説明

自動車用導風板及びシール構造

【課題】自動車用部品との間に形成される隙間に対する安定したシール性を十分に発揮し得る構造が、優れたリサイクル性を確保しつつ、容易に且つ低コストに実現可能な導風板を提供する。
【解決手段】導風板本体12の外周部に、導風板本体12と同一の樹脂材料からなる、薄肉の可撓片部14,16,18を一体成形して構成する。そして、自動車用部品28,32との間に、導風板本体12を、可撓片部14,16,18が、撓み変形下で自動車用部品28,32に接触、配置するように設置して、導風板本体12の外周部と自動車用部品28,32との間に形成される隙間40,42を閉塞するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用導風板及びシール構造に係り、特に、自動車の前部に配置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板の改良された構造と、そのような導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に生ずる隙間をシールするための新規な構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車において、互いに異なる別個の自動車用部品同士を近接して組み付ける際には、それらの自動車用部品同士が、自動車の走行中の入力振動等により接触して、異音を発生したり、或いは各自動車用部品が損傷したり、変形したりするのを防止するために、互いに近接する自動車用部品同士の間に、所定の間隙、所謂設計隙が形成される(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
例えば、自動車の前部には、走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板が、ラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、ラジエータの前方に位置するバンパとの間に、車幅方向に対向配置された状態で、又はそれに加えて、上下方向にも対向配置された状態で、前後方向に延びるように設置されている。そして、そのような導風板の周囲に位置するシュラウドやラジエータ、ラジエータサポート、バンパ、バンパリーンホースメント、ロアアブソーバ、アッパーアブソーバ、ハーネス、或いはエアコンホース等の各種のホース、更には1個の導風板に隣り合って位置する別の導風板等の様々な自動車用部品と導風板との間には、上記の如き設計隙としての隙間が形成されている。
【0004】
しかしながら、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に隙間が形成されていると、導風板によって導かれた風が、かかる隙間を通じて外部に逃げてしまい、その分だけ、ラジエータの冷却効率が低下してしまう。また、そのような隙間を通じて、エンジンの熱気がラジエータ側に送り込まれることがあり、そうした場合にも、ラジエータの冷却効率の低下が惹起される恐れがある。更には、導風板と自動車用部品との間の隙間を通じての風抜けによって、空力性能が低下するといった問題も生ずる。
【0005】
そこで、従来では、スポンジ等の各種のクッション材が、導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間の隙間内に、かかる隙間を埋めるように取り付けられ、それによって、導風板と自動車用部品との間がシールされるようになっていた。ところが、そのようなクッション材は、通常、隙間を隔てて互いに対向位置する導風板と自動車用部品のそれぞれの対向部位に対して、両面テープ等により接着、固定されている。そのため、例えば、隙間が比較的に複雑な形状とされている場合等においては、導風板と自動車用部品の各対向部位に対するクッション材の接着力にバラツキが生じて、安定したシール性を確保することが困難となる可能性があった。しかも、自動車の走行時の入力振動等により、導風板と自動車用部品が、それぞれ、互いに離間する方向に相対変位したときに、クッション材が、導風板と自動車用部品のうちの何れか一方から剥がれてしまう恐れさえもあった。加えて、クッション材の接着工程が面倒であるといった問題も存していた。
【0006】
また、従来においては、導風板の本体の外周部に、ゴム製やエラストマ製のシール部材を二色成形により一体形成し、導風板の自動車への設置状態下で、導風板に一体形成されたシール部材を、導風板の周囲に位置する自動車用部品に接触、配置することによって、そのような自動車用部品と導風板との間の隙間からの風抜けを防止する対策も採用されている。しかしながら、そこで用いられる導風板は、一般に、導風板本体が樹脂材料にて形成されている。そのためゴム製やエラストマ製のシール部材が一体形成された導風板は、ゴム材料又はエラストマ材料と樹脂材料の互いに異なる2種類の材料を用いて形成されることとなる。それ故、かかる導風板にあっては、材料費が嵩んでコスト高となるといった欠点を有していた。その上、使用済みとなった後に再利用するに際して、導風板本体とシール部材を分離しなければならず、リサイクルが面倒であるといった問題をも内在していたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−55522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、周囲に配置される自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを、より確実に且つ安定的に防止出来、以て、かかる隙間に対する安定したシール性を十分に発揮し得る構造が、優れたリサイクル性を確保しつつ、容易に且つ低コストに実現可能な導風板を提供することにある。また、本発明にあっては、優れたリサイクル性を備えると共に、容易に且つ低コストに製造が可能な導風板が用いられて、かかる導風板と、その周囲に位置する自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けが、より確実に防止され、以て、そのような自動車用部品と導風板との間の安定したシール性が極めて有利に確保され得るように改良されたシール構造を提供することをも、その解決課題とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙する各種の態様において、好適に実施され得るものである。また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。そして、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0010】
そして、本発明にあっては、前記した自動車用導風板に係る課題の解決のために、自動車の前部に、前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板であって、樹脂製の導風板本体を有すると共に、該導風板本体と同一の樹脂材料からなる、該導風板本体よりも薄肉の可撓片部が、該導風板本体の外周部に一体成形されてなり、該導風板本体が、その外周部と該導風板本体の周囲に配置される自動車用部品との間に隙間を有して、自動車の前部に設置された状態において、該可撓片部が、撓み変形下で、該自動車用部品に接触して、配置されることにより、該可撓片部が、該隙間を閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するように構成されていることを特徴とする自動車用導風板を、その要旨とするものである。
【0011】
なお、本発明においては、有利には、自動車のラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、該シュラウドの前方に位置するバンパとの間に、前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流を該ラジエータに導く導風板において、樹脂製の導風板本体を有すると共に、該導風板本体と同一の樹脂材料からなる、該導風板本体よりも薄肉の可撓片部が、該導風板本体の外周部に一体成形されてなり、該導風板本体が、その外周部と前記シュラウド及び前記バンパとの間にそれぞれ隙間を有して、それらシュラウドとバンパとの間に設置された状態において、該可撓片部が、撓み変形下で、該シュラウドと該バンパとに接触して、配置されることにより、該可撓片部が、該隙間を閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するように構成されることとなる。
【0012】
また、本発明に従う自動車用導風板の好ましい態様の一つによれば、前記導風板本体と前記可撓片部とを形成する樹脂材料として、ポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド材が用いられる。
【0013】
さらに、本発明に従う自動車用導風板の有利な態様の一つによれば、前記導風板本体と前記可撓片部とを形成する樹脂材料の曲げ弾性率が、250〜800MPaの範囲内の値とされる。
【0014】
更にまた、本発明に従う自動車用導風板の望ましい態様の一つによれば、前記導風板本体の厚さが1.2〜2.5mmの範囲内の値とされ、且つ前記可撓片部の厚さが0.3〜0.8mmの範囲内の値とされる。
【0015】
また、本発明に従う自動車用導風板の好適な態様の一つによれば、前記可撓片部に対して、前記導風板本体の周方向と交差する方向に延びる切込みが設けられる。
【0016】
そして、本発明においては、前記したシール構造に係る課題を解決するために、自動車の前部に、前後方向に延びるように設置された、自動車の走行時に生ずる気流を該ラジエータに導く導風板と、該導風板の周囲に配置される自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造であって、前記導風板を、樹脂製の導風板本体と、該導風板本体の外周部に、該導風板本体と同一の樹脂材料にて一体成形された、該導風板本体よりも薄肉の可撓片部とを含んで構成して、該導風板本体が、その外周部と前記自動車用部品との間に前記隙間が形成されるように設置された状態下で、該可撓片部を、撓み変形下で、該自動車用部品に接触させて、配置することにより、該隙間を該可撓片部にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにしたことを特徴とするシール構造をもまた、その要旨とするものである。
【0017】
なお、本発明にあっては、有利には、自動車のラジエータの側部を覆うように配置されるシュラウドと、該シュラウドの前方に位置するバンパとの間に、前後方向に延びるように設置された、自動車の走行時に生ずる気流を該ラジエータに導く導風板と、該シュラウド及び該バンパとの間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造において、前記導風板を、樹脂製の導風板本体と、該該導風板本体の外周部に、該導風板本体と同一の樹脂材料にて一体成形された、該導風板本体よりも薄肉の可撓片部とを含んで構成して、該導風板本体が、その外周部と前記シュラウド及び前記バンパとの間に、それぞれ、前記隙間が形成されるように設置された状態下で、該可撓片部を、撓み変形下で、該シュラウドと該バンパとに接触させて、配置することにより、該隙間を該可撓片部にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにされることとなる。
【発明の効果】
【0018】
すなわち、本発明に従う自動車用導風板においては、導風板本体の外周部に設けられた可撓片部が、撓み変形下で、導風板本体の周囲に位置する自動車用部品と接触して、配置されることにより、導風板本体の外周部と自動車用部品との間に形成される隙間が閉塞されて、かかる間隙を通じての風抜けが防止されるようになっている。それ故、例えば、自動車の走行中の入力振動等により、導風板本体と自動車用部品とが相対変位したときにあっても、それらの相対変位に応じて、可撓片部の撓み変形量が増大したり減少したりすることで、可撓片部の自動車用部品との接触状態が可及的に維持されて、導風板本体の外周部と自動車用部品との間に形成される隙間の可撓片部による閉塞状態が、有利に確保される。そして、それにより、自動車走行中での、かかる隙間を通じての風抜けが、より確実に安定的に防止され、以て、導風板と自動車用部品との間の安定したシール性が、十分に発揮され得ることとなる。
【0019】
そして、本発明に係る自動車用導風板にあっては、特に、可撓片部と導風板本体とが、同一の樹脂材料からなっている。このため、可撓片部と導風板本体とが互いに異なる種類の材料からなる従来品とは異なって、形成材料が1種類で済むために、材料コストが有利に低く抑えられる。また、使用済みとなったときに、導風板本体と可撓片部とを分離することなく、リサイクルに供することが出来る。そして、可撓片部の肉厚が、導風板本体よりも薄くされていることで、かかる可撓片部において、十分な可撓性が発揮され得るようになっている。即ち、導風板本体が、可撓片部よりも厚肉とされている。これによって、導風板本体と可撓片部とが同一の樹脂材料にて構成されているにも拘わらず、導風板本体において適度な剛性が発揮され、以て、十分な導風性能が確保され得る。
【0020】
さらに、本発明に従う自動車用導風板においては、導風板本体と可撓片部とを有する一体成形品にて構成されている。そのため、導風板本体の外周部に対して、導風板本体とは独立した別個の部材にて構成されたクッション材が接着されてなる従来品とは異なって、製造時に、導風板本体と可撓片部とを一体化するための作業を何等行う必要がない。それによって、製作性の向上が有利に図られ得る。
【0021】
従って、かくの如き本発明に従う自動車用導風板にあっては、その周囲に位置する自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを、より確実に且つ安定的に防止出来、以て、かかる隙間に対する安定したシール性を効果的に且つ十分に発揮し得るのであり、しかも、そのような安定したシール性を発揮する構造が、優れたリサイクル性を確保しつつ、容易に且つ低コストに実現され得るのである。そして、その結果として、ラジエータの冷却効率の向上と空力性能の向上とが、極めて有利に達成され得ることとなるのである。
【0022】
そして、本発明に従うシール構造にあっても、上記の特徴を有する、本発明に従う自動車用導風板が用いられているところから、そのような自動車用導風板において奏される優れた作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に従う構造を有する導風板の一実施形態を示す正面説明図である。
【図2】図1に示された導風板をシュラウド及びバンパとの間に設置して、それら導風板とシュラウド及びバンパとの間に形成される隙間をシールした状態を示す縦断面説明図である。
【図3】図2のIII−III断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0025】
先ず、図1には、本発明に従う自動車用導風板の一実施形態が、その正面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態の導風板10は、全体として、上下方向に延びる略長手矩形の平板形状を呈する導風板本体12と、かかる導風板本体12の外周部に一体形成された第一、第二、及び第三の可撓片部14,16,18とを有している。
【0026】
より具体的には、導風板本体12は、上下方向に真っ直ぐに延びる第一長辺部20a及び第二長辺部20bと、それら第一及び第二長辺部20a,20bの上端部同士を連結するように延びる第一短辺部22aと、第一及び第二長辺部20a,20bの下端部同士を連結するように延びる第二短辺部22bとを有している。また、第一短辺部22aは、第一長辺部20a側から第二長辺部20b側に向かって、斜め下側に湾曲する湾曲形状を有している。
【0027】
そして、導風板本体12においては、第一長辺部20aが、後述するシュラウドの縦壁部の前端面の形状に対応した形状、つまり、上下方向に真っ直ぐに延びる形状を呈する後側辺縁部21とされている。また、第一短辺部22aと第二長辺部20bとが、後述するバンパカバーの内面形状に対応した形状、つまり、第一長辺部20a側から第二長辺部20b側に向かって斜め下側に湾曲しつつ上下方向に延びる形状を呈する前側辺縁部23とされている。そして、かかる前側辺縁部23の長さ方向の略中央部には、矩形の切欠部24が設けられている。また、導風板本体12の厚さ方向一方の面における切欠部24の周辺部には、平板状を呈する二つの取付突起26,26が、一体的に突設されている。
【0028】
一方、導風板本体12の外周部に一体形成された第一の可撓片部14と第二の可撓片部16と第三の可撓片部18は、何れも、導風板本体12よりも薄い厚さと一定の狭い幅とを備えたリップ形態を有している。そして、第一の可撓片部14が、後側辺縁部21(第一長辺部20a)に対し、それに沿って、その略全長に亘って真っ直ぐに連続して延びるように形成されている。第二の可撓片部16は、前側辺縁部23(第一短辺部22aと第二長辺部20bとからなる部位)のうちの切欠部24よりも上側に位置する部分に対し、それに沿って湾曲しつつ、その略全長に亘って連続的に延びるように形成されている。第三の可撓片部18は、前側辺縁部23のうちの切欠部24よりも下側に位置する部分に対し、それに沿って、その略全長に亘って真っ直ぐに連続して延びるように形成されている。
【0029】
それら第一乃至第三の可撓片部14,16,18のうち、湾曲形態を呈する第二の可撓片部16には、その延出方向に所定距離を隔てた複数の箇所に、幅方向(延出方向と交差する方向)に延びる切込み27が、それぞれ形成されている。これにより、第二の可撓片部16が撓み変形したときに、切込み27の両サイド部位が互いに離間するか又は互いに重なり合うようにされる。以て、第二の可撓片部16が、切込み27を有しない場合よりもスムーズに撓み変形し得るようになっているのである。
【0030】
このように、本実施形態の導風板10は、導風板本体12と第一乃至第三の可撓片部14,16,18とが同一の樹脂材料を用いて一体成形された一体成形品(例えば、射出成形品)にて構成されている。そして、ここでは、かかる導風板10の形成材料として、ポリプロピレンとポリエチレン(低密度ポリエチレン)のブレンド材(ポリマーアロイ)が用いられている。
【0031】
ポリプロピレンとポリエチレンのブレンド材は、公知の如く、十分な厚さとされることにより、十分な曲げ剛性を発揮する一方、薄肉とされることにより、適度な可撓性を発揮する特性を有している。そこで、本実施形態では、厚肉化による十分な曲げ剛性と薄肉化による適度な可撓性とがバランス良く発揮されるように、好適には、曲げ弾性率が250〜800MPa程度の範囲内の値とされたポリプロピレンとポリエチレンのブレンド材が、導風板10の形成材料として、使用されている。何故なら、ここで使用されるポリプロピレンとポリエチレンのブレンド材の曲げ弾性率が250MPa未満である場合には、導風板本体12を厚肉化しても、十分な曲げ剛性が得られない恐れがあるからであり、また、かかる曲げ弾性率が800MPaを超える場合には、薄肉の第一乃至第三の可撓片部14,16,18における可撓性が不十分となる可能性があるからである。
【0032】
そして、本実施形態の導風板10にあっては、導風板本体12が、十分な曲げ剛性が確保され得る程度の厚さを有している一方、第一乃至第三の可撓片部14,16,18が、適度な可撓性を発揮するように、それぞれ薄肉化されている。具体的には、導風板本体12の厚さが、例えば1.2〜2.5mm程度とされており、また、第一乃至第三の可撓片部14,16,18のそれぞれの厚さが、例えば0.3〜0.8mm程度とされている。
【0033】
何故なら、導風板本体12の厚さが1.2mmを下回る場合には、導風板本体12の曲げ剛性が不十分となり、そのために、後述する如く、バンパカバーとシュラウドとの間に設置されたときに、バンパカバー側からシュラウド側に気流をスムーズに導くことが困難となる恐れがあるからである。また、導風板本体12の厚さが2.5mmを上回る場合には、導風板本体12ひいては導風板10の全体重量が増大するといった問題が生ずる可能性があるからである。一方、第一乃至第三の可撓片部14,16,18のそれぞれの厚さが0.3mmを下回る場合には、各可撓片部14,16,18の強度が極端に小さくなってしまう恐れがあるからであり、また、第一乃至第三の可撓片部14,16,18のそれぞれの厚さが0.8mmを上回る場合には、各可撓片部14,16,18において十分な可撓性が得られなくなる可能性があるからである。
【0034】
そして、かくの如き構造を有する本実施形態の導風板10にあっては、図2及び図3に示されるように、例えば、自動車用部品としてのバンパカバー28と、それの後方に位置するラジエータ30を外側から取り囲んで配置された、別の自動車用部品たるシュラウド32との間において、自動車の幅方向に間隔を隔ててそれぞれ1個ずつ配されて、自動車の前後方向に延びるように設置される。これにより、自動車の走行時に生ずる気流を、ラジエータ30に向かって導き得るようになっているのである。
【0035】
そこにおいて、バンパカバー28は、その縦断面形状が、前方に向かって凸となる湾曲形状を呈している。そして、かかるバンパカバー28は、自動車の前部に対して、車幅方向に延びるように設置されたバンパリーンホースメント34に固定されている。また、バンパカバー28には、車幅方向に沿って延びる延出方向の中間部に、空気取入口29が設けられている。
【0036】
シュラウド32は、全体として、ラジエータ30よりも一周り大きな矩形の筒形状を呈している。そして、自動車の前後方向に延びるように配置され、ラジエータ30に対して外嵌された状態で固定されている。換言すれば、シュラウド32は、上下方向に真っ直ぐに延びる二つの縦壁部(一つの縦壁部36aのみを示す)と、車幅方向に真っ直ぐに延びる二つの横壁部38a,38bとを一体的に有し、それら二つの縦壁部36aと二つの横壁部38a,38bとが、ラジエータ30の上下左右の四つの側面のそれぞれから側方に所定距離を隔てた位置において、ラジエータ30の四つの側面をそれぞれ外側から覆うように配置されているのである。
【0037】
そして、そのようなバンパカバー28とシュラウド32との間に設置される二つの導風板10,10は、シュラウド32の二つの縦壁部36aのそれぞれの前方において、各導風板本体12の後側辺縁部21を、各縦壁部36aに沿って上下方向に延出させるように配置されている。また、そのような配置下において、各導風板本体12の後側辺縁部21の端面と各縦壁部36aの前端面とが、前後方向に所定距離を隔てて対向配置されている。それによって、それら後側辺縁部21の端面と各縦壁部36aの前端面との間には、設計隙として、後側間隙部40が、上下方向に延びるように形成されている。
【0038】
また、二つの導風板10,10は、バンパカバー28の後方において、各導風板本体12の前側辺縁部23を、バンパカバー28の内面に沿って上下方向に延出させるように配置されている。更に、そのような配置下において、各導風板本体12の前側辺縁部23の端面とバンパカバー28の内面とが、前後方向に所定距離を隔てて対向配置されている。それによって、それら前側辺縁部23の端面とバンパカバー28の内面との間にも、設計隙として、前側隙間42が、上下方向に延びるように形成されている。
【0039】
さらに、上記のようにしてバンパカバー28とシュラウド32との間に配置された二つの導風板10,10にあっては、前側辺縁部23の切欠部24内に挿通されたバンパリーンホースメント34に対して、前記取付突起26においてボルト止めされること等により、固定されている。
【0040】
そして、本実施形態の導風板10にあっては、特に、上記の如きバンパリーンホースメント34への固定状態下において、導風板本体12の後側辺縁部21に一体形成された第一の可撓片部14が、予め撓み変形させられた状態で、その先端側部分において、シュラウド32の二つの縦壁部36aに接触して、配置されている。また、各導風板本体12の前側辺縁部23に一体形成された第二の可撓片部16と第三の可撓片部18は、予め撓み変形させられた状態で、その先端側部分において、バンパカバー28の内面に接触して、配置されている。
【0041】
なお、第一乃至第三の可撓片部14,16,18のそれぞれの幅(図1にW1 ,W2 ,W3 にて示される寸法)は、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜30mmの範囲内の値とされる。何故なら、第一乃至第三の可撓片部14,16,18の幅が5mm以上とされることにより、かかる幅が後側及び前側隙間40,42の一般的な幅よりも大きくされて、第一乃至第三の可撓片部14,16,18の先端側部分が、シュラウド32の各縦壁部36aやバンパカバー28に対して、撓み変形下で確実に接触するようになるからである。また、第一乃至第三の可撓片部14,16,18の幅が30mm以下とされることにより、第一乃至第三の可撓片部14,16,18が必要以上に大きな幅となることが防止されて、それら第一乃至第三の可撓片部14,16,18の形成による導風板10の重量の増大が可及的に抑制されるようになるからである。
【0042】
かくして、バンパカバー28とシュラウド32との間に設置された二つの導風板10,10の各導風板本体12の後側辺縁部21とシュラウド32の二つの縦壁部36aとの間に形成される後側隙間40が、第一の可撓片部14にて確実に閉塞されるようになっている。また、それら二つの導風板10,10の各導風板本体12の前側辺縁部23とバンパカバー28の内面との間に形成される前側隙間42も、第二及び第三の可撓片部16,18にて確実に閉塞されるようになっている。
【0043】
そして、導風板10がバンパカバー28とシュラウド32との間に設置された状態下で、例えば、自動車の走行中の入力振動等により、導風板本体12とシュラウド32とが相対変位したり、或いは導風板本体12とバンパカバー28とが相対変位した場合にも、それらの相対変位に応じて、第一乃至第三の可撓片部14,16,18の撓み変形量が増大したり減少したりすることで、各可撓片部14,16,18のシュラウド32やバンパカバー28との接触状態が可及的に維持される。それによって、後側及び前側隙間40,42の第一乃至第三の可撓片部14,16,18による閉塞状態が、有利に確保されるようになっているのである。
【0044】
また、前記のように、湾曲形態を呈する第二の可撓片部16には、複数の切込み27が設けられている。そのため、そのような第二の可撓片部16が撓み変形しつつ、バンパカバー28の湾曲面からなる内面に接触したときに、第二の可撓片部16に皺が寄る等して、第二の可撓片部16とバンパカバー28の内面との間に間隙が形成されることが有利に防止される。それによって、第二の可撓片部16が湾曲形態を呈するにも拘わらず、かかる第二の可撓片部16による前側隙間42の閉塞状態が、効果的に確保され得る。
【0045】
それ故、本実施形態の導風板10にあっては、バンパカバー28とシュラウド32との間に上記の如き状態で設置されることにより、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータ30に向かって良好に導きつつ、前側隙間42や後側隙間40を通じての風抜けの発生を、より確実に且つ安定的に防止することが出来、以てとシュラウド32との間やバンパカバー28との間の安定したシール性を、十分に発揮し得るのである。
【0046】
そして、かかる導風板10においては、導風板本体12と第一乃至第三の可撓片部14,16,18とが同一の樹脂材料からなっている。このため、各可撓片部と導風板本体とが互いに異なる種類の材料からなる従来品とは異なって、形成材料が1種類で済み、それによって、材料コストの低減化が有利に図られている。また、使用済みとなったときに、導風板本体12と各可撓片部14,16,18とを分離することなく、そのままリサイクルに供することが出来る。
【0047】
しかも、本実施形態の導風板10は、導風板本体12と第一乃至第三の可撓片部14,16,18とを有する一体成形品にて構成されている。そのため、導風板本体の外周部に対して、可撓片部の代わりに、クッション材が接着されてなる従来品とは異なって、導風板本体12の成形工程の他に、後接着工程を行う必要がなく、それによって、製作性の向上が有利に図られ得る。
【0048】
従って、かくの如き本実施形態の導風板10にあっては、シュラウド32との間やバンパカバー28との間に形成される後側及び前側隙間40,42を通じての風抜け防止による安定したシール性を効果的に且つ十分に発揮し得るだけでなく、そのような安定したシール性を発揮する構造が、優れたリサイクル性を確保しつつ、容易に且つ低コストに実現され得るのである。そして、その結果として、ラジエータ30の冷却効率の向上と空力性能の向上とが、極めて有利に達成され得ることとなるのである。
【0049】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0050】
例えば、前側及び後側隙間42,40のシール構造は、必ずしも、導風板本体12の外周部に一体形成された第一乃至第三の可撓片部14,16,18のみによって実現されるものではない。即ち、導風板本体12の外周部の一部分に対して、クッション材等からなるシール部材を接着し、このシール部材にて、前側及び後側隙間42,40の一部をシールすることも可能である。
【0051】
例えば、ラジエータ30の下側に位置するシュラウド32の横壁部38bと導風板本体12の後側辺縁部21との間に、エアコンホース等のように高温となる自動車部品等が存在する場合には、かかる後側辺縁部21の下端部に、耐熱性を有するクッション材からなるシール部材を取り付けて、このシール部材をエアコンホース等の自動車用部品に接触、配置することにより、導風板本体12の後側辺縁部21とエアコンホース等の自動車用部品との間に形成される隙間をシールしても良い。また、導風板本体12の外周部の周囲に、隙間を隔てて位置する自動車用部品の外面が複雑な形状を有する場合にも、かかる自動車用部品に対する導風板本体12の対向部位に、クッション材等の変形自由度の高いシール部材を取り付けて、このシール部材を自動車用部品の外面に接触、配置することにより、かかる自動車用部品と導風板本体12との間に形成される隙間をシールしても良い。
【0052】
導風板本体12との間で、シールされるべき隙間を形成する自動車用部品は、上記に例示されたシュラウドやバンパカバー、エアコンホース等に何等限定されるものではなく、導風板10の自動車への設置状態下で、導風板本体12の周囲に位置して、導風板本体12との間に隙間を形成する全ての自動車用部品(例えば、ラジエータ、ラジエータサポート、バンパリーンホースメント、ロアアブソーバ、アッパーアブソーバ、ハーネス、或いは各種のホース、更には1個の導風板に隣り合って位置する別の導風板等)が、その対象となる。
【0053】
導風板本体12の全体形状は、それが設置されるべき自動車前部の設置空間の形状等に応じて、適宜に変更され得るものであることは、言うまでもないところである。
【0054】
可撓片部も、導風板本体の外周部に一体成形されるものであれば、その個数や形状、形成位置等が、特に限定されるものではない。
【0055】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0056】
10 導風板 12 導風板本体
14 第一の可撓片部 16 第二の可撓片部
18 第三の可撓片部 27 切込み
28 バンパカバー 32 シュラウド
40 後側隙間 42 前側隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部に、前後方向に延びるように設置されて、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板であって、
樹脂製の導風板本体を有すると共に、該導風板本体と同一の樹脂材料からなる、該導風板本体よりも薄肉の可撓片部が、該導風板本体の外周部に一体成形されてなり、該導風板本体が、その外周部と該導風板本体の周囲に配置される自動車用部品との間に隙間を有して、自動車の前部に設置された状態において、該可撓片部が、撓み変形下で、該自動車用部品に接触して、配置されることにより、該可撓片部が、該隙間を閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するように構成されていることを特徴とする自動車用導風板。
【請求項2】
自動車の前部に、前後方向に延びるように設置された、自動車の走行時に生ずる気流をラジエータに導く導風板と、該導風板の周囲に配置される自動車用部品との間に形成される隙間を通じての風抜けを防止するためのシール構造であって、
前記導風板を、樹脂製の導風板本体と、該導風板本体の外周部に、該導風板本体と同一の樹脂材料にて一体成形された、該導風板本体よりも薄肉の可撓片部とを含んで構成して、該導風板本体が、その外周部と前記自動車用部品との間に前記隙間が形成されるように設置された状態下で、該可撓片部を、撓み変形下で、該自動車用部品に接触させて、配置することにより、該隙間を該可撓片部にて閉塞して、該隙間を通じての風抜けを防止するようにしたことを特徴とするシール構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−121419(P2011−121419A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279025(P2009−279025)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】