自己免疫および炎症性障害の処置に使用するための可溶性ポリペプチド
本発明は、特に、自己免疫および炎症性障害の、たとえば、アレルギー性喘息、および炎症性腸疾患の予防または処置のための薬剤として使用するための可溶性CD47結合ポリペプチドに関する。本発明は、より具体的には、SIRPαの細胞外ドメイン(CD172a)、またはヒトCD47に結合する機能的な誘導体を含む薬剤として使用するための可溶性CD47結合ポリペプチドに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤として使用するための、特に、たとえば、アレルギー性喘息、および炎症性腸疾患などの自己免疫および炎症性障害の予防または治療のための、可溶性CD47結合ポリペプチドに関する。本発明は、より具体的には、SIRPα(CD172a)の細胞外ドメイン、またはヒトCD47に結合する機能的な誘導体を含む薬剤として使用するための可溶性CD47結合ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
CD47は、反対細胞上のSIRPα(別名SHPS−1)およびSIRPγに結合する細胞表面糖タンパク質である。この相互作用は、免疫細胞機能の負の調節につながり、あるいは、細胞の接着および遊走を媒介するのに役立つことができる。CD47を、自己免疫障害の処置において生物学的製剤として使用することが示唆されている(特許文献1)。対照的に、同様の治療目的のため、SIRPαなどのCD47リガンドを使用できる可能性を示す証拠は、非常に少ない。一つの説明は、CD47の普遍的な発現が、潜在的な薬物としてのCD47結合ポリペプチドの使用を妨げるであろうことである。非特許文献1によって示されるデータは、免疫グロブリンFcドメインと融合したSIRPαの細胞外ドメインでできた融合タンパク質が、マウスにおいて、皮膚由来の樹状細胞(DC)から流入領域リンパ節への遊走を抑えることができ、それにより、マウスにおける接触過敏性反応を(少なくとも部分的に)減衰させることができることを示唆している。DCの遊走および機能は、免疫または炎症反応に不可欠である。疾患の条件の下において、樹状細胞(DC)のこれらの悪化した応答は、病気の永続化につながりうる。組織からリンパ器官へ病原性樹状細胞(DC)が遊走することを妨げることは、自己免疫または炎症性疾患を駆動する悪循環を止める魅力的な好機となるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第1999/040940号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yuら、2006年、J Invest Dermatol,126,797−807
【発明の概要】
【0005】
本発明は、SIRPα−Fcコンストラクトが、疾患の動物モデルにおけるTh1/Th17−およびTh2−駆動疾患を予防または停止するのに適していることを示す最初のインビボでの証拠を提供する。これらのデータは、本発明の基礎を提供し、SIRPα由来タンパク質治療の薬物能を裏付ける。本発明は、部分的には、CD47/SIRPα経路を操作することが、免疫原性CD103−樹状細胞により駆動されるTh1/Th17−駆動疾患(関節炎および大腸炎)、およびTh2駆動疾患(喘息)の発症を抑制するという発見に基づく。これらの新しい研究結果は、疾患の根本原因における未知の共通の機構を提供し、複数の自己免疫および炎症性障害の処置の見込みを表している。なお、公表された報告における最近の証拠は、CD47のライゲーションが、いくつかの癌の治療のために有益であることを示す(Majeti et al Cell 2009)。この報告は、CD47抗体の使用を示すが、他方、本発明は、SIRPα由来ポリペプチドをこれらの疾患の処置のために使用することに関する。
【0006】
したがって、1つの実施態様において、本発明は、a)SIRPαの細胞外ドメイン(配列番号3)、b)配列番号1の断片、および、c)配列番号3と少なくとも75%の同一性を有する配列番号1の変異体ポリペプチドからなる群から選ばれるSIRPα由来のポリペプチドを含む、薬剤として使用するための可溶性CD47結合ポリペプチドを提供し、ここに、前記SIRPα由来ポリペプチドは、ヒトCD47(配列番号24)に結合する。特定の実施態様において、配列番号3の変異体ポリペプチドは、配列番号3と少なくとも、80%、85%、90%、95%または99%同一である。
【0007】
読みやすさのため、本発明の可溶性CD47結合ポリペプチドは、以下、「本発明の可溶性ポリペプチド」と呼ぶ。
【0008】
1つの実施形態では、前記SIRPα由来のポリペプチドは、CD47の拮抗剤、すなわち、CD47リガンドのCD47への結合を競合的に阻害するポリペプチドの中から選ばれる。CD47リガンドは、SIRPα、SIRPγまたはTSP1を含み、これらに限定されない。
【0009】
別の実施形態では、SIRPα由来のポリペプチドは、CD47アゴニスト、すなわち、CD47シグナル伝達活性を誘導することができるポリペプチドから選ばれる。
【0010】
1つの実施形態では、前記可溶性CD47結合ポリペプチドは、2μMまたはそれ未満のKDでヒトCD47に結合するもの、および/または、免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイにおいて測定した場合に、誘導されたサイトカイン分泌を阻害するものから選ばれる。
【0011】
別の実施形態では、前記SIRPα由来のポリペプチドは、少なくともSIRPαのV領域(配列番号2)を含むSIRPαの細胞外ドメインである。
【0012】
特定の実施態様において、本発明の可溶性ポリペプチドは、第二の異種ポリペプチドに融合したSIRPα由来ポリペプチドからなる第一のコンポーネントを含む融合ポリペプチドである。1つの実施形態において、可溶性ポリペプチドは、さらに、第二の異種ポリペプチドとSIRPα由来ポリペプチドの間にスペーサーを含む。1つの特定の実施態様において、SIRPα由来ポリペプチドは、IgG Fcドメインに融合している。好ましい実施形態において、前記Fcドメインは、ヒトIgG1アイソタイプのサイレントFc断片である。1つの実施形態において、前記Fcドメインは、ヒトIgG1アイソタイプの非グリコシル化突然変異体である。
【0013】
別の関連する態様において、本発明の可溶性ポリペプチドは、自己免疫および炎症性障害の処置における薬物として使用される。好ましい適応症は、Th2媒介性気道炎症、アレルギー性障害、喘息、炎症性腸疾患、虚血性障害からなる群から選ばれる。加えて、本発明の可溶性ポリペプチドは、白血病または癌の処置における薬物として使用してもよい。
【0014】
本発明を、より容易に理解することができるようにするため、特定の用語が最初に定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通して記載される。
【0015】
用語CD47は、ヒトCD47を意味する。ヒトCD47は、配列番号24を含み、また、たとえば単一ヌクレオチド多型(SNP)を含む任意の自然多型、またはヒトCD47のスプライス変異体を含む。ヒトに見出されるCD47塩基配列中のスプライス変異体またはSNPの例は、表1に記載される。
【0016】
【表1】
【0017】
用語SIRPαは、CD47インテグリン関連タンパク質との接着を示すシグナル伝達調節タンパク質アルファ(CD172aまたはSHPS−1とも呼ばれる)を意味する。いくつかの実施形態において、用語SIRPαは、配列番号23において定義されるヒトSIRPαを意味する。ヒトSIRPαは、1つのV型ドメイン(配列番号2)、および2つのC1型のIgドメインを有するアミノ酸細胞外ドメイン(配列番号3)、ならびに3つの潜在的N−グリコシル化部位を含む。これは、リン酸化した場合に、チロシンホスファターゼSHP−1およびSHP−2を動員するITIMモチーフを有する110個のアミノ酸細胞質配列を持つ。用語ヒトSIRPαは、さらに、たとえば単一ヌクレオチド多型(SNP)を含む任意の天然多型、またはヒトSIRPαのスプライス変異体を含むが、これらに限定されない。ヒトに見出されるSIRPα塩基配列におけるスプライス変異体またはSNPの例は、表2に記載される。
【0018】
【表2】
【0019】
本明細書において、任意の膜貫通ドメインが欠けている場合には、または、ポリペプチドを発現する細胞の膜にポリペプチドを固定する若しくは組込むタンパク質ドメインが欠けている場合には、そのようなポリペプチドは、「可溶性」である。特に、本発明の可溶性ポリペプチドは、同様に、SIRPαの膜貫通および細胞内ドメインを除いてもよい。
【0020】
本明細書において、「CD47に結合する」ポリペプチドは、20μMまたはそれ未満、2μMまたはそれ未満、0.2μMまたはそれ未満のKDでヒトCD47に結合するポリペプチドを意味することが意図されている。いくつかの実施態様において、CD47に結合するポリペプチドは、さらに、サーファクタントプロテインA(SP−A)および/またはサーファクタントタンパク質D(SP−D)に結合する。
【0021】
本明細書において、免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイにおいて測定した場合に誘導されたサイトカイン分泌を阻害するポリペプチドとは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)Cowan1(Pansorbin)、または可溶性CD40L、およびIFN−γで刺激した末梢血単球、コンベンショナル樹状細胞(DC)、および単球由来樹状細胞からのサイトカイン(たとえば、IL−6、IL−10、IL−12p70、IL−23、IL−8および/またはTNF−α)放出を阻害するポリペプチドである。免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイの一例は、以下の実施例で詳細に記載する。いくつかの態様において、本発明の可溶性ポリペプチドは、免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイで測定した場合に、1μMもしくはそれ未満、100nMもしくはそれ未満、または10nMもしくはそれ未満のIC50でサイトカイン分泌を阻害する。
【0022】
本明細書においては、T細胞増殖を阻害するポリペプチドは、実施例で説明するように、混合リンパ球反応アッセイにおいて測定してもよい。
【0023】
本明細書において、用語「Kassoc」または「Ka」は、特定のタンパク質−タンパク質相互作用の会合速度を意味することが意図されており、他方、本明細書において、用語「Kdis」または「Kd」は、特定のタンパク質−タンパク質相互作用の解離速度を意味することが意図されている。本明細書において、用語「KD」は、解離定数を意味することが意図されており、Kaに対するKdの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。タンパク質−タンパク質相互作用のためのKD値は、当技術分野でよく確立された方法を用いて測定することができる。タンパク質−タンパク質相互作用のKDを測定するための方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによるか、あるいは、ビアコア(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる。
【0024】
本明細書において、用語「親和性」は、単一の部位におけるポリペプチドおよびその標的との間の相互作用の強さを意味する。各部位内において、ポリペプチドの結合領域は、弱い非共有結合力を介して数多くの部位におけるその標的と相互作用する。相互作用がより多ければ、親和性は、より強力になる。
【0025】
本明細書において、結合ポリペプチドについての用語「高親和性」は、その標的に対し、10nMまたはそれ未満、たとえば、1nMまたはそれ未満のKDを有するポリペプチドを意味する。
【0026】
本明細書において、用語「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0027】
用語「非ヒト動物」は、すべての脊椎動物、たとえば、非ヒト霊長類、ヒツジ、犬、猫、馬、牛、鶏、両生類、爬虫類などの哺乳類および非哺乳類を含む。
【0028】
本明細書において、用語「最適化」は、産生細胞または生命体において好まれるコドン、真核細胞、たとえば、ピキア(Pichia)またはサッカロミセス(Saccharomyces)の細胞、トリコデルマ(Trichoderma)の細胞、チャイニーズハムスター(Chinese Hamster)卵巣細胞(CHO)、またはヒト細胞か、あるいは、原核細胞、たとえば、大腸菌(Escherichia coli)の菌株のいずれかにおいて好まれるコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように、塩基配列が改変されたことを意味する。
【0029】
最適化された塩基配列は、完全に、または可能な限り多く、開始ヌクレオチド配列によって当初コードされるアミノ酸配列を保持するように設計され、「親」配列としても知られる。ここで最適化された配列は、対応する産生細胞や生命体、たとえば、哺乳動物細胞において好まれるコドンを持つように設計されてきたが、他の原核または真核細胞におけるこれらの配列の最適化した発現も、ここで想定される。最適化された塩基配列によってコードされるアミノ酸配列も、また、最適化と呼ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の様々な側面は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
【0031】
CD47の機能特性に対する本発明の可溶性ポリペプチドの効果を評価するアッセイは、実施例においてさらに詳細に記載されている。
【0032】
SIRPα由来のポリペプチド
本発明の可溶性ポリペプチドは、a)SIRPαの細胞外ドメイン(配列番号3)、b)配列番号3の断片、およびc)配列番号3の変異体ポリペプチドからなる群から選ばれるSIRPα由来のポリペプチドを含み、ここに、前記SIRPα由来のポリペプチドは、ヒトCD47(配列番号24)に結合する。
【0033】
本発明の可溶性ポリペプチド、およびそのSIRPα由来の断片は、CD47に結合する能力を保持するべきである。したがって、配列番号3の断片は、SIRPαのCD47結合ドメインを含むそれらの断片から選択することができる。これらの断片は、一般的には、SIRPαの膜貫通および細胞内ドメインを含まない。非制限的で例示的な実施形態において、SIRPα由来のポリペプチドは、本質的に配列番号3または配列番号2で構成される。SIRPα由来のポリペプチドは、さらに、配列番号3の変異体ポリペプチドを含むが、これに制限されず、ここに、アミノ酸残基は、アミノ酸の欠失、挿入または置換により変異されたが、ネイティブの配列の変更が、分子の生物学的活性に、特にCD47に対する結合に実質的に影響しない限り、配列番号3に対して少なくとも60、70、80、90または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態において、これは、配列番号2と比較して、SIRPα由来のポリペプチドにおけるわずか1、2、3、4または5のアミノ酸が、アミノ酸の欠失、挿入または置換によって変異されているにすぎない変異アミノ酸配列を含む。変異アミノ酸配列の例としては、単一ヌクレオチド多型(表2参照)に由来する配列が挙げられる。
【0034】
本明細書において、2つの配列間の%同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れて、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性 = 同一の位置の#/合計の同一の位置の# × 100)。配列の比較、および2つの配列間の%同一性の決定は、以下に述べるように、数学的なアルゴリズムを使用して実行することができる。
【0035】
2つのアミノ酸配列の間の%同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれ、PAM120重み残基テーブル、12のギャップ長のペナルティー、および4のギャップペナルティーを使用するE.MeyersおよびW.Miller(Comput.Appl.Biosci.,4:11−17,1988)のアルゴリズムを使用して決定することができる。また、2つのアミノ酸配列の間の%同一性は、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムに組み込まれ(http://www.gcg.comで利用可能)、ブロッサム62マトリックス、またはPAM250マトリックスのいずれか、16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み、および1、2、3、4、5、または6の長さ重みを使用するNeedlemanおよびWunsch(J.Mol,Biol.48:444−453,1970)のアルゴリズムを使用して決定することができる。
【0036】
特定の実施態様において、SIRPα由来のポリペプチドは、保存的なアミノ酸置換を含む配列番号2または配列番号3への変更を含む。
【0037】
保存的なアミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されてきた。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β−分岐側鎖を有するアミノ酸(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、SIRPα由来ポリペプチドのCD47結合領域内の1または複数のアミノ酸残基は、同一の側鎖ファミリーから他のアミノ酸残基に置換することができ、新たなポリペプチド変異体は、本明細書に記載した結合または機能アッセイを使用して、保持された機能について試験することができる。
【0038】
いくつかの実施態様において、SIRPα由来のポリペプチドは、免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイで測定して、ヒトSIRPαの細胞外ドメインを含む配列番号3のポリペプチドと少なくとも同程度にサイトカイン分泌を阻害する能力を保持するものの間から選択される。
【0039】
いくつかの態様において、SIRPα由来のポリペプチドは、混合リンパ球反応アッセイで測定してT細胞の増殖を阻害する能力を保持するものの間から選択される。
【0040】
別の実施形態において、SIRPα由来のポリペプチドは、非ヒト霊長類CD47とクロス反応するものの中から選ばれる。
【0041】
融合ポリペプチド
1つの側面において、本発明の可溶性ポリペプチドは、SIRPα由来のポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明の可溶性ポリペプチドは、SIRPα由来のポリペプチド、および第2の異種アミノ酸配列、たとえば、SIRPα由来のポリペプチドのN−および/またはC−末端においてSIRPα由来のポリペプチドに共有結合し、必要に応じて、さらに、リンカーを含む、SIRPα以外の1または複数のタンパク質の部分を含む融合ポリペプチドである。
【0043】
非SIRPα由来のタンパク質は、好ましくは、他の異種タンパク質と融合したときに、血液中の得られる融合タンパク質の半減期を増加させることができる可溶性単鎖ポリペプチドである。これに代えて、またはそれに加えて、非SIRPα由来のタンパク質は、融合ポリペプチドの多量体化のためのドメインを含む。
【0044】
非SIRPα由来のタンパク質は、たとえば、免疫グロブリンは、血清アルブミンおよびそれらの断片であることができる。非SIRPα由来のタンパク質は、また、対象において投与した場合に分子の半減期を増大させるために、血清アルブミンタンパク質に結合することができるポリペプチドであることができる。このようなアプローチは、たとえば、NygrenらによるEP0486525に説明されている。
【0045】
1つの特定の実施態様において、非SIRPα由来のタンパク質は、Fcドメインである。ヒトにおける増大したインビボでの半減期を有する可溶性コンストラクトを作製するためのFc部分の使用は、当技術分野でよく知られており、たとえば、Caponら(US5,428,130)に記載されている。
【0046】
本明細書において、用語「Fcドメイン」は、免疫グロブリンの定常領域を意味する。Fcドメインは、少なくとも、CH2およびCH3ドメイン、必要に応じて、重鎖CH1ドメインおよびCH2の間に位置するヒンジ領域を含む。Fc断片は、たとえば、免疫グロブリンのパパイン分解などにより得ることができた。本明細書において、用語Fcドメインは、さらに、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、または挿入が導入されたFc変異体を含む。
【0047】
1つの実施形態において、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が、改変されるように、たとえば、増大または減少するように、CH1のヒンジ領域は、修飾される。このアプローチは、Bodmerらの米国特許第5677425に、さらに記載されている。たとえば、軽鎖および重鎖の集合を促進するように、または、融合ポリペプチドの安定性を増大させ、または減少させるように、CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、改変される。
【0048】
別の実施形態において、Fc領域は、その生物学的半減期を増大させるために修飾される。様々なアプローチが可能である。Wardによる米国特許第6277375に記載されるように、たとえば、1または複数の次の変異が導入されうる:T252L、T254S、T256F。
【0049】
他の実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基に置換し、Fc部分のエフェクター機能を改変することによって、Fc領域は、改変される。Fc部分が、エフェクターリガンドへの親和性を改変するように、たとえば、1または複数のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基に置換されることができる。親和性が改変されるエフェクターリガンドは、たとえば、Fcレセプター、または補体のC1コンポーネントであることができる。このアプローチは、いずれもWinterらによる米国特許第5624821および5648260に詳細に記載されている。
【0050】
別の実施形態において、得られたFc部分が、改変したC1q結合、および/または、減少したまたは消失した補体依存性細胞傷害(CDC)を有しているように、アミノ酸残基から選択された1または複数のアミノ酸は、異なるアミノ酸残基に置換することができる。このアプローチは、Idusogieらの米国特許第6194551に詳細に記載されている。
【0051】
別の実施形態において、1または複数のアミノ酸残基は、補体を固定するFc領域の能力を改変するように改変される。このアプローチは、BodmerらによるPCT公開WO94/29351にさらに記載されている。
【0052】
さらに別の態様において、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する融合ポリペプチドの能力を増大させるために、および/またはFcγレセプターに対するFc領域の親和性を増大させるまたは減少させるために、Fc領域は、1または複数のアミノ酸の修飾によって修飾される。このアプローチは、PrestaによるPCT公報WO00/42072に詳しく記載されている。また、FcγRl、FcγRII、FcγRIII、およびFcRnに対するヒトIgG1における結合部位は、マップされており、改善した結合を有する変異体が、記載されている(Shields,R.L.et al.,2001,J.Biol.Chem.276:6591−6604を参照)。
【0053】
1つの実施形態において、Fcドメインは、ヒト起源であり、IgGまたはIgAのような免疫グロブリンのクラスのいずれかからのものであってよく、また、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4などの任意のサブタイプからのものであってよい。他の実施形態において、Fcドメインは、非ヒト動物からのものであり、たとえば、マウス、ラット、ウサギ、ラクダ、サメ、非ヒト霊長類、またはハムスターなどからのものであるが、これらに限定されない。
【0054】
特定の実施態様において、IgG1アイソタイプのFcドメインが使用される。いくつかの特定の実施形態において、IgG1 Fc断片の突然変異体が使用され、たとえば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する、および/またはFcγレセプターに結合する融合ポリペプチドの能力を減少させるまたは除去するサイレントIgG1 Fcが使用される。IgG1のアイソタイプのサイレント変異の例は、いわゆるLALA変異であり、ここで、HezarehらによるJ.Virol,2001,Dec;75(24):12161−8に説明されるように、アミノ酸位置234および235においてロイシン残基は、アラニン残基に置換される。特定の実施形態において、Fcドメインは、Fcドメインの位置297の残基におけるグリコシル化を妨げる変異である。たとえば、Fcドメインの位置297におけるアスパラギン残基のアミノ酸置換が挙げられる。このようなアミノ酸置換の例は、グリシンまたはアラニンによるN297の交換である。
【0055】
1つの実施形態において、Fcドメインは、二量体化ドメインを含み、ここで、二量体化ドメインは、好ましくは、このようなFcドメインを含む2つの融合ポリペプチドの間の共有ジスルフィド架橋を作ることができるシステインを介する。
【0056】
SIRPα由来のポリペプチドは、非SIRPα由来のタンパク質にインフレームで直接に、またはポリペプチドリンカ(スペーサー)を介して融合させることができる。このようなスペーサーは、単一のアミノ酸(たとえば、グリシン残基)、または500から100の間のアミノ酸、たとえば、50から20の間のアミノ酸であってもよい。リンカーは、CD47に対する結合部位を形成するための適切な空間的な配置をとるために、SIRPα由来のドメインを許容するべきである。適当なポリペプチドリンカーは、柔軟な配置を採用したものの間で選択してもよい。このようなリンカーの例は、グリシンおよびセリン残基を含むリンカーであり、たとえば、(Gly4Ser)n ここで n= 1−12 であるが、これらに限定されない。
【0057】
グリコシル化修飾
さらに別の態様において、本発明の可溶性ポリペプチドのグリコシル化パターンは、CHO、またはヒト細胞株において得られるもののような典型的な哺乳類のグリコシル化パターンと比較して、改変することができる。たとえば、非グリコシル化ポリペプチドは、グリコシル化を欠くように設計された宿主細胞または哺乳動物細胞として、原核細胞株を使用することによって、行うことができる。糖質の修飾は、たとえば、可溶性ポリペプチド内の1または複数のグリコシル化部位を改変することによって達成することもできる。
【0058】
これに加えて、またはこれに代えて、グリコシル化ポリペプチドは、グリコシル化の改変されたタイプを持つように作製することができる。このような糖質の変更は、たとえば、改変されたグリコシル化機構を有する、すなわち、可溶性ポリペプチドのグリコシル化パターンが、対応する野生型細胞において観察されるグリコシル化パターンと比較して改変される宿主細胞において、可溶性ポリペプチドを発現することによって達成することができる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当技術分野で説明されてきており、本発明の組換え可溶性ポリペプチドを発現させることにより、改変されたグリコシル化を有するこのような可溶性ポリペプチドを産生する宿主細胞として使用されうる。たとえば、HangらによるEP1176195は、機能的に破壊したFUT8遺伝子、フコース転移酵素をコードする遺伝子を有する細胞株を説明し、このような細胞株において発現された糖タンパク質は、低フコシル化を示す。PrestaによるPCT公開WO03/035835は、Asn(297)が連結された糖質にフコースを添付する能力が低下し、また、その結果、宿主細胞内で発現した糖タンパク質の低フコシル化が起こっている変異体CHO細胞株、Lecl3細胞について説明している(Shields,R.L.et al.,2002,J.Biol.Chem.277:26733−26740も参照のこと)。また、本発明の可溶性ポリペプチドは、哺乳動物様グリコシル化パターンのために設計された、たとえば、ピキアパトリス(Pichia pastoris)などの酵母において、または、たとえば、トリコデルマリーゼイ(Trichoderma reesei)などの糸状菌において、製造することができる(たとえば、EP1297172B1参照)。これらの糖設計された宿主細胞の利点は、とりわけ、均質なグリコシル化パターン、および/または高収量を有するポリペプチド組成物を提供することである。
【0059】
可溶性ポリペプチドのPEG化および他の抱合体
本発明によって企図されている別の実施形態の本明細書における可溶性ポリペプチドは、PEG化されている。たとえば、本質的にSIRPα由来ポリペプチドからなる本発明の可溶性ポリペプチドは、PEG化されうる。PEG化は、PEG化のない同一の生物学的製剤と比較して、得られた生物学的製剤の生物学的(たとえば、血清の)半減期を増大させる、よく知られている技術である。ポリペプチドをPEG化するには、通常、1または複数のPEG基がポリペプチドに付着する条件下において、ポリペプチドが、PEGの反応性エステル、またはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)との反応に供される。PEG化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応、またはアルキル化反応により実施することができる。本明細書において、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用された任意のPEGの形式、たとえば、モノ(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドを包含することが意図されている。タンパク質をPEG化する方法は、当技術分野で知られており、本発明の可溶性ポリペプチドに適用することができる。たとえば、NishimuraらによるEP0154316、およびIshikawaらによるEP0401384を参照されたい。
【0060】
代わりの抱合体または高分子担体は、特に、得られた抱合体の薬物動態的特性を向上させるために使用することができる。高分子担体は、少なくとも1つの天然または合成の分岐、直鎖状または樹枝状ポリマーを含んでもよい。高分子担体は、好ましくは、水や体液に可溶であり、好ましくは薬学的に許容されるポリマーである。水溶性ポリマー部分は、たとえば、PEG、PEGホモポリマー、mPEG、ポリプロピレングリコールホモポリマー、プロピレングリコールとエチレングリコールの共重合体を含む、ポリアルキレングリコール、およびその誘導体、ここに、前記ホモポリマーおよび共重合体は、非置換であり、または、たとえば、アシル基に1の末端において置換されている;ポリグリセリンまたはポリシアル酸;メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む糖質、多糖類、セルロースおよびセルロース誘導体;澱粉(たとえば、ヒドロキシアルキル澱粉(HAS)、特にヒドロキシエチル澱粉(HES)、およびデキストリン、並びにこれらの誘導体);デキストラン硫酸、架橋性デキストリン、およびカルボキシメチルデキストリンなどのデキストラン、およびデキストラン誘導体;キトサン(直鎖多糖類)、ヘパリンおよびヘパリンの断片;ポリビニルアルコール、ポリビニルエチルエーテル;ポリビニルピロリドン;α,β−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド];およびポリオキシ−エチル化ポリオールを含むが、これらに限定されない。
【0061】
可溶性ポリペプチドの薬剤としての使用
本発明の可溶性ポリペプチドは、動物モデルにおいて、アレルギー性喘息、炎症性腸疾患などの炎症性障害から保護することが示された。したがって、本発明の可溶性ポリペプチドは、特に、炎症性および/または自己免疫応答、特に対象におけるSIRPα+細胞によって媒介される応答を(統計的または生物学的に有意な態様で)低下し、または抑制する薬剤として使用することができる。
【0062】
本発明の可溶性ポリペプチドをコードする核酸分子
本発明の別の側面は、本発明の可溶性ポリペプチド、または少なくともSIRPα由来のポリペプチド(融合ポリペプチドに関連する実施形態を含みこれに限定されない)をコードする核酸分子に関連する。本発明の可溶性ポリペプチドをコードする塩基配列の例は、配列番号26または27を含む。
【0063】
核酸は、全細胞において、細胞溶解物において、存在してもよく、または、部分的に精製され、または実質的に純粋な形である核酸であってもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、塩化セシウム結合、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野でよく知られている他のものなどの標準的な技術により、他の細胞成分または他の汚染物質、たとえば、他の細胞の核酸やタンパク質を精製したとき、「単離された」または「実質的に純粋にされた」ものである。F.Ausubelら編集の1987年、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New Yorkを参照されたい。本発明の核酸は、たとえば、DNAまたはRNAであることができ、または、イントロン配列を含まなくてもよい。ある実施態様において、核酸は、cDNA分子である。核酸は、ファージディスプレイベクターなどのベクターにおいて、または組換えプラスミドベクターにおいて存在することができる。
【0064】
いったん、本発明の可溶性ポリペプチドをコードするDNA断片、たとえば、上で説明したようなSIRPα由来ポリペプチドを含む融合ポリペプチドが得られれば、これらのDNA断片は、さらに標準的な組換えDNA技術によって操作して、たとえば、発現系における適切な分泌のための任意のシグナル配列、さらなる精製工程のための任意の精製タグと切断タグを含めることができる。これらの操作において、DNA断片は、別のDNA分子に、または精製/分泌タグもしくは柔軟性のあるリンカーなどの別のタンパク質をコードする断片に、作動可能なように連結される。この文脈で使用される用語「作動可能なように連結される」は、2つのDNA断片が、たとえば、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列が、インフレームのままであるように、またはタンパク質が、所望のプロモーターの制御下に発現されるように、機能的な態様で結合されることを意味するものとする。
【0065】
SIRPα由来ポリペプチド、または可溶性ポリペプチドを産生するトランスフェクトーマの生成
本発明の可溶性ポリペプチドは、当技術分野でよく知られているように、たとえば、組換えDNA技術、および遺伝子導入法を組み合わせて使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて製造することができる。
【0066】
たとえば、本発明の可溶性ポリペプチド、またはSIRPα由来ポリペプチドなどのその中間体を発現するため、対応するポリペプチドをコードするDNAは、標準的な分子生物学的技術(たとえば、関心のあるポリペプチドを発現するハイブリドーマを用いたPCR増幅、またはcDNAクローニング)によって得ることができ、該DNAは、対応する遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能なように連結されるように、発現ベクターに挿入されることができる。この文脈において、用語「作動可能なように連結されている」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が遺伝子の転写および翻訳を制御する目的の機能を果たすように、遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味することが意図されている。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞との互換性があるように選択される。可溶性ポリペプチドまたは中間体をコードする遺伝子は、標準的な方法(たとえば、遺伝子断片における相補的制限酵素部位とベクターのライゲーション、または、制限部位が存在しない場合には、平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。これに加えて、またはこれに代えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞からのポリペプチド鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。遺伝子は、シグナルペプチドがポリペプチド鎖のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされうる。シグナルペプチドは、SIRPαシグナルペプチド、または異種シグナルペプチド(すなわち、SIRPα配列に天然には関連しないシグナルペプチド)であることができる。
【0067】
ポリペプチドをコードする配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。用語「調節配列」は、ポリペプチド鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、および他の発現制御要素(たとえば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図されている。このような調節配列は、たとえば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA 1990)において記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要因に依存しうることは、当業者に理解されるであろう。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列には、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)(CMV)、サルウイルス40(Simian Virus 40)(SV40)、アデノウイルス(adenovirus)(たとえば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ(polyoma)など由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を方向付けるウイルス要素が含まれる。また、非ウイルス性調節配列は、ユビキチンプロモーターまたはP−グロビンプロモーターなどを用いることができる。さらに、調節要素は、SV40初期プロモーター、およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長末端反復配列を含むSRaプロモーターシステムなどの異なる出所からの配列で構成された(Takebe,Y.et al.,1988,Mol.Cell.Biol.8:466−472)。
【0068】
これに加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(たとえば、複製の起源)および選択マーカー遺伝子などの付加配列を有することができる。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(たとえば、いずれもAxelらによる米国特許第4,399,216、4,634,665、および 5,179,017を参照)。たとえば、通常、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞にG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。選択マーカー遺伝子は、(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞のために使用される)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、および(G418選択のための)neo遺伝子を含む。
【0069】
ポリペプチドの発現のため、可溶性ポリペプチドまたはSIRPα由来のポリペプチドなどの中間体をコードする発現ベクター(複数も可)は、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、原核生物または真核生物宿主細胞への外来性DNAの導入に一般的に使用される広範囲にわたる技術、たとえば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図されている。原核生物または真核生物宿主細胞のいずれかにおいて本発明の可溶性ポリペプチドを発現することは、理論的に可能である。真核生物、特に、哺乳動物宿主細胞における糖タンパク質の発現は、議論される。このような真核細胞、特に哺乳動物細胞は、原核細胞よりも、適切に折り畳まれ生物学的に活性な本発明の可溶性ポリペプチドのような糖タンパク質を会合させ、分泌しやすいためである。
【0070】
可溶性ポリペプチド、および本発明のSIRPα由来ポリペプチドなどの中間体を発現するための哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター(Chinese Hamster)卵巣(CHO細胞)(たとえば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp,1982,Mol.Biol.159:601−621などに記載されたDH FR選択マーカーとともに用い、Urlaub and Chasin,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216−4220に記載されたdhfr−CHO細胞、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、およびSP2細胞を含む)、またはヒト細胞株(PER−C6細胞株、Crucellを含む)を含む。特に、NSO骨髄腫細胞とともに使用するための別の発現システムは、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に示されるGS遺伝子発現システムである。ポリペプチドをコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞に導入される場合、可溶性ポリペプチド、またはSIRPα由来のポリペプチドなどの中間体は、宿主細胞における組換えポリペプチドの発現、または宿主細胞を培養する培養培地中への組換えポリペプチドの分泌を可能にするために十分な期間、宿主細胞を培養することにより製造される。ポリペプチドは、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収することができる。
【0071】
多価タンパク質
別の局面において、本発明は、CD47に結合する2つの同一のまたは異なる本発明の可溶性ポリペプチドを少なくとも含む多価タンパク質を提供する。1つの実施形態において、多価タンパク質は、少なくとも2つ、3つまたは4つの本発明の可溶性ポリペプチドを含む。可溶性CD47結合ポリペプチドは、タンパク質融合または共有もしくは非共有結合を介して互いに連結することができる。本発明の多価タンパク質は、当技術分野で知られている方法を使用して、構成結合特異性を抱合することにより調製することができる。たとえば、多価タンパク質のそれぞれの結合特異性は、別々に生成され、互いに結合されることができる。
【0072】
様々なカップリングまたは架橋剤が、共有結合のために使用することができる。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、およびスルフォスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボン酸(sulfo−SMCC)(たとえば、Karpovsky et al.,1984,J.Exp.Med.160:1686;Liu,MA et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:8648などを参照されたい)を含む。他の方法には、Paulus,1985,Behring Ins.Mitt.No.78,118−132;Brennan et al.,1985,Science,229:81−83、およびGlennie et al.,1987,J.Immunol.139:2367−2375に記載されているものが含まれる。共有結合は、2つのシステインの間ジスルフィド架橋、たとえば、Fcドメインのシステインからのジスルフィド架橋によって得ることができる。
【0073】
特定の実施形態において、SIRPα由来のポリペプチドに融合したFcドメインのヒンジ領域は、奇数の、たとえば1のスルフヒドリル残基を含むように、結合前に修飾される。あるいは、両方の結合特異性は、同じベクターにおいてコードし、同じ宿主細胞において発現し会合することができる。
【0074】
医薬組成物
別の側面において、本発明は、薬学的に許容される担体と一緒に処方された本発明の可溶性ポリペプチドの1つまたは組み合わせを含む組成物、たとえば医薬組成物を提供する。
【0075】
本発明の可溶性ポリペプチドを含む医薬製剤は、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th edition(2000))と、所望の純度を有するポリペプチドを、水溶液、凍結乾燥、または他の乾燥させた製剤の形態において、混合することにより、保存のために調製することができる。したがって、本発明はさらに、少なくとも本発明の可溶性ポリペプチドを含む凍結乾燥組成物に関する。
【0076】
また、併用療法において、すなわち、他の薬剤と組み合わせて、本発明の医薬組成物を投与することもできる。たとえば、併用療法は、少なくとも1つの他の抗炎症剤または別の化学療法剤と組み合わせて、本発明の可溶性ポリペプチドを含むことができる。併用療法で使用することができる治療剤の例は、以下の本発明の可溶性ポリペプチドの使用のセクションで、より詳細に説明されている。
【0077】
本明細書において、「薬学的に許容される担体」は、任意およびすべての溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、ならびに生理学的に互換性がある同等物を含む。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、経口、脊髄、または表皮の投与(すなわち、注射または注入による投与)に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物は、酸、および該化合物を不活性化する可能性のある他の自然条件の作用から該化合物を保護するための材料で被覆することができる。
【0078】
本発明の医薬化合物は、1または複数の薬学的に許容される塩を含むことができる。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ、任意の不要な毒物学的影響を与えない塩を意味する(たとえば、Berge,S.M.,et al.,1977,J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。このような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素、リンなどのような無毒性の無機酸に由来するもの、および脂肪族モノ−およびジ−カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などのような無毒性の有機酸に由来するものを含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのようなアルカリ土類金属に由来するもの、およびN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカミン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどのような無毒性の有機アミンに由来するものを含む。
【0079】
本発明の医薬組成物は、また、薬学的に許容される抗酸化物質を含むことができる。薬学的に許容される抗酸化物質の例は、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化物質;パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性抗酸化物質;クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤などを含む。
【0080】
本発明の医薬組成物に用いることができる適切な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブオイルなどの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどの被覆材料の使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0081】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含むことができる。微生物の存在の防止は、上記の滅菌の手順、およびたとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の様々な抗菌および抗真菌剤を含めることの両方によって、確実にすることができる。また、組成物に、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい。また、注射可能な医薬品形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含めることによってもたらされうる。
【0082】
薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射可能溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体と薬剤の使用は、当該技術分野で知られている。任意の従来の媒体または薬剤に、活性化合物との適合性がない場合を除き、本発明の医薬組成物においてそれらを使用することが意図されている。補助的な活性化合物も、また、組成物に組み込むことができる。
【0083】
治療組成物は、通常、製造および保存の条件下で滅菌であり、安定でなければならない。組成物は、高薬物濃度に適した溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、またはその他の秩序構造として処方することができる。担体は、たとえば、水、エタノール、およびポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどの被覆剤の使用により、分散媒の場合には所望の粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。多くの場合、組成物には、たとえば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることができる。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物に、モノステアリン酸塩およびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらされる。
【0084】
滅菌注射溶液は、適当な溶媒中で、必要な量、活性化合物を、上記に列挙した成分の1または組み合わせとともに、組み込み、続いて、必要に応じて、滅菌精密ろ過を行うことによって、調製することができる。一般的に、分散媒は、基本的な分散媒体、および上記の列挙されたものから必要な他の成分が含まれている滅菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことにより、調製される。滅菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合には、調製の方法は、以前にフィルター滅菌されたそれの溶液から、活性成分、および任意の追加の所望の成分の粉末を得る、真空乾燥、およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0085】
単一の投薬形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される対象、および投与の特定の様式に依存して変化する。単一の投薬形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的には、治療的効果を生じさせる組成物のその量であろう。一般的には、100%のうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、活性成分の約0.01%〜約99%、活性成分の約0.1%〜約70%、または約1%〜約30%の範囲である。
【0086】
投与計画は、最適な所望の応答(たとえば、治療応答)を提供するために調整される。たとえば、単一のボーラスが、投与されることができ、数回に分けられた投与量が、時間をかけて投与されることができ、または投与量が、治療状況の緊急性によって指示されるように、比例的に低減または増大させられることができる。特に投与の容易化および投薬量の均一性のために、投与単位形態で非経口組成物を処方することが有利である。本明細書において、投与単位形態は、処置される対象への単一投薬量として適した物理的に隔離された単位を意味し、各単位は、必要な薬学的な担体と組み合わせて所望の治療的効果を生むために計算された活性化合物のあらかじめ決められた量を含む。本発明の投薬量単位形態のための仕様は、活性化合物の固有の特性、達成されるべき特定の治療効果、および個人における感受性を処置するためのこのような活性化合物を配合する技術に本来的に備わっている限界によって、決定され、および直接に依存する。
【0087】
本発明の可溶性ポリペプチドの投与のためには、投薬量は、投与を受ける者の体重の約0.0001〜100mg/kgの範囲であり、より通常には、0.01〜5mg/kgの範囲である。たとえば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、もしくは10mg/kg体重であることができ、または1〜10mg/kg体重の範囲であることができる。典型的な治療計画は、1週間に1回の、2週間に1回の、3週間に1回の、4週間に1回の、1ヶ月に1回の、3ヶ月に1回の、または3〜6ヶ月に1回の投与を伴う。本発明の可溶性ポリペプチドの投与計画は、1mg/kg体重または3mg/kg体重の静脈内投与を行い、次の投与スケジュールの1つを用いてポリペプチドを与えることを含む:4週間ごとに6投与量、次に、3ヶ月ごと;3週間ごと;3mg/kg体重を一度、続いて1mg/kg体重を3週間ごと。
【0088】
可溶性ポリペプチドは、通常、複数回投与される。単一投薬量の間の間隔は、たとえば、毎週、毎月、3ヶ月ごと、または年ごとであることができる。間隔は、患者における可溶性ポリペプチドの血中濃度を測定することによって示されるように、不規則であることができる。いくつかの方法において、投与量は、約1〜1000μg/ml、いくつかの方法において約25〜300μg/mlの血漿ポリペプチド濃度を達成するために調整される。
【0089】
また、可溶性ポリペプチドは、徐放性製剤として投与することができ、その場合、必要な投与の頻度は、より低い。投薬量および頻度は、患者における可溶性ポリペプチドの半減期によって異なる。投薬量と頻度は、処置が、予防的であるか、治療的であるかによって異なりうる。予防的な適用においては、比較的低用量が、長期間にわたって、比較的まれな間隔で投与される。一部の患者は、自分たちの人生の残りのための処置を受け続ける。治療的適用においては、疾患の進行が低減されるまで、もしくは終了するまで、または、患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が、必要である。その後、患者は予防的投与計画を行うことができる。
【0090】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量は、患者に毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与様式について所望の治療応答を達成する効果的な活性成分の量が得られるように変化させることができる。選択された投薬量レベルは、採用される本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、採用される特定の化合物の排泄率、処置の期間、採用される特定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物、および/または材料、処置を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態、および以前の病歴、ならびに医療分野でよく知られている同様の要因を含む薬物動態的な様々な要因に依存する。
【0091】
本発明の可溶性ポリペプチドの「治療的に有効な投薬量」の結果、疾患の症状の重症度が低下し、疾患の無症状期間頻度および継続期間が上昇し、あるいは疾患の苦痛による障害または無力を予防することができる。
【0092】
本発明の組成物は、当技術分野で公知の種々の1または複数の方法を使用して、1または複数の投与経路によって投与することができる。当業者によって理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて異なるであろう。
【0093】
本発明の可溶性ポリペプチドを投与するための経路は、たとえば、注射または注入による、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、脊髄、または他の非経口投与経路を含む。本明細書において、語句「非経口投与」は、通常、注射による、経腸および局所投与以外の投与の様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮内、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および幹内の注射および注入を含むが、これらに限定されない。
【0094】
また、本発明の可溶性ポリペプチドは、局所、表皮、または粘膜の投与経路などの経口経路によって、たとえば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下または局所的に、投与することができる。
【0095】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む放出制御製剤など、迅速な放出に反する化合物を保護するであろう担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など、生分解性、生体適合性ポリマーが、使用されうる。このような製剤の調製のための多くの方法が、特許を受けており、または当業者に広く知られている。たとえば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York 1978を参照されたい。
【0096】
治療組成物は、当該技術分野で知られている医療機器を用いて投与することができる。たとえば、1つの実施形態において、本発明の治療組成物は、米国特許第5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824または4,596,556に示される装置などの無針皮下注射装置を用いて投与することができる。本発明において有用な、よく知られているインプラントおよびモジュールの例は、制御された速度で薬物を分配するための埋め込み型マイクロ注入ポンプを示す米国特許第4487603;皮膚を通して薬剤を投与するための治療装置を示す米国特許第4486194;正確な注入速度で薬物を輸送するための薬剤注入ポンプを示す米国特許第4447233;連続薬物輸送のための可変流量埋め込み型注入装置を示す米国特許第4447224;多チャンバーコンパートメントを有する浸透薬物輸送システムを示す米国特許第4439196;、および浸透薬物輸送システムを示す米国特許第4475196を含む。多くの他のこのようなインプラント、輸送システム、およびモジュールが当業者に知られている。
【0097】
特定の実施態様において、本発明の可溶性ポリペプチドは、生体内で適切な分布を確実にするように処方することができる。たとえば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性の化合物を除外する。本発明の治療化合物が、(必要に応じて)BBBを越えることを確実にするため、それらは、たとえば、リポソーム中に処方されることができる。リポソームを製造する方法については、たとえば、米国特許第4522811、5374548、および5399331を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または臓器に選択的に輸送されそれゆえ標的薬物輸送を増進させる1または複数の部分を含んでもよい(たとえば、V.V.Ranade,1989, J.Cline Pharmacol.29:685を参照されたい)。典型的な標的部分は、葉酸またはビオチン(たとえば、Lowらによる米国特許5,416,016を参照されたい);マンノシド(Umezawa et al.,1988,Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloeman et al.,1995,FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.,1995,Antimicrob.Agents Chernother.39:180);サーファクタントプロテインA受容体(Briscoe et al.,1995,Am.J.Physiol.1233:134);P120(Schreier et al.,1994,J.Biol.Chem.269:9090)を含む。K.Keinanen;M.L.Laukkanen,1994,FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler,1994,Imrnunomethods,4:273も参照されたい。
【0098】
本発明の使用および方法
本発明の可溶性ポリペプチドは、インビトロおよびインビボの診断および治療の有用性を持つ。たとえば、これらの分子は、様々な障害を治療、予防、または診断するために、培養下の細胞に、たとえば、インビトロ、もしくはインビボで、あるいは、対象における細胞に、たとえば、インビボで、投与することができる。
【0099】
本明細書において、用語「対象」は、ヒト、および非ヒト動物を含むことが意図されている。非ヒト動物は、たとえば、非ヒト霊長類、ヒツジ、犬、猫、牛、馬、鶏、両生類、爬虫類などの哺乳類および非哺乳類などのすべての脊椎動物を含む。
【0100】
該方法は、たとえば、アレルギー性喘息または潰瘍性大腸炎など、SIRPα+細胞によって媒介される自己免疫および炎症性障害の治療、予防、または診断に、特に適している。これらは、炎症病状、アレルギーおよびアレルギー性病状、自己免疫疾患、虚血性障害、重症感染症、ならびに細胞、組織または臓器の異種移植(すなわち、異なる種から、たとえば、非ヒト種からヒトへの移植)を含む細胞、臓器または組織の移植拒絶反応を含む。
【0101】
自己免疫疾患の例は、関節炎(たとえば、関節リウマチ、関節炎慢性進行性関節炎および変形性関節炎)、および骨量減少を伴う炎症病状とリウマチ性疾患を含むリウマチ性疾患、炎症性痛覚、強直性脊椎炎を含む脊椎関節症、ライター症候群、反応性関節炎、乾癬性関節炎、および腸関連関節炎、過敏症(気道過敏症と皮膚過敏症の両方を含む)、ならびにアレルギーを含み、これらに限定されない。自己免疫疾患は、(たとえば、溶血性貧血、再生不良性貧血、純粋な赤血球貧血、または特発性血小板減少症を含む)自己免疫血液学的障害、全身性エリテマトーデス、炎症性筋障害、多発性軟骨炎、皮膚硬化症、ウェゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブン−ジョンソン症候群、特発性スプルー、内分泌眼症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿(糖尿病I型)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾性角結膜炎および春季カタル、間質性肺線維症、(たとえば、特発性ネフローゼ症候群、または微小変化型腎症を含むネフローゼ症候群がある、またはない)乾癬性関節炎および糸球体腎炎、腫瘍、多発性硬化症、皮膚および角膜の炎症性疾患、筋炎、骨のインプラントのゆるみ、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、および脂質異常症などの代謝性障害を含む。
【0102】
本発明の可溶性ポリペプチドは、喘息、気管支炎、じん肺、肺気腫、およびその他の気道の閉塞性または炎症性疾患の治療、予防、または改善にも有用である。
【0103】
本発明の可溶性ポリペプチドは、また、IgE媒介性障害の処置にも有用である。IgE媒介性障害は、多くの一般的な自然発生吸入および摂取抗原に対して免疫学的に応答する遺伝的性向、およびIgE抗体の継続的な産生によって特徴づけられるアトピー性障害を含む。特定のアトピー性障害は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性胃腸疾患を含む。
【0104】
しかし、IgEレベル上昇に関連する疾患は、遺伝的な(アトピー)病因を伴うものに限定されない。IgE媒介性であり、本発明の製剤で処置されるようであり、IgEレベル上昇に関連するその他の障害は、過敏症(たとえば、アナフィラキシー過敏症)、湿疹、じんま疹、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、寄生虫症、高IgE症候群、血管拡張性失調症、ウィスコット−アルドリッチ症候群、胸腺リンパ形成不全症、高IgE症、および移植片対宿主反応を含む。
【0105】
本発明の可溶性ポリペプチドは、単独の活性成分として、または他の薬物、たとえば免疫抑制、免疫調整剤、もしくは他の抗炎症剤と併用して、たとえば、アジュバントとして、または組み合わせて、たとえば、上記疾患の治療または予防のために、投与することができる。たとえば、本発明の可溶性ポリペプチドは、DMARD、たとえば、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、メトトレキサート、D−ペニシラミン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミノサイクリン、レフルノミド、糖性グルココルチコイド群;カルシニューリン阻害剤、たとえば、シクロスポリンAまたはFK 506;リンパ球再循環のモジュレーター、たとえば、FTY720およびFTY720類似物;mTOR阻害剤、たとえば、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573またはTAFA−93;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、たとえば、ABT−281、ASM981など;コルチコステロイド;シクロフォスファミド;アザチオプリン;メトトレキサート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリン、またはその免疫抑制ホモログ、アナログもしくは誘導体;免疫抑制モノクローナル抗体、たとえば、白血球受容体、たとえば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86またはそれらのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調整化合物、たとえば、CTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部を有する組換え結合分子、たとえば、非CTLA4タンパク質配列に結合したCTLA4またはその変異体の少なくとも細胞外部分、たとえば、CTLA4Ig(たとえば、ATCC 68629と指定されるもの)またはその変異体、たとえばLEA29Y;接着分子阻害剤、たとえば、LFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニスト、またはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤、たとえば、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル;抗TNF剤、たとえば、TNFに対するモノクローナル抗体、たとえば、インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870、またはTNF−RIまたはTNF−RIIに対する受容体コンストラクト、たとえば、エタネルセプト、PEG−TNF−RI;炎症性サイトカインのブロッカー、IL−1ブロッカー、たとえば、アナキンラまたはIL−1トラップ、AAL160、ACZ 885、IL−6ブロッカー;ケモカインブロッカー、たとえば、プロテアーゼの阻害剤または活性化剤、たとえば、メタロプロテアーゼ、抗IL15抗体、抗IL6抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗IL17抗体、アスピリン、または抗感染剤などの非ステロイド性抗炎症薬(一覧は、上記の薬剤に限定されない)との組み合わせで使用することができる。
【0106】
本発明の可溶性ポリペプチドは、また、特に、上記で言及したものなどの閉塞性または炎症性気道疾患の処置における抗炎症または気管支拡張薬物物質と併用して使用するための共治療剤として、たとえば、そのような薬物の治療活性の増強剤として、またはそのような薬物の必要とする投与量、または起こりうる副作用を減少させる手段として、有用である。本発明の薬剤は、固定医薬組成物において抗炎症や気管支拡張薬物と混合されてもよく、または抗炎症または気管支拡張薬物と別々に、その前に、同時に、またはその後に投与されてもよい。このような抗炎症薬物は、ステロイド、特に、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルチカゾンまたはモメタゾンなどのグルココルチコステロイド、およびカベルゴリン、ブロモクリプチンまたはロピニロールなどのドーパミン受容体アゴニストを含む。このような気管支拡張薬物は、抗コリンまたは抗ムスカリン剤、特に、臭化イプラトロピウム、オキシトロピウム、および臭化チオトロピウムを含む。
【0107】
本発明の薬剤とステロイドの組み合わせは、たとえば、COPD、特に、喘息の治療において、使用されてもよい。本発明の薬剤、および抗コリン、もしくは抗ムスカリン剤、またはドーパミン受容体アゴニストの組み合わせは、たとえば、喘息、または、特に、COPDの処置において、使用されてもよい。
【0108】
上記によれば、本発明は、また、それを必要とする対象、特にヒト被験者に、前記で説明したように、可溶性ポリペプチドを投与することを含む、閉塞性または炎症性気道疾患の処置の方法を提供する。別の局面において、本発明は、本明細書中で説明するように、閉塞性または炎症性気道疾患を処置するための薬剤の製造における使用のための可溶性ポリペプチドを提供する。
【0109】
本発明の可溶性ポリペプチドは、また、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患などの慢性胃腸炎の治療、予防、または改善に、特に有用である。
【0110】
「慢性胃腸炎」は、比較的長い期間の発症によって特徴付けられ、(たとえば、数日間、数週間、数ヶ月、あるいは数年から、最大、被検者の最期まで)持続し、および、単核細胞の浸潤または流入に関連付けられ、自然寛解と自然発生の長さとさらに関連付けられることができる消化管の粘膜の炎症を意味する。したがって、慢性胃腸炎を有する被験者は、長期間の監視、観察、または注意を要すると予想されることがある。このような慢性炎症を有する「慢性胃腸炎症性病状」(「慢性胃腸炎症性疾患とも呼ばれる)は、炎症性腸疾患(IBD)、環境発作によって誘発される大腸炎(化学療法の投与、および放射線療法などの治療計画によって(たとえば、副作用として)引き起こされ、またはこれに関連付けられる、たとえば、消化管炎症(たとえば、大腸炎))、慢性肉芽腫症(Schappi et al.Arch Dis Child.2001,February;1984(2):147−151)などの病状における大腸炎、セリアック疾患、セリアック病(グルテンとして知られるタンパク質の摂取に応答して、腸の内層が炎症を起こす遺伝性疾患)、食物アレルギー、胃炎、感染性の胃炎または腸炎(たとえば、ヘリコバクターピロリ感染慢性活動性胃炎)、および他の形態の感染性病原体によって引き起こされる胃腸の炎症、ならびに他の同様の病状を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0111】
本明細書中において、「炎症性腸疾患」または「IBD」は、腸のすべてまたは部分の炎症によって特徴づけられる任意の種々の疾患を意味する。炎症性腸疾患の例は、クローン病、および潰瘍性大腸炎を含むが、これに限定されない。明細書を通してIBDへの言及は、しばしば、明細書において、胃腸炎症病状の例としての言及であり、制限的であることは意図されていない。
【0112】
上記によれば、本発明は、前記で説明した可溶性ポリペプチドを必要とする対象、特に、ヒト対象にこれを投与することを含む、瘍性大腸炎などの慢性胃腸炎、または炎症性腸疾患を処置する方法も提供する。別の局面において、本発明は、慢性胃腸炎または炎症性腸疾患の処置のための薬剤の調製における本明細書中で説明した可溶性ポリペプチドの使用を提供する。
【0113】
本発明は、白血病、または他の癌障害の治療、予防または改善において有用である。
【0114】
治療上有効な量の可溶性ポリペプチド、および少なくとも1つの第二薬物物質を、たとえば、併用して、または順に同時投与することを含む、上記で定義した方法も、また、本発明の範囲内に包含される。ここに、前記第二薬物物質は、たとえば、上に示した免疫抑制/免疫調整、抗炎症治療、または抗感染症薬物である。
【0115】
あるいは、治療的組み合わせ、たとえば、治療上有効な量のa)本発明の可溶性ポリペプチド、およびb)たとえば、上に示した免疫抑制/免疫調整、抗炎症治療、または抗感染症薬物から選択される少なくとも1つの第二の物質からなるキット。該キットには、その投与のための指示を含むことができる。
【0116】
本発明の可溶性ポリペプチドが、他の免疫抑制/免疫調整、抗炎症治療、または抗感染症治療とともに投与される場合、もちろん、用いられる共薬物の型、処置を受ける病状などに応じて、同時投与の組み合わせの化合物の投与量は、異なるであろう。
【0117】
1つの実施形態において、本発明の水溶性ポリペプチドは、CD47+樹状細胞のレベル、またはCD47を含む細胞のレベルの検出に使用することができる。これは、たとえば、可溶性ポリペプチド、およびCD47発現細胞の間で複合体の形成を可能にする条件の下で、(インビトロサンプルなどの)サンプル、およびコントロールサンプルを、本発明の可溶性ポリペプチドと接触させることによって達成することができる。形成された任意の複合体は、サンプルおよびコントロールにおいて、検出され、比較される。たとえば、フローサイトメトリーアッセイなどの当技術分野で周知の標準的な検出方法が、本発明の組成物を使用して実行されうる。
【0118】
したがって、1つの側面において、本発明は、可溶性ポリペプチドおよびCD47の間の複合体の形成を可能にする条件下で、サンプル、およびコントロールサンプルを本発明の可溶性ポリペプチドと接触させることを含む、サンプルにおけるCD47(たとえば、ヒトCD47)の存在を検出する、またはCD47の量を測定する方法をさらに提供する。複合体の形成は、次に、検出され、ここに、複合体形成におけるコントロールのサンプルと比較したサンプルとの間の違いが、サンプルにおけるCD47の存在の指標となる。
【0119】
また、本発明の組成物、および使用説明書から構成されるキットも、本発明の範囲内である。キットは、さらに、少なくとも1つの付加的な試薬を含むことができる。典型的には、キットは、キットの内容物の使用目的を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キットの上に、もしくはキットとともにある、または他にキットに付属している任意の書き込み、または記録材料を含む。キットは、上記のように定義された処置に応答するであろう群に属する患者であるかどうかを診断するための道具をさらに含んでもよい。
【0120】
十分に記述されてきた本発明は、さらに以下の実施例および請求の範囲によって、説明されるが、これは、例示的なものであり、さらに限定的であることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】ネズミSIRPα−Fcは、CD47+/+(WT)に結合するが、CD47−/−(KO)細胞には結合しない。CD47+/+(WT)またはCD47−/−(KO)ネズミ脾細胞に結合するネズミSIRPα−Fcは、説明したようにフローサイトメトリーによって検出された。SIRPα−Fc結合(SIRP)から生じる蛍光は、FL3対ドットプロットとしてプロットされている。
【図2】ヒトSIRPα−Fcは、CD47+/+発現(Jin8CD47)に結合するが、CD47欠損Jurkat T細胞(Jin8)には結合しない。SIRPα− Fc結合は、上記のフローサイトメトリーによって定量化した。SIRPα−Fc結合(SIRP)から生じる蛍光は、太線におけるヒストグラムとしてプロットされている。太線は、10μg/mL抗CD47クローンB6H12の存在下での結合を示す。
【図3】プライミング時のCD47/SIRPαのブロッキングは、BALB/cマウスにおけるアレルギー性疾患の進行を妨げる。(3a)マウスには、SIRPα−Fc融合分子の存在下、または非存在下において、0日目と5日目に、腹腔内にOVA感作し、12日目、16日目、および20日目に、OVA−エアロゾル感作を受けさせ、そして、21日目に、安楽死させた(グループあたりN=4〜7匹)。(3b)H&EおよびPASで染色された、ナイーブ肺切片(PBS)、免疫されたOVA、OVA付加SIRP−α−FC−処置マウス。データは、3つの別個に分析された肺の代表である。(3c)ディファレンシャルBALF細胞数が、フローサイトメトリーによって、分析された。(3d)21日目に測定したOVA特異的IgEの血清レベル。(3e)インビトロでのOVAでの再刺激の3日後のMLN細胞培養の上清中のIL−4、IL−5およびIL−13レベル。(3f)21日目、生体外の単離されたmLNsにおけるCD4+T細胞、およびIL−13が産生するCD4+T細胞の%を、フローサイトメトリーによって評価した。3つのうちの代表的な実験の1つが示されている。(3g)肺外植片におけるIL−4、IL−5、IL−13および(h)エオタキシン放出。データは平均±SEMである。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【図4】SIRPα−Fc処理BALB/cマウスにおける疾患保護の機序。マウスには、0日目および5日目に、SIRPα−Fc融合分子の存在下で、または非存在下でOVA感作し、12日目、16日目、および20日目にOVA−エアロゾル感作を受けさせ、21日目に安楽死させた。(4a)mLNsにおけるCD11b低CD103+、およびCD11b高CD103−DC(CD11c+にゲートされた)の亜集団。データは、%DCサブセットとして表示される(グループごとにn=3〜4匹)。(4b)BALB/cマウスは、腹腔内OVA−alumnの免疫付与の前日に、SIRPα−Fcの存在下で、または不存在下で(PBS)、CFSE標識CD47+/+CD4+TgT細胞を、受動的に移送され、2日後、CFSE細胞希釈が、mLNsにおいて検討された。データは、グループごとに4匹のマウスで行われた実験の代表である。(4c)21日目、好酸球(CCR3+)の絶対数が、生体外の単離されたmLNsにおいて、フローサイトメトリーによって、評価された。データは平均±SEMである(グループごとにN=3〜4マウス)。
【図5】SIRPα−Fcの投与によるTNBS−大腸炎の保護。大腸炎が誘導され、上記のように評価された。100μg/動物 ネズミSIRPα−Fcが、腹腔内後0日目および24時間に適用された。またPBSが腹腔内に注入された。動物の体重は、TNBS注射後4日まで評価された。
【実施例】
【0122】
1.本発明の可溶性ポリペプチドの例:
以下の表3は、開示されたアミノ酸配列をコードするDNAを用いて組換え法によって製造することができる本発明の可溶性ポリペプチドの例を提供する。
【0123】
【表3】
【0124】
2.親和性測定:
2.1 CD47に対する親和性:
単量体CD47、または二価のCD47−Fcタンパク質に対するヒトSIRPα− Fcの親和性は、ビアコアによって、評価することができる。SIRPαとのCD47 V−ドメインの一価の相互作用は、約1μMであると報告されている(Heatherley et al Mol Cell. 2008)。
【0125】
たとえば、APP−タグ付きCD47 Vドメインタンパク質が、HEK293細胞において発現され、リガンドとしての二価のCD47−Fcタンパク質と比較される。SIRPα−Fcとの一価の相互作用は、0.8μmKDと測定されたが、他方、二価のCD47−Fcのタンパク質の結合の強さ(結合力)は、KD<60nmへ10倍も増大した。対照的に、ネズミCD47−Fc融合タンパク質の結合は、観察することができなかったが、このことは、評価された相互作用の特異性を示す。
【0126】
【表4】
【0127】
2.2 マウス細胞CD47に対する細胞結合:
野生型からの、またはCD47ノックアウトネズミからの5x105CD47+、およびCD47−マウス脾細胞を、200μg/mlヒトIgG、および5μg/mlネズミSIRPα−Fcを含む50μlのFACS緩衝液(PBS、2%FCS 2mMのEDTA)に、4℃で30分間、再懸濁した。洗浄後、4℃で30分間、FITC標識したストレプトアビジン(1/1000)で細胞を染色する。結果は、SIRPα−Fcが、CD47+/+のリンパ球に結合するが、CD47−/−ノックアウトマウスからのリンパ球には結合しないことを示す(図1)。
【0128】
2.3 ヒト細胞CD45に対する細胞結合:
5x105CD47+、およびCD47−JurkatT細胞株を、4℃で30分間、200μg/mlのヒトIgG、および5μg/mlのSIRPα−Fcを含む50μlのFACS緩衝液(PBS 2%FCS 2mMEDTA)に再懸濁する。洗浄後、4℃で30分間、細胞を、FITC標識したストレプトアビジン(1/1000)で染色する。
【0129】
結果は、SIRPα−Fcが、CD47+/+Jurkat細胞(Jin8CD47)のリンパ球に結合するが、CD47(Jin8)を発現しないJurkat細胞には結合しないことを示す(図2)。抗CD47抗体B6H12での阻止によって示されるように、細胞への結合は、特異的であった。
【0130】
2.4 CHO CD47細胞株に結合するビオチン化SIRP−αFcの阻害/ブロッキング試験:
また、CHO CD47細胞株に結合するビオチン化SIRPα−Fcの阻害/ブロッキング試験は、異なるエピトープ(すなわち、B6H12、2D3、BRIC126、IF7、および10G2クローン、別の抗ヒトSIRP−α(CD172a)mAb、組換えヒトトロンボスポンジン1(TSP−1)、またはTSP−1のC末端(4N1K)、およびコントロール(4NGG)ペプチド)に対する抗CD47mAbを用いて実施することができる。
【0131】
2.5 CHO CD47細胞株に結合する直接標識抗CD47mAbの阻害/ブロッキング試験:
補完的なアプローチとして、CHO CD47の細胞株に結合する直接標識された抗CD47mAbの阻害/ブロッキング試験は、非ビオチン化ヒトSIRP−α−FCを使用して実行することができる。SIRPα−FCを使用してヒトSIRPα−FcでトランスフェクトされたL細胞に結合するビオチン化CD47−Fcの阻害/ブロッキング試験も、また、評価されうる。
【0132】
3. SIRP−α−Fc機能アッセイ:
3.1 免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイ:
末梢血単球(CD14+ CD16−)、ならびに単球由来樹状細胞(DC)は、説明されるように調製される(Latour et al, J of Immunol,2001:167:2547)。コンベンショナル(DCs)は、アロフィコシアニン(APC)で標識した抗CD11c(B−ly6)、系統マーカーに対するFITC標識モノクローナル抗体の混合物、CD3、CD14、CD15、CD16、CD19、およびCD56、ならびにAPC−Cy7標識CD4(RPA−T4)を使用して、FACSアリア(BD Biosciences社)によって、CD11c+、系譜−として、>99%に達する純度で、単離される。APCは、HB101無血清培地において、種々の濃度のヒトSIRPα−Fc(1〜20μg/mlの)の存在下で、1/40.000(Pansorbin)の黄色ブドウ球菌Cowan1で、または可溶性CD40L(1μg /mlの)、およびIFN−γ(500U/ml)で、刺激される。サイトカイン(IL−1、IL−6、IL−10、IL−12p70、IL−23、IL−8およびTNF−α)放出は、24時間または48時間培養上清において、ELISA法によって、評価される。
【0133】
3.2 混合リンパ球反応(MLR)アッセイ:
マイトマイシンC処理した成熟DC(SACまたはLPS刺激)は、様々な刺激(DC)/応答因子(T細胞)率で、本発明の可溶性ポリペプチド(5〜50μg/ml)の存在下で、または非存在下で、未分画同種ナイーブ(CD45RA+CD62L高)または記憶(CD45RO+CD62L低)成人CD4+T細胞(106/ml)と共培養される。T細胞増殖(3Hチミジン取り込み)、およびIFN−γ放出は、5〜6日初代培養の培養上清において、評価される。
【0134】
4.喘息の治療におけるSIRPα−Fcの使用のためのマウス動物モデルを用いたインビボのデータ:
BALB/cマウスは、0日目および5日目に、1mg Imject Alum(Pierce)に吸着した10μgのOVA(Sigma、Grade V)の腹腔内の注射によって、感作された。12、16、および20日目に、マウスは、振動メッシュネブライザーシステム(オムロン)によって注入された0.5%OVAのエアロゾル(Sigma、Grade V)で、30分間感作された。最後の感作の24時間後、75mg/kgペントバルビタールナトリウムの過剰摂取によって、マウスを屠殺し、採血した。BALを、0.5ml生理食塩水で3回収集し、肺およびMLNを単離した。肺の3分の1を、抗生物質を補ったPBS中で、すすぎ、小片に切断し、そして、平底24ウェルプレート中で、24時間、10%ウシ胎児血清、500U/mlペニシリン、500μg/mlストレプトマイシン、10mMHEPES緩衝液、および1mM 2−MEを補充した1ml RPMI1640(Wisent Inc.)中で、培養した。MLN細胞(4x106細胞/ml)を、平底96ウェルプレートにおいて、培養し、72時間、OVA(100μ/ml)で再刺激した。全量BAL細胞を、洗浄し、数え、抗CCR3 PE(R&D systems)、抗CD3 FITC(クローン145 −2C11)、および抗B220 FITC(R&D systems)で、30分間、染色した。Van Rijt L.S.ら(Immunol Methods.2004年5月;288(1−2):111−21)に説明されるように、顆粒球は、顆粒状であり、非自家蛍光であり、CD3およびB220の発現を欠くことがわかった。好酸球は、CCR3発現によって、好中球と区別された。リンパ球は、小さく、非顆粒状であり、非自家蛍光であり、CD3またはB220を発現し、そして、マクロファージ、および樹状細胞を含む他の単核細胞は、CD3、B220およびCCR3を欠いていた。DCサブセットを同定するために、mLNs、および肺が、まず、リベラーゼで処理され、細かく刻まれ、細胞の数が、数えられた。肺の細胞懸濁液は、赤血球の溶解のために、NH4Clで処理し、染色の前に、洗浄した。細胞は、抗CD11c FITC(BD Biosciences)、または抗CD11c APC(クローンN418)、抗CD11b PE(Caltag)、抗I−Ad/I−Ed PE(BD Biosciences)、抗GR1、抗B220 FITC(R&D systems)、120G8 FITC、および抗CD103−ビオチン化、続いて、SA−APC、またはCD103 PE(BD Biosciences)抗CD47、および抗SIRP−αmAbで染色された。肺において、自家肺胞マクロファージは、分析のゲートから除外された。制御性T細胞を同定するために、抗CD4 FITCまたはAPC(BD Biosciences)、抗CD25 PE(Caltag)またはFITC(BD Biosciences)、抗CD44 APC(クローンIM7 8.1)が使用された。生体外でのIL−13産生を測定するため、肥満細胞、および好塩基球が、まず、細胞外抗IgE−ビオチン化、および抗CD117(c−Kit、BioLegend)で同定され、そして、CD4 T細胞を、抗CD4 APCで染色した。細胞は、固定し、透過処理し、そして、抗IL−13 PE(eBioscience)で染色した。細胞は、まず、細胞外マーカー(抗CD4 APCおよび抗CD25 FITC)で染色し、固定し、透過処理し、そして、抗FoxP3 PE(eBioscienceからのキット)で染色した。肥満細胞、および好塩基球+細胞質内IL−13染色。すべてのデータは、FACSキャリバー、またはCantoIIフローサイトメーター(BD Biosciences)で得られ、CellquestまたはDIVAソフトウェア(BD Biosciences)で分析された。
【0135】
サイトカイン測定:
IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IFN−γ(BD Biosciences)、IL−13(R&D Systems)は、ELISAによって、mLNsの培養上清、および肺外植片において測定される。
【0136】
OVA感作および感作マウスからの縦隔LN細胞は、インビトロで、3日間、OVAタンパク質(1mg/ml)で再刺激され、そして、IL−4、IL−5およびIL−13産生が、培養上清において、ELISA法によって定量化される。肺外植片は、完全培地において、一晩培養され、培養上清は、サイトカイン放出を測定するために収集される。
【0137】
結果:
アレルギー性喘息の処置におけるSIRPα−Fcの使用するためのマウス動物モデルを用いるインビボのデータ:
CD47、およびSIRPαは、SIRP−α+ CD103− DC駆動Th2免疫の開始および永続化における重要な分子として現れる。このように、それらは、治療的に肺炎症を低減させるために、そして、気道疾患を改善させるために、活かされる可能性がある。ここでは、アレルギー性気道炎症の進行に対するSIRP−α、およびヒトIgG1のFc領域(SIRPα−FC)の効果を評価した。OVA免疫付与(図3a)の0および5日目に、SIRPα−Fcのいずれかを投与したBALB/cマウスは、OVAエアロゾルの感作の後において、肺組織の炎症性細胞浸潤が、非常に少なかった、または、なかった(図3b)。BALFにおける好酸球、好中球とリンパ球の強力な低減、または欠如が、起こり(図3c)、これとともに、血清OVA特異的IgEにおける下落(図3d)、リンパ節の細胞数における50%低減、およびmLNsにおけるIL−4、IL−5およびIL−13産生の強烈な阻害(図3eおよびf)が起こった。気道疾患の進行からの保護は、IL−10の増加とも、IFN−γ放出とも相関せず、これは、実際、処置されたマウスにおいても、抑制された(データは示さず)。次に、CD47−およびSIRPα−FC−処置マウスの肺外植片の培養上清におけるサイトカイン、およびケモカイン放出を調べ、IL−5、IL−13、およびエオタキシン放出は、阻害されたが、一方、IL−4発現は、変化しないままであったことを見出した(図3gおよびh)。
【0138】
次に、この阻害を制御し、気道疾患からの保護をもたらした潜在的な機序を探った。CD47−Fcを処置したマウスのmLNsにおけるSIRP−α+ CD103− 樹状細胞の蓄積の減少が見出された(図4a)。SIRPα−Fcの投与は、また、CD47−Fcで処置したOVA免疫マウスのmLNsにおけるCFSE標識Tg T細胞の割合の低減につながった(図4b)。最後に、SIRPα−FC−処置マウスのmLnsにおける好酸球の割合および蓄積の減少が観察された(図4c)。
【0139】
これらのデータは、初期銀感作におけるCD47/SIRPα遮断が、mLNsおよび肺における2型応答、ならびにIgE抗体依存性気道炎症を劇的に低減させたことを実証する。
【0140】
5.大腸炎の治療におけるSIRPα−Fcの使用のためのマウス動物モデルを用いるインビボのデータ:
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)(2または3mg)を、50%のエタノールに溶解し、3.5Fカテーテルを介して、雄BALB/cマウス(WTおよびCD47 KO)の大腸に滴下した。コントロールマウスは、エタノールのみを与えられた。マウスを、24時間ごとに秤量し、2日目(早い時点)、または4日目に、屠殺した。慢性TNBS大腸炎モデルにおいて、0日目に、そして、7日目にもう一度、1.5mgのTNBSを直腸内に注入し、12日目に、マウスを屠殺した。血清、腸間膜リンパ節、および大腸を、さらなる分析のため、回収した。大腸は、下痢、癒着、腸壁の肥厚、および潰瘍の存在を考慮に入れるウォーレスの基準を使用して、肉眼的にスコア化した。それらは、また、アメホ(Ameho)の基準、粘膜下組織の肥厚、単核細胞を有する粘膜下層および固有層の浸潤、粘液枯渇、陰窩構造の損失、および浮腫に基づくスコアリングシステムを使用して、炎症の微視的マーカーについて、評価された(示さず)。組換えマウスSIRPα−Fc融合タンパク質を、TNBS大腸炎の誘導の直前、およびその24時間後に、腹腔内(100μg/マウス)投与した。コントロールマウスは、生理食塩水のみを受けた。0日目、TNBS誘導の30分前、および1日目における100μg/動物のマウスSIRPα−Fcの注入は、体重の損失として評価される疾患の進行を統計的に有意にブロックした。
【0141】
6.関節炎の治療におけるSIRPα−Fcの使用のためのインビボのネズミ動物モデル:
コラーゲン誘導関節炎モデル:
ヒト結核菌が、フロイント完全アジュバントと混合され、十分に振盪される(=溶液A)。ウシコラーゲン溶液アリコートが、氷上で滅菌PBSとよく混合される(=溶液B)。溶液Aおよび溶液Bが、ナイーブ雄DBA/1マウスに、乳濁液として、注入された。マウスが、ケタミンの滅菌ろ過液のs.c.注入によって、麻酔される。昏睡時に、各マウスの尾の根が、剃毛され、続いて、マウスあたり0.1mlのコラーゲン乳濁液(100μgのコラーゲンを含む)が、尾の付け根に、皮内注入される。100μlのコラーゲン/PBS(1:5希釈)の第二の注入が、初回免疫後の22日目に、腹腔内に与えられる(= 追加免疫)。腫れ、および疾患のスコアリングが、BrandらによるNat Protoc.2007;2(5):1269−75で説明するように評価される。
【0142】
7.本発明を実施に有用なアミノ酸および塩基配列:
【0143】
【表5】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤として使用するための、特に、たとえば、アレルギー性喘息、および炎症性腸疾患などの自己免疫および炎症性障害の予防または治療のための、可溶性CD47結合ポリペプチドに関する。本発明は、より具体的には、SIRPα(CD172a)の細胞外ドメイン、またはヒトCD47に結合する機能的な誘導体を含む薬剤として使用するための可溶性CD47結合ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
CD47は、反対細胞上のSIRPα(別名SHPS−1)およびSIRPγに結合する細胞表面糖タンパク質である。この相互作用は、免疫細胞機能の負の調節につながり、あるいは、細胞の接着および遊走を媒介するのに役立つことができる。CD47を、自己免疫障害の処置において生物学的製剤として使用することが示唆されている(特許文献1)。対照的に、同様の治療目的のため、SIRPαなどのCD47リガンドを使用できる可能性を示す証拠は、非常に少ない。一つの説明は、CD47の普遍的な発現が、潜在的な薬物としてのCD47結合ポリペプチドの使用を妨げるであろうことである。非特許文献1によって示されるデータは、免疫グロブリンFcドメインと融合したSIRPαの細胞外ドメインでできた融合タンパク質が、マウスにおいて、皮膚由来の樹状細胞(DC)から流入領域リンパ節への遊走を抑えることができ、それにより、マウスにおける接触過敏性反応を(少なくとも部分的に)減衰させることができることを示唆している。DCの遊走および機能は、免疫または炎症反応に不可欠である。疾患の条件の下において、樹状細胞(DC)のこれらの悪化した応答は、病気の永続化につながりうる。組織からリンパ器官へ病原性樹状細胞(DC)が遊走することを妨げることは、自己免疫または炎症性疾患を駆動する悪循環を止める魅力的な好機となるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第1999/040940号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yuら、2006年、J Invest Dermatol,126,797−807
【発明の概要】
【0005】
本発明は、SIRPα−Fcコンストラクトが、疾患の動物モデルにおけるTh1/Th17−およびTh2−駆動疾患を予防または停止するのに適していることを示す最初のインビボでの証拠を提供する。これらのデータは、本発明の基礎を提供し、SIRPα由来タンパク質治療の薬物能を裏付ける。本発明は、部分的には、CD47/SIRPα経路を操作することが、免疫原性CD103−樹状細胞により駆動されるTh1/Th17−駆動疾患(関節炎および大腸炎)、およびTh2駆動疾患(喘息)の発症を抑制するという発見に基づく。これらの新しい研究結果は、疾患の根本原因における未知の共通の機構を提供し、複数の自己免疫および炎症性障害の処置の見込みを表している。なお、公表された報告における最近の証拠は、CD47のライゲーションが、いくつかの癌の治療のために有益であることを示す(Majeti et al Cell 2009)。この報告は、CD47抗体の使用を示すが、他方、本発明は、SIRPα由来ポリペプチドをこれらの疾患の処置のために使用することに関する。
【0006】
したがって、1つの実施態様において、本発明は、a)SIRPαの細胞外ドメイン(配列番号3)、b)配列番号1の断片、および、c)配列番号3と少なくとも75%の同一性を有する配列番号1の変異体ポリペプチドからなる群から選ばれるSIRPα由来のポリペプチドを含む、薬剤として使用するための可溶性CD47結合ポリペプチドを提供し、ここに、前記SIRPα由来ポリペプチドは、ヒトCD47(配列番号24)に結合する。特定の実施態様において、配列番号3の変異体ポリペプチドは、配列番号3と少なくとも、80%、85%、90%、95%または99%同一である。
【0007】
読みやすさのため、本発明の可溶性CD47結合ポリペプチドは、以下、「本発明の可溶性ポリペプチド」と呼ぶ。
【0008】
1つの実施形態では、前記SIRPα由来のポリペプチドは、CD47の拮抗剤、すなわち、CD47リガンドのCD47への結合を競合的に阻害するポリペプチドの中から選ばれる。CD47リガンドは、SIRPα、SIRPγまたはTSP1を含み、これらに限定されない。
【0009】
別の実施形態では、SIRPα由来のポリペプチドは、CD47アゴニスト、すなわち、CD47シグナル伝達活性を誘導することができるポリペプチドから選ばれる。
【0010】
1つの実施形態では、前記可溶性CD47結合ポリペプチドは、2μMまたはそれ未満のKDでヒトCD47に結合するもの、および/または、免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイにおいて測定した場合に、誘導されたサイトカイン分泌を阻害するものから選ばれる。
【0011】
別の実施形態では、前記SIRPα由来のポリペプチドは、少なくともSIRPαのV領域(配列番号2)を含むSIRPαの細胞外ドメインである。
【0012】
特定の実施態様において、本発明の可溶性ポリペプチドは、第二の異種ポリペプチドに融合したSIRPα由来ポリペプチドからなる第一のコンポーネントを含む融合ポリペプチドである。1つの実施形態において、可溶性ポリペプチドは、さらに、第二の異種ポリペプチドとSIRPα由来ポリペプチドの間にスペーサーを含む。1つの特定の実施態様において、SIRPα由来ポリペプチドは、IgG Fcドメインに融合している。好ましい実施形態において、前記Fcドメインは、ヒトIgG1アイソタイプのサイレントFc断片である。1つの実施形態において、前記Fcドメインは、ヒトIgG1アイソタイプの非グリコシル化突然変異体である。
【0013】
別の関連する態様において、本発明の可溶性ポリペプチドは、自己免疫および炎症性障害の処置における薬物として使用される。好ましい適応症は、Th2媒介性気道炎症、アレルギー性障害、喘息、炎症性腸疾患、虚血性障害からなる群から選ばれる。加えて、本発明の可溶性ポリペプチドは、白血病または癌の処置における薬物として使用してもよい。
【0014】
本発明を、より容易に理解することができるようにするため、特定の用語が最初に定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通して記載される。
【0015】
用語CD47は、ヒトCD47を意味する。ヒトCD47は、配列番号24を含み、また、たとえば単一ヌクレオチド多型(SNP)を含む任意の自然多型、またはヒトCD47のスプライス変異体を含む。ヒトに見出されるCD47塩基配列中のスプライス変異体またはSNPの例は、表1に記載される。
【0016】
【表1】
【0017】
用語SIRPαは、CD47インテグリン関連タンパク質との接着を示すシグナル伝達調節タンパク質アルファ(CD172aまたはSHPS−1とも呼ばれる)を意味する。いくつかの実施形態において、用語SIRPαは、配列番号23において定義されるヒトSIRPαを意味する。ヒトSIRPαは、1つのV型ドメイン(配列番号2)、および2つのC1型のIgドメインを有するアミノ酸細胞外ドメイン(配列番号3)、ならびに3つの潜在的N−グリコシル化部位を含む。これは、リン酸化した場合に、チロシンホスファターゼSHP−1およびSHP−2を動員するITIMモチーフを有する110個のアミノ酸細胞質配列を持つ。用語ヒトSIRPαは、さらに、たとえば単一ヌクレオチド多型(SNP)を含む任意の天然多型、またはヒトSIRPαのスプライス変異体を含むが、これらに限定されない。ヒトに見出されるSIRPα塩基配列におけるスプライス変異体またはSNPの例は、表2に記載される。
【0018】
【表2】
【0019】
本明細書において、任意の膜貫通ドメインが欠けている場合には、または、ポリペプチドを発現する細胞の膜にポリペプチドを固定する若しくは組込むタンパク質ドメインが欠けている場合には、そのようなポリペプチドは、「可溶性」である。特に、本発明の可溶性ポリペプチドは、同様に、SIRPαの膜貫通および細胞内ドメインを除いてもよい。
【0020】
本明細書において、「CD47に結合する」ポリペプチドは、20μMまたはそれ未満、2μMまたはそれ未満、0.2μMまたはそれ未満のKDでヒトCD47に結合するポリペプチドを意味することが意図されている。いくつかの実施態様において、CD47に結合するポリペプチドは、さらに、サーファクタントプロテインA(SP−A)および/またはサーファクタントタンパク質D(SP−D)に結合する。
【0021】
本明細書において、免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイにおいて測定した場合に誘導されたサイトカイン分泌を阻害するポリペプチドとは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)Cowan1(Pansorbin)、または可溶性CD40L、およびIFN−γで刺激した末梢血単球、コンベンショナル樹状細胞(DC)、および単球由来樹状細胞からのサイトカイン(たとえば、IL−6、IL−10、IL−12p70、IL−23、IL−8および/またはTNF−α)放出を阻害するポリペプチドである。免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイの一例は、以下の実施例で詳細に記載する。いくつかの態様において、本発明の可溶性ポリペプチドは、免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイで測定した場合に、1μMもしくはそれ未満、100nMもしくはそれ未満、または10nMもしくはそれ未満のIC50でサイトカイン分泌を阻害する。
【0022】
本明細書においては、T細胞増殖を阻害するポリペプチドは、実施例で説明するように、混合リンパ球反応アッセイにおいて測定してもよい。
【0023】
本明細書において、用語「Kassoc」または「Ka」は、特定のタンパク質−タンパク質相互作用の会合速度を意味することが意図されており、他方、本明細書において、用語「Kdis」または「Kd」は、特定のタンパク質−タンパク質相互作用の解離速度を意味することが意図されている。本明細書において、用語「KD」は、解離定数を意味することが意図されており、Kaに対するKdの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。タンパク質−タンパク質相互作用のためのKD値は、当技術分野でよく確立された方法を用いて測定することができる。タンパク質−タンパク質相互作用のKDを測定するための方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによるか、あるいは、ビアコア(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる。
【0024】
本明細書において、用語「親和性」は、単一の部位におけるポリペプチドおよびその標的との間の相互作用の強さを意味する。各部位内において、ポリペプチドの結合領域は、弱い非共有結合力を介して数多くの部位におけるその標的と相互作用する。相互作用がより多ければ、親和性は、より強力になる。
【0025】
本明細書において、結合ポリペプチドについての用語「高親和性」は、その標的に対し、10nMまたはそれ未満、たとえば、1nMまたはそれ未満のKDを有するポリペプチドを意味する。
【0026】
本明細書において、用語「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0027】
用語「非ヒト動物」は、すべての脊椎動物、たとえば、非ヒト霊長類、ヒツジ、犬、猫、馬、牛、鶏、両生類、爬虫類などの哺乳類および非哺乳類を含む。
【0028】
本明細書において、用語「最適化」は、産生細胞または生命体において好まれるコドン、真核細胞、たとえば、ピキア(Pichia)またはサッカロミセス(Saccharomyces)の細胞、トリコデルマ(Trichoderma)の細胞、チャイニーズハムスター(Chinese Hamster)卵巣細胞(CHO)、またはヒト細胞か、あるいは、原核細胞、たとえば、大腸菌(Escherichia coli)の菌株のいずれかにおいて好まれるコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように、塩基配列が改変されたことを意味する。
【0029】
最適化された塩基配列は、完全に、または可能な限り多く、開始ヌクレオチド配列によって当初コードされるアミノ酸配列を保持するように設計され、「親」配列としても知られる。ここで最適化された配列は、対応する産生細胞や生命体、たとえば、哺乳動物細胞において好まれるコドンを持つように設計されてきたが、他の原核または真核細胞におけるこれらの配列の最適化した発現も、ここで想定される。最適化された塩基配列によってコードされるアミノ酸配列も、また、最適化と呼ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の様々な側面は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
【0031】
CD47の機能特性に対する本発明の可溶性ポリペプチドの効果を評価するアッセイは、実施例においてさらに詳細に記載されている。
【0032】
SIRPα由来のポリペプチド
本発明の可溶性ポリペプチドは、a)SIRPαの細胞外ドメイン(配列番号3)、b)配列番号3の断片、およびc)配列番号3の変異体ポリペプチドからなる群から選ばれるSIRPα由来のポリペプチドを含み、ここに、前記SIRPα由来のポリペプチドは、ヒトCD47(配列番号24)に結合する。
【0033】
本発明の可溶性ポリペプチド、およびそのSIRPα由来の断片は、CD47に結合する能力を保持するべきである。したがって、配列番号3の断片は、SIRPαのCD47結合ドメインを含むそれらの断片から選択することができる。これらの断片は、一般的には、SIRPαの膜貫通および細胞内ドメインを含まない。非制限的で例示的な実施形態において、SIRPα由来のポリペプチドは、本質的に配列番号3または配列番号2で構成される。SIRPα由来のポリペプチドは、さらに、配列番号3の変異体ポリペプチドを含むが、これに制限されず、ここに、アミノ酸残基は、アミノ酸の欠失、挿入または置換により変異されたが、ネイティブの配列の変更が、分子の生物学的活性に、特にCD47に対する結合に実質的に影響しない限り、配列番号3に対して少なくとも60、70、80、90または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態において、これは、配列番号2と比較して、SIRPα由来のポリペプチドにおけるわずか1、2、3、4または5のアミノ酸が、アミノ酸の欠失、挿入または置換によって変異されているにすぎない変異アミノ酸配列を含む。変異アミノ酸配列の例としては、単一ヌクレオチド多型(表2参照)に由来する配列が挙げられる。
【0034】
本明細書において、2つの配列間の%同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れて、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性 = 同一の位置の#/合計の同一の位置の# × 100)。配列の比較、および2つの配列間の%同一性の決定は、以下に述べるように、数学的なアルゴリズムを使用して実行することができる。
【0035】
2つのアミノ酸配列の間の%同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれ、PAM120重み残基テーブル、12のギャップ長のペナルティー、および4のギャップペナルティーを使用するE.MeyersおよびW.Miller(Comput.Appl.Biosci.,4:11−17,1988)のアルゴリズムを使用して決定することができる。また、2つのアミノ酸配列の間の%同一性は、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムに組み込まれ(http://www.gcg.comで利用可能)、ブロッサム62マトリックス、またはPAM250マトリックスのいずれか、16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み、および1、2、3、4、5、または6の長さ重みを使用するNeedlemanおよびWunsch(J.Mol,Biol.48:444−453,1970)のアルゴリズムを使用して決定することができる。
【0036】
特定の実施態様において、SIRPα由来のポリペプチドは、保存的なアミノ酸置換を含む配列番号2または配列番号3への変更を含む。
【0037】
保存的なアミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されてきた。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β−分岐側鎖を有するアミノ酸(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、SIRPα由来ポリペプチドのCD47結合領域内の1または複数のアミノ酸残基は、同一の側鎖ファミリーから他のアミノ酸残基に置換することができ、新たなポリペプチド変異体は、本明細書に記載した結合または機能アッセイを使用して、保持された機能について試験することができる。
【0038】
いくつかの実施態様において、SIRPα由来のポリペプチドは、免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイで測定して、ヒトSIRPαの細胞外ドメインを含む配列番号3のポリペプチドと少なくとも同程度にサイトカイン分泌を阻害する能力を保持するものの間から選択される。
【0039】
いくつかの態様において、SIRPα由来のポリペプチドは、混合リンパ球反応アッセイで測定してT細胞の増殖を阻害する能力を保持するものの間から選択される。
【0040】
別の実施形態において、SIRPα由来のポリペプチドは、非ヒト霊長類CD47とクロス反応するものの中から選ばれる。
【0041】
融合ポリペプチド
1つの側面において、本発明の可溶性ポリペプチドは、SIRPα由来のポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明の可溶性ポリペプチドは、SIRPα由来のポリペプチド、および第2の異種アミノ酸配列、たとえば、SIRPα由来のポリペプチドのN−および/またはC−末端においてSIRPα由来のポリペプチドに共有結合し、必要に応じて、さらに、リンカーを含む、SIRPα以外の1または複数のタンパク質の部分を含む融合ポリペプチドである。
【0043】
非SIRPα由来のタンパク質は、好ましくは、他の異種タンパク質と融合したときに、血液中の得られる融合タンパク質の半減期を増加させることができる可溶性単鎖ポリペプチドである。これに代えて、またはそれに加えて、非SIRPα由来のタンパク質は、融合ポリペプチドの多量体化のためのドメインを含む。
【0044】
非SIRPα由来のタンパク質は、たとえば、免疫グロブリンは、血清アルブミンおよびそれらの断片であることができる。非SIRPα由来のタンパク質は、また、対象において投与した場合に分子の半減期を増大させるために、血清アルブミンタンパク質に結合することができるポリペプチドであることができる。このようなアプローチは、たとえば、NygrenらによるEP0486525に説明されている。
【0045】
1つの特定の実施態様において、非SIRPα由来のタンパク質は、Fcドメインである。ヒトにおける増大したインビボでの半減期を有する可溶性コンストラクトを作製するためのFc部分の使用は、当技術分野でよく知られており、たとえば、Caponら(US5,428,130)に記載されている。
【0046】
本明細書において、用語「Fcドメイン」は、免疫グロブリンの定常領域を意味する。Fcドメインは、少なくとも、CH2およびCH3ドメイン、必要に応じて、重鎖CH1ドメインおよびCH2の間に位置するヒンジ領域を含む。Fc断片は、たとえば、免疫グロブリンのパパイン分解などにより得ることができた。本明細書において、用語Fcドメインは、さらに、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、または挿入が導入されたFc変異体を含む。
【0047】
1つの実施形態において、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が、改変されるように、たとえば、増大または減少するように、CH1のヒンジ領域は、修飾される。このアプローチは、Bodmerらの米国特許第5677425に、さらに記載されている。たとえば、軽鎖および重鎖の集合を促進するように、または、融合ポリペプチドの安定性を増大させ、または減少させるように、CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、改変される。
【0048】
別の実施形態において、Fc領域は、その生物学的半減期を増大させるために修飾される。様々なアプローチが可能である。Wardによる米国特許第6277375に記載されるように、たとえば、1または複数の次の変異が導入されうる:T252L、T254S、T256F。
【0049】
他の実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基に置換し、Fc部分のエフェクター機能を改変することによって、Fc領域は、改変される。Fc部分が、エフェクターリガンドへの親和性を改変するように、たとえば、1または複数のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基に置換されることができる。親和性が改変されるエフェクターリガンドは、たとえば、Fcレセプター、または補体のC1コンポーネントであることができる。このアプローチは、いずれもWinterらによる米国特許第5624821および5648260に詳細に記載されている。
【0050】
別の実施形態において、得られたFc部分が、改変したC1q結合、および/または、減少したまたは消失した補体依存性細胞傷害(CDC)を有しているように、アミノ酸残基から選択された1または複数のアミノ酸は、異なるアミノ酸残基に置換することができる。このアプローチは、Idusogieらの米国特許第6194551に詳細に記載されている。
【0051】
別の実施形態において、1または複数のアミノ酸残基は、補体を固定するFc領域の能力を改変するように改変される。このアプローチは、BodmerらによるPCT公開WO94/29351にさらに記載されている。
【0052】
さらに別の態様において、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する融合ポリペプチドの能力を増大させるために、および/またはFcγレセプターに対するFc領域の親和性を増大させるまたは減少させるために、Fc領域は、1または複数のアミノ酸の修飾によって修飾される。このアプローチは、PrestaによるPCT公報WO00/42072に詳しく記載されている。また、FcγRl、FcγRII、FcγRIII、およびFcRnに対するヒトIgG1における結合部位は、マップされており、改善した結合を有する変異体が、記載されている(Shields,R.L.et al.,2001,J.Biol.Chem.276:6591−6604を参照)。
【0053】
1つの実施形態において、Fcドメインは、ヒト起源であり、IgGまたはIgAのような免疫グロブリンのクラスのいずれかからのものであってよく、また、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4などの任意のサブタイプからのものであってよい。他の実施形態において、Fcドメインは、非ヒト動物からのものであり、たとえば、マウス、ラット、ウサギ、ラクダ、サメ、非ヒト霊長類、またはハムスターなどからのものであるが、これらに限定されない。
【0054】
特定の実施態様において、IgG1アイソタイプのFcドメインが使用される。いくつかの特定の実施形態において、IgG1 Fc断片の突然変異体が使用され、たとえば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する、および/またはFcγレセプターに結合する融合ポリペプチドの能力を減少させるまたは除去するサイレントIgG1 Fcが使用される。IgG1のアイソタイプのサイレント変異の例は、いわゆるLALA変異であり、ここで、HezarehらによるJ.Virol,2001,Dec;75(24):12161−8に説明されるように、アミノ酸位置234および235においてロイシン残基は、アラニン残基に置換される。特定の実施形態において、Fcドメインは、Fcドメインの位置297の残基におけるグリコシル化を妨げる変異である。たとえば、Fcドメインの位置297におけるアスパラギン残基のアミノ酸置換が挙げられる。このようなアミノ酸置換の例は、グリシンまたはアラニンによるN297の交換である。
【0055】
1つの実施形態において、Fcドメインは、二量体化ドメインを含み、ここで、二量体化ドメインは、好ましくは、このようなFcドメインを含む2つの融合ポリペプチドの間の共有ジスルフィド架橋を作ることができるシステインを介する。
【0056】
SIRPα由来のポリペプチドは、非SIRPα由来のタンパク質にインフレームで直接に、またはポリペプチドリンカ(スペーサー)を介して融合させることができる。このようなスペーサーは、単一のアミノ酸(たとえば、グリシン残基)、または500から100の間のアミノ酸、たとえば、50から20の間のアミノ酸であってもよい。リンカーは、CD47に対する結合部位を形成するための適切な空間的な配置をとるために、SIRPα由来のドメインを許容するべきである。適当なポリペプチドリンカーは、柔軟な配置を採用したものの間で選択してもよい。このようなリンカーの例は、グリシンおよびセリン残基を含むリンカーであり、たとえば、(Gly4Ser)n ここで n= 1−12 であるが、これらに限定されない。
【0057】
グリコシル化修飾
さらに別の態様において、本発明の可溶性ポリペプチドのグリコシル化パターンは、CHO、またはヒト細胞株において得られるもののような典型的な哺乳類のグリコシル化パターンと比較して、改変することができる。たとえば、非グリコシル化ポリペプチドは、グリコシル化を欠くように設計された宿主細胞または哺乳動物細胞として、原核細胞株を使用することによって、行うことができる。糖質の修飾は、たとえば、可溶性ポリペプチド内の1または複数のグリコシル化部位を改変することによって達成することもできる。
【0058】
これに加えて、またはこれに代えて、グリコシル化ポリペプチドは、グリコシル化の改変されたタイプを持つように作製することができる。このような糖質の変更は、たとえば、改変されたグリコシル化機構を有する、すなわち、可溶性ポリペプチドのグリコシル化パターンが、対応する野生型細胞において観察されるグリコシル化パターンと比較して改変される宿主細胞において、可溶性ポリペプチドを発現することによって達成することができる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当技術分野で説明されてきており、本発明の組換え可溶性ポリペプチドを発現させることにより、改変されたグリコシル化を有するこのような可溶性ポリペプチドを産生する宿主細胞として使用されうる。たとえば、HangらによるEP1176195は、機能的に破壊したFUT8遺伝子、フコース転移酵素をコードする遺伝子を有する細胞株を説明し、このような細胞株において発現された糖タンパク質は、低フコシル化を示す。PrestaによるPCT公開WO03/035835は、Asn(297)が連結された糖質にフコースを添付する能力が低下し、また、その結果、宿主細胞内で発現した糖タンパク質の低フコシル化が起こっている変異体CHO細胞株、Lecl3細胞について説明している(Shields,R.L.et al.,2002,J.Biol.Chem.277:26733−26740も参照のこと)。また、本発明の可溶性ポリペプチドは、哺乳動物様グリコシル化パターンのために設計された、たとえば、ピキアパトリス(Pichia pastoris)などの酵母において、または、たとえば、トリコデルマリーゼイ(Trichoderma reesei)などの糸状菌において、製造することができる(たとえば、EP1297172B1参照)。これらの糖設計された宿主細胞の利点は、とりわけ、均質なグリコシル化パターン、および/または高収量を有するポリペプチド組成物を提供することである。
【0059】
可溶性ポリペプチドのPEG化および他の抱合体
本発明によって企図されている別の実施形態の本明細書における可溶性ポリペプチドは、PEG化されている。たとえば、本質的にSIRPα由来ポリペプチドからなる本発明の可溶性ポリペプチドは、PEG化されうる。PEG化は、PEG化のない同一の生物学的製剤と比較して、得られた生物学的製剤の生物学的(たとえば、血清の)半減期を増大させる、よく知られている技術である。ポリペプチドをPEG化するには、通常、1または複数のPEG基がポリペプチドに付着する条件下において、ポリペプチドが、PEGの反応性エステル、またはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)との反応に供される。PEG化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応、またはアルキル化反応により実施することができる。本明細書において、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用された任意のPEGの形式、たとえば、モノ(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドを包含することが意図されている。タンパク質をPEG化する方法は、当技術分野で知られており、本発明の可溶性ポリペプチドに適用することができる。たとえば、NishimuraらによるEP0154316、およびIshikawaらによるEP0401384を参照されたい。
【0060】
代わりの抱合体または高分子担体は、特に、得られた抱合体の薬物動態的特性を向上させるために使用することができる。高分子担体は、少なくとも1つの天然または合成の分岐、直鎖状または樹枝状ポリマーを含んでもよい。高分子担体は、好ましくは、水や体液に可溶であり、好ましくは薬学的に許容されるポリマーである。水溶性ポリマー部分は、たとえば、PEG、PEGホモポリマー、mPEG、ポリプロピレングリコールホモポリマー、プロピレングリコールとエチレングリコールの共重合体を含む、ポリアルキレングリコール、およびその誘導体、ここに、前記ホモポリマーおよび共重合体は、非置換であり、または、たとえば、アシル基に1の末端において置換されている;ポリグリセリンまたはポリシアル酸;メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む糖質、多糖類、セルロースおよびセルロース誘導体;澱粉(たとえば、ヒドロキシアルキル澱粉(HAS)、特にヒドロキシエチル澱粉(HES)、およびデキストリン、並びにこれらの誘導体);デキストラン硫酸、架橋性デキストリン、およびカルボキシメチルデキストリンなどのデキストラン、およびデキストラン誘導体;キトサン(直鎖多糖類)、ヘパリンおよびヘパリンの断片;ポリビニルアルコール、ポリビニルエチルエーテル;ポリビニルピロリドン;α,β−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド];およびポリオキシ−エチル化ポリオールを含むが、これらに限定されない。
【0061】
可溶性ポリペプチドの薬剤としての使用
本発明の可溶性ポリペプチドは、動物モデルにおいて、アレルギー性喘息、炎症性腸疾患などの炎症性障害から保護することが示された。したがって、本発明の可溶性ポリペプチドは、特に、炎症性および/または自己免疫応答、特に対象におけるSIRPα+細胞によって媒介される応答を(統計的または生物学的に有意な態様で)低下し、または抑制する薬剤として使用することができる。
【0062】
本発明の可溶性ポリペプチドをコードする核酸分子
本発明の別の側面は、本発明の可溶性ポリペプチド、または少なくともSIRPα由来のポリペプチド(融合ポリペプチドに関連する実施形態を含みこれに限定されない)をコードする核酸分子に関連する。本発明の可溶性ポリペプチドをコードする塩基配列の例は、配列番号26または27を含む。
【0063】
核酸は、全細胞において、細胞溶解物において、存在してもよく、または、部分的に精製され、または実質的に純粋な形である核酸であってもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、塩化セシウム結合、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野でよく知られている他のものなどの標準的な技術により、他の細胞成分または他の汚染物質、たとえば、他の細胞の核酸やタンパク質を精製したとき、「単離された」または「実質的に純粋にされた」ものである。F.Ausubelら編集の1987年、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New Yorkを参照されたい。本発明の核酸は、たとえば、DNAまたはRNAであることができ、または、イントロン配列を含まなくてもよい。ある実施態様において、核酸は、cDNA分子である。核酸は、ファージディスプレイベクターなどのベクターにおいて、または組換えプラスミドベクターにおいて存在することができる。
【0064】
いったん、本発明の可溶性ポリペプチドをコードするDNA断片、たとえば、上で説明したようなSIRPα由来ポリペプチドを含む融合ポリペプチドが得られれば、これらのDNA断片は、さらに標準的な組換えDNA技術によって操作して、たとえば、発現系における適切な分泌のための任意のシグナル配列、さらなる精製工程のための任意の精製タグと切断タグを含めることができる。これらの操作において、DNA断片は、別のDNA分子に、または精製/分泌タグもしくは柔軟性のあるリンカーなどの別のタンパク質をコードする断片に、作動可能なように連結される。この文脈で使用される用語「作動可能なように連結される」は、2つのDNA断片が、たとえば、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列が、インフレームのままであるように、またはタンパク質が、所望のプロモーターの制御下に発現されるように、機能的な態様で結合されることを意味するものとする。
【0065】
SIRPα由来ポリペプチド、または可溶性ポリペプチドを産生するトランスフェクトーマの生成
本発明の可溶性ポリペプチドは、当技術分野でよく知られているように、たとえば、組換えDNA技術、および遺伝子導入法を組み合わせて使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて製造することができる。
【0066】
たとえば、本発明の可溶性ポリペプチド、またはSIRPα由来ポリペプチドなどのその中間体を発現するため、対応するポリペプチドをコードするDNAは、標準的な分子生物学的技術(たとえば、関心のあるポリペプチドを発現するハイブリドーマを用いたPCR増幅、またはcDNAクローニング)によって得ることができ、該DNAは、対応する遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能なように連結されるように、発現ベクターに挿入されることができる。この文脈において、用語「作動可能なように連結されている」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が遺伝子の転写および翻訳を制御する目的の機能を果たすように、遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味することが意図されている。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞との互換性があるように選択される。可溶性ポリペプチドまたは中間体をコードする遺伝子は、標準的な方法(たとえば、遺伝子断片における相補的制限酵素部位とベクターのライゲーション、または、制限部位が存在しない場合には、平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。これに加えて、またはこれに代えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞からのポリペプチド鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。遺伝子は、シグナルペプチドがポリペプチド鎖のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされうる。シグナルペプチドは、SIRPαシグナルペプチド、または異種シグナルペプチド(すなわち、SIRPα配列に天然には関連しないシグナルペプチド)であることができる。
【0067】
ポリペプチドをコードする配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。用語「調節配列」は、ポリペプチド鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、および他の発現制御要素(たとえば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図されている。このような調節配列は、たとえば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA 1990)において記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要因に依存しうることは、当業者に理解されるであろう。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列には、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)(CMV)、サルウイルス40(Simian Virus 40)(SV40)、アデノウイルス(adenovirus)(たとえば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ(polyoma)など由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を方向付けるウイルス要素が含まれる。また、非ウイルス性調節配列は、ユビキチンプロモーターまたはP−グロビンプロモーターなどを用いることができる。さらに、調節要素は、SV40初期プロモーター、およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長末端反復配列を含むSRaプロモーターシステムなどの異なる出所からの配列で構成された(Takebe,Y.et al.,1988,Mol.Cell.Biol.8:466−472)。
【0068】
これに加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(たとえば、複製の起源)および選択マーカー遺伝子などの付加配列を有することができる。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(たとえば、いずれもAxelらによる米国特許第4,399,216、4,634,665、および 5,179,017を参照)。たとえば、通常、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞にG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。選択マーカー遺伝子は、(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞のために使用される)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、および(G418選択のための)neo遺伝子を含む。
【0069】
ポリペプチドの発現のため、可溶性ポリペプチドまたはSIRPα由来のポリペプチドなどの中間体をコードする発現ベクター(複数も可)は、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、原核生物または真核生物宿主細胞への外来性DNAの導入に一般的に使用される広範囲にわたる技術、たとえば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図されている。原核生物または真核生物宿主細胞のいずれかにおいて本発明の可溶性ポリペプチドを発現することは、理論的に可能である。真核生物、特に、哺乳動物宿主細胞における糖タンパク質の発現は、議論される。このような真核細胞、特に哺乳動物細胞は、原核細胞よりも、適切に折り畳まれ生物学的に活性な本発明の可溶性ポリペプチドのような糖タンパク質を会合させ、分泌しやすいためである。
【0070】
可溶性ポリペプチド、および本発明のSIRPα由来ポリペプチドなどの中間体を発現するための哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター(Chinese Hamster)卵巣(CHO細胞)(たとえば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp,1982,Mol.Biol.159:601−621などに記載されたDH FR選択マーカーとともに用い、Urlaub and Chasin,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216−4220に記載されたdhfr−CHO細胞、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、およびSP2細胞を含む)、またはヒト細胞株(PER−C6細胞株、Crucellを含む)を含む。特に、NSO骨髄腫細胞とともに使用するための別の発現システムは、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に示されるGS遺伝子発現システムである。ポリペプチドをコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞に導入される場合、可溶性ポリペプチド、またはSIRPα由来のポリペプチドなどの中間体は、宿主細胞における組換えポリペプチドの発現、または宿主細胞を培養する培養培地中への組換えポリペプチドの分泌を可能にするために十分な期間、宿主細胞を培養することにより製造される。ポリペプチドは、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収することができる。
【0071】
多価タンパク質
別の局面において、本発明は、CD47に結合する2つの同一のまたは異なる本発明の可溶性ポリペプチドを少なくとも含む多価タンパク質を提供する。1つの実施形態において、多価タンパク質は、少なくとも2つ、3つまたは4つの本発明の可溶性ポリペプチドを含む。可溶性CD47結合ポリペプチドは、タンパク質融合または共有もしくは非共有結合を介して互いに連結することができる。本発明の多価タンパク質は、当技術分野で知られている方法を使用して、構成結合特異性を抱合することにより調製することができる。たとえば、多価タンパク質のそれぞれの結合特異性は、別々に生成され、互いに結合されることができる。
【0072】
様々なカップリングまたは架橋剤が、共有結合のために使用することができる。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、およびスルフォスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボン酸(sulfo−SMCC)(たとえば、Karpovsky et al.,1984,J.Exp.Med.160:1686;Liu,MA et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:8648などを参照されたい)を含む。他の方法には、Paulus,1985,Behring Ins.Mitt.No.78,118−132;Brennan et al.,1985,Science,229:81−83、およびGlennie et al.,1987,J.Immunol.139:2367−2375に記載されているものが含まれる。共有結合は、2つのシステインの間ジスルフィド架橋、たとえば、Fcドメインのシステインからのジスルフィド架橋によって得ることができる。
【0073】
特定の実施形態において、SIRPα由来のポリペプチドに融合したFcドメインのヒンジ領域は、奇数の、たとえば1のスルフヒドリル残基を含むように、結合前に修飾される。あるいは、両方の結合特異性は、同じベクターにおいてコードし、同じ宿主細胞において発現し会合することができる。
【0074】
医薬組成物
別の側面において、本発明は、薬学的に許容される担体と一緒に処方された本発明の可溶性ポリペプチドの1つまたは組み合わせを含む組成物、たとえば医薬組成物を提供する。
【0075】
本発明の可溶性ポリペプチドを含む医薬製剤は、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th edition(2000))と、所望の純度を有するポリペプチドを、水溶液、凍結乾燥、または他の乾燥させた製剤の形態において、混合することにより、保存のために調製することができる。したがって、本発明はさらに、少なくとも本発明の可溶性ポリペプチドを含む凍結乾燥組成物に関する。
【0076】
また、併用療法において、すなわち、他の薬剤と組み合わせて、本発明の医薬組成物を投与することもできる。たとえば、併用療法は、少なくとも1つの他の抗炎症剤または別の化学療法剤と組み合わせて、本発明の可溶性ポリペプチドを含むことができる。併用療法で使用することができる治療剤の例は、以下の本発明の可溶性ポリペプチドの使用のセクションで、より詳細に説明されている。
【0077】
本明細書において、「薬学的に許容される担体」は、任意およびすべての溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、ならびに生理学的に互換性がある同等物を含む。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、経口、脊髄、または表皮の投与(すなわち、注射または注入による投与)に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物は、酸、および該化合物を不活性化する可能性のある他の自然条件の作用から該化合物を保護するための材料で被覆することができる。
【0078】
本発明の医薬化合物は、1または複数の薬学的に許容される塩を含むことができる。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ、任意の不要な毒物学的影響を与えない塩を意味する(たとえば、Berge,S.M.,et al.,1977,J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。このような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素、リンなどのような無毒性の無機酸に由来するもの、および脂肪族モノ−およびジ−カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などのような無毒性の有機酸に由来するものを含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのようなアルカリ土類金属に由来するもの、およびN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカミン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどのような無毒性の有機アミンに由来するものを含む。
【0079】
本発明の医薬組成物は、また、薬学的に許容される抗酸化物質を含むことができる。薬学的に許容される抗酸化物質の例は、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化物質;パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性抗酸化物質;クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤などを含む。
【0080】
本発明の医薬組成物に用いることができる適切な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブオイルなどの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどの被覆材料の使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0081】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含むことができる。微生物の存在の防止は、上記の滅菌の手順、およびたとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の様々な抗菌および抗真菌剤を含めることの両方によって、確実にすることができる。また、組成物に、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい。また、注射可能な医薬品形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含めることによってもたらされうる。
【0082】
薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射可能溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体と薬剤の使用は、当該技術分野で知られている。任意の従来の媒体または薬剤に、活性化合物との適合性がない場合を除き、本発明の医薬組成物においてそれらを使用することが意図されている。補助的な活性化合物も、また、組成物に組み込むことができる。
【0083】
治療組成物は、通常、製造および保存の条件下で滅菌であり、安定でなければならない。組成物は、高薬物濃度に適した溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、またはその他の秩序構造として処方することができる。担体は、たとえば、水、エタノール、およびポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどの被覆剤の使用により、分散媒の場合には所望の粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。多くの場合、組成物には、たとえば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることができる。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物に、モノステアリン酸塩およびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらされる。
【0084】
滅菌注射溶液は、適当な溶媒中で、必要な量、活性化合物を、上記に列挙した成分の1または組み合わせとともに、組み込み、続いて、必要に応じて、滅菌精密ろ過を行うことによって、調製することができる。一般的に、分散媒は、基本的な分散媒体、および上記の列挙されたものから必要な他の成分が含まれている滅菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことにより、調製される。滅菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合には、調製の方法は、以前にフィルター滅菌されたそれの溶液から、活性成分、および任意の追加の所望の成分の粉末を得る、真空乾燥、およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0085】
単一の投薬形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される対象、および投与の特定の様式に依存して変化する。単一の投薬形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的には、治療的効果を生じさせる組成物のその量であろう。一般的には、100%のうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、活性成分の約0.01%〜約99%、活性成分の約0.1%〜約70%、または約1%〜約30%の範囲である。
【0086】
投与計画は、最適な所望の応答(たとえば、治療応答)を提供するために調整される。たとえば、単一のボーラスが、投与されることができ、数回に分けられた投与量が、時間をかけて投与されることができ、または投与量が、治療状況の緊急性によって指示されるように、比例的に低減または増大させられることができる。特に投与の容易化および投薬量の均一性のために、投与単位形態で非経口組成物を処方することが有利である。本明細書において、投与単位形態は、処置される対象への単一投薬量として適した物理的に隔離された単位を意味し、各単位は、必要な薬学的な担体と組み合わせて所望の治療的効果を生むために計算された活性化合物のあらかじめ決められた量を含む。本発明の投薬量単位形態のための仕様は、活性化合物の固有の特性、達成されるべき特定の治療効果、および個人における感受性を処置するためのこのような活性化合物を配合する技術に本来的に備わっている限界によって、決定され、および直接に依存する。
【0087】
本発明の可溶性ポリペプチドの投与のためには、投薬量は、投与を受ける者の体重の約0.0001〜100mg/kgの範囲であり、より通常には、0.01〜5mg/kgの範囲である。たとえば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、もしくは10mg/kg体重であることができ、または1〜10mg/kg体重の範囲であることができる。典型的な治療計画は、1週間に1回の、2週間に1回の、3週間に1回の、4週間に1回の、1ヶ月に1回の、3ヶ月に1回の、または3〜6ヶ月に1回の投与を伴う。本発明の可溶性ポリペプチドの投与計画は、1mg/kg体重または3mg/kg体重の静脈内投与を行い、次の投与スケジュールの1つを用いてポリペプチドを与えることを含む:4週間ごとに6投与量、次に、3ヶ月ごと;3週間ごと;3mg/kg体重を一度、続いて1mg/kg体重を3週間ごと。
【0088】
可溶性ポリペプチドは、通常、複数回投与される。単一投薬量の間の間隔は、たとえば、毎週、毎月、3ヶ月ごと、または年ごとであることができる。間隔は、患者における可溶性ポリペプチドの血中濃度を測定することによって示されるように、不規則であることができる。いくつかの方法において、投与量は、約1〜1000μg/ml、いくつかの方法において約25〜300μg/mlの血漿ポリペプチド濃度を達成するために調整される。
【0089】
また、可溶性ポリペプチドは、徐放性製剤として投与することができ、その場合、必要な投与の頻度は、より低い。投薬量および頻度は、患者における可溶性ポリペプチドの半減期によって異なる。投薬量と頻度は、処置が、予防的であるか、治療的であるかによって異なりうる。予防的な適用においては、比較的低用量が、長期間にわたって、比較的まれな間隔で投与される。一部の患者は、自分たちの人生の残りのための処置を受け続ける。治療的適用においては、疾患の進行が低減されるまで、もしくは終了するまで、または、患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が、必要である。その後、患者は予防的投与計画を行うことができる。
【0090】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量は、患者に毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与様式について所望の治療応答を達成する効果的な活性成分の量が得られるように変化させることができる。選択された投薬量レベルは、採用される本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、採用される特定の化合物の排泄率、処置の期間、採用される特定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物、および/または材料、処置を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態、および以前の病歴、ならびに医療分野でよく知られている同様の要因を含む薬物動態的な様々な要因に依存する。
【0091】
本発明の可溶性ポリペプチドの「治療的に有効な投薬量」の結果、疾患の症状の重症度が低下し、疾患の無症状期間頻度および継続期間が上昇し、あるいは疾患の苦痛による障害または無力を予防することができる。
【0092】
本発明の組成物は、当技術分野で公知の種々の1または複数の方法を使用して、1または複数の投与経路によって投与することができる。当業者によって理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて異なるであろう。
【0093】
本発明の可溶性ポリペプチドを投与するための経路は、たとえば、注射または注入による、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、脊髄、または他の非経口投与経路を含む。本明細書において、語句「非経口投与」は、通常、注射による、経腸および局所投与以外の投与の様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮内、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および幹内の注射および注入を含むが、これらに限定されない。
【0094】
また、本発明の可溶性ポリペプチドは、局所、表皮、または粘膜の投与経路などの経口経路によって、たとえば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下または局所的に、投与することができる。
【0095】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む放出制御製剤など、迅速な放出に反する化合物を保護するであろう担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など、生分解性、生体適合性ポリマーが、使用されうる。このような製剤の調製のための多くの方法が、特許を受けており、または当業者に広く知られている。たとえば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York 1978を参照されたい。
【0096】
治療組成物は、当該技術分野で知られている医療機器を用いて投与することができる。たとえば、1つの実施形態において、本発明の治療組成物は、米国特許第5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824または4,596,556に示される装置などの無針皮下注射装置を用いて投与することができる。本発明において有用な、よく知られているインプラントおよびモジュールの例は、制御された速度で薬物を分配するための埋め込み型マイクロ注入ポンプを示す米国特許第4487603;皮膚を通して薬剤を投与するための治療装置を示す米国特許第4486194;正確な注入速度で薬物を輸送するための薬剤注入ポンプを示す米国特許第4447233;連続薬物輸送のための可変流量埋め込み型注入装置を示す米国特許第4447224;多チャンバーコンパートメントを有する浸透薬物輸送システムを示す米国特許第4439196;、および浸透薬物輸送システムを示す米国特許第4475196を含む。多くの他のこのようなインプラント、輸送システム、およびモジュールが当業者に知られている。
【0097】
特定の実施態様において、本発明の可溶性ポリペプチドは、生体内で適切な分布を確実にするように処方することができる。たとえば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性の化合物を除外する。本発明の治療化合物が、(必要に応じて)BBBを越えることを確実にするため、それらは、たとえば、リポソーム中に処方されることができる。リポソームを製造する方法については、たとえば、米国特許第4522811、5374548、および5399331を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または臓器に選択的に輸送されそれゆえ標的薬物輸送を増進させる1または複数の部分を含んでもよい(たとえば、V.V.Ranade,1989, J.Cline Pharmacol.29:685を参照されたい)。典型的な標的部分は、葉酸またはビオチン(たとえば、Lowらによる米国特許5,416,016を参照されたい);マンノシド(Umezawa et al.,1988,Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloeman et al.,1995,FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.,1995,Antimicrob.Agents Chernother.39:180);サーファクタントプロテインA受容体(Briscoe et al.,1995,Am.J.Physiol.1233:134);P120(Schreier et al.,1994,J.Biol.Chem.269:9090)を含む。K.Keinanen;M.L.Laukkanen,1994,FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler,1994,Imrnunomethods,4:273も参照されたい。
【0098】
本発明の使用および方法
本発明の可溶性ポリペプチドは、インビトロおよびインビボの診断および治療の有用性を持つ。たとえば、これらの分子は、様々な障害を治療、予防、または診断するために、培養下の細胞に、たとえば、インビトロ、もしくはインビボで、あるいは、対象における細胞に、たとえば、インビボで、投与することができる。
【0099】
本明細書において、用語「対象」は、ヒト、および非ヒト動物を含むことが意図されている。非ヒト動物は、たとえば、非ヒト霊長類、ヒツジ、犬、猫、牛、馬、鶏、両生類、爬虫類などの哺乳類および非哺乳類などのすべての脊椎動物を含む。
【0100】
該方法は、たとえば、アレルギー性喘息または潰瘍性大腸炎など、SIRPα+細胞によって媒介される自己免疫および炎症性障害の治療、予防、または診断に、特に適している。これらは、炎症病状、アレルギーおよびアレルギー性病状、自己免疫疾患、虚血性障害、重症感染症、ならびに細胞、組織または臓器の異種移植(すなわち、異なる種から、たとえば、非ヒト種からヒトへの移植)を含む細胞、臓器または組織の移植拒絶反応を含む。
【0101】
自己免疫疾患の例は、関節炎(たとえば、関節リウマチ、関節炎慢性進行性関節炎および変形性関節炎)、および骨量減少を伴う炎症病状とリウマチ性疾患を含むリウマチ性疾患、炎症性痛覚、強直性脊椎炎を含む脊椎関節症、ライター症候群、反応性関節炎、乾癬性関節炎、および腸関連関節炎、過敏症(気道過敏症と皮膚過敏症の両方を含む)、ならびにアレルギーを含み、これらに限定されない。自己免疫疾患は、(たとえば、溶血性貧血、再生不良性貧血、純粋な赤血球貧血、または特発性血小板減少症を含む)自己免疫血液学的障害、全身性エリテマトーデス、炎症性筋障害、多発性軟骨炎、皮膚硬化症、ウェゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブン−ジョンソン症候群、特発性スプルー、内分泌眼症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿(糖尿病I型)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾性角結膜炎および春季カタル、間質性肺線維症、(たとえば、特発性ネフローゼ症候群、または微小変化型腎症を含むネフローゼ症候群がある、またはない)乾癬性関節炎および糸球体腎炎、腫瘍、多発性硬化症、皮膚および角膜の炎症性疾患、筋炎、骨のインプラントのゆるみ、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、および脂質異常症などの代謝性障害を含む。
【0102】
本発明の可溶性ポリペプチドは、喘息、気管支炎、じん肺、肺気腫、およびその他の気道の閉塞性または炎症性疾患の治療、予防、または改善にも有用である。
【0103】
本発明の可溶性ポリペプチドは、また、IgE媒介性障害の処置にも有用である。IgE媒介性障害は、多くの一般的な自然発生吸入および摂取抗原に対して免疫学的に応答する遺伝的性向、およびIgE抗体の継続的な産生によって特徴づけられるアトピー性障害を含む。特定のアトピー性障害は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性胃腸疾患を含む。
【0104】
しかし、IgEレベル上昇に関連する疾患は、遺伝的な(アトピー)病因を伴うものに限定されない。IgE媒介性であり、本発明の製剤で処置されるようであり、IgEレベル上昇に関連するその他の障害は、過敏症(たとえば、アナフィラキシー過敏症)、湿疹、じんま疹、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、寄生虫症、高IgE症候群、血管拡張性失調症、ウィスコット−アルドリッチ症候群、胸腺リンパ形成不全症、高IgE症、および移植片対宿主反応を含む。
【0105】
本発明の可溶性ポリペプチドは、単独の活性成分として、または他の薬物、たとえば免疫抑制、免疫調整剤、もしくは他の抗炎症剤と併用して、たとえば、アジュバントとして、または組み合わせて、たとえば、上記疾患の治療または予防のために、投与することができる。たとえば、本発明の可溶性ポリペプチドは、DMARD、たとえば、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、メトトレキサート、D−ペニシラミン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミノサイクリン、レフルノミド、糖性グルココルチコイド群;カルシニューリン阻害剤、たとえば、シクロスポリンAまたはFK 506;リンパ球再循環のモジュレーター、たとえば、FTY720およびFTY720類似物;mTOR阻害剤、たとえば、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573またはTAFA−93;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、たとえば、ABT−281、ASM981など;コルチコステロイド;シクロフォスファミド;アザチオプリン;メトトレキサート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリン、またはその免疫抑制ホモログ、アナログもしくは誘導体;免疫抑制モノクローナル抗体、たとえば、白血球受容体、たとえば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86またはそれらのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調整化合物、たとえば、CTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部を有する組換え結合分子、たとえば、非CTLA4タンパク質配列に結合したCTLA4またはその変異体の少なくとも細胞外部分、たとえば、CTLA4Ig(たとえば、ATCC 68629と指定されるもの)またはその変異体、たとえばLEA29Y;接着分子阻害剤、たとえば、LFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニスト、またはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤、たとえば、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル;抗TNF剤、たとえば、TNFに対するモノクローナル抗体、たとえば、インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870、またはTNF−RIまたはTNF−RIIに対する受容体コンストラクト、たとえば、エタネルセプト、PEG−TNF−RI;炎症性サイトカインのブロッカー、IL−1ブロッカー、たとえば、アナキンラまたはIL−1トラップ、AAL160、ACZ 885、IL−6ブロッカー;ケモカインブロッカー、たとえば、プロテアーゼの阻害剤または活性化剤、たとえば、メタロプロテアーゼ、抗IL15抗体、抗IL6抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗IL17抗体、アスピリン、または抗感染剤などの非ステロイド性抗炎症薬(一覧は、上記の薬剤に限定されない)との組み合わせで使用することができる。
【0106】
本発明の可溶性ポリペプチドは、また、特に、上記で言及したものなどの閉塞性または炎症性気道疾患の処置における抗炎症または気管支拡張薬物物質と併用して使用するための共治療剤として、たとえば、そのような薬物の治療活性の増強剤として、またはそのような薬物の必要とする投与量、または起こりうる副作用を減少させる手段として、有用である。本発明の薬剤は、固定医薬組成物において抗炎症や気管支拡張薬物と混合されてもよく、または抗炎症または気管支拡張薬物と別々に、その前に、同時に、またはその後に投与されてもよい。このような抗炎症薬物は、ステロイド、特に、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルチカゾンまたはモメタゾンなどのグルココルチコステロイド、およびカベルゴリン、ブロモクリプチンまたはロピニロールなどのドーパミン受容体アゴニストを含む。このような気管支拡張薬物は、抗コリンまたは抗ムスカリン剤、特に、臭化イプラトロピウム、オキシトロピウム、および臭化チオトロピウムを含む。
【0107】
本発明の薬剤とステロイドの組み合わせは、たとえば、COPD、特に、喘息の治療において、使用されてもよい。本発明の薬剤、および抗コリン、もしくは抗ムスカリン剤、またはドーパミン受容体アゴニストの組み合わせは、たとえば、喘息、または、特に、COPDの処置において、使用されてもよい。
【0108】
上記によれば、本発明は、また、それを必要とする対象、特にヒト被験者に、前記で説明したように、可溶性ポリペプチドを投与することを含む、閉塞性または炎症性気道疾患の処置の方法を提供する。別の局面において、本発明は、本明細書中で説明するように、閉塞性または炎症性気道疾患を処置するための薬剤の製造における使用のための可溶性ポリペプチドを提供する。
【0109】
本発明の可溶性ポリペプチドは、また、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患などの慢性胃腸炎の治療、予防、または改善に、特に有用である。
【0110】
「慢性胃腸炎」は、比較的長い期間の発症によって特徴付けられ、(たとえば、数日間、数週間、数ヶ月、あるいは数年から、最大、被検者の最期まで)持続し、および、単核細胞の浸潤または流入に関連付けられ、自然寛解と自然発生の長さとさらに関連付けられることができる消化管の粘膜の炎症を意味する。したがって、慢性胃腸炎を有する被験者は、長期間の監視、観察、または注意を要すると予想されることがある。このような慢性炎症を有する「慢性胃腸炎症性病状」(「慢性胃腸炎症性疾患とも呼ばれる)は、炎症性腸疾患(IBD)、環境発作によって誘発される大腸炎(化学療法の投与、および放射線療法などの治療計画によって(たとえば、副作用として)引き起こされ、またはこれに関連付けられる、たとえば、消化管炎症(たとえば、大腸炎))、慢性肉芽腫症(Schappi et al.Arch Dis Child.2001,February;1984(2):147−151)などの病状における大腸炎、セリアック疾患、セリアック病(グルテンとして知られるタンパク質の摂取に応答して、腸の内層が炎症を起こす遺伝性疾患)、食物アレルギー、胃炎、感染性の胃炎または腸炎(たとえば、ヘリコバクターピロリ感染慢性活動性胃炎)、および他の形態の感染性病原体によって引き起こされる胃腸の炎症、ならびに他の同様の病状を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0111】
本明細書中において、「炎症性腸疾患」または「IBD」は、腸のすべてまたは部分の炎症によって特徴づけられる任意の種々の疾患を意味する。炎症性腸疾患の例は、クローン病、および潰瘍性大腸炎を含むが、これに限定されない。明細書を通してIBDへの言及は、しばしば、明細書において、胃腸炎症病状の例としての言及であり、制限的であることは意図されていない。
【0112】
上記によれば、本発明は、前記で説明した可溶性ポリペプチドを必要とする対象、特に、ヒト対象にこれを投与することを含む、瘍性大腸炎などの慢性胃腸炎、または炎症性腸疾患を処置する方法も提供する。別の局面において、本発明は、慢性胃腸炎または炎症性腸疾患の処置のための薬剤の調製における本明細書中で説明した可溶性ポリペプチドの使用を提供する。
【0113】
本発明は、白血病、または他の癌障害の治療、予防または改善において有用である。
【0114】
治療上有効な量の可溶性ポリペプチド、および少なくとも1つの第二薬物物質を、たとえば、併用して、または順に同時投与することを含む、上記で定義した方法も、また、本発明の範囲内に包含される。ここに、前記第二薬物物質は、たとえば、上に示した免疫抑制/免疫調整、抗炎症治療、または抗感染症薬物である。
【0115】
あるいは、治療的組み合わせ、たとえば、治療上有効な量のa)本発明の可溶性ポリペプチド、およびb)たとえば、上に示した免疫抑制/免疫調整、抗炎症治療、または抗感染症薬物から選択される少なくとも1つの第二の物質からなるキット。該キットには、その投与のための指示を含むことができる。
【0116】
本発明の可溶性ポリペプチドが、他の免疫抑制/免疫調整、抗炎症治療、または抗感染症治療とともに投与される場合、もちろん、用いられる共薬物の型、処置を受ける病状などに応じて、同時投与の組み合わせの化合物の投与量は、異なるであろう。
【0117】
1つの実施形態において、本発明の水溶性ポリペプチドは、CD47+樹状細胞のレベル、またはCD47を含む細胞のレベルの検出に使用することができる。これは、たとえば、可溶性ポリペプチド、およびCD47発現細胞の間で複合体の形成を可能にする条件の下で、(インビトロサンプルなどの)サンプル、およびコントロールサンプルを、本発明の可溶性ポリペプチドと接触させることによって達成することができる。形成された任意の複合体は、サンプルおよびコントロールにおいて、検出され、比較される。たとえば、フローサイトメトリーアッセイなどの当技術分野で周知の標準的な検出方法が、本発明の組成物を使用して実行されうる。
【0118】
したがって、1つの側面において、本発明は、可溶性ポリペプチドおよびCD47の間の複合体の形成を可能にする条件下で、サンプル、およびコントロールサンプルを本発明の可溶性ポリペプチドと接触させることを含む、サンプルにおけるCD47(たとえば、ヒトCD47)の存在を検出する、またはCD47の量を測定する方法をさらに提供する。複合体の形成は、次に、検出され、ここに、複合体形成におけるコントロールのサンプルと比較したサンプルとの間の違いが、サンプルにおけるCD47の存在の指標となる。
【0119】
また、本発明の組成物、および使用説明書から構成されるキットも、本発明の範囲内である。キットは、さらに、少なくとも1つの付加的な試薬を含むことができる。典型的には、キットは、キットの内容物の使用目的を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キットの上に、もしくはキットとともにある、または他にキットに付属している任意の書き込み、または記録材料を含む。キットは、上記のように定義された処置に応答するであろう群に属する患者であるかどうかを診断するための道具をさらに含んでもよい。
【0120】
十分に記述されてきた本発明は、さらに以下の実施例および請求の範囲によって、説明されるが、これは、例示的なものであり、さらに限定的であることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】ネズミSIRPα−Fcは、CD47+/+(WT)に結合するが、CD47−/−(KO)細胞には結合しない。CD47+/+(WT)またはCD47−/−(KO)ネズミ脾細胞に結合するネズミSIRPα−Fcは、説明したようにフローサイトメトリーによって検出された。SIRPα−Fc結合(SIRP)から生じる蛍光は、FL3対ドットプロットとしてプロットされている。
【図2】ヒトSIRPα−Fcは、CD47+/+発現(Jin8CD47)に結合するが、CD47欠損Jurkat T細胞(Jin8)には結合しない。SIRPα− Fc結合は、上記のフローサイトメトリーによって定量化した。SIRPα−Fc結合(SIRP)から生じる蛍光は、太線におけるヒストグラムとしてプロットされている。太線は、10μg/mL抗CD47クローンB6H12の存在下での結合を示す。
【図3】プライミング時のCD47/SIRPαのブロッキングは、BALB/cマウスにおけるアレルギー性疾患の進行を妨げる。(3a)マウスには、SIRPα−Fc融合分子の存在下、または非存在下において、0日目と5日目に、腹腔内にOVA感作し、12日目、16日目、および20日目に、OVA−エアロゾル感作を受けさせ、そして、21日目に、安楽死させた(グループあたりN=4〜7匹)。(3b)H&EおよびPASで染色された、ナイーブ肺切片(PBS)、免疫されたOVA、OVA付加SIRP−α−FC−処置マウス。データは、3つの別個に分析された肺の代表である。(3c)ディファレンシャルBALF細胞数が、フローサイトメトリーによって、分析された。(3d)21日目に測定したOVA特異的IgEの血清レベル。(3e)インビトロでのOVAでの再刺激の3日後のMLN細胞培養の上清中のIL−4、IL−5およびIL−13レベル。(3f)21日目、生体外の単離されたmLNsにおけるCD4+T細胞、およびIL−13が産生するCD4+T細胞の%を、フローサイトメトリーによって評価した。3つのうちの代表的な実験の1つが示されている。(3g)肺外植片におけるIL−4、IL−5、IL−13および(h)エオタキシン放出。データは平均±SEMである。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【図4】SIRPα−Fc処理BALB/cマウスにおける疾患保護の機序。マウスには、0日目および5日目に、SIRPα−Fc融合分子の存在下で、または非存在下でOVA感作し、12日目、16日目、および20日目にOVA−エアロゾル感作を受けさせ、21日目に安楽死させた。(4a)mLNsにおけるCD11b低CD103+、およびCD11b高CD103−DC(CD11c+にゲートされた)の亜集団。データは、%DCサブセットとして表示される(グループごとにn=3〜4匹)。(4b)BALB/cマウスは、腹腔内OVA−alumnの免疫付与の前日に、SIRPα−Fcの存在下で、または不存在下で(PBS)、CFSE標識CD47+/+CD4+TgT細胞を、受動的に移送され、2日後、CFSE細胞希釈が、mLNsにおいて検討された。データは、グループごとに4匹のマウスで行われた実験の代表である。(4c)21日目、好酸球(CCR3+)の絶対数が、生体外の単離されたmLNsにおいて、フローサイトメトリーによって、評価された。データは平均±SEMである(グループごとにN=3〜4マウス)。
【図5】SIRPα−Fcの投与によるTNBS−大腸炎の保護。大腸炎が誘導され、上記のように評価された。100μg/動物 ネズミSIRPα−Fcが、腹腔内後0日目および24時間に適用された。またPBSが腹腔内に注入された。動物の体重は、TNBS注射後4日まで評価された。
【実施例】
【0122】
1.本発明の可溶性ポリペプチドの例:
以下の表3は、開示されたアミノ酸配列をコードするDNAを用いて組換え法によって製造することができる本発明の可溶性ポリペプチドの例を提供する。
【0123】
【表3】
【0124】
2.親和性測定:
2.1 CD47に対する親和性:
単量体CD47、または二価のCD47−Fcタンパク質に対するヒトSIRPα− Fcの親和性は、ビアコアによって、評価することができる。SIRPαとのCD47 V−ドメインの一価の相互作用は、約1μMであると報告されている(Heatherley et al Mol Cell. 2008)。
【0125】
たとえば、APP−タグ付きCD47 Vドメインタンパク質が、HEK293細胞において発現され、リガンドとしての二価のCD47−Fcタンパク質と比較される。SIRPα−Fcとの一価の相互作用は、0.8μmKDと測定されたが、他方、二価のCD47−Fcのタンパク質の結合の強さ(結合力)は、KD<60nmへ10倍も増大した。対照的に、ネズミCD47−Fc融合タンパク質の結合は、観察することができなかったが、このことは、評価された相互作用の特異性を示す。
【0126】
【表4】
【0127】
2.2 マウス細胞CD47に対する細胞結合:
野生型からの、またはCD47ノックアウトネズミからの5x105CD47+、およびCD47−マウス脾細胞を、200μg/mlヒトIgG、および5μg/mlネズミSIRPα−Fcを含む50μlのFACS緩衝液(PBS、2%FCS 2mMのEDTA)に、4℃で30分間、再懸濁した。洗浄後、4℃で30分間、FITC標識したストレプトアビジン(1/1000)で細胞を染色する。結果は、SIRPα−Fcが、CD47+/+のリンパ球に結合するが、CD47−/−ノックアウトマウスからのリンパ球には結合しないことを示す(図1)。
【0128】
2.3 ヒト細胞CD45に対する細胞結合:
5x105CD47+、およびCD47−JurkatT細胞株を、4℃で30分間、200μg/mlのヒトIgG、および5μg/mlのSIRPα−Fcを含む50μlのFACS緩衝液(PBS 2%FCS 2mMEDTA)に再懸濁する。洗浄後、4℃で30分間、細胞を、FITC標識したストレプトアビジン(1/1000)で染色する。
【0129】
結果は、SIRPα−Fcが、CD47+/+Jurkat細胞(Jin8CD47)のリンパ球に結合するが、CD47(Jin8)を発現しないJurkat細胞には結合しないことを示す(図2)。抗CD47抗体B6H12での阻止によって示されるように、細胞への結合は、特異的であった。
【0130】
2.4 CHO CD47細胞株に結合するビオチン化SIRP−αFcの阻害/ブロッキング試験:
また、CHO CD47細胞株に結合するビオチン化SIRPα−Fcの阻害/ブロッキング試験は、異なるエピトープ(すなわち、B6H12、2D3、BRIC126、IF7、および10G2クローン、別の抗ヒトSIRP−α(CD172a)mAb、組換えヒトトロンボスポンジン1(TSP−1)、またはTSP−1のC末端(4N1K)、およびコントロール(4NGG)ペプチド)に対する抗CD47mAbを用いて実施することができる。
【0131】
2.5 CHO CD47細胞株に結合する直接標識抗CD47mAbの阻害/ブロッキング試験:
補完的なアプローチとして、CHO CD47の細胞株に結合する直接標識された抗CD47mAbの阻害/ブロッキング試験は、非ビオチン化ヒトSIRP−α−FCを使用して実行することができる。SIRPα−FCを使用してヒトSIRPα−FcでトランスフェクトされたL細胞に結合するビオチン化CD47−Fcの阻害/ブロッキング試験も、また、評価されうる。
【0132】
3. SIRP−α−Fc機能アッセイ:
3.1 免疫複合体刺激樹状細胞サイトカイン放出アッセイ:
末梢血単球(CD14+ CD16−)、ならびに単球由来樹状細胞(DC)は、説明されるように調製される(Latour et al, J of Immunol,2001:167:2547)。コンベンショナル(DCs)は、アロフィコシアニン(APC)で標識した抗CD11c(B−ly6)、系統マーカーに対するFITC標識モノクローナル抗体の混合物、CD3、CD14、CD15、CD16、CD19、およびCD56、ならびにAPC−Cy7標識CD4(RPA−T4)を使用して、FACSアリア(BD Biosciences社)によって、CD11c+、系譜−として、>99%に達する純度で、単離される。APCは、HB101無血清培地において、種々の濃度のヒトSIRPα−Fc(1〜20μg/mlの)の存在下で、1/40.000(Pansorbin)の黄色ブドウ球菌Cowan1で、または可溶性CD40L(1μg /mlの)、およびIFN−γ(500U/ml)で、刺激される。サイトカイン(IL−1、IL−6、IL−10、IL−12p70、IL−23、IL−8およびTNF−α)放出は、24時間または48時間培養上清において、ELISA法によって、評価される。
【0133】
3.2 混合リンパ球反応(MLR)アッセイ:
マイトマイシンC処理した成熟DC(SACまたはLPS刺激)は、様々な刺激(DC)/応答因子(T細胞)率で、本発明の可溶性ポリペプチド(5〜50μg/ml)の存在下で、または非存在下で、未分画同種ナイーブ(CD45RA+CD62L高)または記憶(CD45RO+CD62L低)成人CD4+T細胞(106/ml)と共培養される。T細胞増殖(3Hチミジン取り込み)、およびIFN−γ放出は、5〜6日初代培養の培養上清において、評価される。
【0134】
4.喘息の治療におけるSIRPα−Fcの使用のためのマウス動物モデルを用いたインビボのデータ:
BALB/cマウスは、0日目および5日目に、1mg Imject Alum(Pierce)に吸着した10μgのOVA(Sigma、Grade V)の腹腔内の注射によって、感作された。12、16、および20日目に、マウスは、振動メッシュネブライザーシステム(オムロン)によって注入された0.5%OVAのエアロゾル(Sigma、Grade V)で、30分間感作された。最後の感作の24時間後、75mg/kgペントバルビタールナトリウムの過剰摂取によって、マウスを屠殺し、採血した。BALを、0.5ml生理食塩水で3回収集し、肺およびMLNを単離した。肺の3分の1を、抗生物質を補ったPBS中で、すすぎ、小片に切断し、そして、平底24ウェルプレート中で、24時間、10%ウシ胎児血清、500U/mlペニシリン、500μg/mlストレプトマイシン、10mMHEPES緩衝液、および1mM 2−MEを補充した1ml RPMI1640(Wisent Inc.)中で、培養した。MLN細胞(4x106細胞/ml)を、平底96ウェルプレートにおいて、培養し、72時間、OVA(100μ/ml)で再刺激した。全量BAL細胞を、洗浄し、数え、抗CCR3 PE(R&D systems)、抗CD3 FITC(クローン145 −2C11)、および抗B220 FITC(R&D systems)で、30分間、染色した。Van Rijt L.S.ら(Immunol Methods.2004年5月;288(1−2):111−21)に説明されるように、顆粒球は、顆粒状であり、非自家蛍光であり、CD3およびB220の発現を欠くことがわかった。好酸球は、CCR3発現によって、好中球と区別された。リンパ球は、小さく、非顆粒状であり、非自家蛍光であり、CD3またはB220を発現し、そして、マクロファージ、および樹状細胞を含む他の単核細胞は、CD3、B220およびCCR3を欠いていた。DCサブセットを同定するために、mLNs、および肺が、まず、リベラーゼで処理され、細かく刻まれ、細胞の数が、数えられた。肺の細胞懸濁液は、赤血球の溶解のために、NH4Clで処理し、染色の前に、洗浄した。細胞は、抗CD11c FITC(BD Biosciences)、または抗CD11c APC(クローンN418)、抗CD11b PE(Caltag)、抗I−Ad/I−Ed PE(BD Biosciences)、抗GR1、抗B220 FITC(R&D systems)、120G8 FITC、および抗CD103−ビオチン化、続いて、SA−APC、またはCD103 PE(BD Biosciences)抗CD47、および抗SIRP−αmAbで染色された。肺において、自家肺胞マクロファージは、分析のゲートから除外された。制御性T細胞を同定するために、抗CD4 FITCまたはAPC(BD Biosciences)、抗CD25 PE(Caltag)またはFITC(BD Biosciences)、抗CD44 APC(クローンIM7 8.1)が使用された。生体外でのIL−13産生を測定するため、肥満細胞、および好塩基球が、まず、細胞外抗IgE−ビオチン化、および抗CD117(c−Kit、BioLegend)で同定され、そして、CD4 T細胞を、抗CD4 APCで染色した。細胞は、固定し、透過処理し、そして、抗IL−13 PE(eBioscience)で染色した。細胞は、まず、細胞外マーカー(抗CD4 APCおよび抗CD25 FITC)で染色し、固定し、透過処理し、そして、抗FoxP3 PE(eBioscienceからのキット)で染色した。肥満細胞、および好塩基球+細胞質内IL−13染色。すべてのデータは、FACSキャリバー、またはCantoIIフローサイトメーター(BD Biosciences)で得られ、CellquestまたはDIVAソフトウェア(BD Biosciences)で分析された。
【0135】
サイトカイン測定:
IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IFN−γ(BD Biosciences)、IL−13(R&D Systems)は、ELISAによって、mLNsの培養上清、および肺外植片において測定される。
【0136】
OVA感作および感作マウスからの縦隔LN細胞は、インビトロで、3日間、OVAタンパク質(1mg/ml)で再刺激され、そして、IL−4、IL−5およびIL−13産生が、培養上清において、ELISA法によって定量化される。肺外植片は、完全培地において、一晩培養され、培養上清は、サイトカイン放出を測定するために収集される。
【0137】
結果:
アレルギー性喘息の処置におけるSIRPα−Fcの使用するためのマウス動物モデルを用いるインビボのデータ:
CD47、およびSIRPαは、SIRP−α+ CD103− DC駆動Th2免疫の開始および永続化における重要な分子として現れる。このように、それらは、治療的に肺炎症を低減させるために、そして、気道疾患を改善させるために、活かされる可能性がある。ここでは、アレルギー性気道炎症の進行に対するSIRP−α、およびヒトIgG1のFc領域(SIRPα−FC)の効果を評価した。OVA免疫付与(図3a)の0および5日目に、SIRPα−Fcのいずれかを投与したBALB/cマウスは、OVAエアロゾルの感作の後において、肺組織の炎症性細胞浸潤が、非常に少なかった、または、なかった(図3b)。BALFにおける好酸球、好中球とリンパ球の強力な低減、または欠如が、起こり(図3c)、これとともに、血清OVA特異的IgEにおける下落(図3d)、リンパ節の細胞数における50%低減、およびmLNsにおけるIL−4、IL−5およびIL−13産生の強烈な阻害(図3eおよびf)が起こった。気道疾患の進行からの保護は、IL−10の増加とも、IFN−γ放出とも相関せず、これは、実際、処置されたマウスにおいても、抑制された(データは示さず)。次に、CD47−およびSIRPα−FC−処置マウスの肺外植片の培養上清におけるサイトカイン、およびケモカイン放出を調べ、IL−5、IL−13、およびエオタキシン放出は、阻害されたが、一方、IL−4発現は、変化しないままであったことを見出した(図3gおよびh)。
【0138】
次に、この阻害を制御し、気道疾患からの保護をもたらした潜在的な機序を探った。CD47−Fcを処置したマウスのmLNsにおけるSIRP−α+ CD103− 樹状細胞の蓄積の減少が見出された(図4a)。SIRPα−Fcの投与は、また、CD47−Fcで処置したOVA免疫マウスのmLNsにおけるCFSE標識Tg T細胞の割合の低減につながった(図4b)。最後に、SIRPα−FC−処置マウスのmLnsにおける好酸球の割合および蓄積の減少が観察された(図4c)。
【0139】
これらのデータは、初期銀感作におけるCD47/SIRPα遮断が、mLNsおよび肺における2型応答、ならびにIgE抗体依存性気道炎症を劇的に低減させたことを実証する。
【0140】
5.大腸炎の治療におけるSIRPα−Fcの使用のためのマウス動物モデルを用いるインビボのデータ:
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)(2または3mg)を、50%のエタノールに溶解し、3.5Fカテーテルを介して、雄BALB/cマウス(WTおよびCD47 KO)の大腸に滴下した。コントロールマウスは、エタノールのみを与えられた。マウスを、24時間ごとに秤量し、2日目(早い時点)、または4日目に、屠殺した。慢性TNBS大腸炎モデルにおいて、0日目に、そして、7日目にもう一度、1.5mgのTNBSを直腸内に注入し、12日目に、マウスを屠殺した。血清、腸間膜リンパ節、および大腸を、さらなる分析のため、回収した。大腸は、下痢、癒着、腸壁の肥厚、および潰瘍の存在を考慮に入れるウォーレスの基準を使用して、肉眼的にスコア化した。それらは、また、アメホ(Ameho)の基準、粘膜下組織の肥厚、単核細胞を有する粘膜下層および固有層の浸潤、粘液枯渇、陰窩構造の損失、および浮腫に基づくスコアリングシステムを使用して、炎症の微視的マーカーについて、評価された(示さず)。組換えマウスSIRPα−Fc融合タンパク質を、TNBS大腸炎の誘導の直前、およびその24時間後に、腹腔内(100μg/マウス)投与した。コントロールマウスは、生理食塩水のみを受けた。0日目、TNBS誘導の30分前、および1日目における100μg/動物のマウスSIRPα−Fcの注入は、体重の損失として評価される疾患の進行を統計的に有意にブロックした。
【0141】
6.関節炎の治療におけるSIRPα−Fcの使用のためのインビボのネズミ動物モデル:
コラーゲン誘導関節炎モデル:
ヒト結核菌が、フロイント完全アジュバントと混合され、十分に振盪される(=溶液A)。ウシコラーゲン溶液アリコートが、氷上で滅菌PBSとよく混合される(=溶液B)。溶液Aおよび溶液Bが、ナイーブ雄DBA/1マウスに、乳濁液として、注入された。マウスが、ケタミンの滅菌ろ過液のs.c.注入によって、麻酔される。昏睡時に、各マウスの尾の根が、剃毛され、続いて、マウスあたり0.1mlのコラーゲン乳濁液(100μgのコラーゲンを含む)が、尾の付け根に、皮内注入される。100μlのコラーゲン/PBS(1:5希釈)の第二の注入が、初回免疫後の22日目に、腹腔内に与えられる(= 追加免疫)。腫れ、および疾患のスコアリングが、BrandらによるNat Protoc.2007;2(5):1269−75で説明するように評価される。
【0142】
7.本発明を実施に有用なアミノ酸および塩基配列:
【0143】
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) SIRPαの細胞外ドメイン(配列番号3)、
b) 配列番号3の断片:、および、
c) 配列番号2と少なくとも75%の同一性を有する配列番号3の変異体ポリペプチド
からなる群から選択されるSIRPα由来ポリペプチドを含む、薬剤として使用するための可溶性CD47結合ポリペプチドであって、
ここに、前記SIRPα由来のポリペプチドは、ヒトCD47(配列番号24)に結合する、可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項2】
ヒトCD47に2μMまたはそれ未満のKDで結合し、および、免疫複合体刺激性樹状細胞サイトカイン放出アッセイにおいて測定された場合に、誘導されるサイトカイン分泌を阻害する、請求項1に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項3】
前記SIRPα由来ポリペプチドがIgG Fc断片に融合している、請求項1または2に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項4】
前記IgG Fc断片が変異非グリコシル化Fc断片である、請求項1、2または3に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項5】
前記SIRPα細胞外ドメインが、少なくともSIRPαのV領域(配列番号2)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項6】
自己免疫および炎症性障害の処置における薬物として使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項7】
a) Th2媒介性気道炎症;
b) アレルギー性障害;
c) 喘息;
d) 炎症性腸疾患;
e) 関節炎;
f) 虚血性障害、または、
g) 白血病もしくは癌
の処置における薬物として使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項8】
本質的に、ヒトIgGのFc断片に融合したSIRPαの細胞外ドメインから構成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチドの少なくとも2つを含む、タンパク質。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド、または請求項9に記載のタンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体の1または複数と組み合わされた、請求項10の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項記載の可溶性CD47結合ポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項13】
請求項12記載の核酸の1または複数を含む、クローニングまたは発現ベクター。
【請求項14】
少なくとも配列番号25または26の核酸を含む、請求項13に記載のクローニングまたは発現ベクター。
【請求項15】
請求項13または14に記載の1または複数のクローニングまたは発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
前記宿主細胞が、哺乳類細胞、たとえば、CHO細胞である、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項1】
a) SIRPαの細胞外ドメイン(配列番号3)、
b) 配列番号3の断片:、および、
c) 配列番号2と少なくとも75%の同一性を有する配列番号3の変異体ポリペプチド
からなる群から選択されるSIRPα由来ポリペプチドを含む、薬剤として使用するための可溶性CD47結合ポリペプチドであって、
ここに、前記SIRPα由来のポリペプチドは、ヒトCD47(配列番号24)に結合する、可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項2】
ヒトCD47に2μMまたはそれ未満のKDで結合し、および、免疫複合体刺激性樹状細胞サイトカイン放出アッセイにおいて測定された場合に、誘導されるサイトカイン分泌を阻害する、請求項1に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項3】
前記SIRPα由来ポリペプチドがIgG Fc断片に融合している、請求項1または2に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項4】
前記IgG Fc断片が変異非グリコシル化Fc断片である、請求項1、2または3に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項5】
前記SIRPα細胞外ドメインが、少なくともSIRPαのV領域(配列番号2)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項6】
自己免疫および炎症性障害の処置における薬物として使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項7】
a) Th2媒介性気道炎症;
b) アレルギー性障害;
c) 喘息;
d) 炎症性腸疾患;
e) 関節炎;
f) 虚血性障害、または、
g) 白血病もしくは癌
の処置における薬物として使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項8】
本質的に、ヒトIgGのFc断片に融合したSIRPαの細胞外ドメインから構成される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチドの少なくとも2つを含む、タンパク質。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の可溶性CD47結合ポリペプチド、または請求項9に記載のタンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体の1または複数と組み合わされた、請求項10の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項記載の可溶性CD47結合ポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項13】
請求項12記載の核酸の1または複数を含む、クローニングまたは発現ベクター。
【請求項14】
少なくとも配列番号25または26の核酸を含む、請求項13に記載のクローニングまたは発現ベクター。
【請求項15】
請求項13または14に記載の1または複数のクローニングまたは発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
前記宿主細胞が、哺乳類細胞、たとえば、CHO細胞である、請求項15に記載の宿主細胞。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3cd】
【図3ef】
【図3gh】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3cd】
【図3ef】
【図3gh】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【公表番号】特表2012−512640(P2012−512640A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541441(P2011−541441)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067411
【国際公開番号】WO2010/070047
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067411
【国際公開番号】WO2010/070047
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
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