説明

自動車車体用細長パッキン材

【課題】 従来自動車の車体に表面に配置されるグラスランチャンネル等の細長パッキン材は、リサイクル性の観点から、材質として熱可塑性オレフィン系エラストマーを適用する例が増加している。しかしながら、一般の熱可塑性オレフィン系エラストマーは、表面の化学的活性が極めて低いため塗装をすることができない。従来技術の問題点は、グラスランチャンネルの外観意匠面に塗装するのが困難なことである。
【解決手段】 車体1に配置された細長パッキン材5の少なくとも露出外面にアクリルとオレフィンからなるグラフト共重合体を含むアクリル系熱可塑性エラストマー9を配置し、前記アクリル系熱可塑性エラストマーTの露出外面に塗装層Sが設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体に配置されるグラスランチャンネル等の細長パッキン材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来自動車の車体に表面に配置されるグラスランチャンネル等の細長パッキン材は、リサイクル性の観点から、材質として熱可塑性オレフィン系エラストマーを適用する例が増加している。他方、グラスランチャンネルには意匠性の向上を目的として、露出する外観意匠面に塗装の要求がある。しかしながら、一般の熱可塑性オレフィン系エラストマーは、表面の化学的活性が極めて低いため塗装をすることができない。従来技術の問題点は、グラスランチャンネルの外観意匠面に塗装するのが困難なことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、細長パッキン材を構成する材料をアクリルとオレフィンからなるグラフト共重合体を含むアクリル系熱可塑性エラストマーを用いれば、塗装も可能なことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明に係る自動車車体用細長パッキン材は、車体に装着された細長パッキン材5の少なくとも露出外面にアクリル系熱可塑性エラストマーTを配置したことを特徴とするものである。
【0005】
ここでアクリルとは、メタアクリル樹脂、メタアクリルエラストマーが挙げられる。
【0006】
請求項2の発明に係る自動車車体用細長パッキン材は、車体に装着された細長パッキン材5の少なくとも露出外面にアクリルと、オレフィン又は/及びスチレン系熱可塑性エラストマーとの混合物からなる熱可塑性エラストマーTを装着したことを特徴とするものである。
【0007】
ここでオレフィンとは、オレフィン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0008】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーとは、(SEP ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、SEPS ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、SEBS ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体、SEEPS ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体が挙げられる。
【0009】
請求項3の発明に係る自動車車体用細長パッキン材は、車体に装着された細長パッキン材5の少なくとも露出外面にアクリルとオレフィンからなるグラフト共重合体を含むアクリル系熱可塑性エラストマーTを配置したことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明に係る自動車車体用細長パッキン材は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、細長パッキン材5全体が熱可塑性エラストマーTであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明に係る自動車車体用細長パッキン材は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、細長パッキン材本体がオレフィン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマー製で、その細長パッキン材本体の外部露出面に熱塑性エラストマーT被覆層を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明に係る自動車車体用細長パッキン材は、請求項1〜5のいずれかの一項に記載の発明において、熱可塑性エラストマーTの露出外面に塗装層Sが設けてあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
アクリルとオレフィンからなるグラフト共重合体を含むアクリル系熱可塑性エラストマーが塗装性に優れる理由は、アクリルとオレフィンからなるグラフト共重合体を含むアクリル系熱可塑性エラストマーはアクリル鎖でグラフト変性されているので、表面エネルギーが向上していることによる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図3において、ボディ1とドア2とはいずれも車体の構成要素である。ドア2にはドアサッシュ4があり、ドアサッシュ4にグラスランチャンネルを構成する細長パッキン材5が装着されている。昇降ガラス3が、細長パッキン材5を介し、ドアサッシュ4に沿って上下に移動する。
【0015】
細長パッキン材5の断面は略溝形で、溝底を形成する底部6と、溝側壁を形成する側部7,7と、側部先端から昇降ガラス3に向かう傾斜リップ8,8を備えており、傾斜リップ8,8の基部はドアサッシュ4から食み出し、この食み出し部の表面が外観意匠面Qになる。
【0016】
また必要に応じ、図3に示す如く、細長パッキン材5本体の表面にアクリル系熱可塑性エラストマーT製被覆層9が形成される。
【0017】
アクリル系熱可塑性エラストマーT製の細長パッキン材5又はアクリル系熱可塑性エラストマー製被覆層9の外面には、塗装膜Sが形成されている。
【実施例】
【0018】
AES株式会社製一般の熱可塑性エラストマー(一般TPO),商品名サントプレーン201−64(比較例2)と、アクリルとオレフィンからなるグラフト共重合体を含むアクリル系熱可塑性エラストマー(日本油脂株式会社製,商品名ノフアロイTZ330-L)(実施例)の厚み2mmの試料シートについて比較し、表1の結果を得た。
【0019】
表1中、塗装性は、試料シートにプライマーを塗布後に、エアースプレー方式で塗料を塗布し、厚さ10μmの膜厚を形成した。次いで40°Cの温水に240時間、又はガソリンに72時間浸漬後、20×20の基盤目剥離試験を実施して、剥離面積率を測定した。
【0020】
【表1】








【0021】
表1より、アクリルとオレフィンからなるグラフト共重合体を含むアクリル系熱可塑性エラストマーは、塗装性の物性が、従来品である塩化ビニル樹脂と同等であることから、車体用細長パッキン材の材質として十分使用可能であることが言える。
【産業上の利用可能性】
【0022】
発明を実施するための最良の形態においては、細長パッキン材として、グラスランチャンネルを例にとったが、ボディの昇降口の周縁に装着するウエザーストリップ或いは昇降ドアの周縁に装着するウエザーストリップ,或いはサンルーフやルーフモールにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】自動車の側面図である。
【図2】本発明の一例を示す図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の他例を示す図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ボディ
2 ドア
3 昇降ガラス
4 ドアサッシュ
5 細長パッキン材
6 底部
7 側部
8 リップ
9 表面層
Q 外観意匠面
S 塗装膜
T アクリル系熱可塑性エラストマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に装着された細長パッキン材(5)の少なくとも露出外面にアクリル系熱可塑性エラストマー(T)を配置したことを特徴とする自動車車体用細長パッキン材。
【請求項2】
車体に装着された細長パッキン材(5)の少なくとも露出外面にアクリルと、オレフィン又は/及びスチレン系熱可塑性エラストマーとの混合物からなる熱可塑性エラストマー(T)を配置したことを特徴とする自動車車体用細長パッキン材。
【請求項3】
車体に装着された細長パッキン材(5)の少なくとも露出外面にアクリルと、オレフィンからなるグラフト共重合体を含むアクリル系熱可塑性エラストマー(T)を配置したことを特徴とする自動車車体用細長パッキン材。
【請求項4】
細長パッキン材全体が前記熱可塑性エラストマー(T)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車車体用細長パッキン材。
【請求項5】
細長パッキン材本体がオレフィン系熱可塑性エラストマー又はスチレン系熱可塑性エラストマー製で、その細長パッキン材本体の外部露出面に前記熱塑性エラストマー被覆層(T)を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車車体用細長パッキン材。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマー(T)の露出外面に塗装層(S)が設けてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車車体用細長パッキン材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−160091(P2006−160091A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354776(P2004−354776)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】