説明

自動車用ランプの取付構造

【課題】バンパの樹脂成形をより容易に行うことを可能としながら、ランプの取り付けの便宜性を図るようにした自動車用ランプの取付構造を得る。
【解決手段】バンパ1の前壁部1aと当該前壁部1aに車両後方側に突設されたランプ取付用のブラケット1dとが一体に樹脂成形された自動車用ランプの取付構造において、ブラケット1dの表面に、バンパ1の樹脂成形時の型抜き方向に沿って伸びるマーカー溝1eを成形し、当該マーカー溝1eの一端としての尖端部1fをランプを取り付ける取付具用の貫通孔の穿設位置として使用できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ランプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンパにフォグランプを選択的に取り付けられるようにするために、バンパに形成されたフォグランプの取付開口部を脆弱部(連結部)を介して連結された蓋で塞いでおき、フォグランプを取り付ける場合にのみ当該脆弱部を切断してフォグランプを取り付けるようにした構造が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
かかる構造では、バンパに、フォグランプを取り付けるためのブラケットが設けられており、当該ブラケットにはフォグランプを取り付けるねじを挿通するための孔が形成されている。
【特許文献1】実開平2−66337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構造で、ブラケットをバンパの本体部と樹脂一体成形する際に、ねじを挿通するための孔を樹脂成形とともに得ようとすると、スライド型が必要となる等、製造に手間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、バンパの樹脂成形をより容易に行うことを可能としながら、ランプの取り付けの便宜性を図るようにした自動車用ランプの取付構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、バンパの本体部と当該本体部の車両後方側に突設されたランプ取付用のブラケットとが一体に樹脂成形された自動車用ランプの取付構造において、前記ブラケットの表面に、バンパの樹脂成形時の型抜き方向に沿って伸びるマーカー溝を当該樹脂成形において成形し、当該マーカー溝の一端をランプを取り付ける取付具用の孔の穿設位置として使用できるようにしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バンパの樹脂成形時には取付具用の孔を形成せずに済む分、スライド型等が不要となり、製造の手間を減らして、バンパをより容易に成形することができる。
【0008】
そして、マーカー溝の一端を、取付具用の孔の穿設位置として認識することができるため、当該取付具用の孔を樹脂成形時に形成せずとも、その後ランプを取り付ける際に所定の位置に精度良く穿設することができる。
【0009】
さらに、このマーカー溝は、バンパの樹脂成形時の型抜き方向に沿って伸びるように形成したので、当該樹脂成形時にスライド型等を用いることなく容易に形成することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる自動車用ランプの取付構造の分解斜視図、図2は、バンパを車両後方側から見た斜視図、図3は、図2のIII−III断面図、図4は、ブラケットに取付具用の孔を形成した状態を示す斜視図、図5は、バンパにフォグランプを取り付けた状態を示す正面図、図6は、図5のVI−VI断面図、図7は、フォグランプ取付部を車両後方側から見た斜視図、図8は、図7のVIII−VIII断面図である。なお、図中、FRはバンパ1を車体(図示せず)に取り付けた状態における車両前方、UPは車両上方を示す。
【0011】
バンパ1の前壁部1aには、車両後方に向けて突設された筒状のフォグランプ取付部(ランプ取付部)1bが形成されており、当該フォグランプ取付部1bの後端部に、環状の脆弱部1hを介して円板状のリッド1cが連結されている。フォグランプ(ランプ)2を取り付ける際には、脆弱部1hから円板状のリッド1cを除去し(切り離し)、フォグランプ取付部1bに筒状開口を形成することができるようになっている。
【0012】
フォグランプ2は、光源やリフレクタ(図示せず)を内蔵して略円柱状の外観を呈する本体部2aと、当該本体部2aの外周にフランジ状に取り付けられる板状部材からなる取付ブラケット2bとを備えている。なお、取付ブラケット2bは本体部2aにボルト3で固定されている。
【0013】
取付ブラケット2bには、その端部の複数箇所(本実施形態では三箇所)において、取付姿勢で略車両前方に向けて折曲された舌片部2cが設けられており、各舌片部2cには、取付具用の孔として、バーリング加工やタップ加工によって形成された雌ネジ孔2dが形成されている。
【0014】
また、フォグランプ取付部1bの周囲の複数箇所(本実施形態では三箇所)には、前壁部1aから車両後方側に突出する舌片状のブラケット1dが設けられている。本実施形態では、このブラケット1dは、略水平面に沿って車両後方に向けて突出する板状部として形成されており、前壁部1a等を含むバンパ1の本体部とともに樹脂一体成形されるようになっている。なお、本実施形態では、バンパ1の樹脂成形における型抜き方向(型合わせ方向)は、バンパ1を車体に取り付けた状態では車両前後方向とほぼ一致している。
【0015】
そして、このブラケット1dの表面(本実施形態では上面)には比較的浅いマーカー溝1eが形成されている。このマーカー溝1eは、バンパ1の樹脂成形における型抜き方向(型合わせ方向)、すなわち車体への取付状態における車両前後方向に略沿って延在するとともに、ブラケット1dの先端側(後端側)から根元側(前方側)にかけてその幅が漸減しており、尖端部1fを頂点とする平面視で略三角形状に形成されている。
【0016】
そして、このマーカー溝1eの一端としての尖端部1fが、取付具用の孔(本実施形態ではネジ用の貫通孔1g;図4)の穿設位置として用いられる。本実施形態では、上述したように、マーカー溝1eを略三角形状に形成しているため、尖端部1fを視認しやすいという利点がある。
【0017】
また、このように、尖端部1fに取付具用の孔を形成する場合、尖端部1fにおけるマーカー溝1eの奥壁や側壁がガイドとなって、ドリル等の孔あけ工具を位置決めしやすい上、孔あけの際、工具の位置ずれやぶれ等が生じにくくなるという利点がある。
【0018】
なお、図3に示すように、ブラケット1dは先端側ほど厚みが薄くなっているが、このような場合には、マーカー溝1eの深さを先端側(他端側:型抜き方向)に向けて浅くなる(徐変させる)ようにして、より剛性および強度を高めることも可能である。なお、マーカー溝は、ブラケットの先端部まで形成されることは必須では無く、尖端部(穿設位置)からブラケットの先端部の手前(途中)まで形成されるものであってもよく、先端側ほど厚みが薄くなっているブラケットの場合は、当該マーカー溝が途中までとなる構成をより容易に得ることができる。
【0019】
上記構造において、フォグランプ2を取り付ける場合、まずは、バンパ1の前壁部1aに形成されたフォグランプ取付部1bからリッド1cを切り離して筒状の開口部を形成するとともに、各ブラケット1dのマーカー溝1eの尖端部1fに、ドリル等の孔あけ工具を用いて貫通孔1gを形成する。
【0020】
そして、バンパ1の前壁部1aの車両後方側からフォグランプ取付部1b内にフォグランプ2の本体部2aを挿入するとともに、バンパ1のブラケット1dの下面に、貫通孔1gと雌ネジ孔2dとが重なり合うようにフォグランプ2の取付ブラケット2bを当接させ、取付具としてのネジ4を、ブラケット1dの上方から貫通孔1gに挿通して雌ネジ孔2dに螺結し、以て、ブラケット1dと取付ブラケット2bとを結合する。こうしてフォグランプ2をバンパ1に取り付けると、図5および図6に示すように、フォグランプ2の前面(光の出射面)2eがフォグランプ取付部1bから前方に露出することになる。
【0021】
ところで、図7および図8に示すように、フォグランプ取付部1bにおいて、環状の脆弱部1hは、車両後方に向けて突設される筒状の周壁部1iの先端側で、リッド1cの周縁1jから略一定の高さ分を薄肉化することで形成されており、周壁部1iの一般部1iaと脆弱部1hとの境界には略垂直(鉛直)な面としての段差面1kが形成されている。
【0022】
また、この環状の脆弱部1hは、環状の側壁部1haと先端側(周縁1j側)で屈曲された縦壁部1hbとを備えており、この縦壁部1hbには、当該縦壁部1hbよりさらに薄肉化された凹部として切断基点部1mが形成されている。この切断基点部1mの壁面1nは、カッターナイフ等の切断工具(図示せず)を挿入するためのガイド部として機能する。
【0023】
このように、本実施形態では、脆弱部1hの一部に当該脆弱部1hよりさらに薄い部分(最薄部分)として切断基点部1mを形成したため、脆弱部1h全体を最薄部分とした場合に比べて、最薄部分を狭くできる分、樹脂成形時にウエルド等の成形不良が生じるのを抑制することができる。
【0024】
また、仮に、切断基点部1mが側壁部1haに設けられると、樹脂成形時に周壁部1iの高さ方向の比較的速い樹脂の流動に伴ってウエルド等の成形不良が生じやすくなるが、本実施形態では、屈曲させた分だけ樹脂の流動速度が遅くなる縦壁部1hbに切断基点部1mを設けることで、ウエルド等の成形不良を生じにくくしている。
【0025】
かかる構成では、まずは、図8中に矢印C1で示すように、切断基点部1mに車両前後方向前方に向けて切断工具を突き刺して貫通させ、この切断工具を筒状のフォグランプ取付部1bの周方向に沿って動かすことで縦壁部1hbにその延在方向に沿う切り込みを入れて、リッド1cを周壁部1iから切り離す。
【0026】
次に、図8中に矢印C2で示すように、切断工具を段差面1kに押し当てて沿わせながら周壁部1iに径内方向(本実施形態では下方)に突き刺して貫通させ、この切断工具を筒状のフォグランプ取付部1bの周方向に沿って動かすことで側壁部1haと周壁部1iの一般部1iaとの境界部分にその延在方向に沿う切り込みを入れて、脆弱部1hを一般部1iaから切り離す。すなわち、切断端面は、段差面1kに沿う面となる。
【0027】
すなわち、本実施形態によれば、第1回目の切断工程でリッド1cを一旦切り離した後に、残った脆弱部1hを第2回目の切断工程で切り離して切断端面を形成することができるため、第2回目の切断工程の際には、リッド1cが無い分、切り離される部分の質量が小さくなって切断部分に不本意な力が作用したり切り離される部分が切断作業の邪魔になったりするのを抑制することができて、切断端面をより精度良くきれいに形成することができる。
【0028】
以上の本実施形態によれば、バンパ1の本体部と当該本体部に車両後方側に突設されたランプ取付用のブラケット1dとが一体に樹脂成形された自動車用ランプの取付構造において、当該ブラケット1dの表面に、バンパ1の樹脂成形時の型抜き方向に沿って伸びるマーカー溝1eを成形し、当該マーカー溝1eの一端としての尖端部1fを、フォグランプ2を取り付ける取付具用の孔の穿設位置として使用できるようにしたため、バンパ1の樹脂成形時には取付具用の貫通孔1gを形成しない分、スライド型等が不要となり、製造の手間を減らして、バンパ1をより容易にかつより安価に成形することができる。
【0029】
そして、孔あけ作業者は、マーカー溝1eの一端としての尖端部1fを、取付具用の貫通孔1gの穿設位置として容易に視認することができるため、当該取付具用の貫通孔1gを所定の位置に精度良く穿設することができる。
【0030】
また、このマーカー溝1eは、バンパ1の樹脂成形時の型抜き方向に沿って伸びるように形成したので、当該樹脂成形時にスライド型等を用いることなく容易に形成することができるという利点がある。
【0031】
また、本実施形態では、マーカー溝1eが、取付具用の貫通孔1gの穿設位置となる尖端部1fから他端側に向けて拡幅しているため、尖端部1fをより確実に視認できるという利点がある。このとき、マーカー溝1eは、尖端部1fから樹脂成形時の型を抜く方向に向けて拡幅しているため、当該拡幅形状を容易に成形することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、環状の脆弱部1hが部分的にさらに薄肉化されて切断基点部1mが形成されたため、環状の脆弱部1h全体に亘ってさらに薄い部分が環状に設けられた場合に比べてウエルド等の成形不良の発生を抑制することができる。
【0033】
さらに、本実施形態によれば、脆弱部1h内で樹脂成形時の流速が側壁部1haより遅くなる縦壁部1hbに切断基点部1mが形成されているため、側壁部1haに切断基点部を設けた場合に比べてウエルド等の成形不良の発生を抑制することができる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0035】
まず、上記実施形態では、バンパに形成したブラケットを水平面に略沿う板状部として形成したが、これには限定されず、例えば、その表面(の法線方向)が横方向や、斜め上方、斜め下方等を指向するようにしても良い。
【0036】
また、上記実施形態では、マーカー溝がブラケットの表面としての上面に形成された場合を例示したが、マーカー溝は、ブラケットの表面としての下面や側面等に設けてもよい。
【0037】
そして、マーカー溝の形状は、型抜き方向に略沿うものであれば、平面視で三角形状とすることは必須では無く、例えば、直線状に伸びる溝としてもよいし、矩形や三角形等が組み合わされた形状としてもよい。ただし、樹脂成形の観点から、マーカー溝の幅は、取付具用の孔の穿設位置としての一端から他端側に離れるにつれて、すなわち樹脂成形時の型を抜く方向に向けて、略一定かあるいは拡大するように形成するのが好適である。
【0038】
また、マーカー溝の一端(尖端部)の奥壁を半円筒面状に形成するなどして、工具のガイド性を高めてもよい。
【0039】
また、取付具として、ネジ以外のクリップやリベット等を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態にかかる自動車用ランプの取付構造の分解斜視図である。
【図2】本実施形態にかかる自動車用ランプの取付構造のバンパを車両後方側から見た斜視図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】本実施形態にかかる自動車用ランプの取付構造のブラケットに取付具用の孔を形成した状態を示す斜視図である。
【図5】本実施形態にかかる自動車用ランプの取付構造のバンパにフォグランプを取り付けた状態を示す正面図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】本実施形態にかかる自動車用ランプの取付構造のランプ取付部を車両後方側から見た斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 バンパ
1a 前壁部(本体部)
1b フォグランプ取付部(ランプ取付部)
1c リッド
1d ブラケット
1e マーカー溝
1f 尖端部(一端)
1g 貫通孔(孔)
1h 脆弱部
1ha 側壁部
1hb 縦壁部
1m 切断基点部
2 フォグランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパの本体部と当該本体部の車両後方側に突設されたランプ取付用のブラケットとが一体に樹脂成形された自動車用ランプの取付構造において、
前記ブラケットの表面に、バンパの樹脂成形時の型抜き方向に沿って伸びるマーカー溝を当該樹脂成形において成形し、当該マーカー溝の一端をランプを取り付ける取付具用の孔の穿設位置として使用できるようにしたことを特徴とする自動車用ランプの取付構造。
【請求項2】
前記マーカー溝は、前記取付具用の孔の穿設位置となる一端から他端側に向けて拡幅していることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ランプの取付構造。
【請求項3】
先端側をリッドで塞がれた筒状のランプ取付部の当該先端側に薄肉化された環状の脆弱部が設けられ、当該脆弱部が部分的にさらに薄肉化されて切断基点部が形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用ランプの取付構造。
【請求項4】
前記脆弱部は、環状の側壁部と、当該側壁部の先端側を屈曲させた縦壁部と、を有し、
前記切断基点部が前記縦壁部に設けられることを特徴とする請求項3に記載の自動車用ランプの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−137582(P2008−137582A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328037(P2006−328037)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】