説明

自己免疫疾患におけるIL−22、IL−17、およびIL−1ファミリーのサイトカインの使用

IL−1アイソフォームを用いて炎症性障害を検出する方法を提供する。抗IL−1抗体を用いて炎症性障害を処置する方法も提供する。抗IL−1抗体、および抗IL−22抗体、抗IL−17抗体、または抗TNFα抗体のうちの少なくとも1つを用いて炎症性障害を処置する方法も提供する。
【図1−1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、そのそれぞれが任意の目的のために本明細書中に参考として組み込まれている、2008年8月28日出願の米国仮出願第61/092,743号および2008年10月27日出願の米国仮出願第61/193,087号に関する。
【0002】
IL−1アイソフォームを用いて炎症性障害を検出する方法を提供する。抗IL−1抗体を用いて炎症性障害を処置する方法も提供する。抗IL−1抗体、および抗IL−22抗体、抗IL−17抗体、または抗TNFα抗体のうちの少なくとも1つを用いて炎症性障害を処置する方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
古典的なインターロイキン−1(IL−1)ファミリーのサイトカインであるIL−1α、IL−1βおよびIL−18は炎症において主要な役割を果たす。IL−1サイトカインファミリーのいくつかの新規メンバーがIL−1相同体のDNAデータベース検索から同定された。IL−1F6、IL−1F8およびIL−1F9はケラチノサイトによって産生され、炎症を起こした皮膚においてアップレギュレーションされ得る。Th17細胞由来の炎症誘発性サイトカインであるIL−22はケラチノサイトに作用し、抗細菌ペプチドおよび炎症誘発性サイトカインの遺伝子発現をどちらも誘導する。
【0004】
インターロイキン22(IL−22)とは、II型サイトカインのインターロイキン10(IL−10)様亜群のメンバーである。(Renauld,J.−C.、Nature Reviews Immunology、3、667〜76(2003))。この亜群のメンバー(すなわち、IL−10、IL−19、IL−20、IL−22、IL−24、およびIL−26)は、インターフェロンとも共有される保存的な6本のα−ヘリックスの構造的かつ機能的ユニットを有すると提唱されている。(Renauldら、Nature Reviews Immunology、3、667〜76(2003)およびLangerら、Cytokine&Growth Factor Reviews、15、33〜48(2004))。IL−22は活性Tヘルパー(Th)17CD4リンパ球および単球によって産生され、その発現はIL−23に高度に依存する(Liang,S.C.ら、Journal of Experimental Medicine、203、2271〜9(2006)およびZheng,Y.ら、Nature、445、648〜51(2007))。IL−22は局所的な組織炎症を調節する一方で非免疫細胞のみに作用することが知られており、粘膜免疫および自己免疫疾患で観察される調節不全炎症において重要な役割を果たす。(Wolk,K.ら、Immunity、21、241〜54(2004)、Wolkら、Cytokine&Growth Factor Reviews、17、367〜80(2006)、Wolkら、Journal of Immunology、168、5397〜402(2002)、Panら、Cellular&Molecular Immunology、1、43〜9(2004)、Zenewiczら、Immunity、27、647〜59(2007)、Aujla,S.J.ら、Nature Medicine、14、275〜81(2008)、およびZheng,Y.ら、Nature Medicine、14、282〜89(2008))。最近の臨床および前臨床の研究では、皮膚のヒト自己免疫疾患である乾癬の進行におけるTh17細胞およびIL−22活性が強く関係づけられている(Zhengら、Nature、445、648〜51(2007)、Nickoloffら、Nature Medicine、13、242〜244(2007)、Zabaら、Journal of Experimental Medicine、204、3183〜94(2007)、Maら、Journal of Clinical Investigation、印刷中(2008)、Lowesら、Nature、445、866〜73(2007)、およびWolkら、European Journal of Immunology、36、1309〜23(2006)。IL−22の投与は皮膚ケラチノサイトの過剰増殖およびその結果として表皮の肥厚を誘導することが示されており、これらはどちらも乾癬病変に特徴的である(Bonifaceら、Journal of Immunology、174、3695〜702(2005))。さらに、IL−22の投与は、免疫細胞の動員および乾癬組織炎症の維持に関与していると考えられるケラチノサイトからの遺伝子発現を誘導することが示されている(Wolkら、European Journal of Immunology、36、1309〜23(2006)、Bonifaceら、Journal of Immunology、174、3695〜702(2005)、およびSaら、Journal of Immunology、178、2229〜40(2007)[訂正がJ Immunol.、2007年6月1日;178(11):7487に見られる])。
【0005】
IL−22の発現はIL−9またはConAによってT細胞中でアップレギュレーションされる(Dumoutier L.ら(2000)Proc Nail Acad Sci USA、97(18):10144〜9)。さらなる研究により、IL−22のmRNAの発現はLPS投与に応答してin vivoで誘導され、また、IL−22は急性期反応の指標であるパラメータを変調することが示されている(Dumoutier L.ら(2000)上記、Pittman D.ら(2001)Genes and Immunity、2:172)。総合すると、これらの観察は、IL−22が炎症において重要な役割を果たすことを示している(Kotenko S.V.(2002)Cytokine&Growth Factor Reviews、13(3):223〜40)。
【0006】
IL−22の細胞表面受容体は、そのそれぞれがII型サイトカイン受容体ファミリー(CRF2)のメンバーである、IL−22受容体(IL−22R)およびIL−22受容体2(IL−10R2)サブユニットからなる受容体複合体であると考えられている(Xie M.H.ら(2000)J Biol Chem、275(40):31335〜9、Kotenko S.V.ら(2001)J Biol Chem、276(4):2725〜32)。CRF2メンバーは、IFNα/β、IFNγ、第VIIa凝固因子、IL−10およびIL−10関連タンパク質IL−19、IL−20、IL−22、IL−24、IL−26、ならびに最近同定されたIFN様サイトカインであるIL−28およびIL−29の受容体である(Kotenko S.V.(2002)Cytokine&Growth Factor Reviews、13(3):223〜40、Kotenko,S.V.ら(2000)Oncogene、19(21):2557〜65、Sheppard,P.ら(2003)Nature Immunology、4(1):63〜8、Kotenko,S.V.ら(2003)Nature Immunology、4(1):69〜77)。IL−22受容体複合体のサブユニット、すなわち鎖のそれぞれは、上皮細胞および様々な組織内の一部の線維芽細胞上に提示される(Wolkら、Journal of Immunology、168、5397〜402(2002)、Xieら、Journal of Biological Chemistry、275、31335〜9(2000)、Kotenkoら、Journal of Biological Chemistry、276、2725〜32(2001)、Ikeuchiら、Arthritis&Rheumatism、52、1037〜46(2005)、Andohら、Gastroenterology、129、969〜84(2005))。IL−22受容体複合体の鎖はどちらも、いくつかの器官中でも構成的に発現され、これらの器官に由来する上皮細胞系はin vitroでIL−22に応答性であることが示されている(Kotenko S.V.(2002)Cytokine&Growth Factor Reviews、13(3):223〜40。
【0007】
IL−22RおよびIL−10R2のサブユニットは他のII型サイトカインの様々な受容体複合体の形成に別々に寄与するが、これらのサブユニットは一緒になってIL−22に特異的な単一の受容体複合体を形成する。IL−22は最初にIL−22Rの細胞外ドメイン(ECD)と結合すると考えられている。(Logsdonら、Journal of Interferon&Cytokine Research、22、1099〜112(2002)およびLiら、International Immunopharmacology、4、693〜708(2004))。提唱されているIL−22R誘導のIL−22のコンホメーション変化により、IL−10R2はIL−22/IL−22Rの表面と結合することができる(Liら、International Immunopharmacology、4、693〜708(2004)およびLogsdonら、Journal of Molecular Biology、342、503〜14(2004))。その結果ヘテロ三量体またはその多量体のいずれかとして生じるIL−22/IL−22R/IL−10R2複合体は、JAK/STATおよびMAPK(たとえばERK)のシグナル伝達経路を介してシグナルを細胞内に伝達する(Dumoutierら、Journal of Immunology、164、1814〜9(2000)、Dumoutierら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、97、10144〜9(2000)、およびLejeuneら、Journal of Biological Chemistry、277、33676〜82(2002))。IL−22はJAK/STAT3およびMAPK(たとえばERK)経路ならびに他のMAPK経路の中間体の活性化を誘導する(Dumoutier L.ら(2000)上記、Xie M.H.ら(2000)上記、Dumoutier L.ら(2000)J Immunol、164(4):1814〜9、Kotenko S.V.ら(2001)J Biol Chem、276(4):2725〜32、Lejeune,D.ら(2002)J Biol Chem、277(37):33676〜82)。
【0008】
IL−22RとIL−10R2との間の相互作用は、ビオチン標識したサイトカインおよび受容体細胞外ドメイン(ECD)Fc融合二量体を用いたELISAに基づいた様式で特徴づけられている。たとえば米国公開特許出願第2005−0042220号を参照されたい。IL−22はIL−22RのECDに対して測定可能な親和性を有し、IL−10R2単独に対しては検出可能な親和性を有さないことが示された。また、IL−22はFcヘテロ二量体として提示されるIL−22R/IL−10R2のECDに対して実質的により高い親和性を有することも示された。IL−10R2はIL−22とIL−22Rとの間の会合によって生じた表面に結合すると考えられ、これは、IL−10R2のECDがIL−22のそのサイトカイン受容体複合体内での会合をさらに安定化させることを示唆している。たとえば米国公開特許出願第2005−0042220号を参照されたい。
【0009】
IL−22受容体複合体と結合することに加えて、IL−22は、IL−22結合タンパク質(IL−22BP)とも結合する。IL−22BPは、IL−22に特異的な分泌された「受容体」であり、IL−22Rの細胞外ドメイン(ECD)と33%の一次配列同一性を有する(Dumoutier,L.、Lejeune,D.、Colau,D.およびRenauld,J.C.、Cloning and characterization of IL−22 binding protein,a natural antagonist of IL−10−related T cell−derived inducible factor/IL−22.、Journal of Immunology、166、7090〜5(2001))。IL−22BPの細胞表面形態は具体的に同定されていないが、in vitroでは、IL−22BPはおとり受容体として作用し、細胞へのIL−22シグナル伝達を遮断することが示されている(Dumoutierら、Journal of Immunology、166、7090〜5(2001)およびXuら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、98、9511〜6(2001))。
【0010】
中和抗IL−22抗体が作製されており、その結合特異性、親和性およびIL−22中和活性に関して特徴づけられている。たとえば米国公開特許出願第2005−0042220号を参照されたい。IL−22のin vivo投与は急性期反応のパラメータを誘導することが示されており、中和抗IL−22抗体の投与はIL−22活性を低下させ、マウスのコラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおいて炎症症状を寛解させることが示されている。たとえば米国公開特許出願第2005−0042220号を参照されたい。さらに、IL−22mRNAの発現は炎症領域内でアップレギュレーションされることが示されている。したがって、たとえば中和抗IL−22抗体およびその断片などのIL−22拮抗剤を用いて免疫抑制をin vivoで誘導することができ、これらは様々な炎症性および/または自己免疫性の障害を処置するための有望な手法を提供する。
【0011】
Th17細胞は、IL−17AおよびIL−17Fを発現するその能力によって定義される(Aggarwalら、J.Biol.Chem.、(2003)278:1910〜14、Langrishら、J.Exp.Med.、(2005)201:233〜40、Harringtonら、Nat.Immunol.、(2005)6:1123〜32、Parkら、Nat.Immunol.、(2005)6:1133〜41、Veldhoenら、Immunity、(2006)24:179〜89、Manganら、Nature、(2006)441:231〜34、Bettelliら、Nature、(2006)441:235〜38)。Th17細胞の分化は、炎症誘発性サイトカイン、特にIL−6、ならびにIL−1βおよびTNF−αのコンテキストにおけるTGF−βシグナル伝達によって開始される。対照的に、Th17細胞の維持および生存は、IL−12p40およびIL−23p19サブユニットからなるIL−12のファミリーメンバーであるIL−23に依存する。IL−23欠乏マウスは、いくつかのマウス疾患および感染症のモデルにおいて顕著に少ないIL−17を産生する(Langrishら、J.Exp.Med.、(2005)201:233〜40、Murphyら、J.Exp.Med.、(2003)198:1951〜57、Happelら、J.Exp.Med.、(2005)202:761〜69、Khaderら、J.Immunol.、(2005)175:788〜95)。したがって、Th17の分化はTGF−βおよび炎症誘発性サイトカインによって開始され、続いてIL−23によって維持される。
【0012】
IL−17ファミリーは、17〜55%の相対的な相同性を共有する5個のファミリーメンバー、すなわち、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E(IL−25)、およびIL−17Fからなる(Aggarwalら、Cytokine Growth Factor Rev.、(2003)14:155〜74、Kollsら、Immunity、(2004)21:467〜76)。IL−17ファミリーメンバーの発現は非常に多様である。IL−17AおよびIL−17Fが最も相同的であり(55%)、ヒト染色体1上で互いに隣接して位置している。IL−17AおよびIL−17FのmRNAは、Th1またはTh2細胞と比較してTh17細胞においてより高いレベルで発現される。対照的に、IL−17B、IL−17C、およびIL−17Dは主に非リンパ組織中で発現される。IL−17E(IL−25)はTh2細胞中で発現される(Fortら、Immunity、(2001)15:985〜95)。IL−17AおよびIL−17Fに加えて、TNF−α、IL−6、およびGM−CSFも、IL−23によって誘導され、Th17細胞によって潜在的に発現される遺伝子として同定されている(Langrishら、J.Exp.Med.、(2005)201:233〜40、Infante−Duarteら、J.Immunol.、(2000)165:6107〜15)。しかし、Th1細胞はTNF−αを発現することができ、Th2細胞はIL−6およびGM−CSFを発現することができるため、IL−6、TNF−α、およびGM−CSFの発現はTh17系統に限定されない。対照的に、Th17細胞は系統特異的な様式でIL−17AおよびIL−17Fを産生すると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
CD4エフェクター細胞のサブセットがいくつかの異なる疾患に関与している。一部の例では、それらの活性が生物に役立つ。しかし、他の疾患では、それらの活性は望ましくないか、または有害でさえある。CD4エフェクター集団内における、特定の病理を担っている細胞のサブセットを同定することにより、他のCD4エフェクター細胞の不必要な抑制をせずにそれらの細胞を標的として調節することが可能となる。同様に、細胞のサブセットによって産生されるサイトカインおよびそれらのサイトカインがどのように相互作用するかの知識は、それらのサイトカインが関与する疾患の改良された管理を実現する包括的な療法の開発の必須条件である。
【0014】
また、IL−22も、IL−17AまたはIL−17Fと協同的に、また一部の例では相乗的に作用することができるTh17サイトカインである。米国公開特許出願第20080031882号を参照されたい。さらに、IL−23によるIL−22誘導が実証されている。同上。
【課題を解決するための手段】
【0015】
特定の実施形態では、炎症性障害を検出する方法を提供する。特定の実施形態では、炎症性障害を検出する方法は、患者において(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのアップレギュレーションを同定することを含み、少なくとも1つのIL−1のアイソフォームは、IL−1F6、IL−1F8、またはIL−1F9である。特定の実施形態では、炎症性障害は乾癬、ループス、または関節炎である。特定の実施形態では、(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのアップレギュレーションは、mRNAレベルを検出することによって決定する。特定の実施形態では、(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのアップレギュレーションは、タンパク質レベルを検出することによって決定する。特定の実施形態では、(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも2つのアップレギュレーションの検出は、(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのタンパク質レベルを検出することによって、ならびに(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのmRNAレベルを検出することによって決定する。患者における(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つの発現を対照試料における発現レベルと比較することができ、対照試料における発現と比較した患者における少なくとも1つのIL−1のアイソフォームまたはIL−1Rrp2の発現の増加は、患者における炎症性障害の存在を示す。
【0016】
特定の実施形態では、IL−22関連障害を処置する方法を提供する。特定の実施形態では、IL−22関連障害を処置する方法は、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9のうちの少なくとも1つの少なくとも1つの阻害剤を、前記IL−22関連障害に罹患している患者に投与することを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの阻害剤は抗IL−1F6抗体である。特定の実施形態では、少なくとも1つの阻害剤は抗IL−1F8抗体である。特定の実施形態では、少なくとも1つの阻害剤は抗IL−1F9抗体である。特定の実施形態では、少なくとも1つの阻害剤は抗IL−1Rrp2抗体である。
【0017】
特定の実施形態では、IL−1関連障害を処置する方法を提供する。特定の実施形態では、IL−1関連障害を処置する方法は、IL−22の阻害剤を、前記IL−1関連障害に罹患している患者に投与することを含む。特定の実施形態では、IL−22の阻害剤は抗IL−22抗体である。
【0018】
特定の実施形態では、炎症性障害を処置する方法を提供する。特定の実施形態では、炎症性障害を処置する方法は、炎症性障害に罹患している患者に、(a)(i)抗IL−1F6抗体、(ii)抗IL−1F8抗体、(iii)抗IL−1F9抗体、および(iv)抗IL−1Rrp2抗体のうちの少なくとも1つと、(b)抗IL−22抗体またはIL−22拮抗剤との組合せを投与することを含む。特定の実施形態では、炎症性障害を処置する方法は、炎症性障害に罹患している患者に、抗IL−1F6抗体、抗IL−1F8抗体、または抗IL−1F9抗体などの抗IL−1抗体と、抗IL−17A抗体またはIL−17A拮抗剤とを投与することを含む。特定の実施形態では、炎症性障害を処置する方法は、炎症性障害に罹患している患者に、(a)(i)抗IL−1F6抗体、(ii)抗IL−1F8抗体、(iii)抗IL−1F9抗体、および(iv)抗IL−1Rrp2抗体のうちの少なくとも1つと、(b)抗IL−22抗体またはIl−22拮抗剤と、(c)抗Il−17A抗体またはIL−17A拮抗剤との組合せを投与することを含む。他の実施形態では、炎症性障害を処置する方法は、患者に、(a)(i)抗IL−1F6抗体、(ii)抗IL−1F8抗体、(iii)抗IL−1F9抗体、および(iv)抗IL−1Rrp2抗体のうちの少なくとも1つと、(b)抗TNFα抗体またはTNFα拮抗剤との組合せを投与することを含む。特定の実施形態では、炎症性障害は乾癬、ループス、または関節炎である。
【0019】
特定の実施形態では、対象の炎症性障害の処置、低下、予防、および/または寛解における治療剤の有効性を決定する方法を提供する。特定の実施形態では、治療剤の有効性を決定する方法は、対照試料における遺伝子発現のレベルと比較した対象における遺伝子発現のレベルを検出することを含み、検出される遺伝子発現は、IL−1F6、IL−1F8、IL−1F9、IL−1Rrpのうちの少なくとも1つからの遺伝子発現であり、対照と比較して対象における遺伝子発現のレベルがより低いことは、対象の炎症性障害の処置、低下、予防、および/または寛解における治療剤の有効性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】乾癬様マウス耳組織におけるIL−1サイトカインIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9ならびにその受容体IL−1Rrp2の発現の増加を示す図である。乾癬(Pso.)は、野生型CD4CD25CD45RBhiT細胞の適応移入を用いてscid/scidマウスにおいて誘導し、一方で、対照(Cont.)マウスには生理食塩水の注射を与えた。マウス耳を注射の70日後に収集した。図1(a)および(c)は、定量的RT−PCRによって評価したIL−1サイトカインおよびその受容体IL−1Rrp2の転写レベルを示す。Y軸は、推定1,000コピー数のGAPDH mRNA/細胞を有するハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較した、示した遺伝子の相対的mRNAコピー数を示す。統計分析は独立両側t検定を用いて行った。「」は統計的有意性を示す(p<0.001)。図1(b)は、ウエスタンブロットにおいてそれぞれのタンパク質(R&D systems)に対する抗体によって検出した、個々の耳試料中のIL−1F6およびβ−アクチンタンパク質を示す。
【図2】全身性IL−22中和後の乾癬様マウス耳組織におけるIL−1サイトカインの発現の減少を示す図である。CD4CD25CD45RBhiT細胞レシピエントマウス(n=5)に、16mg/kgのIL−22(IL22−104、Wyeth、黒色記号)またはアイソタイプ対照(白色丸)抗体を腹膜内に週に1回、11週間の間与えた。最後の処置の48時間後、マウス耳を収集し、示した遺伝子の転写物コピー数を評価し、GAPDHに対する相対的発現として示した。「」は統計的有意性を示す(p<0.01)。
【図3】IL−22で処置したマウス耳におけるIL−1サイトカインおよびその受容体IL−1Rrp2の発現の増加を示す図である。BALB/cマウスの耳(n=4)に、隔日に2週間の間、500ngの組換えマウスIL−22(BD Biosciences)または生理食塩水を合計体積20ulで皮内注射した。最後の処置の6時間後、マウス耳を収集し、示した遺伝子の転写レベルを評価し、GAPDHに対する相対的発現として示した。「」は統計的有意性を示す(p<0.1)。
【図4】示した量の組換えヒトIL−22で48時間処置した後の初代ヒトケラチノサイトにおける、IL−1F6、IL−1F8、IL−1F9、および受容体IL−1Rrp2の転写レベルを示す図である。RNAを細胞溶解液から精製し、示した遺伝子の転写物コピー数を評価し、GAPDHに対する相対的発現として示した。図4(a)および4(b)のデータは独立した実験を表す。
【図5】IL−22がヒト初代ケラチノサイトにおいてIL−17Aと相乗作用してIL−1アイソフォームの遺伝子発現を誘導することを示す図である。処置なし、200ng/mlの組換えヒトIL−22(Wyeth)単独、20ng/mlの組換えヒトIL−17A(Wyeth)単独、または200ng/mlのIL−22および20ng/mlのIL−17Aを与えた48時間後に細胞を収集した。図5(a)および5(c)は、細胞溶解液中のIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9の転写レベルを示す。図5(b)は、それぞれタンパク質(R&D systems)に対する抗体を用いたウエスタンブロットによって評価した、細胞溶解液中のIL−1F9およびβ−アクチンのタンパク質レベルを示す。
【図6】乾癬患者の対となる非損傷性および損傷性の皮膚試料におけるIL−1F6、IL−1F8、IL−1F9、および受容体IL−1Rrp2の転写レベルを示す図である。RNAを凍結した組織生検から精製し、遺伝子発現を定量的RT−PCRによって評価した。図6(a)は示した遺伝子転写物の平均コピー数/群±標準偏差(n=11)を示す。統計的有意性はそれぞれのプロット中に表すp値によって示した。図6(b)および6(c)は、個々の患者からの非損傷性および損傷性の試料における遺伝子発現を示す。
【図7】IL−1F6、IL−1F8、IL−1F9とTh17サイトカインIL−22およびIL−17Aとの間の直線的な遺伝子発現の相関を示す図である。ヒト患者の損傷性皮膚生検からのIL−1F6、IL−1F8、IL−1F9、および受容体IL−1 IL−1Rrp2の転写物コピー数を、同じ組織試料中のIL−22およびIL17Aの転写物コピー数に対してプロットした。図7(a)は、乾癬皮膚病変におけるIL−1F6、IL−1F8、IL−1F9とIL−22またはIL−17Aとの間の遺伝子発現の正の相関を示す。R二乗およびP値もそれぞれのプロット中に示す。図7(b)は、乾癬皮膚病変において受容体IL−1Rrp2とIL−22またはIL−17Aとの間に遺伝子発現の相関がないことを示す。R二乗およびP値もそれぞれのプロット中に示す。
【図8】ヒト乾癬皮膚病変におけるIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9と他の炎症誘発バイオマーカーとの間の遺伝子発現の相関の要約を示す図である。統計分析は95%の信頼区間を有する両側ピアソン検定を用いて行った。p<0.05であった場合に相関は有意であるとみなした。
【図9】コラーゲン誘導関節炎マウスの白血球中で検出されたIL−1F8およびIL−1F9の遺伝子発現の増加を示す図である。DBA1マウスを、CFAで乳化した200ngのウシII型コラーゲン(Chondrex)を用いて皮内で免疫化した。21日目に、すべてのマウスにIFA中の200ngのコラーゲンの追加免疫を与えた。35日目に、マウスを屠殺し、遺伝子発現の分析のために血液を採取した。RNAを白血球からQIAGEN RNeasy(登録商標)血液ミニキット(QIAGEN)を用いて精製し、IL−1F6、IL−1F8およびIL−1F9のmRNAレベルをRT−PCRで評価した。IL−1F8およびIL−1F9の相対的な転写物コピー数/群±標準偏差(n=5)を表した。IL−1F6のmRNAレベルは検出限界より下であった。図9のデータは2つの独立した実験のうちの一方を示す。
【図10】乾癬様マウスの白血球中で検出されたIL−1F6およびIL−1F9の遺伝子発現の増加を示す図である。乾癬を図1に記載のようにマウスで誘導した。養子T細胞移入後の70日目にマウス血液を採取し、図9に記載のように遺伝子発現の分析に供した。IL−1F6、IL−1F9および受容体IL−1Rrp2の相対的な転写物コピー数/群±標準偏差(n=5)を表した。IL−1F8のmRNAレベルは検出限界より下であった。図10のデータは2つの独立した実験のうちの一方を示す。
【図11】ループス昜発性NZBWF/1マウスの白血球中で検出された受容体IL−1Rrp2、IL−1F6およびIL−1F9サイトカインの遺伝子転写物の増加を示す図である。ループスの自発的発生を遺伝的に起こしやすいマウスの10週齢および7カ月齢のNZBWF/1株から血液を採取した。ループスの自発的発生を起こしにくい10週齢のナイーブC57BL/6マウスを対照として使用した。IL−1F6、IL−1F9および受容体IL−1Rrp2の相対的な転写物コピー数/群±標準偏差(n=5)を表した。IL−1F8のmRNAレベルは検出限界より下であった。図11のデータは2つの独立した実験のうちの一方を示す。
【図12】ヒトIL−22ヌクレオチド配列およびヒトIL−22アミノ酸配列を示す図である。
【図13】マウスIL−22ヌクレオチド配列およびマウスIL−22アミノ酸配列を示す図である。
【図14】ヒトIL−1F6ヌクレオチド配列およびヒトIL−1F6アミノ酸配列を示す図である。
【図15】ヒトIL−1F8ヌクレオチド配列およびヒトIL−1F8アミノ酸配列を示す図である。
【図16】ヒトIL−1F9ヌクレオチド配列およびヒトIL−1F9アミノ酸配列を示す図である。
【図17】ヒトIL−1Rrp2ヌクレオチド配列およびヒトIL−1Rrp2アミノ酸配列を示す図である。
【図18】ヒトIL−17AのmRNAヌクレオチド配列およびヒトIL−17Aアミノ酸配列を示す図である。
【図19】20ng/mlのTNF−αおよびIL−22(200ng/ml)とTNF−α(20ng/ml)との組合せと共にインキュベーションした48時間後のケラチノサイトにおける、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9の発現の増加の倍数を示す図である。3人のドナーからのデータをプールした。平均±SDを表す。
【図20】20ng/mlのIFN−γを含むまたは含まない示した濃度のIL−12と共にインキュベーションした48時間後のケラチノサイトにおける、IL−1F8およびIL−1F9の発現の増加の倍数を示す図である。IL−1F6の発現の増加の倍数は検出されなかった。5人のドナーからのデータをプールした。平均±SDを表す。
【図21】20ng/mlのIL−17A、20ng/mlのIFN−γまたは両方の組合せと共にインキュベーションした48時間後のケラチノサイトにおける、IL−1F8の発現の増加の倍数を示す図である。3人のドナーからのデータをプールした。平均±SDを表す。
【図22】200ng/mlのIL−21または200ng/mlのIL−21と200ng/mlのIL−22との組合せと共にインキュベーションした48時間後のケラチノサイトにおける、GAPDHと比較したIL−1F8およびIL−1F9の発現を示す図である。2人の個々のドナーからのデータを示す。
【図23】IL−22(200ng/ml)、IL−17A(20ng/ml)、IL−22(200ng/ml)+IL−17A(20ng/ml)、IL−12(200ng/ml)、IFN−γ(20ng/ml)、またはIL−12(200ng/ml)+IFN−γ(20ng/ml)と共にインキュベーションした48時間後のケラチノサイトにおける、il1aおよびil1bの発現の増加の倍数を示す図である。5人のドナーからのデータをプールした。平均±SDを表す。
【図24】1000ng/mlのIL−1F6、F8およびF9またはIL−17A(20ng/ml)、IFN−γ(20ng/ml)もしくはTNF−α(20ng/ml)の組合せと共にインキュベーションした72時間後のケラチノサイトにおける、IL1α(a)、IL1β(b)、IL−1F6(c)およびIL−1F9(d)の発現の増加の倍数を示す図である。1人のドナーからのデータを示す。
【図25】1000ng/mlのIL−1F6、IL−1F8およびIL−1F9の単独、またはIL−17A(20ng/ml)、IFN−γ(20ng/ml)もしくはTNF−α(20ng/ml)との組合せと共にインキュベーションした6時間または72時間(G−il6のみ)後のケラチノサイトにおける、saa1/2(a)、セルピンe1(b)、plau(c)、plat(d)、tnfa(e)およびil6(f)の発現の増加の倍数を示す図である。1人のドナーからのデータを示す。
【図26】1000ng/mlのIL−1F6、IL−1F8およびIL−1F9の単独、またはIL−17A(20ng/ml)、IFN−γ(20ng/ml)もしくはTNF−α(20ng/ml)との組合せと共にインキュベーションした72時間後のケラチノサイトにおける、GAPDHと比較したs100a7およびdef4の発現、(a)および(c)またはs100a7およびdef4遺伝子の発現の増加の倍数、(b)および(d)を示す図である。1人のドナーからのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
別段に定義しない限りは、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載のものに類似または均等な方法および材料を特許請求の範囲の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書中で引用するすべての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参考として組み込まれている。不一致の場合は、定義を含めて本明細書が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は例示的のみであり、限定することを意図しない。
【0022】
本発明をより容易に理解し得るために、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義を詳細な説明全体にわたって記載する。具体的な定義を提供しない限りは、本明細書中に記載する分析化学、合成有機化学、ならびに医学および薬学の化学に関連して利用する学名ならびにその実験室手順および技術は、当分野で周知かつ一般的に使用されているものである。標準技術を化学合成、化学分析、薬剤の調製、配合、送達、および患者の処置に使用し得る。
【0023】
本出願中では、別段に具体的に指定しない限りは、単数形の使用には複数形が含まれる。本出願中では、「または(or)」の使用は、別段に指定しない限りは「および/または(and/or)」を意味する。複数の従属クレームのコンテキストでは、「または(or)」の使用は、複数の先行する独立または従属クレームを二者択一のみで言及する。さらに、用語「含める(including)」ならびに「含まれる(includes)」および「含めた(included)」などの他の形態の使用は限定的でない。また、「要素」または「構成要素」などの用語には、別段に具体的に指定しない限りは、単一ユニットを含む要素および構成要素ならびに複数のサブユニットを含む要素および構成要素がどちらも包含される。
【0024】
他の特長および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0025】
本出願は、少なくとも部分的に、高い親和性および特異性でIL−22、特にヒトIL−22と結合する抗体およびその抗原結合断片を規定する。特定の実施形態では、抗IL−22抗体またはその断片は、IL−22関連障害および/または炎症性障害、たとえば、自己免疫障害、たとえば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎が含まれる)、強皮症、全身性エリテマトーデス、HIV、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎が含まれる)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、真性糖尿病(I型);たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)および膵臓(たとえば膵炎)の炎症状態;心血管障害、たとえば、コレステロール代謝障害、酸素フリーラジカル傷害、虚血;創傷治癒に関連する障害;呼吸障害、たとえば、喘息およびCOPD(たとえば嚢胞性線維症);急性炎症状態(たとえば、内毒血症;敗血症(sepsis、septicaemia)、毒素ショック症候群および感染症)、移植片拒絶およびアレルギーを診断、処置または予防するために使用することができる。一実施形態では、IL−22関連障害は、関節障害、たとえば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、もしくは強直性脊椎炎のうちの1つまたは複数から選択される障害;呼吸障害(たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);または、たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)、膵臓(たとえば膵炎)、ならびに胃腸器官、たとえば、大腸炎、クローン病およびIBDの炎症状態である。
【0026】
用語「インターロイキン−22」すなわち「IL−22」とは、IL−22Rおよび/またはIL−22RとIL−10R2との受容体複合体と結合することができるクラスIIサイトカイン(哺乳動物であり得る)をいい、以下の特長のうちの少なくとも1つを有する:(1)天然に存在する哺乳動物IL−22ポリペプチド(完全長もしくは成熟形態)またはその断片のアミノ酸配列、たとえば、配列番号1(ヒト)もしくは配列番号3(マウス)またはその断片として示すアミノ酸配列、(2)配列番号1やそのアミノ酸34〜179(ヒト)もしくは配列番号3(マウス)またはその断片として示すアミノ酸配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列、(3)天然に存在する哺乳動物IL−22ヌクレオチド配列またはその断片(たとえば、配列番号2やヌクレオチド71〜610(ヒト)もしくは配列番号4(マウス)またはその断片)によってコードされているアミノ酸配列、(4)配列番号2やそのヌクレオチド71〜610(ヒト)もしくは配列番号4(マウス)またはその断片として示すヌクレオチド配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、(5)天然に存在するIL−22ヌクレオチド配列またはその断片、たとえば、配列番号2(ヒト)もしくは配列番号4(マウス)またはその断片の縮重であるヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、または(6)ストリンジェントな条件、たとえば高度にストリンジェントな条件下で前述のヌクレオチド配列のうちの1つとハイブリダイズするヌクレオチド配列。IL−22は、哺乳動物起源、たとえばヒトまたはマウスのIL−22Rおよび/またはIL−22RとIL−10R2との受容体複合体と結合し得る。
【0027】
ヒトIL−22のcDNAは1999年4月28日にブダペスト条約の下でオリジナルの寄託物としてAmerican Type Culture Collection(10801 University Boulevard、Manassas、Virginia、米国、20110−2209)に寄託し、受託番号ATCC207231が与えられた。
【0028】
語句「IL−22活性」または「IL−22関連活性」とは、IL−22ポリペプチド、たとえば、成熟IL−22ポリペプチド(たとえば哺乳動物、たとえば、それぞれ配列番号2および4に示すアミノ酸配列を有するヒトまたはマウスIL−22)の生物活性のうちの1つまたは複数をいい、それだけには限定されないが、以下が含まれる:(1)IL−22受容体(たとえば、好ましくは哺乳動物、たとえばマウスまたはヒト起源の、IL−22RもしくはIL−10R2またはその複合体)と相互作用すること、たとえば結合すること、(2)1つまたは複数のシグナル伝達分子と会合すること、(3)プロテインキナーゼ、たとえば、JAK/STAT3、ERK、およびMAPKのリン酸化および/または活性化を刺激すること、(4)IL−22応答性細胞、たとえば、たとえば腎臓、肝臓、結腸、小腸、甲状腺、膵臓、皮膚)からの上皮細胞の増殖、分化、エフェクター細胞機能、細胞溶解活性、サイトカインもしくはケモカインの分泌、および/または生存を変調、たとえば刺激または減少させること、(5)急性期反応、たとえば、代謝、肝臓、造血(たとえば、貧血、血小板増加)もしくは神経内分泌変化、あるいは変化(たとえば急性期タンパク質の増加もしくは減少、たとえばフィブリノーゲンおよび/もしくは血清アミロイドAの増加、またはアルブミンの減少)の少なくとも1つのパラメータを変調すること、ならびに/あるいは(6)炎症状態の少なくとも1つのパラメータを変調すること、たとえば、サイトカイン媒介性炎症誘発作用(たとえば、発熱、および/またはプロスタグランジン合成、たとえばPGE合成)を変調すること、細胞性免疫応答を変調すること、サイトカイン、ケモカイン(たとえばGRO1)、またはリンホカインの産生および/または分泌(たとえば炎症誘発性サイトカインの産生および/または分泌)を変調すること。
【0029】
本出願は、少なくとも部分的に、高い親和性および特異性でIL−1F6、特にヒトIL−1F6と結合する抗体およびその抗原結合断片を規定する。特定の実施形態では、抗IL−1F6抗体またはその断片は、IL−1F6関連障害および/または炎症性障害、たとえば、自己免疫障害、たとえば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎が含まれる)、強皮症、全身性エリテマトーデス、HIV、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎が含まれる)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、真性糖尿病(I型);たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)および膵臓(たとえば膵炎)の炎症状態;心血管障害、たとえば、コレステロール代謝障害、酸素フリーラジカル傷害、虚血;創傷治癒に関連する障害;呼吸障害、たとえば、喘息およびCOPD(たとえば嚢胞性線維症);急性炎症状態(たとえば、内毒血症、敗血症(sepsis、septicaemia)、毒素ショック症候群および感染症);移植片拒絶およびアレルギーを診断、処置または予防するために使用することができる。一実施形態では、IL−1F6関連障害は、関節障害、たとえば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、もしくは強直性脊椎炎のうちの1つまたは複数から選択される障害;呼吸障害(たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);または、たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)、膵臓(たとえば膵炎)、ならびに胃腸器官、たとえば、大腸炎、クローン病およびIBDの炎症状態である。
【0030】
用語「IL−1F6」とはIL−1サイトカインをいい、以下の特長のうちの少なくとも1つを有する:(1)天然に存在する哺乳動物IL−F6ポリペプチド(完全長もしくは成熟形態)またはその断片のアミノ酸配列、たとえば配列番号6またはその断片として示すアミノ酸配列、(2)配列番号6またはその断片として示すアミノ酸配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列、(3)天然に存在する哺乳動物IL−1F6ヌクレオチド配列またはその断片(たとえば配列番号5またはその断片)によってコードされているアミノ酸配列、(4)配列番号5またはその断片として示すヌクレオチド配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、(5)天然に存在するIL−1F6ヌクレオチド配列またはその断片、たとえば配列番号5またはその断片の縮重であるヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、あるいは(6)ストリンジェントな条件、たとえば高度にストリンジェントな条件下で配列番号5とハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【0031】
本出願は、少なくとも部分的に、高い親和性および特異性でIL−1F8、特にヒトIL−1F8と結合する抗体およびその抗原結合断片を規定する。特定の実施形態では、抗IL−1F8抗体またはその断片は、IL−1F8関連障害および/または炎症性障害、たとえば、自己免疫障害、たとえば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎が含まれる)、強皮症、全身性エリテマトーデス、HIV、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎が含まれる)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、真性糖尿病(I型);たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)および膵臓(たとえば膵炎)の炎症状態;心血管障害、たとえば、コレステロール代謝障害、酸素フリーラジカル傷害、虚血;創傷治癒に関連する障害;呼吸障害、たとえば、喘息およびCOPD(たとえば嚢胞性線維症);急性炎症状態(たとえば、内毒血症、敗血症(sepsis、septicaemia)、毒素ショック症候群および感染症);移植片拒絶およびアレルギーを診断、処置または予防するために使用することができる。一実施形態では、IL−1F8関連障害は、関節障害、たとえば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、もしくは強直性脊椎炎のうちの1つまたは複数から選択される障害;呼吸障害(たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);または、たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)、膵臓(たとえば膵炎)、ならびに胃腸器官、たとえば、大腸炎、クローン病およびIBDの炎症状態である。
【0032】
用語「IL−1F8」とはIL−1サイトカインをいい、以下の特長のうちの少なくとも1つを有する:(1)天然に存在する哺乳動物IL−F8ポリペプチド(完全長もしくは成熟形態)またはその断片のアミノ酸配列、たとえば配列番号8またはその断片として示すアミノ酸配列、(2)配列番号8またはその断片として示すアミノ酸配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列、(3)天然に存在する哺乳動物IL−1F8ヌクレオチド配列またはその断片(たとえば配列番号7またはその断片)によってコードされているアミノ酸配列、(4)配列番号7またはその断片として示すヌクレオチド配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、(5)天然に存在するIL−1F8ヌクレオチド配列またはその断片、たとえば配列番号7またはその断片の縮重であるヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、あるいは(6)ストリンジェントな条件、たとえば高度にストリンジェントな条件下で配列番号7とハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【0033】
本出願は、少なくとも部分的に、高い親和性および特異性でIL−1F9、特にヒトIL−1F9と結合する抗体およびその抗原結合断片を規定する。特定の実施形態では、抗IL−1F9抗体またはその断片は、IL−1F9関連障害および/または炎症性障害、たとえば、自己免疫障害、たとえば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎が含まれる)、強皮症、全身性エリテマトーデス、HIV、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎が含まれる)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、真性糖尿病(I型);たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)および膵臓(たとえば膵炎)の炎症状態;心血管障害、たとえば、コレステロール代謝障害、酸素フリーラジカル傷害、虚血;創傷治癒に関連する障害;呼吸障害、たとえば、喘息およびCOPD(たとえば嚢胞性線維症);急性炎症状態(たとえば、内毒血症、敗血症(sepsis、septicaemia)、毒素ショック症候群および感染症);移植片拒絶およびアレルギーを診断、処置または予防するために使用することができる。一実施形態では、IL−1F9関連障害は、関節障害、たとえば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、もしくは強直性脊椎炎のうちの1つまたは複数から選択される障害;呼吸障害(たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);または、たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)、膵臓(たとえば膵炎)、ならびに胃腸器官、たとえば、大腸炎、クローン病およびIBDの炎症状態である。
【0034】
用語「IL−1F9」とはIL−1サイトカインをいい、以下の特長のうちの少なくとも1つを有する:(1)天然に存在する哺乳動物IL−F9ポリペプチド(完全長もしくは成熟形態)またはその断片のアミノ酸配列、たとえば配列番号10またはその断片として示すアミノ酸配列、(2)配列番号10またはその断片として示すアミノ酸配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列、(3)天然に存在する哺乳動物IL−1F9ヌクレオチド配列またはその断片(たとえば配列番号9またはその断片)によってコードされているアミノ酸配列、(4)配列番号9またはその断片として示すヌクレオチド配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、(5)天然に存在するIL−1F9ヌクレオチド配列またはその断片、たとえば配列番号9またはその断片の縮重であるヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、あるいは(6)ストリンジェントな条件、たとえば高度にストリンジェントな条件下で配列番号9とハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【0035】
本出願は、少なくとも部分的に、高い親和性および特異性でIL−1Rrp2、特にヒトIL−1Rrp2と結合する抗体およびその抗原結合断片を規定する。特定の実施形態では、抗IL−1Rrp2抗体またはその断片は、IL−1Rrp2関連障害および/または炎症性障害、たとえば、自己免疫障害、たとえば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎が含まれる)、強皮症、全身性エリテマトーデス、HIV、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎が含まれる)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、真性糖尿病(I型);たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)および膵臓(たとえば膵炎)の炎症状態;心血管障害、たとえば、コレステロール代謝障害、酸素フリーラジカル傷害、虚血;創傷治癒に関連する障害;呼吸障害、たとえば、喘息およびCOPD(たとえば嚢胞性線維症);急性炎症状態(たとえば、内毒血症、敗血症(sepsis、septicaemia)、毒素ショック症候群および感染症);移植片拒絶およびアレルギーを診断、処置または予防するために使用することができる。一実施形態では、IL−1Rrp2関連障害は、関節障害、たとえば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、もしくは強直性脊椎炎のうちの1つまたは複数から選択される障害;呼吸障害(たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);または、たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)、膵臓(たとえば膵炎)、ならびに胃腸器官、たとえば、大腸炎、クローン病およびIBDの炎症状態である。
【0036】
用語「IL−1Rrp2」とはIL−1サイトカイン受容体(インターロイキン1受容体様2(IL−1RL2))をいい、以下の特長のうちの少なくとも1つを有する:(1)天然に存在する哺乳動物IL−Rrp2ポリペプチド(完全長もしくは成熟形態)またはその断片のアミノ酸配列、たとえば配列番号12またはその断片として示すアミノ酸配列、(2)配列番号12またはその断片として示すアミノ酸配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列、(3)天然に存在する哺乳動物IL−1Rrp2ヌクレオチド配列またはその断片(たとえば配列番号11またはその断片)によってコードされているアミノ酸配列、(4)配列番号11またはその断片として示すヌクレオチド配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、(5)天然に存在するIL−1Rrp2ヌクレオチド配列またはその断片、たとえば配列番号11またはその断片の縮重であるヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、あるいは(6)ストリンジェントな条件、たとえば高度にストリンジェントな条件下で配列番号11とハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【0037】
本出願は、少なくとも部分的に、高い親和性および特異性でIL−17A、特にヒトIL−17Aと結合する抗体およびその抗原結合断片を規定する。特定の実施形態では、抗IL−17A抗体またはその断片は、IL−17A関連障害および/または炎症性障害、たとえば、自己免疫障害、たとえば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎が含まれる)、強皮症、全身性エリテマトーデス、HIV、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎が含まれる)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、真性糖尿病(I型);たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)および膵臓(たとえば膵炎)の炎症状態;心血管障害、たとえば、コレステロール代謝障害、酸素フリーラジカル傷害、虚血;創傷治癒に関連する障害;呼吸障害、たとえば、喘息およびCOPD(たとえば嚢胞性線維症);急性炎症状態(たとえば、内毒血症、敗血症(sepsis、septicaemia)、毒素ショック症候群および感染症);移植片拒絶およびアレルギーを診断、処置または予防するために使用することができる。一実施形態では、IL−17A害は、関節障害、たとえば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、もしくは強直性脊椎炎のうちの1つまたは複数から選択される障害;呼吸障害(たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD);または、たとえば、皮膚(たとえば乾癬)、心血管系(たとえばアテローム性動脈硬化症)、神経系(たとえばアルツハイマー病)、肝臓(たとえば肝炎)、腎臓(たとえば腎炎)、膵臓(たとえば膵炎)、ならびに胃腸器官、たとえば、大腸炎、クローン病およびIBDの炎症状態である。
【0038】
用語「IL−17A」とはIL−17サイトカインをいい、以下の特長のうちの少なくとも1つを有する:(1)天然に存在する哺乳動物IL−17Aポリペプチド(完全長もしくは成熟形態)またはその断片のアミノ酸配列、たとえば配列番号14またはその断片として示すアミノ酸配列、(2)配列番号14またはその断片として示すアミノ酸配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列、(3)天然に存在する哺乳動物IL−17Aヌクレオチド配列またはその断片(たとえば配列番号13またはその断片)によってコードされているアミノ酸配列、(4)配列番号13またはその断片として示すヌクレオチド配列と実質的に同一、たとえば、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、(5)天然に存在するIL−17Aヌクレオチド配列またはその断片、たとえば配列番号13またはその断片の縮重であるヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列、あるいは(6)ストリンジェントな条件、たとえば高度にストリンジェントな条件下で配列番号13とハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【0039】
用語「サイトカイン活性」とは、一般的に使用するか、または、それだけには限定されないがIL−22、IL−17A、IL−1F6、IL−1F8、もしくはIL−1F9などの特定のサイトカインに適用するかに関わらず、そのサイトカインが細胞上のその受容体(複数可)と結合した結果として開始または中断される、少なくとも1つの細胞プロセスをいう。IL−22のサイトカイン活性には、それだけには限定されないが、以下のうちの少なくとも1つが含まれる:(1)細胞受容体サブユニットまたは複合体、たとえばIL−22R1、IL−10R2、またはIL−22R1/IL−10R2と結合すること、(2)シグナル伝達分子(たとえばJAK−1)と会合すること、(3)STATタンパク質(たとえば、STAT5、STAT3、またはその組合せ)のリン酸化を刺激すること、(4)STATタンパク質を活性化すること、(5)急性期反応物質(たとえば、血清アミロイドA、フィブリノーゲン、ハプトグロビン、または血清アルブミン)および細胞(たとえば、好中球、血小板、または赤血球の変調を含めた、急性期反応の指標であるパラメータを誘導すること、ならびに(6)上皮細胞、線維芽細胞、または免疫細胞の増殖、分化、エフェクター細胞機能、細胞溶解活性、サイトカイン分泌、生存、またはその組合せを変調する(たとえば増加または減少させる)こと。上皮細胞には、それだけには限定されないが、皮膚、腸、肝臓、および腎臓の細胞、ならびに内皮細胞が含まれる。線維芽細胞には、それだけには限定されないが滑膜線維芽細胞が含まれる。免疫細胞には、CD8およびCD4T細胞、NK細胞、B細胞、マクロファージ、巨核球、ならびに特殊分化または組織免疫細胞、たとえば炎症組織中に見つかるものまたはIL−22受容体を発現するものが含まれ得る。
【0040】
IL−17AおよびIL−17Fのサイトカイン活性には、それだけには限定されないが、以下のうちの少なくとも1つが含まれる:(1)IL−17R、IL−17A、IL−17RC、IL−17RH1、IL−17RL、IL−17RD、またはIL−17REなどの細胞受容体と結合すること、(2)血管形成を阻害すること、(3)造血細胞または軟骨、骨、半月板、脳、腎臓、肺、皮膚および腸管中に存在する細胞の増殖、分化、エフェクター細胞機能、細胞溶解活性、サイトカイン分泌、生存、またはその組合せを変調する(たとえば増加または減少させる)こと、(4)IL−6および/またはIL−8の産生を誘導すること、ならびに(5)一酸化窒素の産生を刺激すること。
【0041】
2つの状態間の定量的な差異を表す、たとえば用語「誘導する」、「低下させる」、「阻害する」、「増強する」、「上昇させる」、「増加させる」、「減少させる」等とは、2つの状態間の少なくとも統計的に有意な差異をいう。
【0042】
用語「特異的結合」または「特異的に結合する」とは、生理条件下で比較的安定な複合体を形成する2つの分子をいう。特異的結合は高い親和性および低い〜中等度の能力によって特徴づけられ、通常低い親和性および中等度〜高い能力を有する非特異的結合とは区別される。典型的には、会合定数Kが10−1よりも高い場合に結合は特異的であるとみなされる。必要な場合は、結合条件を変動することによって、特異的結合に実質的な影響を与えずに非特異的結合を低下させることができる。抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、遮断剤(たとえば、血清アルブミン、乳カゼイン)の濃度等の適切な結合条件を、当業者がルーチン的な技術を用いて最適化し得る。
【0043】
用語「特異的結合剤」とは、標的と特異的に結合する天然または非天然の分子をいう。特異的結合剤の例には、それだけには限定されないが、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、および小分子化合物が含まれる。特定の実施形態では、特異的結合剤は抗体である。特定の実施形態では、特異的結合剤は抗原結合領域である。
【0044】
用語「構造」には、生物製剤(たとえば、それだけには限定されないが、抗体およびその断片)ならびに小分子のどちらの構造も包含される。
【0045】
用語「抗体」とは、全抗体の修飾によって生成し得る、Fab、Fab’、F(ab’)、Fc、Fd、Fd’、Fv、単鎖抗体(たとえばscFv)、単一可変ドメイン抗体(Dab)、ダイアボディー(二価および二重特異性)、ならびにキメラ(たとえばヒト化)抗体などの免疫グロブリンもしくはその断片、または組換えDNA技術を用いて新規合成したものをいう。これらの機能的抗体断片は、そのそれぞれの抗原または受容体と選択的に結合する能力を保持している。抗体および抗体断片は、それだけには限定されないが、IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEを含めた任意の抗体クラス、ならびに任意の抗体サブクラス(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)からのものであることができる。本発明の抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであることができる。また、抗体は、単一特異性、多特異性、非特異的、ヒト化、ヒト、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、突然変異した、CDR移植、および/またはin vitroで作製した抗体であることもできる。抗体は、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有することができる。また、抗体は、たとえばカッパまたはラムダから選択される軽鎖を有することもできる。抗体の定常領域は、抗体の特性を改変する(たとえば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つまたは複数を増加または減少させる)ために、変更、たとえば突然変異させることができる。典型的には、抗体は、所定の抗原、たとえば障害、たとえば神経変性、代謝性、炎症性、自己免疫性および/または悪性の障害に関連する抗原と特異的に結合する。「インタクト」という言葉が先行しない限りは、用語「抗体」には、完全な抗体分子に加えて、Fab、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAb、および抗原結合機能を保持する他の抗体断片などの抗体断片が含まれる。典型的には、そのような断片は抗原結合ドメインを含む。
【0046】
抗体には、重鎖および軽鎖の定常領域がさらに含まれ、それによりそれぞれ免疫グロブリンの重鎖および軽鎖が形成され得る。特定の実施形態では、抗体は2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖の四量体であり、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖は、たとえばジスルフィド結合によって相互接続されている。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLからなる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。典型的には、抗体の定常領域は、抗体と免疫系の様々な細胞(たとえばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第1構成要素(C1q)を含めた宿主の組織または因子との結合を媒介する。
【0047】
用語「抗原結合ドメイン」および「抗原結合断片」とは、抗体と抗原との間の特異的結合を担っているアミノ酸を含む、抗体分子の部分をいう。抗体によって特異的認識および結合される抗原の部分は、「エピトープ」という。抗原結合ドメインは抗体軽鎖可変領域(V)および抗体重鎖可変領域(V)を含み得るが、必ず両方を含む必要はない。たとえば、Fd断片は2つのV領域を有しており、多くの場合インタクトな抗原結合ドメインの一部の抗原結合機能を保持している。抗体の抗原結合断片の例には、(1)Fab断片、すなわち、V、V、CおよびC1ドメインを有する一価断片、(2)F(ab’)断片、すなわち、ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2つのFab断片を有する二価断片、(3)2つのVおよびC1ドメインを有するFd断片、(4)抗体の単一アームのVおよびVドメインを有するFv断片、(5)1つのVドメインを有するdAb断片(Wardら、(1989)Nature、341:544〜546)、(6)単離した相補性決定領域(CDR)、ならびに(7)単鎖Fv(scFv)が含まれる。Fv断片の2つのドメインであるVおよびVは別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、VおよびV領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる、たとえば、Birdら(1988)Science、242:423〜426およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879〜5883を参照)として作製することが可能になる合成リンカーによって、組換え方法を用いて、一緒にすることができる。これらの抗体断片は当業者に知られている慣用技術を用いて得られ、インタクトな抗体と同じ様式で断片を機能について評価する。
【0048】
本明細書中で使用する用語「免疫グロブリン」とは、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされている1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質をいう。認められているヒト免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロン、ミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdまたは214個のアミノ酸)は、NH2末端(約110個のアミノ酸)の可変領域遺伝子およびCOOH末端のカッパまたはラムダ定常領域遺伝子によってコードされている。同様に、完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kdまたは446個のアミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116個のアミノ酸)および他の前述の定常領域遺伝子のうちの1つ、たとえばガンマ(約330個のアミノ酸をコードしている)によってコードされている。
【0049】
本明細書中で使用する「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされている抗体クラス(たとえばIgMまたはIgGI)をいう。
【0050】
用語「ヒト抗体」には、たとえばKabatら(Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication第91−3242号を参照)によって記載されているものを含めた、当分野で知られているヒト生殖系列免疫グロブリン配列に実質的に対応している可変および定常領域を有する抗体が含まれる。特定の実施形態では、ヒト抗体には、たとえばCDR中、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(たとえば、in vitroのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発またはin vivoの体細胞突然変異によって導入された突然変異)が含まれ得る。ヒト抗体は、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、またはそれより多くの位置がヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基で置き換えられている場合がある。
【0051】
用語「単離した」とは、その天然環境を実質的に含まない分子をいう。たとえば、単離したタンパク質は、それが由来した細胞または組織源からの細胞物質または他のタンパク質を実質的に含まない。また、この用語は、単離したタンパク質が医薬組成物用に十分に純粋である、または少なくとも70〜80%(w/w)純粋である、または少なくとも80〜90%(w/w)純粋である、または少なくとも90〜95%純粋である、または少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%(w/w)純粋である調製物もいう。
【0052】
用語「治療剤」とは、医学的障害を処置するまたはその処置を補助する物質である。治療剤には、それだけには限定されないが、抗IL−22抗体のIL−22活性を補足する様式で免疫細胞または免疫応答を変調する物質が含まれ得る。治療剤の非限定的な例および使用を本明細書中に記載する。
【0053】
用語「処置」とは、治療的または予防的な手段をいう。処置は、医学的障害を有している対象または最終的に障害を有する可能性のある対象に、障害もしくは再発性障害の1つもしくは複数の症状を予防する、治癒する、遅延させる、その重篤度を低下させる、および/もしくは寛解させるため、または、そのような処置の非存在下で予測されるよりも長く対象の生存を延長させるために施し得る。
【0054】
用語「有効量」とは、臨床症状を寛解させるまたは所望の生物学的結果を達成する、たとえば、T細胞および/もしくはB細胞の活性の減少、自己免疫の抑制、移植片拒絶の抑制等のために、活性を調節するために十分な用量または量をいう。
【0055】
2つの薬剤を用いた処置のコンテキストにおける用語「組み合わせて」とは、薬剤を実質的に同時存在するように、すなわち、同時にまたは連続的に与えることを意味する。連続的に与える場合は、第2の化合物の投与開始時に、2つの化合物のうちの最初のものが処置部位で有効な濃度で検出可能なままであることが好ましい。
【0056】
語句「パーセント同一」または「%同一性」とは、少なくとも2つの異なる配列間の類似度をいう。この%同一性は、標準のアラインメントアルゴリズム、たとえば、Altshulら((1990)J.Mol.Biol.、215:403〜410)によって記載されているBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlemanら((1970)J.Mol.Biol.、48:444〜453)のアルゴリズム、またはMeyersら((1988)Comput.Appl.Biosci.、4:11〜17)のアルゴリズムによって決定することができる。一組のパラメータは、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5を有するBlosum62スコア付けマトリックスであり得る。また、2つのアミノ酸またはヌクレオチドの配列間の%同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Miller((1989)CABIOS、4:11〜17)のアルゴリズムを用いて、PAM120ウェイト残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して決定することもできる。%同一性は、通常は同様の長さの配列を比較することによって計算する。
【0057】
特定の実施形態では、開示した配列と同様または相同的な(たとえば少なくとも約85%の配列同一性の)配列を提供する。特定の実施形態では、配列同一性は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い場合がある。あるいは、核酸セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件(たとえば高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で鎖の補体とハイブリダイズする場合は、実質的な同一性が存在する。核酸は全細胞中、細胞溶解液中、または部分精製したもしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。
【0058】
単離したポリヌクレオチドは、開示したポリヌクレオチドをコードしているものと同一または同様の配列を有する核酸を同定および単離するためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとして使用し得る。この様式で単離したポリヌクレオチドは、たとえば、それだけには限定されないが、IL−22もしくは他のIL−10様サイトカインに対する抗体を産生するため、またはそのような抗体を発現する細胞を同定するために使用し得る。核酸を同定および単離するためのハイブリダイゼーション方法には、サザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーションおよびノーザンハイブリダイゼーションが含まれ、当業者に周知である。
【0059】
ハイブリダイゼーション反応は様々なストリンジェンシーの条件下で行うことができる。好ましくは、ハイブリダイズさせるそれぞれのポリヌクレオチドは、低いストリンジェンシー条件、より好ましくはストリンジェントな条件、最も好ましくは高度にストリンジェントな条件下でその対応するポリヌクレオチドとハイブリダイズする。ストリンジェンシー条件の例を以下の表1に示す。高度にストリンジェントな条件とは、少なくともたとえば条件A〜Fと同等にストリンジェントなものであり、ストリンジェントな条件とは、少なくともたとえば条件G〜Lと同等にストリンジェントであり、低いストリンジェンシー条件とは、少なくともたとえば条件M〜Rと同等にストリンジェントである。
【0060】
【表1−1】

【0061】
【表1−2】

【0062】
ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件のさらなる例は、本明細書中に参考として組み込まれているSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第9および11章、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NY(1989)およびAusubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、セクション2.10および6.3〜6.4、John Wiley&Sons,Inc.(1995)に提供されている。
【0063】
単離したポリヌクレオチドは、開示したポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体をコードしている配列を有するDNAを同定および単離するためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとして使用し得る。対立遺伝子変異体は、開示したポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドに同一であるまたは有意な類似度を有するポリペプチドをコードしている、開示したポリヌクレオチドの天然に存在する代替形態である。好ましくは、対立遺伝子変異体は、開示したポリヌクレオチドと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0064】
また、単離したポリヌクレオチドは、開示したポリヌクレオチドに相同的なポリペプチドをコードしている配列を有するDNAを同定および単離するためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとしても使用し得る。これらの相同体は、開示したポリペプチドおよびポリヌクレオチドとは異なる種から単離したか、または同じ種内から単離したが、開示したポリヌクレオチドおよびポリペプチドと有意な配列類似度を有するポリヌクレオチドおよびポリペプチドである。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド相同体は、開示したポリヌクレオチドと少なくとも50%、75%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する一方で、ポリペプチド相同体は、開示した抗体/ポリペプチドと少なくとも30%、45%、または60%の同一性を有する。特定の実施形態では、開示したポリヌクレオチドおよびポリペプチドの相同体とは、哺乳動物種から単離したものである。
【0065】
また、単離したポリヌクレオチドは、抗体を含めたタンパク質を発現する細胞および組織、ならびにそれらが発現される条件を同定するためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとしても使用し得る。
【0066】
ポリペプチドおよび拮抗剤、たとえば抗体は、その機能に実質的な効果を有さない追加の保存的または非必須のアミノ酸置換を有し得ることが理解されよう。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(たとえば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分枝状側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0067】
IL−22のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列は米国特許第7,307,161号に記載されており、以下に提供する。また、それぞれのクローンのヌクレオチド配列は、寄託されたクローンを既知の方法に従って配列決定することによっても決定することができる。本明細書中で使用する「分泌された」タンパク質とは、適切な宿主細胞中で発現された場合に、そのアミノ酸配列中のシグナル配列の結果としての輸送を含めて、膜を横切ってまたは通って輸送されるものである。「分泌された」タンパク質には、それだけには限定されないが、それらが発現される細胞から全体的(たとえば可溶性タンパク質)または部分的に(たとえば受容体)分泌されたタンパク質が含まれる。また、「分泌された」タンパク質には、それだけには限定されないが、小胞体の膜を横切って輸送されるタンパク質が含まれる。
【0068】
完全長未満のIL−22タンパク質の任意の形態を本特許請求の範囲の方法および組成物中で使用することができる。IL−22断片、たとえば完全長未満のIL−22タンパク質は、完全長IL−22タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの対応する断片を宿主細胞中で発現させることによって産生させることができる。上述の改変したポリヌクレオチドは、適切な所望の欠失突然変異体の構築、部位特異的突然変異誘発方法を含めた標準の分子生物学技術によって、または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって作製し得る。
【0069】
完全長未満のIL−1F6タンパク質の任意の形態を本特許請求の範囲の方法および組成物中で使用することができる。IL−1F6断片、たとえば完全長未満のIL−1F6タンパク質は、完全長IL−F6タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの対応する断片を宿主細胞中で発現させることによって産生させることができる。上述の改変したポリヌクレオチドは、適切な所望の欠失突然変異体の構築、部位特異的突然変異誘発方法を含めた標準の分子生物学技術によって、または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって作製し得る。
【0070】
完全長未満のIL−1F8タンパク質の任意の形態を本特許請求の範囲の方法および組成物中で使用することができる。IL−1F8断片、たとえば完全長未満のIL−1F8タンパク質は、完全長IL−1F8タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの対応する断片を宿主細胞中で発現させることによって産生させることができる。上述の改変したポリヌクレオチドは、適切な所望の欠失突然変異体の構築、部位特異的突然変異誘発方法を含めた標準の分子生物学技術によって、または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって作製し得る。
【0071】
完全長未満のIL−1F9タンパク質の任意の形態を本特許請求の範囲の方法および組成物中で使用することができる。IL−1F9断片、たとえば完全長未満のIL−1F9タンパク質は、完全長IL−1F9タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの対応する断片を宿主細胞中で発現させることによって産生させることができる。上述の改変したポリヌクレオチドは、適切な所望の欠失突然変異体の構築、部位特異的突然変異誘発方法を含めた標準の分子生物学技術によって、または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって作製し得る。
【0072】
完全長未満のIL−1Rrp2タンパク質の任意の形態を本特許請求の範囲の方法および組成物中で使用することができる。IL−1Rrp2断片、たとえば完全長未満のIL−1Rrp2タンパク質は、完全長IL−1Rrp2タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの対応する断片を宿主細胞中で発現させることによって産生させることができる。上述の改変したポリヌクレオチドは、適切な所望の欠失突然変異体の構築、部位特異的突然変異誘発方法を含めた標準の分子生物学技術によって、または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって作製し得る。
【0073】
完全長未満のIL−17Aタンパク質の任意の形態を本特許請求の範囲の方法および組成物中で使用することができる。IL−17A断片、たとえば完全長未満のIL−17Aタンパク質は、完全長IL−17Aタンパク質をコードしているポリヌクレオチドの対応する断片を宿主細胞中で発現させることによって産生させることができる。上述の改変したポリヌクレオチドは、適切な所望の欠失突然変異体の構築、部位特異的突然変異誘発方法を含めた標準の分子生物学技術によって、または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって作製し得る。
【0074】
タンパク質の断片は直鎖状であることができ、または、これらは既知の方法を用いて、たとえば、どちらも本明細書中に参考として組み込まれているH.U.Saragoviら、Bio/Technology、10、773〜778(1992)およびR.S.McDowellら、J.Amer.Chem.Soc.、114、9245〜9253(1992)に記載のように、環化することができる。そのような断片は、タンパク質結合部位の結合価の増加を含めた多くの目的のために、免疫グロブリンなどの担体分子と融合させることができる。たとえば、タンパク質の断片は、「リンカー」配列を介して免疫グロブリンのFc部分と融合させることができる。タンパク質の二価形態には、融合はIgG分子のFc部分とであることができる。他の免疫グロブリンアイソタイプを用いてそのような融合体を作製し得る。たとえば、タンパク質−1gM融合を用いて、タンパク質の10価形態を作製することができる。
【0075】
IL−22タンパク質およびその断片には、開示したタンパク質の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%)であり、その開示したタンパク質と少なくとも60%の配列同一性(断片の長さに沿って、より好ましくは少なくとも75%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性)を有するアミノ酸の配列長のタンパク質が含まれ、配列同一性は、重複および同一性を最大限にする一方で配列ギャップを最小限にするようにアラインメントした際のタンパク質のアミノ酸配列を比較することによって決定する。特定の実施形態では、タンパク質およびタンパク質断片は、8個以上(より好ましくは20個以上、最も好ましくは30個以上)の連続的なアミノ酸を含むセグメントであって、開示したタンパク質のうちの任意のものの任意のそのようなセグメントと少なくとも75%の配列同一性(より好ましくは少なくとも85%の同一性、最も好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を共有するセグメントを含有する。
【0076】
IL−1F6タンパク質およびその断片には、開示したタンパク質の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%)であり、その開示したタンパク質と少なくとも60%の配列同一性(断片の長さに沿って、より好ましくは少なくとも75%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性)を有するアミノ酸の配列長のタンパク質が含まれ、配列同一性は、重複および同一性を最大限にする一方で配列ギャップを最小限にするようにアラインメントした際のタンパク質のアミノ酸配列を比較することによって決定する。特定の実施形態では、タンパク質およびタンパク質断片は、8個以上(より好ましくは20個以上、最も好ましくは30個以上)の連続的なアミノ酸を含むセグメントであって、開示したタンパク質のうちの任意のものの任意のそのようなセグメントと少なくとも75%の配列同一性(より好ましくは少なくとも85%の同一性、最も好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を共有するセグメントを含有する。
【0077】
IL−1F8タンパク質およびその断片には、開示したタンパク質の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%)であり、その開示したタンパク質と少なくとも60%の配列同一性(断片の長さに沿って、より好ましくは少なくとも75%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性)を有するアミノ酸の配列長のタンパク質が含まれ、配列同一性は、重複および同一性を最大限にする一方で配列ギャップを最小限にするようにアラインメントした際のタンパク質のアミノ酸配列を比較することによって決定する。特定の実施形態では、タンパク質およびタンパク質断片は、8個以上(より好ましくは20個以上、最も好ましくは30個以上)の連続的なアミノ酸を含むセグメントであって、開示したタンパク質のうちの任意のものの任意のそのようなセグメントと少なくとも75%の配列同一性(より好ましくは少なくとも85%の同一性、最も好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を共有するセグメントを含有する。
【0078】
IL−1F9タンパク質およびその断片には、開示したタンパク質の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%)であり、その開示したタンパク質と少なくとも60%の配列同一性(断片の長さに沿って、より好ましくは少なくとも75%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性)を有するアミノ酸の配列長のタンパク質が含まれ、配列同一性は、重複および同一性を最大限にする一方で配列ギャップを最小限にするようにアラインメントした際のタンパク質のアミノ酸配列を比較することによって決定する。特定の実施形態では、タンパク質およびタンパク質断片は、8個以上(より好ましくは20個以上、最も好ましくは30個以上)の連続的なアミノ酸を含むセグメントであって、開示したタンパク質のうちの任意のものの任意のそのようなセグメントと少なくとも75%の配列同一性(より好ましくは少なくとも85%の同一性、最も好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を共有するセグメントを含有する。
【0079】
IL−1Rrp2タンパク質およびその断片には、開示したタンパク質の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%)であり、その開示したタンパク質と少なくとも60%の配列同一性(断片の長さに沿って、より好ましくは少なくとも75%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性)を有するアミノ酸の配列長のタンパク質が含まれ、配列同一性は、重複および同一性を最大限にする一方で配列ギャップを最小限にするようにアラインメントした際のタンパク質のアミノ酸配列を比較することによって決定する。特定の実施形態では、タンパク質およびタンパク質断片は、8個以上(より好ましくは20個以上、最も好ましくは30個以上)の連続的なアミノ酸を含むセグメントであって、開示したタンパク質のうちの任意のものの任意のそのようなセグメントと少なくとも75%の配列同一性(より好ましくは少なくとも85%の同一性、最も好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を共有するセグメントを含有する。
【0080】
IL−17Aタンパク質およびその断片には、開示したタンパク質の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも75%)であり、その開示したタンパク質と少なくとも60%の配列同一性(断片の長さに沿って、より好ましくは少なくとも75%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性)を有するアミノ酸の配列長のタンパク質が含まれ、配列同一性は、重複および同一性を最大限にする一方で配列ギャップを最小限にするようにアラインメントした際のタンパク質のアミノ酸配列を比較することによって決定する。特定の実施形態では、タンパク質およびタンパク質断片は、8個以上(より好ましくは20個以上、最も好ましくは30個以上)の連続的なアミノ酸を含むセグメントであって、開示したタンパク質のうちの任意のものの任意のそのようなセグメントと少なくとも75%の配列同一性(より好ましくは少なくとも85%の同一性、最も好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を共有するセグメントを含有する。
【0081】
組換えポリヌクレオチドは、タンパク質を組換えによって産生させるために、たとえば、それだけには限定されないがKaufmanら、Nucleic Acids Res.、19、4485〜4490(1991)に開示されているpMT2またはpED発現ベクターなどの発現制御配列と作動可能に連結させることができる。多くの適切な発現制御配列が当分野で知られている。組換えタンパク質を発現させる一般方法も知られており、R.Kaufman(1990)Methods in Enzymology、185、537〜566に例示されている。本明細書中で定義する「作動可能に連結」とは、ライゲーションしたポリヌクレオチド/発現制御配列で形質転換させた(形質移入した)宿主細胞によってタンパク質が発現されるように、単離したポリヌクレオチドおよび発現制御配列がベクターまたは細胞内に位置していることを意味する。
【0082】
本明細書中で使用する用語「ベクター」とは、それが連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子をいうことを意図する。ベクターの一種は「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントをその中にライゲーションし得る環状の二本鎖DNAループをいう。別の種のベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム内にライゲーションし得る。特定のベクターは、それらを導入する宿主細胞中で自律複製が可能である(たとえば、細菌複製起点およびエピソーム哺乳動物ベクターを有する細菌ベクター)。他のベクター(たとえば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入された際に宿主細胞のゲノム内に組み込まれることができ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結している遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書中で「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合プラスミドの形態である。
【0083】
本明細書中で使用する用語「調節配列」には、プロモーター、エンハンサーおよび抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を調節する他の発現制御要素(たとえばポリアデニル化シグナル)が含まれる。そのような調節配列は、たとえばGoeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、185、Academic Press、San Diego,CA(1990)に記載されている。当業者には、調節配列の選択を含めた発現ベクターの設計が、形質転換させる宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の要因に依存し得ることを理解されたい。哺乳動物宿主細胞発現の調節配列には、それだけには限定されないが、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素、たとえば、FF−1aプロモーターおよびBGHポリA、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(たとえばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))ならびにポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーが含まれる。ウイルス調節要素のさらなる説明およびその配列については、たとえば、Stinskiの米国特許第5,168,062号、Bellらの米国特許第4,510,245号およびSchaffnerらの米国特許第4,968,615号を参照されたい。
【0084】
特定の実施形態では、組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(たとえば複製起点)および選択マーカー遺伝子などの付加配列を保有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが内部に導入された宿主細胞の選択を容易にする(たとえば、すべてAxelらの米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照)。たとえば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に与える。選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を有するdhfr宿主細胞で使用するため)およびneo遺伝子(G418選択用)が含まれる。
【0085】
いくつかの種類の細胞がタンパク質(または融合タンパク質)の発現に適した宿主細胞として作用し得る。機能的IL−22タンパク質を発現することができる任意の細胞種を使用し得る。適切な哺乳動物宿主細胞には、たとえば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、他の形質転換させた霊長類細胞系、正常な二倍体細胞、一次組織のin vitro培養物に由来する細胞株、初代外移植片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK、HL−60、U937、HaK、Rat2、BaF3、32D、FDCP−1、PC12、M1xまたはC2C12細胞が含まれる。
【0086】
また、特定の実施形態では、タンパク質または融合タンパク質は、単離したポリヌクレオチドを適切な制御配列と、1つまたは複数の昆虫発現ベクター中で作動可能に連結させ、昆虫発現系を用いることによっても産生させ得る。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系の材料および方法は、キット形態で、たとえばInvitrogen、San Diego,Calif.、米国から市販されており(MaxBac(登録商標)キット)、そのような方法は、本明細書中に参考として組み込まれているSummersおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)に記載のように、当分野で周知である。また、IL−22タンパク質の可溶形態も、上述の適切な単離したポリヌクレオチドを用いて昆虫細胞中で産生させ得る。
【0087】
あるいは、タンパク質または融合タンパク質は、酵母などの下等真核生物または細菌などの原核生物中で産生させ得る。適切な酵母株には、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)株、カンジダ(Candida)、または異種タンパク質を発現することができる任意の酵母株が含まれる。適切な細菌株には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、または異種タンパク質を発現することができる任意の細菌株が含まれる。
【0088】
細菌中の発現は組換えタンパク質を取り込んだ封入体の形成をもたらし得る。したがって、活性のあるまたはより活性のある物質を生じるために組換えタンパク質の再折り畳みが必要であり得る。細菌封入体から正しく折り畳まれた異種タンパク質を得るためのいくつかの方法が当分野で知られている。一般に、これらの方法は、タンパク質を封入体から可溶化し、その後、カオトロピック剤を用いてタンパク質を完全に変性させることを含む。システイン残基がタンパク質の一次アミノ酸配列中に存在する場合は、多くの場合、ジスルフィド結合の正しい形成を可能にする環境(酸化還元系)中で再折り畳みを達成することが必要である。再折り畳みの一般方法はKohno、Meth.Enzym.、185:187〜195(1990)に開示されている。EP0433225号および同時係属出願の米国特許仮出願第08/163,877号は他の適切な方法を記載している。
【0089】
また、タンパク質または融合タンパク質は、タンパク質または融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチド配列を含有する体細胞または生殖細胞によって特徴づけられているトランスジェニック動物の産物、たとえば、トランスジェニックウシ、ヤギ、ブタ、またはヒツジの乳の構成要素として発現させてもよい。
【0090】
タンパク質または融合タンパク質は、所望のタンパク質を発現させるために必要な培養条件下で、形質転換させた宿主細胞の培養物を成長させることによって調製し得る。その後、生じる発現されたタンパク質を培地または細胞抽出物から精製し得る。タンパク質または融合タンパク質の可溶形態を馴化培地から精製することができる。特定の実施形態では、タンパク質の膜結合形態は、全膜画分を発現細胞から調製し、膜をTriton X−100などの非イオン性洗剤で抽出することによって精製することができる。
【0091】
特定の実施形態では、タンパク質は当業者に知られている方法を用いて精製することができる。たとえば、それだけには限定されないが、タンパク質は、それだけには限定されないがAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを含めた市販のタンパク質濃縮フィルターを用いて濃縮することができる。濃縮ステップ後、濃縮物をゲル濾過媒体などの精製マトリックスに施用することができる。あるいは、陰イオン交換樹脂、たとえば、ペンダントのジエチルアミノエチル(DEAB)またはポリエテイレンイミン(polyetheyleneimine)(PEI)基を有するマトリックスまたは基質を用いることができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製で一般的に用いられる他の種類であることができる。あるいは、陽イオン交換ステップを用いることができる。適切な陽イオン交換剤には、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基を含む様々な不溶性マトリックスが含まれる。特定の実施形態では、スルホプロピル基が好ましい(たとえばS−Sepharose(登録商標)カラム)。また、培養上清からのタンパク質または融合タンパク質の精製には、コンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−toyopearl(登録商標)もしくはCibacrom blue 3GA Sepharose(登録商標)などの親和性樹脂上の1つもしくは複数のカラムステップ、またはフェニルエーテル、ブチルエーテル、もしくはプロピルエーテルなどの樹脂を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはイムノアフィニティークロマトグラフィーも含まれ得る。最後に、疎水性RP−HPLC媒体、たとえばペンダントのメチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲルを使用した1つまたは複数の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)ステップを用いて、タンパク質をさらに精製することができる。また、タンパク質に対する抗体を含めた親和性カラムも、既知の方法に従った精製に使用することができる。また、前述の精製ステップのうちの一部またはすべてを、様々な組合せでまたは他の既知の方法と共に用いても、実質的に精製された単離した組換えタンパク質を提供することができる。好ましくは、単離したタンパク質は、他の哺乳動物タンパク質を実質的に含まないように精製されている。
【0092】
また、ポリペプチドは既知の慣用の化学合成によっても生成し得る。合成手段によってタンパク質を構築する方法は当業者に知られている。合成によって構築したタンパク質配列は、一次、二次または三次の構造および/またはコンホメーションの特徴をタンパク質と共有するおかげで、それと共通のタンパク質活性を含めた生物学的特性を保有し得る。したがって、これらは、治療的化合物のスクリーニングおよび抗体の開発における免疫学的プロセスにおいて、天然の精製したタンパク質の生物活性のあるまたは免疫学的な置換物として用いることができる。
【0093】
抗体は免疫グロブリンとしても知られ、典型的には、それぞれ約25kDaの2本の軽(L)鎖およびそれぞれ約50kDaの2本の重(H)鎖からなる四量体のグリコシル化されたタンパク質である。ラムダおよびカッパと呼ばれる2種類の軽鎖が抗体中に見つかり得る。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは5個の主要なクラス、すなわちA、D、E、G、およびMに割り当てることができ、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、たとえば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAへとさらに分類し得る。それぞれの軽鎖にはN末端可変(V)ドメイン(VL)および定常(C)ドメイン(CL)が含まれる。それぞれの重鎖には、N末端Vドメイン(VH)、3個または4個のCドメイン(CH)、および1個のヒンジ領域が含まれる。VHに最も近位のCHドメインをCH1と指定する。VHおよびVLドメインは、フレームワーク領域と呼ばれる比較的保存された配列の4つの領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)からなり、これらは3つの超可変配列の領域(相補性決定領域、CDR)の足場を形成する。CDRは、抗原との抗体の特異的相互作用を担っている残基のほとんどを含有する。CDRはCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。したがって、重鎖上のCDR構成要素はH1、H2、およびH3と呼ばれる一方で、軽鎖上のCDR構成要素はL1、L2、およびL3と呼ばれる。
【0094】
CDR3は、典型的には抗体結合部位内で最大の分子多様性源である。たとえば、H3は2個のアミノ酸残基と短いか、または26個のアミノ酸よりも長い場合がある。様々な免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は当分野で周知である。抗体構造の総説には、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Harlowら編、1988を参照されたい。当業者は、それぞれのサブユニット構造、たとえば、CH、VH、CL、VL、CDR、FR構造が、活性断片、たとえば、抗原と結合するVH、VL、またはCDRサブユニットの一部分、すなわち抗原結合断片、または、たとえば、たとえばFc受容体および/もしくは補体と結合するおよび/もしくはそれを活性化するCHサブユニットの一部分を含むことを理解されよう。典型的には、CDRとはSequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services(1991)、Kabatら編に記載のKabat CDRをいう。抗原結合部位を特徴づけるための別の標準は、Chothiaによって記載されているように超可変ループを参照することである。たとえば、Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.、227:799〜817およびTomlinsonら(1995)EMBO J.、14:4628〜4638を参照されたい。さらに別の標準はOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されているAbM定義である。一般に、たとえば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.、Antibody Engineering Lab Manual(Duebel,S.およびKontermann,R.編、Springer−Verlag、Heidelberg)を参照されたい。代替方法では、Kabat CDRに関して記載した実施形態は、Chothia超可変ループまたはAbMで定義したループに関して同様の記載した関係性を用いて実施することができる。
【0095】
Fab断片(断片抗原結合)は、定常領域間がジスルフィド結合によって共有結合されたV−C1およびV−Cドメインからなる。F断片はより小さく、非共有結合されたVおよびVドメインからなる。非共有結合したドメインが解離する傾向に打ち勝つために、単鎖F断片(scF)を構築することができる。scFは、(1)VのC末端をVのN末端と、または(2)VのC末端をVのN末端と連結させる柔軟なポリペプチドを含有する。15量体(GlySer)ペプチドをリンカーとして使用し得るが、他のリンカーが当分野で知られている。
【0096】
アセンブリおよび体細胞突然変異の後の抗体遺伝子の配列は非常に多様であり、これらの多様な遺伝子は1010個の異なる抗体分子をコードしていると推定される(Immunoglobulin Genes、第2版、Jonioら編、Academic Press、San Diego,CA、1995)。
【0097】
当業者に知られている数々の方法が抗体またはその抗原結合断片を得るために利用可能である。たとえば、抗体は、組換えDNA方法を用いて産生することができる(米国特許第4,816,567号)。また、モノクローナル抗体は、既知の方法に従ったハイブリドーマの作製によっても産生し得る(たとえばKohlerおよびMilstein(1975)Nature、256:495〜499参照)。その後、この様式で形成したハイブリドーマを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析などの標準方法を用いてスクリーニングして、指定した抗原と特異的に結合する抗体を産生する1つまたは複数のハイブリドーマを同定する。指定した抗原の任意の形態、たとえば、組換え抗原、天然に存在する形態、任意の変異体またはその断片、およびその抗原ペプチドを、免疫原として使用し得る。
【0098】
抗体を作製する1つの例示的な方法には、タンパク質発現ライブラリ、たとえばファージまたはリボソームディスプレイライブラリのスクリーニングが含まれる。ファージディスプレイは、たとえば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号、Smith(1985)Science、228:1315〜1317、Clacksonら(1991)Nature、352:624〜628、Marksら(1991)J.Mol.Biol.、222:581〜597、WO92/18619号、WO91/17271号、WO92/20791号、WO92/15679号、WO93/01288号、WO92/01047号、WO92/09690号、およびWO90/02809号に記載されている。
【0099】
ディスプレイライブラリの使用に加えて、指定した抗原を使用して、たとえば、それだけには限定されないが、マウス、ハムスター、ラット、サル、ラクダ、ラマ、サカナ、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含めた非ヒト動物を免疫化することができる。特定の実施形態では、非ヒト動物にはヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部が含まれる。たとえば、ヒトIg座位の大きな断片を用いてマウス抗体産生を欠くマウス株を操作することが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原に特異的なモノクローナル抗体を産生および選択し得る。たとえば、XENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nature Genetics、7:13〜21、US2003−0070185号、1996年10月31日公開のWO96/34096号、および1996年4月29日出願のPCT出願PCT/US96/05928号を参照されたい。
【0100】
特定の実施形態では、モノクローナル抗体を、たとえば、それだけには限定されないが、マウス、ハムスター、ラット、サル、ラクダ、ラマ、サカナ、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含めた非ヒト動物から得て、その後、修飾する、たとえばヒト化または脱免疫化する。特定の実施形態では、キメラ抗体は当分野で知られている組換えDNA技術を用いて産生し得る。キメラ抗体を作製する様々な手法が記載されている。たとえば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81:6851、1985、Takedaら、Nature、314:452、1985、Cabillyら、米国特許第4,816,567号、Bossら、米国特許第4,816,397号、Tanaguchiら、欧州特許公開EP171496号、欧州特許公開第0173494号、英国特許GB2177096B号を参照されたい。また、ヒト化抗体は、たとえば、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現するが、内在性マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないトランスジェニックマウスを用いても産生し得る。Winterは、本明細書中に記載のヒト化抗体を調製するために使用し得る例示的なCDR移植方法を記載している(米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体のCDRのすべてを非ヒトCDRの少なくとも一部分で置き換えてもよく、またはCDRの一部のみを非ヒトCDRで置き換えてもよい。ヒト化抗体と所定の抗原との結合に必要な数のCDRだけしか置き換える必要はない。
【0101】
ヒト化抗体またはその断片は、抗原結合に直接関与していないFv可変ドメインの配列をヒトFv可変ドメインからの均等配列で置き換えることによって作製することができる。ヒト化抗体またはその断片を作製するための例示的な方法は、Morrison(1985)
Science、229:1202〜1207、Oiら(1986)BioTechniques、4:214、ならびにUS5,585,089号、US5,693,761号、US5,693,762号、US5,859,205号、およびUS6,407,213号によって提供されている。これらの方法には、重鎖または軽鎖のうちの少なくとも1つからの免疫グロブリンFv可変ドメインのすべてまたは一部をコードしている核酸配列の単離、操作、および発現が含まれる。そのような核酸は、上述のように所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマ、および他の供給源から得られ得る。その後、ヒト化抗体分子をコードしている組換えDNAを適切な発現ベクター内にクローニングすることができる。
【0102】
特定の実施形態では、ヒト化抗体は、保存的置換、コンセンサス配列の置換、生殖系列の置換および/または復帰突然変異の導入によって最適化する。そのような変更された免疫グロブリン分子は、当分野で知られているいくつかの技術のうちの任意のものによって作製することができ(たとえば、Tengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:7308〜7312、1983、Kozborら、Immunology Today、4:7279、1983、Olssonら、Meth.Enzymol.、92:3〜16、1982)、PCT公開WO92/06193号またはEP0239400号の教示)に従って作製し得る。
【0103】
また、抗体またはその断片は、WO98/52976号およびWO00/34317号に開示されている方法によるヒトT細胞エピトープの特異的欠失または「脱免疫化」によっても改変し得る。手短に述べると、抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインを、MHCクラスIIと結合するペプチドについて分析することができ、これらのペプチドは潜在的なT細胞エピトープを表す(WO98/52976号およびWO00/34317号に定義)。WO98/52976号およびWO00/34317号に記載されているように、潜在的なT細胞エピトープを検出するためには、「ペプチドスレッディング」と呼ばれるコンピュータモデリング手法を適用することができ、さらに、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、VおよびV配列中に存在するモチーフについて検索することができる。これらのモチーフは18種の主要なMHCクラスII DRアロタイプのうちの任意のものと結合し、したがって潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープは、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって、または、好ましくは単一のアミノ酸置換によって排除することができる。典型的には、保存的置換を行う。多くの場合、排他的ではないが、ヒト生殖系列抗体配列中の位置に共通するアミノ酸を使用し得る。たとえば、ヒト生殖系列配列は、Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.、227:776〜798、Cook,G.P.ら(1995)Immunol.Today、第16巻(5):237〜242、Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.、227:799〜817、およびTomlinsonら(1995)EMBO J.、14:4628〜4638に開示されている。V BASEディレクトリはヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的なディレクトリを提供する(Tomlinson,I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UKによってコンパイルされている)。これらの配列は、たとえばフレームワーク領域およびCDRのヒト配列源として使用することができる。たとえば米国特許第6,300,064号に記載されているように、コンセンサスヒトフレームワーク領域を使用することもできる。
【0104】
特定の実施形態では、抗体は変更された免疫グロブリン定常またはFc領域を含有することができる。たとえば、本明細書中の教示に従って産生した抗体は、エフェクター細胞活性、溶解、補体媒介活性、抗体クリアランス、および抗体半減期などの抗体のいくつかの免疫機能を制御することができる、補体および/またはFc受容体などのエフェクター分子と、より強力にまたはより高い特異性で結合し得る。抗体(たとえばIgG抗体)のFc領域と結合する典型的なFc受容体には、それだけには限定されないが、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIならびにFcRnサブクラスの受容体が含まれ、これにはこれらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングされた形態が含まれる。Fc受容体は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol、9:457〜92、1991、Capelら、Immunomethods、4:25〜34、1994、およびde Haasら、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41、1995)に総説されている。
【0105】
さらなる抗体産生技術については、Antibodies:A Laboratory Manual、Harlowら編、Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照されたい。
【0106】
二重特異性または二官能性抗体とは、2つの異なる重鎖/軽鎖の対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含めた様々な方法によって産生することができる。たとえば、SongsivilaiおよびLachmann、Clin.Exp.Immunol.、79:315〜321(1990)、Kostelnyら、J.Immunol.、148、1547〜1553(1992)を参照されたい。特定の実施形態では、二重特異性抗体は、免疫グロブリン定常領域を介して第2の結合ドメインポリペプチドと連結したFab’断片などの第1の結合ドメインポリペプチドを含む。
【0107】
また、本発明の抗体は単一ドメイン抗体であることもできる。単一ドメイン抗体は、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体を含むことができる。例には、それだけには限定されないが、重鎖抗体、天然に軽鎖を欠く抗体、慣用の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作した抗体および抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が含まれる。単一ドメイン抗体は、当分野の任意のもの、または任意の将来の単一ドメイン抗体であり得る。単一ドメイン抗体は、それだけには限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、サカナ、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含めた任意の種に由来し得る。本発明の一態様では、単一ドメイン抗体は、たとえば、サメの血清中に見つかる新規抗原受容体(NAR)として知られる免疫グロブリンアイソタイプに由来するものなど、サカナ中に見つかる免疫グロブリンの可変領域に由来することができる。NARの可変領域に由来する単一ドメイン抗体(「IgNAR」)を産生する方法は、WO03/014161号およびStreltsov(2005)Protein Sci.、14:2901〜2909に記載されている。
【0108】
本発明の別の態様によれば、単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られる天然に存在する単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体は、たとえばWO9404678号に開示されている。明確にするために、天然に軽鎖を欠く重鎖抗体に由来するこの可変ドメインは、4本鎖の免疫グロブリンの慣用のVHと区別するために本明細書中ではVHHまたはナノボディーとして知られている。そのようなVHH分子は、ラクダ科(Camelidae)の種、たとえば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコ中で産生させた抗体に由来することができる。ラクダ科(Camelidae)以外の他の種に天然に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生させてもよく、そのようなVHHは本発明の範囲内にある。
【0109】
また、本発明は、免疫グロブリンヒンジまたはヒンジに作用する領域のポリペプチドと融合または他の様式で接続している結合ドメインポリペプチドが含まれており、これがCH1以外の免疫グロブリン重鎖、たとえばIgGおよびIgAのCH2およびCH3領域、またはIgEのCH3およびCH4領域からの1つまたは複数のネイティブまたは操作した定常領域を含む領域と融合または他の様式で接続している、結合ドメイン−免疫グロブリンの融合タンパク質の使用も企図する(より完全な説明には、たとえば、Ledbetter,J.らのU.S.2005/0136049号を参照)。さらに、結合ドメイン−免疫グロブリンの融合タンパク質には、ヒンジ領域ポリペプチドと融合または他の様式で接続している、ネイティブもしくは操作した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域ポリペプチド(またはIgEから全体的もしくは部分的に由来する構築体の場合はCH3)、およびCH2定常領域ポリペプチド(またはIgEから全体的もしくは部分的に由来する構築体の場合はCH3)と融合または他の様式で接続している、ネイティブもしくは操作した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域ポリペプチド(またはIgEから全体的もしくは部分的に由来する構築体の場合はCH4)を含む領域が含まれ得る。典型的には、そのような結合ドメイン−免疫グロブリンの融合タンパク質は、抗体依存性細胞性細胞傷害、補体の固定、および/または標的、たとえば標的抗原との結合からなる群から選択される少なくとも1つの免疫学的活性が可能である。
【0110】
特定の実施形態では、治療的タンパク質、すなわち、それが作用する身体中の領域またはそれが中間体を介して遠隔作用する身体の領域に対して生物学的効果を有するタンパク質またはペプチド、ならびに、これらの治療的タンパク質を設計および作製する方法を提供する。本発明の治療的タンパク質にはペプチド模倣体が含まれ得る。模倣体とは、タンパク質二次構造の要素を模倣するペプチド含有分子である。たとえば、本明細書中に参考として組み込まれているJohnsonら、「Peptide Turn Mimetics」、BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY、Pezzutoら編、Chapman and Hall、New York(1993)を参照されたい。ペプチド模倣体の使用の裏にある根本の原理は、タンパク質のペプチド主鎖が、抗体と抗原のものなどの分子相互作用を促進するような様式でアミノ酸側鎖を配向するために主に存在することである。ペプチド模倣体は天然分子に類似の分子相互作用を可能にすると予測される。本発明によって提供される情報と併せて、これらの原理を用いて本明細書中に開示した標的化ペプチドの天然特性の多くを有する第二世代分子を工作し得る。また、これらの第二世代分子を変更して、潜在的に改良された特徴を提供することができる。本発明を用いて、タンパク質および小分子治療剤はどちらも、たとえば、所望の位置、すなわち、結合複合体に重要であることが実証されているアミノ酸位置で結合するように具体的に設計し、したがってサイトカインおよびその受容体または受容体複合体に関連する活性を有効に低下または阻害することによって、所望のサイトカイン活性を中断するように設計することができる。
【0111】
治療的タンパク質の他の実施形態には融合タンパク質が含まれる。これらの分子は、一般に、標的化ペプチド、たとえばIL−22または抗IL−22抗体の全体または実質的な一部分が、NまたはC末端で、第2のポリペプチドまたはタンパク質の全体または一部分と連結している。たとえば、融合には、異種宿主中でのタンパク質の組換え発現を可能にするために他の種からのリーダー配列を用い得る。別の有用な融合には、融合タンパク質の精製を容易にするために、抗体エピトープなどの免疫学的に活性のあるドメインを付加することが含まれる。融合接合部またはその付近に切断部位を含めることで、精製後の外来ポリペプチドの除去が容易となる。他の有用な融合には、酵素の活性部位、グリコシル化ドメイン、細胞標的化シグナルまたは膜貫通領域などの機能的ドメインの連結が含まれる。融合タンパク質内に取り込ませ得るタンパク質またはペプチドの例には、細胞分裂抑制タンパク質、細胞破壊タンパク質、アポトーシス促進剤、抗血管形成剤、ホルモン、サイトカイン、成長因子、ペプチド薬、抗体、抗体のFab断片、抗原、受容体タンパク質、酵素、レクチン、MHCタンパク質、細胞接着タンパク質および結合タンパク質が含まれる。融合タンパク質を作製する方法は当業者に周知である。そのようなタンパク質は、たとえば、二官能性架橋結合試薬を用いた化学付着によって、完全融合タンパク質の新規合成によって、または標的化ペプチドをコードしているDNA配列を第2のペプチドもしくはタンパク質をコードしているDNA配列と付着させ、次いでインタクトな融合タンパク質を発現させることによって、産生することができる。
【0112】
特定の実施形態では、標的化ペプチド、たとえばIL−22または抗IL−22抗体を、2つの定常領域ドメインおよびヒンジ領域を含有するが可変領域を欠くFc断片などの免疫グロブリン重鎖定常領域と融合させる(本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第6,018,026号および第5,750,375号参照)。Fc領域は天然に存在するFc領域であってよく、または治療の質、循環時間、低下した凝集等の特定の性質を改良するために変更してもよい。Fc領域と融合したペプチドおよびタンパク質は、典型的には、融合していない対応物よりも長いin vivo半減期を示す。また、Fc領域との融合により融合ポリペプチドの二量体化/多量体化が可能となる。
【0113】
特定の実施形態では、突然変異誘発を用いて、1つまたは複数の生殖系列配列により類似した抗体を作製する。これは、体性突然変異誘発または誤りがちなPCRによって突然変異を抗体のフレームワーク領域内に導入する場合に望ましい場合がある。VおよびVドメインの生殖系列配列は、VBASEデータベース(MRC Center for Protein Engineering、英国)に対してアミノ酸および核酸配列アラインメントを行うことによって同定することができる。VBASEとは、GenbankおよびEMBLデータライブラリの最新リリースのものを含めた、1,000個を超える公開された配列からコンパイルされたすべてのヒト生殖系列可変領域配列の包括的なディレクトリである。一部の実施形態では、scFvのFR領域をVBASEデータベース中の最も近い一致に従って突然変異し、CDR部分は未変化のまま保たれる。
【0114】
組換えDNA方法を用いて、開示したCDR配列を、それぞれのCDRを欠くVまたはVドメインのレパートリー内に導入し得る(Marksら(BioTechnology(1992)10:779〜783)。たとえば、可変ドメインの5’末端に隣接するプライマーおよび第3のFRに対するプライマーを用いて、CDR3を欠く可変ドメイン配列のレパートリーを作製することができる。このレパートリーは開示した抗体のCDR3と組み合わせることができる。類似の技術を用いて、開示したCDR配列の一部分を他の抗体からのCDR配列の一部分とシャフリングして、IL−22と結合する抗原結合断片のレパートリーを提供し得る。いずれのレパートリーも、IL−22と結合する適切な抗原結合断片が選択できるように、ファージディスプレイなどの宿主系中で発現させることができる(WO92/01047号およびその対応する米国特許第5,969,108号に記載)。
【0115】
さらなる代替方法では、開示したVまたはV配列のランダム突然変異誘発を使用して、依然としてIL−22と結合することができる変異体VまたはVドメインを作製する。誤りがちなPCRを用いた技術はGramら(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.(1992)89:3576〜3580)によって記載されている。
【0116】
別の方法では、開示したVまたはV配列の直接突然変異誘発を使用する。そのような技術はBarbasら(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.(1994)91:3809〜3813)およびSchierら(J.Mol.Biol.(1996)263:551〜567)によって開示されている。
【0117】
可変ドメインの一部分は、実質的に本明細書中に記載の少なくとも1つのCDR領域、および、場合により、本明細書中に記載のVまたはVドメインからの介在フレームワーク領域を含む。この部分には、FR1のC末端の半分および/またはFR4のN末端の半分が含まれ得る。可変ドメインのN末端またはC末端での追加の残基は、天然に存在する抗体中で見つかるものと同じ残基でない可能性がある。たとえば、多くの場合、組換えDNA技術による抗体の構築では、NまたはC末端残基をそのリンカーの使用から導入する。一部のリンカーは、可変ドメインを他の可変ドメイン(たとえばダイアボディー)、定常ドメイン、またはタンパク質標識と結合するために使用し得る。
【0118】
抗体は、そのグリコシル化を変更するように改変することができる。すなわち、少なくとも1つの炭水化物部分を抗体から欠失させるまたはそれに付加することができる。グリコシル化部位の欠失または付加は、当分野で周知のグリコシル化コンセンサス部位を欠失させるまたはそれを生じるようにアミノ酸配列を変化させることによって実施することができる。炭水化物部分を付加する別の手段は、グリコシドの、抗体のアミノ酸残基への化学的または酵素的カップリングである(WO87/05330号およびAplinら(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.、22:259〜306参照)。また、炭水化物部分の除去は化学的または酵素的に実施することもできる(Hakimuddinら(1987)Arch.Biochem.Biophys.、259:52、Edgeら(1981)Anal.Biochem.、118:131、Thotakuraら(1987)Meth.Enzymol.、138:350参照)。
【0119】
抗体定常領域を変更する方法は当分野で知られている。変更された機能(たとえば、細胞上のFcRまたは補体のC1構成要素などのエフェクターリガンドに対する変更された親和性)を有する抗体は、抗体の定常部分中の少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基で置き換えることによって産生することができる(たとえば、EP388,151 A1号、US5,624,821号およびUS5,648,260号参照)。同様の種類の変更を記載することができ、マウスまたは他の種に適用した場合、抗体は同様の機能が低下または排除される。
【0120】
たとえば、FcR(たとえばFcガンマR1)またはC1qに対する抗体(たとえばヒトIgGなどのIgG)のFc領域の親和性を変更することが可能である。親和性は、少なくとも1つの指定した残基を、その側鎖上に適切な機能性を有する少なくとも1つの残基で置き換えることによって、あるいは、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸などの荷電官能基、または場合によってはフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンもしくはアラニンなどの芳香族非極性残基を導入することによって、変更し得る(たとえばUS5,624,821号参照)。
【0121】
別の例では、IgG定常領域中の残基297(アスパラギン)をアラニンで置き換えることによりエフェクター細胞の動員が有意に阻害される一方で、C1qに対する親和性はわずかにしか低下しない(約3倍弱い)(たとえばUS5,624,821号参照)。重鎖中の残基の番号付けはEUインデックスのものである(Kabatら、1991、上記を参照)。この変更はグリコシル化部位を破壊し、炭水化物の存在がFc受容体結合に必要であると考えられている。グリコシル化部位を破壊する、この部位での任意の他の置換が、溶解活性の同様の減少を引き起こすと考えられている。他のアミノ酸置換、たとえば、残基318(Glu)、320(Lys)および322(Lys)のうちの任意のものをAlaに変化させることも、C1qとIgG抗体のFc領域との結合を消滅させることが知られている(たとえばUS5,624,821号参照)。
【0122】
Fc受容体との相互作用が低下した、改変した抗体を産生することが可能である。たとえば、ヒトFcガンマR1受容体と結合するヒトIgGでは、Leu235をGluに変化させることにより、受容体とのその相互作用が破壊されることが示された。また、抗体のヒンジ連結領域中に隣接するまたは近い部位の突然変異(たとえば、残基234、236または237をAlaで置き換えること)を用いても、FcガンマR1受容体に対する抗体親和性に影響を与えることができる。重鎖中の残基の番号付けはEUインデックスに基づく(Kabatら、1991、上記を参照)。
【0123】
たとえばCH2ドメインのN末端領域中の少なくとも1つのアミノ酸を変更することによって、抗体の溶解活性を変更するためのさらなる方法は、MorganらのWO94/29351号およびUS5,624,821号に記載されている。
【0124】
特定の実施形態では、抗体を検出可能または機能的な標識でタグ付けし得る。これらの標識には、放射標識(たとえば131Iまたは99Tc)、酵素標識(たとえばセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、および他の化学部分(たとえばビオチン)が含まれる。
【0125】
特定の実施形態では、IL−22拮抗剤は、哺乳動物(たとえばヒトまたはマウス)IL−22と結合する抗体またはその断片(たとえばその抗原結合断片)である。特定の実施形態では、抗IL−22抗体またはその断片(たとえば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片)は、モノクローナルまたは単一特異性の抗体である。また、抗体またはその断片は、ヒトIL−22に対するヒト、ヒト化、キメラ、またはin vitroで産生した抗体であることもできる。
【0126】
特定の実施形態では、IL−1F6拮抗剤は、哺乳動物(たとえばヒトまたはマウス)IL−1F6と結合する抗体またはその断片(たとえばその抗原結合断片)である。特定の実施形態では、抗IL−1F6抗体またはその断片(たとえば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片)は、モノクローナルまたは単一特異性の抗体である。また、抗体またはその断片は、ヒトIL−1F6に対するヒト、ヒト化、キメラ、またはin vitroで産生した抗体であることもできる。
【0127】
特定の実施形態では、IL−1F8拮抗剤は、哺乳動物(たとえばヒトまたはマウス)IL−1F8と結合する抗体またはその断片(たとえばその抗原結合断片)である。特定の実施形態では、抗IL−1F8抗体またはその断片(たとえば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片)は、モノクローナルまたは単一特異性の抗体である。また、抗体またはその断片は、ヒトIL−1F8に対するヒト、ヒト化、キメラ、またはin vitroで産生した抗体であることもできる。
【0128】
特定の実施形態では、IL−1F9拮抗剤は、哺乳動物(たとえばヒトまたはマウス)IL−1F9と結合する抗体またはその断片(たとえばその抗原結合断片)である。特定の実施形態では、抗IL−1F9抗体またはその断片(たとえば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片)は、モノクローナルまたは単一特異性の抗体である。また、抗体またはその断片は、ヒトIL−1F9に対するヒト、ヒト化、キメラ、またはin vitroで産生した抗体であることもできる。
【0129】
特定の実施形態では、IL−1Rrp2拮抗剤は、哺乳動物(たとえばヒトまたはマウス)IL−1Rrp2と結合する抗体またはその断片(たとえばその抗原結合断片)である。特定の実施形態では、抗IL−1Rrp2抗体またはその断片(たとえば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片)は、モノクローナルまたは単一特異性の抗体である。また、抗体またはその断片は、ヒトIL−1Rrp2に対するヒト、ヒト化、キメラ、またはin vitroで産生した抗体であることもできる。
【0130】
特定の実施形態では、IL−17A拮抗剤は、哺乳動物(たとえばヒトまたはマウス)IL−17Aと結合する抗体またはその断片(たとえばその抗原結合断片)である。特定の実施形態では、抗IL−17A抗体またはその断片(たとえば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片)は、モノクローナルまたは単一特異性の抗体である。また、抗体またはその断片は、ヒトIL−17Aに対するヒト、ヒト化、キメラ、またはin vitroで産生した抗体であることもできる。
【0131】
特定の実施形態では、TNFα拮抗剤は、哺乳動物(たとえばヒトまたはマウス)TNFαと結合する抗体またはその断片(たとえばその抗原結合断片)である。特定の実施形態では、抗TNFα抗体またはその断片(たとえば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは単鎖Fv断片)は、モノクローナルまたは単一特異性の抗体である。また、抗体またはその断片は、ヒトTNFαに対するヒト、ヒト化、キメラ、またはin vitroで産生した抗体であることもできる。
【0132】
TNFα拮抗剤の例には、TNF(たとえばヒトTNFα)に対する抗体、たとえば、D2E7(ヒト抗TNFα抗体、U.S.6,258,562号、Humira(商標)、BASF)、CDP−571/CDP−870/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体、Celltech/Pharmacia)、cA2(キメラ抗TNFα抗体、Remicade(商標)、Centocor)、および抗TNF抗体断片(たとえばCPD870)が含まれる。他の例には、可溶性TNF受容体(たとえばヒトp55またはp75)断片および誘導体、たとえば、p55kdのTNFR−IgG(55kDのTNF受容体−IgGの融合タンパク質、Lenercept(商標))および75kdのTNFR−IgG(75kDのTNF受容体−IgGの融合タンパク質、Enbrel(商標)、Immunex、たとえば、Arthritis&Rheumatism(1994)第37巻、S295、J.Invest.Med.(1996)第44巻、235Aを参照)が含まれる。さらなる例には、酵素拮抗剤(たとえば、TNFα変換酵素阻害剤(TACE)、たとえばアルファ−スルホニルヒドロキサム酸誘導体(WO01/55112号)またはN−ヒドロキシホルムアルデヒド阻害剤(GW3333、−005、もしくは−022))およびTNF−bp/s−TNFR(可溶性TNF結合タンパク質、たとえば、Arthritis&Rheumatism(1996)第39巻、第9号(補遺)、S284、およびAm.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.(1995)第268巻、ページ37〜42を参照)が含まれる。TNF拮抗剤は、可溶性TNF受容体(たとえばヒトp55またはp75)断片および誘導体、たとえば75kdのTNFR−IgG、およびTNFα変換酵素(TACE)阻害剤であり得る。
【0133】
抗IL−22抗体の産生は、米国公開特許出願第2005−0042220号および第2007−0243589号に、より詳細に記載されている。IL−22とIL−22Rとの結合を妨害する抗IL22抗体の1つの非限定的な例は、米国公開特許出願第2005−0042220号中で「Ab−04」または「IL22−04」と呼ばれる。Ab−04(本明細書中でラットモノクローナル抗体「P3/2」とも呼ぶ)は、ヒトIL−22と結合してヒトIL−22活性を中和する。Ab−04を産生するハイブリドーマ細胞系は2003年6月5日にATCCに寄託されており、ATCC受託番号PTA−5255が割り当てられている。IL−22とIL−10R2との結合を妨害する抗IL22抗体の別の非限定的な例は「Ab−02」または「IL22−02」である。Ab−02(本明細書中でラットモノクローナル抗体「P3/3」とも呼ぶ)は、マウスおよびヒトのIL−22と結合してマウスおよびヒトのIL−22活性を中和する。Ab−02を産生するハイブリドーマ細胞系は2003年6月5日にATCCに寄託されており、ATCC受託番号PTA−5254が割り当てられている。IL−22活性を低下、阻害または拮抗するIL−22抗体のさらなる例は、GIL01、GIL16、GIL45、GIL60、GIL68、GIL92、062A09、087B03、166B06、166G05、354A08、355B06、355E04、356A11、および368D04として同定された生殖系列抗体を記載している米国公開特許出願第2007−0243589号中に見つかる。
【0134】
また、抗体は、生体試料中の、それだけには限定されないが、IL−22、IL−1F6、IL−1F8、IL−1F9、およびIL−17Aなどの1つまたは複数の分子の存在を検出するためにも使用し得る。これらのタンパク質の存在またはレベルを医学的状態と相関させることによって、当業者は関連する病状を診断することができる。たとえば、IL−22は炎症性サイトカイン(IL−1およびTNFαなど)によって引き起こされたものに関連する変化を誘導し、IL−22の阻害剤は関節リウマチの症状を寛解させる(WO2005/000897 A2号)。抗体によって診断し得る例示的な病状には、それだけには限定されないが、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、ループス、炎症性腸疾患、膵炎、および移植片拒絶が含まれる。
【0135】
本出願中に記載されている特定の方法では、薬学的使用および患者への投与に適した組成物を利用する。これらの組成物は、薬学的賦形剤と、1つもしくは複数の抗体、1つもしくは複数の可溶性受容体、1つもしくは複数の結合タンパク質、またはこれらの抗体、可溶性受容体、および/もしくは結合タンパク質の組合せとを含む。本明細書中で使用する「薬学的賦形剤」には、薬学的投与に適合性のある溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に活性のある物質のためのこれらの薬剤の使用は当分野で周知である。また、組成物は、補足的、追加的、または増強的な治療的機能を提供する他の活性化合物も含有し得る。また、医薬組成物は、投与の指示書と共に容器、パック、または分注器に含め得る。
【0136】
医薬組成物は、その意図する投与経路と適合性があるように配合することができる。投与を達成する方法は当業者に知られている。局所もしくは経口投与し得る、または粘膜を横切った透過が可能であり得る組成物を作製することも可能であり得る。たとえば、投与は静脈内、腹膜内、筋肉内、腔内、皮下、皮膚、または経皮であり得る。
【0137】
皮内または皮下の施用に使用する液剤または懸濁液には、典型的には以下の構成要素のうちの少なくとも1つが含まれる:水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの無菌的希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤、アセテート、シトレート、またはホスフェートなどの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性剤。pHは酸または塩基で調節することができる。そのような調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量バイアル中に封入し得る。
【0138】
静脈内投与に使用する液剤または懸濁液には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany,NJ)、エタノール、またはポリオールなどの担体が含まれる。すべての場合で、組成物は無菌的かつシリンジ通過容易性のために流体でなければならない。多くの場合、適切な流動性はレシチンまたは界面活性剤を用いて得ることができる。また、組成物は製造および保管の条件下で安定でなければならない。微生物の防止は、抗細菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等を用いて達成することができる。多くの場合、等張化剤(糖)、ポリアルコール(マンニトールおよびソルビトール)、または塩化ナトリウムを組成物中に含め得る。組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを加えることによって実施することができる。
【0139】
経口組成物には不活性希釈剤または食用担体が含まれる。組成物はゼラチン中に封入するか、または錠剤へと圧縮することができる。経口投与目的のためには、抗体を賦形剤と共に取り込み、錠剤、トローチ、またはカプセル中に入れることができる。薬学的に適合性のある結合剤またはアジュバント物質を組成物中に含めることができる。錠剤、トローチ、およびカプセルは、(1)微結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤、(2)デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、(3)アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤、(4)ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、(5)コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、または(6)甘味剤もしくは香味料を含有し得る。
【0140】
また、医薬組成物は、経粘膜または経皮の経路によって投与してもよい。たとえば、Fc部分を含む抗体は、腸管、口、または肺の粘膜を横切ることができ得る(Fc受容体を介して)。経粘膜投与は、ロゼンジ、鼻腔スプレー、吸入器、または坐薬を使用することによって実施することができる。また、経皮投与は、当分野で知られている軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームを含有する組成物を使用することによっても実施することができる。経粘膜または経皮投与には、浸透する障壁に適した浸透剤を使用する。吸入による投与には、抗体は、噴霧剤(たとえば液体もしくは気体)を含有する加圧した容器もしくは分注器または噴霧器からのエアロゾルスプレー中で送達する。
【0141】
特定の実施形態では、医薬組成物は、身体からの迅速な排除に対して活性構成要素を保護する担体を用いて調製する。多くの場合は生分解性ポリマー(たとえば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸)を使用する。そのような配合物を調製する方法は当業者に知られている。リポソーム懸濁液も薬学的に許容できる担体として使用することができる。リポソームは当分野で知られている確立された方法に従って調製することができる(米国特許第4,522,811号)。
【0142】
医薬組成物は記載した治療上有効な量で投与する。治療上有効な量は対象の年齢、状態、性別、および病状の重篤度に応じて変動し得る。適切な用量は臨床徴候に基づいて医師が決定し得る。組成物は、組成物の活性構成要素の循環レベルを最も長い時間の間最大限にするために、ボーラス用量で与え得る。また、持続注入をボーラス用量の後に使用してもよい。
【0143】
本明細書中で使用する用語「対象」には、ヒトおよび非ヒト動物が含まれることを意図する。本発明の用語「非ヒト動物」には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等のすべての脊椎動物が含まれる。
【0144】
対象に投与することができる用量範囲の例は、1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg/kg〜1mg/kg、250μg/kg〜2mg/kg、250μg/kg〜1mg/kg、500μg/kg〜2mg/kg、500μg/kg〜1mg/kg、1mg/kg〜2mg/kg、1mg/kg〜5mg/kg、5mg/kg〜10mg/kg、10mg/kg〜20mg/kg、15mg/kg〜20mg/kg、10mg/kg〜25mg/kg、15mg/kg〜25mg/kg、20mg/kg〜25mg/kg、および20mg/kg〜30mg/kg(またはそれより高い)から選択される。これらの用量は、用量、投与方法、処置する障害または症状(複数可)、および個々の対象の特徴に応じて、1日1回、週に1回、週に2回、月に1回、またはより低い頻度、たとえば年に2回投与し得る。また、用量は持続注入を介して(ポンプによってなど)投与することもできる。また、投与用量は投与経路にも依存し得る。たとえば、皮下投与は静脈内投与よりも高い用量を必要とし得る。
【0145】
特定の状況では、投与の容易性および用量の均一性のために組成物を単位剤形で配合することが有利であり得る。本明細書中で使用する単位剤形とは、患者に適した物理的に別々の単位をいう。それぞれの単位用量は、担体と共に、治療効果が生じるように計算された所定の量の抗体を含有する。単位用量は抗体の特徴および達成する特定の治療効果に依存する。
【0146】
医薬組成物の毒性および治療上の有効性は、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順、たとえば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定することによって、決定することができる。毒性および治療効果の間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比として表現することができる。
【0147】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータを用いてヒトにおける用量範囲を処方することができる。これらの化合物の用量は、毒性がわずかまたはまったくないED50を含めた、血液中の循環抗体濃度の範囲内にあり得る。用量は、用いる用量組成物形態および投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。治療上有効な用量は、細胞培養アッセイを用いて最初に推定することができる。用量は動物モデルにおいてIC50(すなわち、症状の最大半量阻害をもたらす薬剤濃度)を含めた循環血漿濃度範囲が達成されるように処方し得る。任意の特定の用量の効果は適切なバイオアッセイによって監視することができる。適切なバイオアッセイの例には、DNA複製アッセイ、転写に基づいたアッセイ、受容体結合アッセイ、および他の免疫学的アッセイが含まれる。
【0148】
また、上述の拮抗剤、抗体および結合断片は、生体試料中のIL−22、IL−17A、IL−17F、IL−1F6、IL−1F8、IL−1F9、およびIL−1Rrp2のうちの少なくとも1つの存在を検出するためにも使用し得る。これらのサイトカインおよび受容体は、細胞外または細胞内のどちらかで、本出願中に開示した方法を含めた当分野で知られている方法を用いて検出することができる。これらのタンパク質の存在またはレベルを病状と相関させることによって、当業者は関連する病状を診断することができる。たとえば、IL−22は炎症性サイトカイン(IL−1およびTNFαなど)によって引き起こされるものに関連する変化を誘導し、IL−22の阻害剤は関節リウマチの動物モデルの症状を寛解させる(WO02/068476 A2号)。
【0149】
抗体に基づいた検出方法は当分野で周知であり、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫ブロット、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、免疫蛍光、免疫沈降、および他の関連技術が含まれる。抗体を診断キット中で提供し得る。キットは、他の構成要素、パッケージング、指示書、またはタンパク質の検出およびキットの使用を支援する他の物質を含有し得る。
【0150】
抗体は、リガンド基(たとえばビオチン)、フルオロフォアおよび発色団、放射性同位元素、高電子密度試薬、または酵素を含めた検出可能なマーカーで修飾し得る。酵素はその活性によって検出する。たとえば、セイヨウワサビペルオキシダーゼは、テトラメチルベンジジン(TMB)を分光光度計で定量可能な青色色素へと変換するその能力によって検出する。他の適切な結合パートナーには、ビオチンとアビジン、IgGとタンパク質A、および当分野で知られている他の受容体−リガンドの対が含まれる。
【0151】
また、抗体は、とりわけ、別の抗体(たとえば二重特異性もしくは多特異性抗体)、毒素、放射性同位元素、細胞毒性剤または細胞分裂抑制剤などの少なくとも1つの他の分子実体と、機能的に連結させることもできる(たとえば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有会合または他の方法によって)。他の置換および可能性は当業者に明らかであり、それらは本発明の範囲内にある均等物であるとみなされる。
【0152】
特定の実施形態では、検出方法がin vitro方法である場合、これには、(1)試料または対照試料を、第1の標的(たとえばそれだけには限定されないがIL−1F6)と結合する第1の試薬、および第2の標的(たとえばそれだけには限定されないがIL−1F8)と結合する第2の試薬と接触させることと、(2)第1および第2の試薬と試料または対照試料との間の複合体の形成を検出することであって、対照試料と比較した試料中の複合体の形成の統計的に有意な変化が、試料中のサイトカインの存在の指標であることとが含まれる。一実施形態では、この方法には、細胞を含む試料を、細胞内でIL−22、IL−1F6、IL−1F8、IL−1F9、IL−1Rrp2、またはIL−17Aのうちの1つから選択される標的と結合する、蛍光抗体などの標識した試薬と接触させることが含まれる。細胞内で検出された試薬の量は、細胞内で発現された細胞内標的の量に正比例する。特定の実施形態では、試料は患者の血液試料である。発現レベルを測定することができるさらなる試料には、それだけには限定されないが、滑液、口腔スワブ、皮膚、生検用に取り出された物質、たとえば、それだけには限定されないが、生検用に取り出された乾癬患者の皮膚、精液、毛髪、骨、尿、鼻水、および痰が含まれ、これには、それだけには限定されないが、気管支鏡検査中に気管支洗浄液から得られた体液が含まれる。
【0153】
また、検出方法はin vivo検出方法(たとえば対象におけるin vivoイメージング)であることもできる。この方法は、障害、たとえば本明細書中に記載の障害を診断するために使用することができる。この方法には、(1)第1の標的(たとえばそれだけには限定されないがIL−1F6)と結合する第1の試薬および第2の標的(たとえばそれだけには限定されないがIL−1F8)と結合する第2の試薬を、対象または対照対象に、第1および第2の試薬とその標的との結合を可能にする条件下で投与することと、(2)第1および第2の試薬とその標的との間の複合体の形成を検出することであって、対照、たとえば対照対象と比較した対象中の複合体の形成の統計的に有意な変化が、サイトカインの存在の指標であることとが含まれる。
【0154】
特定の実施形態では、検出方法は、mRNAレベルを測定するin vitro検出方法であることもできる。この方法は、障害、たとえば本明細書中に記載の障害を診断するために使用することができる。特定の実施形態では、この方法には、(1)患者から試料を収集することと、(2)試料中の標的mRNAのレベルを検出することとが含まれる。特定の実施形態では、標的mRNAには、IL−22のmRNA、IL−1F6のmRNA、IL−1F8のmRNA、IL−1F9のmRNA、IL−1Rrp2のmRNAおよびIL−17AのmRNAのうちの少なくとも1つが含まれる。mRNAを検出および定量する方法は当分野で知られている。特定の実施形態では、この方法は定量的RT−PCRを含む。特定の実施形態では、試料は患者の血液試料である。発現レベルを測定することができるさらなる試料には、それだけには限定されないが、滑液、口腔スワブ、皮膚、生検用に取り出された物質、たとえば、それだけには限定されないが、生検用に取り出された乾癬患者の皮膚、精液、毛髪、骨、尿、鼻水、および痰が含まれ、これには、それだけには限定されないが、気管支鏡検査中に気管支洗浄液から得られた体液が含まれる。
【実施例】
【0155】
(実施例1)
乾癬様マウスモデルにおけるIL−1サイトカインの増加した遺伝子およびタンパク質発現
尋常性乾癬とは、過剰増殖表皮および混合皮膚リンパ浸潤によって特徴づけられる慢性の炎症性皮膚疾患である。当初はケラチノサイト変更の原疾患とみなされていたが、有効な免疫変調治療により、これらが乾癬疾患の病因において産生する免疫細胞およびサイトカインによって果たされる役割が実証されている。
【0156】
4×10個のCD4CD45RBhiCD25細胞を、病原体を含有しないCB17 scid/scid内に移入して、ヒト乾癬に似た特定の特徴を有する鱗状かつ盛り上がった皮膚の溶菌斑を誘導した。移入後60日目に、マウスの大多数が、ケラチノサイトの増殖の増加(不全角化)が原因の表皮の肥厚(棘細胞増殖)、表皮の下向きの乳頭状突起(乳頭基部)、ならびに表皮および真皮の炎症細胞浸潤などの乾癬様皮膚炎症を発生した。
【0157】
皮膚病変のサイトカイン構成要素を試験するために、適応移入後の70日目にマウス耳を収集し、定量的RT−PCRに供してIL−1F6、IL−1F8、IL−1F9およびその特異的受容体IL−1Rrp2の遺伝子発現を評価した。QIAGEN RNeasy(登録商標)キット(QIAGEN)を用いてRNAを凍結したマウス耳生検から単離した。サイトカイン遺伝子の発現は、以下の表に従った事前に定性したプライマーおよびプローブ(Applied Biosystems)を用いたTaqman(登録商標)RT−PCRキットを使用して検査した。
【0158】
【表2】

【0159】
遺伝子発現は、推定1,000コピー数のGAPDH mRNA/細胞を有するハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現に対して正規化した。
【0160】
生理食塩水の注射を与えた対照マウスと比較して、乾癬様形成を発生したマウスは、耳試料中でIL−1サイトカイン、IL−1F6(約500倍)、IL−1F8(約60倍)、およびIL−1F9(約50倍)の発現が有意に上昇していた(図1aおよび1c)。その受容体IL−1Rrp2の転写物も約3〜5倍増加したが、増加は統計的有意性に達しなかった。さらに、IL−1F6の発現の3倍の増加およびIL−1F9の発現の5倍の増加が乾癬に罹患しているマウスの白血球中で検出された。
【0161】
遺伝子発現の増加が細胞中のタンパク質産生の増加に相関していることを確認するために、3つのサイトカインのうちの1つであるIL−1F6のタンパク質レベルをウエスタンブロットによって耳溶解物において調べた。対照耳試料と比較して、CD4CD45RBhiCD25細胞のレシピエントからの耳生検において3〜4倍多いIL−1F6タンパク質がウエスタンブロットによって検出され(図1b)、これは、観察された遺伝子発現の増加に一致したタンパク質産生の増加を示していた。
【0162】
(実施例2)
IL−22はマウス皮膚におけるIL−1サイトカインの発現を調節する
IL−22は乾癬におけるTh17細胞に媒介される病理に必要であり、IL−22の中和単独が乾癬の進行を予防するために十分である。実施例1に記載のように、4×10個のCD4CD45RBhiCD25細胞を、病原体を含有しないCB17 scid/scidマウス内に移入した。CD4CD45RBhiCD25T細胞を適応移入した日から開始して、IL−22を中和する抗体を週に1回、病原体を含有しないCB17 scid/scidマウス内に静脈内注射した。IL−22を中和する抗体の静脈内注射により、レシピエントマウスにおける乾癬様病変の発生が予防された。移入後70日目における症状の減少と相関して、耳中のIL−1サイトカインの転写レベルも低下した:IL−1F6の発現レベルの約9倍の低下、IL−1F8の発現レベルの約2.25倍の低下およびIL−1F9の発現レベルの約2.2倍の低下(図2)。しかし、IL−22の中和は受容体IL−1Rrp2遺伝子の発現レベルの上昇に影響を与えなかった。転写レベルを実施例1に記載のようにRT−PCRによって測定した。
【0163】
局所的レベルでIL−1サイトカインの発現がIL−22の濃度に関連していたことを実証するために、野生型BALB/cマウスの耳内に500ngの組換えマウスIL−22を隔日で2週間を直接注射した。最後の処置の6時間後、実施例1に記載のようにマウス耳を収集し、転写レベルをRT−PCRによって測定した。IL−1F6、IL−1F8およびIL−1F9の転写レベルはすべて、対照として生理食塩水を与えた同じマウスの左耳と比較してIL−22を与えた右耳で約6倍増加していた(図3)。また、受容体IL−1Rrp2のmRNAも、IL−22で処置した耳においてアップレギュレーションの傾向があった。これらのデータは、Th17サイトカインであるIL−22が炎症部位でIL−1サイトカインの遺伝子発現を直接調節できることを示唆している。
【0164】
(実施例3)
ヒトケラチノサイトにおけるIL−1サイトカインの産生に対するサイトカインの効果
IL−22、IL−17A、およびIL−17F
IL−22によるIL−1アイソフォームの直接誘導をさらに確認するために、初代ヒト上皮ケラチノサイトをIL−22で2日間処置した後、定量的RT−PCRによって遺伝子発現を検査した。ヒトケラチノサイトを解凍後にp1〜p3継代として使用し、図4aまたは4bに示す0ng/ml〜200ng/mlの様々な濃度のIL−22で処置した。転写レベルを実施例1に記載のようにRT−PCRによって測定した。第1の実験組では、200ng/mlのIL−22で処置したケラチノサイトでは、IL−1F9の転写レベルが非処置細胞と比較して4倍増加していた。IL−1F8転写物は非検出可能なレベルから検出可能なレベルまでアップレギュレーションされていた。IL−1F6転写物は検出可能なレベルより低く、IL−1Rrp2発現は変化がなかった。第2の実験組では、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9転写物の用量依存的な増加が観察された。転写物コピー数の非常に大きな差異にも関わらず(gapdhと比較して、il1f6の転写物ではE−6、il1f8ではE−5、il1f9ではE−3)、培地単独で培養したものと比較して、200ng/mlのIL−22と共に培養したケラチノサイト中では一般にil1f6、il1f8およびil1f9の転写レベルの2〜4倍の増加が検出された。(図4b)しかし、IL−22は受容体Il1rl2発現に影響を与えなかった(データ示さず)。
【0165】
IL−22およびIL−17AはTh17細胞によって同時発現される。IL−22およびIL−17Aは、いくつかの抗細菌ペプチド、たとえば、β−デフェンシン2、S100A7、S100A8およびS100A9の発現を増強するように相乗的に作用する。これらのTh17サイトカインの関数関係をさらに調査するために、IL−1アイソフォームおよびその受容体の発現を、IL−22、IL−17A、およびIL−17Fの組合せで処置した初代ケラチノサイトで検査した。図5aに示すように、初代ケラチノサイトを、IL−22(200ng/ml)もしくはIL−17A(20ng/ml)単独、またはIL−22(200ng/ml)およびIL−17A(20ng/ml)との組合せで、遺伝子発現の検査前の2日間処置した。転写レベルを実施例1に記載のようにRT−PCRによって測定した。IL−17Aは単独でIL−1F6(約20倍)、IL−1F8(約1倍)、およびIL−1F9(約7倍)の発現を誘導することができるが、IL−22の存在はIL−1F6(約80倍)およびIL−1F9(約15倍)の発現を相乗的に誘導し、IL−1F8(約2倍)の発現を相加的に増強させた(図5aおよび5c)。しかし、IL−17F単独の処置ではこれらのIL−1サイトカインおよびその受容体IL−1Rrp2の遺伝子発現が誘導されず、IL−22およびIL−17Fの組合せでは、IL−1サイトカインおよびIL−1Rrp2の遺伝子発現はIl−22単独で観察されたものより高くは誘導されなかった。IL−22+IL−17Aで処置したケラチノサイトのIL−1F9タンパク質の量をウエスタンブロットによって検査し(図5b)、転写レベルの増加がタンパク質産生の増加と相関していたことが確認された。非処置のものと比較して、IL−22+IL−17Aで処置したケラチノサイトにおいて、シグナルの少なくとも2倍の増加がウエスタンブロットによって検出された。
【0166】
TNF−α
TNF−αは、皮膚における炎症反応を開始して維持する別の重要な炎症誘発性サイトカインである。臨床研究により、TNF経路の遮断が乾癬患者における有効な処置であることが実証されている。Gottlieb A.B.ら、J.Immunol.、175、2721〜29(2005)。TNF遮断の臨床有効性に鑑みて、TNF−αによるIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9の調節の可能性を本発明者らのin vitroヒトケラチノサイト培養系で検査した。図19に示すように、TNF−αで刺激したケラチノサイトは、培地単独で培養した細胞と比較して、il1f6、il1f8、およびil1f9の遺伝子転写物が10〜20倍増加していた。IL−1遺伝子発現の増加は、培養中にIL−22を添加することでさらに増強することができる。一緒にすると、これらのデータは、IL−1F6、IL−1F8およびIL−1F9が、皮膚中のIL−17A、IL−22およびTNF−αによるその誘導の下流にあるエフェクターサイトカインであることを示唆している。
【0167】
IFN−γおよびIL−12
乾癬における組織損傷の誘導および進行は、伝統的に、Th1 T細胞ならびにそのシグネチャーサイトカインであるIFN−γおよびIL−12に関連づけられている。il1f6、il1f8、およびil1f9遺伝子の発現に対するこれらのTh1サイトカインの効果を初代ケラチノサイトで検査した。図20に示すように、il1f8の発現は200ng/mlの濃度のIL−12によって2倍誘導され、il1f9の転写レベルは変化を示さなかった。IFN−γ単独を用いた処置ではil1f8転写物の約10倍の増加が誘導された一方で、il1f9遺伝子発現には最小限の効果しかなかった。IL−12をIFN−γケラチノサイト培養物に添加することでは、IFN−γ単独によって誘導されたil1f8またはil1f9の転写物が実質的に増強されなかった。注目すべきは、Th17サイトカインまたはTNF−αに応答したケラチノサイトにおけるil1f6転写レベルの有意な増加とは対照的に、Th1サイトカインはil1f6の発現に効果を有さなかった。これらのデータは、本発明者らのin vitroケラチノサイト系では、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9の発現はTh17サイトカインによって主に調節されるがTh1サイトカインによっては調節されないことを実証している。
【0168】
IL−17AおよびIFN−γ
Th1細胞およびTh17細胞は多くの場合ヒト乾癬溶菌斑中で共存しているため、ヒトケラチノサイトによるIL−1アイソフォームの発現に対するIL−17AとIFN−γの組み合わせた効果を検査した。図21に示すように、IL−17Aは、IFN−γによるil1f8転写物の誘導をさらに3倍増強させた。しかし、このサイトカインの組合せはIL−17Aによるil1f6またはil1f9転写物の増加を増強させない(データ示さず)。
【0169】
(実施例4)
ヒト乾癬皮膚病変における、IL−17A、IL−22、TNF−α、およびIFN−γと相関したIL−1サイトカイン遺伝子発現の増加
乾癬のマウスモデルでの観察を確認するために、乾癬患者から得たヒトの対となる非損傷性および損傷性の皮膚試料を検査した。11個の対となる皮膚試料における炎症誘発性サイトカインのパネルの発現レベルを、定量的RT−PCRを用いて検査した。転写レベルを実施例1に記載のようにRT−PCRによって測定した。すべての患者は、群として(図6a)または個々に(図6bおよび6c)、乾癬病変においてIL−1F6(平均して約20倍高い)、IL−1F8(平均して100倍高い)、およびIL−1F9(平均して4倍高い)の発現が増加していた。IL−1F9のmRNAは最高のコピー数/細胞:44%のGAPDH mRNAコピー数に達し(図6a)、これは、皮膚炎症における強力な生物学的機能を示していた。乾癬病変におけるIL−1Rrp2転写物の上昇は検出されなかった。IL−1Rrp2の発現レベルは、正常な皮膚組織中のmRNAコピー数と比較して病変中でダウンレギュレーションされていた。
【0170】
予測どおり、ヒト皮膚病変における3つのIL−1アイソフォームすべての発現はTh17サイトカインであるIL−22、IL−21、およびIL−17Aの発現と強く相関していたが(表3、図7a、および図8)、それでも受容体IL1RL2の発現はTh17サイトカインと相関がなかった(表3および図7b)。また、IL−21Rの発現もIL−1アイソフォームと相関しているが、IL−22RまたはIL−22BPとは相関していない。in vitroでのケラチノサイトに対するIL−17Fの効果の上記観察と一致して、IL−1アイソフォームの発現とIL−17Fの発現との間には相関がなかった(図8)。さらに、3つのIL−1アイソフォームの発現をIL−22R、IL−22BP、IL−21、IL−21R、IL−23、およびTGFαの発現と比較した。また、IL−1F6およびIL−1F8の発現も他のTh17サイトカイン、IL−21、およびその受容体と相関していた。また、IL−1F9の発現もIL−23の発現と相関しており、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9の発現はTGFαの発現と相関していた。
【0171】
表3:ヒト乾癬病変におけるサイトカイン発現プロフィールの相関。表3では、統計的相関はピアソン相関検定によって決定し、p値は両側スチューデントt検定によって決定した。
【0172】
【表3】

【0173】
in vitroのTNF−α刺激に際するIL−1アイソフォームのケラチノサイト発現を裏付けて、乾癬病変におけるTNFの発現はIL−1サイトカインの発現と相関していた。さらに、IFN−γの発現の上昇も病変中で検出され、IL−12p35では検出されず、これは、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9の発現と良好に相関し、乾癬におけるTh1およびTh17細胞の両方の協同的な関与を示していた。
【0174】
(実施例5)
自己免疫疾患の動物モデルにおけるバイオマーカーとしてのIL−1サイトカインの示差的発現
自己免疫疾患のバイオマーカーとしてのIL−1F6、IL−1F8、IL−1F9およびその受容体の潜在性を評価するために、これらの遺伝子の発現を、3匹の別々の自己免疫マウスモデルから得た血液で検査した。
【0175】
IL−1アイソフォームIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9を、コラーゲンおよびアジュバントを用いた免疫化によって炎症を誘導したコラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスモデルで検査した。疾患を誘導するために、DBA1マウスを、CFAで乳化した200ngのウシII型コラーゲン(Chondrex)を用いて皮内で免疫化した。21日目に、すべてのマウスにIFA中の200ngのコラーゲンの追加免疫を与えた。35日目に血液を採取し、すぐにQIAGEN RNeasy(登録商標)血液ミニキットを用いたRNA抽出に供した。白血球を、定量的RT−PCRを介した遺伝子発現の分析に使用した。転写レベルを実施例1に記載のようにRT−PCRによって測定した。ナイーブ対照マウスと比較して、IL−1F8およびIL−1F9のmRNAは罹患したマウスの血液中でそれぞれ約10倍および約4.3倍増加していた一方で、IL−1F6のメッセージは罹患したマウスおよび対照マウスのどちらでも検出不可能であった(図9)。
【0176】
また、IL−1アイソフォームIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9を、ナイーブ野生型Balb/cマウス由来のエフェクター(CD4CD45RBhiCD25)T細胞を静脈内移入することによってscid/scidマウスで誘導した、乾癬様皮膚炎症マウスモデルにおいても検査した。疾患誘導の70日目にマウス血液を採取し、白血球中の遺伝子発現を分析した。転写レベルを実施例1に記載のようにRT−PCRによって測定した。IL−1F6およびIL−1F9の転写レベルは、生理食塩水の注射を与えた対照マウスと比較して、乾癬を発生したレシピエントマウスにおいて3〜6倍増加していた。血液中のIL−1F8の転写レベルは検出レベルより低かった。受容体IL−1Rrp2の発現も非常に低く、乾癬様マウスの血液中でダウンレギュレーションされているように見えた(図10)。
【0177】
また、IL−1アイソフォームIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9を、自発性ループスマウスモデルにおいても検査した。マウスのNZBWF/1株はループスの自発的発生を遺伝的に起こしやすい。使用したコロニーは、典型的には、約20週間にタンパク尿または抗dsDNA抗体などの検出可能なループス症状を表す。これらのマウスの血液試料を疾患の発症の10週間前および7カ月後に採取し、遺伝子発現を検査し、自発性ループスを発生しない株である10週齢の健康なC57BL/6マウスと比較した。転写レベルを実施例1に記載のようにRT−PCRによって測定した。10週間の疾患の初期時点では、IL−1F6、IL−1F9、およびIL−1Rrp2の遺伝子発現が増加しており(図11)、これは、これらの遺伝子がループスの初期バイオマーカーであり得ることを示していた。IL−1F6の転写物は、タンパク尿および抗dsDNA抗体の増加というループス症状を発生した7カ月齢のマウスでさらに上昇していた。しかし、IL−1F9および受容体IL−1Rrp2の転写物はこの時点でダウンレギュレーションされていたが、それでも対照C57BL/6マウスよりもはるかに高かった。IL−1F8の転写物は、NZBWF1/Jループスマウスの血液中で検出されるには低すぎた。
【0178】
これらの結果により、アップレギュレーションされたIL−1アイソフォームのmRNA発現は炎症性疾患と関連しており、罹患した動物の血液試料から検出することができることが実証された。以前は、これらのアイソフォームは皮膚組織試料およびケラチノサイト中でのみ検出されていた。様々な疾患モデルにおけるIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9ならびにその特異的受容体の様々な誘導および発現のレベルは、これらの遺伝子が様々な自己免疫疾患において異常発現されていることを示し、ヒトの炎症性および自己免疫疾患を診断するためのバイオマーカーとしての、IL−1アイソフォーム発現(たとえばmRNAまたはタンパク質)の潜在的な使用を示唆している。
【0179】
(実施例6)
IL−1アイソフォームはin vitroでIL−21によって調節されない
図22に示すように、IL−21はドナー1においてil1f8およびil1f9の転写物をダウンレギュレーションするが、ドナー2におけるその発現をわずかに増加させ、これは、IL−21がケラチノサイト中でIL−1アイソフォームを直接調節しないことを示す。さらに、IL−22を培養物に加えることは、IL−1アイソフォームの発現に有意な影響を与えない。IL−21と同時培養したケラチノサイト中のil1f6の転写レベルは検出限界未満であった。
【0180】
(実施例7)
IL−1αおよびIL−1βの発現はin vitroでTh17またはTh1サイトカインによって調節されない
最近の臨床治験により、IL−12/23p40経路を遮断する生物剤が乾癬に有効であることが実証された。Krueger,G.ら、N Engl J Med、356、580〜592(2007)。さらに、予備臨床の証拠は、IL−17Aの遮断も有益な効果を有することを示している。Patel,D.、ACR/ARHP Annual Scientific Meeting、San Francisco(2008)。対照的に、組換えIL−1R拮抗剤を用いたIL−1αおよびIL−1β経路の遮断が乾癬のパイロット研究において中程度に有益であることが示された。Gibbs,A.G.ら、25th European Workshop for Rheumatology Research.、Arthritis Research and Therapy、Glasgow,UK.68(2005)。T細胞由来のサイトカインによるil1aおよびil1bの調節を本発明者らのin vitro培養系で検査した。ケラチノサイトにおいてil1aおよびil1bの発現のわずかな増加(約1.5〜2倍)がIL−17AまたはIFN−γによって誘導された(図23)。しかし、IL−22またはIL−12はどちらも、単独でまたはそれぞれIL−17AもしくはIFN−γと組み合わせても効果がなかった。これらのデータは、IL−1αおよびIL−1βが乾癬の病因に重要な主要な局所的免疫媒介物質でない可能性があることを示唆している。しかし、Th17サイトカインによるIL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9の強力な誘導は、これらのIL−1アイソフォームが疾患の主要な局所的媒介物質を表している可能性があることを示唆している。
【0181】
(実施例8)
IL−1α、IL−1F6、およびIL−1F9の発現はin vitroでIL−1アイソフォームによって調節される
乾癬における上昇したIL−1アイソフォームの下流効果を調査するために、本発明者らは、本発明者らのin vitro培養系においてIL−1α、IL−1β、IL−1F6、およびIL−1F9の発現を調節するIL−16、IL−1F8、およびIL−1F9の能力を検査した(図24)。il1aの発現のわずかな増加(約2〜6倍)がIL−1F6、IL−1F8、またはIL−1F9単独によって誘導された。IL−17Aの添加により、IL−1アイソフォームによる誘導がさらに増加した。しかし、IFN−γまたはTNF−αの添加はIL−1α発現にさらなる効果を有さなかった。3つのIL−1アイソフォームは、単独で、またはTh1もしくはTh17サイトカインと組み合わせて、IL−1βの発現においてわずかな調節しか示さなかった。3つのIL−1アイソフォームはすべてIL−1F6の発現を誘導し、この増加は、同時培養後の早くも6時間で検出された(データ示さず)。IL−17Aは3つのアイソフォームすべてと相乗作用し、il1f6のmRNAの誘導を強力に増強させた。また、TNF−αの添加も、より弱い強度にではあるが、この増加を増強させた。IL−1F8およびIL−1F9は、IL−1F9の発現を10倍まで強力に誘導した。ここでも、IL−17AはIL−1F8およびIL−1F9と相乗作用して、il1f9の転写レベルを約80倍まで増加させた。TNF−αの添加はわずかに相加的な効果を有しており、一方で、IFN−γの添加は効果がなかった。これらのデータは、新規IL−1アイソフォームがそれ自体の遺伝子発現を誘導するのみでなく、Th17サイトカインと協同してこの自己調節をさらに増強させることを示唆している。IFN−γはIL−1アイソフォームの自己増強に中程度の効果を有し、これは、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9の遺伝子発現の誘導に対するその中程度の効果と一致している。
【0182】
(実施例9)
急性期反応物質の誘導におけるIL−1アイソフォームの相乗効果
IL−1F6、IL−1F8、またはIL−1F9は、単独で、saa1/2(血清アミロイドA1/2)、セルピン1(プラスミノーゲン活性化阻害因子−1、PAI−1、セルピンE1としても知られる)、plau(ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、u−PAとしても知られる)、plat(組織プラスミノーゲン活性化因子、t−PAとしても知られる)、tnfaおよびil6を含めた様々な急性期反応物質の遺伝子発現においてわずかな増加(約1〜3倍)を誘導した(図25)。
【0183】
TNF−αの添加は3つのIL−1アイソフォームすべてで相乗効果を有しており、IL−1アイソフォームによって誘導されたsaa1/2転写物の発現を強力に増強させた。IL−17AまたはIFN−γの添加はsaa1/2遺伝子の発現に相加効果を有していた。また、TNF−αの添加は、IL−1F6およびIL−1F8でも相乗効果を有しており、IL−1アイソフォームのそれぞれによって誘導されたplauおよびplat転写物の発現を強力に増強させた。IL−17AまたはIFN−gの添加はplauおよびplat遺伝子の発現にさらなる効果を有さなかった(図25)。
【0184】
IL−17AはIL−1F9と相乗作用した一方で、IFN−γはIL−1F6およびIL−1F8と相乗作用してIL−1アイソフォームによって誘導されたtnfa転写物の発現を約40〜60倍増加させた。TNF−αはそれ自体の発現を約10倍誘導したが、IL−1アイソフォームと組み合わせた際に相乗効果は観察されなかった(図25)。
【0185】
IFN−γはIL−1F6およびIL−1F8と相乗作用して、同時培養の6時間後にil6転写物の発現を約230〜4000倍増加させた。il6遺伝子のこの強力な誘導は、同時培養の72時間後でも依然として観察された。また、IFN−γはIL−1F9とも相乗効果を有しており、il6転写物の発現を約20倍増加させた。また、IL−17Aはil6発現に対してIL−1F6およびIL−1F9とも相乗効果を示したが、相乗的応答はIFN−γほど強力ではなかった。TNF−αを3つのIL−1アイソフォームと組み合わせることは、il6発現に対して相乗効果を有していなかった(図25)。
【0186】
(実施例10)
IL−1アイソフォームはIL−17Aと協同して抗細菌ペプチドを誘導する
IL−17Aは、β−デフェンシン2(遺伝子記号:def4)およびS100A7(遺伝子記号:s100a7)を含めた宿主の防御に関連している抗細菌ペプチドの発現を誘導することが知られている。IL−1アイソフォームがそれ自体でまたはTh17もしくはTh1サイトカインと組み合わせて同じ遺伝子を誘導できるかどうかを検査するために、ケラチノサイトを、個々のIL−1サイトカインまたはこれらのサイトカインの対の組合せと共にインキュベーションした。IL−1アイソフォームは、単独ではβ−デフェンシン2またはS100A7遺伝子発現を強力には誘導しなかったが、IL−17Aと組み合わせて、IL−1F8はs100a7転写物の約16倍の増加を誘導した。一方で、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9は、IL−17Aと組み合わせて、def4転写のレベルを約600〜800倍増加させた。図26。TNF−αはs100a7発現の誘導においてIL−1F8と相加効果を有し、IFN−γはdef4の遺伝子発現において3つのIL−1アイソフォームすべてと相加効果を有する(図26)。
【0187】
以下の文書は、IL−1サイトカインおよびIL−1Rrp2受容体に関するさらなる情報を提供し、任意の目的のために本明細書中に参考として組み込まれている。
Berglof, E., R. Andre, B. R. Renshaw, S.
M. Allan, C. B. Lawrence, N. J. RothwellおよびE. Pinteaux.
2003.「脳細胞におけるIL−1Rrp2発現およびIL−1F9(IL−1H1)作用(IL-1Rrp2
expression and IL-1F9 (IL-1H1) actions in brain cells)」.
J Neuroimmunol 139:36-43.
Blumberg, H., H. Dinh, E. S. Trueblood, J.
Pretorius, D. Kugler, N. Weng, S. T. Kanaly, J. E. Towne, C. R. Willis, M. K.
Kuechle, J. E. SimsおよびJ. J. Peschon. 2007.「IL−1リガンドファミリーの2つの新規メンバーの対立する活性が皮膚炎症を調節する(Opposing activities of two novel members of the IL-1 ligand family
regulate skin inflammation)」. J Exp Med 204:2603-2614.
Dunn, E., J. E. Sims, M. J. NicklinおよびL. A. O'Neill. 2001.「免疫系において潜在的な役割を有する遺伝子の注解:IL−1ファミリーの6つの新規メンバー(Annotating genes with potential roles in the immune system: six new
members of the IL-1 family)」. Trends Immunol
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Tierney, M. N. Tzimas, D. E. Griswold, E. A. Capper, R. Tal-Singer, G. I.
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the interleukin-1 family)」. J Biol Chem
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mediators by synovial fibroblasts and articular chondrocytes)」. Arthritis Res Ther 8:R80.
Sims, J., J. TowneおよびH. Blumberg. 2006.「炎症性皮膚病における11個のIL−1ファミリーメンバー(11 IL-1 family members in inflammatory skin disease)」. Ernst Schering Res Found Workshop:187-191.
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Sims, J. E., M. J. Nicklin, J. F. Bazan,
J. L. Barton, S. J. Busfield, J. E. Ford, R. A. Kastelein, S. Kumar, H. Lin, J.
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IL-1-family genes)」. Trends Immunol 22:536-537.
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Towne, J. E., K. E. Garka, B. R. Renshaw,
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IL-1RAcP to activate the pathway leading to NF-kappaB and MAPKs)」. J Biol Chem 279:13677-13688.
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Rabe, J. Schalkwijk, P. S. HiemstraおよびN. A. Datson.
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response of bronchial epithelial cells to Pseudomonas aeruginosa:
identification of early mediators of host defense)」.
Physiol Genomics 21:324-336.
Wang, P., B. Meinhardt, R. Andre, B. R.
Renshaw, I. Kimber, N. J. RothwellおよびE. Pinteaux. 2005.「インターロイキン−1関連サイトカインIL−1F8はグリア細胞中で発現されるが、IL−1ベータシグナル伝達応答の誘導に失敗する(The interleukin-1-related cytokine IL-1F8 is expressed in glial
cells, but fails to induce IL-1beta signalling responses)」. Cytokine 29:245-250.
【0188】
当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書中に記載の具体的な実施形態の多くの均等物を理解する、または確認することができるであろう。そのような均等物は以下の特許請求の範囲によって包含される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのアップレギュレーションを同定することを含む、炎症性障害を検出する方法であって、少なくとも1つのIL−1のアイソフォームが、IL−1F6、IL−1F8、またはIL−1F9である方法。
【請求項2】
炎症性障害が乾癬、ループス、または関節炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのアップレギュレーションが、mRNAレベルを検出することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのアップレギュレーションが、タンパク質レベルを検出することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも2つのアップレギュレーションの検出が、(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのタンパク質レベルを検出することによって、ならびに(a)少なくとも1つのIL−1のアイソフォームおよび(b)IL−1Rrp2のうちの少なくとも1つのmRNAレベルを検出することによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
IL−22関連障害を処置する方法であって、IL−1F6、IL−1F8、およびIL−1F9のうちの少なくとも1つの少なくとも1つの阻害剤を、前記IL−22関連障害に罹患している患者に投与することを含む方法。
【請求項7】
少なくとも1つの阻害剤が抗IL−1F6抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの阻害剤が抗IL−1F8抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの阻害剤が抗IL−1F9抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの阻害剤が抗IL−1Rrp2抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
IL−22関連障害が乾癬、ループス、または関節炎である、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
炎症性障害に罹患している患者に、(a)(i)抗IL−1F6抗体、(ii)抗IL−1F8抗体、(iii)抗IL−1F9抗体、および(iv)抗IL−1Rrp2抗体のうちの少なくとも1つと、(b)抗IL−22抗体との組合せを投与することを含む、炎症性障害を処置する方法。
【請求項13】
炎症性障害に罹患している患者に抗IL−1抗体および抗IL−17A抗体を投与することを含む、炎症性障害を処置する方法。
【請求項14】
炎症性障害に罹患している患者に、(a)(i)抗IL−1F6抗体、(ii)抗IL−1F8抗体、(iii)抗IL−1F9抗体、および(iv)抗IL−1Rrp2抗体のうちの少なくとも1つと、(b)抗IL−22抗体と、(c)抗IL−17A抗体との組合せを投与することを含む、炎症性障害を処置する方法。
【請求項15】
対照試料における遺伝子発現のレベルと比較した、対象における遺伝子発現のレベルを検出することによって、対象の炎症性障害の処置、低下、予防、および/または寛解における治療剤の有効性を決定する方法であって、検出される遺伝子発現が、IL−1F6、IL−1F8、IL−1F9、IL−1Rrpのうちの少なくとも1つからの遺伝子発現であり、対照と比較して対象における遺伝子発現のレベルがより低いことが、対象の炎症性障害の処置、低下、予防、および/または寛解における治療剤の有効性を示す方法。
【請求項16】
炎症性疾患が乾癬、ループス、または関節炎である、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25−1】
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【図25−2】
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【図25−3】
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【図25−4】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【公表番号】特表2012−501184(P2012−501184A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525233(P2011−525233)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/055366
【国際公開番号】WO2010/025369
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】