説明

自動車道路高架橋の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスおよびその施工方法

【課題】 路線幅の建設限界の中で設置可能で、さらに高架橋の下に足場を組む必要がなくコスト削減でき、設置工期の短縮されたプレキャストコンクリート製ガードフェンスを提供する。
【解決手段】 上下走行路線用の左右の高架橋の路版11、11の地覆11a、11aに跨がって設置したプレキャストコンクリート製ガードフェンス1は、最大幅の下面2と最小幅の上面3と、緩やかに傾斜した下部傾斜面4aと急峻に傾斜した上部傾斜面4bからなる左右対称の側面4、4を有し、その下面2はその長手方向の中央部に跨状の凹溝5を有し、凹溝5の両側の下面2は水平面6で、これらの水平面6の下部には振動吸収ゴム板9aが配設されて設置されている。これらのプレキャストコンクリート製ガードフェンス1は3〜5個の複数個のプレキャストコンクリートブロック1aを一体的に接続して形成の1列の連接体1bからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は高速道路や一般自動車道路の上下走行路線別々の平行に設置の高架橋において、上下走行路線を分離する中央分離帯として設置して走行車両の安全を図るガードフェンス、特にプレキャストコンクリート製ブロックの連接体からなるガードフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や一般自動車道路の防護柵としてのガードフェンスには、一般的には、図16に示す鋼鉄製のポール17に設けた鋼板製のガードフェンス18や、図17に示すプレキャストコンクリート製ガードフェンス19や、現場打設のコンクリート製のガードフェンスが、上り路線や下り路線のそれぞれの路線のサイドに2列状に並設して採用されている。これらの中で、その耐久性や強度やコストの面から、図16に示す鋼鉄製のポール17や鋼板製のガードフェンス18からプレキャストのコンクリート製ガードフェンス19に置き換えられつつある。
【0003】
ところで、高速道路や自動車道路の高架橋や河川橋などの路線橋において、その上下の各走行路線は、例えば片側2車線あるいは片側3車線であるので広い路版幅を有する。そこで、これらの路線橋を建設する場合は、上り路線側の路線橋と下り路線側の路線橋は、上り路線の路版と下り路線の路版を平行状態に隣接して別々に建設されている。例えば、名神高速道路では、吹田と尼崎間では別々の高架橋で建設されている。このように高架橋などの上下走行路線の路版11は別々に建設されるので、それぞれの上り路線の路版11と下り路線の路版11の境界には間隙13が存在する。その結果、それぞれの上下走行路線の路版11、11において、各路版11の端部にコンクリート製のガードフェンス19の1列をアンカーボルト20で設置し、上下走行路線の路版11、11の境界に沿って計2列の、すなわち図17に示すように、コンクリート製のガードフェンス19、19をアンカーボルト20で係止して設置して、走行中の車の安全を確保している。
【0004】
ところで、コンクリート製ガードフェンス19において、走行車が誤ってコンクリート製ガードフェンス19に衝突した場合、衝撃荷重30がコンクリート製ガードフェンス19に矢印方向に作用し、輪荷重31が路版11に矢印方向に作用する。この結果、これらの合成された曲げ荷重32が路版11の端部にコンクリート製ガードフェンス19を固定するアンカーボルト20に一方的に掛かることとなる。そこで、コンクリート製ガードフェンス19の設置に先立ち、床版上面を増厚する路版端部の工事が必要であり、施工手間が煩雑である。また、この工事のための長期にわたる車線規制が必要であり、このため特にカーブ区間では施工リスクを伴う問題があった。
【0005】
さらにコンクリート製ガードフェンス19に走行車が斜めから衝突したときに衝撃を和らげて車両の方向を走行路線方向へ戻すため、コンクリート製ガードフェンス19の下部の部分の側面4が傾斜面に形成されている。しかし、このようなコンクリート製ガードフェンス19を設置しても、走行車がガードフェンスを突破して対向の反対車線へ飛び出し、反対車線の走行車にまで危険を及ぼしたり、また、上下の走行路線をともに塞いでしまったり、さらに事故による破片を飛び散らせるなどの問題をなお惹き起こしている。
【0006】
すなわち、これらのコンクリート製ガードフェンス19は、車の衝突に対して充分な強度と剛性を保持している必要がある。しかし、道路の走行路線幅に建築上の限界があるので、図17に示すような、従来のプレキャストコンクリート製のガードフェンス19では、その厚みが例えば上面3で200mmで、その高さが1000mmの大きさとされている。さらに、このプレキャストコンクリート製のガードフェンス19の下端は、車の衝突の衝撃により移動しないように、上記のように高架橋や河川橋などの路版11を裏面側に挿通したアンカーボルト20により固定されている。このアンカーボルト20による固定では、高架橋などの橋梁の下面から挿通してナットにより固定するため、高架橋の裏面に達する足場を組んで施工する必要がある。また、高架橋や河川橋においては、その橋梁幅に伴う道路幅の限界があることや、河川橋などの場合は足場の設置に困難を伴うことや、さらに上記のような道路幅に建築限界があることに伴い、幅厚みのあるプレキャストコンクリート製のガードフェンスを設置するには限界があった。
【0007】
ところで、従来、高速道路や一般の自動車道路用のガードフェンスとしては、例えば、強度を向上したプレキャストコンクリートガードフェンスを本出願人が開発している(例えば、特許文献1参照。)。その他にも、表面を低摩擦係数とした現場で打設するコンクリート製ガードフェンス(例えば、特許文献2参照。)や、さらに車両衝突時の衝撃を効率的に吸収し、基礎壁および柵体の破損を阻止したコンクリート製のガードフェンス(例えば、特許文献3参照。)が開発されている。しかし、これらのものは、いずれも一般的な自動車道に関するもので、上下走行路線が一体の架橋からなるもので、上下走行路線が別々に架橋された高架橋や河川橋に関するものではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−136724号公報 (11)
【特許文献2】特開平8−92923号公報 (1)
【特許文献3】特開平10−131136号公報 (1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、従来の高速道路あるいは自動車道の高架橋や河川橋の上下走行路線のそれぞれの路版の端部にボルトで締結して剛体化して立設していたプレキャストコンクリート製ガードフェンスに替えて、路線幅の建設限界の中で上下走行路線の各路版の間の間隙に跨がって設置可能な略2倍の幅のプレキャストコンクリート製ガードフェンスとし、したがってプレキャストコンクリート製ガードフェンスの下面に跨状の凹溝を設け、この凹溝を各路版端部に立設の地覆に嵌合してプレキャストコンクリート製ガードフェンスの滑り止めに利用して設置し、あるいは地覆を撤去して変わりの滑り止め手段を講じて設置し、従来の工法の路版の高架橋の下に組んだ足場をなくしてコストが削減を図り、しかも設置工期の短縮を図ったプレキャストコンクリート製ガードフェンスおよびその施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンスは、従来のプレキャストコンクリート製ガードフェンスの高さと同様の略1000mmの高さを有するものとする。しかし、その他の大きさは従来のものと相違し、上面の幅は従来の略2倍の400〜485mmで下面の幅が同じく従来の略2倍の800〜900mmであり、側面は、従来のものが一面は傾斜面で他面は垂直面であるものと異なり、両側面が下面の800〜900mmから上方になるにつれて狭小幅の400〜480mmとなる、左右対称の傾斜面を有しており、さらに、そのプレキャストコンクリート製ガードフェンスは2000mmの長さを有するものである。これらのプレキャストコンクリート製ガードフェンスは長手方向に連接されて、プレキャストコンクリートブロックの連接体の少なくとも14mからなる一体化したプレキャストコンクリート製ガードフェンスを形成する。
【0011】
さらに、このプレキャストコンクリート製ガードフェンスの長手方向の下面の中心部は上部に凹む凹溝を有し、この凹溝の幅はプレキャストコンクリート製ガードフェンスの下面の幅に応じて異なる。先ず、下面の幅が900mmのプレキャストコンクリート製ガードフェンスの場合は、凹溝の幅は480mmであり、その凹溝の高さは、凹溝の周囲のガードフェンス内を補強しないタイプと鋼製ジャケットで補強したタイプで相違し、補強しないタイプでは高さは120mmであり、他方、鋼製ジャケットで補強したタイプでは高さは220mmである。これらの凹溝は上下の路版端部から上に突出する地覆に被せるものである。また、さらに、下面の幅が800mmのプレキャストコンクリート製ガードフェンスの場合は、凹溝の幅は200〜350mmとする。このため、高架橋の上下走行路線の各路版端部の上部に突出する地覆は除去し、その地覆を除去した上下路版間の間隙を跨いでこのプレキャストコンクリート製ガードフェンスを被せるものとしている。これらのプレキャストコンクリート製ガードフェンスの凹溝の両外側の下面は、間隙を跨いだ両側の底面は水平であり、これらの水平な底面と路版面の間に振動吸収ゴム板を介在させ、高架橋の上下路版に設置するものとなっている。
【0012】
本願発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンスは上記の大きさとし、さらに高架橋の上下路版間の間隙を跨いで設置するので、従来の幅薄のプレキャストコンクリート製ガードフェンスを上下走行路線の各路版の端部に1列ずつすなわち上下の路版で2列に設置したものに比して、高架橋の上下路版間の間隙の幅分だけプレキャストコンクリート製ガードフェンスの幅を縮小している。従って、各高架橋の上下路版の路線幅に余裕を生じ、高架橋幅の建築限界が存在するにもかかわらず余裕をもってプレキャストコンクリート製ガードフェンスを設置できる。さらに、従来のプレキャストコンクリート製ガードフェンスに比し、本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンスの幅は略2倍の厚みを有するので、その重量も略2倍の重量を有する。従って、従来のプレキャストコンクリート製ガードフェンスのように、本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンスはアンカーボルトで高架橋に固定しなくとも、単に地覆に被せるのみで、走行車の衝突により押されて他の路線側へ移動することはない。このためプレキャストコンクリート製ガードフェンスを路版に固定するために、アンカーボルトを高架橋の裏面側に通して高架橋に固定するための大がかりな足場を高架橋の下部に組む必要がない。また、高架橋の路版にアンカーボルトを挿通する孔を穿孔する必要もなく、したがって路版を補強する必用もない。さらに、本発明はプレキャストコンクリート製ガードフェンスの下面に振動吸収ゴム板を介在させるので、反対車線を走行する車の振動や衝突による衝撃を吸収緩和し、他方の路版面を走行する車に影響を及ぼすこともない。さらにゴムの摩擦力によりプレキャストコンクリート製ガードフェンスの移動を抑制することができる。
【0013】
上記において各路版端部の地覆を除去したものは、さらに、上下路版の間の間隙に、垂直方向に突出する係合用の凸条を下部に有する直方体のコンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留めを嵌合して設けている。この場合、プレキャストコンクリート製ガードフェンスの凹溝にゴム製の止水シールを介して止水・ズレ留めを嵌合している。このコンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留めを高架橋の上下走行路線の路版間に挿入することにより、プレキャストコンクリート製ガードフェンスに車が衝突しても、上記したプレキャストコンクリート製ガードフェンスの重量に加えて直方体のコンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留めが路版に係合されているので、地覆がなくとも、押されて側方の反対車線に移動することが十分に阻止され、反対車線に押し出されて通行の障害となることはない。さらに、コンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留めの凸条の両側の下面と路版面の間に、止水用のゴム製の止水シールを挿入すると、路版面に降った雨水が上下路版の間隙に入ることを阻止し、路版自体が雨水により浸食され、また雨水が高架下に垂れることがない。
【0014】
さらに、本発明の他の手段として、地覆を除去した場合には、上記の構成のコンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留めとは別に、プレキャストコンクリート製ガードフェンスの跨状の凹溝の中央から下方に垂直に延びる鋼製プレートからなるズレ留めを設けることもできる。この鋼製プレートのズレ留めを高架橋の上下走行路線の狭い路版間に挿入することにより、上下走行路線の路版の振動により、プレキャストコンクリート製ガードフェンスが移動することを防ぐことができる。もちろんこの場合も、プレキャストコンクリート製ガードフェンスに車が衝突しても、車に押されて半体路線側へ移動するようなことはない。しかし、この鋼製プレートは止水性がないので、この場合はプレキャストコンクリート製ガードフェンスの跨状下面に振動吸収ゴム板に止水機能を持たせるものとしている。
【0015】
上記したプレキャストコンクリート製ガードフェンスは3〜5個に分割されたコンクリートブロックから長手方向に接続により一体化され、14m以上にもなる長さの連接体に形成されている。一方、1個当たりのプレキャストコンクリート製ガードフェンスのコンクリートブロックの重さは3〜6トンであるので、このコンクリートブロックから連接により一体化により形成されたプレキャストコンクリート製ガードフェンスは平均でも15トン以上の重量となるので、自動車の衝突により容易に動かされることはない。
【0016】
このプレキャストコンクリートブロックからなるプレキャストコンクリート製ガードフェンスの連接体は、プレキャストコンクリート製ガードフェンスの上方中央部に長手方向にφ23mmの筋張力29.4tのPC鋼棒を通して一体化している。あるいは、このPC鋼棒を通して一体化するものに替えて、長手方向の一方のブロック端面の中央部に垂直方向の凸条を有し、かつ、他方のブロック端面の中央部に垂直方向の凹条を有するプレキャストコンクリートブロックの複数からその凸条を隣接ブロックの凹条に嵌合して係合することで形成している。
【0017】
さらに、これらのプレキャストコンクリート製ガードフェンスの連接体は、それぞれのプレキャストコンクリートブロックの長手方向の端部の上面の中央部に上面凹陥部を形成し、さらに、それぞれのプレキャストコンクリートブロックの側面の上部傾斜面の下部の長手方向の端部に側面凹陥部を形成している。これらの隣接するプレキャストコンクリートブロック同士の上面凹陥部と側面凹陥部には、それぞれのプレキャストコンクリートブロックの凹陥部の面にボルトを立設している。これらの隣接するプレキャストコンクリートブロックの上部凹陥部と側面凹陥部のボルトには、ボルト挿通孔を有する鋼製連結プレートを装着してナットで締めて連接し、連接体に形成してプレキャストコンクリート製ガードフェンスとしている。
【0018】
すなわち、上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、最大幅の下面と最小幅の上面と、かつ、緩やかな下部傾斜面と該下部傾斜面に続く急峻な上部傾斜面からなる両側面を有し、上記の最大幅の下面の長手方向中央部に跨状の凹溝を有し、該下面の下に振動吸収ゴム板を配設して上下路版の間隙を跨いで載置の据置き型のプレキャストコンクリートブロックを長手方向に連設した連接体からなることを特徴とする自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスである。
【0019】
請求項2の発明では、最大幅の下面の長手方向中央部に跨状の凹溝を有し、上下路版の間隙を跨いで載置の据置き型のプレキャストコンクリートブロックは、プレキャストコンクリートブロックの緩やかな下部傾斜面とその上部に続く急峻な上部傾斜面の下部領域部分からなる両側面間のブロック下部内に該ブロック下部の長手方向に垂直な断面形状と相似する鋼製リブプレートの複数枚からなる鋼製ジャケットをブロック下部の長手方向に等間隔で離間して内在して有することを特徴とする請求項1の手段の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスである。
この発明では、地覆はそのままの状態にして撤去することなくプレキャストコンクリートブロックを設置するので、この設置にあたって前準備作業を不要とする。一方、左右の地覆を嵌合する凹溝の内壁上端角部とプレキャストコンクリートブロックの側面との間の肉厚が薄くなるので、強度を補強するために鋼製ジャケットをプレキャストコンクリートブロックの下部内に内在させている。
【0020】
請求項3の発明では、跨状の凹溝は、上下路版の各端部に立設の上部を一部カットした地覆の周囲に接合グラウトを介在して嵌合しうる高さと幅を有することを特徴とする請求項1または2の手段の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスである。
この発明では、プレキャストコンクリートブロックを設置する場合、現況の自動車道路の高架橋の上下路版の各端部から上方に立ち上がる地覆の上部の一部をカットして低くするのみで、一部カットして残した下部の地覆は撤去することなく、一部残した状態で跨状の凹溝で覆って設置するので、プレキャストコンクリートブロックの凹溝の高さを低くできる。したがってプレキャストコンクリートブロックの凹溝の内壁上端角部とプレキャストコンクリートブロックの側面との間の肉厚が上記の地覆の一部をカットすることなくそのまま残したものに比して肉厚が厚いので、プレキャストコンクリートブロックの強度は低下することがない。
【0021】
請求項4の発明では、跨状の凹溝は、上下路版の各端部に立設の地覆をカットし、このカットした地覆に代え、上下路版間の間隙に係合する凸条を下面に突出するコンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留めを凹溝内部に嵌合して有することを特徴とする請求項1または2の手段の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスである。
上下路版の間隔が広い場合に、コンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留めにより据置き型のプレキャストコンクリートブロックの自動車の衝突による移動を阻止するものとしている。
【0022】
請求項5の発明では、跨状の凹溝は、上下路版の各端部に立設の地覆をカットし、このカットした地覆に代え、凹溝の上部のブロック中央から下方の上下路版の間隙に垂直に挿入される鋼製プレートからなるズレ留めを有することを特徴とする請求項1または2の手段の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスである。
この鋼製プレートからなるズレ留めにより据置き型のプレキャストコンクリートブロックの自動車の衝突による移動を阻止するものとしている肉薄の鋼製プレートの下端を上下路版の狭い間隔に挿通してズレ留めとして据置き型のプレキャストコンクリートブロックの自動車の衝突による移動を阻止するものとしている。
【0023】
請求項6の発明では、プレキャストコンクリートブロックを長手方向に連設した連接体は、各プレキャストコンクリートブロックの長手方向中央部にPC鋼棒を挿通して隣接するプレキャストコンクリートブロック同士を連接して形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項の手段の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスである。
PC鋼棒をブロック間に挿通して連接することで、据置き型のプレキャストコンクリートブロックの自動車の衝突による移動はより強力に阻止されるものとされている。
【0024】
請求項7の発明では、プレキャストコンクリートブロックを長手方向に連設した連接体は、長手方向の一方のブロック端面に凸条を有し、かつ、他方のブロック端面に凹条を有する複数のプレキャストコンクリートブロックからなり、各プレキャストコンクリートブロックの長手方向ブロック端面に有する凸条を隣接するプレキャストコンクリートブロックの長手方向のブロック端面に有する凹条に係合することにより、長手方向に連接した複数のプレキャストコンクリートブロックから形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項の手段の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスである。
連接するブロック間を互いの凹条と凸条を嵌合することで容易に連接体とすることができる。
【0025】
請求項8の発明では、連接体を構成するプレキャストコンクリートブロックは、プレキャストコンクリートブロックの長手方向端部の上面中央に形成の上部凹陥部および同プレキャストコンクリートブロックの側面の上部傾斜面の長手方向端部の下部に形成の側面凹陥部と、隣接のプレキャストコンクリートブロックの長手方向端部の上面中央に形成の上部凹陥部および同隣接のプレキャストコンクリートブロックの側面の上部傾斜面の長手方向端部の下部に形成の側面凹陥部に挿着の鋼製連結プレートにより連接されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項の手段の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンスである。
連接するブロック間を鋼製連結プレートによりボルト締めして連結することで連接の一体化をより高めたものとしている。
【発明の効果】
【0026】
この発明は上記の構成の手段を有するので、本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンスを構成するプレキャストコンクリートブロックは、上下の走行路線の高架橋の路版面に下部に振動吸収ゴム板を配設して跨がって載置することで設置できるので、設置工事に要する期間が短く、従って建設コストが大幅に削減できる。さらに大きさが従来のプレキャストコンクリート製ガードフェンスの略2倍の大きさを有するので重量も略2倍であるため車の衝突の衝撃により移動されにくい。従来のようにアンカーボルトで固定する必要がないので、夜間でも容易に迅速に工事でき、交通を阻害することが少ない。しかも、本発明のプレキャストコンクリートブロックは上下の路版を跨いで設置されるので、走行車両が衝突しても衝突時の衝撃が左右の路版に分散され、しかも各路版に反対方向の曲げ荷重が掛かることとなり、互いに打ち消し合うので、衝突されても反対路線側へ移動しにくい。さらに、充分な大きさがあるので車の衝突に対する充分な耐衝撃性を有し、かつ、衝突した車が反対車線へ突入することを防止して連鎖事故の発生を防ぎ、かつ現状復帰も容易に実施できる。さらに振動吸収ゴム板を配設しているので、路版振動による移動を抑制し、また反対車線の路版に振動を伝えて影響することがない。さらにプレキャストコンクリートブロックの長手方向の端面同士の接続を、隣接ブロック同士をPC鋼棒による接続、隣接ブロック同士の長手方向端面に設けた凸条と凹条による係合、さらには、隣接ブロック同士の上部凹陥部と側部凹陥部に嵌合の鋼製連結プレートによる連接によるので、側方から車の衝突を受けても移動しにくい。
【0027】
さらに跨状に跨がった上下走行路線用の左右の高架橋の路版の間にプレキャストコンクリート製ガードフェンスの下面の跨状の凹溝に嵌合された直方体のコンクリート製のキャップ状の止水を兼ねたズレ留めから下方に突出して延びる凸条の剪断キーを有するので、この凸条の剪断キーを左右の高架橋の路版の間隙に挿通することで、路版振動による移動を抑制し、さらに車の衝突時の衝撃による移動をより一層に抑制できる。さらに高架橋の路版の間隙が狭い場合には、上記のコンクリート製のキャップ状の止水を兼ねたズレ留めの代わりに鋼製プレートのズレ留めとすることで、狭い間隙に容易に挿着可能としてプレキャストコンクリート製ガードフェンスの移動を阻止している。さらに、従来のように路版にアンカーボルトを挿通してネジ止めしていないので、仮にプレキャストコンクリート製ガードフェンスが移動しても、プレキャストコンクリート製ガードフェンスの原状復帰を容易としている。さらにプレキャストコンクリート製ガードフェンスは複数個の長さの短いプレキャストコンクリートブロックから形成するので、取り扱いが容易で施工現場での建設も容易にクレーンなどで扱えるなど、上下路線の分離帯として本願発明は優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。図4に上下走行路線用の左右の高架橋の路版11に設置した本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1を示す。この載置したプレキャストコンクリート製ガードフェンス1の両側部の路版11上にアスファルトの舗装12が施工されている。このプレキャストコンクリート製ガードフェンス1は、最大幅である下面2と最小幅である上面3と、緩やかに傾斜した下部傾斜面4aとこの下部傾斜面4aに続く急峻に傾斜した上部傾斜面4bからなる左右対称の側面4、4とを有するプレキャストコンクリートブロック1aからなる。上記のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1の下面2はその長手方向の中央部に高架橋の上下の路版11、11の間隙13を跨ぐ跨状の凹溝5を有する。この跨状の凹溝5の両側のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1の下面2は水平面6となっている。これらの左右の水平面6の下部と上下路線の路版11の間には、水平面5と同幅の振動吸収ゴム板9aを介在させて配設している。これらのプレキャストコンクリート製ガードフェンス1は、図3もしくは図6に示すように、3〜5個の複数個のプレキャストコンクリートブロック1aを一体的に接続した連接体1bから形成されている。
【0029】
プレキャストコンクリートブロック1aの大きさは、下面2の最大幅14で800〜900mmであり、上面3の最小幅15で400〜485mmであり、また下面2の中央部の跨状の凹溝5の溝幅16aで200〜520mmである。この凹溝5の溝幅16aは設置する上下走行路線用の左右の高架橋の路版11、11の間の間隙13の幅に依存し、これらの間隙13と同じか、路版から立上がる地覆11aを有する路版11では、この上下の路版11の左右2個の地覆11aを覆う幅からなる広めの520mmとする。さらにプレキャストコンクリートブロック1aの高さは、従来のコンクリートガードフェンスの高さと同様の高さの950〜1050mmで、略1000mmとする。この場合の下部傾斜面4aの高さは270mmで、上部傾斜面4bの高さは730mmとする。このような本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1の上面3の幅は従来のコンクリート製ガードフェンスの略2倍で、下面2の幅は同じく従来のものの略2倍である。さらにプレキャストコンクリート製ガードフェンス1の連接体1bの長さは少なくとも14mを有する。このプレキャストコンクリート製ガードフェンス1は、上記したように3〜5個の複数個のプレキャストコンクリートブロック1aを連設して連接体1bとして一体化して形成され、この状態でさらに長手方向に連続して接続される。
【0030】
このプレキャストコンクリートブロック1aをガードフェンスとして上下路線の路版11、11を跨いで設置する場合、プレキャストコンクリートブロック1aは、プレキャストコンクリートブロック1aの最大幅14である下面2の長手方向中央部に形成の跨状の凹溝5を、上下の路版11、11の間隙13を跨いで載置する。この設置のため、プレキャストコンクリートブロック1aは、その緩やかな下部傾斜面4aとその上部に続く急峻な上部傾斜面4bの両側面間の下部領域部分であるプレキャストコンクリートブロック1aの下部内に、このブロック長手方向に垂直なブロック下部の断面形状と相似する鋼製リブプレート1hを複数枚を離間して等間隔に有する鋼製ジャケット1iをこのブロック下部の長手方向に内装して形成されている。この場合、図1に示すように、プレキャストコンクリートブロック1aは端面形状で下面2の最大幅14を890mmとし、上面3の最小幅15を485mmのものとし、ブロック底面に形成の跨状の凹溝5の溝幅16aは最大である510mmとし、溝高さ16bは220mmのものとしている。したがって、凹溝5の溝肩部16cとブロックの下部傾斜面4aとの最短距離は60mmとなり、その部分のプレキャストコンクリートブロック1aは肉薄となる。そこで、この部分の強度を補強するために、鋼製ジャケット1iをプレキャストコンクリートブロック1aの下部内に内在させている。すなわち、これらの鋼製ジャケット1iの上端部は上部傾斜面4bの下部の部分にまで挿入されている。この手段では、上下の路版11、11の各端部から立設する地覆11aはそのままの状態で残して凹溝5との嵌合用に利用することができ、プレキャストコンクリートブロック1aが車の衝突で移動することを阻止するものとしている。
【0031】
他の実施の形態では、プレキャストコンクリートブロック1aの外形の大きさは、鋼製ジャケット1iを有するものと同じであるが、図2に示すように、下面中央に有する凹溝5は、その溝幅16aは510mmで同様であるが、溝高さ16bは110mmと低くしている。したがって、この実施形態のプレキャストコンクリートブロック1aは、上下の路版11、11の各端部から立設する地覆11aの上部を一部カットして低くして100mmの高さとし、この低くした地覆11aの周囲に接合用のグラウト9bを介在させて嵌合しうる高さと幅からなる跨状の凹溝5を有するものとしている。この形態では、プレキャストコンクリートブロック1aを設置する場合、現況の自動車道路の高架橋の上下の路版11、11の各端部において上方に立ち上がる地覆11aの上部の一部をカットするのみで、下部の100mmの高さの地覆11aは撤去することなく一部残した状態で設置することができるので、プレキャストコンクリートブロック1aの凹溝5の高さを低くできた。そこで地覆11aの溝高さ16bを上記のように110mmとした結果、凹溝5の溝肩部16cとブロックの下部傾斜面4aとの最短距離は140mmとなり、上記の形態よりも最短距離が2倍以上となったので鋼製ジャケット1iをプレキャストコンクリートブロック1aの下部内に内在させなくとも、プレキャストコンクリートブロック1aの強度は低下することがない。そこで、このプレキャストコンクリートブロック1aを設置するためには、高架橋の上下の路版11、11の各端部に立垂する地覆11aの上部をカットする手間およびコストはかかるが、プレキャストコンクリートブロック1aそのものは、上記の形態のように鋼製ジャケット1iを内在させる必要がないので、製造コストを低減でき、また製造も容易である。
【0032】
さらに他の実施の形態では、上記したものと相違し、図4に示すように、現況の自動車道路の高架橋の上下の路版11、11の各端部から上方に立ち上がる地覆11aの全てをカットして除去し、その地覆11aのない上下路版11、11に跨状に設置して中央分離帯用とするためのプレキャストコンクリート1aである。このように路版11、11の各端部から上方に立ち上がる地覆11aの全てを除去した場合、車の衝突による移動を阻止するために、上下路版11、11の各端部から除去した地覆11aに代えて、プレキャストコンクリート1aの下面に有する跨状の凹溝5の内部に、上下路版11、11間の間隙13に係合する凸条10bを下面に突出するコンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留め10aを嵌合して有するものとした。
【0033】
上記の実施の形態のように、高架橋の上下の路版11、11の各端部から上方に立ち上がる地覆11aの全てをカットして除去した場合は、これらの路版11、11を跨いで設置するプレキャストコンクリート1aの下面の幅が上下の路版11、11の地覆11aの左右の大きさに制約されることがない。したがって、プレキャストコンクリート1aの下面の幅は、地覆11aを有する場合よりも幅狭とすることができるので、750〜850mm、標準的には800mmとした。これに応じてプレキャストコンクリート1aの上面の幅は380〜420mm、標準的には400mmとした。しかし、これらにおいても、プレキャストコンクリート1aの高さは950〜1050mm、標準的には1000mmとし、下部傾斜面の高さは270mmで、上部傾斜面4bの高さは730mmとした。さらに下面の凹溝5の溝幅16aは150〜350mmとし、溝高さ16bは35〜40mmとした。この溝幅16aは設置する上下の路版11、11の間の間隙13に依存し、これらの間隙よりも幅広で、キャップ状のコンクリート製のズレ留め10aの下面に突出する凸条10bの幅を上下の路版11、11の間の間隙13に挿入しうるものとする。
【0034】
また、さらに他の実施の形態では、高架橋の上下の路版11、11の各端部に立設の地覆11aを全て除去し、この除去した地覆11aに代えて、上下の路版11、11の間隙13に跨いで設置するプレキャストコンクリート1aの凹溝5の上部のブロック中央から下方の上下の路版11、11の間隙13に垂直に挿入される鋼製プレート10dからなるズレ留め10を有するプレキャストコンクリートブロック1aとした。すなわち、上下の路版11、11の間隙13が狭い場合には、上記のコンクリート製のキャップ状のズレ留め10aの下部の凸条10bが間隙13に挿入できないことがある。このように間隙13の幅が狭い場合に、プレキャストコンクリートブロック1aを移動しにくくするために、その下面2の跨状の凹溝5に、図9に示すように、その中央から下方に垂直に延びる鋼製プレート10dからなるズレ留め10を有するプレキャストコンクリートブロック1aとすることもできる。この場合、跨状の凹溝5の形状は、図9に示すように、円弧状とすることもできる。
【0035】
上記の各形態のプレキャストコンクリートブロック1aを長手方向に連設して連接体1bからなる中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1とする場合、各プレキャストコンクリートブロック1aの長手方向中央部にPC鋼棒1gを挿通して隣接するプレキャストコンクリートブロック1a同士の複数個、例えば3〜5個を連接して14の長さのプレキャストコンクリート製ガードフェンス1に形成している。この場合、PC鋼棒1gは、例えばφ23mmからなるものとし、そのPC鋼棒1gによる緊張力を29.4tとしてプレキャストコンクリートブロック1a同士を連接してプレキャストコンクリート製ガードフェンス1としている。このようにPC鋼棒1gで接続して形成したプレキャストコンクリート製ガードフェンス1は車の衝突による衝撃を受けても容易に反対車線へ移動することはない。
【0036】
さらに、他の実施の形態では、プレキャストコンクリート製ガードフェンス1を形成するためのプレキャストコンクリートブロック1aおよび隣接するプレキャストコンクリートブロック21aからなる連接体1bは、図5あるいは図11に示すように、プレキャストコンクリートブロック1aおよび隣接するプレキャストコンクリートブロック21aの長手方向の一方のブロック端面7の中央部に縦方向に凸条7aを有し、他方のブロック端面8の中央部に縦方向に凹条8aを有している。このプレキャストコンクリートブロック1aの凸条7aを隣接するプレキャストコンクリートブロック21aの他方のブロック端面28の凹条28aに図5で矢印で示す係合方向29に係合して長手方向に連接した複数個のプレキャストコンクリートブロック1a、21a……からなる連接体1bとしている。
【0037】
さらに、図10〜図12に示す実施の形態では、上記の連接体1bは、連接体1bを形成する各プレキャストコンクリートブロック1aおよび21aの上面3の長手方向の端部の幅の中央部に上面凹陥部3aを設ける。同様に各プレキャストコンクリートブロック1aおよび21aの側面4の上部傾斜面4bの下部の長手方向の端部にも側面凹陥部4cを設ける。一方、これらの上面凹陥部3aおよび側面凹陥部4cのコンクリート内にボルト1cを立設する。このように上面凹陥部3aおよび側面凹陥部4aを形成した各プレキャストコンクリートブロック1aおよび21aを連接体1bとして路版11、11間に敷設する。プレキャストコンクリートブロック1aおよび21aの連接体1bは上記の凸条7aと凹条28aの嵌合により連接される。さらに図11に示すように、この連設による隣接同士のプレキャストコンクリートブロック1aおよび21aの両者の上面凹陥部3aのボルト1c同士の間と、側面凹陥部4cのボルト1c同士の間とに、図15に示す接合用のボルト孔を有する鋼製連結プレート1dに各ボルト1cを通し、ナット1e、1eによりねじ締めし、隣接するプレキャストコンクリートブロック1aおよび21a同士を接続して連接体1bとし、図11の(a)および図12に示すように一体化する。図13は、この連接体1bからなるプレキャストコンクリート製ガードフェンス1を高架橋の左右の路版11、11間に載置した状態を示す。さらに、図14の(a)、(b)に示すように、プレキャストコンクリートブロック1aおよび21aは一方のブロック端面7と他方のブロック端面8には、縦方向の凸条および凹条を有しておらず共に平面である。しかし、この場合も、プレキャストコンクリートブロック1aおよび21aは鋼製連結プレート1dにより接合して連接体1bに形成される。
【0038】
図7あるいは図8に示す実施の形態の例では、プレキャストコンクリートブロック1aの下面2の跨状の凹溝5に、凹溝5の中央から下方に延びる止水を兼ねたズレ留め10あるいはコンクリート製のズレ留め10aを凹溝5に嵌合して有する。このキャップ状の止水を兼ねたコンクリート製のズレ留め10aは下面に凸条10bを有する。この凸条10bは、図7に示す例では、上下走行路線用の左右の高架橋の路版11、11の間の間隙13に挿通されて係止されている。従って、図7の例では、間隙13の幅は狭く、1条の凸条10bが間隙13の幅に丁度嵌まる大きさであることが好ましい。一方、図8に示す例では、上下走行路線用の左右の高架橋の路版11、11の間の間隙13の幅が広い。この幅の広い場合は、キャップ状のコンクリート製のズレ留め10aは、図8の(b1)および(b2)に見られるように、1個のキャップ状のコンクリート製のズレ留め10aの裏面には、その側部側に長さが1/2である凸条10bを互い違いに有するものとし、この左右の凸条10b、10bが、図8の(a)に見られるように左右の路版11、11の間隙13に、隙間なく嵌合するように形成されている。これに対し、図8の(c1)および(c2)に示すものは、このキャップ状のコンクリート製のズレ留め10aが1/2の長さからなるもので、これらの2個の1/2の長さのコンクリート製のズレ留め10aが、凸条10bを左右を交互に逆転して連結されて1組のコンクリート製のズレ留め10aところで、コンクリート製ガードフェンス19において、走行車が誤ってコンクリート製ガードフェンス19に衝突した場合、衝撃荷重30がコンクリート製ガードフェンス19に作用し、輪荷重31が路版11に作用する。すなわち、図17に示す方向にそれぞれ作用する。この2個のコンクリート製のズレ留め10aの下面の凸条10bを左右互い違いに嵌合して間隙13の幅を確保している。
【0039】
これらのキャップ状のズレ留め10あるいはコンクリート製のズレ留め10aを上下走行路線用の左右の高架橋の路版11、11の間の間隙13に挿通して係止する場合、これらのズレ留め10あるいはコンクリート製のズレ留め10aの下面には、ゴム板製の止水シール10cが路版11との間に介在され、雨水などの水が左右の路版11、11の間隙13に流入することを防止している。これらのプレキャストコンクリートブロック1aのキャップ状のズレ留め10あるいはコンクリート製のズレ留め10aと路版11、11の上面との間に挿着のゴム板製の止水シール10cはプレキャストコンクリートブロック1aの自重により上下走行路線用の左右の高架橋の路版11、11との間で係止されている。
【0040】
これらの実施の形態では、プレキャストコンクリートブロック1aの下面2の跨状の凹溝5に嵌合の下向き凸条10bからなるキャップ状のコンクリート製のズレ留め10aを有するので、プレキャストコンクリートブロック1aは、従来の個々の路版に設置するプレキャストコンクリートブロックの略2倍の重量としており、このプレキャストコンクリートブロック1aから連設してなるプレキャストコンクリート製ガードフェンス1は車の衝突により移動しにくいものとしている。さらにキャップ状のコンクリート製のズレ留め10aの下方に突出する凸条10bにより一層に移動しにくいプレキャストコンクリート製ガードフェンス1としている。従って、プレキャストコンクリート製ガードフェンス1は、反対車線に容易に移動されにくく、反対車線の車の通行の邪魔になって事故を誘発することが極めて減少されている。
【0041】
これらのプレキャストコンクリートブロック1aに走行車が誤って衝突した場合、衝撃荷重30がプレキャストコンクリートブロック1aに矢印方向に作用し、かつ輪荷重31が路版11に矢印方向に作用し、これらの合成された曲げ荷重32が路版11に掛かる。ところで、本発明の手段のプレキャストコンクリートブロック1aはその底部が上下の路版11、11の間隙13を跨いで各路版11の上面に載置されているので、これらの合成された曲げ荷重32は衝突された側の路版11に矢印方向に掛かると共に反対側の路版11にも矢印方向に掛かることとなる。すなわち、図17に示す従来のコンクリート製のガードフェンス19の場合の一方的な曲げ荷重32と相違し、本発明のプレキャストコンクリートブロック1aの場合の曲げ荷重32は路版11、11に互いに反対方向に対称的に掛かるので、両者は打ち消しあい、したがって、プレキャストコンクリートブロック1aが倒れにくく、従って移動しにくくなっている。
【0042】
本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1を上下走行路線の路版11の間隙13に設置する際に、上下走行路線用の左右の高架橋の路版11、11の表面高さに段違いの差異がある場合には、高架橋の低い方の路版11の表面に載置する振動吸収ゴム板9aの厚さをその分だけ厚いものを使用したり、あるいは、路版11の表面にコンクリートを打って左右の路版11の高さを等しくしてから設置するものとする。
【0043】
ところで、本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1を左右の高架橋の路版11、11に設置する場合には、先ず、図10に示すように、左右の路版11、11の上にアスファルトの舗装12を施工し路面を完成してから、アスファルトの舗装12の上にプレキャストコンクリート製ガードフェンス1を設置する。このようにアスファルトの舗装12を施工してからアスファルトの舗装12の上に本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1を設置すると、単にプレキャストコンクリート製ガードフェンス1を設置するだけでよいので工法が簡単であり、その施工コストも低い。
【0044】
もちろん、図4に示すように、プレキャストコンクリート製ガードフェンス1を左右の高架橋の路版11、11に設置してから、左右の路版11、11の上にアスファルトなどの舗装12を施工し路面を完成することもできることはいうまでもない。しかし、この場合は、先に高架橋の路版11、11の上にプレキャストコンクリート製ガードフェンス1を設置してからその両サイドの路版11、11上にアスファルトの舗装12を施工するので、工期を調整する必要があるので時間が掛かり、このために施工コストも高くなる。
【0045】
以上の本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンス1の設置は、従来の様にアンカーボルトで高架橋の路版11に固定することなく、プレキャストコンクリートブロック1aを載置し、それらを連接して一体化するのみであるので、施工に要する時間が極めて短時間で行うことができる。そこで、夜間などの比較的に交通量の少ない時間帯に工事できる利点を有する。さらにプレキャストコンクリート製ガードフェンス1は、本発明のコンクリートブロック1aが,従来のコンクリートブロックの2倍以上の重量がある上に、この重量のあるコンクリートブロック1aの複数個から連接体1bに連接されて一体化されて少なくとも14m以上の長さとされているので、その重量は全体で18トンを超える重量であり、衝突によりプレキャストコンクリート製ガードフェンス1が反対車線へ移動され難くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の高架橋の路版の地覆に載置したプレキャストコンクリート製ガードフェンスの端面図である。
【図2】本発明の高架橋の路版の地覆に載置した他の形態のプレキャストコンクリート製ガードフェンスの端面図である。
【図3】本発明の高架橋の路版に載置したプレキャストコンクリート製ガードフェンスの平面図である。
【図4】本発明の高架橋の路版の地覆を除去して載置したプレキャストコンクリート製ガードフェンスの端面図である。
【図5】本発明のプレキャストコンクリートブロックの接続状態を説明する平面図である。
【図6】本発明のプレキャストコンクリート製ガードフェンスを載置した高架橋を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の形態の高架橋の路版に載置したプレキャストコンクリート製ガードフェンスを示す端面図である。
【図8】本発明のさらに他の形態の高架橋の路版に載置したプレキャストコンクリート製ガードフェンスを示す端面図の(a)とキャップ状のコンクリート製のズレ留めの斜視図(b1)と他の形態のキャップ状のコンクリート製のズレ留めの斜視図(b2)である。
【図9】本発明のさらに他の形態の高架橋の路版に載置した鋼製プレートのズレ留めを有するプレキャストコンクリート製ガードフェンスを示す端面図である。
【図10】さらに他の形態の本発明の高架橋の路版に載置したプレキャストコンクリート製ガードフェンスの端面図である。
【図11】本発明のさらに他の形態のプレキャストコンクリートブロックの接続状態を説明する平面図である。
【図12】本発明の他の形態のプレキャストコンクリートブロックの接続状態を説明する斜視図である。
【図13】本発明の他の形態のプレキャストコンクリート製ガードフェンスを載置した高架橋を示す斜視図である。
【図14】本発明のさらに他の形態のプレキャストコンクリートブロックの接続状態を説明する平面図である。
【図15】本発明のプレキャストコンクリート同士を接続する鋼製連結プレートと六角ナットを示す平面図である。
【図16】従来の鋼板製のガードフェンスの端面図である。
【図17】従来のコンクリート製のガードフェンスに係る荷重を示す図である。
【図18】本発明のプレキャストコンクリートブロックに係る荷重を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 プレキャストコンクリート製ガードフェンス
1a プレキャストコンクリートブロック
1b 連接体
1c ボルト
1d 鋼製連結プレート
1e ナット
1f PC鋼棒挿通孔
1g PC鋼棒
1h 鋼製リブプレート
1i 鋼製ジャケット
2 下面
3 上面
3a 上面凹陥部
4 側面
4a 下部傾斜面
4b 上部傾斜面
4c 側面凹陥部
5 凹溝
6 水平面
7 一方のブロック端面
7a 凸条
8 他方のブロック端面
8a 凹条
9a 振動吸収ゴム版
9b グラウト
10 ズレ留め
10a コンクリート製のズレ留め
10b 凸条
10c 止水シール
10d 鋼製プレート
11 路版
11a 地覆
12 舗装
13 間隙
14 最大幅
15 最小幅
16a 溝幅
16b 溝高さ
17 ポール
18 鋼板製のガードフェンス
19 コンクリート製のガードフェンス
20 アンカーボルト
21a 隣接するプレキャストコンクリートブロック
28 他方のブロック端面
28a 凹条
29 係合方向
30 衝撃荷重
31 輪荷重
32 曲げ荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大幅の下面と最小幅の上面と、かつ、緩やかな下部傾斜面と該下部傾斜面に続く急峻な上部傾斜面からなる両側面を有し、上記の最大幅の下面の長手方向中央部に跨状の凹溝を有し、該下面の下に振動吸収ゴム板を配設して上下路版の間隙を跨いで載置の据置き型のプレキャストコンクリートブロックを長手方向に連設した連接体からなることを特徴とする自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス。
【請求項2】
最大幅の下面の長手方向中央部に凹溝を有し、上下路版の間隙を跨いで載置の据置き型のプレキャストコンクリートブロックは、プレキャストコンクリートブロックの緩やかな下部傾斜面とその上部に続く急峻な上部傾斜面の下部領域部分からなる両側面間のブロック下部内に該ブロック下部の長手方向に垂直な断面形状と相似する鋼製リブプレートの複数枚からなる鋼製ジャケットをブロック下部の長手方向に等間隔で離間して内在して有することを特徴とする請求項1に記載の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス。
【請求項3】
跨状の凹溝は、上下路版の各端部に立設の上部を一部カットした地覆の周囲に接合グラウトを介在して嵌合しうる高さと幅を有することを特徴とする請求項1または2に記載の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス。
【請求項4】
跨状の凹溝は、上下路版の各端部に立設の地覆をカットし、このカットした地覆に代え、上下路版間の間隙に係合する凸条を下面に突出するコンクリート製のキャップ状の止水・ズレ留めを凹溝内部に嵌合して有することを特徴とする請求項1または2に記載の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス。
【請求項5】
跨状の凹溝は、上下路版の各端部に立設の地覆をカットし、このカットした地覆に代え、凹溝の上部のブロック中央から下方の上下路版の間隙に垂直に挿入される鋼製プレートからなるズレ留めを有することを特徴とする請求項1または2に記載の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス。
【請求項6】
プレキャストコンクリートブロックを長手方向に連設した連接体は、各プレキャストコンクリートブロックの長手方向中央部にPC鋼棒を挿通して隣接するプレキャストコンクリートブロック同士を連接して形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス。
【請求項7】
プレキャストコンクリートブロックを長手方向に連設した連接体は、長手方向の一方のブロック端面に凸条を有し、かつ、他方のブロック端面に凹条を有する複数のプレキャストコンクリートブロックからなり、各プレキャストコンクリートブロックの長手方向ブロック端面に有する凸条を隣接するプレキャストコンクリートブロックの長手方向のブロック端面に有する凹条に係合することにより、長手方向に連接した複数のプレキャストコンクリートブロックから形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス。
【請求項8】
連接体を構成するプレキャストコンクリートブロックは、プレキャストコンクリートブロックの長手方向端部の上面中央に形成の上部凹陥部および同プレキャストコンクリートブロックの側面の上部傾斜面の長手方向端部の下部に形成の側面凹陥部と、隣接のプレキャストコンクリートブロックの長手方向端部の上面中央に形成の上部凹陥部および同隣接のプレキャストコンクリートブロックの側面の上部傾斜面の長手方向端部の下部に形成の側面凹陥部に挿着の鋼製連結プレートにより連接されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車道路の高架橋の上下路版に跨状に設置の中央分離帯用のプレキャストコンクリート製ガードフェンス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−75359(P2008−75359A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256764(P2006−256764)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000161817)ケイコン株式会社 (37)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【Fターム(参考)】