斜め前方下方に屈曲された下縁フランジ15が形成されている。
【0024】
主体部13と上縁フランジ14には、ヒッチメンバーガード20を車体1に装着した装着状態において、前記連結部4と固定部材41とに対向する部位に、切欠部16が形成されている。また、主体部13には、前記装着状態において前記配索部5に対応する部位に、配索用開口部17が設けられている。さらに、主体部13には、ヒッチメンバーガード20の装飾性を高めるため、あるいは軽量化を図るために複数の装飾用開口部18が設けられており、主体部13と上縁フランジ14の両側部には、装着用の貫通孔12が設けられている。
【0025】
以上の構成に係る本実施の形態において、例えば一対のブラケット8とヒッチメンバーガード20とのセットが自動車用ヒッチメンバーガードユニットとして販売されてユーザーに提供される。このヒッチメンバーガードユニットを入手したユーザーは、ボルト6及びナット7より、ブラケット8の側面部9をリヤサイドメンバー2、2の後端部であってヒッチメンバー3の両端部に固定する。
【0026】
次に、ブラケット8の上部屈曲部10に主体部13の両端部を、下部屈曲部11に下縁フランジ15の両端部を、各々ボルト6及びナット7より固定して、ヒッチメンバーガード20を装着する。このようにして、ヒッチメンバーガード20が装着されると、ヒッチメンバー3は、その後部にてヒッチメンバーガード20により遮蔽される。したがって、ヒッチメンバー3にトレーラーが連結されていない非牽引状態において、車体後部にヒッチメンバー3が露呈することがない。よって、後方よりヒッチメンバー3が目視されることがなく、車体後部における車体1の外観品質を向上させることができる。
【0027】
また、非牽引状態において当該自動車の後部に他の車両が追突したり、当該自動車の後退時に後部が障害物に衝突する後面衝突が発生した場合には、先ずヒッチメンバーガード20に他の車両や障害物が衝突する。これにより、ヒッチメンバーガード20が変形して衝突エネルギーを吸収する。したがって、その衝撃がヒッチメンバー3に直接的に入力されることを回避することができるととも衝撃を緩和することができる。
【0028】
しかも、ヒッチメンバーガード20はブラケット8を介して装着されていることから、後面衝突時にはブラケット8の変形によっても衝突エネルギーを吸収することができ、後面衝突時における衝突エネルギーの吸収効果を高めることができる。
【0029】
また、トレーラーを牽引する際には、切欠部16を介して連結部4にトレーラーを連結することができるとともに、配索用開口部17を介してトレーラーからの配線を配索して、プラグをコンセントに差し込むことができる。したがって、ヒッチメンバーガード20が装着されていても、支障なくヒッチメンバー3にトレーラーを連結し、あるいは電気的に接続することができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、ユーザーが既存の車両にブラケット8とヒッチメンバーガード20とを取り付けるようにしたが、車体1の製造ラインにおいて、ブラケット8とヒッチメンバーガード20とを取り付け、ヒッチメンバーガード20を有する車体1としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態にかかる車体の要部を示す斜視図である。
【図2】ブラケットを示す斜視図である。
【図3】ヒッチメンバーガードの取り付け状態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 車体
2 リヤサイドメンバー
3 ヒッチメンバー
4 連結部
5 配索部
8 ブラケット
9 側面部
10 上部屈曲部
11 下部屈曲部
12 貫通孔
13 主体部
14 上縁フランジ
15 下縁フランジ
16 切欠部
17 配索用開口部
18 装飾用開口部
20 ヒッチメンバーガード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に配設された左右一対のリヤサイドメンバーと、この一対のリヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定されて車幅方向に延在し、トレーラーが連結されるヒッチメンバーとを備えた自動車に装着されるガード部材であって、
前記ヒッチメンバーに沿ってその後方に配置され、両端部を前記リヤサイドメンバー固定されることを特徴とする自動車用ヒッチメンバーガード。
【請求項2】
前記ヒッチメンバーには、前記トレーラーを連結するための連結部と、前記トレーラーからの配線を配索するための配索部とが設けられ、
前記連結部に対向する部位と前記配索部に対向する部位とに開口部が形成されたことを特徴とする請求項1記載の自動車用ヒッチメンバーガード。
【請求項3】
前記リヤサイドメンバーには、前記ヒッチメンバーよりも後方に突出するブラケットが固定され、このブラケットの先端部に固定されることを特徴とする請求項1又は2記載の自動車用ヒッチメンバーガード。
【請求項4】
車体前後方向に配設された左右一対のリヤサイドメンバーと、この一対のリヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定されて車幅方向に延在し、トレーラーが連結されるヒッチメンバーとを備えた自動車に装着されるガードユニットであって、
前記リヤサイドメンバーの後端部に固定されて、前記ヒッチメンバーよりも後方に突出するブラケットと、
このブラケットの先端部に固定されて、前記ヒッチメンバーに沿ってその後方に配置されるヒッチメンバーガードと
からなることを特徴とする自動車用ヒッチメンバーガードユニット。
【請求項5】
車体前後方向に配設された左右一対のリヤサイドメンバーと、この一対のリヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定されて車幅方向に延在し、トレーラーが連結されるヒッチメンバーとを備えた自動車の車体構造であって、
前記リヤサイドメンバーの後端部に両端部を固定され、前記ヒッチメンバーに沿ってその後方に延在するカバー部材を設けたことを特徴とする車体構造。
【請求項6】
前記リヤサイドメンバーに、前記ヒッチメンバーよりも後方に突出するブラケットを固定し、このブラケットの先端部に前記ガード部材を固定したことを特徴とする請求項5記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−302747(P2008−302747A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149903(P2007−149903)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(593116364)株式会社サン自動車工業 (15)
【Fターム(参考)】