説明

自動車用照明装置及び/又は信号装置用の組立体

【課題】状況に応じて、モータによりビームの切り替えが可能な自動車の点灯装置及び/又は信号装置に使用する組立体であって、小型で、モータを簡単に設置可能とした組立体を提供する。
【解決手段】自動車の点灯装置及び/又は信号装置用の組立体1であって、ハウジング3を有する支持体2、好ましくはプラスチック製のものと、支持体のハウジング内に直接、恒久的に設置可能に構成されたモータ5、好ましくはステッピングモータとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の照明装置及び/又は信号装置用の組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、多機能アクチュエータブロックを具備するヘッドランプ装置を開示している。このアクチュエータは、ターゲットとする部品の動作を可能にする運動連鎖と連係されたモータ型の電気部品である。通常、このアクチュエータは、その操作を管理するための電子制御カードを備えている。このヘッドランプ装置のアクチュエータブロックは多機能型のものであり、ヘッドランプ装置における回転フラップの傾きを変えるという第1の機能、及びDBL機能と呼ばれる第2の機能を有している。
【0003】
本発明は、自動車のヘッドランプの分野に関する。この分野では、異なるタイプのヘッドランプ装置が知られているが、これらは、基本的に、
光度が低くて投光距離が短い駐車灯と、
光度が高く、道路上での投光距離が約70mと長くて、基本的に夜間に使用され、拡散した光ビームが対向車の運転手の目を眩ませないようになっているすれ違いビーム用光源と、
長投光距離型であり、道路上での視界エリアが約200mであって、対向車の接近時に、運転手の目を眩ませないように消灯しなければならない走行ビーム用光源及び補助ランプと、
フォグランプとを必須のものとして備えている。
【0004】
さらに、すれ違い用ビームと走行用ビームとを組合せた、2機能ヘッドランプと呼ばれる改善されたヘッドランプも知られている。これを得るためには、特許文献2に記載されているように、例えば、回転式カバーを2機能ヘッドランプの内部に配置する。この回転式カバーは、指令に応じて、ヘッドランプの光源から投射された発光シグナルの一部を覆い隠す第1の位置(ヘッドランプの投光が、他の運転手の目を眩ませないように、すれ違い用前照灯のものに制限されている)から、ヘッドランプの光源から投射された発光シグナルを覆い隠さない第2の位置(ヘッドランプの投光距離が、走行用前照灯のものに相当している)へ回転可能である。この典型的なものは、主として楕円形のヘッドランプにおいて実施されている。同様にして、光源から投射された光ビームを、幾つかの方法で選択的に覆い隠すために、2つ以上の位置を選択しうるようにした可動カバーを具備する多機能ヘッドランプも知られている。これは、右側通行時のすれ違い用/左側通行時のすれ違い用の2機能カバー、右側通行時のすれ違い用/左側通行時のすれ違い用/走行時の前照灯用の3機能カバー等を備えている。
【0005】
本発明は、特に多機能を有する照明装置に関する。
【0006】
第1のタイプのビームから第2のタイプのビームへの切り替えを可能にするためには、高い精度の角度をもって、精密な操作を行いうるステッピングモータを設けるのが好ましい。
【0007】
しかし、このようなモータを、光源に近いためにきわめて高温であって、しかも全体の寸法を小とするために、きわめて小さい空間内に組み込まなければならない。
【0008】
さらに、装置内におけるモータの取付けを、比較的簡単に実施することができる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ヨーロッパ特許第1,591,313号
【特許文献2】ヨーロッパ特許第1,197,387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した多くの要求に応えるためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の目的は、自動車用照明装置及び/又は信号装置用の組立体を提供することであって、この組立体は、
ハウジングを有するプラスチック製の支持体と、
支持体のハウジング内に、直接、かつ恒久的に設置可能に構成されたモータ、好ましくはステッピングモータとを備えている。
【0012】
モータは、ネジや付加的部品を用いずに、支持体のハウジング内に恒久的に取付けてあるのが好ましく、これにより、組立作業を簡単とすることができ、かつねじのような付加的部品がないので、全体寸法を小とすることができる。
【0013】
モータを、支持体のハウジング内に取外し可能に取付け、もしモータをハウジングから取外そうとすると、ハウジング及び/又はモータが破損するようにしておくのが望ましい。
【0014】
本発明の一実施態様では、モータは、ハウジング内に固定されるようになっている好ましくは金属(例えば鋼、ステンレス鋼又はアルミニウム)製の基板を有する。
【0015】
モータは、心軸を有する回転軸を備え、かつ基板は、モータの心軸に対して実質的に直交しているのが好ましい。
【0016】
前記基板は、例えば、モータの正面、すなわち回転軸側に配置されている。
【0017】
モータは、ハウジングに食い込むようになっている少なくとも1個の係合片を備えているのが好ましい。
【0018】
従って、本発明によると、材料、特に支持体の材料であるプラスチックに起因する滑り運動とは無縁とすることができる。モータは、ハウジング内に言わば堅固に取付けられる。
【0019】
さらに、このような構成とすることにより、全体寸法を小とすることができる。
【0020】
本発明の典型的な一実施態様では、上記係合片は、モータの基板に形成されている。特にこの基板の端縁に形成するのが好ましい。
【0021】
基板の対向する縁部に、少なくとも2個の係合片を設けるのが好ましい。
【0022】
基板の同じ側の縁部に、少なくとも2個の隣接する係合片を設けるのが好ましい。
【0023】
本発明の典型的な一実施態様では、モータ、特にその基板は、少なくとも2個の係合片を有し、その一方は、第1の方向に突出し、他方は、他の方向、好ましくは第1の方向に対して直交する方向を向いている。
【0024】
所望により、モータには、支持体上の相補的なスナップ係合部と協動するようになっている少なくとも1つのスナップ係合部を設ける。
【0025】
例えば、モータの上記スナップ係合部は、基板に設けた係合孔であり、支持体には、前記基板の孔の中へ嵌入することにより係合するようになっている少なくとも1つの係合片を設けてある。
【0026】
本発明の典型的な一実施態様では、基板は、支持体のハウジングの2つの側面に設けた係合孔に係合しうるようになっている。
【0027】
必要に応じて、基板には、ハウジング内、好ましくは上記係合孔内での位置決めをするための少なくとも1つのスペーサを設ける。
【0028】
スペーサは、基板の一面に形成した突起と有するものとすることができる。
【0029】
本発明の典型的な一実施態様では、基板は、モータの電気コネクタの取付けにも寄与している。
【0030】
モータは、その回転軸が突出するカラーを備えているのが好ましい。このカラーは、モータを支持体に取付けるために、支持体に設けた受部に係合するようにしてあるのが好ましい。
【0031】
モータの回転軸には、カバーを動かすための駆動部と協動するギアを設けてある。
【0032】
本発明のもう1つの目的は、上記で定義した組立体のためのモータであって、ハウジング内にこれを固定しうるようになっている基板を備えるモータを提供することである。
【0033】
本発明はさらに、上記で定義した組立体を備える自動車の点灯装置及び/又は信号装置、特に自動車用ヘッドランプにも関する。
【0034】
本発明の装置は、異なるタイプの光ビーム(例えば、すれ違い用前照灯、高速道路用ビーム及び走行用前照灯)を形成するための複数のカバーを備えている。このカバーを、ステッピングモータ又は他のタイプのモータにより駆動するようにするのが好ましい。
【0035】
モータを備える組立体は、概ね反射板と装置のレンズとの間に配置するのが好ましい。
【0036】
本発明のさらにもう1つの目的は、上記で定義した組立体の組立方法であって、
ネジや付加的部品を用いることなく、支持体のハウジング内にモータを固定する工程
を有する方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の典型的な一実施態様を略示する正面図である。
【図2】図1の組立体を略示する側面図である。
【図3】図1の組立体を略示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付の図面を参照して、本発明の非限定的な実施例に関する以下の詳細な説明を読むことにより、本発明をより良く理解することができると思う。
【0039】
図1〜図3は、本発明の自動車用ヘッドランプのための組立体1を示し、この組立体1は、
底部9を開口したハウジング3を具備するプラスチック(例えば熱可塑性プラスチック)製の支持体2と、
支持体2におけるハウジング3内に、直接、かつ恒久的に取付けうるようになっているステッピングモータ5とを具備している。
【0040】
ステッピングモータ(以下モータと略称)は、自動車ヘッドランプの使用状況に応じて、特に他の運転手の目を眩ませないように、要求されるビーム遮断のための精密なポジショニングを可能にする微小な変位を行い、かつ再現することができる。
【0041】
モータは、通常「ダイポール」型のものであり、制御電子回路を用いて、電流により相励磁される2個の巻線を具備している。
【0042】
モータ5は、ネジや付加的部品を用いることなく、支持体2のハウジング3内に恒久的に設置されている。
【0043】
モータ5は、開口されている底部9に向けて、すなわち挿入方向Fに向けて、ハウジング3内に挿入されている。
【0044】
この実施例では、モータ5は、支持体2のハウジング3内に、後退できないようにして取付けられている。すなわち、モータを、ハウジング3から外す方向に動かすと、ハウジング3及び/又はモータ5は破損する恐れがある。
【0045】
モータ5は、ハウジング3内に固定するための基板6(好ましくは金属製)を備えている。
【0046】
モータ5は、軸線Xを有する回転軸7を備え、基板6は、モータの軸線Xに対して実質的に直交している。
【0047】
基板6は、モータの回転軸7側である前面8に配置されている。
【0048】
モータ5は、支持体2のハウジング3に食い込むようになっている複数の係合片10a〜10eを備えている。
【0049】
係合片10a〜10eは、モータ5の基板6に形成されている。
【0050】
係合片10a,10b,10eは、基板6の側縁12上に位置している。
【0051】
基板6の一側縁12に係合片10a、10bが配置され、他側縁に係合片10eが配置されている。
【0052】
係合片10a、10bは、隣り合うように、近接して配置されている。
【0053】
係合片10a,10b,10eは、第1の方向Yに突出しており、係合片10c,10dは、別の方向、すなわち、第1の方向Yに対して直交する方向Xに突出している。
【0054】
この例では、これらの係合片は、基板6と一体である。
【0055】
勿論、係合片の数及び配置は、上記したものと異なっていてもよい。
【0056】
基板6には、支持体上の相補的なスナップ係合部21と協調するようになっているスナップ係合孔20が設けられている。
【0057】
基板における上記スナップ係合部21は、例えば基板6に設けたスナップ係合孔20と対応し、支持体2は、基板6のスナップ係合孔20に挿入することにより係合するようになっている係合片21を備えている。
【0058】
図3に示すように、基板6は、支持体2のハウジング3の両側に設けた受溝25に嵌合しうるようになっている。
【0059】
また基板6の両側縁の底面9の近くには、基板6を受溝25に嵌めたときに、軸線Xの方向の移動を可能にする2個の軸線X方向に突出する案内突起27が設けられている。
【0060】
案内突起27は、基板6の一面に突出している(図2)。
【0061】
基板6は、モータ5の電気コネクタ30の取付けにも用いられている。電気コネクタ30は、モータ5へ電力を供給する。
【0062】
モータ5の回転軸7は、カラー31から突出している。カラー31は、モータ5を支持体2に取付けるために、支持体2の中心の凹入受部32に係合するように構成されている。
【0063】
モータ5の回転軸7には、図示しない歯車と噛み合うようになっているピニオン33が取付けられている。
【符号の説明】
【0064】
1 組立体
2 支持体
3 ハウジング
5 モータ
6 基板
7 回転軸
8 前面
9 底部
10a,10b,10c,10d,10e 係合片
12 側縁
20 係合孔
21 スナップ係合部
25 受溝
27 スペーサ
30 電気コネクタ
31 カラー
32 凹入受部
33 ピニオン
F 挿入報告
X 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の点灯装置及び/又は信号装置用の組立体(1)であって、
ハウジング(3)を有する支持体(2)と、
支持体のハウジング内に、直接、かつ恒久的に取付け可能に構成されているモータとを具備することを特徴とする組立体。
【請求項2】
モータ(5)は、ネジや付加的部材を用いることなく、支持体のハウジングに恒久的に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
モータ(5)は、支持体のハウジング内に後退不能として取付けられており、モータ(5)をハウジングから外す方向へ動かすと、ハウジング及び/又はモータが破損するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の組立体。
【請求項4】
モータは、ハウジング内にこれを固定するための金属製の基板(6)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組立体。
【請求項5】
モータは、その長軸を構成する回転軸を有し、基板(6)は、モータの長軸(X)に対して実質的に直交していることを特徴とする請求項4に記載の組立体。
【請求項6】
モータは、支持体のハウジングに食い込むようになっている少なくとも1個の係合片(10a〜10e)を具備することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の組立体。
【請求項7】
前記係合片は、モータのプレートの縁部(12)上に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の組立体。
【請求項8】
基板(6)の両縁部に少なくとも2個の係合片を有することを特徴とする請求項7に記載の組立体。
【請求項9】
モータは、支持体上の相補的なスナップ係合部(21)と協動するようになっている構成された少なくとも1つのスナップ係合部(20)を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の組立体。
【請求項10】
前記モータのスナップ係合部は、基板に形成された開口部(20)からなり、支持体は、基板の前記開口部中に挿入することにより係合するように構成された少なくとも1つの係合脚(21)を有することを特徴とする請求項9に記載の組立体。
【請求項11】
基板(6)は、支持体のハウジングの両側面の係合孔に設置可能に構成されていることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の組立体。
【請求項12】
基板は、ハウジング内、前記係合孔内でのスペーシングを可能にする少なくとも1つのスペーサ(27)を有することを特徴とする請求項4〜11のいずれか1項に記載の組立体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組立体のためのモータであって、ハウジング内にこれを固定するための基板(6)を具備することを特徴とするモータ。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組立体(1)を有することを特徴とする自動車の点灯装置及び/又は信号装置。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組立体の組立方法であって、
ネジや付加的部材を用いることなく、モータを支持体のハウジング内に固定する工程を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−51549(P2012−51549A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−86890(P2011−86890)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】