説明

自動車補助ヒータ

【課題】特に自動車補助ヒータの場合に、自動車の内燃機関の運転状態に関する情報を簡単に検出する。
【解決手段】自動車補助ヒータ10は制御装置22を備え、この制御装置22は給電線32用の端子30を備え、この給電線32は自動車の蓄電池34から制御装置22に案内されている。制御装置22は、端子30の電圧変化を検出しかつこの電圧変化に依存して情報“自動車の内燃機関36の始動達成”を検出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置を備え、この制御装置が給電線用の端子を備え、この給電線が自動車の蓄電池から制御装置に案内されている、自動車補助ヒータに関する。本発明は更に、このような自動車補助ヒータ用の制御装置と、このような自動車補助ヒータを備えた自動車と、自動車補助ヒータを運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連して、自動車とは、エンジン、特に内燃機関を備え、このエンジンによって駆動可能な車両である。エンジンは一般的に、バッテリすなわち蓄電池に接続されたスタータによって始動させられる。蓄電池は、エンジンの運転中にジェネレータによって充電される。このジェネレータはオルタネータとも呼ばれる。このような自動車は、ほとんどが運転者および場合によっては乗客のための乗客室を備えている。
【0003】
自動車補助ヒータは、例えば乗用車のような自動車において、空気補助ヒータまたは水補助ヒータとして使用される。補助ヒータは、一般的に乗客室を温める働きをするかあるいは自動車の内燃機関の冷却水を予熱する働きをする。
【0004】
自動車補助ヒータを運転する際にしばしば、その制御装置で自動車のエンジンの運転状態に関する情報を準備すると有利である。そのために、公知の自動車補助ヒータの場合には、制御装置においていわゆるターミナル15が点火信号ラインに接続されている。制御装置はこの点火信号ラインから、情報“エンジンの点火装置スイッチオン”を入手する。点火信号ラインは自動車では、乗客室内のイグニッションキーから自動車補助ヒータの制御装置まで付設され、制御装置の端子としてターミナル15が設けられている。ターミナル15を持たない制御装置の場合には、必要な情報が従来は検出不可能であった。
【0005】
車両補助ヒータを始動させるための方法が公知である(例えば、特許文献1参照。)。この方法の場合、車両のイグニッションキーを操作することによる始動過程の開始から出発して(上記のターミナル15参照)、少なくとも温度が検査される。設定された目標温度閾値を上回ると、車両補助ヒータの始動は行われない。そうでないときには、車両のエンジンのスタータの運転中、例えば車両補助ヒータの点火装置のような電力消費の多い機器が停止される。電力消費の多い機器のこのような運転中断は車両において一般的である。この中断は“電圧降下切換え”と呼ばれる。それによって、スタータによるエンジンの始動が危険にさらされない。機器の中断は、給電線を介して行われる(例えば、特許文献1参照。)。この給電線は車両の蓄電池の現在の電圧値を示す。電圧値が閾値よりも低下すると、機器の運転が中断される。すなわち、スタータの運転のために蓄電池電圧降下が大きすぎるときに中断される。蓄電池電圧がスタータの運転時にも閾値よりも高いと、車両補助ヒータの始動過程の中断は行われない。車両のジェネレータがエンジンによって運転されるときに、車両補助ヒータの始動過程が再び開始される。そのために、制御装置にはターミナル61を介してジェネレータ信号ラインが接続されている。この場合、このターミナルには、肯定的な信号が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許発明第19601772号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底をなす課題は、冒頭に述べた公知のシステムよりも低コストで製作可能である自動車補助ヒータを提供することである。特に、自動車補助ヒータの制御装置において、エンジンの運転状態に関する情報を準備すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は冒頭に述べた自動車補助ヒータにおいて、本発明に従い、制御装置が、端子の電圧変化を検出し、かつこの電圧変化に依存して情報“自動車の内燃機関の始動達成”を検出可能であることによって解決される。課題は更に、自動車補助ヒータ用のこのような制御装置と、このような自動車補助ヒータを備えた自動車と、制御装置による自動車補助ヒータの運転方法によって解決される。この運転方法の場合には、自動車の蓄電池から制御装置に案内された給電線の端子のための制御装置の端子における電圧変化を検出し、この電圧変化に依存して情報“自動車の内燃機関の始動達成”を検出する。
【0009】
本発明は自動車補助ヒータの制御装置において、電圧信号ラインのための上記の端子と、ターミナル61を介してのジェネレータ信号ラインと、ターミナル15を介しての点火信号ラインを省略する。必要な情報“自動車の内燃機関の始動達成”は本発明に従い、制御装置に存在する給電線の電圧変化を評価することによってきわめて簡単に準備される。
【0010】
電圧変化の評価は今日の制御装置の場合、適当なプログラミングおよび/または適合した回路によって制御装置の電子機器に統合可能である。そのために必要なコストは、制御装置の上記端子またはターミナルと、制御装置内の配線および自動車内の信号ラインと比べて少なくて済む。
【0011】
本発明の有利な実施形では、電圧変化が第1の電圧値から出発して低下し、続いてこの第1の電圧値を超えて上昇するときに、制御装置が情報“自動車の内燃機関の始動達成”を検出する。従来の蓄電池の電圧監視方法と異なり、本発明では、電圧閾値を下回ることを検査しないで、電圧が降下した後電圧が降下の前の値よりも高い値まで上昇したかどうかが検出される。この高い値から、内燃機関のスタータが操作された後で、内燃機関が回転し、ジェネレータを駆動し、ジェネレータが蓄電池を充電し、高い電圧を発生することが推測される。平均の車内電源電圧が12Vの車両の場合、蓄電池の電圧は内燃機関の停止時に約12Vであり、スタータの運転時に大きく低下し、続いてジェネレータすなわちオルタネータの運転時に12Vを超える値、最大14Vまで上昇する。本発明の上記実施形の場合、電圧の降下に関する電圧変化だけでなく、電圧上昇に関する電圧変化も検査される。低下および上昇時の電圧の時間的な関係と相対的な変化は、必要な情報“内燃機関の始動達成”を生じる。特許文献1に記載されているような閾値以下の電圧降下の評価だけでは、この情報を準備するために不充分である。
【0012】
本発明の代替的または付加的な実施形では、電圧変化が、自動車のジェネレータによる蓄電池の充電を推測することができる変動を有するときに、制御装置が情報“内燃機関の始動達成”を検出する。これに関連して、蓄電池電圧の変動は蓄電池のリプル電圧とも呼ばれる。これはフィルタリングにもかかわらず電源ユニットの出発直流電圧に重畳される残留交流電圧と同様に行われる。これはここでもリプル電圧と呼ばれる。蓄電池の充電によって発生したリプル電圧は一般的に規則的に変化し、変動の最高値と最低値の間隔を決定することによって測定される。変動はジェネレータ内の回転磁場に基づいて生じる。変動は1〜2Vの相対的な変動幅を有する。
【0013】
本発明による制御装置は自動車補助ヒータにおける使用のほかに、情報“自動車の内燃機関の始動達成”または“内燃機関運転”が重要である自動車の他の機器にも使用可能である。例えば、自動変速機、スライドルーフまたはウインドレギュレータ制御装置、ブレーキシステムまたはベルトテンショナーやエアバッグの如き安全装置に設けられるような制御装置も、給電線のための端子の電圧変化の本発明による監視装置を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】蓄電池と内燃機関とともに自動車補助ヒータを概略的に示す図である。
【図2】車両の内燃機関の始動が達成されたかどうかを、本発明に従って検出する概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面に基づいて本発明による自動車補助ヒータの実施の形態を詳説する。
【0016】
図1には、例えば内燃機関を備えた乗用車のような図示していない自動車に組み込むための補助ヒータ10が示してある。この補助ヒータ10はバーナー12を備えている。液体燃料が燃料ポンプ14によってバーナーに供給可能であり、燃焼空気が燃焼空気ファン16によってバーナーに供給可能である。バーナー12には熱交換器18が配置されている。補助ヒータ10の組み込み状態で、循環ポンプ20によって、液状の熱媒体が熱交換器18に送出される。
【0017】
バーナー12、燃料ポンプ14、燃焼空気ファン16および循環ポンプ20は、補助ヒータ10のケーシング24に設けられた制御装置22に接続されている。制御装置22には更に、例えば乗客室内の内部温度センサ26と外部温度センサ28のようなセンサが接続されている。
【0018】
制御装置22は固有の給電のために、端子30と給電線32を介して蓄電池34に接続されている。蓄電池34は、内燃機関36の運転時に自動車のジェネレータ38によって充電される。
【0019】
制御装置22において情報“内燃機関36の始動達成”を簡単に得るために、制御装置22はその回路装置とデータメモリ内に格納された制御プログラムを適当に適合させることにより、給電線32の端子30の電圧の変化を検出し、この変化に基づいて必要な情報を検出する。
【0020】
その際、制御装置22は図2のブロック40に従って、先ず最初に現在入手可能な第1の電圧値に関する電圧の変化を検出する。この電圧値は平均バッテリ電圧が12Vの車両の場合、内燃機関の停止時には一般的に約12Vである。
【0021】
制御装置22は図2のブロック42に従って、この第1の電圧値がその前に定められた変化ウインドウに従って所定の勾配で降下しているかどうか、すなわち電圧値が所定の第1の時間内において予め定めた第1の相対値だけ小さくなっているかどうかを検査する。第1の時間は比較的に短く、10分の数秒またはミリ秒である。
【0022】
電圧が急速に降下すると、図2のブロック44に従って、電圧値が予め定めた第2の時間内にその前の第1の電圧値を越えて上昇したかどうかの検査が行われる。第2の時間は一般的に、数秒の長さ、すなわち内燃機関を始動させるために必要な時間と同じ長さである。上昇は比較的に迅速に行われる。従って、検査のための他の判断基準として、図2のブロック46に従って、上昇の経過ウインドウが設けられている。この経過ウインドウによって、所定の第3の時間内における、予め定めたいわゆる第3の相対値だけの電圧値増大が検査される。
【0023】
制御装置が図2のブロック48に従って、給電線32の端子30における電圧の変化が設定された変化に少なくともほぼ一致していることを検出すると、制御装置22はそれから、自動車の内燃機関36が始動し、運転されているという情報を導き出す(図2のブロック50参照)。そうでない場合、内燃機関36は始動していない(図2のブロック52参照)。
【0024】
内燃機関36の運転中、上記の端子30における電圧値は、内燃機関36によって駆動されるジェネレータ38の少しだけ変化する充電電圧またはリプル電圧によって変動する。この変動は、本実施の形態の補助ヒータ10では、図2のブロック54に従って、一方では検出された情報“内燃機関36の始動達成”を保護するために、他方では内燃機関36の起こり得る停止を検出するために使用される(図2のブロック56参照)。
【0025】
情報“内燃機関36の始動達成”が制御装置22によって検出されるや否や(図2のブロック50参照)、この制御装置22は、電圧の最高値と最低値をメモリに記憶し、その絶対的な変化と相対的な変化を検査することにより、普通の変動に関する電圧の他の変化を検査する。それによって、変動幅が検査され、そして値が全体として所定の電圧ウインドウ内で元の第1の電圧値よりも高いかどうかが検査される。これが肯定されると、制御装置22は情報“内燃機関が運転されている”を認識する。
【0026】
電圧値が低下し、および/または給電線32の端子30の電圧が変動を停止すると、制御装置22は内燃機関の停止を認識する(図2のブロック56参照)。続いて、保護として、電圧が少なくともほぼ変動しないままであるかどうかが再び検査される。更に、代替的にあるいは付加的に、電圧の絶対値が電圧ウインドウ内でほぼ第1の電圧値であるかどうか、すなわち再びジェネレータ38を用いないで蓄電池34だけによって発生する電圧が端子30に供給されているかどうかが検査される。
【0027】
情報“内燃機関36の始動達成”(図2のブロック50参照)と、情報“内燃機関36の停止”(図2のブロック56参照)は、実施の形態の自動車の場合、例えば内燃機関36の冷却水のような他のパラメータに対応してヒータ10を自動運転するために使用される。
【0028】
それと代替的にあるいは付加的に、本実施の形態で説明した、制御装置22における情報提供方法を、例えば自動車のスライドルーフ制御の図示していない制御装置を最適化するために使用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 自動車補助ヒータ
22 制御装置
30 端子
32 給電線
34 蓄電池
36 内燃機関
38 ジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置(22)を備え、この制御装置が給電線(32)用の端子(30)を備え、この給電線が自動車の蓄電池(34)から制御装置(22)に案内されている、自動車補助ヒータ(10)において、制御装置(22)が、端子(30)の電圧変化を検出しかつこの電圧変化に依存して情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”を検出するように構成されていることを特徴とする自動車補助ヒータ。
【請求項2】
前記電圧変化が第1の電圧値から出発して低下し、続いてこの第1の電圧値を超えて上昇するときに、制御装置(22)が情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”を検出することを特徴とする請求項1記載の自動車補助ヒータ。
【請求項3】
前記電圧変化が、自動車のジェネレータ(38)による蓄電池(34)の充電、すなわち蓄電池のリプル電圧を推測することができる変動を有するときに、制御装置(22)が情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”を検出することを特徴とする請求項1記載の自動車補助ヒータ。
【請求項4】
自動車の蓄電池(34)から制御装置(22)に案内された給電線(32)の端子(30)を経て給電される、自動車補助ヒータ用の制御装置(22)において、制御装置(22)が、端子(30)の電圧変化を検出しかつこの電圧変化に依存して情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”を検出するように構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
前記電圧変化が第1の電圧値から出発して低下し、続いてこの第1の電圧値を超えて上昇するときに、制御装置(22)が情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”を検出することを特徴とする請求項4記載の制御装置。
【請求項6】
前記電圧変化が、自動車のジェネレータ(38)による蓄電池(34)の充電、すなわち蓄電池のリプル電圧を推測することができる変動を有するときに、制御装置(22)が情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”を検出することを特徴とする請求項5記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動車補助ヒータ(10)を備えた自動車。
【請求項8】
制御装置(22)を備えた自動車補助ヒータ(10)を運転するための方法において、自動車の蓄電池(34)から制御装置(22)に案内された給電線(32)の端子(30)のための制御装置(22)の端子(30)における電圧変化を検出し、この電圧変化(40、42、44、46、48、54)に依存して情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”を検出することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記電圧変化が第1の電圧値から出発して低下し、続いてこの第1の電圧値を超えて上昇するときに(40、42、44)、情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”が検出されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記電圧変化が、自動車のジェネレータ(38)による蓄電池(34)の充電、すなわち蓄電池のリプル電圧を推測することができる変動を有するときに、情報“自動車の内燃機関(36)の始動達成”が検出されることを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−18265(P2010−18265A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2810(P2009−2810)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【分割の表示】特願2002−257471(P2002−257471)の分割
【原出願日】平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願人】(591018763)ベバスト・アクチィエンゲゼルシャフト (102)
【Fターム(参考)】