説明

自動車用光電式センサー装置

自動車のウィンドーから受信器の方向に反射される光線用の送信器及び受信器と自動車のウィンドーに対して光線を入力結合及び出力分離させるためのカプラー部品とを備えており、このカプラー部品が、多数の個別プリズムから成るプリズム構造として構成され、これらの個別プリズムが、入力結合領域では入射方向に対して垂直であるプリズム面を有し、出力分離領域では光線の出射方向に対して垂直に配置されたプリズム面を有する、自動車のウィンドー上の湿度を検出するための自動車用光電式センサー装置を記載している。そのようなセンサー装置の外部光に関する感度を低減するための実施形態を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のウィンドーから受信器の方向に反射される光線用の送信器及び受信器と自動車のウィンドーに対して光線を入力結合及び出力分離させるためのカプラー部品とを備えており、このカプラー部品が、多数の個別プリズムから成るプリズム構造として構成され、これらの個別プリズムが、入力結合領域では入射方向に対して垂直であるプリズム面を有し、出力分離領域では光線の出射方向に対して垂直に配置されたプリズム面を有する、自動車のウィンドー上の湿度を検出するための自動車用光電式センサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような湿度センサーは、特許文献1により周知であり、動作原理としては、光学系を介してフロントガラスに45°の角度で入力結合させた赤外光の全反射が妨害されることに基づくものである。乾いた綺麗なウィンドーでは、光は、ウィンドー外側で全反射されて、同じく45°の角度で第二の光学系を介して受信器により検出される。ウィンドーが濡れていると、その位置では全反射がもはや起こらないので、光が光路から分離されることとなる。
【0003】
そのようなセンサー構成では完全に排除することができない外部光の影響が問題となる。外部光は、湿度センサーの感度を低減させるか、さもなければスプリアス放射を引き起こしてしまう可能性が有り、そのため外部光を低減することは、機能を改善することを意味する。
【0004】
理論的及び実証的な考察が示す通り、外部光が外部からカプラー本体と集束レンズ部品とを通って受信器に当たることができる特別な光学的パスが存在する。ウィンドーの垂線に近い所定の角度で入射する外部光は、本来の使用光に対して平行なプリズム側面上に当たって、その側面を掠めて出射して行く。ウィンドーから反射された使用光を集めて、受信器上に集束させる受信器側のレンズは、小さくない受入角を有するとともに、受信器は、広い面から構成されているので、そのような外部光は、受信器に到達する可能性が有る。
【特許文献1】ドイツ特許第19720874号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、この発明の課題は、車両のウィンドーを通って受信器に入射する外部光の影響を明らかに低減させた自動車用光電式センサー装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一には、この課題は、この発明にもとづき、少なくとも出力分離領域において、光線方向に対して垂直に配置されていない他のプリズム面の中の少なくとも幾つかが、粗くされているか、或いは光線を通さないように構成されていることによって解決される。
【0007】
第二には、この課題は、この発明にもとづき、少なくとも出力分離領域において、光線方向に対して垂直に配置されていない他のプリズム面の中の少なくとも幾つかが、光線の出射方向に対して平行でない形に配置されていることによって解決される。
【0008】
第三には、この課題は、この発明にもとづき、少なくとも出力分離領域において、光線方向に対して垂直に配置されていない他のプリズム面の中の少なくとも幾つかが、追加のプリズムを重ね合わされていることによって解決される。
【0009】
従って、この発明は、カプラー部品のプリズム側面を掠めて出射する外部光を低減する措置を提案するものである。このことは、カプラー本体の使用光に対して平行な側面を粗くするか、又はコーティングするか、カプラー本体の使用光に対して平行な側面を傾斜させるか、或いは掠めて入射する外部光をカプラー部品に重ね合わせたプリズム構造により更に偏向させることによって実現される。
【0010】
この発明の有利な実施形態及び改善構成は、従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下においては、この発明の三つの実現可能な変化形態を図面に図示して、詳しく説明する。
【0012】
図3は、光電式センサー装置における光路を模式的に図示しており、それに関する限り、図示した構成は、周知の従来技術に対応するものである。自動車の車両ウィンドー(4)上の雨又は汚れを感知するために、光送信器(5)として機能する送信用ダイオードは、有利には、近赤外領域で、約880nmの波長の光線を、光束を平行にするための第一のレンズ構造(2)とカプラー部品(1)とを介して45°の角度で車両ウィンドー(4)のガラスに照射する。45°の角度で入射した光線は、車両ウィンドー(4)の外面で全反射されて、カプラー部品(1)及び集束機能を果たす第二のレンズ構造(3)を介して光受信器(6)として機能するフォトダイオード上に当たる。
【0013】
雨粒又は汚染粒子が、車両ウィンドー(4)の外側に存在する場合、その位置では、当たった光線の一部が、車両ウィンドー(4)から分離されるか、或いは吸収され、そのことは、フォトダイオード(6)によって受信される光線の強度の低下を引き起こすこととなる。この強度の変化は、フォトダイオードと接続された図面に図示されていない電子機器によって、容易に確認することができる。
【0014】
図示した従来技術は、特に、光を屈折させない形で車両ウィンドー(4)に入力結合させる問題を解決するものである。そのために用いるカプラー部品(1)は、有利には、薄膜又はプリズム構造を有するプラスチック又はガラス体から構成することができ、その場合プリズムの面は、入力結合又は出力分離する光束に対して精確に垂直に配置されており、そうすることによって、光線をカプラー部品(1)内へ、或いはカプラー部品(1)から屈折させない形で遷移させることを実現している。図1と2では、この発明による湿度センサーの外部光に対する感度を低減するための三つの実現形態を模式図で描いている。それぞれカプラー部品のプリズム構造、車両ウィンドーの外面及び光路の受信器側部分を図示している。図1は、この発明の二つの実現形態を図面で示しており、それらは、それぞれ集束するための受信光学系を備えている。この受信光学系は、すべてのレンズと同様に、入射する光線の角度を焦点面内の一カ所に偏向させる特性を有する。この場合、光送信器から照射されて、自動車のウィンドーにより45°の反射角で反射された光線、即ち、使用光は、受信器の所定の位置に投影され、それに対して他の角度からの外部光は、別の位置に投影される。
【0015】
確かにウィンドーの垂線に近い所定の角度で入射する外部光は、本来の使用光に対して平行なプリズム側面上に当たり、その側面を掠めて出射して行く可能性が有る。ウィンドーによって反射された使用光を集めて、受信器上に集束させる受信器側のレンズは、小さくない受入角を有するとともに、受信器は、広い面から構成されているので、そのような外部光は、受信器に到達する可能性が有る。
【0016】
掠めた形でプリズム構造から出射して来る外部光に対するセンサーシステムの感度は、プリズム構造の使用光に対して平行な側面を粗くするか、或いはコーティングすることによって低減することができる。例えば、塗装又は被膜によるコーティングでは、掠めて出射して来る外部光は吸収される。例えば、射出成形機器により形成された浸食又はエッチング構造により粗くされている場合、側面から出射して来る光線は、あらゆる空間方向に散乱され、その結果レンズの受入角内とそのため受信面内に到来する部分が低減される。このような表面の変化は、受信器側だけに必要である。
【0017】
外部光に対する感度は、外部光が出射して来るプリズム構造の側面を、45°の目標角に対して数度(最大で約5°)傾斜させることによっても低減することができる。そうすることによって、その面から掠めて出射して来る光が、受信光学系の主要な受入方向に対して、その角度を持つこととなる。受信光学系の受信特性は、45°の主要な方向には敏感であり、他の角度で入射する光線には鈍感となっている。従って、外部光を減衰させることも達成される。
【0018】
当然のことながら、両方の実現形態の組み合わせも規定することができる。
【0019】
カプラー部品のプリズムによって受信器の方向に屈折された外部光を低減するための別の実現形態は、掠めて出射して来る外部光を光線受信器の受信方向から逸らす更なるプリズム側面をカプラー部品のプリズム構造に付加することである。この場合、単一の大きなプリズム側面と複数の小さいプリズム側面のどちらかをカプラー部品に重ね合わせることができる。これらの追加のプリズムは、広範囲に任意の形に形成することができるとともに、特に角張っていない形にしなければならない。これらの追加のプリズムは、有利には、例えば、半円柱形として実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】湿度センサーの第一及び第二の実施形態
【図2】湿度センサーの第三の実施形態
【図3】光電式センサー装置の動作原理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のウィンドーから受信器の方向に反射される光線用の送信器及び受信器と自動車のウィンドーに対して光線を入力結合及び出力分離させるためのカプラー部品とを備えており、このカプラー部品が、多数の個別プリズムから成るプリズム構造として構成され、これらの個別プリズムが、入力結合領域では入射方向に対して垂直であるプリズム面を有し、出力分離領域では光線の出射方向に対して垂直に配置されたプリズム面を有する、自動車のウィンドー上の湿度を検出するための自動車用光電式センサー装置において、
少なくとも出力分離領域において、光線方向に対して垂直に配置されていない他のプリズム面の中の少なくとも幾つかが、粗くされているか、或いは光線を通さないように構成されていることを特徴とする光電式センサー装置。
【請求項2】
当該のカプラー部品が、プラスチックから構成されるとともに、少なくとも幾つかのプリズム面が、サンドブラストにより粗くされていることを特徴とする請求項1に記載の光電式センサー装置。
【請求項3】
当該のカプラー部品が、射出成形されたプラスチックから構成されるとともに、少なくとも幾つかのプリズム面が、射出成形機器での構造化により粗くされていることを特徴とする請求項1に記載の光電式センサー装置。
【請求項4】
少なくとも幾つかのプリズム面が、光を通さないように塗装されていることを特徴とする請求項1に記載の光電式センサー装置。
【請求項5】
少なくとも幾つかのプリズム面が、光を通さない材料を貼付されていることを特徴とする請求項1に記載の光電式センサー装置。
【請求項6】
少なくとも幾つかのプリズム面が、鏡面加工されていることを特徴とする請求項1に記載の光電式センサー装置。
【請求項7】
自動車のウィンドーから受信器の方向に反射される光線用の送信器及び受信器と自動車のウィンドーに対して光線を入力結合及び出力分離させるためのカプラー部品とを備えており、このカプラー部品が、多数の個別プリズムから成るプリズム構造として構成され、これらの個別プリズムが、入力結合領域では入射方向に対して垂直であるプリズム面を有し、出力分離領域では光線の出射方向に対して垂直に配置されたプリズム面を有する、自動車のウィンドー上の湿度を検出するための自動車用光電式センサー装置において、
少なくとも出力分離領域において、光線方向に対して垂直に配置されていない他のプリズム面の中の少なくとも幾つかが、光線の出射方向に対して平行でない形に配置されていることを特徴とする光電式センサー装置。
【請求項8】
当該の光線の出射方向に対して平行でない形に配置されているプリズム面の方向のずれが、最大5°であることを特徴とする請求項7に記載の光電式センサー装置。
【請求項9】
自動車のウィンドーから受信器の方向に反射される光線用の送信器及び受信器と自動車のウィンドーに対して光線を入力結合及び出力分離させるためのカプラー部品とを備えており、このカプラー部品が、多数の個別プリズムから成るプリズム構造として構成され、これらの個別プリズムが、入力結合領域では入射方向に対して垂直であるプリズム面を有し、出力分離領域では光線の出射方向に対して垂直に配置されたプリズム面を有する、自動車のウィンドー上の湿度を検出するための自動車用光電式センサー装置において、
少なくとも出力分離領域において、光線方向に対して垂直に配置されていない他のプリズム面の中の少なくとも幾つかが、追加のプリズムを重ね合わされていることを特徴とする光電式センサー装置。
【請求項10】
少なくとも幾つかのプリズム面が、それぞれ一つの追加プリズムを重ね合わされていることを特徴とする請求項9に記載の光電式センサー装置。
【請求項11】
少なくとも幾つかのプリズム面が、それぞれ複数の追加プリズムを重ね合わされていることを特徴とする請求項9に記載の光電式センサー装置。
【請求項12】
当該のセンサー装置が、自動車のウィンドーと接続された雨センサー又は曇センサーであることを特徴とする請求項1から11までのいずれか一つに記載の光電式センサー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−506130(P2008−506130A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520729(P2007−520729)
【出願日】平成17年7月9日(2005.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007471
【国際公開番号】WO2006/005558
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(591183717)レオポルト・コスタール・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (18)
【氏名又は名称原語表記】LEOPOLD KOSTAL GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG & COMPAGNIE KOMMANDITGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】